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ハナ

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  • 1:

    名無しさん

    ハナが、口の右端だけを上げて笑う。



    何か企んでいる証拠。

    2006-11-27 03:04:00
  • 301:

    名無しさん

    なぁ准ちゃん。

    今は、一つだけ。

    信じてるものがあるよ。

    2007-01-16 07:22:00
  • 302:

    名無しさん





    2007-01-16 07:24:00
  • 303:

    名無しさん

    《終わり》が来るのはあっけない。

    あの言葉を発した直後に、彼はあたしの気配に気付いた。彼がドアを開けた瞬間に、セッタの煙が鼻に着いた。

    《この部屋でタバコ吸わんといてってあれだけいっつも言ってんのに…》

    2007-01-16 07:28:00
  • 304:

    名無しさん

    いつも冷静沈着な彼の、あんなに慌てた様子を見たのは初めてで、そしてそれはひどく滑稽にあたしの目に映った。

    彼は言い訳だろう言葉を並べていたけど、それは一切あたしの耳には届かず、ただ一言『やめる』とあたしに言わせただけだった。
    そしてそのままあたしは飛び出した。

    2007-01-16 07:29:00
  • 305:

    名無しさん

    あたしと彼の、嘘になった真っ黒な部屋から。

    持っていたのは
    家を出た時に持っていた、カバンと携帯と財布。真っ白なドレスだけだった。

    2007-01-16 07:29:00
  • 306:

    名無しさん

    一週間ぶりに、あの携帯を開いてみた。とは言ってもとっくの昔に電源は切れていて、一週間前と変わらない場所にある充電器を差し込んだ。

    電源が切れるまでの不在は全て咲君で埋まっていた。

    携帯の待ち受けに映るデジタル時計が3時20分を差していた。もう少しで業者がこの部屋を空っぽにしてくれるはずだ。

    2007-01-16 07:30:00
  • 307:

    名無しさん

    最後に。
    −メール問い合わせ−

    想像しながらそれをした。 
    −受信メール132件−

    2007-01-16 07:31:00
  • 308:

    名無しさん

    想像どおりの結果に、ため息をつく。

    2007-01-16 07:31:00
  • 309:

    名無しさん

    咲君 話くらい聞けや
    咲君 なんで電源切ってるん?
    咲君 心?頼むから電話出て
    宮崎さん 店辞めたんか?
    咲君 何してるん?今どこおるねん?

    2007-01-16 07:33:00
  • 310:

    名無しさん

    3日前。
    RAINに体験に行ったあの日。あたしはオーナーに電話を入れていた。
    CRUWを辞めること。どれだけ説得されても意志は堅いこと。しつこく止められたけど、あたしは最後まで曲げず、オーナーはしぶしぶと言った感じで了承してくれた。そして今日がマンションを引き払う手続きの日になったんやった。

    2007-01-16 07:34:00
  • 311:

    名無しさん

    そして咲君からのメールはその日を境になくなっていた。別にもう、なんとも思わなかった。だって、夜の世界は、嘘だらけやって、教えてくれたのは確かに咲君やったから。

    メールは途中で読むのを辞めた。と同時に業者がやって来て、あたしは全て処分してくださいと言った。

    2007-01-16 07:34:00
  • 312:

    名無しさん

    その‘全て’の中に、お揃いだった携帯をしっかりと置いて。携帯は、キャバ嬢の全てに近い。だけどもう、《ココ》はいない。だから、必要ない。

    宮崎を始めとする客も、咲君を始めとする店の番号も
    嘘だらけの客へのメールも嘘だった愛のこもった咲君からのメールも−…

    2007-01-16 07:35:00
  • 313:

    名無しさん

    一週間前までのあたしの、全部が今日なくなる。

    手続きの書類にさっさとサインをして、そのままさっさと部屋を出た。

    2007-01-16 07:36:00
  • 314:

    名無しさん

    虚しかった。
    だけどそれだけ。
    悲しくなかったし、切なくなかったし、怒りもなかった。

    それが何でなのかは、わからなかったけれど。

    2007-01-16 07:37:00
  • 315:

    名無しさん





    2007-01-16 07:38:00
  • 316:

    名無しさん

    准ちゃん

    今ならわかるねん
    その理由が

    2007-01-16 07:39:00
  • 317:

    めさ読んでる☆がんばれ

    2007-01-16 07:39:00
  • 318:

    名無しさん

    なぁ准ちゃん

    あたしも多分
    “一目惚れ”やったんちゃうかな。−…

    2007-01-16 07:39:00
  • 319:

    名無しさん





    2007-01-16 07:40:00
  • 320:

    名無しさん

    大量の更新ありがとぅござぃます??

    2007-01-16 07:45:00
  • 321:

    名無しさん

    応援してます?

    2007-01-16 07:45:00
  • 322:

    めっちゃ綺麗な書き方ですね。続き楽しみにしてます。
    頑張って下さい?

    2007-01-16 09:13:00
  • 323:

    紅音◆LTrx1cGfeo

    エントランスの二つ目の自動ドアが、あたしの体重を察知して、ゆっくりと外の風邪をあたしに当てた。
    と同時に目の前の大通りに一台のタクシーが止まった。赤信号が青に変わり、またたくさんの車たちはせわしなく走りはじめた。

    2007-01-17 08:16:00
  • 324:

    名無しさん

    彼が、あたしに気付く。
    真っすぐ見つめる。
    目が合う。

    2007-01-17 08:16:00
  • 325:

    名無しさん



    タクシーから降りてきたその人は…−まぎれもなく、咲君だった。

    2007-01-17 08:17:00
  • 326:

    名無しさん

    多分、一秒か一分か。あたし達はお互いを見つめ合い、そしてあたしは、たった一度の瞬きですら出来なくなる。

    −プァー

    遠くで、大きな音でクラクションが鳴って、我に返る。

    2007-01-17 08:18:00
  • 327:

    名無しさん

    そのまま、あたしは彼の力強いその目から視線を逸らした。
    彼のすぐ側を通り抜け、タクシーを捕まえようと右手を上げた。

    2007-01-17 08:18:00
  • 328:

    名無しさん



    『…−心!』

    2007-01-17 08:19:00
  • 329:

    名無しさん

    彼があたしの左手をつかんでそう言ったのと、タクシーがあたしの前に止まったのは、ほとんど同時だった。

    2007-01-17 08:19:00
  • 330:

    名無しさん



    −…嫌いだった。自分の名前。『心−こころ』。
    いい名前だね、綺麗な名前だねって、何も知らない他人はそういう。
    けどあたしは昔から、この名前を呼ばれるたびにびくびくしたっけ。大嫌いだった。名前、自分。ママ。

    2007-01-17 08:21:00
  • 331:

    名無しさん

    だけど、彼に名前を呼ばれるのはなぜか好きだった。きっと、この上なくやさしい声であたしを呼ぶから。まるで、割れやすいガラスのおもちゃに、触れるみたいにそっと、やさしく呼ぶから。



    あたしは、この上なく彼に惹かれたんだと思う。

    2007-01-17 08:24:00
  • 332:

    名無しさん


    …つかまれた左手が熱い。 
    今、あたしはこの手を振りほどいて、
    准ちゃんの元に帰る。
    帰るんだ。

    2007-01-17 08:25:00
  • 333:

    名無しさん

    繋がれていたあの日までの手を、振りほどいたのは咲君だよ。あたしを騙して、いらなくなったら捨てると言った。
    別に、信じてたわけじゃない。だけど、ただの一度も疑わなかった。

    2007-01-17 08:26:00
  • 334:

    名無しさん

    あたしのこと、好きなんかじゃなかったくせに。

    なのに。

    ねぇ、なんであんたが泣きそうなの?

    2007-01-17 08:27:00
  • 335:

    名無しさん

    なんで、前と変わらないやさしい声であたしを呼ぶの?

    ダメだとわかってて、振りほどけないのは、なんで? 

    2007-01-17 08:27:00
  • 336:

    名無しさん





    2007-01-17 08:28:00
  • 337:

    名無しさん





    2007-01-17 08:29:00
  • 338:

    名無しさん


    Return
    SIDE  准

    2007-01-17 08:30:00
  • 339:

    名無しさん

    ハナ。          
    お前がいれば、俺はそれだけで幸せで

    だけど
    お前を幸せにする方法を、俺は知らない。

    2007-01-17 08:31:00
  • 340:

    名無しさん

    なぁハナ。        
    幸せにしてやりたいと
    どんなに思っても

    俺じゃ咲君には勝たれへんのか。

    2007-01-17 08:32:00
  • 341:

    名無しさん


    PM6:00

    セットしていた携帯の目覚ましが鳴って、そのけたたましい音で目が覚めた。

    2007-01-17 08:33:00
  • 342:

    名無しさん

    今日からまた仕事か。



    《−−……だるっ。》

    2007-01-17 08:33:00
  • 343:

    名無しさん

    『あ、起きた?』
    ガチャリとドアを開ける音を立てて、キッチンから顔を出し、ハナが言った。


    『ご飯出来てんで?』

    2007-01-17 08:34:00
  • 344:

    名無しさん

    朝はやっぱり、味噌汁に限る。もう、夕方やけど。

    コンビニやインスタントばかりだった食生活が、どんどん正されていくのがわかる。だってなんか、最近調子がいい。

    2007-01-17 08:35:00
  • 345:

    名無しさん

    時間が気になって、不在やらメールを確認しようと携帯を手にとった。

    『ご飯食べてる時に携帯とかさわらんとって!行儀悪いで』

    2007-01-17 08:36:00
  • 346:

    名無しさん

    「お前はおかんか!笑」
    『死んでしまえ!おかんちゃうわ!笑』

    その会話に、今日初めてハナの顔をちゃんと見た。うん、今日も綺麗、綺麗。

    2007-01-17 08:36:00
  • 347:

    名無しさん

    視線を手元に戻し、母親の言うことを聞かない子供みたいに、ハナの言葉を聞かずに携帯を開いた。…と同時に、そのまま固まる。



    《えっ…−何これ。》

    2007-01-17 08:38:00
  • 348:

    名無しさん


    −不在着信28件。全部、非通知。

    『どうかした?』
    俺の驚いた顔を見てか、ハナが心配そうに俺に話し掛ける。

    2007-01-17 08:38:00
  • 349:

    名無しさん

    「いや、思った以上に時間無かったからびっくりしただけやで」
    そうごまかした。

    また嫌な予感がして、俺は急いで飯をたいらげて、早めに用意して家を出た。

    2007-01-17 08:39:00
  • 350:

    名無しさん

    『ちょっ…准〜?』
    「悪ぃ、先出るわ。
     はい、鍵。」

    キーケースからマンションの鍵だけを外してハナに渡した。

    2007-01-17 08:40:00
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