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ハナ
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1:
名無しさん
ハナが、口の右端だけを上げて笑う。
何か企んでいる証拠。2006-11-27 03:04:00 -
701:
名無しさん
AM6:00
RAINにも、赤と緑に光るツリーを置いてみたりして、クリスマスムードは更に濃くなる。
ボーナス、冬休み、年末、忘年会。すべてが揃ったこの時期は、毎年のことやけど、目が回るほど忙しくて参る。なんて、言ってられるうちが華やねんけど。2007-02-01 03:27:00 -
702:
名無しさん
昨日と同じ、疲れた体で家に帰り、テレビを点けた。天気予報のお姉さんが、明日はもしかしたらホワイトクリスマスになるかもしれないと、笑顔で言っていた。
《クリスマス、ねぇ…−》2007-02-01 03:27:00 -
703:
名無しさん
恋人達の聖なる夜も、俺には関係ない。むしろそれは稼ぎ時でしかなくて、わかってはいることなんやけど、ふとした瞬間に少し、悲しくなったりする。
《けど…》
キッチンに立って、もう見慣れた、料理を作るハナの横顔をチラ見する。
顔がにやけるのが、わかった。
恋人でもなんでもないけど、クリスマス。隣に好きな女がいるのはやっぱりうれしい。2007-02-01 03:29:00 -
704:
名無しさん
…−
夜が明ける。
『ご飯出来たで〜?』
その声と同時に、キッチンに向かった。2007-02-01 03:30:00 -
705:
名無しさん
今日は、久々にあのオムライス。卵はきれいに半熟で、出来たてのそれはむちゃくちゃ上手そうだった。
そういえば、玲花と会ったあの日も、このオムライスを食べたっけ。『作ってないよ』とハナは言ったくせに、冷蔵庫にはしっかりと二つオムライスが並んでいて、嘘をつかせてしまったんやって、少し後悔した。眠ってたハナを起こして、一緒に食べた。お腹は空いてなかったはずなのに、やっぱりハナのオムライスは何よりもおいしくて、あっという間に食べ切れた。2007-02-01 03:30:00 -
706:
名無しさん
『美味しい?』
めずらしくハナが俺にそう聞いた。口いっぱいに頬張りながら、笑ってうなずいた。2007-02-01 03:31:00 -
707:
名無しさん
AM9:00
『准〜?ごめん、忘れてた!バスタオルとって!』
「ん〜…」
寝かけていた開かない目を、右手でこすりながら、その声でベットから起き上がった。いつもの棚から一枚タオルを手に取る。そのままバスルームに向かった。何も考えないまま、ドアを開けた。2007-02-01 03:50:00 -
708:
名無しさん
ガチャッ…
「…あ、ごめん!!」
勢い良く、ドアを閉めた。
ドクンと、大きく心臓が鳴った。2007-02-01 03:53:00 -
709:
名無しさん
《…え?何あれ…−》
眠気は、一気に冷める。
2007-02-01 03:54:00 -
710:
名無しさん
『…バスタオル。』
ハナの声はひどく怒っていた。タオルを持ったままだった右手をドアの向こうに差し出すと、ひったくるようにそれを取られた。
だけど、今はそんなことはどうでもいい。
寝呆けていた瞳に、はっきりと移った、〔それ〕。2007-02-01 03:54:00 -
711:
名無しさん
…−ハナの細い背中にある、無数の火傷跡。
あれは…−根性焼き。タバコの先を、押しつけた跡。
2007-02-01 03:55:00 -
712:
名無しさん
ガチャッ…−
また、バスルームのドアが開く音がして、俺はそっちに視線を向けた。
『死んでしまえ!』
ハナはそう言って俺を睨んだ後、濡れた髪のまま、真っすぐ布団にもぐりこんだ。2007-02-01 03:57:00 -
713:
名無しさん
「なぁ!いつやられた?誰にやられてん?!なぁ、ハナって!!」
相変わらずハナは黙ったままで、表情すら伺えない。だけど、背中が小さく震えていた。
《ハナ…−。ハナ。》2007-02-01 03:58:00 -
714:
名無しさん
今まで始めから一気に読みました???
涙がすでに止まりません?
続きが気になって仕方ないです??2007-02-01 04:18:00 -
715:
名無しさん
表現力すごいしいい小説やけどどこで泣ける?泣ける部分あったっけ?
2007-02-01 12:19:00 -
718:
紅音◆LTrx1cGfeo
早く鳴りだした鼓動がやっと収まった頃、俺はそっとハナがいるベットに座り、震えている彼女の濡れた髪を撫でた。きっと、泣いている。
「ごめん。ごめんハナ。 …−風邪引くで?」
ゆっくり布団をとって、ハナの顔をのぞく。スッピンのハナは、いつもとは正反対に幼くて、子供みたいだ。2007-02-01 22:34:00 -
719:
名無しさん
涙と、乾かしていない髪のせいで、布団が少し湿っている。
泣き顔を
見たのは初めてで
ズキンと、胸が痛んだ。
守ってやりたいと、強く思った…−。2007-02-01 22:35:00 -
720:
名無しさん
…−
水滴が滴る。ハナの濡れた前髪をそっとかきあげた。2007-02-01 22:36:00 -
721:
名無しさん
背中の火傷は全部で12個。よく見ると、最近出来たものではなさそうだった。消えかけで、だけど決して消えないその傷の、一つ一つにキスをした。腹と胸元にも、切られたような傷があり、それは想像以上に大きなハナの黒い闇を俺に教える。指でそっとなぞり、キスを繰り返す。
ハナの体はすごく暖かくて、愛しさばかりがこみあげる。ハナは何度も隠そうとしたけど、傷だらけの体は、汚くなんかない。柔らかくてきめ細やかな肌と相反したそれは、むしろハナの体を綺麗に飾っている気さえした。
ハナは、ギュッと強く目を瞑り、何度か小さな声を上げた。2007-02-01 22:37:00 -
722:
名無しさん
こんなにも、想いが溢れて止まらないSEXは初めてだった。
2007-02-01 22:37:00 -
723:
名無しさん
なぁハナ
冷たくて、寒いだけだ。
だけど、心惹かれる。
綺麗で、真っ白な雪。2007-02-01 22:38:00 -
724:
名無しさん
何色にも染まるそれは、 本当はきっと、
何色にも染められへんのかもしれん。
だって、降り積もった雪は
どれだけ汚く染まっても
それを隠すようにまた新しい雪が降る。2007-02-01 22:40:00 -
725:
名無しさん
ハナ。
汚れてなんかないで
何度見てもお前は
綺麗やったから。2007-02-01 22:40:00 -
726:
名無しさん
久々に、ハナの胸元に顔を埋めて目を閉じる。人の体温はこんなにも、あったかいもんなんか。
『准ちゃん…?』
ハナの声は、やっぱり幼くてやさしい。
『何で源氏名ハナにしたん?って質問、あたしちゃんと答えてなかったやんな』
その言葉で、ハナの顔を見上げる。目が合って、彼女はクスッと笑った。2007-02-01 22:43:00 -
727:
名無しさん
『…−あたしの本名、覚えてる?』
「心やろ?立花こころ。」
『うん、そう。』
そしてハナは、ゆっくりと話し始めた。2007-02-01 22:43:00 -
728:
名無しさん
『幸せやってんで?パパが、あたしの10歳の誕生日に家を出るまでは…−なんで出ていったかなんて今だに知らへんけど。それからやねん、ママが変わったの。虐待…って言うんかな?今いち、ピンとこーへんけど。』
『毎日パパの悪口言ってた。最低な奴や、お前とあたしは捨てられてんって。』
その言葉にふと、玲花の顔が浮かび、すぐに消えた。2007-02-01 22:44:00 -
729:
名無しさん
『中学に上がる頃かな、ママに新しい男が出来てん。そいつがまた嫌な奴で、ほとんど家には帰らへんくなった。夜遅くまで出歩いてたら、自然と悪い友達も増えた。17の時、少年院に入れられて、そこ出てからも、男の家とか友達の家渡り歩いて、たったの一回も実家には帰らんかった。気付いたら18になってて…
何でやろうな、ふと、ママの顔が見たくなってん。』
関を切ったように続けるハナを横に、俺はひたすら、黙って聞くことしか出来なかった。
『何年ぶりかに帰った家は、売り家に変わってて、ママはいなくなってた。あぁ、本間に捨てられたんやって思ったわ。自分で家出といて何やけど。それから何ヵ月後かの…−雨の日にな、街で偶然、本間に偶然、親戚に会ってん。ほんで、むちゃくちゃ怒られた。』2007-02-01 22:45:00 -
730:
名無しさん
ハナはそこで一度口を閉じた。無理せんでいいで、と言うと、してないよ、と笑った。ハナはやっぱり嘘つきだ。
『ママな…自殺しててん。遺書も何も残さずに、首吊って。』
ハナは、ようやく、泣きそうになっていた。2007-02-01 22:46:00 -
731:
名無しさん
『あの人はきっと、愛情表現が下手なだけで…やっぱり、パパのこと、死ぬほど好きだったんやと思う。だから死んだんちゃうかな。よくわからへんけど。』
何も言えず、抱き締めることしか出来なかった。
ハナはまた、俺の髪の毛をやさしく撫でた。2007-02-01 22:47:00 -
732:
名無しさん
『うちのママとパパはな、同級生やってんて!んで、‘立花’やろ?やから、ママはパパのこと‘ハナ’って呼んでてん!』
涙を堪えた声で、無理してはしゃいで、ハナがそう言った。2007-02-01 22:48:00 -
733:
名無しさん
‘大好きやった人の、大切な人の名前’…−
あの日、確かにハナはそう言った。
きっと、ハナの父親が大好きだった母親と同じで。
何をされても、離れていても、ハナは。
その母を、今でもずっと、…−想ってるんだろう。2007-02-01 23:16:00 -
734:
名無しさん
2007-02-01 23:29:00 -
735:
名無しさん
PM7:00
『いってらっしゃい!』
クリスマスイベントの用意があるため、少し早めに家を出る。ハナのその言葉をいつも通り背中に聞きながら、ドアノブに手を掛けた。2007-02-01 23:30:00 -
736:
名無しさん
『准ちゃん!』
そう呼ばれて振り返ると、ハナは口の右端だけを上げて…−笑った。
「准ちゃん言うな!笑」2007-02-01 23:31:00 -
737:
名無しさん
それが、
ハナを見た最後だった。
2007-02-01 23:32:00 -
738:
名無しさん
2003年12月24日
日付が変わって、仕事が終わったら、言おうと思っていた。
…−《アイシテル》2007-02-01 23:34:00 -
739:
名無しさん
2007-02-01 23:44:00 -
740:
名無しさん
准ちゃんへ
あたしを、助けてくれてありがとう。 あたしと、一緒にいてくれてありがとう。
准ちゃん。 大好きだったよ。
あたしは、准ちゃんのことを忘れないけど、あたしのことは忘れていいよ。 何も言わずに、さよならしてごめんね。
ハナ2007-02-01 23:47:00 -
741:
名無しさん
2007-02-01 23:47:00 -
742:
名無しさん
2007-02-02 00:43:00 -
743:
名無しさん
Final
SIDE ハナ
2007-02-02 00:44:00 -
744:
名無しさん
『准ちゃん言うな!』
あたしが彼をそう呼ぶと、決まって准はこう言った。それがおもしろくて、あたしはわざと‘准ちゃん’と呼んだりした。
あの日、彼と最後に交わしたのもその言葉だった。
そしてまた、整った顔をくしゃっと歪まして、彼は笑ったんだった。2007-02-02 00:45:00 -
745:
名無しさん
涙が止まらなくて、上手に字が書けない。何度も何度も、あたしはそれを書き直した。
伝えたいことや、言っておきたい言葉はたくさん思い浮かぶのに、うまく表現出来なくて、結局便箋一枚だけで終わってしまった。
最後の最後まで、素直になれないこんなあたしを、准ちゃんはどう思うだろう。2007-02-02 00:45:00 -
746:
名無しさん
まとめていた荷物を手に取る。といっても、ここに来たあの日と同じ様に、カバンは一つだけで、中身もほとんど空っぽだった。
准と一緒に買いに行った大量の服も、准に選んでもらったドレスも、お揃いの食器も…−。咲君と過ごしたあの部屋に、置いていったのと同じ様に
全部置いていく。
だけど、‘いらないから’じゃない。
そうでもしないと、一つ一つに思い出が多すぎて、いつまでも准から離れられない気がしたのだ。2007-02-02 00:47:00 -
747:
名無しさん
2003年12月24日
AM0:00
机の上に置いた、黒色の携帯があの着うたを鳴らす。
きっと准からだろう。いつもの出勤時間はとっくに過ぎている。2007-02-02 00:48:00 -
748:
名無しさん
〜♪
永遠を 貴方は信じてた?奪わないで いなくならないで あたしは 君の隣にいたいよ 叶わなくても 届かなくても あたしは あたしには 貴方しかいないの
毎晩 何を祈るの? 真っ白な雪が君を隠して 見失ってしまう 好き それすらもう 伝えられないの?
最初は、何度聞いても安っぽい歌詞だとしか思えなかった。2007-02-02 00:49:00 -
749:
名無しさん
だけど『いい歌やな』って、准があの時言ったから、あたしはこの歌を嫌いにはなれなかった。
だって、
准の隣にいる時だけは
‘永遠’を、
信じてみたくなったから。2007-02-02 00:50:00 -
750:
名無しさん
鳴り続ける携帯を背中に、あたしは玄関に向かった。
ヒールを履いて、最後にもう一度だけ、部屋の中を見渡した。
黒色のカーテン、白いベット、大きなソファーに、ふわふわのカーペット。可愛いタンス、古いテレビ、たまに音が飛ぶコンポ、星型の掛け時計。
全部を、目蓋の裏に焼き付けた。
いつも准があたしの為に玄関の上に置いていた鍵を、同じ所に置いて…−2007-02-02 00:52:00