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小説:砂の城
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1:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
フィクションです。よかったら読んでみてください。
2005-05-03 21:23:00 -
2:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
携帯の画面が光る。
【不在着信・二件】
ボタンを押して確認すると同じ名前が並んでいる。
その名前の前には全て着信拒否のマークが付いている。
《もう一ヵ月以上経つのに…》2005-05-03 21:28:00 -
3:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしはため息を吐いて着信履歴を削除した。残したままにしておくと掛け直して声を聞きたいという欲望に負けてしまいそうだからだ。
携帯の画面を閉じて鞄の中に投げ込むと、あたしは立ち上がった。2005-05-03 21:30:00 -
4:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「舞!!」
約束していた場所に少し遅れて行くと、彼は先に来ていた。笑顔であたしの名前を呼ぶ彼――優真――
彼は一ヵ月半前までホストだった。今は普通の昼職をしている。2005-05-03 21:40:00 -
5:
?ゅりぇ?
サクラさんの?見つけたァ??今回も自分のペースで頑張って?サィ??????
2005-05-04 01:01:00 -
6:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、お久しぶりです?よかったらまた見てくださいね??
2005-05-04 01:34:00 -
7:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめん!遅れちゃった」
まるでドラマに出てくるような状況と台詞だな、と思ってつい頬が弛む。
その表情とは裏腹についため息を吐いてしまう。2005-05-04 01:52:00 -
8:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「どした?」
優真が心配そうに聞いてくる。あたしは言い淀んだ。
「…あの人か?」
あたしはすぐに顔に出るタイプ。優真が静かに言った。無言で頷くあたしに、優真は「そうか。」とだけ呟く。2005-05-04 02:00:00 -
9:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
その静かな口調と声だけでは彼がどう思っているかわからない。あたしは彼に言おうとした。
「違うよ!なんともない。何もないから…」
でもそれは声にならなかった。言えない。言い淀んだという事で自分がまだ【あの人】を忘れられていないという事を再確認したから。2005-05-04 02:12:00 -
10:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「…行こっか!」
優真は何事もなかったかのように笑って手を差し出した。あたしはようやく笑って優真の手を握った。
何事もなかったかのように笑ってくれる優真。決して何も聞かない優真。優しい優しい優真。
その優しさがあたしには居心地が良く、ひどく痛いものだ。2005-05-04 02:24:00 -
11:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
風が吹く。仄かな暖かさを含んでいるのに、何故かあたしにはひどく冷たいものに感じる。
《優真…ごめんね》
あたしは心の中で小さく呟いた。
あたしは優真と肩を並べて歩きながらふと、【あの人】の事を思い出していた。2005-05-04 03:11:00 -
12:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
目を瞑るだけで彼の笑顔を、声を、手の温もりを、抱き締められた時に香った香水の匂いを容易に思い浮べる事ができる。
あたしが生まれて初めて愛した人。彼の為なら死ねると思った。2005-05-04 03:26:00 -
13:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「おはよ〜今日は忙しかった?」
前髪をいじりながら店から出てくる彼、主馬《かずま》はNO.2ホスト。キャッチで知り合った。
「まぁまぁかな?」
そう答えながらドアを開けて店の中に入る。
「いらっしゃいませぃ!」2005-05-04 03:42:00 -
14:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしがこの店に初めて来たのは一ヵ月前。なんとなく、暇つぶしだった。
特にハマるわけでもなく飲んで帰った。
それから一ヵ月後、仕事帰りに飲み足りなくて顔を出したのがきっかけ。それから週に一回のペースで飲みに行くようになった。2005-05-04 03:45:00 -
15:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
焼酎を飲みながら話していると、主馬が微笑みながら無言であたしを見つめてくる。あたしはそれに気付かないふりをしてグラスの中身を空けた。
主馬が時々そうやってあたしを見るようになったのは一体いつからだろう。2005-05-04 03:49:00 -
16:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしは主馬の視線から逃れるようにヘルプの男の子に空いたグラスを渡した。主馬はまだあたしを見ている。
「…なに?」
なんだか気まずくなってあたしは彼の方へ上半身を捻りながら聞いた。
「んー?…いや、なんか雰囲気変わったな〜と思って」2005-05-04 08:20:00 -
17:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
微笑みながら、まるで子供をあやすかのように優しい声で話す彼。その声と表情はひどくあたしの心を掻き乱す。
《これは好きになっちゃいけない人。リップサービス、お金を落としてもらう為の言葉。》
そう自分に言い聞かせながらも、堪らなく彼にひかれていく自分をあたしはとめる事ができない。2005-05-04 08:26:00 -
18:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
水商売の事はわかってるつもりだった。でもそうして妙な自信を抱くほど愚かな事はないという事に、あたしはまだ気付いていなかった。全てが若さ故、のものだった。
そして無駄に知識がある方が危険だという事にも気付かなかった。2005-05-04 08:30:00 -
19:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そう?そんな事ないよ」
あたしは彼から視線を外して微笑んだ。言葉とは裏腹に、本当に自分でも変わったな、と思っていた。
服装や全ての事に口出ししてくる彼氏と別れてから、あたしは自分のしたい様にしていた。そして何より驚いたのが、自分も結局一人の女だったという事。2005-05-04 08:34:00 -
20:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
人と被るのが嫌、と口では言いながら結局似たような物を身に纏っている自分。
会計を済ませ、エレベーターから降りる。談笑しながら駅へと向かう道で、あたしはなぜか苛々していた。今思えば、お酒が入っていたからだと思う。2005-05-04 10:00:00 -
21:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
気が付けばあたしは主馬に抱きついていた。
「ちょっ…?どないしたん?」
驚いて逃げようとする主馬に、あたしは思いっきり背伸びしてキスした。
「うわぁっ!!」
主馬は叫んでしゃがみ込む。耳まで真っ赤になっている。2005-05-04 10:04:00 -
22:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「なによ〜?そんなの馴れてるでしょ」
あたしが笑いながら言うと、主馬がまだ赤い顔で立ち上がった。
「あかんて…俺タイプの子に弱いんやから。」
「あはっ!営業トーク?いらないよ。」2005-05-04 10:07:00 -
23:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そんなんちゃうし!」
主馬がむすっとした顔で答える。今思えばこの時が一番幸せだったのかもしれない。
「はいはい。」
あたしは笑って主馬に手を振った。
「一人で帰れるから〜」2005-05-04 10:09:00 -
24:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
駅まで歩くのが怠いのでタクシーに乗って帰る事にした。乗り込んで行き先を告げると、あたしは煙草に火を点けて煙と一緒にため息を吐いた。
タクシーのシートに深く身を埋めながら煙草を吸い続ける。
唇が、まだ熱い。主馬のそれと触れ合った時の感覚がなかなか消えない。2005-05-04 10:18:00 -
25:
?桜?
発見?しおり??
2005-05-04 10:22:00 -
26:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?桜?さん、わぁお?お久しぶりです?しおりありがとぉ??
2005-05-04 10:27:00 -
27:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
携帯が鳴った。
「もしもし?もう電車乗った?」
「ううん」
答えながら煙草を灰皿の中で揉み消す。
「は?どこ?」
「しんどいからタクシー乗ってる」
あたしはもう一本新しい煙草を取り出して火を点けた。2005-05-04 10:35:00 -
28:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
略部分。
「しんどいからタクシー乗ってる。」
あたしは新しい煙草を取り出して火を点けた。2005-05-04 10:36:00 -
29:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そっか!ならいいんやけど。心配やったからね。」
独特のリズムで延ばすように喋る彼。そのリズムはひどくあたしを安心させる。
「ありがと。今日襲っちゃってごめんね〜?」
あたしは茶化すように、冗談っぽく言った。2005-05-04 10:42:00 -
30:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あははは!いやいや、嬉しかったよ」
「えっ!?」
「あっ!!なんでもない!また後でメールするわ!ばいばい!」
プッ、ツーツーツー…2005-05-04 11:01:00 -
31:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《なんだそりゃ…》
そんな気持ちとは裏腹に顔は自然とにやけてしまう。何故か心が暖かい。
《あぁ、あたし主馬の事好きになりかけてるんだ。》
妙に冷静にそう思えた。2005-05-04 11:04:00 -
32:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬にこの想いを伝えてもなかなか信用してもらえなかった。
「はいはい、みんな同じように言うからね〜。ちょっと酔ったからそう思うだけやって。本間の俺を知らんやろ?」
そう笑って一蹴された。「じゃあ、教えてよ?店行くからその時にでも話してくれたらいい。」2005-05-04 11:12:00 -
33:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
若いってのは恐い事だと思う。
この時、主馬24才。あたし、舞は17才。ミテコだった。
「なんで俺みたいなんがいいん?付き合ったってしんどいだけやで?こんな仕事やからあんまり会われへんし、日曜だって疲れて寝てばっかりやし。」
主馬はあたしに諦めさせようと色んな事を言ってきた。2005-05-04 14:59:00 -
34:
ぷー ◆3GeKd17wBo
ァゲ?頑張って下さぃねッッ??
2005-05-04 15:01:00 -
35:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ぷーさん、あげてくれてありがとう??
2005-05-04 15:21:00 -
36:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ねぇ、主馬。じゃあどうしたらいい?あたしの中で日々膨らんでいくあなたへの想いを、あたしはどこに吐き出したらいい?
あなたの事を考えるだけでこんなにも苦しいのに。その苦しみを主馬は自分の中に閉じ込めていろって言うの?そんなの無理だよ…2005-05-04 15:26:00 -
37:
名無しさん
ιぉレ」?
2005-05-04 15:38:00 -
38:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
39さん、しおりありがとう?????
2005-05-04 15:42:00 -
39:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
仕事に関してはなんとも思わなかった。店でなくても【ウリ】はした事があったから。
…ただたまに奇妙な感覚に苛まされた。疎外感、とでもいうのだろうか、普通の人と自分は違うというような、まるで機械にでもなってしまったかのような感覚。2005-05-04 17:41:00 -
40:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
このままでいいと思う自分と、駄目だと叫ぶ自分。
単調でつまらない生活。 なんの刺激もない生活。なのに何故こんなにもあたしは追い詰められた気持ちになるんだろう。2005-05-04 17:57:00 -
41:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
実の親にもいらないと言われたあたし。
友達なんてできても裏切ったり、いじめられたりしたあたし。
せっかく彼氏ができても浮気されたり冷められたりするあたし。
誰にも、必要とされないあたし――2005-05-04 18:01:00 -
42:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
誰か。お願い。必要としてよ。
他の誰でもない、あたしを必要としてよ。
生きてる価値がどこにも見つからないよ。
いらない子なの…?2005-05-04 18:03:00 -
43:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あぁ、【鞠香ちゃん】…いいよ、すごく…あぁッ!」
ドクッ…!!
男のモノが脈打つようにしてあたしの口の中で果てた。2005-05-04 18:06:00 -
44:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
生暖かいどろっとした液体があたしの口いっぱいにだされる。独特の生臭い、えづきそうになる精子の匂い。あたしはできるだけ顔をしかめないようにしながら、ソレをティッシュの中に吐き出して捨てた。
「いやぁ、鞠香ちゃんは評判どおりだねー!すごく良いよ。また指名して来ちゃおうかな。」2005-05-04 18:10:00 -
45:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「本当ですか!?すごく嬉しいっ!じゃあ今度会ったら鞠香、もっとサービスしちゃう!」
にっこりと笑いながらお客をシャワー室に連れて行って簡単に体を流す。
服を着ているお客の横で名刺の裏に、【今日は初めてなのに鞠香を選んで来てくれてありがとう☆また会いにきてね♪】と簡単にメッセージを書く。2005-05-04 18:25:00 -
46:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
上機嫌のお客さんをカーテンの裏まで送って行ってお決まりの送りチュウをして、部屋に戻る。
使用済みのタオルを片付けて、シーツの乱れを手早く直す。
その日は本指名が3本、フリーが2本、後はパネル指名と雑誌指名が1本ずつ。まぁまぁの一日だった。2005-05-04 18:42:00 -
47:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香ちゃーん、お疲れ!今日はもう上がっていいよ!」
店長が機嫌の良い声でコールをしてきた。
「はい。お疲れ様です。」
シーツや、生臭い匂いのするゴミを片付けて、ローションを補充してからシャワーを浴びる。2005-05-04 18:53:00 -
48:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ザァァァァ…
少し熱めのシャワーに身を打たれると、少しだけ疲れが取れた気がした。
蛇口を廻してお湯を留めると、体を拭こうと新しいタオルを手に取った。
「うっ…。」2005-05-04 19:01:00 -
49:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
新しい綺麗なタオル。なのに、生臭い精液の匂いがした。思わず吐きそうになる。
あたしは息を止めて手早く体を拭いた。化粧水を顔と体に塗ってため息を吐く。
…体中からその匂いがする気がする。まるで染み付いているかのように。
堪らなく厭になって香水をふりまいた。2005-05-05 00:21:00 -
50:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
甘ったるい香水をどれだけ振りまいても、あたしの肌に染み込んだこの匂いは消えない。
財布の中にどれだけお金が入っていても満たされない。
この気持ち、どうしたら埋まるんだろう…。2005-05-05 04:57:00 -
51:
?ゅりぇ?
サクラさんの小説ゎぃっも続きが気になります??頑張って?サィ??しぉり?
2005-05-05 07:03:00 -
52:
ゅかり
しぉり?続き楽しみにしてるねぇ??
2005-05-05 07:13:00 -
53:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、また?書き込みありがとうです?頑張って書きますね?
ゅかりさん、しおりありがとうございます???はい、よかったら読んでください?2005-05-05 09:48:00 -
54:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《ローション…OK。シャワーブース…OK。ごみ箱…OK。》
部屋の中を確認してからフロントにコールする。
「お疲れさまでした。」
そのまま私物籠を持って部屋を出る。ロッカールームに立ち寄り私物を置くと、フロントに行って鍵を渡した。2005-05-05 09:52:00 -
55:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「おー、お疲れ様!はい、これ今日の給料ね!」
店長がにっこり笑って給料袋を差し出す。
今日の稼ぎは5万ちょっと。十分だ。中身を取り出して確認しているあたしに店長が独り言のように喋る。2005-05-05 09:55:00 -
56:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「いや〜鞠香ちゃんはすごくサービスがいいって評判だよ!今月もNo.入り目指して頑張ってな!」
「…はい。」
あたしはそう言って微笑んだ。
《別に入りたいわけじゃないけど。》2005-05-05 09:58:00 -
57:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香ちゃん、明日どうする?入れるなら入ってもいいよ?」
店長が手元の出勤表に目を落として聞いてきた。
「いえ、それしちゃうと五連勤になっちゃうんで。それにちょっと疲れちゃったから。」
「そっか、じゃあ明日は予定どおりお休みで!ゆっくり休みな〜」2005-05-05 11:14:00 -
58:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
店を出るともう午前0時を過ぎているというのに、人が多い。
《まだ夜は寒いなぁ…》
そんな事を思いながら、24時間営業の薬局へと足を向ける。と、あたしの携帯が鳴った。2005-05-05 11:21:00 -
59:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
【受信メール・一件】
携帯を取り出してメールを確認する。
【おいっす!おはよ(^_-)俺さっき出勤したぁ☆タクのおっちゃんがあんまりとろとろ走るから遅刻するかと思ってマジ焦った。】
メールの相手は、主馬。一週間前キャッチされて番号を交換した。2005-05-05 11:25:00 -
60:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
【そぅなんだ。ぁたしは今仕事終ゎって薬局に行くとこだょ((o≧∇≦)o゛】
【マジ?今どこ?俺もキャッチで外にいるんだけど】
【主馬くんにキャッチされた交差点のとこだょ☆】2005-05-05 11:55:00 -
61:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香!おっす!おはよー!」
主馬は急いできたのか息を切らしながら駆け寄ってきた。
「おはよ〜キャッチ中なのにいいの?」
薬局へ向かうあたしに当然の様に着いてくる主馬が心配になって聞いた。2005-05-05 12:05:00 -
62:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「平気平気!どーせ俺今日暇だし」
そう言って主馬は両手を上にあげると伸びをした。
「そうなの?」
あたしの中でホスト、しかもNo.2クラスになると常に店に居て、お客さんが何人も来ていてシャンパンを卸しまくっているというイメージがあった。2005-05-05 12:22:00 -
63:
☆
読んでるよ?
2005-05-05 12:49:00 -
64:
ぷー ◆3GeKd17wBo
読んでるょォォ?頑張って?
2005-05-05 14:05:00 -
65:
?桜?
しおり?
2005-05-05 17:44:00 -
66:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
☆さん、読んでくれてありがとう??
ぷーさん、応援ありがとう?ゆっくりだけど書いていきますね?
?桜?さん、しおりありがとうです???2005-05-05 18:50:00 -
67:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
その思っていたイメージをそのまま主馬に伝えると、主馬は苦笑いを浮かべた。
「そんなにうまくいかへんって〜!!みんな今日は無理って言ってるし、俺今日仕事する気ない〜。」
「ふぅん、そぉなんだ。」2005-05-05 18:57:00 -
68:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
なんとなく、だった。薬局で化粧水や洗い流さないタイプのトリートメントを見ながらふと思いついた。
《行ってみようかな…。ホストクラブ。》
「主馬くん。」2005-05-05 18:59:00 -
69:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ん〜?」
主馬はCMでよく流れているメーカー物のワックスを手に取りながら、生返事をする。
「そんなに暇なら今日行ってみようか、主馬くんのお店。」
「まじで!?」2005-05-05 19:03:00 -
70:
舞
サクラさんの小説発見!!初めから一気に読みました♪続き楽しみにしてます(^_-)
2005-05-05 20:55:00 -
71:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
舞さん、お久しぶりです?今回の主人公の名前も舞なのでよかったら読んでやってください???
2005-05-06 14:54:00 -
72:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬は驚いたようにワックスを持ったまま駆け寄ってきた。
「いいの!?」
「いいよ〜明日休みだし」
「やった!」
主馬が嬉しそうに笑った。その笑顔はあたしより7つも年上とは思えなかった。2005-05-06 15:12:00 -
73:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「じゃあ…これ買ったら行こうか。」
主馬が子供みたいにはしゃぐので、あたしはくすくす笑いながら買い物かごを持ってレジに並んだ。
「俺持つわ〜」2005-05-06 15:53:00 -
74:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あぁ、ありがと。」
主馬は上機嫌で鼻歌なんか歌いながらあたしの荷物を持ってくれた。
二人でぶらぶらしながら店まで歩いた。
主馬の店は繁華街の大きなビルの中にあって、どうやらそのビルはスナックやラウンジ、バーなどが入っているらしく有名なのだと聞かされた。2005-05-06 16:03:00 -
75:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「このエレベーターとろいねんよ〜」
主馬がごめんねとでもいうように苦笑いしながらエレベーターに乗り込んで、ボタン押しながら呟いた。
あたしは初めて行く場所に緊張していた。緊張して顔が強ばっていたのか、主馬がひょいっとあたしの顔を覗き込んだ。2005-05-06 16:32:00 -
76:
名無しさん
??
2005-05-06 17:28:00 -
77:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
79さん、読んでくれてありがとうです?
2005-05-06 18:24:00 -
78:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「どーした?やっぱ無理か?」
心配そうに聞いてくる。「え、大丈夫だよ!」
あたしが笑顔で答えると主馬は安心したように笑った。
エレベーターが主馬の店の階に止まった。2005-05-06 18:32:00 -
79:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
店は最上階の端にあった。主馬が重そうなドアを開ける。
「いらっしゃいませぃ!」
主馬が大きな声で叫んだ。
「どうぞ?」2005-05-06 21:34:00 -
80:
?ゅりぇ?
?しぉり?
2005-05-06 21:40:00 -
81:
舞
?しおり?
サクラさん覚えてて下さったんですね?嬉しいな?続き楽しみにしてます?2005-05-07 02:39:00 -
82:
?桜?
しおり??
2005-05-07 06:37:00 -
83:
TTT ◆Mjk4PcAe16
サクラさーんお久しぶりですTTTです☆新作だぁ〜ゥレチィ(人´∀`*)
2005-05-07 08:47:00 -
84:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、またまたしおりありがとうです?
舞さん、覚えてますよ?しおりありがとでーす??2005-05-07 09:28:00 -
85:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?桜?さん、しおりありがとです??どうでもいいですけど?散っちゃいましたねぇ??
TTTさん、お久しぶりです!アウトサイド、こっちに移してるんですか?(・・?)サクラも新作頑張るので、TTTさんの新作を期待してます☆★☆2005-05-07 09:31:00 -
86:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おっかなびっくり、という言葉が相応しいようにあたしはお店の中に足を踏み入れた。
薄暗い照明の下で見る主馬は堂々としていて、あたしはひどく場違いな気分になる。ノーブランドのジーンズに黒のTシャツ、カーキ色のジャケットにミュール姿の自分がやたら浮いているように感じた。2005-05-07 09:39:00 -
87:
名無しさん
????
2005-05-07 11:21:00 -
88:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
90さん、読んでくれてありがとです??
2005-05-07 21:12:00 -
89:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の店は入ると左手にカウンターがあって、奥に行くと急に広くなっている作りで席が約10席ほどある。その奥の方、壁よりの席にあたしは案内された。
「何飲む?えと、料金は初回料金って言って一時間千円ね?で、初回のお客さんは焼酎、ブランデー、ソフトドリンクが飲み放題なんだけど。」2005-05-07 21:29:00 -
90:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「じゃあ…焼酎でいいや。水割りでいいよ。レモン入れてほしいんだけど…」
主馬はいいよと答えるとおしぼりとペールに入った氷を持ってきたホストに、それを伝える。そのホストは「わかりました。」と答えて、裏に引っ込んだ。2005-05-07 21:32:00 -
91:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おしぼりを持ってきてくれたホストが、今度は黄色いガラス製の焼酎のボトルと、グラス。それにレモンが入ったガラス製の醤油入れのような物を持ってきてくれた。
主馬が手早く水割りを作ってくれた。
「じゃあまぁ鞠香ちゃんのホスクラデビューに乾杯!」
そう言ってあたしのグラスより、自分のグラスを下にして乾杯した。2005-05-07 21:41:00 -
92:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬がおいしそうに水割りをごくごく飲み干す。あたしは緊張のせいかやたらと喉が乾いていたので、半分ほど一気に空ける。
「お!飲むなぁ。」
と、主馬が嬉しそうに笑って言った。
「そーいやさ、鞠香ちゃんって仕事何してんの?」
主馬がなんでもないかのように聞いてきた。2005-05-07 21:51:00 -
93:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「え…」
あたしは言い淀んだ。風俗、とは答えづらい。
「スナックだよ。」
多分、主馬にはばれていたかもしれない。でもあたしは嘘を吐いた。
「そうなんや、じゃあお酒強いんじゃない?今日は飲も飲も!」2005-05-07 21:55:00 -
94:
?ゅりぇ?
更新されてる????続き楽しみにしてます????しときま??す??しぉり
2005-05-08 04:50:00 -
95:
?桜?
しおり??
今年は、遅く咲いて、早くちってもたね?シクシク?2005-05-08 05:30:00 -
96:
名無しさん
?
2005-05-08 05:41:00 -
97:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、あげてくれてありがとー??ホスクラ帰りの朝日は目に染みます??
?桜?さん、しおりありがとです?お花見する間もなかったですね??
99さん、読んでくれてありがとう??2005-05-08 07:11:00 -
98:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「うん。」
経験上、水商売もした事がある。まぁまぁ飲める方だと思っている。
「ってか鞠香ちゃんっていくつだっけ?」
「18だよ。」
あたしはさらっと嘘を吐いた。2005-05-08 07:16:00 -
99:
削除削除されますた
あぼ~ん -
100:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
何を話したか覚えていない、だけどあたしは閉店時間までお店にいた。
会計を済ませて店を出る。主馬が送ってくれるというので、駅までの道を二人でのんびりと歩く。
通勤するスーツ姿のサラリーマンやOLの中であたしたちは完璧に浮きまくっていた。2005-05-08 10:09:00 -
101:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
スーツに茶髪の彼の姿はひどく朝にそぐわない。あからさまに遠慮ない目でジロジロと見ていく人もいる。本人は至って気にしていないようだが…。
「また後でメールするわ〜俺店戻るな?」
主馬はにこにこ笑いながらあたしが見えなくなるまで手を振っていてくれた。2005-05-08 10:16:00 -
102:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
駅に着いて切符を買う。人の流れとは逆に動いて電車に乗った。一駅だから座るつもりはない。ゆったりとした独特の揺れに身を任せながら、窓の外を眺めていた。
非日常的な世界に足を踏み入れた事が、何故か信じられなかった。現実味がない。だけど口の中に残るお酒の味は現実だ。2005-05-08 10:21:00 -
103:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《まぁまぁ楽しかったけど多分もう一回行く事はないだろうな…》
そう思いながら電車を降りる。改札を抜けてタクシーに乗り込んだ。
2005-05-08 10:24:00 -
104:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
―――ドンッ!!
あたしがカウンターに叩きつけるようにグラスを置いた音に、周りのお客が驚いたようにこっちを見た。
今、あたしは行きつけのショットバーにいる。
「鞠香ちゃん今日荒れてるねー。どうしたん?」
仲の良いバーテンダーが苦笑いしながら聞いてくる。2005-05-08 10:38:00 -
105:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「別に…なんでもないよ。帰るわ。ご馳走様。」
会計して店を出る。夏と言えど、夜風は火照った体に心地よい。
《どうしよ…行くとこないや…。寮に帰るのは嫌だしなぁ。》
と、ぼんやり考えていると携帯が鳴った。2005-05-08 10:48:00 -
106:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
誰からかも確認せずに電話に出る。
「…もしもし?」
苛々しているせいかつい声を荒立ててしまう。
「おぉ〜おはよぉ、ってかなんか怒ってるんか?」
電話の主は主馬だった。「ごめん、ちょっと仕事で嫌な事あってさ、バーで飲んでたから…」2005-05-08 12:05:00 -
107:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そっか…もう帰るんか?」
「ううん。…久しぶりに主馬の顔見に行こうかな!」
「マジで?迎えに行くわ」…これが主馬の店に通うようになったきっかけだ。2005-05-08 12:10:00 -
108:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そして今に到る。
あたしがどれだけ好きになっても手に入らない人。
彼にわかってもらうには店に通うしかない…例えお客としてしか接してくれなかったとしても。例えあたしの想いに応えてくれなかったとしても。2005-05-08 12:16:00 -
109:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬。好きだよ。すごく、好き。…大好き。
ねぇ、一度でいいから…
あたしを抱き締めて2005-05-08 12:17:00 -
110:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
略部分。
あたしを抱き締めて2005-05-08 12:18:00 -
111:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
諦めずにずっと通っていた。店からの帰り、送ってもらう途中で主馬に告白するのが日課になっていた。
「…だから、俺なんかやめときって言ってるやん?」主馬が困ったように呆れたように笑いながら言う。
「だって好きになったもんはしょうがないじゃない」あたしは負けじと答える。 主馬がため息をつきながらしゃがみ込む。2005-05-08 12:22:00 -
112:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
途端に不安になる。嫌われたんじゃないかって。うっとおしいんじゃないかって。
「ごめん、主馬。…嫌いになる?」
あたしは俯いて呟く。涙が出そうになる。それを堪える為に、唇を噛み締めた。2005-05-08 12:24:00 -
113:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「嫌いとか…そんなんじゃないけど。俺、自分に自信ないねん。どこがいいん?さっぱりわからん。」
主馬が静かに言った。
「全部!優しいとこも、本気で心配してくれるとこも、仕事に対して真面目なとこも、全部全部好きだよ?」
あたしは主馬にわかって欲しくて、必死になって喋った。2005-05-08 12:28:00 -
114:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「…ありがと。」
主馬が嬉しそうに微笑んで立ち上がった。
「かず…ま。」
あたしは囁くように名前を呼んで、彼の胸に顔を埋める。汗と煙草と香水の交じった匂い。あたしが今一番大好きな、匂い。でも彼は抱き締めてはくれない。腰に手を回す事すらしてくれない。両手はズボンのポケットに突っ込まれたままだ。2005-05-08 12:33:00 -
115:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめん、俺店に戻らなきゃ」
主馬はそれだけ言うとあたしからそっと離れた。
「またメールする。」
あたしに背を向けて主馬は店へと走って行く。あたしは彼の姿が見えなくなるまで、その背中を見つめていた。2005-05-08 12:36:00 -
116:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の姿が見えなくなるとあたしはその場に座り込んだ。ビルの壁にもたれる。
煙草を取り出して火を付けようとする手に一粒の水滴が落ちた。
《雨…》
ポツリ、ポツリと降りだしたそれはやがて本格的に降り始める。2005-05-08 12:41:00 -
117:
名無しさん
?
2005-05-08 15:37:00 -
118:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
120さん、書き込みありがとで?す?
2005-05-08 17:00:00 -
119:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしの頬に、堪えていた涙が伝い落ちる。
《雨…か。ちょうどいいや。》
…全部流れてしまえばいい。あたしのこの涙も、主馬への想いも。雨が全てを流しきってくれればいい。
はっきりとしない主馬の態度も、それに対するあたしの中の苛立ちも、全て流れてしまえばいいのだ。そうすればこんなに苦しい想いもしなくて済むのに。2005-05-08 17:34:00 -
120:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
いつまでも降り続ける雨の中で、あたしは人目も気にせず泣いた。声を押し殺して泣き続けた。
《なんで、こんなに切ないんだろう。》
あたしの知っている恋は相手の事を考えるだけで、胸が熱くなるようなワクワクするものだった。2005-05-08 17:36:00 -
121:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
それが今では苦しい。心臓を鷲掴みにされたような苦しさ、息が、できなくなる。主馬の事を考えただけで泣きたくなる。
まだ幼かった私。それが本物の恋というものだという事に、すぐには気付かなかった。2005-05-08 17:39:00 -
122:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
決してあたしを拒まない彼。だけど完璧に受け入れもしない彼。
《あたしの事、どう思ってるの?》そんな簡単な質問もできない。恐い…。
拒絶しないで。愛してよ。嫌わないで。受け入れて。あたしを認めてよ。必要として。例えそれがお客でも構わないから。2005-05-08 17:43:00 -
123:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そんな状態が半月以上続いた。精神的に限界だった。幼すぎるあたしの心は、時間をかける、という行為に耐えきれなくなってきていた。
「ねぇ、好きか嫌いかはっきりしてよ。」「信じてよ、裏切ったりしないから。離れないから。」「主馬が好きなの。お店以外で会えなくても我慢するから。」2005-05-08 17:46:00 -
124:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
もう飽きる程繰り返した言葉。そしてそれに返される言葉も聞き慣れたものになっている。
「あかんって。俺は鞠香ちゃんが思ってる程良い人間じゃないから。」「俺はおかしい人間やから。壊れてるから自分がしんどいだけやで?」「彼女になっても店に呼ぶで?俺そうやって尽くしてもらわな不安やから。」2005-05-08 17:50:00 -
125:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そこまで言われているのに、何故かあたしは離れなかった。彼を追い続けた。
そんなあたしに根負けしたのか、彼はぽつぽつと過去の話をしてくれた。
ホストになった理由。初めての接客で色枕しかできなかった時代。彼女ができても長続きしなかった事。家族構成、自分が家族や親類の中でどういう立場なのか全て話してくれた。2005-05-08 17:54:00 -
126:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
初めて風嬢と付き合った時の事。別れた理由、別れる時に言われた台詞。
「どうせホストやから。」それが何度も続いて人間不信になった事。
話を聞き終わった時、店はもうラストソングが流れていた。2005-05-08 17:57:00 -
127:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしは以前、自分の過去の話をした事があった。その時に彼はあたしの事を理解してしまった。そして彼の過去を聞いた今、あたしも彼を理解した。
どちらかが病めば、慰めるもう一人も間違いなく病む。そして今度は慰められていた方が慰める。悪循環の関係。
だけど全てを理解してしまう、そして理解してくれるから離れられない。2005-05-08 18:07:00 -
128:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
だけどもうあたしには後戻りできなかった。例えこの先、彼があたしを金だけの女としか見てくれなくても、構わない。彼がホストである限り、あたしは彼から離れない。
彼以外いらない。他の誰も。親なんてとっくの昔に縁を切っている。友達とはとても言えないような、携帯のメモリを埋めるだけの人間なんていらない。
主馬だけでいい――2005-05-08 19:47:00 -
129:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
いつからだろう。主馬があたしを見る目が変わった。以前は恐い物でも見るかのような目だったのに、最近ひどく優しい目をする。
まるで…まるで愛しいモノを見るかのように、あたしを見る。錯覚しそうになる。勘違いしそうになる。2005-05-08 19:50:00 -
130:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
だけど、遅いよ。あたしはもう疲れてしまった。はっきりしてくれないあなたに。
知り合ってたかだか3ヵ月ちょっとなのに、結論を急ぎすぎかもしれないけど、あたしは疲れてしまった。だから今日でおしまい。もうあなたには会わない。連絡もしない。2005-05-08 19:54:00 -
131:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おかしいね、離れないって思ってたのに。だって主馬、あたしこのままじゃ壊れちゃうよ。。あなたに迷惑かけてしまう。すごく嫌な人間になってしまう。
ごめんなさい…。許してね。
だから、そんな風に見つめないで、微笑まないでよ。2005-05-08 19:57:00 -
132:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
離れられなくなるじゃない
2005-05-08 19:58:00 -
133:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「うっ!!――げほっ!」 最後と決めて、あたしはけじめをつけるつもりでシャンパンを卸した。
《調子に乗って飲み過ぎた…最悪》
一体どれくらいの時間トイレに閉じこもっているのだろう…。もう何度も出ようとするけど、気分が悪いし、足に力が入らない。2005-05-08 20:02:00 -
134:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ガチャガチャ。
トイレのドアを開ける音がお酒でぼんやりとした頭に響いた。
「鞠香〜?大丈夫か?」
あたしはみっともない姿を見られるのが嫌で立ち上がろうとした。
《――!!》2005-05-08 20:05:00 -
135:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「危ないっ!!」
倒れる!そう思った瞬間、まさに間一髪という所で主馬に支えられた。
「大丈夫か?今日めちゃ飲んでたもんな。」
主馬が笑いながらよしよしとあたしの頭を撫でた。あたしは体重をほとんど主馬に預けるようにしてトイレから出る。2005-05-08 20:09:00 -
136:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
もうお客さんは全員帰っていて、席も綺麗に片付けられていた。
「お〜鞠ちゃんが復活したぁ!」「大丈夫かぁ?」「まさかトイレで寝てた系?笑」
本当はもう帰りたいだろうに、従業員達は口々に声をかけてくれる。2005-05-08 20:12:00 -
137:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめんね?」
あたしは心配そうに声をかけてくれた従業員達に謝った。
「ぜーんぜん!」「そうそう気にすんなって、俺の客に比べたら可愛いもんやで〜?寝るだけやもん、俺の客なんて暴れるわグラス投げるわやもん!」「あ〜、誰かさんやろ?笑」2005-05-08 20:15:00 -
138:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あー、店長?今日俺鍵閉めますわ。コイツ送ってから帰りますんで。」
主馬があたしの横に座りながら叫んだ。
「ほい、了解。ほな鞠香ちゃんまたね〜?」
店長が主馬に鍵を渡しながら笑顔であたしの顔を覗き込んだ。2005-05-08 20:51:00 -
139:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
他の従業員達も、口々に「主馬さん、お疲れっす〜」「鞠ちゃんバイバイ!」と言いながら出て行った。BGMも流れていない静かな店内に二人っきりになる。
音楽が流れていないだけで、照明が一番明るくなっているだけで、人がいないだけで場所はこうも変わるのだろうか。2005-05-08 20:54:00 -
140:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ブーンとまるで唸るように鳴る冷蔵庫の音まで聞こえてくる。重苦しいほどの沈黙。静寂があたしたちを包む。
《何か言わなくちゃ。》
そう思ってもあたしは何も言葉が見つからない、いや、むしろ話したい事はたくさんある。だけどありすぎて何から話したらいいのかわからない。2005-05-08 20:59:00 -
141:
?ゅりぇ?
また更新してぁりゅ???最近θ課になってます??しぉり?
2005-05-08 22:25:00 -
142:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、ありがとぉ??日課かぁ〜じゃあなかなか完結できないね…?
2005-05-09 00:11:00 -
143:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香。」
先に沈黙を破ったのは主馬だった。
「…なぁに」
名前を呼ばれて少しお酒が醒めた。
「なんかさ、言いたい事があるんじゃない?」2005-05-09 00:18:00 -
144:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
言い当てられて、胸が騒めく。
《どうしよう。言ってしまおうか。》
「ないの?俺の勘違いかな?」
「ううん!当たってる。言いたい事があるんだけど…多すぎて何から言ったらいいのかわからないの。」2005-05-09 00:20:00 -
145:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「頭に浮かんだ事からでいいよ。」
主馬はそう言ってもう一本お茶と灰皿を二つ持ってきてくれた。煙草を取り出すと、一本渡してくれた。KOOL MILDS、お揃いの煙草。ライターでお互いの煙草に火を点けあう。2005-05-09 00:24:00 -
146:
舞
?しおり?
主人公と名前同じだし、何年か前の私と被る部分があるのでかなり感情移入して読んでます?もしかしてサクラさんにどこかで見られてたのかな!?(笑2005-05-09 00:46:00 -
147:
?桜?
しおり?_
2005-05-09 00:57:00 -
148:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
舞さん、そうなんです?実は影から(・_・|コッソリ覗いてたんです?笑
?桜?さん、しおりありがとうです??2005-05-09 16:22:00 -
149:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あのね…あたし本当はスナックで働いてるんじゃないの。風俗なんだ。」
「うん。」
「それでね、歳も18じゃないの、17なんだ…。」
「そっか…。」2005-05-09 17:29:00 -
150:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
断片的に話すあたしの言葉に、主馬は促すわけでもなく優しく相づちを打ってくれる。
「汚いって思われたくなくて嘘ついてたの。ごめんなさい…。」
「いいよ。」
主馬はにっこり笑ってあたしの頭を撫でてくれる。2005-05-09 17:31:00 -
151:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香っていうのも本名じゃないの。店名なの。本名は舞っていうんだ。」
「舞、か。わかった。」
主馬がゆっくりと噛み締めるように言う。
「それからね、本当は今日で主馬に会うの最後にしようと思ってたの。」2005-05-09 17:34:00 -
152:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ふむ、なんで?」
「主馬に、迷惑かけたくない。あたし、主馬の事好きだから主馬がはっきりしてくれないのが辛い…。」
語尾が震えた。あたしはいつしか泣いていた。
「舞…。」2005-05-09 17:36:00 -
153:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬が何か言おうとした。
「でもねっ、いいの!もういいんだ。」
《――恐い!!聞きたくない!》
「舞?聞いて…」
主馬に拒否されたくなくてあたしは喋り続けた。2005-05-09 17:39:00 -
154:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「いいのっ!!いらない子だもん。…大体、主馬みたいな大人があたしみたいな子供の相手するわけないってわかってたし?はっきり言って迷惑だったでしょ?ごめんね〜?」
あたしは主馬が口を挟む隙がないようにまくしたてた。泣きながら、無理矢理笑った。2005-05-09 17:43:00 -
155:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
痛い子になればイイ。そうしたら主馬は、あたしを嫌ってくれる。はっきりとした態度で断ってくれるだろう。でも…
本当は、嫌われたくない。むしろ好いてほしい。2005-05-09 17:45:00 -
156:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬以外いらないの。だけど手に入らないのはわかってるの。
あなたにとって都合のいい存在でいいって思ってたの。だけどそれに耐えれるほどあたしは大人じゃない。
でも好きなの。どうしようもないくらい好きなの。2005-05-09 17:52:00 -
157:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「舞っ!!」
《えっ…?嘘。》
あたしは主馬の腕の中に居た。
《主馬に、抱き締められてる…?》
「俺が、悪かった。」2005-05-09 17:55:00 -
158:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬が辛そうに言った。「本間は嬉しかってん。好きって言ってくれて…。でも俺、人が信用できんから舞の事も信用できんかった。どうせすぐ飽きて離れていくわって、俺の事騙そうとしてるんやって。…でも信用する。舞の事信じる」
2005-05-09 18:00:00 -
159:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「主馬…。」
ウレシイ…だけど、あたしは…。
脳裏を過る、仕事中の自分。媚びた顔で親父のナニをしゃぶる自分。全身を舐めまわす自分。気持ち良くもないのによがりながら嬌声をあげる自分。
汚いんだよっ!!!2005-05-09 18:43:00 -
160:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《あ…。》
「舞?」
急に黙り込んだあたしの顔を、主馬が心配そうに覗き込む。
触れちゃ、いけない。あたしは汚いんだ。2005-05-09 18:45:00 -
161:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ありがと…。信じてくれて嬉しい。今日はもう帰るね…。」
あたしは微笑んで、そっと主馬から身を離した。
「わかった。また夜連絡するな?下まで送るわ。」
主馬が安心したように灰皿と空き缶を捨てながら、答える。2005-05-09 18:48:00 -
162:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
エレベーターに乗り込む。
「舞、辛い思いさせてごめん。俺にとってお前はいらない子じゃないから。」
主馬がそう言って身を屈めた。そっとあたしの頬に手を添える。
柔らかく、暖かい物があたしの頬を掠めた。2005-05-09 18:51:00 -
163:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の唇が触れた、そう認識するまで一瞬間が空いた。驚いて主馬の顔をまじまじと見てしまう。
「何さ?」
ぶっきらぼうに答える主馬の頬が赤く染まっている。2005-05-09 20:24:00 -
164:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
何故か悲しかった。
その後も、主馬がそういう素振りを見せる度、何故だかわからないけれど悲しくなった。
嬉しいのに…悲しい。
近くに感じて、でも遠く感じた。2005-05-09 20:27:00 -
165:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
最後、と決めていたのに結局あたしは主馬に会いたくなってまたこの店にいる。ホスト用語や営業の仕方も知識が増えた。
あたしは、間違いなく色営と呼ばれる営業をされているんだろう。2005-05-09 20:44:00 -
166:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
諦めにも似た感情と僅かな期待。そして感じる安心感。
恋人という関係はいつかは終わりがきてしまうかもしれないけれど、お客とホストという関係なら彼が辞めない限り、終わる事はない。自分を指名してくるお客の気持ちが、今ならわかる。2005-05-09 20:47:00 -
167:
名無しさん
?
2005-05-09 20:51:00 -
168:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
優しい奥さんと、子供がいながら週に一回「パチンコに行ってくる」と言って風俗に来ている客。仕事中に抜け出してきて抜いて帰る客。地元に婚約中の彼女を置いて、単身赴任している客。
みんな相手が居ても居なくても、風俗に来ている。そしてその場だけの疑似恋愛を楽しんだり、店外デートに誘ったりする。2005-05-09 20:52:00 -
169:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
172さん、読んでくれてありがとー???
2005-05-09 20:53:00 -
170:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
客に対して嫌悪に近い感情を抱いていた。何故相手がいるのにこんな所に来るのだろう、と。蔑んでいた。
だけど今ならわかる。結局あたしも主馬との、僅かなお金の上に成り立つ儚い関係に安らぎを感じているのだから。
客もあたしも、夢が見たいのだ。日常の中で感じる不平不満。それを非日常的な世界に行く事で忘れてしまいたいのだ。2005-05-09 21:43:00 -
171:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしに客を蔑む権利などない。
贋物の色気。
贋物の愛情。
贋物の言葉。
贋物だからこその魅力。それに酔い痴れるのは、男も女も同じなのだから。2005-05-09 21:46:00 -
172:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「舞…誰とメールしてるん?」
あたしが携帯をいじっていると、他の席を廻ってきた主馬が座りながら手元を覗き込んだ。
「んー?この前仕事場の先輩に連れて行ってもらったホスクラの指名した子。」2005-05-09 21:50:00 -
173:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「何それ。聞いてない…」 主馬の顔が曇る。怒ったように、拗ねるように口を尖らす。まるで小さい子供のようだ。
「あぁ、言ったら怒ると思って。」
「後でも怒るわ!!浮気ですか〜」
主馬が恨めしそうにじーっとあたしの顔を見る。2005-05-09 21:53:00 -
174:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そんなんじゃないよ。」 あたしはそう言って携帯を閉じて鞄の中に投げた。
「はいっ!もういじりません!」
そう言って万歳をするように両手をあげる。それを見て主馬は少し機嫌を直したようだった。2005-05-09 21:57:00 -
175:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ふわ…眠ぃ。。」
あたしは機嫌を直してまた他の席に行った主馬を見送って、携帯を掴むと店の外に出た。2階分ぐらい下に降りる。たまに店の従業員が外に出てきて電話するからだ。2005-05-09 22:00:00 -
176:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
時刻はもう午前5時を過ぎている。同ビルでまだ開いているのは、主馬の店だけだ。
店の音は2階下に降りても微かに聞こえてくる。
あたしは携帯を開いてリダイヤルを押した。
発信>>>>優真くん2005-05-09 22:04:00 -
177:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
優真、というのはさっきメールをしていたホスト。店の先輩と仲良くなって連れて行ってもらったホストクラブの男の子。入店してまだ半年も経っていないという彼は、初々しさに溢れていた。
主馬とはまったく違う、正反対のタイプの男の子。マメなタイプで、店にほとんど行っていないのにメールや電話をしてくれる。2005-05-09 22:21:00 -
178:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
営業してくる訳でもなく普通に連絡をくれる。ホスト用語にある、育て、というやつかもしれないけれど、あたしはよく主馬の相談をしていた。
「はいはーい!もしもし」
優真が元気よく電話に出た。2005-05-09 22:24:00 -
179:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「優真、おはよー。今電話しても大丈夫?」
「大丈夫だよ!店ってか俺めちゃ暇だし」
優真が笑いを含んだ声で喋る。
「どしたん?なんかあったん?舞ちゃんまた例の口座くんのとこで飲んでるの?」2005-05-09 22:27:00 -
180:
名無しさん
舞の源氏名はなんて読むの?
続き頑張ってください??2005-05-10 01:58:00 -
181:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
185さん、応援ありがとうです?舞の源氏名は鞠香と書いてマリカと読みます?
2005-05-10 03:00:00 -
182:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ん…。馬鹿だよねぇ、意志薄弱で」
あたしは苦笑いしながらぼやいた。
「そんな事ないけど、大丈夫?辛くない?」
優真が心配そうに聞いてくる。その声は静かで、心底あたしを心配してくれている調子だ。2005-05-10 03:08:00 -
183:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「まだ、今日は平気…」
そう答えてエレベーターホールの壁にもたれた。そのまましゃがむ。
…シュッ!ジジジ
煙草が小さく音を立てて燃えた。すうっ…思いっきり吸い込んだ。
「じゃあ【アレ】は出てないんだね?」2005-05-10 03:27:00 -
184:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
優真が念を押すように聞いてくる。
「だぁいじょうぶ!まだそんなに酔ってるわけじゃないし。平気だよー」
「そっか。ならいいんだけど。俺仕事戻るからまたメールするね?」
「うん、ありがとー!また後でね?バイバイ。」2005-05-10 03:39:00 -
185:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
電話を切って、ぼんやり煙草の火を眺める。灰色と白の中から見える、朱色の火。
《キレイ…》
微かに聞こえる誰かの歌声。でもそれ以外は静かで自分には関係ない物のような気がする。
あたしは、優真の言っていた【アレ】というやつが起きそうになるとこうやって逃げた。2005-05-10 03:48:00 -
186:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
それは時々起きた。苦しくって堪らない。
急に不安になる。原因はわからない。胃の辺りが引きつるような、まるでジェットコースターに乗っているような、胸がすぅっとなる感覚。
涙が溢れ出てくる。2005-05-10 03:53:00 -
187:
?ゅりぇ?
完結してほしくない??な?んて??でもサクラさんの小説はホンマに続きが気になります??ハラ??ドキ??無理なく頑張って?サィ??
2005-05-10 05:19:00 -
188:
舞
?しおり?
やっぱり見られてましたか(笑 続き楽しみにしてます(^_-)舞ちゃんには幸せになってほしいなぁ…2005-05-10 14:22:00 -
189:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、完結…でも今回のは思ってたより長くなりそうです?あたしも主人公や登場人物が予想外の事をしたり、言ったりするのでハラ?しながら書いてます?応援ありがとう?
舞さん、見てましたよぉ〜( ̄〜 ̄)ξ笑 冗談はさておき、あたしも舞には幸せになってもらいます?ってかならせる??しおり、ありがとうです???2005-05-10 15:53:00 -
190:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「なにしてんの?」
突然声を掛けられて、あたしは驚いて非常階段の方を見た。そこにはお酒で顔を赤くした主馬が立っている。
「はぁ〜酔った。」
主馬があたしの横に座りながら、頭を抱える。
「スーツ、汚れちゃうよ?」2005-05-10 15:56:00 -
191:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「いいよ、別に。おいで?」
主馬はあたしを横手で抱き締めた。
「…何?急に。なんかあったの?」
あたしの問いに、主馬が肩に顔を埋めながら首を横に振る。2005-05-10 15:58:00 -
192:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「寂しい…」
主馬が呟いた。その声があたしの心に引っ掛かる。「なんで?傍にいるじゃない…。ほら、傍にいるよ?」
あたしはどうしたらいいかわからなくて、主馬の背中に手を廻した。
「違う。舞は傍にいてくれるけど、俺に距離置いてる。俺の事信じてないやろ?こんな仕事してて信じろって言う方がおかしいけど」2005-05-10 16:03:00 -
193:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の言葉の一つ一つがあたしの心に刺さる。図星だった。
あたしは、主馬を信用していない。好きだけど、割り切ろうとしている。でないと辛いから…耐えれないから。
「あたしは…」
その先を続ける事ができない。自分の気持ちを表現できない。2005-05-10 16:06:00 -
194:
削除削除されますた
あぼ~ん -
195:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ちが、う。主馬はあたしが好きなんじゃ、ないよ」 息が詰まりそうになる中で、あたしは吃りながら言った。
「え…?」
主馬が拍子抜けしたように顔をあげた。あたしは、主馬の目をまともに見る事ができない。2005-05-10 16:13:00 -
196:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「だって、主馬はあたしに触れてくれないじゃない」
すうっと息を吸い込む。 泣きそうになる。
「あたしが、汚いからなんでしょう…?」2005-05-10 16:16:00 -
197:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「舞!?」
主馬が驚いたようにあたしの名を呼んだ。
「風俗なんかやってて汚いもんね?触りたくないよね?だって性欲処理してお金もらってさ、汚いよね、気持ち悪いよね?」
―――毒。あたしの内に蓄まったどす黒い汚い毒が吐き出されていく。2005-05-10 16:19:00 -
198:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あたし、主馬が横にいてくれさえいればいいと思ってた。抱き締めてくれなくてもいい、横にいてくれればそれだけでいいって」
止まらない、言葉が、感情が溢れ出てくる。
…やだ、あたし今すごく醜い顔してる。
「…なのに、止まらないの!主馬を独占したくなるの!他の人になんか見せたくない!声も聞かせたくない!触らせたくない!」2005-05-10 16:24:00 -
199:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
最後の方は、泣き声と叫び声が入り交じったような情けない声になっていた。
「舞っ!!」
主馬があたしの肩を掴んで揺さ振る。
「…ごめんね。こんな、醜い…浅ましい。」
体が震える。笑おうとしたけど、声にもならない。2005-05-10 16:28:00 -
200:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あたしは、いらない子でしょう…?」
主馬から身を離した。
…もう、どうでもいいや。何も考えたくない。
「舞…?」2005-05-10 16:31:00