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ハナ
-
1:
名無しさん
ハナが、口の右端だけを上げて笑う。
何か企んでいる証拠。2006-11-27 03:04:00 -
500:
名無しさん
『おうココ!これから向かうわ!』
「了解〜。でも関ちゃん。ココって言うの禁止やで?わかってる?」
『おう、せやった、せやった♪ごめんやで』
「もう!頼むで本間!」
それから、RAINの場所を詳しく教えて、手短に電話を切った。2007-01-23 06:32:00 -
501:
名無しさん
今日もRAINは、相変わらずの不調。
今の時点で、客は2組。
1番テーブルに3名様。新規。
3番テーブルに2名様。リナとハナ指名客。2007-01-23 06:32:00 -
502:
名無しさん
昨日くらいから来ている、体験の子2人を含めて、今日の嬢数は全部で8人。内、席に着いてるのが5人。
《多分、いや、確実に足りない。》
1番テーブルの新規客はさっき入ったばかりで、盛り上がっている様子…となると。2007-01-23 06:33:00 -
503:
名無しさん
携帯を閉じ、唇にグロスを塗った。下品に見えない程度に、薄く。
「お待たせしました♪」またまた、にっこり笑って、席に戻った。様子を見てから、何度かカクテルのおかわりを繰り返した。何のことはない会話を続ける。あと、15分ってとこか…−。2007-01-23 06:34:00 -
504:
名無しさん
『失礼します!そろそろお時間の方なんですが、ご延長の方どうされますか?』
聞きに来たのは、啓太君。現在の値段と、延長後の値段を書いた紙を客に差し出す。紙を手に取りながら、どうしようかと考えている客に、わざと接近して耳元でささやく。
「明日もお仕事ですよね?無理だけはせんとってください。武田さんはいつもやさしいから、私の為に無理してないか、いつも心配になるんです。」
彼は少し驚いた顔であたしの顔を見つめた後、うれしそうに笑うと、『わかったよ』とだけ言った。
そのままチェック。2007-01-23 06:35:00 -
505:
名無しさん
「ご馳走様でした。ありがとうございました。」
コートはエレベーターが上がって来るまで着せないで持っておく。扉が開いてから、ゆっくりとコートを着せる。たった数秒のこと。だけどその数秒は、彼らにとって“特別”だったりする。
『さっき、耳元で何て言ったん?』
エレベーターが1階まで降りたのを確認してから、リナさんがあたしにそう聞いた。
「えっ…?別にそんな特別なことじゃないですよ?」『でも、引っ張ろうと思えば引っ張れたやん。そうやろ?』2007-01-23 06:38:00 -
506:
名無しさん
…−お客さんが来るから。なんて、言えない。まだ。
笑って、
「でも、無理やったみたいです。すみません。」−…そう言った。
『あぁそう。』
リナさんが、必死にがんばっていることぐらいわかっている。だから別に、あたしは…−2007-01-23 06:40:00 -
507:
名無しさん
冷たくそう言い残し、彼女は颯爽と店へと戻った。
今は、嫌われても、いいんだ。2007-01-23 06:41:00 -
508:
名無しさん
リナさんの背中を追って、店に戻ろうと扉に手を掛けたのと同時に、携帯がまた鳴った。
店には入らず、廊下の片隅に移動して通話ボタンを押した。2007-01-23 06:42:00 -
509:
名無しさん
『もう着くわ!』
「わかった。そのまま、黒服が二人立ってるハズやから、キャッチされて。」
『おぅ。しかし、面倒やなぁ。』
「えぇから!笑 ちなみに、何人?」2007-01-23 06:43:00 -
510:
名無しさん
…−ビンゴ!
《5名様、ご来店です。》2007-01-23 06:43:00 -
511:
名無しさん
ねぇ准ちゃん。
失ってからじゃないと気付けないことは
この世界に腐るほどあって
だけど、後悔しないのは
それだけの価値があるから2007-01-23 06:53:00 -
512:
名無しさん
准ちゃん。
准ちゃんの腕の温もりや
くしゃってなる、咲君と似たその笑顔や
やさしくて暖かいキスを
あたしは、一生忘れない。2007-01-23 06:54:00 -
513:
名無しさん
ねぇ、准ちゃん。
だけど
あたしは別に、健気に頑張る女の子なんかじゃない
だから、あたしのことは2007-01-23 06:55:00 -
514:
名無しさん
忘れていいよ。
2007-01-23 06:56:00 -
515:
名無しさん
2007-01-23 07:01:00 -
516:
名無しさん
切にゃぃ??
頑張ってくださぃ?2007-01-23 08:03:00 -
517:
名無しさん
2007-01-23 08:08:00 -
518:
名無しさん
2nd Return
SIDE 准
2007-01-23 08:09:00 -
519:
名無しさん
2007-01-23 08:09:00 -
520:
名無しさん
なぁハナ
お礼くらい、
言わして。
2007-01-23 08:10:00 -
521:
名無しさん
《寒い。寒すぎる。》
かじかむ手に、息を吹きかけてみるものの、その効果はないに等しい。
あっという間に冬は深くなり、今日で散々だった11月も終わる。2007-01-23 08:11:00 -
522:
名無しさん
とはいっても後半は、前半とは打って変わって順調で、今日もこうして客引きには出ているものの、店は満員で、そんなに焦る必要もない。
潰しの噂は回りきったのか、むしろ良い噂に変わって、また回る。
落ちるとこまで落ちた噂は、上がることしか出来なかったみたいだ。
〔club RAIN。
…−結構、優良店。〕2007-01-23 08:12:00 -
523:
名無しさん
あの飲み会以来、やる気満々になった嬢達の接客は、見る見るうちに上達したし、面白半分で来たのか、新規の客が突然増え、そのままリピーター客にも変わった。
客層も大幅に広がり、最近では結構遠くから、わざわざ足を運んでくれる客さえいる。2007-01-23 08:13:00 -
524:
名無しさん
なんて、言ってみただけで、これが偶然でないことぐらい、さすがに俺だって気付いてる。
だてに二年近く、ボーイをしてるわけじゃない。
…−《ハナのお陰だ》。2007-01-23 08:14:00 -
525:
名無しさん
だって、新規の団体の大蔵省と思われる客は、必ずハナを気に入り指名したし、何より彼らはみんな、以前では考えられないほど、ボトルやらシャンパンやらを卸す太客ばかりだった。
多分、新地CRUW‘ココ’の客だった人達なんだろう。
出会ったあの日に感じた直感は当たった。
ハナは、club RAINを見事に変えた。2007-01-23 08:16:00 -
526:
名無しさん
いつかハナは、携帯を持っていないと言ったけど、きっとあれも嘘なんだろう。じゃないと、彼らと連絡がとれるはずがない。
だけど、ハナが持っていないと言う以上余計な詮索はしないし、彼らが自分の客だったことを隠すなら、それにも騙されていてやる。
なんて、これも言ってみるだけで、実際は聞けなかっただけやねんけど。
はぁ。相変わらず…−
《かっこ悪ぃ。》2007-01-23 08:26:00 -
527:
名無しさん
それでもやはり、こぼした大量の常連客はSIXに移動し、売り上げは両店増え、相変わらず同じくらいだった。
けど別に、そんなことは気にもならなかった。2007-01-23 08:27:00 -
528:
名無しさん
あえて言うなら…−
一時期なくなっていた非通知が、ここ最近また増えだしたこと。
思い当たる人物は、例の一件で結構いるものの、まぁ誰よりも‘玲花’が近い。2007-01-23 08:28:00 -
529:
名無しさん
けどさすがに、あの時は頭に血が上って、今ではやりすぎたかなと思う。
《先月の給料も渡さなあかんし、そろそろ、手ぇ打っとくかな。》…−2007-01-23 08:28:00 -
530:
絢
更新お疲れさまです。
めちゃめちゃ切ない?楽しみにしてるんで頑張って下さいね?2007-01-23 10:12:00 -
531:
名無しさん
おもろい!頑張って!
2007-01-23 13:31:00 -
532:
紅音◆LTrx1cGfeo
絢さん、いつもありがとうございます??547さんも、ありがとうございます?もう本当、感謝です?? 更新します??
2007-01-25 00:30:00 -
533:
名無しさん
AM5:30
『お疲れ〜っす』
「はいお疲れ〜っ。」
いつも通りの一週間が終わり、みんな次から次へと店から出ていく。今日も売り上げはまぁまぁで、明日は一日、ゆっくりと休みを満喫出来そうだ。2007-01-25 00:31:00 -
534:
名無しさん
「送りもうちょっとだけ待ってな〜」
美々奈々とハナにそう告げて、集計が終わった売り上げ表をファイルに挿んだ。『『はぁーい。』』
息のあった三人の返事に軽くもう一度だけ誤り、ファイルを持ってリストへ移動する。
《え〜っと…あ、あった》2007-01-25 00:32:00 -
535:
名無しさん
−顧客ノート玲花−
何冊も積み上げられたたくさんのノートの中から、玲花のだったピンクのノートを引き抜いた。
確か、ここに…−ほら、やっぱり。
一番最初のページに書いてあった玲花本人の番号を、携帯に登録する。メルアドは…変わってるかもやけど、一応入れとくか。2007-01-25 00:34:00 -
536:
名無しさん
え〜っと…
re、i、ka、、hi、me...
《…姫?玲花姫?何ていうか、うわぁ〜(´Д`)笑》2007-01-25 00:34:00 -
537:
名無しさん
『何してるん!?』
玲花のアホみたいで、かつ無意味に長いメルアドを打ち込むのに手間取っている間に、ハナが痺れを切らしてリストに顔を出した。
「ん〜。もぉちょい待って…よしオッケ!行こか!」
質問には答えずそれだけ言った。携帯を閉じてハナがいるほうに目をやると、ハナは不思議そうに俺を見つめた後、
『はよ支度しろ!』とだけ言ってリストから離れた。2007-01-25 00:36:00 -
538:
名無しさん
AM8:00
「おやすみ〜…」
疲れた体でお腹いっぱいになれば、睡魔が襲ってくるのも早い。
少し落ち着いたここ最近では、ちゃんと毎日三食食べるのが当たり前になっていた。というか、食べないとハナが口うるさく怒る。2007-01-25 00:37:00 -
539:
名無しさん
だけどそれはほんまに有り難いことで、数日前に発見した、ハナが持ち込んだ何冊かの料理本は、キッチンに綺麗に並んでいる。
そしてそれはどれも『健康のための一ヵ月献立』だとか、『栄養バランスメニュー』なんてタイトルで、俺の体を気遣う料理を作ってくれているのが嫌味なくわかった。
今更やけど、ハナはほんまに家庭的な女やった。その見た目や言葉遣いからは、到底想像できないくらいに…−。2007-01-25 00:38:00 -
540:
名無しさん
「ふぁ〜あ。」
あくびと一緒に、涙腺が潤む。
そういえば、ソファーで寝る生活にも最近やっと慣れてきた。始めのうちは起きた時に体中が痛くて苦労したけど、人間何においても、慣れさえすれば平気なもんらしい。
今この瞬間も、毛布一枚にくるまって、体を丸めて眠りに落ちる、まさに直前。2007-01-25 00:39:00 -
541:
名無しさん
あったかい空間に、俺とハナ。その事実は、止めを刺すかのように俺の眠気をそそる。
数分か、数十分後。
『…准ちゃん?』2007-01-25 00:39:00 -
542:
名無しさん
暖かい部屋で、やさしい声で、ハナが俺の名前を呼んだ。
その声に、半分寝呆けながらも、寝返りを打って返事をした。
『…起きてる?』
「ん…」2007-01-25 00:40:00 -
543:
名無しさん
『准ちゃん…こっち。
−…おいで?』
ハナの擦れた小さな声で、ゆっくりとその言葉が、俺の耳に届き、その意味が理解できた瞬間に、軽く眠気は吹き飛んだ。2007-01-25 00:41:00 -
544:
名無しさん
ソファの上からじゃ、ハナの顔は見えない。今ハナが、どんな顔してその言葉を発したのか、すごく気になった。
正味、前みたいにハナと同じベットで寝なくなったのは、彼女といればいる程、距離が近くなれば近くなるほど…−彼女に惹かれ、彼女の全てに吸い込まれてしまうから。もう、理性を保つ自信がない。
…って、すでに今の可愛い一言で、そんなもんはなくなってしまってんけど。2007-01-25 00:42:00 -
545:
名無しさん
寝た振りをしようと思った。けどその考えとは反対に、口が勝手に動いた。
「…あかん。」
精一杯の、我慢。2007-01-25 00:42:00 -
546:
名無しさん
閉まり切ったカーテンは、少しの隙間すらなく、外はもう陽が登っただろうこの時間帯でも、部屋の中は真っ暗だ。
静かで、長い、長い沈黙。
先に口を開いたのは…−
2007-01-25 00:43:00 -
547:
名無しさん
「襲ってまうから。」
…−俺。2007-01-25 00:44:00 -
548:
名無しさん
何て言うか、拒否ってるわけじゃないことを、伝えときたかった。だけど、冷静に考える時間も余裕もなく、選べばいい言葉をバカ正直に発してしまったのだ。
しばらく何の返事もなく、やけに早く響く自分の鼓動で、手に汗を握っていることに気付かされる。
《寝たんかな…−》
そう思った、瞬間。2007-01-25 00:45:00 -
549:
名無しさん
『………−いいよ?』
確かに、そうハナが、言った。2007-01-25 00:47:00 -
550:
名無しさん
ぃっつも更新ありがとござぃます?
毎日楽しみにしてるんで??
ゅっくりでぃーんで書ぃてくださぃ?・゚2007-01-25 03:21:00 -
551:
名無しさん
気になるあげ
2007-01-25 03:43:00 -
552:
紅音◆LTrx1cGfeo
俺はもぞもぞと体を動かし、ベットのすぐ側にしゃがみこんだ。丁度、こっちを向いてるハナと顔が近い。
「…マジで言うてる?」2007-01-25 15:23:00 -
553:
名無しさん
そう聞いた俺に、
ハナは…−口の右端だけを上げて、笑った。
「あんま、舐めてたらあかんで?笑」
俺はそれだけ言うと、一気にベットに上がり、横を向いていたハナの両手を、まとめて片手で抑えつけ、体ごと正面に向けると、そのまま彼女の上に膝を立てて乗っかった。2007-01-25 15:24:00 -
554:
名無しさん
真っすぐ、ハナを見下ろす。ハナも、真っすぐ俺を見上げる。おれの瞳に映るその顔に、あの笑顔はもうない。
その代わり、出会ったあの日と同じ、力強い目があった。
《−…負ける?》
その言葉が頭に浮かんだと同時に、俺はハナにキスをした。2007-01-25 15:25:00 -
555:
名無しさん
ハナの唇はやわらかくて、そして冷たい。
何もかもが真っ白になる。何も考えられないし、何も考えたくない。
唇のその奥に、夢中になって舌を絡ませた。2007-01-25 15:26:00 -
556:
名無しさん
唇と相反した、暖かいそれに俺はますます欲情し、もっと激しく強引に、少し遠慮がちに動くハナの舌を求めた。『んッ…−』何も聞こえない静かな部屋に、ハナのその声だけが異様に響いた。
…−
2007-01-25 15:27:00 -
557:
名無しさん
ふと、重なり合った唇を離して、ハナを見つめる。
『手…痛いって。』
やさしく笑って、ハナが言った。気付けば、俺は自分で思っていたよりもきつく彼女の手を握り、抑えつけていたみたいて同時に手をパッと離した。
ハナはまたふっと笑うと、離されたその両手をそのまま俺の首に回した。2007-01-25 15:28:00 -
558:
名無しさん
また、顔が近づく。
さっきの、激しいだけのキスは、やさしい、ゆっくりとしたキスに変わり、暖かい何かが、俺とハナを包み込む。唾液が、ピチャピチャと音をたてる。
立てていた膝をねかし、全身でハナの上に覆いかぶさる。すぐ近くに感じる、ハナの体温で再確認する。2007-01-25 15:28:00 -
559:
名無しさん
俺はずっと、触れたくて触れたくて仕方なかったんだ、ハナに。
切れ長でつり目の、猫みたいな目。鼻筋が通った、形のいい小さな鼻に、少し広いおでこ。肩まで伸びた、細くてやわらかい髪に、ピンク色のアヒル口。華奢な肩から伸びる細い腕。割と小っこい胸に、すらりと真っすぐ伸びた長い足に。
ハナのその全てに。2007-01-25 15:29:00 -
560:
名無しさん
触れたかったんだ、
ずっと。
2007-01-25 15:30:00 -
561:
名無しさん
どちらからともなく、顔を離し、長いキスが終わった。
ハナを見つめると、虚ろな目に、少し乱れた呼吸。紅潮した頬。
全てが色っぽく、少しだけ戻ってきていた俺の理性をまた吹き飛ばす。
今度は短いキスを何度も繰り返しながら、右手をハナの胸へと伸ばし、そっと触れた。俺の手のひらにすっぽりと納まる、丁度いいサイズ。布団から出ていたその手は冷たく、ハナは少しだけビクッと体を震わせた。そんな小さなことが、やけに愛しく感じる。2007-01-25 15:30:00 -
562:
名無しさん
自分の膝を、ハナの足の付け根まで上げ、軽く刺激する。
キスを止め、舌を首元に移動させた。ツーッと、舌先で首筋をなぞる。ハナのサラサラの髪の毛を、もう片方の手でかき上げ、そのまま指で耳を触る。たまに零れるハナの甘い声に、我慢し切れず下に手を伸ばした。パンツの上からハナのそこに触れると、ハナはまた体を震わした。もう一度、キスをするためハナに顔を近付けた。指先には、湿った感触。
「…濡れてるん?笑」
2007-01-25 15:31:00 -
563:
名無しさん
そう聞いて、数センチしか離れていないハナの顔を覗く。その瞬間、ハナは閉じていた目を開き、無表情でじっと、俺を見つめた。
2007-01-25 15:32:00 -
564:
名無しさん
…−そこで、辞めた。
ハナの潤んだ瞳にはっきりと映る俺はみじめだ。2007-01-25 15:32:00 -
565:
名無しさん
2007-01-25 15:34:00 -
566:
名無しさん
なぁ…ハナ。
なんで泣きそうなん?
2007-01-25 15:35:00 -
567:
名無しさん
ハナ。
俺の後ろに、誰を見てる?
2007-01-25 15:36:00 -
568:
名無しさん
なぁ、ハナ。
口の右端だけ上げたあの笑顔も、綺麗な顔から吐き出すきつい口癖も、心配性な性格も、あっという間に作ってしまう旨い手料理も、
2007-01-25 15:37:00 -
569:
名無しさん
見えないところで支えてくれる強さも、
隠し通した弱さも、
残酷な程の一途さも。
…−全部。2007-01-25 15:38:00 -
570:
名無しさん
ほんまは、
それすらも全部、
俺だけのもんに、
したかってん。2007-01-25 15:39:00 -
571:
名無しさん
2007-01-25 15:39:00 -
572:
名無しさん
PM2:00ー
〜♪
永遠を、あなたは信じてた?奪わないで、いなくならないで。あたしは君の隣にいたいよ。叶わなくても届かなくても私は…ープツッ
メロディーコールが途切れ、彼女はやっと電話に出た。
『はい?』2007-01-25 15:41:00 -
573:
名無しさん
電話越しに聞こえるその声は、やけに懐かしく感じた。−…玲花。
「もしもし?准やけど。わかる?」
『…うん。』
「これから、会えるか?」2007-01-25 15:42:00 -
574:
名無しさん
PM2:30
ハナは、俺に背中を向けた状態で、ベットで眠っている。起こさないように、そっと家を出た。
何となく歩いて、玲花と待ち合わせしている喫茶店へ向かう。2007-01-25 15:43:00 -
575:
名無しさん
寒冬らしい、今年は。そりゃ、雪もよく降るはずだ。
かじかむ手をいつものようにポケットに突っ込んで、俺は昨日のことを思い出していた。
《さっき、ハナ起きひんくて、よかった…−。》
なんてどっちにしろ、すぐに顔は会わすのだから、今安心したところでしょうがないんやけど。2007-01-25 15:44:00 -
576:
名無しさん
昨日は結局、一睡も出来ないまま、ソファーの上で時間が経つのをひたすら待っていた。
『…−准?』
これからって時に、手を止めた俺を、ハナは何とも言えない表情で見つめて、そっと俺の名前を呼んだ。
確かに‘准ちゃん’ではなく‘准’と呼んだ。2007-01-25 15:45:00 -
577:
名無しさん
だからきっと、なんとなくわかってたんやろうと思う。ハナも。
ハナの瞳には、俺じゃない誰かが映ってた。
‘俺じゃない、誰か’が。2007-01-25 15:47:00 -
578:
名無しさん
結局、「付き合ってないしやっぱり我慢する」なんて当たり障りのない理由をつけて、昨日のあの場は取り繕った。「好き」とも言ってない癖に。
別に、そのまま最後までやろうと思えば出来た。
やけど…気付かない振りして俺は腰を振るんか?そんなの…そんなん、みっともなさ過ぎるやろ。2007-01-25 15:48:00 -
579:
名無しさん
喫茶店につき、コーヒーを注文した。玲花はまだ来ていないようだ。どーせあいつのことやから、遅刻するに決まってる。
−…ハナは俺を‘咲君’の代わりにしているんだと思う。ハナは俺なんか見てない。俺の後ろにいる‘咲君’を見ている。2007-01-25 15:49:00 -
580:
名無しさん
全く気付いていないわけでもなかった。予感が確信に変わっただけで、そんなにダメージはない。
元々、恋愛に本気になることなんてなかった俺が、いきなりこんな不毛な恋愛をするなんて、想像すら出来なかった。
《俺は、どうしたらいいんやろ。てか、どうしたいんやろか。》2007-01-25 15:50:00 -
581:
名無しさん
PM3:30
約束の時間から30分が過ぎた頃、やっと玲花が表のガラス越しに見えた。
俺に気付いて、俺の前の席に座る。『ミルクティー、ホットで。』店員にそう言った後、すぐにタバコに火を点けた。
遅刻したことを謝る素振りはない。しかしこれも、わかっていたことで、別になんとも思わなかった。2007-01-25 15:51:00 -
582:
名無しさん
「電話出てくれてよかったわ。久しぶり、玲花。」
まるで台詞みたいにすらすらと言葉が並び、そのまま口から出した。
今も、頭ん中は、ハナのことでいっぱい。だけど、何か用事を作って、あの家から出たかった。2007-01-25 15:51:00 -
583:
名無しさん
『…何の用なん?』
ふてこく、玲花が一言だけ返事をした。
けどその用事に、こいつを選んだのは間違いだったかもしれない。やっぱり…
《相変わらず腹立つわ。》2007-01-25 15:52:00 -
584:
名無しさん
さっさと終わらして、スロットにでも行ってこようかな…−
「これ、先月分の給料。遅れてごめんな?あと、少ないけど、俺が沈めてもた携帯の修理代も入ってるから。あの時も、ごめんな?」
少し間を開けてみたものの、玲花は何も言わない。
《…はぁ。あっそ。》2007-01-25 15:54:00 -
585:
名無しさん
「んな、それだけやから。…じゃぁな?」
そう言って、席を立とうとした、瞬間。
『何で怒らへんのッ?』2007-01-25 15:54:00 -
586:
名無しさん
そう、小さな声で玲花が言った。
座り直して、玲花をまっすぐ見つめた。明るかった長い金髪は、落ち着いた茶髪に変わっていて、今日はクルクルの巻き毛じゃなくて、ただのストレートロングだった。
日曜。SIXも、今日は休みだ。
久々に見た玲花は、暗くした髪色のお陰か、大人っぽくなっていたけど、少しやつれた感じもした。2007-01-25 15:57:00 -
587:
名無しさん
「何が?遅刻?」
少し笑ってそう答えた。
『違くて…、いや、それもやけど…。』
俯き、黙りこくった玲花が、何を言いたいのかくらいわかる。2007-01-25 15:58:00 -
588:
名無しさん
「えぇよ、別に、もう。あれは俺もやりすぎたし。気にすんな。」
『でも…』
そういえば、ふてこいイメージしかもう残ってなかったけど、玲花だってRAIN開店当初は、今みたいにか弱そうな女の子やったっけ。
『あたしっ…』2007-01-25 16:00:00 -
589:
名無しさん
顔を上げ、玲花は一瞬俺を見たけど、すぐに目を逸らした。
「いいって、それ以上言わんでも。んな俺行くな?」
もう一度、立ち上がろうとしたその時やった。2007-01-25 16:01:00 -
590:
名無しさん
『好きやってん!
准のこと…!!』2007-01-25 16:02:00 -
591:
名無しさん
驚いて、玲花の顔を見下ろすと、耳まで真っ赤になっていた。
『ずっと、好きやった。』
また、目が合ってから、玲花はそう付け足すと、少し悲しそうに笑った。2007-01-25 16:03:00 -
592:
名無しさん
2007-01-25 16:03:00 -
593:
名無しさん
きになる!!
2007-01-25 17:14:00 -
594:
名無しさん
???????????????????
2007-01-25 21:48:00 -
595:
名無しさん
なぁハナ。
人を好きになることは
いいことばかりじゃない。
‘好き’だなんて、
うまくいかなきゃただの不安にしか過ぎなくて2007-01-27 01:34:00 -
596:
名無しさん
伝えとけばよかったのかな
伝わらなくても、
伝わるまで。
そしたら、
こんなに、後悔せんくてすんだんかな。2007-01-27 01:35:00 -
597:
名無しさん
なぁハナ
もう届かないん?
お前が隣にいないなら、
春なんていらない。
来なくていい。2007-01-27 01:36:00 -
598:
名無しさん
冬だけに降る
真っ白な雪で、
全部…−
隠してしまえばいいねん。2007-01-27 01:38:00 -
599:
名無しさん
2007-01-27 01:39:00 -
600:
名無しさん
2007-01-27 01:40:00 -
601:
名無しさん
2nd Return
SIDE ハナ
2007-01-27 01:42:00 -
602:
名無しさん
ねぇ准ちゃん。
好きだなんて、言葉にすれば簡単なことなのに、
気持ちは付いていかんかったりするよね。
不器用で、遠回りしたりするけど…−2007-01-27 01:43:00 -
603:
名無しさん
ねぇ准ちゃん
でももう、
決めたんだ。
2007-01-27 01:44:00 -
604:
名無しさん
准ちゃん、准ちゃん。
気付いてる?
あたし気付いたよ?
何よりも
一番大切な人。2007-01-27 01:46:00 -
605:
名無しさん
PM8:00
3時前に家を出てから、准はまだ帰ってきてない。
彼が、あたしを起こさないようにそっと起き上がったのも、小さな声で誰かに電話したのにも、そしてそのまま約束の場所に向かったのにも
あたしは気付いてた。もちろん、寝たふりを決め込んでたんやけど。2007-01-27 01:47:00 -
606:
名無しさん
持て余した時間で、なんとなく、久々にオムライスを作ってみたりした。今度はちゃんと、鳥肉と玉葱がたっぷり入ったやつ。
綺麗に半熟に出来ていた卵も、とっくに冷めて、あんまりおいしそうじゃない。
確かに、今日の朝のことを考えるとすごく気まずい。だけど、せっかくの休みなのに。2007-01-27 01:48:00 -
607:
名無しさん
「准ちゃん…こっち。
−…おいで?」
思わず口から出たあの言葉に、下心があったわけじゃなかった。ただ単純に、准のぬくもりの中で、ぐっすり眠りたかった。
そのまま流れるようにああなったことにも、抵抗はまったくなかった。
むしろ‘やっと触れてもらえた’そう思った。2007-01-27 02:02:00 -
608:
名無しさん
だって愛を、感じたんだ。
重なり合った唇に、あたしをそっと触わる指先に、あっという間に熱く火照った自分の体に。
愛を。2007-01-27 02:03:00 -
609:
名無しさん
あんなに、やさしく触れられたのは初めてで、そしてあたしは、思い知らされるかのようだった。
准の気持ちを、
准への気持ちを…−
きっとあたしは、准のことを好きになっていて。咲君よりも、咲君を好きだったあの頃よりも、准ちゃんのことを、好きになってて。2007-01-27 02:04:00 -
610:
名無しさん
こうして自覚すると、気持ちが大きくなるから不思議。もっとずっと前から、好きだったような気さえする。
だからあたしは、幸せだった。この上なく。
准ちゃんに触れられることが、准ちゃんが、そこにいることが…−。2007-01-27 02:06:00 -
611:
名無しさん
だけど、あの時。
思い出したのと、見えたのは同時。
准ちゃんの背中に、黒い闇を。気持ち悪く笑う、宮崎を。2007-01-27 02:07:00 -
612:
名無しさん
あたしに覆いかぶさったぬるい温もり、あたしの肌をつかむ様に触わる手、あたしの体中を這いずる乾いた舌。ひどい、嫌悪感。
だからあたしは汚い。
身も心も。
受け入れたのは、あたし。拒まなかったのは、あたし。止められなかったのは、あたし。2007-01-27 02:08:00 -
613:
名無しさん
そして准は途中で辞めた。
もしかしたら、バレたのかもしれない。
汚い体に、気付いたのかもしれない。2007-01-27 02:09:00 -
614:
名無しさん
…−
やばい、
泣きそうだ。2007-01-27 02:10:00 -
615:
名無しさん
遠ざかっていたあたしの後ろに、また黒い闇が近付き、広がる。
だけど…−
汚い体に、准ちゃんが入ってこなくてよかった。2007-01-27 02:11:00 -
616:
名無しさん
この闇に、彼を巻き込んじゃいけない。
准を、染めちゃいけない。
…守るんだ。2007-01-27 02:12:00 -
617:
名無しさん
2007-01-27 02:13:00 -
618:
名無しさん
ねぇ准ちゃん
好きだよ。
2007-01-27 02:13:00 -
619:
名無しさん
神様なんて信じてないけど
いたとしても、
大嫌いだったけど
もしもいるなら。2007-01-27 02:14:00 -
620:
名無しさん
お願いです。
准ちゃんを守って下さい。
ずっと、笑い続けていれるように。
あたしの代わりに。2007-01-27 02:15:00 -
621:
名無しさん
??
2007-01-27 08:58:00 -
622:
名無しさん
読みやすいしおもしろいし頑張ってください!!
2007-01-28 10:55:00 -
623:
絢
更新お疲れさまです?めっちゃいいですね?胸がキューってなります。続きすごく楽しみにしてるんでまた時間ある時書いて下さいね。
2007-01-28 15:03:00 -
624:
絢
あまりにも好きな話やったんでファンスレ作らせてもらいました。迷惑だったらすいません?
2007-01-28 15:07:00 -
625:
紅音◆LTrx1cGfeo
すみません、本当にありがとうございます!迷惑だなんてとんでもないです??めっちゃうれしくて、今若干泣きそうです?笑
今から更新します。もう本当に、ありがとうございます!がんばります!2007-01-30 17:27:00 -
626:
紅音◆LTrx1cGfeo
2007-01-30 17:28:00 -
627:
名無しさん
PM11:00
カチャリと鍵を開ける音がして、あたしはベットから飛び起きた。
「お帰り…」
笑って、そう言ってみた。2007-01-30 17:29:00 -
628:
名無しさん
−…
帰ってきて、よかった。と言うかここは、准ちゃんの家なんだけど、それでも。
『ただいま!』
ほら、くしゃっと笑った、その笑顔。
今ではもう、咲君に似てる笑顔だなんて思わない。 准ちゃんの、笑顔。2007-01-30 17:30:00 -
629:
名無しさん
「…ご飯は?」
平然を装ってそう聞いた。一番聞きたかったことは、胸の奥で飲み込んだ。だって、
《どこ行ってたん?》
…そんなことは、聞かなくたって、仄かに香るベビードールが、勝手に想像を膨らませてくれる。
あたしは別に、彼女でもなんでもないし、好きだと言ってもらえたわけでもない。そんな事実を再確認した気分だった。2007-01-30 17:32:00 -
630:
名無しさん
『あ〜…作った?』
そう少し困った顔で、逆に聞き返される。一瞬だけ悩んでから、作ってないよ、と言った。後でオムライスは捨てとこう。
「眠くなってきたぁ…」
わざと聞こえるようにささやいて、ベットに潜り込んだ。2007-01-30 17:33:00 -
631:
名無しさん
布団をかぶって、潤んだ涙腺に力を入れた。もう、これが何の涙なのかすら、わからない。
《すぐ泣くな!》
いつかママに言われた言葉が、今更耳に響く。
それでも、我慢できずに一筋だけ頬に伝った涙を、急いで手の甲で拭った。2007-01-30 17:34:00 -
632:
名無しさん
絞りだすように流れた一滴だけの涙には、色んな想いが重く重なって、なんだかあたしをひどく切なくさせた。だけど准ちゃんにだけは見せたくなくて、小さく濡れた右手を握り締めて、目を閉じた。
2007-01-30 17:35:00 -
633:
名無しさん
AM0:30
『おい、嘘つき!起きろ!ハナ!起きろって』
気付けば本当に眠ってしまったようで、あたしは准に起こされ、目を開けた。2007-01-30 17:36:00 -
634:
名無しさん
−…ピーッ
同時に、レンジが鳴る音で、准はキッチンへ行った。上手く頭が回らないままベットから降りる。
そしてすぐに、彼が両手に持ってきたのはあたしが作った、オムライス…−。
准は、もう一度《嘘つき》とあたしに言って、またくしゃっと笑った。2007-01-30 17:37:00 -
635:
名無しさん
ねぇ准ちゃん。
本当の本当に守りたいものなんて、きっとみんな一つだけなんだと思わへん?
2007-01-30 17:39:00 -
636:
名無しさん
准ちゃん。
あたしが守りたかったのは、准ちゃんだけだったよ。
准ちゃんの、
あの笑顔だけだったよ。2007-01-30 17:40:00 -
637:
名無しさん
だから、あの日。
准ちゃんを、黒い闇に連れてってしまう前に 離れるって、決めたんだ。
だけど、もう少しだけ。
あたしの、21歳の誕生日まで。
傍に、いさせてね。2007-01-30 17:43:00 -
638:
名無しさん
ねぇ、准ちゃん。
最後の最後まで、
わがままなあたしを
許して。2007-01-30 17:44:00 -
639:
名無しさん
2007-01-30 17:45:00 -
640:
名無しさん
『あっ、忘れとった忘れとった。』そういうと、准はまたキッチンの方へと向かった。
《そういえば、冷蔵庫にいれたままやったっけ…》
目の前のテーブルには、二つ並んだオムライス。
レンジのおかげでホカホカと湯気を立て始めたそれは、またおいしそうに変わっていた。2007-01-30 17:46:00 -
641:
名無しさん
颯爽と、キッチンからあたしの前に戻ってきた准の右手には、今度はトマトケチャップがあった。
『食べよか!』
軽く寝呆けたまんまのあたしにそう言って、准はうれしそうにケチャップの蓋を外した。
『あっ、せや!絵書こ。』幼く笑った准はやっぱり子供みたいで、年下なんやなぁ、と思う。
准は覚えてるかな。あたしが彼に、初めて作った料理を…−。2007-01-30 17:48:00 -
642:
名無しさん
彼がケチャップを器用に動かして、オムライスに楽しそうに絵を書く。あたしはボーッとしながらそれを見ていた。
『出来たっ!』
彼が得意げにそう言って、絵が正面に来るように、あたしの方へお皿を向けた。
『これ、ハナのな。』2007-01-30 17:49:00 -
643:
名無しさん
「…これ、…犬?」
『猫や!笑』」
「むっちゃ下手くそ!笑」
二人で笑う。2007-01-30 17:51:00 -
644:
名無しさん
だけど裏腹に、心は、別のところにあるみたいだった。大好きな准の笑顔は、今はあたしをつらくさせるだけで。
だってわかっていても、この人と、離れ離れになるなんて嫌だ。でも、守りたくて、守らなきゃいけなくて。だったら、彼から離れるのが一番で…−
自問自答ばかりが頭に浮かんで消えない。2007-01-30 17:52:00 -
645:
名無しさん
だけど、笑う。
だってそんなこと、顔には出したくない。
これは単純に、あたしのプライドに近い、幼い頃からの癖。あたしはこうして生きてきてんから。2007-01-30 17:53:00 -
646:
名無しさん
「なんで猫なん?」
平然を装って、会話を続ける。だてに、NO1だったわけでもない。
−…なのに。
『ハナは、猫みたいやからやで。』2007-01-30 17:55:00 -
647:
名無しさん
…−准は、そんなあたしをいつも崩してしまう。
『気分屋で、わがままで、強がりで、誰にも媚ひん。まんまやん?笑』
准は、笑いながらそう言ったけど、あたしの顔からは笑顔が消えていくのがわかる。2007-01-30 17:56:00 -
648:
名無しさん
准はまたケチャップを手に取ると、大量にその‘猫’の輪郭を塗り潰した。
『ちなみに絶対黒猫な!何色にも染まらへんから!』
「何それ…。」
あたしは今、上手に笑えてるんだろうか。2007-01-30 17:57:00 -
649:
名無しさん
『だから、お前はずっと、そのままでいてな。』
最後に彼は、笑顔を辞めてそう言った。2007-01-30 17:59:00 -
650:
名無しさん
准ちゃん。
あたしな、生まれ変わったら猫になりたい。
今度こそ、
誰にも染められない
黒猫に。2007-01-30 18:00:00 -
651:
名無しさん
ねぇ准ちゃん。
こんな性格だから、絶対に言えなかったんだけど。
だけど
一回くらいは頑張って言えばよかったかな。
《アイシテル−…。》2007-01-30 18:03:00 -
652:
名無しさん
2007-01-30 18:04:00 -
653:
名無しさん
?????????
2007-01-30 20:54:00 -
654:
紅音◆LTrx1cGfeo
准は、あっという間にオムライスを食べ終えると、毛布にくるまり、ソファの上で眠りに就いた。
彼が深い寝息を立て始めた頃には片付けも終わり、准の隣に座り込んで寝顔を見つめた。
《黒猫、かぁ…−》
准が笑いながら言った言葉が、胸に突き刺さる。2007-01-31 03:10:00 -
655:
名無しさん
〔何色にも染まらへん。〕
その通りかもしれない。だってあたしは、とっくの昔に、真っ黒に染められてしまっているから。
爆睡しているだろう准が寝返りを打って、あたしの方を向いた。かわいい寝顔を目の前に、あたしはまた泣きそうになる。
なんでこんなに、あたしは弱いんだろう。2007-01-31 03:10:00 -
656:
名無しさん
いつもならネオンや照明に照らされて、他愛もない話で笑っているこの時間。
今は、日が落ちると同時に暗くなったこの部屋の中で、あたしは…−
黒い闇に、落ちた。2007-01-31 03:11:00 -
657:
名無しさん
その日あたしが眠りに就けたのは、太陽の光が部屋を明るくする頃だった。
ママに殴られる夢を見たけど、准は、あの時みたいにあたしを起こしてくれなかった。
2007-01-31 03:12:00 -
658:
名無しさん
2003年12月17日
AM12:00
クローゼットの片隅に置いた携帯に、咲君からメールが届く。内容は、見なくたってわかる。2007-01-31 03:13:00 -
659:
名無しさん
《あと、一週間…−》
カウントダウンが、
始まる。2007-01-31 03:14:00 -
660:
名無しさん
2007-01-31 03:14:00 -
661:
名無しさん
2007-01-31 03:14:00 -
662:
名無しさん
Final
SIDE 准
2007-01-31 03:21:00 -
663:
名無しさん
なぁ、ハナ
その黒い闇の向こうに、お前は何を見た?
2007-01-31 03:23:00 -
664:
名無しさん
赤、青、緑、黄色。色とりどりのネオンが、街中を飾り、いつにも増して眩しく夜を飾る。
もうすぐ、クリスマスだ。
年末とも重なって飲み屋街には人が集まり、クリスマスソングと、浮かれた笑い声があちこちで響く。2007-01-31 03:24:00 -
665:
名無しさん
『お願いします!』
グラス一杯に注がれたビールが、数滴床に染みを作ったけど、かまわず早足で客席へ置いた。
店は大忙しで、カウンターには数人の待ち客が、啓太と会話を楽しんでいた。2007-01-31 03:24:00 -
666:
名無しさん
『ハナさん入ります!』
のりちゃんの嬢回しの声と同時に、ヘルプで付いていた新人の子が待機席へ帰ってきて、そしてすぐにまた別の客席に戻る。
club RAINのNO1、ハナは今日も誰よりも忙しく席を回る。
俺はそれぞれの席にチェックを入れ、そして目に止まるのは、やっぱりハナだ。2007-01-31 03:26:00 -
667:
名無しさん
客によって接客中にコロコロと表情を変えるハナは、さながらどっかの女優みたいで、すごい。
あれだけ潰れそうだったRAINも、今では嘘のように客で溢れ返り、噂のお陰で面接にくる嬢の数も増え、人手も充分。
恐いくらい順調だった。2007-01-31 03:29:00 -
668:
名無しさん
だけど…−
最近、よく思う。 ハナの様子が、おかしい。
いざ店の外に出ると、
何かに追われてるかのように辺りを気にして、外に出歩かなくなった。俺と目が合っても、すぐに逸らすようになった。
何より、笑わなくなった。2007-01-31 03:31:00 -
669:
名無しさん
《何があったん?》
相変わらず、
ちゃんと聞けないまま。2007-01-31 03:32:00 -
670:
紅音◆LTrx1cGfeo
時間ばかりが過ぎる。もう、ハナに出会ってから二ヵ月が経とうとしていた。
『お疲れさまで〜す』
ラストまで、客席は埋まったまま、今日も無事1日を終えた。
いつものように送りを出し、最後にハナを乗せて一緒に帰る。久々に雪が降り積もり、朝のその真っ白な世界は、ハナといればいつもより余計綺麗に見えて、不思議だった。2007-01-31 19:23:00 -
671:
名無しさん
「もうすぐクリスマスやなぁ〜…」
車の中、俺はハナに話し掛けた。新人の子の送り先は反対方向だったため、ここから俺の家までとなると結構遠い。暖房が効いてきたお陰で、フロントガラスの端が少しだけ曇った。
『せやなぁ…。』
ハナから零れた言葉はそれだけで、居たたまれなくなってラジオをかけた。
今年一番流行った歌のサビが、タイミングよく流れる。2007-01-31 19:24:00 -
672:
名無しさん
永遠を 貴方は信じてた?奪わないで いなくならないで あたしは 君の隣にいたいよ 叶わなくても 届かなくても あたしは あたしには 貴方しかいないの
毎晩 何を祈るの? 真っ白な雪が君を隠して 見失ってしまう 好き それすらもう 伝えられないの?
…−
いつか聞いた、玲花のメロディーコールはこの歌だった。2007-01-31 19:25:00 -
673:
名無しさん
『ずっと、好きやった。』2007-01-31 19:26:00 -
674:
名無しさん
悲しそうに笑った彼女を見て、気付けば俺は玲花の手を取り、半分引きずる様に、足早に歩いていた。
『ちょっ…准?!准!どこ行くん!…ってかお金!』
玲花の声にはっとして、喫茶店の出口で立ち止まった。驚いた顔した店員に、急いで財布から金を出し、会計を済ませた。
《何やってるねん俺…》2007-01-31 19:27:00 -
675:
名無しさん
そんな俺を見て玲花は笑い、どこ行くん?ともう一回俺に聞いた。
だけど俺は、別に何か考えていたわけじゃなくて。
ただ、さっきのあの悲しそうな笑顔が、今の自分とかぶって、見ていたくなかっただけやった。
「どこ行きたい?」
そう聞き返すと、玲花は元気良く『飯!』と答えた。笑う玲花はうれしそうだ。2007-01-31 19:28:00 -
676:
名無しさん
『見て欲しかってん、うちを。だから、准を困らせることばっかしてた。』
彼女がそっとそう話し始めたのは、飯を食い終わり、玲花の要望で夜景を見に行く車の中でだった。
『クビなって、なんでわかってくれへんねんって、ムカついた。やけになって、SIX入店して、悪い噂流して…。あたしがいなくなってどんだけ困るか、教えたんねんって思ってた。』
「最低やな!笑」
『うちもそう思う。笑』2007-01-31 19:29:00 -
677:
名無しさん
『…−なぁ、准はさ、冷たくてやさしいよね。』
彼女がそう言ったのは、丁度夜景スポットに車を止めた時だった。
「何それ、どういう意味な…『きれー!!』」
玲花は少し大きな声でそういうと、会話を止めた。2007-01-31 19:31:00 -
678:
名無しさん
ぱっちりした大きな目を余計大きく見開いて、窓を開けて身を乗り出した。同時に、冷たい風が入ってくる。
「…寒っ!」
思わずそう言うと、玲花は慌てた様子でドアを閉めた。
「ははっ、ええよ、別に。開けとき。」
そう言って笑うと、玲花は恥ずかしそうにうつむく。気付かない振りして、ハンドルに顎を乗せ、綺麗なぁ、と呟いた。2007-01-31 19:33:00 -
679:
名無しさん
夜景なんて約2年ぶりぐらいで、久々に見た大阪の街は、前よりも明るくなった気がする。
《なんか、こうして見るとやっぱり…−
小せぇな、人って。》
『准?』玲花が俺をそっと呼んだから、おれは助手席へ顔を向けた。2007-01-31 19:34:00 -
680:
名無しさん
『准は、やさしいよ。』 そしてまた、ポツリと言った。
『馬鹿なこと、聞いてもいい?もう、わがまま言わへん。困らせるようなこともせぇへん。やから、嘘でも、何でもいいから…−
《好き》って言って?
そしたらあたし、めっちゃ頑張れる。RAINに、戻る。』2007-01-31 19:35:00 -
681:
名無しさん
目の前に広がる夜景が、玲花の顔をかすかに照らす。玲花は、やっぱり女の子らしくてかわいい。
簡単なことだ。たった一言、《好きだ》って言えばいい。玲花とハナが店に揃えば、向かうところ敵なしだ。
だけど…−だけど。2007-01-31 19:36:00 -
682:
名無しさん
《無理だ。》2007-01-31 19:36:00 -
683:
名無しさん
以前の俺なら、迷わず言えただろう言葉も、今は言えない。だって、ハナの顔が頭から離れない。ハナが俺のことを好きじゃなくても、ハナに他の好きな人がいても、俺には、…−ハナしか見えへん。
黙りこくった俺を、玲花は潤んだ瞳で見つめて、そして言った。
『ほらな?冷たくて、やさしい…−。』2007-01-31 19:37:00 -
684:
名無しさん
おわり?まだよみたいよぉ?
2007-01-31 21:43:00 -
685:
名無しさん
『言ってくれへんって、わかってたよ?ありがとう』
帰り道、玲花は小さな声でそう言った。2007-02-01 03:08:00 -
686:
名無しさん
車内にそれ以上の会話はなく、若干の気まずさが二人を包む。雪が、また降り始めていた。
「んな、気を付けて。」
玲花の家の前に到着し、俺はそう別れを告げた。
−…トンッ2007-02-01 03:09:00 -
687:
名無しさん
ほんの、一瞬。甘い香水が、薫る。
《あ、これ…元カノと一緒。なんやったっけ…。えっと、ベビードール…?》
突然のことで、状況がつかめないまま…−そんなことだけが、頭に浮かんだ。
玲花は、俺の胸元に顔を埋め、ギュッと俺に抱きつきながら、鼻をすすって、泣いていた。2007-02-01 03:10:00 -
688:
名無しさん
「玲…花?」
抱き締め返すことも、引き剥がすことも出来ず、俺は彼女の名前を呼んだ。
2007-02-01 03:10:00 -
689:
名無しさん
彼女は俺の胸元から体を離すと、
『准、変わったね!』
と、それだけ言って涙を拭い、満面の笑みでバイバイ、と手を振った。
マンションのエントランスのその奥に、消えていく玲花を、俺はいつまでも見ていた。2007-02-01 03:12:00 -
690:
名無しさん
彼女は、春が来たらこの街を出るらしい。2007-02-01 03:12:00 -
691:
名無しさん
2007-02-01 03:12:00 -
692:
名無しさん
『なぁ…准が設定したあたしの着信音、これやったやんな?』
ふと、ハナがそう聞いてきて、現実世界に引き戻された。
《そういえば、そうやったっけ…−》2007-02-01 03:14:00 -
693:
名無しさん
確か、ダウンロードランキングで一番上にあって、勝手に設定したはずだった。
この歌…
「いい歌詞やんな?!」 『安っぽい歌詞。』
曲が終わり、MCのむやみに明るい解説を後ろに、二人の声が重なった。2007-02-01 03:15:00 -
694:
名無しさん
少し驚いた顔して、ハナと俺は顔を見合わせた。
「えっ?いい歌やん!」 『はぁ?准センスないな!どこがやねん。』
「何やねんお前!可愛げのない女やな!」
『うっさいわボケ!死んでしまえ!笑』
「おい、だからそれ言い過ぎやろ!笑」2007-02-01 03:16:00 -
695:
名無しさん
それは久々に見た気がした、ハナの笑顔。
なんでかうれしくなって、俺は何度もハナを横目に見つめた。
赤信号で、車が止まる。 静かに、静かに雪が降る。2007-02-01 03:17:00 -
696:
名無しさん
『セッタちょーだい?』
その言葉に、胸ポケットからタバコを取出し、ハナに渡した。ハナがタバコを加えたのを確認してから、ライターに火を点け、ハナの口元まで持っていった。
彼女に初めてあった日に、そうしたみたいに。
ありがと、と言ってから、彼女はそのままタバコに火を点けた。ハナの長い前髪がかすかに手に触れて、こそばかった。2007-02-01 03:17:00 -
697:
名無しさん
フーッと、細い煙が上がる。そしてハナのその尖らした唇に、俺は気が付いたらキスをしていた。
時間が止まる。
細い道に、朝方他に車はなく、信号は青に変わり、また赤に変わった。
2007-02-01 03:18:00 -
698:
名無しさん
なぁハナ
永遠を、お前は信じてた?
安っぽい歌詞やって、お前はそう言ったけど
愛を囁く言葉なんて、もともと全部安っぽいねん。
だって‘愛’が何なのかなんて、誰も知らない。 それでもみんな、必死で考えてそれを求める。2007-02-01 03:20:00 -
699:
名無しさん
ハナ。
だから俺は、
またお前に会えたら
壊れるくらい強く抱き締めて、
『愛してるで』って、 言うと思うねん。2007-02-01 03:22:00 -
700:
名無しさん
2003年12月23日
2007-02-01 03:26:00