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夏の香り

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  • 1:

    なみこ

    ―みなさんは今―
    ―恋をしてますか―。
    誰にでも忘れられない恋、思い出、喜び、涙、があるはずです。季節が巡るたびに思い出す、そんな切ない私の実話を書いていきたいと思います。

    2006-04-27 16:44:00
  • 2:

    なみこ

    季節が変わろうとしている。君に初めて出会った頃と同じ風、同じ匂い。また夏がやってくる。

    2006-04-27 16:46:00
  • 3:

    なみこ

    何故か開放的になる。私はそんな夏が大好き。
    気分も良いし晴れた日には外へ出たくなる。
    でも、ふとした時とても切なくなる。もう忘れたはずなのに。いるはずもないのに。君を探してしまう。

    2006-04-27 16:50:00
  • 4:

    なみこ

    ―隼人―。
    忘れもしない彼の名前。
    彼との出会いは
    決して特別な出会いでも素敵な出会いでもなかった。けれど私の心を大きく揺るがした。季節が夏に変わる頃―。

    2006-04-27 16:55:00
  • 5:

    なみこ

    『なみこ―。こっち!焼そば持っていって!』
    17才の夏、私は初めて海の家でアルバイトをする事になった。
    友達のさやかに頼まれて、さやかの親戚が経営する海の家で。
    私は迷ったがどうしてもと言うのでOKした。

    2006-04-27 17:01:00
  • 6:

    なみこ

    最初は乗り気ではなかった私だが一週間程して海の家のアルバイトは私には天職だと思えた。
    何より楽しい。従業員と仲良くなれたし休憩時間にはビーチで遊んだり体を焼いたりした。

    2006-04-28 04:16:00
  • 7:

    なみこ

    焼けた肌、潮風になびく金色の髪、ヘソピアス、腰に刻まれた薔薇のタトゥ。ギャルだった私にはナンパは絶えなかった。当時かなり束縛の激しい彼と別れたばかりだったので、異性と話ができる事が嬉しくて仕方なかった。

    2006-04-28 04:21:00
  • 8:

    なみこ

    見た目と違って私は決して軽くはなかったのでその場でついていく事は絶対なかった。
    『自分、海の家の子やんなぁ?俺ここ一週間ちょくちょく遊びに来てんやけど知ってる?』
    『知らん〜』
    『番号教えて〜』

    2006-04-28 04:27:00
  • 9:

    なみこ

    話をしているうちに意気投合する事もあって、番号を交換した人も何人かいた。毎日が楽しかった。
    番号を交換した人がたまに海の家に遊びに来てくれた。

    2006-04-28 04:31:00
  • 10:

    なみこ

    そして私は《佑介》という人に出会った。バイトの休憩中、佑介が声をかけてきたのがきっかけだった。
    最初は気にもしていなかったが何度も顔を合わし、話をしてるうちに私の方が佑介に曳かれていった。

    2006-04-29 01:06:00
  • 11:

    なみこ

    佑介は私の3つ上でかなり男前だった。なにより日に焼けた体にいたずらっぽく笑う笑顔が愛しくて仕方なかった。二人が付き合うまで時間はかからなかった。毎日のようにバイトが終われば佑介が迎えに来てくれた。

    2006-04-29 01:17:00
  • 12:

    なみこ

    知り合ってっまだほんの数週間しか経ってないのに私は完全に佑介に惚れこんでいた。休みの日には佑介が色んな場所に連れていってくれた。幸せだった。

    2006-04-29 01:21:00
  • 13:

    なみこ

    佑介は私に愛してると何度も言った。こんな短期間でここまで人を好きになるなんて。自分でも信じられなかった。7月の末―。
    衝撃的な出来事があった。

    2006-04-29 01:26:00
  • 14:

    なみこ

    祝日ということもあっていつもより混むビーチ。海の家もすさまじい人込みで少し遅いお昼の休憩に入る時ちょうど佑介から着信があった。『今日は夜勤入ったから夜会うの無理やわ』

    2006-05-01 10:35:00
  • 15:

    なみこ

    そう。今日は佑介と付き合ってちょうど1ヵ月を迎える日だった。夜景の見えるレストランで食事をしてお洒落なバーに行くプランまで二人でたてたのに。私は無性に腹が立った。

    2006-05-01 10:42:00
  • 16:

    なみこ


    『仕事と私どっちが大事なん?』

    第一声、私の口から出た言葉だった。

    2006-05-01 10:44:00
  • 17:

    なみこ

    佑介は少し黙った後
    『仕事やからしゃあないねん。』
    と言った。
    私はよけいに腹が立った。『もう別れる』

    2006-05-01 10:50:00
  • 18:

    なみこ

    プチッ―。
    私はそのまま電話を切り、電源を切った。
    最初はムカついていたがだんだん悲しくなってきた。私はその場で泣き崩れた。短期間だけどほぼ毎日一緒にいたから佑介は私にとって大事な存在になっていた。

    2006-05-01 10:54:00
  • 19:

    なみこ

    さやかが私の異変に気付いてすぐに駆け寄ってきた。私は一部始終を話した。
    さやかは
    『好きなんやったら素直になったら?今やったらまだ大丈夫やから電話しぃ』
    そう言ってくれた。

    2006-05-01 11:00:00
  • 20:

    なみこ

    本当は今すぐにでも電話して謝りたい。本当は別れたくなんかない。
    佑介は前の彼氏と違って頭ごなしに私を縛ったりしないし優しい。おまけに顔もかっこいい。私の理想そのものだった―。

    2006-05-01 17:36:00
  • 21:

    なみこ

    『夜中に仕事の電話とかかかってきたら嫌やから、夜中は携帯の電源切ってる』
    そう。夜中だけは佑介と連絡がとれない。

    2006-05-01 17:46:00
  • 22:

    なみこ

    佑介は夜中になると携帯の電源を切る。
    私だって最初はおかしいと思った。だけど佑介を信じたい。好きだから。他にも《ナンパしてる佑介を見た》など何人かの知り合いから聞かされた。

    2006-05-01 17:49:00
  • 23:

    なみこ

    私と一緒にいる時も夜中だけは電源を切った。
    普通の人から見たら絶対だまされてるって思うと思う。だけど私はそんな事信じたくなかった。信じようとしなかった。

    2006-05-01 17:56:00
  • 24:

    なみこ

    このまま離れるのは嫌。だけど私の中で積もっていた不安は一気に頂点に達した。
    このまま見てみぬふりをする方が楽かもしれない。だけど信じたい。佑介に会って確かめよう。

    2006-05-03 14:46:00
  • 25:

    なみこ

    もう見て見ぬふりはできない。これからも向き合っていきたい人だから今までの不安を全部告げよう。そしてもう1度最初から見つめなおしたい。私はバイトが終わった後、電源を切ったまま佑介の家へ向かった。

    2006-05-03 14:50:00
  • 26:

    なみこ

    夜勤の日佑介は10時すぎに家を出る。私は玄関の前まで来て大きく深呼吸をした。今まで佑介に迎えに来てもらってたから自分一人で来るのは初めて。

    2006-05-03 14:59:00
  • 27:

    なみこ

    時刻は8時すぎ。来ちゃったけど佑介家にいるかな?夜勤やったらまだ家にいるやんな―。なんて言おう。インターホンを押す手が震える。

    2006-05-06 04:46:00
  • 28:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 29:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 30:

    なみこ

    ―留守番サービスセンターです。ただいま電話に出ることが…―
    コールが8回鳴った後、留守電になった。

    2006-05-06 04:53:00
  • 31:

    なみこ

    私はその場でしゃがみこんだ。
    佑介もうあたしら終わりなん?こんな気持ちのまま終わりなんて嫌や…。佑介どこいてるん?戻ってきてや。

    2006-05-06 04:54:00
  • 32:

    なみこ

    私はそのまま佑介のマンションの玄関の前で座り込んだまま、いつのまにか寝てしまっていた。時刻を見るともう夜中の1時頃…。佑介は帰ってきていない。

    2006-05-09 23:29:00
  • 33:

    なみこ

    携帯には1通のメールと5件着信が残されていた。
    すべて佑介からだった。
    メールを開いてみた。

    2006-05-09 23:37:00
  • 34:

    なみこ

    【なみこごめんな。上の人に呼ばれて仕事の話してたから電話でれんかった。てか、お前に電話しても出んし。俺は別れたくない。好きやし今回の事は本間に俺が悪い思てる。明日会いに行くわ。】

    2006-05-09 23:38:00
  • 35:

    なみこ

    私はそのまま携帯を閉じた。荷物を持って立ち上がり帰ろうとしたその時―。
    聞き覚えのある声がした。一瞬にして、私は凍り付いた。

    2006-05-09 23:42:00
  • 36:

    なみこ

    『何…してるん…』
    私の目の前に佑介がいた。ちょうど階段を上がってきた佑介は私がいることにビックリしていた。
    佑介は目を見開いてその場で固まっていた。

    2006-05-09 23:48:00
  • 37:

    なみこ

    私は自分の目を疑った。佑介の後ろに知らない女が立っていた。
    『誰…なん?その人』
    佑介は下を向いて黙った。

    2006-05-09 23:54:00
  • 38:

    なみこ

    『なぁ…佑介仕事ってゆうてたやん…あれうそやった…ん?…なみこだけってゆうてたやん…。なぁ。嘘やったん?』

    2006-05-09 23:57:00
  • 39:

    なみこ

    『佑介?なみこだけやんな…?そう言ってくれてたもんな?なぁ…なみこ佑介しかおらんねん…佑介おらな無理やねん。なぁ佑介、もういいからなみこ怒らんから一緒に帰ろ?』
    さっきまで下を向いてた佑介が顔をあげた。そして真っすぐ私を見て言った。

    2006-06-04 13:04:00
  • 40:

    なみこ


    『お前、重いねん。』

    頭の中が真っ白になった。

    2006-06-04 13:05:00
  • 41:

    なみこ

        【重い】
    まただ。いつもこれを言われるのが恐かった―。
    昔から私はこう言われて別れを告げられてきた。
    重い―。と

    2006-06-04 13:10:00
  • 42:

    なみこ

    私たちのやりとりを見て後ろで戸惑っている様子の女の子。
    『行こ』
    佑介が彼女の手を取って、階段を降りていった。私は茫然と、去る佑介の背中を目で追っていた。

    2006-06-04 13:18:00
  • 43:

    なみこ

    佑介?なぁ、なみこどこがあかんかった?
    なみこ悪いことした?
    最低―。最低。
    何もかも。
    最低。最低。最低。佑介も。私も。

    2006-06-04 13:21:00
  • 44:

    なみこ

    私はその場でしゃがみこんだ。
    ここは私の居場所じゃないんや。
    私、ここにいたらあかんのや。

    2006-06-04 13:23:00
  • 45:

    なみこ

    悔しい。
    悔しいけど佑介が好き。
    忘れたい。
    忘れたいのにのに忘れられない。

    2006-06-04 13:29:00
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