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ハナ
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1:
名無しさん
ハナが、口の右端だけを上げて笑う。
何か企んでいる証拠。2006-11-27 03:04:00 -
751:
名無しさん
家を出た。
2007-02-02 00:52:00 -
752:
名無しさん
マンションを出ると、見覚えのある車が止まっていた。迷う事無くドアを開けて助手席に座る。
『誕生日、おめでとう』
と、咲君が言った。2007-02-02 00:53:00 -
753:
名無しさん
車が走りだす。
あたしは何も言わないまま、さっき出てきた准のマンションを、ずっと見つめていた。
…−
2007-02-02 00:54:00 -
754:
名無しさん
ねぇ准ちゃん
あの年のクリスマスに、結局雪は降らなかったね。
一緒にいた最後の日、 准ちゃんは
あたしを世界で、
一番幸せにしてくれた。2007-02-02 00:55:00 -
755:
削除削除されますた
あぼ~ん -
757:
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あぼ~ん -
758:
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あぼ~ん -
759:
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あぼ~ん -
760:
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あぼ~ん -
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あぼ~ん -
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あぼ~ん -
763:
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あぼ~ん -
764:
削除削除されますた
あぼ~ん -
765:
名無しさん
本当に紅音さん?
2007-02-02 23:21:00 -
766:
名無しさん
偽やん
2007-02-02 23:47:00 -
769:
咲君は、年明けにはCRUWを辞めた。元からそのつもりだったと言っていた。
同時にあたしも夜の世界から抜け出し、前よりもずっと小さなマンションで、そのまま二人同棲を始めた。
慣れない仕事のせいで、毎日必要以上にくたくたになって帰ってくる彼の姿を、あたしはうれしいというよりむしろ、何故か申し訳なく思った。
それでも、「幸せだよ」と、嘘をついて笑った。2007-02-05 12:38:00 -
770:
必然的に、以前とは逆転した規則正しい日常に戻る。
朝起きて、夜寝る生活。
そこにはネオンも、汗をかくグラスも折り畳まれたおしぼりも、夜から朝に変わるあの瞬間も…−なくて。始めはやっぱり少し淋しかったけど、今では多分、もうすぐ思い出せなくなるんじゃないかとすら思う。2007-02-05 12:44:00 -
771:
去年の夏。
咲君は家を出ていった。
狂っていた金銭感覚が元に戻り始めたのと、あたしの時給が50円上がったのと、毎朝作っていた咲君へのお弁当のおかずが、ワンパターンになり始めた頃だった。2007-02-05 12:45:00 -
772:
別れたことに、これといって理由はなかったと思う。
ただ単純に、あたしは彼を好きだったけど、以前程愛してはいなかったし、咲君はあたしを愛していると言ってくれたけど、そこにはいつも不安があった。
そして何よりも、あたしは何度咲君に抱かれても、あの人の暖かいキスばかりを思い浮べていて、勘の鋭い咲君は、きっとそれにも気付いていたんだと思う。
…−何も、言わなかったけれど。2007-02-05 12:46:00 -
773:
少したってから、知り合いに、咲君は夜に戻ったと聞いた。それがいいよと、あたしは言った。
だって彼の細い腕は、どう見ても工事現場には向いていなかったから。
白く眩しいシャンデリアの下で‘がんばってこい’と、キャバ嬢の背中を軽く押す、そのやさしい仕草のほうが、その腕にはずっと似合っていたから。2007-02-05 12:46:00 -
774:
咲君が家を出ていく日、
『恋愛なんて、本間にタイミングが全てなんやなぁ』と、そう淋しそうに笑って彼は言った。
「そうやね」と、呟くように返事をした。
あたしは、咲君から一度逃げ、准ちゃんに出会って、恋をして、だけど咲君の元に帰った。
そして今度は、彼が二人の家を出て…−あたしは結局一人になった。2007-02-05 12:48:00 -
775:
想いが、届かなかったわけじゃない。叶わなかったわけじゃない。
受けとめなかったんだ。叶えなかったんだ。
そこにやさしいキスはあったのに。
きっと、タイミングを間違えてしまったんだ。2007-02-05 12:50:00 -
777:
PM8:00
「お疲れさまでした!」
朝も夜も、仕事終わりのこの言葉だけは変わらない。オーナーに頭を下げ、笑顔でそう行ってからカフェを出た。
路地を抜けて大通りに出れば、三年前と変わらない、イルミネーションで飾られた街がある。2007-02-05 12:52:00 -
778:
久々に、眩しいほどのネオンを見てみたいと思った。あたしのあの頃の象徴は、やっぱりあの光の中にある気がして。
駅前の、時計台がある公園に足を向ける。この街で、一番大きなツリーは、あそこに飾られてあるはずだ。
吐く息が白い。
変わらない気持ちなんてないと思っていたのに、あたしは知ってしまった。
それは、毎年寒くなれば白くなる息と同じで、当たり前のように変わらないんだなぁ、なんて。2007-02-05 12:54:00 -
779:
「うわぁ〜…」
クリスマスシーズンのせいか、やたらと多いカップル達の横で、あたしは思わず呟いた。
赤、青、緑、黄色。色とりどりの電球が、交互に光り合って、すごく綺麗だった。灰皿が置いてある、一番端のベンチに座って、セッタに火を付けた。2007-02-05 12:55:00 -
780:
准ちゃんの家を出てから、タバコの量は一気に増えた。自分から離れたくせに、今だに彼を想ってセッタを吸うあたしは、カップルだらけのこの公園で、今どんな風に写っているんだろう。
公園のあちこちで、手を繋いだカップルが、ツリーを前に微笑み合う。みんな、幸せそうだった。
2007-02-05 12:56:00 -
781:
『やっぱ毎年見てたからさ、このツリー見ないと、クリスマス!って感じせぇへんねんな。玲花は!!』
…その名前に、思わず女の顔を見た。
くるくるの巻髪に、ぱっちりとした大きな目の彼女はお人形さんみたいに可愛かった。ふと、ベビードールが薫る。
《…なわけないやんな笑》2007-02-05 12:58:00 -
782:
あたしは頭を振って、変な想像をを揉み消した。
《感傷的になりすぎやわ。…−もう帰ろう。》
タバコを最後に一口吸いこみ、灰皿に投げ込むと、煙を吐き出しベンチから立ち上がった。2007-02-05 12:59:00 -
783:
〜♪
永遠を 貴方は信じてた?
バイト先から出た時に、マナーモードを解除したばかりの携帯が、あの歌を鳴らした。丁度公園で流れるBGMも、曲と曲との繋ぎの部分で、その音はやけに響いた…ように感じた。
‘玲花’と自分を呼んだ彼女が、振り返ってあたしを見て…−目が合う。2007-02-05 12:59:00 -
784:
〜♪
毎晩 何を祈るの? 真っ白な雪が君を隠して…−
その視線を何故か逸らせないまま、茫然と立ち尽くしている間に、電話は切れた。BGMも、また新しい曲に変わり、また賑やかに音楽が流れ始める。
あれから三年。もちろん、携帯は1、2回変えた。だけど、この着うただけは、一度も変えなかった。2007-02-05 13:00:00 -
786:
『あの…、違ってたらごめんなさい。もしかして、ハナさん?…ですか?』
彼女はそっとあたしに近付き、そう言った。一瞬だけ悩んだ後、すぐに首を縦に振った。2007-02-05 13:02:00 -
787:
あたしは、‘玲花ちゃん’と話したこともなければ、顔を見たことすらない。だけど確信に近かった。それは彼女も同じで、そういうのはやっぱり、わかってしまうもんなんだと思った。
『あたし、玲花って言うねんけど…わかる?あ、ちょっとだけ待っててな』
あたしがもう一度うなずくと、彼女はホッとしたように微笑むと、連れの男の元へ走って行った。そして何かを告げると、男に手を振り、また走ってこっちへ戻って来る。2007-02-05 13:03:00 -
788:
「あれ、彼氏?」あたしがそう聞くと、『せやで?』と、彼女は幸せそうに笑って、あたしの隣に座った。
『ハナちゃ…、あ、ハナって呼んでもいい?』
いいよと言うと、『うちも玲花でいいから!』と、また可愛い笑顔を見せた。2007-02-05 13:04:00 -
789:
『うちのコト、色々聞いてるやんなぁ?』
答えに困ったあたしは、苦笑いになっていたと思う。
『いぃねん、それはしゃぁないし笑。…突然、ごめんなぁ?でもうち、ずっと会ってみたいと思っててん!…‘ハナ’に。』
ニコニコしながら話しだした彼女は、聞いていたよりずっといい子で、想像していたよりもずっと可愛かった。2007-02-05 13:05:00 -
790:
今彼女は、六本木のクラブで、チーママとして働いているらしく、わがままばかりの嬢達に、困ってばかりいると言った。あたしが水商売を辞めたことを告げると、うちの店で働かへん?なんて、冗談を言って笑っていた。外は寒くて、なんの気休めにもならないけど、あたしは煙草に手を伸ばした。
『…セブンスター? あたしもやねん。』
淋しそうに笑った彼女が、何を言いたかったのかくらいわかる。あたしの気持ちだってきっと、バレてる。2007-02-05 13:06:00 -
791:
『人間が一番、素直になれへん動物やねんて。』
彼女はタバコケースからあたしと同じセブンスターを取り出すと、火を点けて深く吸い込んだ。
吐き出した煙が、白く、揺れる。2007-02-05 13:07:00 -
792:
『水商売なんて、一々素直になってたら、やって行かれへんしな。
なぁ、ハナが失ったもんって何やった?この世界で』
夜に生きる女は、みんなそんなことを一度は考えるもんなんかな。だけど何を失っていたとしても、気付く頃にはすでに遅い。だって、一人はもう嫌やから。2007-02-05 13:08:00 -
793:
『あたしはな、多分それ。素直さ。プライドばっか押し上げて、自分の気持ちすら中々認めへんかった。』
『好きやって、やっと認めれる頃には、とっくの昔に引き返せへんところにおってん。客にならいくらでも言えた‘好き’が、どうしても、言えへんかった。』
「…玲花は、准のどこを好きになったん?」
すぐに口からでたその言葉は、素朴な疑問。2007-02-05 13:09:00 -
794:
『…そう言われたら、上手く答えられへんけど。でも優しくて冷たい人やなって、いつも思ってた。人を簡単に切り離したり、完全に割り切ってたり。仕事やから、仕方ないことやねんけどさ。…その癖いつも、自分が一番しんどそうで。そういうとこかな、多分。』
なんとなく、わかる気がした。
『でもな、店辞めてから、一度だけ会ったことあって。その時、准変わったなって、思ったよ?』
「え?」2007-02-05 13:11:00 -
795:
『色々聞いててさ、客に。あたしの入れ変わりに入った‘ハナ’って子が、今RAINのNO1やって。』
「佐々木さんやろ?」そう言うと、そうそう、と玲花は笑った。あの人は、バカみたいに噂好きやったから。
『会って顔見た瞬間、わかった気ぃして。好きな人おんねんなって。根拠とかないけど、多分その子なんやろうなって。』2007-02-05 13:12:00 -
796:
何も言えなくなって、俯いた。目を閉じれば、准の顔ばかりが浮かぶ。
『黒猫みたいな子って言ってたよ。ハナってどんな子なん?って聞いたとき。むっちゃ、うれしそうに。』
雪が、降り始めていた。2007-02-05 13:12:00 -
797:
『なぁハナ。
…今でも、准を好き?』
自分の目から零れた涙が、手のひらにぽたぽたと落ちて、雪なのか涙なのか、いまいちよくわからなかった。2007-02-05 13:13:00 -
798:
彼を、思い出さない日なんてなかった。
‘ハナ’優しくあたしを呼ぶあの声や、くしゃってなる笑顔も、少し硬い髪の毛や、暖かい腕の中や、天国みたいだったあの部屋を。
思い出さない日なんてなかったんだ。
だってあれは、黒い闇の中で、あたしを照らした一筋の光。2007-02-05 13:14:00