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ハナ
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1:
名無しさん
ハナが、口の右端だけを上げて笑う。
何か企んでいる証拠。2006-11-27 03:04:00 -
60:
名無しさん
三組目。
若い二人組。リピーターみたいで、一人が前に着いた玲花を指名。あちゃぁ〜…。「すいません、玲花今日はちょっと…」『なんでやねん!今日は入ってるって玲花ちゃんからメールあったから来てんのに!』「本間すみません。諸事情で…。」そんな会話で納得する訳もなく。2006-12-01 01:35:00 -
61:
名無しさん
説得するが客呼び失敗。
プンプン怒って帰って行った…。俺もまだまだやわ。さぁ、玲花の件、なんて説明するかな〜…。2006-12-01 01:42:00 -
62:
名無しさん
そんなこんなで30分。
一組目の常連さん、嬢変えの時間。うちの店は他店とはちょっと違って。
《そろそろ女の子交替のお時間なんですが、指名のほうどうされますか?》
って、ボーイが聞く。これについては賛否両論やけど、今のとこ帰るつもりはない。
まぁ、あのお客さんには聞くだけ無駄。あの人はこの店に通い初めて約1年。未だ指名ってやつをしたことがない。なんかのポリシー?…らしい。2006-12-01 01:44:00 -
63:
名無しさん
《ままま、あの人が後で下に降りてきた時、ハナがどんなやったか聞いてみよう−》そんなことを思ってたら。インカムから聞こえた報告にびっくり。
「一番テーブル佐々木さん(例の常連客)ハナさん指名です。」2006-12-01 01:47:00 -
64:
名無しさん
まじで?!
「めずらしいな、了解。」なんて、冷静な振りして心の中では意外な展開に驚きを隠せない。やっぱり、面接で感じたさっきの直感は…ぃや、偶然ってこともあるしな、うん。2006-12-01 01:50:00 -
65:
名無しさん
改めまして三組目。
残りのレギュラー嬢二人、2個1の奈々ちゃん美々ちゃんが呼んでくれたこれまた常連客。いかにも[昔やんちゃしてました]系のこの二人組のお兄さん達、実は俺の先輩。現場仕事でそこそこ儲けてるくせに値切られて値切られてちょっと大変。まぁ、よく来てくれるしよしとしよか。
三番テーブルにご案内。2006-12-01 01:55:00 -
66:
名無しさん
そんなこんなで、今日はちょっと調子がいい。やっぱ華金は熱いね。けど嬢が足りない。あかんわ〜、コレ。やっぱ痛い。
PM11:00
佐々木さん一時間延長の後お帰り。「ありがとうございました!!」と下までお見送り。2006-12-01 01:59:00 -
67:
名無しさん
『おい准!』
嬢の見送りはエレベーター前まで。下までの見送りはボーイの仕事。佐々木さんと二人きりのエレベーターの中。先に話し掛けてきたのは佐々木さん。「はいはい!なんですか?」
『えぇ子入れたやんけ。ありゃ売れるぞ!』あぁ、ハナの話。「ははっ!本間ですか?どうでした?」2006-12-01 02:02:00 -
68:
名無しさん
『いや、おもろかった!またくるわ!』それだけ言い残して佐々木さん帰宅。
なんや、ちょっと気になるやんけ。
まっいいや。嬢も開いたし、客呼び客呼び!
ちなみに二番テーブルのリーマン三人組。案の定リナの調子が良くて大盛り上がり。ありゃまだまだ延長いけるな…。2006-12-01 02:05:00 -
69:
名無しさん
うちの店、何度も言いますが女の子足りてません。なんで、変われる女の子がいない場合、[女の子交替のお時間]…てやつはない!気に入ったならいいけど、(指名料払わなくてもずっと話せるから)そうでない場合はちと厄介。俺なら嫌やね、こんな店。
2006-12-01 02:08:00 -
70:
名無しさん
「すいません今ちょっと開いてる女の子一人しかいないんですけど、その分サービスするんで!どうですか一杯!」何百回も言ってきた言葉を今日も繰り返す。何故か世間話になり、19で店長という俺を何故か気に入ってくれ、フランクミューラのおじさまと何故か携帯を交換し、何故かそのままご案内。
2006-12-01 02:18:00 -
71:
名無しさん
そのまま店に一緒に上がって、客二人に対して女の子一人のフォローと、ハナの接客を観察したいのとで、カウンターに案内した。
ボーイ二人には下に回って客呼びをしてもらう。‘待ってでも飲みたい’っていうおいしい客の。2006-12-01 02:28:00 -
72:
名無しさん
とりあえずヘネシーを卸してもらい、ハナに作ってもらってから、俺を含めた四人で乾杯。ボーイの仕事をこなしながらも、会話は集中して意識する。ロレックスのおじさまは佐藤さん。フランクミューラのおじさまは加藤さん。どちらも遊び慣れてるみたいで綺麗に飲みはる。正直、結構難しい話が多くてとまどった。
…けど。ハナはもっとすごかった。しっとり、ゆっくり。心地よい声色で二人の会話に相づちを打ち、意見し、肯定し、10回に1度否定する。話をちゃんと聞きながらも灰皿はちゃんと変え、丁度良いペースで酒を作り、無駄の無い手つきでグラスの水滴を拭き取り、目を合わせたままテーブルを綺麗に片付けていた。2006-12-01 02:37:00 -
73:
名無しさん
‘上品’
接客中の彼女には、まさしくこの言葉が似合った。2006-12-01 02:38:00 -
74:
名無しさん
俺は思わず固まった。だって、シャンパンなんてイベントある時くらいしか…
「店長て!んな考えんでもいいがな!んなドンペリ!ドンペリ持って来い!」
ありや〜っす!2006-12-01 02:46:00 -
75:
名無しさん
その後。
普段あまりにも出ないため、その日店にあった合計たった3本のドンペリを3本とも開けて、加藤さんと佐藤さんは帰っていった。
進められるがまま飲んだシャンパンは俺をふらふらにしたのに、俺より飲んでいたハナは何も無かったかのような平気な顔をしていた。どうもザルみたいだ…。
下まで見送りに行った時、フランクミューラーの加藤さんは「また絶対来るから!」という約束と、もう一つうれしい言葉をくれた。『ハナって子、どっかでみたことあると思ったら。新地のCRUWにおったココやってんな!』2006-12-01 02:53:00 -
76:
名無しさん
酔っているせいでなかなか回らない舌をがんばって回して、そのまま加藤さんに続きを聞いた。
1ヵ月前にたまたま行った接待先が、新地CRUWだったということ。その時、ナンバー1だと紹介で隣についたのがハナだったということ。といっても指名がかぶりにかぶり数分しか話してないともつぶやいていた。2006-12-01 03:13:00 -
77:
名無しさん
新地『CRUW』、元NO1キャバ嬢ココは、ローカルもローカル、club『RAIN』に体験入店しにきた、今はハナ。
《本名が心やから、ココなんかな…。》
なんてどうでもいいこと考えながらも、何かが変わる、予感みたいなもんもしっかり感じた。俺や、RAINが−…2006-12-26 03:13:00 -
78:
名無しさん
AM5:00−
そこそこの入りで、華の金曜日、営業終了。他の嬢達を次々に送りに出す。ちなみにうちでは送りもボーイの仕事。本間、頑張ってくれてます、うちの子達。
『そのまま帰っていいで。また明日連絡するわ。』
いつも通りの、閉店作業終了の合図を告げる。
さてと。2006-12-26 03:20:00 -
79:
名無しさん
『ハナさん、送りどこ?』
…−そりゃ、まぁ。
もちろん店長の俺だって、送り出します。
うん、だから、人足りてないんだってば。2006-12-26 03:22:00 -
80:
名無しさん
『…ぃ。』
着替え終わったハナは、ソファに座って下を向いていた。
「え?ごめん、なんて?」聞き取れず、聞き直す。2006-12-26 03:38:00 -
81:
名無しさん
『……ぃ。』
「ごめん、もう一回!」
『…なぃ。』
…え?えっ?2006-12-26 03:42:00 -
82:
名無しさん
『はぁ。だから、ないんだってば!!』
きょどる俺についにイラッと来たのか、今度ははっきりそう言った。
…いや、聞こえてるんだけどね?そうじゃなくて、ね?2006-12-26 03:44:00 -
83:
名無しさん
「ないって…どういうこと?どうすればいい?」
すごく当たり前で、最適な質問が、ごく自然に俺の口から出た。
しばしの沈黙。2006-12-26 03:47:00 -
84:
名無しさん
ハナは黙ったまんま、相変わらず下を向いている。うちみたいなローカル店に、大手の系列みたいに即日入居出来るマンションなんて、用意されてるわけもなく。
…まじ、どうすればいい?てか、どうしろと?
質問に答えないハナを目の前に、キョドリ続ける俺。
…かっこわる。2006-12-26 03:52:00 -
85:
名無しさん
ふと、ハナに目をやる。
と、顔は下に向けたまま、場違いにも、何故かにやける彼女が目に入った。
《何こいつ、からかってんか?》なんて、思った瞬間、彼女が顔をあげ、目が合った。
と、また同時に彼女が口を開いた。2006-12-26 04:03:00 -
86:
名無しさん
おもろい
2006-12-26 04:12:00 -
87:
名無しさん
『店泊してもいい?』
−…もうすぐ暖房切れるんですけど、この店。2006-12-26 12:25:00 -
88:
名無しさん
「あかん。もうすぐ暖房切れるし、風邪引くやろ」
『でも帰るとこないもん』
「絶対寒いで。毛布も何もないねんで?」
『平気やもん。』
「風呂もないで?なんもないで?どうするん?」2006-12-26 12:30:00 -
89:
名無しさん
『…………大丈夫やもん』
小さい声で、本間につぶやくようにそう言った彼女は2006-12-26 12:34:00 -
90:
名無しさん
小さな子供みたいで
捨てられた子猫みたいで
ほっとけなかった。2006-12-26 12:35:00 -
91:
名無しさん
「はぁ。もう!俺ん家来るか?言っとくけどバリ汚いからな!?」
言い終わる側から、コクコク何度もうなずいて、頭を振っている。
口の右端だけ上げて笑いながら。2006-12-26 12:42:00 -
92:
名無しさん
「うわっ、それが狙いやったやろっ?!」
つられて俺も笑う。
ハナは相変わらずそのまんまの笑顔で頷く。
「最悪やな?!魔性やな?!ちなみに俺一人暮らしやで?」
相変わらずハナは頭を縦に振るばかり。2006-12-26 12:46:00 -
93:
名無しさん
「手ぇ出さへん保障なんてないからな!」
同じノリで言ってみた。するとハナは…
すごい勢いで首を横に振っていた。
あ、そこはあかんねや。2006-12-26 12:50:00 -
94:
名無しさん
「寒ッ。うわぁ〜雪降ってるやんか。」
駐車場までの道程を、二人並んで歩く。指先から体が凍る寒さの中。
思わず背中が曲がる俺の隣で、ハナは真っすぐ背筋を伸ばして歩いていて、やけに綺麗だと思った。
雪は、彼女の少し明るい髪に落ちて溶けて…−吸い込まれてくみたいだった。純白で、汚れを知らない、そんな雪の美しさすらも、彼女に。2006-12-26 13:01:00 -
95:
名無しさん
なぁハナ。
お前を思い出す度、雪を。雪が降る度、お前を。
俺は思い出すよ。きっと、一生忘れられへんかもしれん。
お前は、〔忘れていいよ〕って言ったけど。2006-12-26 13:07:00 -
96:
名無しさん
かじかんだ手は車のキーを、なかなか鍵穴にすっぽりと入れてくれない。
『さ〜む〜い〜!早く開けてやぁ!』
「ちょっ、急かすなって。余計鍵入らんやんけ!………あっ、入った!」
カチャリと音が鳴った瞬間に、二人同時にドアを開けた。んで、すぐに閉める。2006-12-26 13:13:00 -
97:
名無しさん
『暖房!暖房入れて!暖房!暖房入れてってば!』
「うるさいねん!ちょっと待っとけ。お前全然さっきとキャラちゃうやんけ…」
《捨てられた子猫、どこいってん…》2006-12-26 13:16:00 -
98:
名無しさん
『うるさいなぁ〜!キャラ作りは仕事や、仕事!笑』
「バリ言うやん。笑」
そのまま、フロントガラスに降りた霜が溶けるまで、発進せずに車内が暖かくなるのを待った。ハンドルに頬を付けて、なんとなく彼女に目をやる。2006-12-26 13:21:00 -
99:
名無しさん
彼女はアヒル口をとがらせながら、20枚近くにまで貯まったCDを、一枚一枚手にとって物色している。
何ていうか、ビビッて来て、一目惚れして、それは確かにそうで、そうやねんけど…こうして見れば。
普通やな、意外と。
普通に、綺麗な、女の子。2006-12-26 13:27:00 -
100:
名無しさん
そんなこと考えてたらハナがこっちを向いて、思わず俺は目を逸らしてしまって、それを隠すためにタバコに手を伸ばした。中学生の時からこれ一筋。セブンスター。
『タバコ、貰っていい?』ポツリと、彼女が呟いた。2006-12-26 13:36:00