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小説:砂の城
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1:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
フィクションです。よかったら読んでみてください。
2005-05-03 21:23:00 -
111:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
諦めずにずっと通っていた。店からの帰り、送ってもらう途中で主馬に告白するのが日課になっていた。
「…だから、俺なんかやめときって言ってるやん?」主馬が困ったように呆れたように笑いながら言う。
「だって好きになったもんはしょうがないじゃない」あたしは負けじと答える。 主馬がため息をつきながらしゃがみ込む。2005-05-08 12:22:00 -
112:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
途端に不安になる。嫌われたんじゃないかって。うっとおしいんじゃないかって。
「ごめん、主馬。…嫌いになる?」
あたしは俯いて呟く。涙が出そうになる。それを堪える為に、唇を噛み締めた。2005-05-08 12:24:00 -
113:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「嫌いとか…そんなんじゃないけど。俺、自分に自信ないねん。どこがいいん?さっぱりわからん。」
主馬が静かに言った。
「全部!優しいとこも、本気で心配してくれるとこも、仕事に対して真面目なとこも、全部全部好きだよ?」
あたしは主馬にわかって欲しくて、必死になって喋った。2005-05-08 12:28:00 -
114:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「…ありがと。」
主馬が嬉しそうに微笑んで立ち上がった。
「かず…ま。」
あたしは囁くように名前を呼んで、彼の胸に顔を埋める。汗と煙草と香水の交じった匂い。あたしが今一番大好きな、匂い。でも彼は抱き締めてはくれない。腰に手を回す事すらしてくれない。両手はズボンのポケットに突っ込まれたままだ。2005-05-08 12:33:00 -
115:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
「ごめん、俺店に戻らなきゃ」
主馬はそれだけ言うとあたしからそっと離れた。
「またメールする。」
あたしに背を向けて主馬は店へと走って行く。あたしは彼の姿が見えなくなるまで、その背中を見つめていた。2005-05-08 12:36:00 -
116:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
主馬の姿が見えなくなるとあたしはその場に座り込んだ。ビルの壁にもたれる。
煙草を取り出して火を付けようとする手に一粒の水滴が落ちた。
《雨…》
ポツリ、ポツリと降りだしたそれはやがて本格的に降り始める。2005-05-08 12:41:00 -
117:
名無しさん
?
2005-05-08 15:37:00 -
118:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
120さん、書き込みありがとで?す?
2005-05-08 17:00:00 -
119:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
あたしの頬に、堪えていた涙が伝い落ちる。
《雨…か。ちょうどいいや。》
…全部流れてしまえばいい。あたしのこの涙も、主馬への想いも。雨が全てを流しきってくれればいい。
はっきりとしない主馬の態度も、それに対するあたしの中の苛立ちも、全て流れてしまえばいいのだ。そうすればこんなに苦しい想いもしなくて済むのに。2005-05-08 17:34:00 -
120:
サクラ ◆sfmh9zaJHs
いつまでも降り続ける雨の中で、あたしは人目も気にせず泣いた。声を押し殺して泣き続けた。
《なんで、こんなに切ないんだろう。》
あたしの知っている恋は相手の事を考えるだけで、胸が熱くなるようなワクワクするものだった。2005-05-08 17:36:00