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ハナ

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  • 1:

    名無しさん

    ハナが、口の右端だけを上げて笑う。



    何か企んでいる証拠。

    2006-11-27 03:04:00
  • 700:

    名無しさん




    2003年12月23日

    2007-02-01 03:26:00
  • 701:

    名無しさん

    AM6:00

    RAINにも、赤と緑に光るツリーを置いてみたりして、クリスマスムードは更に濃くなる。

    ボーナス、冬休み、年末、忘年会。すべてが揃ったこの時期は、毎年のことやけど、目が回るほど忙しくて参る。なんて、言ってられるうちが華やねんけど。

    2007-02-01 03:27:00
  • 702:

    名無しさん

    昨日と同じ、疲れた体で家に帰り、テレビを点けた。天気予報のお姉さんが、明日はもしかしたらホワイトクリスマスになるかもしれないと、笑顔で言っていた。


    《クリスマス、ねぇ…−》

    2007-02-01 03:27:00
  • 703:

    名無しさん

    恋人達の聖なる夜も、俺には関係ない。むしろそれは稼ぎ時でしかなくて、わかってはいることなんやけど、ふとした瞬間に少し、悲しくなったりする。    
    《けど…》        
    キッチンに立って、もう見慣れた、料理を作るハナの横顔をチラ見する。    
    顔がにやけるのが、わかった。
    恋人でもなんでもないけど、クリスマス。隣に好きな女がいるのはやっぱりうれしい。

    2007-02-01 03:29:00
  • 704:

    名無しさん

    …−
    夜が明ける。       

    『ご飯出来たで〜?』
    その声と同時に、キッチンに向かった。

    2007-02-01 03:30:00
  • 705:

    名無しさん

    今日は、久々にあのオムライス。卵はきれいに半熟で、出来たてのそれはむちゃくちゃ上手そうだった。

    そういえば、玲花と会ったあの日も、このオムライスを食べたっけ。『作ってないよ』とハナは言ったくせに、冷蔵庫にはしっかりと二つオムライスが並んでいて、嘘をつかせてしまったんやって、少し後悔した。眠ってたハナを起こして、一緒に食べた。お腹は空いてなかったはずなのに、やっぱりハナのオムライスは何よりもおいしくて、あっという間に食べ切れた。

    2007-02-01 03:30:00
  • 706:

    名無しさん


    『美味しい?』

    めずらしくハナが俺にそう聞いた。口いっぱいに頬張りながら、笑ってうなずいた。

    2007-02-01 03:31:00
  • 707:

    名無しさん

    AM9:00

    『准〜?ごめん、忘れてた!バスタオルとって!』
    「ん〜…」
    寝かけていた開かない目を、右手でこすりながら、その声でベットから起き上がった。いつもの棚から一枚タオルを手に取る。そのままバスルームに向かった。何も考えないまま、ドアを開けた。

    2007-02-01 03:50:00
  • 708:

    名無しさん

    ガチャッ…
    「…あ、ごめん!!」   
    勢い良く、ドアを閉めた。 

    ドクンと、大きく心臓が鳴った。

    2007-02-01 03:53:00
  • 709:

    名無しさん


    《…え?何あれ…−》   

    眠気は、一気に冷める。

    2007-02-01 03:54:00
  • 710:

    名無しさん

    『…バスタオル。』
    ハナの声はひどく怒っていた。タオルを持ったままだった右手をドアの向こうに差し出すと、ひったくるようにそれを取られた。   
    だけど、今はそんなことはどうでもいい。

    寝呆けていた瞳に、はっきりと移った、〔それ〕。

    2007-02-01 03:54:00
  • 711:

    名無しさん


    …−ハナの細い背中にある、無数の火傷跡。

    あれは…−根性焼き。タバコの先を、押しつけた跡。

    2007-02-01 03:55:00
  • 712:

    名無しさん

    ガチャッ…−        
    また、バスルームのドアが開く音がして、俺はそっちに視線を向けた。     

    『死んでしまえ!』    
    ハナはそう言って俺を睨んだ後、濡れた髪のまま、真っすぐ布団にもぐりこんだ。

    2007-02-01 03:57:00
  • 713:

    名無しさん

    「なぁ!いつやられた?誰にやられてん?!なぁ、ハナって!!」

    相変わらずハナは黙ったままで、表情すら伺えない。だけど、背中が小さく震えていた。

    《ハナ…−。ハナ。》

    2007-02-01 03:58:00
  • 714:

    名無しさん

    今まで始めから一気に読みました???
    涙がすでに止まりません?
    続きが気になって仕方ないです??

    2007-02-01 04:18:00
  • 715:

    名無しさん

    表現力すごいしいい小説やけどどこで泣ける?泣ける部分あったっけ?

    2007-02-01 12:19:00
  • 716:

    sage

    >>732-733ファンスレでして
    読みにくなるやん

    2007-02-01 14:17:00
  • 717:

    ↑さげれてないやん笑

    2007-02-01 15:14:00
  • 718:

    紅音◆LTrx1cGfeo

    早く鳴りだした鼓動がやっと収まった頃、俺はそっとハナがいるベットに座り、震えている彼女の濡れた髪を撫でた。きっと、泣いている。

    「ごめん。ごめんハナ。 …−風邪引くで?」

    ゆっくり布団をとって、ハナの顔をのぞく。スッピンのハナは、いつもとは正反対に幼くて、子供みたいだ。

    2007-02-01 22:34:00
  • 719:

    名無しさん

    涙と、乾かしていない髪のせいで、布団が少し湿っている。          
    泣き顔を         
    見たのは初めてで
    ズキンと、胸が痛んだ。  
    守ってやりたいと、強く思った…−。

    2007-02-01 22:35:00
  • 720:

    名無しさん

    …−



    水滴が滴る。ハナの濡れた前髪をそっとかきあげた。

    2007-02-01 22:36:00
  • 721:

    名無しさん

    背中の火傷は全部で12個。よく見ると、最近出来たものではなさそうだった。消えかけで、だけど決して消えないその傷の、一つ一つにキスをした。腹と胸元にも、切られたような傷があり、それは想像以上に大きなハナの黒い闇を俺に教える。指でそっとなぞり、キスを繰り返す。

    ハナの体はすごく暖かくて、愛しさばかりがこみあげる。ハナは何度も隠そうとしたけど、傷だらけの体は、汚くなんかない。柔らかくてきめ細やかな肌と相反したそれは、むしろハナの体を綺麗に飾っている気さえした。

    ハナは、ギュッと強く目を瞑り、何度か小さな声を上げた。

    2007-02-01 22:37:00
  • 722:

    名無しさん



    こんなにも、想いが溢れて止まらないSEXは初めてだった。

    2007-02-01 22:37:00
  • 723:

    名無しさん

    なぁハナ         
    冷たくて、寒いだけだ。
    だけど、心惹かれる。

    綺麗で、真っ白な雪。

    2007-02-01 22:38:00
  • 724:

    名無しさん

    何色にも染まるそれは、 本当はきっと、
    何色にも染められへんのかもしれん。        
    だって、降り積もった雪は 
    どれだけ汚く染まっても  
    それを隠すようにまた新しい雪が降る。

    2007-02-01 22:40:00
  • 725:

    名無しさん

    ハナ。          
    汚れてなんかないで

    何度見てもお前は
    綺麗やったから。

    2007-02-01 22:40:00
  • 726:

    名無しさん

    久々に、ハナの胸元に顔を埋めて目を閉じる。人の体温はこんなにも、あったかいもんなんか。      
    『准ちゃん…?』     
    ハナの声は、やっぱり幼くてやさしい。       
    『何で源氏名ハナにしたん?って質問、あたしちゃんと答えてなかったやんな』 
    その言葉で、ハナの顔を見上げる。目が合って、彼女はクスッと笑った。

    2007-02-01 22:43:00
  • 727:

    名無しさん

    『…−あたしの本名、覚えてる?』
    「心やろ?立花こころ。」
    『うん、そう。』

    そしてハナは、ゆっくりと話し始めた。

    2007-02-01 22:43:00
  • 728:

    名無しさん

    『幸せやってんで?パパが、あたしの10歳の誕生日に家を出るまでは…−なんで出ていったかなんて今だに知らへんけど。それからやねん、ママが変わったの。虐待…って言うんかな?今いち、ピンとこーへんけど。』

    『毎日パパの悪口言ってた。最低な奴や、お前とあたしは捨てられてんって。』 

    その言葉にふと、玲花の顔が浮かび、すぐに消えた。

    2007-02-01 22:44:00
  • 729:

    名無しさん

    『中学に上がる頃かな、ママに新しい男が出来てん。そいつがまた嫌な奴で、ほとんど家には帰らへんくなった。夜遅くまで出歩いてたら、自然と悪い友達も増えた。17の時、少年院に入れられて、そこ出てからも、男の家とか友達の家渡り歩いて、たったの一回も実家には帰らんかった。気付いたら18になってて… 
    何でやろうな、ふと、ママの顔が見たくなってん。』 

    関を切ったように続けるハナを横に、俺はひたすら、黙って聞くことしか出来なかった。         
    『何年ぶりかに帰った家は、売り家に変わってて、ママはいなくなってた。あぁ、本間に捨てられたんやって思ったわ。自分で家出といて何やけど。それから何ヵ月後かの…−雨の日にな、街で偶然、本間に偶然、親戚に会ってん。ほんで、むちゃくちゃ怒られた。』

    2007-02-01 22:45:00
  • 730:

    名無しさん

    ハナはそこで一度口を閉じた。無理せんでいいで、と言うと、してないよ、と笑った。ハナはやっぱり嘘つきだ。

    『ママな…自殺しててん。遺書も何も残さずに、首吊って。』

    ハナは、ようやく、泣きそうになっていた。

    2007-02-01 22:46:00
  • 731:

    名無しさん

    『あの人はきっと、愛情表現が下手なだけで…やっぱり、パパのこと、死ぬほど好きだったんやと思う。だから死んだんちゃうかな。よくわからへんけど。』  

    何も言えず、抱き締めることしか出来なかった。
    ハナはまた、俺の髪の毛をやさしく撫でた。

    2007-02-01 22:47:00
  • 732:

    名無しさん

    『うちのママとパパはな、同級生やってんて!んで、‘立花’やろ?やから、ママはパパのこと‘ハナ’って呼んでてん!』

    涙を堪えた声で、無理してはしゃいで、ハナがそう言った。

    2007-02-01 22:48:00
  • 733:

    名無しさん

    ‘大好きやった人の、大切な人の名前’…−     
    あの日、確かにハナはそう言った。         
    きっと、ハナの父親が大好きだった母親と同じで。  
    何をされても、離れていても、ハナは。
    その母を、今でもずっと、…−想ってるんだろう。

    2007-02-01 23:16:00
  • 734:

    名無しさん





    2007-02-01 23:29:00
  • 735:

    名無しさん

    PM7:00

    『いってらっしゃい!』

    クリスマスイベントの用意があるため、少し早めに家を出る。ハナのその言葉をいつも通り背中に聞きながら、ドアノブに手を掛けた。

    2007-02-01 23:30:00
  • 736:

    名無しさん

    『准ちゃん!』

    そう呼ばれて振り返ると、ハナは口の右端だけを上げて…−笑った。

    「准ちゃん言うな!笑」

    2007-02-01 23:31:00
  • 737:

    名無しさん


    それが、
    ハナを見た最後だった。

    2007-02-01 23:32:00
  • 738:

    名無しさん

    2003年12月24日  
    日付が変わって、仕事が終わったら、言おうと思っていた。          
                 

    …−《アイシテル》

    2007-02-01 23:34:00
  • 739:

    名無しさん





    2007-02-01 23:44:00
  • 740:

    名無しさん

    准ちゃんへ        
    あたしを、助けてくれてありがとう。       あたしと、一緒にいてくれてありがとう。      
    准ちゃん。       大好きだったよ。     
    あたしは、准ちゃんのことを忘れないけど、あたしのことは忘れていいよ。  何も言わずに、さよならしてごめんね。       
    ハナ

    2007-02-01 23:47:00
  • 741:

    名無しさん





    2007-02-01 23:47:00
  • 742:

    名無しさん





    2007-02-02 00:43:00
  • 743:

    名無しさん



    Final
    SIDE ハナ

    2007-02-02 00:44:00
  • 744:

    名無しさん

    『准ちゃん言うな!』   
    あたしが彼をそう呼ぶと、決まって准はこう言った。それがおもしろくて、あたしはわざと‘准ちゃん’と呼んだりした。

    あの日、彼と最後に交わしたのもその言葉だった。
    そしてまた、整った顔をくしゃっと歪まして、彼は笑ったんだった。

    2007-02-02 00:45:00
  • 745:

    名無しさん

    涙が止まらなくて、上手に字が書けない。何度も何度も、あたしはそれを書き直した。
    伝えたいことや、言っておきたい言葉はたくさん思い浮かぶのに、うまく表現出来なくて、結局便箋一枚だけで終わってしまった。

    最後の最後まで、素直になれないこんなあたしを、准ちゃんはどう思うだろう。

    2007-02-02 00:45:00
  • 746:

    名無しさん

    まとめていた荷物を手に取る。といっても、ここに来たあの日と同じ様に、カバンは一つだけで、中身もほとんど空っぽだった。   
    准と一緒に買いに行った大量の服も、准に選んでもらったドレスも、お揃いの食器も…−。咲君と過ごしたあの部屋に、置いていったのと同じ様に       
    全部置いていく。     
    だけど、‘いらないから’じゃない。        
    そうでもしないと、一つ一つに思い出が多すぎて、いつまでも准から離れられない気がしたのだ。

    2007-02-02 00:47:00
  • 747:

    名無しさん

    2003年12月24日  
    AM0:00

    机の上に置いた、黒色の携帯があの着うたを鳴らす。 
    きっと准からだろう。いつもの出勤時間はとっくに過ぎている。

    2007-02-02 00:48:00
  • 748:

    名無しさん

    〜♪
    永遠を 貴方は信じてた?奪わないで いなくならないで あたしは 君の隣にいたいよ 叶わなくても 届かなくても あたしは あたしには 貴方しかいないの
    毎晩 何を祈るの? 真っ白な雪が君を隠して 見失ってしまう 好き それすらもう 伝えられないの? 

    最初は、何度聞いても安っぽい歌詞だとしか思えなかった。

    2007-02-02 00:49:00
  • 749:

    名無しさん

    だけど『いい歌やな』って、准があの時言ったから、あたしはこの歌を嫌いにはなれなかった。       
    だって、
    准の隣にいる時だけは
    ‘永遠’を、
    信じてみたくなったから。

    2007-02-02 00:50:00
  • 750:

    名無しさん

    鳴り続ける携帯を背中に、あたしは玄関に向かった。 
    ヒールを履いて、最後にもう一度だけ、部屋の中を見渡した。
    黒色のカーテン、白いベット、大きなソファーに、ふわふわのカーペット。可愛いタンス、古いテレビ、たまに音が飛ぶコンポ、星型の掛け時計。       
    全部を、目蓋の裏に焼き付けた。          
    いつも准があたしの為に玄関の上に置いていた鍵を、同じ所に置いて…−

    2007-02-02 00:52:00
  • 751:

    名無しさん


    家を出た。

    2007-02-02 00:52:00
  • 752:

    名無しさん

    マンションを出ると、見覚えのある車が止まっていた。迷う事無くドアを開けて助手席に座る。

    『誕生日、おめでとう』
    と、咲君が言った。

    2007-02-02 00:53:00
  • 753:

    名無しさん

    車が走りだす。
    あたしは何も言わないまま、さっき出てきた准のマンションを、ずっと見つめていた。

    …−

    2007-02-02 00:54:00
  • 754:

    名無しさん

    ねぇ准ちゃん       
    あの年のクリスマスに、結局雪は降らなかったね。  
    一緒にいた最後の日、  准ちゃんは        
    あたしを世界で、
    一番幸せにしてくれた。

    2007-02-02 00:55:00
  • 755:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 756:

    >>774は偽主

    2007-02-02 13:54:00
  • 757:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 758:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 759:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 760:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 761:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 762:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 763:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 764:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 765:

    名無しさん

    本当に紅音さん?

    2007-02-02 23:21:00
  • 766:

    名無しさん

    偽やん

    2007-02-02 23:47:00
  • 767:

    お待たせしました。パソコンと携帯から更新します。たくさんの応援とご感想、ありがとうございました!


    2007-02-05 12:33:00
  • 768:

    2006年12月。


    あれから3年が経ち、
    あたしはもうすぐ、24歳になる。

    2007-02-05 12:37:00
  • 769:

    咲君は、年明けにはCRUWを辞めた。元からそのつもりだったと言っていた。
    同時にあたしも夜の世界から抜け出し、前よりもずっと小さなマンションで、そのまま二人同棲を始めた。
    慣れない仕事のせいで、毎日必要以上にくたくたになって帰ってくる彼の姿を、あたしはうれしいというよりむしろ、何故か申し訳なく思った。
    それでも、「幸せだよ」と、嘘をついて笑った。

    2007-02-05 12:38:00
  • 770:

    必然的に、以前とは逆転した規則正しい日常に戻る。 
    朝起きて、夜寝る生活。

    そこにはネオンも、汗をかくグラスも折り畳まれたおしぼりも、夜から朝に変わるあの瞬間も…−なくて。始めはやっぱり少し淋しかったけど、今では多分、もうすぐ思い出せなくなるんじゃないかとすら思う。

    2007-02-05 12:44:00
  • 771:

    去年の夏。
    咲君は家を出ていった。

    狂っていた金銭感覚が元に戻り始めたのと、あたしの時給が50円上がったのと、毎朝作っていた咲君へのお弁当のおかずが、ワンパターンになり始めた頃だった。

    2007-02-05 12:45:00
  • 772:

    別れたことに、これといって理由はなかったと思う。 
    ただ単純に、あたしは彼を好きだったけど、以前程愛してはいなかったし、咲君はあたしを愛していると言ってくれたけど、そこにはいつも不安があった。

    そして何よりも、あたしは何度咲君に抱かれても、あの人の暖かいキスばかりを思い浮べていて、勘の鋭い咲君は、きっとそれにも気付いていたんだと思う。  
    …−何も、言わなかったけれど。

    2007-02-05 12:46:00
  • 773:

    少したってから、知り合いに、咲君は夜に戻ったと聞いた。それがいいよと、あたしは言った。


    だって彼の細い腕は、どう見ても工事現場には向いていなかったから。
    白く眩しいシャンデリアの下で‘がんばってこい’と、キャバ嬢の背中を軽く押す、そのやさしい仕草のほうが、その腕にはずっと似合っていたから。

    2007-02-05 12:46:00
  • 774:

    咲君が家を出ていく日、
    『恋愛なんて、本間にタイミングが全てなんやなぁ』と、そう淋しそうに笑って彼は言った。       
    「そうやね」と、呟くように返事をした。      
    あたしは、咲君から一度逃げ、准ちゃんに出会って、恋をして、だけど咲君の元に帰った。        
    そして今度は、彼が二人の家を出て…−あたしは結局一人になった。

    2007-02-05 12:48:00
  • 775:

    想いが、届かなかったわけじゃない。叶わなかったわけじゃない。       
    受けとめなかったんだ。叶えなかったんだ。     

    そこにやさしいキスはあったのに。                     
    きっと、タイミングを間違えてしまったんだ。

    2007-02-05 12:50:00
  • 776:




    この三年は長かったけど、ひどくからっぽだった気がして、薄っぺらい。

    2007-02-05 12:51:00
  • 777:

    PM8:00

    「お疲れさまでした!」  
    朝も夜も、仕事終わりのこの言葉だけは変わらない。オーナーに頭を下げ、笑顔でそう行ってからカフェを出た。          
    路地を抜けて大通りに出れば、三年前と変わらない、イルミネーションで飾られた街がある。

    2007-02-05 12:52:00
  • 778:

    久々に、眩しいほどのネオンを見てみたいと思った。あたしのあの頃の象徴は、やっぱりあの光の中にある気がして。        
    駅前の、時計台がある公園に足を向ける。この街で、一番大きなツリーは、あそこに飾られてあるはずだ。 
    吐く息が白い。
    変わらない気持ちなんてないと思っていたのに、あたしは知ってしまった。
    それは、毎年寒くなれば白くなる息と同じで、当たり前のように変わらないんだなぁ、なんて。

    2007-02-05 12:54:00
  • 779:

    「うわぁ〜…」      
    クリスマスシーズンのせいか、やたらと多いカップル達の横で、あたしは思わず呟いた。

    赤、青、緑、黄色。色とりどりの電球が、交互に光り合って、すごく綺麗だった。灰皿が置いてある、一番端のベンチに座って、セッタに火を付けた。

    2007-02-05 12:55:00
  • 780:

    准ちゃんの家を出てから、タバコの量は一気に増えた。自分から離れたくせに、今だに彼を想ってセッタを吸うあたしは、カップルだらけのこの公園で、今どんな風に写っているんだろう。

    公園のあちこちで、手を繋いだカップルが、ツリーを前に微笑み合う。みんな、幸せそうだった。

    2007-02-05 12:56:00
  • 781:

    『やっぱ毎年見てたからさ、このツリー見ないと、クリスマス!って感じせぇへんねんな。玲花は!!』  
    …その名前に、思わず女の顔を見た。
    くるくるの巻髪に、ぱっちりとした大きな目の彼女はお人形さんみたいに可愛かった。ふと、ベビードールが薫る。         

    《…なわけないやんな笑》

    2007-02-05 12:58:00
  • 782:

    あたしは頭を振って、変な想像をを揉み消した。

    《感傷的になりすぎやわ。…−もう帰ろう。》

    タバコを最後に一口吸いこみ、灰皿に投げ込むと、煙を吐き出しベンチから立ち上がった。

    2007-02-05 12:59:00
  • 783:

    〜♪
    永遠を 貴方は信じてた? 
    バイト先から出た時に、マナーモードを解除したばかりの携帯が、あの歌を鳴らした。丁度公園で流れるBGMも、曲と曲との繋ぎの部分で、その音はやけに響いた…ように感じた。

    ‘玲花’と自分を呼んだ彼女が、振り返ってあたしを見て…−目が合う。

    2007-02-05 12:59:00
  • 784:

    〜♪
    毎晩 何を祈るの? 真っ白な雪が君を隠して…−  
    その視線を何故か逸らせないまま、茫然と立ち尽くしている間に、電話は切れた。BGMも、また新しい曲に変わり、また賑やかに音楽が流れ始める。

    あれから三年。もちろん、携帯は1、2回変えた。だけど、この着うただけは、一度も変えなかった。

    2007-02-05 13:00:00
  • 785:





    2007-02-05 13:01:00
  • 786:

    『あの…、違ってたらごめんなさい。もしかして、ハナさん?…ですか?』



    彼女はそっとあたしに近付き、そう言った。一瞬だけ悩んだ後、すぐに首を縦に振った。

    2007-02-05 13:02:00
  • 787:

    あたしは、‘玲花ちゃん’と話したこともなければ、顔を見たことすらない。だけど確信に近かった。それは彼女も同じで、そういうのはやっぱり、わかってしまうもんなんだと思った。 

    『あたし、玲花って言うねんけど…わかる?あ、ちょっとだけ待っててな』

    あたしがもう一度うなずくと、彼女はホッとしたように微笑むと、連れの男の元へ走って行った。そして何かを告げると、男に手を振り、また走ってこっちへ戻って来る。

    2007-02-05 13:03:00
  • 788:

    「あれ、彼氏?」あたしがそう聞くと、『せやで?』と、彼女は幸せそうに笑って、あたしの隣に座った。 

    『ハナちゃ…、あ、ハナって呼んでもいい?』    
    いいよと言うと、『うちも玲花でいいから!』と、また可愛い笑顔を見せた。

    2007-02-05 13:04:00
  • 789:

    『うちのコト、色々聞いてるやんなぁ?』      
    答えに困ったあたしは、苦笑いになっていたと思う。 
    『いぃねん、それはしゃぁないし笑。…突然、ごめんなぁ?でもうち、ずっと会ってみたいと思っててん!…‘ハナ’に。』

    ニコニコしながら話しだした彼女は、聞いていたよりずっといい子で、想像していたよりもずっと可愛かった。

    2007-02-05 13:05:00
  • 790:

    今彼女は、六本木のクラブで、チーママとして働いているらしく、わがままばかりの嬢達に、困ってばかりいると言った。あたしが水商売を辞めたことを告げると、うちの店で働かへん?なんて、冗談を言って笑っていた。外は寒くて、なんの気休めにもならないけど、あたしは煙草に手を伸ばした。

    『…セブンスター?      あたしもやねん。』 

    淋しそうに笑った彼女が、何を言いたかったのかくらいわかる。あたしの気持ちだってきっと、バレてる。

    2007-02-05 13:06:00
  • 791:

    『人間が一番、素直になれへん動物やねんて。』

    彼女はタバコケースからあたしと同じセブンスターを取り出すと、火を点けて深く吸い込んだ。

    吐き出した煙が、白く、揺れる。

    2007-02-05 13:07:00
  • 792:

    『水商売なんて、一々素直になってたら、やって行かれへんしな。

    なぁ、ハナが失ったもんって何やった?この世界で』

    夜に生きる女は、みんなそんなことを一度は考えるもんなんかな。だけど何を失っていたとしても、気付く頃にはすでに遅い。だって、一人はもう嫌やから。

    2007-02-05 13:08:00
  • 793:

    『あたしはな、多分それ。素直さ。プライドばっか押し上げて、自分の気持ちすら中々認めへんかった。』 
    『好きやって、やっと認めれる頃には、とっくの昔に引き返せへんところにおってん。客にならいくらでも言えた‘好き’が、どうしても、言えへんかった。』 

    「…玲花は、准のどこを好きになったん?」
    すぐに口からでたその言葉は、素朴な疑問。

    2007-02-05 13:09:00
  • 794:

    『…そう言われたら、上手く答えられへんけど。でも優しくて冷たい人やなって、いつも思ってた。人を簡単に切り離したり、完全に割り切ってたり。仕事やから、仕方ないことやねんけどさ。…その癖いつも、自分が一番しんどそうで。そういうとこかな、多分。』 
    なんとなく、わかる気がした。           

    『でもな、店辞めてから、一度だけ会ったことあって。その時、准変わったなって、思ったよ?』     
    「え?」

    2007-02-05 13:11:00
  • 795:

    『色々聞いててさ、客に。あたしの入れ変わりに入った‘ハナ’って子が、今RAINのNO1やって。』

    「佐々木さんやろ?」そう言うと、そうそう、と玲花は笑った。あの人は、バカみたいに噂好きやったから。

    『会って顔見た瞬間、わかった気ぃして。好きな人おんねんなって。根拠とかないけど、多分その子なんやろうなって。』

    2007-02-05 13:12:00
  • 796:

    何も言えなくなって、俯いた。目を閉じれば、准の顔ばかりが浮かぶ。

    『黒猫みたいな子って言ってたよ。ハナってどんな子なん?って聞いたとき。むっちゃ、うれしそうに。』 

    雪が、降り始めていた。

    2007-02-05 13:12:00
  • 797:

    『なぁハナ。

     …今でも、准を好き?』 

    自分の目から零れた涙が、手のひらにぽたぽたと落ちて、雪なのか涙なのか、いまいちよくわからなかった。

    2007-02-05 13:13:00
  • 798:

    彼を、思い出さない日なんてなかった。
    ‘ハナ’優しくあたしを呼ぶあの声や、くしゃってなる笑顔も、少し硬い髪の毛や、暖かい腕の中や、天国みたいだったあの部屋を。 
    思い出さない日なんてなかったんだ。

    だってあれは、黒い闇の中で、あたしを照らした一筋の光。

    2007-02-05 13:14:00
  • 799:

    偽物のネオンと、嘘ばかりの夜の世界で

    あたしが失ったものはきっと…−《准ちゃん》。

    彼でしか、なかった。

    2007-02-05 13:15:00
  • 800:



    だけど彼と出会えたのも、あの世界にいたからだ。  

    2007-02-05 13:16:00
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