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-Gang-ギャング
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1:
ポン汰
何もかも捨てたかった。
夢も、仕事も、恋人も、全て投げ出して眠りたかった。ゆっくり、夢の世界を彷徨って。二度と朝が来ない世界へ・・・明日なんか大っ嫌いだ。2006-12-11 11:17:00 -
2:
ポン汰
ゆらゆら自転車に跨りあたしは病院へと向かった。3日ぶりの外の世界。7月の太陽はずっと仕事と学校で室内生活をしていた体にはキツ過ぎて、それだけで倒れてしまいそう。
この町に引っ越して来て半年。病院なんて行くの初めてだ。地図で調べたら案外近くに総合病院があって、あたしは予約もせず保険証も持たずに家を出た。
それくらい世間知らずだった。2006-12-11 11:26:00 -
3:
ポン汰
『スミマセン、初めてなんですけど』病院の受付でそう言うと何だか訝しげな目で受付のオバサンはあたしを見る。
『保険証あります?』
『いや、ないです。一人暮らしで…』
『10割負担ですけど大丈夫ですよね?じゃあコレに記入して下さい』オバサンは横目であたしを見ながら面倒臭そうな顔で紙とペンを差し出した。2006-12-11 11:33:00 -
4:
ポン汰
名前:東(あずま)リリー
性別:女、年齢:19、職業:美容師アシスタント兼美容学生、受診希望科:内科。
タバコは吸わない。酒はたまに。妊娠はしてない。アレルギーは有り。今までかかった大きな病気…別にないな…。普段服用している市販薬:イブ。
あたしはスラスラと受診表にプロフィールを書いて受付に提出した。周りはお年寄りばっかり。大きな総合病院なのに若い患者はあたしだけだった。2006-12-11 11:45:00 -
5:
ポン汰
『初診なんで診察カード作らさせてもらいますね。しばらくお待ちください』受付のオバサンはあたしの目を見る事なく機械のように必要な事だけ喋ってあたしはただそれに従った。
しばらくして『東さん!東リリーさん』と呼ぶ声がして診察室へと通された。2006-12-11 11:49:00 -
6:
ポン汰
『どうしました?』内科だけで6つも診察室のある小分けの部屋の1つに少し若い先生が待っていた。
『3日前急に朝倒れちゃって、それから熱が下がらないんですよ。吐き気や頭痛も酷いし…倒れて3日目にしてやっと病院に来れるまで回復したんです。』
『急にですか?今お仕事は?』
『無理矢理休んでます。けどきっとまた明日から仕事です、休みないんで』あたしは自分でもビックリするぐらい淡々と話した。2006-12-11 11:56:00 -
7:
ポン汰
『美容師さん?休みないの?』友達のように話す先生。近頃の病院って普通にみんなこんなんなんだろうか…
『週1で休みですけど学校も行ってるんで。夜間ですけど』
『夜間の美容学校行きながら美容室で働いてるのー?何時間ぐらい?』
『朝5時起きで仕事して途中学校で抜けさせてもらって、夜の11時まで働いてますね…』2006-12-11 12:03:00 -
8:
ポン汰
『そりゃ体壊すよー!(>_
2006-12-11 12:09:00 -
9:
ポン汰
先生は気を利かせて診断書に「1週間の安静が必要」って書いてくれて、それを武器に調子乗って仕事を休ませてくれって電話をした仕事先の店長には即クビを言い渡された。
アシスタントの代わりなんていくらでもいる。
逆に言えば使えないヤツはさっさと捨てて使えるヤツを早く取る方が店の為。
こうしてあたしは職を失った。2006-12-11 12:14:00 -
10:
ポン汰
それでも調子乗って学校は1週間休み倒した。何だか美容師やめちゃおっかなぁーとか思って。
その間地元からオカンがお見舞いに駆けつけてくれたり何かして。
『あんたちゃんと食べてんの!?ほんまにいきなり体壊してビックリするわぁー!!でもあんな店辞めて正解やわ。ほんまアシスタントやと思ってコキ使い過ぎやねん!!』ひと通り店の悪口を言い並べるとオカンはまるで嵐のように帰り去った。2006-12-11 12:21:00 -
11:
ポン汰
1週間経っても体調は一向に良くならない。
それでも学校は行かなきゃいけない。
気付けばあと1週間で夏休み…それぐらいなら頑張れるか。とか思ってあたしはまたゆらゆらと自転車を漕ぎ1週間ぶりの学校に出席する事にした。2006-12-11 12:26:00 -
12:
ポン汰
『リリーちゃん大丈夫!?もう体良いん??』思った以上に学校のクラスメイトは心配してくれていて、何だかとてつもなく嬉しかった。
それでも授業中はグダグダで帰りには何故か片耳が聞こえなくなっていた。まるでエレベーターに乗った時みたいに空気が入ったような感じ。
熱はグングン上がるし息も苦しくなって、まるで地上に上がった魚みたい。自分で息をしなきゃ呼吸も出来ない。2006-12-11 12:31:00 -
13:
ポン汰
1週間ぶりの外の世界は思った以上にしんどかった。この1週間はほとんどポカリとオカンが買い込んで来た食材やらで食いつないでコンビニさえ行かなかったからなぁ…
それでも何とか1日を乗り切り帰り道、久しぶりにクラスの仲間と帰る。
『えぇー!!リリー仕事クビなったん!?これからどうするん??学費も家賃も自分で出してるんやろ??』クラスで一番仲の良い結実が心配そうに聞いて来た。2006-12-11 12:40:00 -
14:
ポン汰
『どうしよかなぁ、また美容師するのもダルぃし…普通のバイトしよかな(笑)』苦笑いするしかなかった。
『夜働いたらいーやん??キャバとか東さんいけそーやん』冷やかすように言い出すクラスメイト達。キャバか。キャバもいいかもなぁ…
『行こかなキャバ(笑)普通の昼職より稼げるやろ』軽い気持ちで口にしたこの一言。これが全ての始まりだった。2006-12-11 12:46:00 -
15:
ポン汰
『アカン?キャバなんかしんどいし、酒飲なまアカンし絶対学校続かんようなるで!!』結実は一人反対意見。
『キャバ行きたいなら俺の知り合いの店紹介したろか?』後ろからの声にあたしは振り返った。
クラス1遊び人でギャル男っぽい男。
名前は啓太(ケータ)。年齢がバラバラな人が沢山集まる夜間学校で唯一こいつとだけ同い年なのにあたしはあまり好きじゃなかった。見た目からして遊び人…そしてあだ名がヤンキーってなぐらい恐かった。2006-12-11 12:57:00 -
16:
ポン汰
その時のあたしはもうそりゃ意識が朦朧としてたのかヘラヘラ笑っていた。
『まぢかぁ。じゃあ紹介してや?』
口から出たのはその言葉。とても働けるような体じゃないのに。啓太の顔は見れなかった。あたしはコイツが怖い。
半分冗談、半分本気。2006-12-12 05:32:00 -
17:
ポン汰
『まぢ??俺も紹介料1万貰えるねん?』
………所詮金か。
『じゃあ携帯の番号教えてや。連絡するし』
あたしはそう言うと啓太に携帯を差しだした。2006-12-12 05:37:00 -
18:
ポン汰
使えるヤツは利用して、コイツもあたしを利用する。ただそれだけ。
『え?あっ…』
何故だか少し戸惑ったような啓太も携帯を差しだし赤外線交換。まるで携帯同士キスさせるみたいに。
『ありがとう、またメール送るわ??梅田でいっぱしのキャバ嬢なったるし(笑)』あたしはまたふざけたみたいにそう言ってメモリを保存した。2006-12-12 05:44:00 -
19:
ポン汰
その時あたしは初めて啓太を正面から見た。今までなるべく関わる事を避けてきた相手。
啓太はやっぱり少し躊躇うようにあたしの目を見た。
どうしてそんな顔をするのかあたしには分からなかった。お互い利益を得る為に利用し合うだけなのに……。そんな事を思った。2006-12-12 05:50:00 -
20:
ポン汰
一人で家に帰るとあたしは倒れ込むようにベッドに突っ伏した。久しぶりの外の世界に疲れた……
一人暮らしの部屋はあたしが動かさなきゃ何も動かない、まるで時が止まった世界のよう。
空気さえ、あたしが吸わなきゃ動かない。あたしが動かなきゃ動かない。
声を出す事も忘れてしまいそうなあたしの殺風景な部屋はまた止まった世界にあたしを誘い込む。あたしは抵抗も出来ない……2006-12-12 06:01:00 -
21:
ポン汰
仕事を辞めてからずっとあたしはこの止まった世界に生きている。いや、逆に生きてる事さえ忘れてしまいそうであたしは必死にもがいていた。
グーグー鳴るお腹。そう言えばもう1週間もロクに食べてない…。それでも弱ったあたしに食欲なんてあるハズもなく、ただ胃にはポカリを流し込むだけ。
そしてそのままゆっくりと襲う睡魔に身を委ねてあたしは眠りにつく。
朝なんて来なければいいのに…せっかく今日が終わったのに、また明日になれば最初から……。頭は頭痛と吐き気でグルグル回ってあたしの思考回路を止まらせる。2006-12-12 06:10:00 -
22:
ポン汰
気づいた時には朝の3時だった。(またこんな中途半端な時間に……)
『はぁ…??』とため息をつきあたしは携帯の液晶に映るデジタル時計を見た。
最近寝てもスグ目が覚める。酷い時は15分置きに目が覚めて、それは朝まで続きあたしはその間の浅い眠りで何?個もの夢を見る。ほとんど内容は覚えていないんだけど。2006-12-12 06:15:00 -
23:
ポン汰
これも病気のせいだろうか?
いつもならこのまままた浅い眠りにつく所だけど、あたしは思い出したように携帯のメモリを見た。
「啓太」2006-12-12 06:28:00 -
24:
ポン汰
(そういえばアドレス交換したんやっけ…メール送るの忘れてた)
もちろんキャバで働くなんて冗談半分だったけれど、職を失ったばっかりのあたしにはとにかく金が必要なのだ。
病院に行くのだってお金がかかる。オカンが用意してくれたあたしだけ分けられた保険証はあるけれど、それでも医療費はバカにならない。
おまけに家賃に学費…あたしに選択の余地はない。2006-12-12 06:32:00 -
25:
ポン汰
「こんばんわぁ??東です?こんな時間にゴメンねぇ、キャバの事詳しく聞かせてや???」
夜中の3時にこんなメールを送るのも普通なら遠慮する所だけれど…相手はホストみたいなヤンキーだから(笑)何かどうでもよかった。
??送信?2006-12-12 06:36:00 -
26:
ポン汰
きっと寝てるだろうなって思ったけれど、どうしても気になってあたしは返事が来るのを携帯を握りしめジッっと待った。
4時…5時……6時………返事は一向に来る気配もない。
睡魔も限界になり瞼を閉じようとしたその時、あたしの手の中で携帯が鳴った。
新着メール『啓太』。2006-12-12 06:39:00 -
27:
ポン汰
「おー、ゴメン遊んどったわぁ??起きとる??」
遊んでたて…夜遊びですか(-_-)この時あたしの中の啓太のプロフィールにヤンキー、ギャル男のほかに遊び人が追加された。(笑)2006-12-12 06:42:00 -
28:
ポン汰
「4時間返事待ってやってたけど遊んでたんか?ってかうちは今から寝る。オヤスミ??」
寝ぼけ半分でこんなメールを返してあたしはそのまま眠りに落ちた。
起きたのはその5時間後。ちょうどお昼。
携帯を見ると5時間前に送られて来ていたメールが1件。未読メール『啓太』。2006-12-12 06:47:00 -
29:
ポン汰
「東さんこんな時間まで起きとったらまた体壊すで?ちゃんと寝な?また起きたらメールしてや?オヤスミ??」
なんだかイメージが違う啓太のメールにあたしは少し戸惑った。(なんやこの気遣いは??東さんて…コイツに初めて名前言われた気がする。つってもメールやけど…)
あたしはすぐ返信を打った。2006-12-12 06:55:00