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小説:砂の城
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1:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
フィクションです。よかったら読んでみてください。
2005-05-03 21:23:00 -
40:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
このままでいいと思う自分と、駄目だと叫ぶ自分。
単調でつまらない生活。 なんの刺激もない生活。なのに何故こんなにもあたしは追い詰められた気持ちになるんだろう。2005-05-04 17:57:00 -
41:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
実の親にもいらないと言われたあたし。
友達なんてできても裏切ったり、いじめられたりしたあたし。
せっかく彼氏ができても浮気されたり冷められたりするあたし。
誰にも、必要とされないあたし――2005-05-04 18:01:00 -
42:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
誰か。お願い。必要としてよ。
他の誰でもない、あたしを必要としてよ。
生きてる価値がどこにも見つからないよ。
いらない子なの…?2005-05-04 18:03:00 -
43:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あぁ、【鞠香ちゃん】…いいよ、すごく…あぁッ!」
ドクッ…!!
男のモノが脈打つようにしてあたしの口の中で果てた。2005-05-04 18:06:00 -
44:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
生暖かいどろっとした液体があたしの口いっぱいにだされる。独特の生臭い、えづきそうになる精子の匂い。あたしはできるだけ顔をしかめないようにしながら、ソレをティッシュの中に吐き出して捨てた。
「いやぁ、鞠香ちゃんは評判どおりだねー!すごく良いよ。また指名して来ちゃおうかな。」2005-05-04 18:10:00 -
45:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「本当ですか!?すごく嬉しいっ!じゃあ今度会ったら鞠香、もっとサービスしちゃう!」
にっこりと笑いながらお客をシャワー室に連れて行って簡単に体を流す。
服を着ているお客の横で名刺の裏に、【今日は初めてなのに鞠香を選んで来てくれてありがとう☆また会いにきてね♪】と簡単にメッセージを書く。2005-05-04 18:25:00 -
46:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
上機嫌のお客さんをカーテンの裏まで送って行ってお決まりの送りチュウをして、部屋に戻る。
使用済みのタオルを片付けて、シーツの乱れを手早く直す。
その日は本指名が3本、フリーが2本、後はパネル指名と雑誌指名が1本ずつ。まぁまぁの一日だった。2005-05-04 18:42:00 -
47:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香ちゃーん、お疲れ!今日はもう上がっていいよ!」
店長が機嫌の良い声でコールをしてきた。
「はい。お疲れ様です。」
シーツや、生臭い匂いのするゴミを片付けて、ローションを補充してからシャワーを浴びる。2005-05-04 18:53:00 -
48:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ザァァァァ…
少し熱めのシャワーに身を打たれると、少しだけ疲れが取れた気がした。
蛇口を廻してお湯を留めると、体を拭こうと新しいタオルを手に取った。
「うっ…。」2005-05-04 19:01:00 -
49:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
新しい綺麗なタオル。なのに、生臭い精液の匂いがした。思わず吐きそうになる。
あたしは息を止めて手早く体を拭いた。化粧水を顔と体に塗ってため息を吐く。
…体中からその匂いがする気がする。まるで染み付いているかのように。
堪らなく厭になって香水をふりまいた。2005-05-05 00:21:00 -
50:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
甘ったるい香水をどれだけ振りまいても、あたしの肌に染み込んだこの匂いは消えない。
財布の中にどれだけお金が入っていても満たされない。
この気持ち、どうしたら埋まるんだろう…。2005-05-05 04:57:00 -
51:
?ゅりぇ?
サクラさんの小説ゎぃっも続きが気になります??頑張って?サィ??しぉり?
2005-05-05 07:03:00 -
52:
ゅかり
しぉり?続き楽しみにしてるねぇ??
2005-05-05 07:13:00 -
53:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、また?書き込みありがとうです?頑張って書きますね?
ゅかりさん、しおりありがとうございます???はい、よかったら読んでください?2005-05-05 09:48:00 -
54:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《ローション…OK。シャワーブース…OK。ごみ箱…OK。》
部屋の中を確認してからフロントにコールする。
「お疲れさまでした。」
そのまま私物籠を持って部屋を出る。ロッカールームに立ち寄り私物を置くと、フロントに行って鍵を渡した。2005-05-05 09:52:00 -
55:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「おー、お疲れ様!はい、これ今日の給料ね!」
店長がにっこり笑って給料袋を差し出す。
今日の稼ぎは5万ちょっと。十分だ。中身を取り出して確認しているあたしに店長が独り言のように喋る。2005-05-05 09:55:00 -
56:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「いや〜鞠香ちゃんはすごくサービスがいいって評判だよ!今月もNo.入り目指して頑張ってな!」
「…はい。」
あたしはそう言って微笑んだ。
《別に入りたいわけじゃないけど。》2005-05-05 09:58:00 -
57:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香ちゃん、明日どうする?入れるなら入ってもいいよ?」
店長が手元の出勤表に目を落として聞いてきた。
「いえ、それしちゃうと五連勤になっちゃうんで。それにちょっと疲れちゃったから。」
「そっか、じゃあ明日は予定どおりお休みで!ゆっくり休みな〜」2005-05-05 11:14:00 -
58:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
店を出るともう午前0時を過ぎているというのに、人が多い。
《まだ夜は寒いなぁ…》
そんな事を思いながら、24時間営業の薬局へと足を向ける。と、あたしの携帯が鳴った。2005-05-05 11:21:00 -
59:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
【受信メール・一件】
携帯を取り出してメールを確認する。
【おいっす!おはよ(^_-)俺さっき出勤したぁ☆タクのおっちゃんがあんまりとろとろ走るから遅刻するかと思ってマジ焦った。】
メールの相手は、主馬。一週間前キャッチされて番号を交換した。2005-05-05 11:25:00 -
60:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
【そぅなんだ。ぁたしは今仕事終ゎって薬局に行くとこだょ((o≧∇≦)o゛】
【マジ?今どこ?俺もキャッチで外にいるんだけど】
【主馬くんにキャッチされた交差点のとこだょ☆】2005-05-05 11:55:00 -
61:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香!おっす!おはよー!」
主馬は急いできたのか息を切らしながら駆け寄ってきた。
「おはよ〜キャッチ中なのにいいの?」
薬局へ向かうあたしに当然の様に着いてくる主馬が心配になって聞いた。2005-05-05 12:05:00 -
62:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「平気平気!どーせ俺今日暇だし」
そう言って主馬は両手を上にあげると伸びをした。
「そうなの?」
あたしの中でホスト、しかもNo.2クラスになると常に店に居て、お客さんが何人も来ていてシャンパンを卸しまくっているというイメージがあった。2005-05-05 12:22:00 -
63:
☆
読んでるよ?
2005-05-05 12:49:00 -
64:
ぷー ◆3GeKd17wBo
読んでるょォォ?頑張って?
2005-05-05 14:05:00 -
65:
?桜?
しおり?
2005-05-05 17:44:00 -
66:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
☆さん、読んでくれてありがとう??
ぷーさん、応援ありがとう?ゆっくりだけど書いていきますね?
?桜?さん、しおりありがとうです???2005-05-05 18:50:00 -
67:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
その思っていたイメージをそのまま主馬に伝えると、主馬は苦笑いを浮かべた。
「そんなにうまくいかへんって〜!!みんな今日は無理って言ってるし、俺今日仕事する気ない〜。」
「ふぅん、そぉなんだ。」2005-05-05 18:57:00 -
68:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
なんとなく、だった。薬局で化粧水や洗い流さないタイプのトリートメントを見ながらふと思いついた。
《行ってみようかな…。ホストクラブ。》
「主馬くん。」2005-05-05 18:59:00 -
69:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ん〜?」
主馬はCMでよく流れているメーカー物のワックスを手に取りながら、生返事をする。
「そんなに暇なら今日行ってみようか、主馬くんのお店。」
「まじで!?」2005-05-05 19:03:00 -
70:
舞
サクラさんの小説発見!!初めから一気に読みました♪続き楽しみにしてます(^_-)
2005-05-05 20:55:00 -
71:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
舞さん、お久しぶりです?今回の主人公の名前も舞なのでよかったら読んでやってください???
2005-05-06 14:54:00 -
72:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬は驚いたようにワックスを持ったまま駆け寄ってきた。
「いいの!?」
「いいよ〜明日休みだし」
「やった!」
主馬が嬉しそうに笑った。その笑顔はあたしより7つも年上とは思えなかった。2005-05-06 15:12:00 -
73:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「じゃあ…これ買ったら行こうか。」
主馬が子供みたいにはしゃぐので、あたしはくすくす笑いながら買い物かごを持ってレジに並んだ。
「俺持つわ〜」2005-05-06 15:53:00 -
74:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あぁ、ありがと。」
主馬は上機嫌で鼻歌なんか歌いながらあたしの荷物を持ってくれた。
二人でぶらぶらしながら店まで歩いた。
主馬の店は繁華街の大きなビルの中にあって、どうやらそのビルはスナックやラウンジ、バーなどが入っているらしく有名なのだと聞かされた。2005-05-06 16:03:00 -
75:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「このエレベーターとろいねんよ〜」
主馬がごめんねとでもいうように苦笑いしながらエレベーターに乗り込んで、ボタン押しながら呟いた。
あたしは初めて行く場所に緊張していた。緊張して顔が強ばっていたのか、主馬がひょいっとあたしの顔を覗き込んだ。2005-05-06 16:32:00 -
76:
名無しさん
??
2005-05-06 17:28:00 -
77:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
79さん、読んでくれてありがとうです?
2005-05-06 18:24:00 -
78:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「どーした?やっぱ無理か?」
心配そうに聞いてくる。「え、大丈夫だよ!」
あたしが笑顔で答えると主馬は安心したように笑った。
エレベーターが主馬の店の階に止まった。2005-05-06 18:32:00 -
79:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
店は最上階の端にあった。主馬が重そうなドアを開ける。
「いらっしゃいませぃ!」
主馬が大きな声で叫んだ。
「どうぞ?」2005-05-06 21:34:00 -
80:
?ゅりぇ?
?しぉり?
2005-05-06 21:40:00 -
81:
舞
?しおり?
サクラさん覚えてて下さったんですね?嬉しいな?続き楽しみにしてます?2005-05-07 02:39:00 -
82:
?桜?
しおり??
2005-05-07 06:37:00 -
83:
TTT ◆Mjk4PcAe16
サクラさーんお久しぶりですTTTです☆新作だぁ〜ゥレチィ(人´∀`*)
2005-05-07 08:47:00 -
84:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、またまたしおりありがとうです?
舞さん、覚えてますよ?しおりありがとでーす??2005-05-07 09:28:00 -
85:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?桜?さん、しおりありがとです??どうでもいいですけど?散っちゃいましたねぇ??
TTTさん、お久しぶりです!アウトサイド、こっちに移してるんですか?(・・?)サクラも新作頑張るので、TTTさんの新作を期待してます☆★☆2005-05-07 09:31:00 -
86:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おっかなびっくり、という言葉が相応しいようにあたしはお店の中に足を踏み入れた。
薄暗い照明の下で見る主馬は堂々としていて、あたしはひどく場違いな気分になる。ノーブランドのジーンズに黒のTシャツ、カーキ色のジャケットにミュール姿の自分がやたら浮いているように感じた。2005-05-07 09:39:00 -
87:
名無しさん
????
2005-05-07 11:21:00 -
88:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
90さん、読んでくれてありがとです??
2005-05-07 21:12:00 -
89:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の店は入ると左手にカウンターがあって、奥に行くと急に広くなっている作りで席が約10席ほどある。その奥の方、壁よりの席にあたしは案内された。
「何飲む?えと、料金は初回料金って言って一時間千円ね?で、初回のお客さんは焼酎、ブランデー、ソフトドリンクが飲み放題なんだけど。」2005-05-07 21:29:00 -
90:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「じゃあ…焼酎でいいや。水割りでいいよ。レモン入れてほしいんだけど…」
主馬はいいよと答えるとおしぼりとペールに入った氷を持ってきたホストに、それを伝える。そのホストは「わかりました。」と答えて、裏に引っ込んだ。2005-05-07 21:32:00 -
91:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おしぼりを持ってきてくれたホストが、今度は黄色いガラス製の焼酎のボトルと、グラス。それにレモンが入ったガラス製の醤油入れのような物を持ってきてくれた。
主馬が手早く水割りを作ってくれた。
「じゃあまぁ鞠香ちゃんのホスクラデビューに乾杯!」
そう言ってあたしのグラスより、自分のグラスを下にして乾杯した。2005-05-07 21:41:00 -
92:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬がおいしそうに水割りをごくごく飲み干す。あたしは緊張のせいかやたらと喉が乾いていたので、半分ほど一気に空ける。
「お!飲むなぁ。」
と、主馬が嬉しそうに笑って言った。
「そーいやさ、鞠香ちゃんって仕事何してんの?」
主馬がなんでもないかのように聞いてきた。2005-05-07 21:51:00 -
93:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「え…」
あたしは言い淀んだ。風俗、とは答えづらい。
「スナックだよ。」
多分、主馬にはばれていたかもしれない。でもあたしは嘘を吐いた。
「そうなんや、じゃあお酒強いんじゃない?今日は飲も飲も!」2005-05-07 21:55:00 -
94:
?ゅりぇ?
更新されてる????続き楽しみにしてます????しときま??す??しぉり
2005-05-08 04:50:00 -
95:
?桜?
しおり??
今年は、遅く咲いて、早くちってもたね?シクシク?2005-05-08 05:30:00 -
96:
名無しさん
?
2005-05-08 05:41:00 -
97:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、あげてくれてありがとー??ホスクラ帰りの朝日は目に染みます??
?桜?さん、しおりありがとです?お花見する間もなかったですね??
99さん、読んでくれてありがとう??2005-05-08 07:11:00 -
98:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「うん。」
経験上、水商売もした事がある。まぁまぁ飲める方だと思っている。
「ってか鞠香ちゃんっていくつだっけ?」
「18だよ。」
あたしはさらっと嘘を吐いた。2005-05-08 07:16:00 -
99:
削除削除されますた
あぼ~ん -
100:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
何を話したか覚えていない、だけどあたしは閉店時間までお店にいた。
会計を済ませて店を出る。主馬が送ってくれるというので、駅までの道を二人でのんびりと歩く。
通勤するスーツ姿のサラリーマンやOLの中であたしたちは完璧に浮きまくっていた。2005-05-08 10:09:00 -
101:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
スーツに茶髪の彼の姿はひどく朝にそぐわない。あからさまに遠慮ない目でジロジロと見ていく人もいる。本人は至って気にしていないようだが…。
「また後でメールするわ〜俺店戻るな?」
主馬はにこにこ笑いながらあたしが見えなくなるまで手を振っていてくれた。2005-05-08 10:16:00 -
102:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
駅に着いて切符を買う。人の流れとは逆に動いて電車に乗った。一駅だから座るつもりはない。ゆったりとした独特の揺れに身を任せながら、窓の外を眺めていた。
非日常的な世界に足を踏み入れた事が、何故か信じられなかった。現実味がない。だけど口の中に残るお酒の味は現実だ。2005-05-08 10:21:00 -
103:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
《まぁまぁ楽しかったけど多分もう一回行く事はないだろうな…》
そう思いながら電車を降りる。改札を抜けてタクシーに乗り込んだ。
2005-05-08 10:24:00 -
104:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
―――ドンッ!!
あたしがカウンターに叩きつけるようにグラスを置いた音に、周りのお客が驚いたようにこっちを見た。
今、あたしは行きつけのショットバーにいる。
「鞠香ちゃん今日荒れてるねー。どうしたん?」
仲の良いバーテンダーが苦笑いしながら聞いてくる。2005-05-08 10:38:00 -
105:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「別に…なんでもないよ。帰るわ。ご馳走様。」
会計して店を出る。夏と言えど、夜風は火照った体に心地よい。
《どうしよ…行くとこないや…。寮に帰るのは嫌だしなぁ。》
と、ぼんやり考えていると携帯が鳴った。2005-05-08 10:48:00 -
106:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
誰からかも確認せずに電話に出る。
「…もしもし?」
苛々しているせいかつい声を荒立ててしまう。
「おぉ〜おはよぉ、ってかなんか怒ってるんか?」
電話の主は主馬だった。「ごめん、ちょっと仕事で嫌な事あってさ、バーで飲んでたから…」2005-05-08 12:05:00 -
107:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「そっか…もう帰るんか?」
「ううん。…久しぶりに主馬の顔見に行こうかな!」
「マジで?迎えに行くわ」…これが主馬の店に通うようになったきっかけだ。2005-05-08 12:10:00 -
108:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そして今に到る。
あたしがどれだけ好きになっても手に入らない人。
彼にわかってもらうには店に通うしかない…例えお客としてしか接してくれなかったとしても。例えあたしの想いに応えてくれなかったとしても。2005-05-08 12:16:00 -
109:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬。好きだよ。すごく、好き。…大好き。
ねぇ、一度でいいから…
あたしを抱き締めて2005-05-08 12:17:00 -
110:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
略部分。
あたしを抱き締めて2005-05-08 12:18:00 -
111:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
諦めずにずっと通っていた。店からの帰り、送ってもらう途中で主馬に告白するのが日課になっていた。
「…だから、俺なんかやめときって言ってるやん?」主馬が困ったように呆れたように笑いながら言う。
「だって好きになったもんはしょうがないじゃない」あたしは負けじと答える。 主馬がため息をつきながらしゃがみ込む。2005-05-08 12:22:00 -
112:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
途端に不安になる。嫌われたんじゃないかって。うっとおしいんじゃないかって。
「ごめん、主馬。…嫌いになる?」
あたしは俯いて呟く。涙が出そうになる。それを堪える為に、唇を噛み締めた。2005-05-08 12:24:00 -
113:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「嫌いとか…そんなんじゃないけど。俺、自分に自信ないねん。どこがいいん?さっぱりわからん。」
主馬が静かに言った。
「全部!優しいとこも、本気で心配してくれるとこも、仕事に対して真面目なとこも、全部全部好きだよ?」
あたしは主馬にわかって欲しくて、必死になって喋った。2005-05-08 12:28:00 -
114:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「…ありがと。」
主馬が嬉しそうに微笑んで立ち上がった。
「かず…ま。」
あたしは囁くように名前を呼んで、彼の胸に顔を埋める。汗と煙草と香水の交じった匂い。あたしが今一番大好きな、匂い。でも彼は抱き締めてはくれない。腰に手を回す事すらしてくれない。両手はズボンのポケットに突っ込まれたままだ。2005-05-08 12:33:00 -
115:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめん、俺店に戻らなきゃ」
主馬はそれだけ言うとあたしからそっと離れた。
「またメールする。」
あたしに背を向けて主馬は店へと走って行く。あたしは彼の姿が見えなくなるまで、その背中を見つめていた。2005-05-08 12:36:00 -
116:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の姿が見えなくなるとあたしはその場に座り込んだ。ビルの壁にもたれる。
煙草を取り出して火を付けようとする手に一粒の水滴が落ちた。
《雨…》
ポツリ、ポツリと降りだしたそれはやがて本格的に降り始める。2005-05-08 12:41:00 -
117:
名無しさん
?
2005-05-08 15:37:00 -
118:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
120さん、書き込みありがとで?す?
2005-05-08 17:00:00 -
119:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしの頬に、堪えていた涙が伝い落ちる。
《雨…か。ちょうどいいや。》
…全部流れてしまえばいい。あたしのこの涙も、主馬への想いも。雨が全てを流しきってくれればいい。
はっきりとしない主馬の態度も、それに対するあたしの中の苛立ちも、全て流れてしまえばいいのだ。そうすればこんなに苦しい想いもしなくて済むのに。2005-05-08 17:34:00 -
120:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
いつまでも降り続ける雨の中で、あたしは人目も気にせず泣いた。声を押し殺して泣き続けた。
《なんで、こんなに切ないんだろう。》
あたしの知っている恋は相手の事を考えるだけで、胸が熱くなるようなワクワクするものだった。2005-05-08 17:36:00 -
121:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
それが今では苦しい。心臓を鷲掴みにされたような苦しさ、息が、できなくなる。主馬の事を考えただけで泣きたくなる。
まだ幼かった私。それが本物の恋というものだという事に、すぐには気付かなかった。2005-05-08 17:39:00 -
122:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
決してあたしを拒まない彼。だけど完璧に受け入れもしない彼。
《あたしの事、どう思ってるの?》そんな簡単な質問もできない。恐い…。
拒絶しないで。愛してよ。嫌わないで。受け入れて。あたしを認めてよ。必要として。例えそれがお客でも構わないから。2005-05-08 17:43:00 -
123:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そんな状態が半月以上続いた。精神的に限界だった。幼すぎるあたしの心は、時間をかける、という行為に耐えきれなくなってきていた。
「ねぇ、好きか嫌いかはっきりしてよ。」「信じてよ、裏切ったりしないから。離れないから。」「主馬が好きなの。お店以外で会えなくても我慢するから。」2005-05-08 17:46:00 -
124:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
もう飽きる程繰り返した言葉。そしてそれに返される言葉も聞き慣れたものになっている。
「あかんって。俺は鞠香ちゃんが思ってる程良い人間じゃないから。」「俺はおかしい人間やから。壊れてるから自分がしんどいだけやで?」「彼女になっても店に呼ぶで?俺そうやって尽くしてもらわな不安やから。」2005-05-08 17:50:00 -
125:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
そこまで言われているのに、何故かあたしは離れなかった。彼を追い続けた。
そんなあたしに根負けしたのか、彼はぽつぽつと過去の話をしてくれた。
ホストになった理由。初めての接客で色枕しかできなかった時代。彼女ができても長続きしなかった事。家族構成、自分が家族や親類の中でどういう立場なのか全て話してくれた。2005-05-08 17:54:00 -
126:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
初めて風嬢と付き合った時の事。別れた理由、別れる時に言われた台詞。
「どうせホストやから。」それが何度も続いて人間不信になった事。
話を聞き終わった時、店はもうラストソングが流れていた。2005-05-08 17:57:00 -
127:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしは以前、自分の過去の話をした事があった。その時に彼はあたしの事を理解してしまった。そして彼の過去を聞いた今、あたしも彼を理解した。
どちらかが病めば、慰めるもう一人も間違いなく病む。そして今度は慰められていた方が慰める。悪循環の関係。
だけど全てを理解してしまう、そして理解してくれるから離れられない。2005-05-08 18:07:00 -
128:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
だけどもうあたしには後戻りできなかった。例えこの先、彼があたしを金だけの女としか見てくれなくても、構わない。彼がホストである限り、あたしは彼から離れない。
彼以外いらない。他の誰も。親なんてとっくの昔に縁を切っている。友達とはとても言えないような、携帯のメモリを埋めるだけの人間なんていらない。
主馬だけでいい――2005-05-08 19:47:00 -
129:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
いつからだろう。主馬があたしを見る目が変わった。以前は恐い物でも見るかのような目だったのに、最近ひどく優しい目をする。
まるで…まるで愛しいモノを見るかのように、あたしを見る。錯覚しそうになる。勘違いしそうになる。2005-05-08 19:50:00 -
130:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
だけど、遅いよ。あたしはもう疲れてしまった。はっきりしてくれないあなたに。
知り合ってたかだか3ヵ月ちょっとなのに、結論を急ぎすぎかもしれないけど、あたしは疲れてしまった。だから今日でおしまい。もうあなたには会わない。連絡もしない。2005-05-08 19:54:00 -
131:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
おかしいね、離れないって思ってたのに。だって主馬、あたしこのままじゃ壊れちゃうよ。。あなたに迷惑かけてしまう。すごく嫌な人間になってしまう。
ごめんなさい…。許してね。
だから、そんな風に見つめないで、微笑まないでよ。2005-05-08 19:57:00 -
132:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
離れられなくなるじゃない
2005-05-08 19:58:00 -
133:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「うっ!!――げほっ!」 最後と決めて、あたしはけじめをつけるつもりでシャンパンを卸した。
《調子に乗って飲み過ぎた…最悪》
一体どれくらいの時間トイレに閉じこもっているのだろう…。もう何度も出ようとするけど、気分が悪いし、足に力が入らない。2005-05-08 20:02:00 -
134:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ガチャガチャ。
トイレのドアを開ける音がお酒でぼんやりとした頭に響いた。
「鞠香〜?大丈夫か?」
あたしはみっともない姿を見られるのが嫌で立ち上がろうとした。
《――!!》2005-05-08 20:05:00 -
135:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「危ないっ!!」
倒れる!そう思った瞬間、まさに間一髪という所で主馬に支えられた。
「大丈夫か?今日めちゃ飲んでたもんな。」
主馬が笑いながらよしよしとあたしの頭を撫でた。あたしは体重をほとんど主馬に預けるようにしてトイレから出る。2005-05-08 20:09:00 -
136:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
もうお客さんは全員帰っていて、席も綺麗に片付けられていた。
「お〜鞠ちゃんが復活したぁ!」「大丈夫かぁ?」「まさかトイレで寝てた系?笑」
本当はもう帰りたいだろうに、従業員達は口々に声をかけてくれる。2005-05-08 20:12:00 -
137:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめんね?」
あたしは心配そうに声をかけてくれた従業員達に謝った。
「ぜーんぜん!」「そうそう気にすんなって、俺の客に比べたら可愛いもんやで〜?寝るだけやもん、俺の客なんて暴れるわグラス投げるわやもん!」「あ〜、誰かさんやろ?笑」2005-05-08 20:15:00 -
138:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あー、店長?今日俺鍵閉めますわ。コイツ送ってから帰りますんで。」
主馬があたしの横に座りながら叫んだ。
「ほい、了解。ほな鞠香ちゃんまたね〜?」
店長が主馬に鍵を渡しながら笑顔であたしの顔を覗き込んだ。2005-05-08 20:51:00 -
139:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
他の従業員達も、口々に「主馬さん、お疲れっす〜」「鞠ちゃんバイバイ!」と言いながら出て行った。BGMも流れていない静かな店内に二人っきりになる。
音楽が流れていないだけで、照明が一番明るくなっているだけで、人がいないだけで場所はこうも変わるのだろうか。2005-05-08 20:54:00 -
140:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
ブーンとまるで唸るように鳴る冷蔵庫の音まで聞こえてくる。重苦しいほどの沈黙。静寂があたしたちを包む。
《何か言わなくちゃ。》
そう思ってもあたしは何も言葉が見つからない、いや、むしろ話したい事はたくさんある。だけどありすぎて何から話したらいいのかわからない。2005-05-08 20:59:00 -
141:
?ゅりぇ?
また更新してぁりゅ???最近θ課になってます??しぉり?
2005-05-08 22:25:00 -
142:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
?ゅりぇ?さん、ありがとぉ??日課かぁ〜じゃあなかなか完結できないね…?
2005-05-09 00:11:00 -
143:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「鞠香。」
先に沈黙を破ったのは主馬だった。
「…なぁに」
名前を呼ばれて少しお酒が醒めた。
「なんかさ、言いたい事があるんじゃない?」2005-05-09 00:18:00 -
144:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
言い当てられて、胸が騒めく。
《どうしよう。言ってしまおうか。》
「ないの?俺の勘違いかな?」
「ううん!当たってる。言いたい事があるんだけど…多すぎて何から言ったらいいのかわからないの。」2005-05-09 00:20:00 -
145:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「頭に浮かんだ事からでいいよ。」
主馬はそう言ってもう一本お茶と灰皿を二つ持ってきてくれた。煙草を取り出すと、一本渡してくれた。KOOL MILDS、お揃いの煙草。ライターでお互いの煙草に火を点けあう。2005-05-09 00:24:00 -
146:
舞
?しおり?
主人公と名前同じだし、何年か前の私と被る部分があるのでかなり感情移入して読んでます?もしかしてサクラさんにどこかで見られてたのかな!?(笑2005-05-09 00:46:00 -
147:
?桜?
しおり?_
2005-05-09 00:57:00 -
148:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
舞さん、そうなんです?実は影から(・_・|コッソリ覗いてたんです?笑
?桜?さん、しおりありがとうです??2005-05-09 16:22:00 -
149:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「あのね…あたし本当はスナックで働いてるんじゃないの。風俗なんだ。」
「うん。」
「それでね、歳も18じゃないの、17なんだ…。」
「そっか…。」2005-05-09 17:29:00 -
150:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
断片的に話すあたしの言葉に、主馬は促すわけでもなく優しく相づちを打ってくれる。
「汚いって思われたくなくて嘘ついてたの。ごめんなさい…。」
「いいよ。」
主馬はにっこり笑ってあたしの頭を撫でてくれる。2005-05-09 17:31:00