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小説:砂の城

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  • 1:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    フィクションです。よかったら読んでみてください。

    2005-05-03 21:23:00
  • 151:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「鞠香っていうのも本名じゃないの。店名なの。本名は舞っていうんだ。」
    「舞、か。わかった。」
     主馬がゆっくりと噛み締めるように言う。
    「それからね、本当は今日で主馬に会うの最後にしようと思ってたの。」

    2005-05-09 17:34:00
  • 152:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「ふむ、なんで?」
    「主馬に、迷惑かけたくない。あたし、主馬の事好きだから主馬がはっきりしてくれないのが辛い…。」
     語尾が震えた。あたしはいつしか泣いていた。

    「舞…。」

    2005-05-09 17:36:00
  • 153:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     主馬が何か言おうとした。
    「でもねっ、いいの!もういいんだ。」
    《――恐い!!聞きたくない!》
    「舞?聞いて…」
     主馬に拒否されたくなくてあたしは喋り続けた。

    2005-05-09 17:39:00
  • 154:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「いいのっ!!いらない子だもん。…大体、主馬みたいな大人があたしみたいな子供の相手するわけないってわかってたし?はっきり言って迷惑だったでしょ?ごめんね〜?」
     あたしは主馬が口を挟む隙がないようにまくしたてた。泣きながら、無理矢理笑った。

    2005-05-09 17:43:00
  • 155:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     痛い子になればイイ。そうしたら主馬は、あたしを嫌ってくれる。はっきりとした態度で断ってくれるだろう。でも…

    本当は、嫌われたくない。むしろ好いてほしい。

    2005-05-09 17:45:00
  • 156:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    主馬以外いらないの。だけど手に入らないのはわかってるの。
    あなたにとって都合のいい存在でいいって思ってたの。だけどそれに耐えれるほどあたしは大人じゃない。
     でも好きなの。どうしようもないくらい好きなの。

    2005-05-09 17:52:00
  • 157:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「舞っ!!」
    《えっ…?嘘。》
     あたしは主馬の腕の中に居た。
    《主馬に、抱き締められてる…?》
    「俺が、悪かった。」

    2005-05-09 17:55:00
  • 158:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     主馬が辛そうに言った。「本間は嬉しかってん。好きって言ってくれて…。でも俺、人が信用できんから舞の事も信用できんかった。どうせすぐ飽きて離れていくわって、俺の事騙そうとしてるんやって。…でも信用する。舞の事信じる」

    2005-05-09 18:00:00
  • 159:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「主馬…。」
     ウレシイ…だけど、あたしは…。
     脳裏を過る、仕事中の自分。媚びた顔で親父のナニをしゃぶる自分。全身を舐めまわす自分。気持ち良くもないのによがりながら嬌声をあげる自分。

    汚いんだよっ!!!

    2005-05-09 18:43:00
  • 160:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    《あ…。》
    「舞?」
     急に黙り込んだあたしの顔を、主馬が心配そうに覗き込む。

    触れちゃ、いけない。あたしは汚いんだ。

    2005-05-09 18:45:00
  • 161:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「ありがと…。信じてくれて嬉しい。今日はもう帰るね…。」
     あたしは微笑んで、そっと主馬から身を離した。
    「わかった。また夜連絡するな?下まで送るわ。」
     主馬が安心したように灰皿と空き缶を捨てながら、答える。

    2005-05-09 18:48:00
  • 162:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     エレベーターに乗り込む。
    「舞、辛い思いさせてごめん。俺にとってお前はいらない子じゃないから。」
     主馬がそう言って身を屈めた。そっとあたしの頬に手を添える。
     柔らかく、暖かい物があたしの頬を掠めた。

    2005-05-09 18:51:00
  • 163:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     主馬の唇が触れた、そう認識するまで一瞬間が空いた。驚いて主馬の顔をまじまじと見てしまう。
    「何さ?」
     ぶっきらぼうに答える主馬の頬が赤く染まっている。

    2005-05-09 20:24:00
  • 164:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    何故か悲しかった。
     その後も、主馬がそういう素振りを見せる度、何故だかわからないけれど悲しくなった。
    嬉しいのに…悲しい。
    近くに感じて、でも遠く感じた。

    2005-05-09 20:27:00
  • 165:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     最後、と決めていたのに結局あたしは主馬に会いたくなってまたこの店にいる。ホスト用語や営業の仕方も知識が増えた。
     あたしは、間違いなく色営と呼ばれる営業をされているんだろう。

    2005-05-09 20:44:00
  • 166:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     諦めにも似た感情と僅かな期待。そして感じる安心感。
     恋人という関係はいつかは終わりがきてしまうかもしれないけれど、お客とホストという関係なら彼が辞めない限り、終わる事はない。自分を指名してくるお客の気持ちが、今ならわかる。

    2005-05-09 20:47:00
  • 167:

    名無しさん

    ?

    2005-05-09 20:51:00
  • 168:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     優しい奥さんと、子供がいながら週に一回「パチンコに行ってくる」と言って風俗に来ている客。仕事中に抜け出してきて抜いて帰る客。地元に婚約中の彼女を置いて、単身赴任している客。
     みんな相手が居ても居なくても、風俗に来ている。そしてその場だけの疑似恋愛を楽しんだり、店外デートに誘ったりする。

    2005-05-09 20:52:00
  • 169:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    172さん、読んでくれてありがとー???

    2005-05-09 20:53:00
  • 170:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    客に対して嫌悪に近い感情を抱いていた。何故相手がいるのにこんな所に来るのだろう、と。蔑んでいた。
     だけど今ならわかる。結局あたしも主馬との、僅かなお金の上に成り立つ儚い関係に安らぎを感じているのだから。
    客もあたしも、夢が見たいのだ。日常の中で感じる不平不満。それを非日常的な世界に行く事で忘れてしまいたいのだ。

    2005-05-09 21:43:00
  • 171:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     あたしに客を蔑む権利などない。
     贋物の色気。
      贋物の愛情。
       贋物の言葉。
    贋物だからこその魅力。それに酔い痴れるのは、男も女も同じなのだから。

    2005-05-09 21:46:00
  • 172:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「舞…誰とメールしてるん?」
     あたしが携帯をいじっていると、他の席を廻ってきた主馬が座りながら手元を覗き込んだ。
    「んー?この前仕事場の先輩に連れて行ってもらったホスクラの指名した子。」

    2005-05-09 21:50:00
  • 173:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「何それ。聞いてない…」 主馬の顔が曇る。怒ったように、拗ねるように口を尖らす。まるで小さい子供のようだ。
    「あぁ、言ったら怒ると思って。」
    「後でも怒るわ!!浮気ですか〜」
     主馬が恨めしそうにじーっとあたしの顔を見る。

    2005-05-09 21:53:00
  • 174:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「そんなんじゃないよ。」 あたしはそう言って携帯を閉じて鞄の中に投げた。
    「はいっ!もういじりません!」
     そう言って万歳をするように両手をあげる。それを見て主馬は少し機嫌を直したようだった。

    2005-05-09 21:57:00
  • 175:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs



    「ふわ…眠ぃ。。」
     あたしは機嫌を直してまた他の席に行った主馬を見送って、携帯を掴むと店の外に出た。2階分ぐらい下に降りる。たまに店の従業員が外に出てきて電話するからだ。

    2005-05-09 22:00:00
  • 176:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     時刻はもう午前5時を過ぎている。同ビルでまだ開いているのは、主馬の店だけだ。
     店の音は2階下に降りても微かに聞こえてくる。
     あたしは携帯を開いてリダイヤルを押した。

    発信>>>>優真くん

    2005-05-09 22:04:00
  • 177:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     優真、というのはさっきメールをしていたホスト。店の先輩と仲良くなって連れて行ってもらったホストクラブの男の子。入店してまだ半年も経っていないという彼は、初々しさに溢れていた。
     主馬とはまったく違う、正反対のタイプの男の子。マメなタイプで、店にほとんど行っていないのにメールや電話をしてくれる。

    2005-05-09 22:21:00
  • 178:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     営業してくる訳でもなく普通に連絡をくれる。ホスト用語にある、育て、というやつかもしれないけれど、あたしはよく主馬の相談をしていた。

    「はいはーい!もしもし」
     優真が元気よく電話に出た。

    2005-05-09 22:24:00
  • 179:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「優真、おはよー。今電話しても大丈夫?」
    「大丈夫だよ!店ってか俺めちゃ暇だし」
     優真が笑いを含んだ声で喋る。
    「どしたん?なんかあったん?舞ちゃんまた例の口座くんのとこで飲んでるの?」

    2005-05-09 22:27:00
  • 180:

    名無しさん

    舞の源氏名はなんて読むの?
    続き頑張ってください??

    2005-05-10 01:58:00
  • 181:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    185さん、応援ありがとうです?舞の源氏名は鞠香と書いてマリカと読みます?

    2005-05-10 03:00:00
  • 182:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「ん…。馬鹿だよねぇ、意志薄弱で」
     あたしは苦笑いしながらぼやいた。
    「そんな事ないけど、大丈夫?辛くない?」
     優真が心配そうに聞いてくる。その声は静かで、心底あたしを心配してくれている調子だ。

    2005-05-10 03:08:00
  • 183:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「まだ、今日は平気…」
     そう答えてエレベーターホールの壁にもたれた。そのまましゃがむ。
      …シュッ!ジジジ
     煙草が小さく音を立てて燃えた。すうっ…思いっきり吸い込んだ。
    「じゃあ【アレ】は出てないんだね?」

    2005-05-10 03:27:00
  • 184:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     優真が念を押すように聞いてくる。
    「だぁいじょうぶ!まだそんなに酔ってるわけじゃないし。平気だよー」
    「そっか。ならいいんだけど。俺仕事戻るからまたメールするね?」
    「うん、ありがとー!また後でね?バイバイ。」

    2005-05-10 03:39:00
  • 185:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     電話を切って、ぼんやり煙草の火を眺める。灰色と白の中から見える、朱色の火。
    《キレイ…》
     微かに聞こえる誰かの歌声。でもそれ以外は静かで自分には関係ない物のような気がする。
     あたしは、優真の言っていた【アレ】というやつが起きそうになるとこうやって逃げた。

    2005-05-10 03:48:00
  • 186:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     それは時々起きた。苦しくって堪らない。
     急に不安になる。原因はわからない。胃の辺りが引きつるような、まるでジェットコースターに乗っているような、胸がすぅっとなる感覚。
     涙が溢れ出てくる。

    2005-05-10 03:53:00
  • 187:

    ?ゅりぇ?

    完結してほしくない??な?んて??でもサクラさんの小説はホンマに続きが気になります??ハラ??ドキ??無理なく頑張って?サィ??

    2005-05-10 05:19:00
  • 188:

    ?しおり?
    やっぱり見られてましたか(笑  続き楽しみにしてます(^_-)舞ちゃんには幸せになってほしいなぁ…

    2005-05-10 14:22:00
  • 189:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    ?ゅりぇ?さん、完結…でも今回のは思ってたより長くなりそうです?あたしも主人公や登場人物が予想外の事をしたり、言ったりするのでハラ?しながら書いてます?応援ありがとう?
    舞さん、見てましたよぉ〜( ̄〜 ̄)ξ笑 冗談はさておき、あたしも舞には幸せになってもらいます?ってかならせる??しおり、ありがとうです???

    2005-05-10 15:53:00
  • 190:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「なにしてんの?」
     突然声を掛けられて、あたしは驚いて非常階段の方を見た。そこにはお酒で顔を赤くした主馬が立っている。
    「はぁ〜酔った。」
     主馬があたしの横に座りながら、頭を抱える。
    「スーツ、汚れちゃうよ?」

    2005-05-10 15:56:00
  • 191:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「いいよ、別に。おいで?」
     主馬はあたしを横手で抱き締めた。
    「…何?急に。なんかあったの?」
     あたしの問いに、主馬が肩に顔を埋めながら首を横に振る。

    2005-05-10 15:58:00
  • 192:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「寂しい…」
     主馬が呟いた。その声があたしの心に引っ掛かる。「なんで?傍にいるじゃない…。ほら、傍にいるよ?」
     あたしはどうしたらいいかわからなくて、主馬の背中に手を廻した。
    「違う。舞は傍にいてくれるけど、俺に距離置いてる。俺の事信じてないやろ?こんな仕事してて信じろって言う方がおかしいけど」

    2005-05-10 16:03:00
  • 193:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     主馬の言葉の一つ一つがあたしの心に刺さる。図星だった。
     あたしは、主馬を信用していない。好きだけど、割り切ろうとしている。でないと辛いから…耐えれないから。
    「あたしは…」
     その先を続ける事ができない。自分の気持ちを表現できない。

    2005-05-10 16:06:00
  • 194:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 195:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「ちが、う。主馬はあたしが好きなんじゃ、ないよ」 息が詰まりそうになる中で、あたしは吃りながら言った。
    「え…?」
     主馬が拍子抜けしたように顔をあげた。あたしは、主馬の目をまともに見る事ができない。

    2005-05-10 16:13:00
  • 196:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「だって、主馬はあたしに触れてくれないじゃない」
     すうっと息を吸い込む。 泣きそうになる。

    「あたしが、汚いからなんでしょう…?」

    2005-05-10 16:16:00
  • 197:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「舞!?」
     主馬が驚いたようにあたしの名を呼んだ。
    「風俗なんかやってて汚いもんね?触りたくないよね?だって性欲処理してお金もらってさ、汚いよね、気持ち悪いよね?」
     ―――毒。あたしの内に蓄まったどす黒い汚い毒が吐き出されていく。

    2005-05-10 16:19:00
  • 198:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「あたし、主馬が横にいてくれさえいればいいと思ってた。抱き締めてくれなくてもいい、横にいてくれればそれだけでいいって」
     止まらない、言葉が、感情が溢れ出てくる。
    …やだ、あたし今すごく醜い顔してる。
    「…なのに、止まらないの!主馬を独占したくなるの!他の人になんか見せたくない!声も聞かせたくない!触らせたくない!」

    2005-05-10 16:24:00
  • 199:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

     最後の方は、泣き声と叫び声が入り交じったような情けない声になっていた。
    「舞っ!!」
     主馬があたしの肩を掴んで揺さ振る。
    「…ごめんね。こんな、醜い…浅ましい。」
     体が震える。笑おうとしたけど、声にもならない。

    2005-05-10 16:28:00
  • 200:

    サクラ ◆sfmh9zaJHs

    「あたしは、いらない子でしょう…?」
     主馬から身を離した。

    …もう、どうでもいいや。何も考えたくない。

    「舞…?」

    2005-05-10 16:31:00
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