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あの頃欲しかった愛のこと
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1:
眠っているわたしの頬に細くて柔らかいものが触れた。くすぐったくて少し幸せな気分で目を覚ます。
だけど淡いグリーンの枕の隣には、さっきまで夢の中で逢っていた人とは別の顔があった。
うんざりして無防備に寝ている彼の髪の毛を頬からはらって起き上がる。
カーテンの隙間から朝日が射し込んでくるのを見た瞬間、ふいに深い孤独が襲ってくる。
‐わたし何してるんだろう・・・・‐2006-10-22 05:39:00 -
2:
身仕度をして帰ろうかと思ったが、鼻の奥がつまり目頭が熱くなっている。
きっと今ひとりになったらまたリストカットか過食嘔吐をしてしまうだろう。いい加減どちらとも止めたい。
穴埋め行為には違いないがわたしはまたとりあえず意識を遮断する方法を選んだ。
無防備な顔をして寝ている男の体をゆさぶる。2006-10-22 05:47:00 -
3:
『ねぇ、たかチャン起きてよ』何度か話しかけて、やっとめんどくさそうに少しだけまぶたを開けて腕をひろげる男の胸に顔をうずめる。
どうかしたのという質問には答えずに首筋に唇を這わした。昨日の夜から数えて3回目のSEXの開始。
ひとりじゃないという安心感と快感にわたしは身をまかせた。2006-10-22 05:57:00 -
5:
またしばらく眠ったあと、髪をなでられて起こされた。「送ってくよ」と。
ひとりにはなりたくないけれど、夕方から大学で試験の監督生をしなければいけないというたかチャンは大学院生で、欠席のしすぎで2回留年しているので引き止めることは出来ない。
仕方なく大きすぎる黒のスエットを脱ぎ、着てきた服に着替え身仕度を整えた。
学生らしく自転車で送ってくれたたかチャンの背中をマンションの前で見送りながら、わたしはすでに今夜は誰と過ごそうか考えていた。2006-10-22 06:09:00 -
6:
‐午前3時過ぎ。よく行く近所のガストで親友のゆいがフライドポテトをつまみながら、呆れた顔で話しだした。
「みゆさぁ、最近遊びすぎじゃない?」そのとおりなので何も言えない。言葉につまっていると、鼻をすする音が聞こえてきた。
・・・・ゆいが泣いている。ゆいの視線はわたしの左手首を向いていた。2006-10-22 06:24:00 -
7:
暖房が効きすぎて暑いのでカーディガンを脱いだのを忘れて、テーブルの上に左手を乗せて話していたのだ。
失敗した。ゆいには見られたくなかったのに。
「またリストカットしたの?ずっと止めれてたじゃん。たくやクンと別れてからのみゆは昔に戻ったみたいで見てられないよ!」2006-10-22 06:33:00 -
8:
ポロポロと大粒の涙を流す親友の前で、わたしはカーディガンを羽織ながらなだめるように話した。
『ごめん。もうしないから。心配かけてごめんね。』ゆいは涙を拭いながら約束だよって笑った。
でも本当は約束なんて出来ない。したくはないけれど、気が付いたらしてしまっているから。
だけど自分のために泣いてくれる親友にこれ以上、心配はかけたくない。
ジンジャエールを飲みながら努めてさりげなく笑った。約束するよと。2006-10-22 06:44:00 -
9:
ゆいがまた何かを言おうとしたのをわたしの携帯の着信音がさえぎった。
今日約束している男からの電話だ。多分仕事が終わった報告だろう。
『ごめん、もう行かなきゃ。また連絡するね。』伝票をつかんで手を振った。ゆいは小さな声で約束だよって呟いた。2006-10-22 06:52:00 -
10:
今日約束している男は3週間前まで働いていたキャバクラでわたしの担当だったボーイだ。
ダパンプのイッサに似たきれいな顔をしているけど、口が悪く何度泣かされたかわからない。
だけどたくやと別れて自暴自棄になりお店を飛んだわたしを心配してくれて、たくさんのメールや電話をくれていつのまにかお互い寂しさを埋める相手になっていた。友達以上恋人未満。
セフレだけど、気心しれてるし趣味も合うし相性もいい。今のわたしにはちょうどいいぬくもりだ。2006-10-22 07:05:00