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ハナ
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1:
名無しさん
ハナが、口の右端だけを上げて笑う。
何か企んでいる証拠。2006-11-27 03:04:00 -
251:
紅音◆LTrx1cGfeo
SIDE ハナ
2007-01-16 06:35:00 -
252:
名無しさん
なぁ、准ちゃん。
あたしを怒る?
2007-01-16 06:37:00 -
253:
名無しさん
准ちゃん。准ちゃん。
准ちゃんは、あたしのことを黒猫みたいって言ったけど
准ちゃんだって、猫みたいだったよ。
雪みたいに真っ白な白猫。2007-01-16 06:37:00 -
254:
名無しさん
准ちゃん。
もしもあたしが黒猫で
もしも准ちゃんが白猫だったら
あたし達は
幸せになれたと思う?2007-01-16 06:38:00 -
255:
名無しさん
それとも
誰よりも先に、准ちゃんに出会えてたら、あたしは変われてたんかな。
2007-01-16 06:39:00 -
256:
名無しさん
そっと、枕と、准の頭の間にあった右腕を抜く。それから、そのまま音を立てないように冷たい床に足を降ろした。
あっという間に暖まっていた体温が下がる。
寒い寒い冬の朝。
大嫌いな季節。
2007-01-16 06:40:00 -
257:
名無しさん
寝癖だけ直して、スッピンをサングラスで隠して准の家を出た。
冬なのにサングラスって…まぁいっか。
コートの隙間から入ってくる風がうっとおしくて、あたしは急いでタクシーを捕まえた。目的地を口速に伝えた後は、窓から見える流れる景色に集中した。2007-01-16 06:41:00 -
258:
名無しさん
−…なんか、やっぱ。
小さいよな、人間って。
2007-01-16 06:42:00 -
259:
名無しさん
今まで意識したことなんてなかったはずなのに、やたら足音が響く廊下を擦り抜けて、もうちょっとで契約が切れるだろう自分の部屋の鍵を開けた。
業者が来るのは3時半。あと一時間ちょっと。2007-01-16 06:42:00 -
260:
名無しさん
たかが一週間帰ってきてなかっただけの自分の部屋に、やけに馴染めないまま、部屋の整理にかかる。
とはいっても、全部。
‘いらないもの’−…2007-01-16 06:43:00 -
261:
名無しさん
そう、付き合っていた。
咲君とは。
2007-01-16 06:46:00 -
262:
名無しさん
昨日は准に、気付けば嘘をついていた。別に、隠そうと思ったわけじゃなかった。自分でも不思議だった。
2007-01-16 06:46:00 -
263:
名無しさん
CRUWで働きはじめたと同時に、居場所がなかったあの家は出た。もともとあたしは、『住む所なら用意するから!』そういった咲君のあの言葉に、付いていったようなもんだったから。
《北新地》や《CRUW》が、どんな所なのかも知らなかったあの時のあたしは、このマンションを見た瞬間、とんでもない世界に飛び込んでしまったかもしれないと、速攻で後悔したっけ。2007-01-16 06:48:00 -
264:
名無しさん
半年前。
咲君と出会った、夏が始まりだしたあの日まで、
あたしは、夜の世界っていうものを何一つとして知らなかった。2007-01-16 06:50:00 -
265:
名無しさん
例えば、ピラミッド型の天辺に立つ金持ち達を。
例えば、口から出る言葉全てに嘘が交じる会話を。
例えば、どうみても本物の嬢と客の疑似恋愛を。
例えば、嫉みでしかない噂と批判で埋め尽くされたサイトを。
例えば、ありえない程もらえる価値のない大金を。2007-01-16 06:51:00 -
266:
名無しさん
例えば、『色管理』と呼ばれる黒服達の仕事を。
そう、多分。あたしが騙してきたお客さん達と同じように、あたしは騙されていたんだろう。咲君に。
よく考えればわかっていたことなのに。2007-01-16 06:51:00 -
267:
名無しさん
−ヘルプ周りばかりの時
『頑張れ!応援してる!』
最初は只の担当ボーイとしての励まし。がんばろうって思えた。2007-01-16 06:54:00 -
268:
名無しさん
ナンバーが見えてきた時
『頑張ってるなぁ!その調子やで!さすが俺が見込んだだけはある!』
《特別》を匂わせる、の彼の励まし。もっと頑張ろうと思えた。2007-01-16 06:54:00 -
269:
名無しさん
−ナンバーに入りだした時
『好きやで。お前だけは特別。だから、お前も俺を支えて?頑張って。』
‘彼氏’としての励まし。もっともっと、頑張ろうと思えた。2007-01-16 06:55:00 -
270:
名無しさん
もうとっくに、最愛の人になっていた。
2007-01-16 06:56:00 -
271:
名無しさん
そしてあたしは、三ヶ月で、NO1にまで上り詰めた。同時に、同棲生活も始まる。
だけどNO1になることよりも、NO1を維持することのほうが、数倍きつかった。2007-01-16 06:57:00 -
272:
名無しさん
だけど、咲君とお揃いの携帯だった。
だけど、家に帰りさえすれば彼が待っていてくれた。
何よりも、彼が好きだった。だから、頑張れた。2007-01-16 06:58:00 -
273:
名無しさん
『むっちゃ好きやってん。むーっちゃ。』−…
日が落ちれば嘘ばかりつくこの口も、昨晩准ちゃんに発したあの言葉だけは、嘘なんかじゃなかった。
2007-01-16 07:00:00 -
274:
名無しさん
来てみたものの、結局持って帰るものなんて一つもないこの部屋で、あたしは物思いにふけって時間を潰す。
思い出したくない過去を、思い出してしまう時間はまだ十分にあった。
2007-01-16 07:00:00 -
275:
名無しさん
2007-01-16 07:01:00 -
276:
名無しさん
なぁ准ちゃん。
黒い嘘ばかりで塗り固められた夜の世界は、想像以上に汚かったよ。
だけど
あたしはもっと汚い。2007-01-16 07:02:00 -
277:
名無しさん
准ちゃん。
だから、やっぱり夜の世界はあたしに向いてるねん。
だって、黒は黒でしか塗り潰せない。
そうやろ?2007-01-16 07:03:00 -
278:
名無しさん
2007-01-16 07:03:00 -
279:
名無しさん
咲君と、准は正反対だ。
男らしくて、きつめの顔立ちの咲君。幼さが残る、女の子みたいにかわいい准。
頭が良くって、何だって簡単にやってのける咲君。努力家で、ただひたすら頑張る准。2007-01-16 07:04:00 -
280:
名無しさん
かっこいい大人の男、
咲君。
可愛い年下の男の子、
准ちゃん。2007-01-16 07:05:00 -
281:
名無しさん
だけど一つだけ、笑った顔が、二人は似ている。
きれいな顔を、くしゃって歪まして、やんちゃに笑ったその顔が、二人は似ている。
−…なんて、二人を比べて、あたしは何がしたいんだろう。2007-01-16 07:08:00 -
282:
名無しさん
だけど、咲君と過ごしたこの部屋を片付けて、あたしが帰るのは今
−…准ちゃんの部屋しかない。
2007-01-16 07:09:00 -
283:
名無しさん
たった一週間前のあの日。
‘枕’と呼ばれる行為をあたしはした。2007-01-16 07:10:00 -
284:
名無しさん
相手は、あたしの一番の太客で、彼はあたしをNO1にしてくれた。彼がいなければあたしはNO1にはなれなかった、そんな人だった。本当の名前なのかどうか、真実は知らない。だけどあたしは、宮崎さんと呼んでいた。
きっかけなんて、些細なことだ。今では思い出せないような小さな理由で、あたしは咲君とケンカをしていた。その日は仲直りしないまま、宮崎さんと同伴するため家を出た。2007-01-16 07:11:00 -
285:
名無しさん
待ち合わせ場所は、いつも通りの店の近くにあるBARで、相変わらず出勤前からお酒を飲まされた。
ただ、宮崎さんがいつもと少し違うことには気付いていて、それが確信に変わる直前に、それ系の言葉を投げ掛けられた。
笑ってかわせる雰囲気ではなく、断れば切れるんだろうなってことも、なんとなくわかった。2007-01-16 07:12:00 -
286:
名無しさん
それでも、あたしは咲君が好きで。そんなこと出来る訳ない。
断ろうと、カウンター席から立ち上がろうとした、その瞬間−…
さっきケンカした時の、咲君の冷たい顔が頭に浮かんだ。何故か。2007-01-16 07:13:00 -
287:
名無しさん
そして気付けば、頷いていたのだ、あたしは。
2007-01-16 07:14:00 -
288:
名無しさん
そう、咲君が好きだった。あたしの売り上げが落ちることは、店の売り上げが、彼の成績が落ちることになる。
いや、そんなことより−…捨てられるのが、恐かったのかもしれない。
あの、雪のように冷たい表情で。
2007-01-16 07:14:00 -
289:
名無しさん
長いだけのSEXは、気持ち良くも何ともなくて、ただ、SEXの間中、咲君のあのくしゃってなる笑顔と、あの冷たい表情を、順番に思い出していた。
あたしが体を売ったのは、金の為なんかじゃない。
咲君の為だ。2007-01-16 07:15:00 -
290:
名無しさん
そんなことを頭の中で繰り返しながら、念入りに体を洗った。
お風呂から出ると、満足そうに笑う、気持ちの悪い宮崎が、札束を渡そうとしてきたけど、受け取らなかった。ただただ、『死んでしまえ』って、祈りながら、笑って断った。
だけど祈りは通じず、そしてそれは不覚にも宮崎を喜ばせることになった。じゃぁ今からでも店に行こうと誘われたけど、あたしはそれすらも断り、店に連絡も入れないまま家に帰った。2007-01-16 07:16:00 -
291:
名無しさん
『咲君…、咲君。』頭の中は、最愛の彼だけでいっぱいだった。そうしなければ今にでも、あたしはあの暗い闇に引きずり込まれてしまう。あんな思いは、もう二度としたくない。
早く、早く。
今すぐ家に帰ろう、あたしと咲君の二人の家に…2007-01-16 07:17:00 -
292:
名無しさん
そしてもう一度シャワーを浴びて、咲君と同じシャンプーの匂いで体を包もう。
咲君とお揃いのあのマグカップに、咲君が大好きな甘いミルクティーを入れて、咲君が大好きなあのDVDを見て、咲君が帰ってくる頃には咲君の大好きなオムライスを作って待っていよう。大好きな咲君に、抱き締めてもらって、それから…−。2007-01-16 07:17:00 -
293:
名無しさん
何かに追い掛けられているかのように、あたしは全速力でマンションに帰り、急いで家のドアを開けた。そしてそのまま力強く扉を閉め、何故かチェーンまでかける。
息は荒く、バクバク鳴る心臓を一先ず落ち着かせてから、ヒールを脱いだ。2007-01-16 07:18:00 -
294:
名無しさん
そして気付く、まだある靴と、人の気配。
−…咲君だ!
2007-01-16 07:18:00 -
295:
名無しさん
なんで?遅刻したんかな?
でも、そんなことはどうでもよかった。
今すぐにでも、抱き締めてほしい。あの笑顔を、あたしに…−
2007-01-16 07:19:00 -
296:
名無しさん
マンションは3LDKで、手前からあたしの部屋、咲君の部屋、二人の寝室に別れていた。
気配は一番奥の寝室にあり、あたしは迷わずその部屋へと足を向けた。
近づいてから、初めてわかる、話し声。
ふと、我に戻る。2007-01-16 07:20:00 -
297:
名無しさん
何故か嫌な予感がして、あたしは耳をすませた。
そして、確かに聞こえた。
2007-01-16 07:20:00 -
298:
名無しさん
《ナンバー落ちた瞬間、用ナシやって。》…−
2007-01-16 07:20:00 -
299:
名無しさん
2007-01-16 07:21:00 -
300:
名無しさん
なぁ准ちゃん。
『人なんて信じひん。』
准ちゃんにそういったのはいつやったっけ。2007-01-16 07:22:00