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恋愛ジャンキー

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  • 1:

    旧掲示板作品です。

    2005-06-02 17:03:00
  • 2:

    涼20才。風俗嬢。風俗歴五年目。
    ぁたしは未だに風俗から抜けれないでいる。
    五年目足を踏み入れたあの時から……


    当時の彼氏伸吾に振られフラフラと夜の東通を歩いていた。
    パチンコで負け所持金7000円。
    『ぃぃ事なぃな〜……』
    家に帰ってテレビでも見ょぅ……

    2005-06-02 17:04:00
  • 3:

    へぇ。ホストってそんな安いもんなんだ。
    ぁのころのあたしには夜の世界の事なんて微塵も知らなかった。

    『なっ、安いしぉぃでょ!!今から一時間飲んでも終電間に合うで!』

    …ならぃぃかな……

    『ぃぃですょ。行きます』

    スーツの男は嬉しそうに笑った。

    2005-06-02 17:06:00
  • 4:

    暗い店内に綺麗なボトル。
    スーツ姿の男前。

    もとから人は顔で選ぶタイプだ。
    素直に楽しかった。


    『俺ユウってゅーねん!名前は?』
    『涼……』

    2005-06-02 17:07:00
  • 5:

    ユウは20代後半。昔はヤンチャだったらしい。
    笑ったら子供みたいな可愛い奴だった。

    酒を飲みほろ酔い。
    気づけばもぅ終電はなぃ。
    テーブルにはビールの缶やジーマの瓶が並んでいる。
    なんだかノリでシャンパンなんかも飲んでしまった

    2005-06-02 17:08:00
  • 6:

    ………ぃくらなんだろぅ
    7000で足りないのは直感で分かった。

    『未収ってゆってな、ツケできるから大丈夫ゃで!!!!』
    そぅなんだ。じゃぁ大丈夫だな……

    これが地獄への一歩となるとも知らず、涼はまだ笑っていた。

    2005-06-02 17:10:00
  • 7:

    時間はだいぶたっていた。もう朝だ。
    伝票を見て涼は倒れそうになった。
    『96000!?』
    『ぅん、いれれる分入れてぁとは未収でぃぃょ』
    その後ユウと何を話したか覚えていない。
    『駅ついたら電話してや!』
    涼は嬉しかった。ホストがみんな客にそれぐらい言うなんて知らなかったのだから。

    2005-06-02 17:11:00
  • 8:

    言われたとおり駅から電話をした。
    『俺とずっと一緒にぉろな!好きゃで。気つけて帰りや!』
    そういえば別れた話をしたら付き合うという話になったんだっけ。

    2005-06-02 17:12:00
  • 9:

    次の日ユウに呼ばれまた梅田へ行った。
    『涼仕事してなぃゃんな?紹介したるわ!』
    ……水商売だ
    怖かったが未収を払わないといけないので従った。

    2005-06-02 17:13:00
  • 10:

    連れて行かれた先はセクキャバ。
    制服はTバックにガーター……
    ひっくりかえりそうになったがみんながその格好なので案外平気だった。
    時給4000円。
    これで未収を返してもぅホストなんてやめよう。涼は決意した。

    2005-06-02 17:14:00
  • 11:

    三日もすれば仕事には慣れた。
    案外夜の仕事は向いているのかも……なんて涼は思っていた。

    2005-06-02 17:23:00
  • 12:

    ホストなんてやめょう、そぅ思っていたのに、ユウは終わる時間になると迎えに来た。
    そしてそのまままた朝まで店で飲む。
    未収は増える一方だ。
    週給制なので単純計算で給料日には20万くらいは入る。大丈夫かな。
    涼はぁまり何も考えていなかった。
    給料日、支払いの額を聞いてみた。
    なんと給料では足りない。
    涼は今頃自分か地獄に足を踏み入れたことに気づいた。

    2005-06-02 17:24:00
  • 13:

    未収の事なんて涼の頭にはなかった。
    金銭感覚が麻痺したのだ。
    働けば何とかなる。
    それくらいにしか考えておらず毎回伝票もろくに見なかった。
    気づけば未収の額は100万を越えていた。

    2005-06-02 17:28:00
  • 14:

    『お前昼も働けへん?俺調子乗りすぎたわ……未収の支払期限は延ばしてもらうから……』

    拒む術はなかった。昼も働くといったってまさかOLなんかをするわけもなく……

    『ここ稼げるし、面接行ってみたら?』

    神戸!?福原!?

    多少夜の世界にも慣れ、業種の違いもわかってきた。

    ………ソープだ。

    2005-06-02 17:29:00
  • 15:

    いつものように仕事の後に飲みにゅき、眠い体を引きずり神戸ゆきの電車に乗る。
    面接のためだ。

    電車にゆられ半分寝かかった時、ユウ専用の着メロが鳴った。

    『辛いと思うけど俺たち二人やったら何でも乗り越えていけるから。涼に迷惑かけるけど二人で幸せになるためやから。俺も頑張るし、涼も頑張ってな。』

    2005-06-02 17:30:00
  • 16:

    この頃から涼は疑問を抱いていた。
    この男は本当に自分の事を好きなのか?
    はじめは涼はユウが大好きだった。
    しかし未収の額が増えるにつれユウはキツくなってゆく。
    逃げ出したい。
    そんな気持ちが涼の中に芽生え始めた。

    2005-06-02 17:31:00
  • 17:

    ユウに渡された印のつけられた求人誌。そこに載っている番号に電話をかける。

    せっかく神戸まで来たと言うのにソープは18では働けないと言われた。水商売はいけるのになぜだろう。

    2005-06-02 17:32:00
  • 18:

    ソープのイメージはけして良いものではなかった。むしろ悪いイメージしかなかった。働かなくてすんで良かったと思う反面、ユウの反応が怖かった。
    なんて言われるのだろう。
    どきどきしながら電話をかける。
    出ない……
    寝ているのだろう。
    一緒に頑張っろうったって、頑張ってんのはぁたしだけでは……?
    そんな気がしてきた。

    2005-06-02 17:33:00
  • 19:

    『面接どぉやった?』

    ユウからの電話で目が覚めた。
    開口一番面接かよ……涼は悲しくなった。
    『18やったらソープ無理やねんて……』
    『あーやっぱ無理か〜』

    2005-06-02 17:34:00
  • 20:

    いつものようにセクキャバに出勤し、またユウが迎えに来た。
    店に入るなりまた求人誌を持ってきた。
    ユウがなにやら裏表紙に書いている。

    2005-06-02 17:36:00
  • 21:

    【保証三万以上】
    【昼からか朝から】
    【週三日以上】

    など条件を書かれた。
    結局表紙をめくってすぐのピンサロに朝一で面接に行く事になった。

    2005-06-02 17:37:00
  • 22:

    18才以上なら働けると書いてあった。

    今度は落ちることはないだろう。


    とぅとぅ風俗デビューか……

    2005-06-02 17:38:00
  • 23:

    【明日受かるように景気づけ】と称してまたシャンパンがおりた。

    この男は未収を減らす気があるのだろうか?

    涼はだいぶ疑問だった。

    2005-06-02 17:39:00
  • 24:

    思った通り面接は受かった。そのまま体験する事になった。
    働く理由もホストの未収を返すためだと正直に言った。店長は涼を気に入ってくれたらしく他の子より保証を少しあげてくれた。

    五時半まで働き七時半からセクキャバに出勤。二時半に終わりまたユウが迎えに来た。

    2005-06-02 17:40:00
  • 25:

    『疲れたやろ〜今日は店でゆっくりしーな!!』

    ゆっくりしろと言うなら帰らせてくれ、と思ったがそんな事は言えない。涼は店でほとんどのまず寝てしまった。
    目を覚ますとテーブルにたくさんの空き瓶。
    何もしていないのに今日の稼ぎ以上の額の伝票。泣きたくなった。
    そのまままたピンサロへゆき、六時に梅田へ向かった。今日は先輩の祐子と出勤前にごはんに行く約束なのだ。

    2005-06-02 17:41:00
  • 26:

    『涼ちゃん最近しんどそうやけど大丈夫?』
    『大丈夫ですよ〜しんどそうですか??』
    笑顔で答えたがしんどくないわけがない。
    祐子はユウと涼が付き合ってるのを知っている。祐子に限らず店の先輩はたいがい知っていた。
    『涼ちゃんあのユウって子と別れたら??』
    唐突に祐子が言った。
    『純ちゃんも心配してんで』
    店の先輩はみんななぜか涼を心配してるらしかった。

    2005-06-02 17:42:00
  • 27:

    先輩の忠告をよそに涼は毎日ピンサロ→セクキャバ→ユウの店を往復する毎日だった。
    いっこうに未収は減らない。
    でもユウと過ごす時間は楽しくてやめられなかった。
    とうとう未収は200万を越えた。
    毎日ピンサロの給料を入れているのに増えるとは……そろそろ涼も焦ってきた。

    2005-06-02 17:46:00
  • 28:

    『未収減らんなぁ〜』
    当たり前だよと思いつつ適当に返事をした。
    金の話をするときのユウは嫌いだ。別人のようだ。
    『涼が店入らんかったらいいんちゃうの?未収は入れにくるからさ』
    次の瞬間目の前が真っ暗になった。
    ユウに殴られたのだ。

    2005-06-02 17:47:00
  • 29:

    涼はちっちゃい。ユウは180近い背でもと総長。
    加減はしてるだろうが結構きた。頭がくらくらする。
    ユウが何やらどなりちらしているがまともに聞けない。店に来ないと言った事に対して怒っているのはわかった。

    『ごめん、店くるから……』
    殴られた一発で完璧にユウへの気持ちは冷めた。
    でも未収が終わるまでユウと切ることは出来ない……

    2005-06-02 17:49:00
  • 30:

    『ごめんな、痛かった?』
    痛いに決まってるだろ……と言いたいところだが『大丈夫』と言っておいた。
    『ワビでイッキするわ!!』
    またシャンパン。
    この時初めて涼はユウが嫌いになった。

    2005-06-02 17:50:00
  • 31:

    次の日のユウは涼の好きなユウだった。昨日嫌いになったはずなのに……やっぱりユウが好きだ。

    ユウは昔にもホストをしていたらしい。辞めて会社を興したが失敗し、またホストに戻ってきたのだ。

    『もぅすぐ周年あるねんけど涼いくらぐらいいける??』
    かなりまとまった額を使うのだなと思ったが、好きな気持ちが復活したためいくらでもいいよと言ってしまった。

    周年の日が来た。

    2005-06-02 17:51:00
  • 32:

    その日、祐子が一緒にユウの店に行くと言い出した。祐子は子持ちなのになんでかな?と思ったが一緒に行った。あとから聞いたが純が涼を心配して祐子を行かせたらしい。

    店内には花がいっぱい。バルーンもあってやたらと華やかになっていた。

    祐子と一緒にテーブルに座るとアイスやグラスといっしょにガラスのボトルが来た。

    ルイ13世。

    2005-06-02 17:52:00
  • 33:

    その日の伝票は怖くてみれなかった。

    オーナーがついて『涼ちゃん、あんまりよそでユウと付き合ってるってゆうたらあかんで〜』
    どうしてこの人が知っているのだろう……??初対面なのに……でもなーんか見た事あるような……

    2005-06-02 17:53:00
  • 34:

    あ!!!!

    自分の店の店長に似ているのだ。涼は無邪気に言った。
    『うちの店長にそっくりですね〜』
    『あれ俺のお兄ちゃんやからなあ』

    えっ……
    店で話したことは全て筒抜けだったのだ。

    2005-06-02 17:54:00
  • 35:

    その日ユウはいろんな席で飲みつぶれていた。
    いつものように伝票に【全未】と書き店を後にした。
    店長とオーナーがつながってたなんて……これから迂闊な事は言えないな…と思いながらピンサロに出勤した。

    2005-06-02 17:55:00
  • 36:

    ピンサロの先輩のヨシノも涼を心配していた。よく待機室で相談したりしていた。
    ある日ユウが怒った声で言った。
    『おまえもう嫌とかゆってるらしいな?』
    セクではそんな話はしていない。どこからもれたのだろう……ヨシノは子持ちで昼勤務のみ。ホストに行ったりするような人ではない。なんとかその場はユウをごまかした。
    その晩真相が発覚した。ピンサロのじゅりがユウの店で飲んでいたのだ。じゅりがいるから涼はその店に入れられたらしい。ヨシノに話したことは全てじゅりから口座を経由しユウに伝わっていた。

    2005-06-02 18:06:00
  • 37:

    店ではもぅヨシノに相談出来ない。かと言ってセクの仕事が終わってからヨシノに電話するのはどうも悪い気がした。そうだ、手紙を書こう。
    ピンサロからセクまでの間に喫茶店に入りヨシノあての手紙を書いた。

    2005-06-02 18:08:00
  • 38:

    この頃になるとユウは迎えに来てはくれなくなり、しかし店に行くのは相変わらず絶対だった。
    ユウと涼は一日にいくら入れるかを紙に書いて涼が持っていた。
    『あの紙出してや』
    【あの紙】も【ヨシノあての手紙】もレポート用紙に書いていた。
    ガサガサかばんを探る。紙が手に当たる。出してみると【ヨシノあての手紙】の方だったので涼はあわててもういちどかばんに押し込んだ。

    2005-06-02 18:09:00
  • 39:

    ユウは見逃さなかった。
    『今直したん何?』
    なんて言おう……
    『なんでもないよ』
    ユウの目つきが変わる。
    かばんを取り上げられ見られてしまった。手紙の中身はもちろんユウの話題であり、いい事を書いているものではない。

    2005-06-02 18:11:00
  • 40:

    わき腹に激痛が走る。ユウに蹴られたのである。もぅそこからは髪をつかまれ顔を殴られ体も殴られ何が何だかわからなかった。自分は人に相談することさえ出来ないのかと思うのとどうしてこんな男に惚れたのだろうと公開で涙が溢れた。
    『ほ〜“あんな店もう行きたくない”?〜“ユウが怖い”?“未収も無理矢理”?“あんなに飲まなきゃいいのに”??えらい好き勝手ゆうてんなあ』
    ガシャン!!!
    涼の頭の上でビール瓶が割れた

    2005-06-02 18:12:00
  • 41:

    頭はさほど痛くはなかった。しかし全身が痛い。少し前ユウが店の従業員に本気でキレて殴ったのを見た事がある。涼より少し大きいくらいの華奢な男の子。ユウに殴られ吹っ飛んだのを涼は見た。きっとその時と同じくらいの力だな、なんて殴られながら考えていた。

    2005-06-02 18:14:00
  • 42:

    涼も昔はヤンチャだったのでまだ多少殴られる事に対し免疫が残っている。が、昔はそれなりに応戦も出来た。例え相手が男でも。今は出来ない。体がもう鈍ってしまっているのと、ユウへの恐怖からだ。何をされるかわからない。おそらく黙って耐えるのが利口だとも思った。

    2005-06-02 18:15:00
  • 43:

    次の日腫れた顔とあざだらけ涼を見て一番心配したのはやはりヨシノだった。他の女の子はろくに喋ったことがなかったせいもあり何も言わなかった。すみっこのじゅりがちらちら見ている。じゅりは言わなくとも原因も誰がやったかも分かっているはずだ。心配するヨシノにもじゅりがいる前では何も言えない。

    2005-06-02 18:25:00
  • 44:

    未収があっても別れることはおそらく出来た。でも涼は【彼氏】というものがないとだめな人間だった。あんなにされたって優しい甘い言葉をかけてくれるユウがいないと無理なのだ。

    2005-06-02 18:25:00
  • 45:

    殴った次の日のユウは優しい。なぐられた事なんか忘れて抱きしめて欲しくなる。

    でも未収は待ってくれない。むしろ追いつめてくる。いろんな事がいっきにあったせいか涼は熱を出した。客に責められるのはもともと好きではないがいつも以上に気持ち悪かった。客にやめてといってもしつこくやめてはくれずとうとう涼は泣き出した。

    2005-06-02 18:26:00
  • 46:

    客が帰って店長が心配して見に来た。38度を超える熱を出したがユウの為に働かなければ……そればかり考えていた。
    でも体はもたず涼は動けない。個室なので店泊した。
    起きるとすごい数の着信。全てユウだ。

    2005-06-02 18:28:00
  • 47:

    まだ熱は下がっていなかったが働くつもりで店長に言ったが却下された。実家に帰ろう。たまには。一ヶ月ぶりの我が家だ。
    日頃家にいない娘がいる事に母親は驚いた。が、体調が悪いと告げるとそこから何も言ってこなかった。やっぱり親は嫌いだ。

    2005-06-02 18:29:00
  • 48:

    夜中ユウからの着信で目が覚めた。家族に会話を聞かれてはまずい。涼はそっとベランダへ行った。
    『おまえ何で昨日電話でんかってん!!』
    一言目から怒鳴られた。

    2005-06-02 18:30:00
  • 49:

    『熱がでて店泊してた』
    『うそつけ!!』
    ユウはまるっきり信じてくれなかった。それどころか未収入金の話ばかり。この人は自分をお金としか見てない……初めて気づいた。

    2005-06-02 18:31:00
  • 50:

    電話を切って涙が溢れてきた。自分に向けられた笑顔も、優しい言葉も、全て金のためにしてくれていたこと……それでもいい。お金だけでもユウと繋がっていたい。もはや涼はユウなしでは生きられなくなっていた。

    2005-06-02 18:32:00
  • 51:

    起きるとすっかりよくなっていた。今日は仕事だ。がんばって稼げばユウは喜んでくれるだろう。

    2005-06-02 18:33:00
  • 52:

    その夜いつものように店で飲む。稼いだ金を見せるとユウは子供みたいに笑った。
    『頑張ったからシャンパンのもっか!』
    頑張ったと思うならやすくあげて欲しかった。でもユウの売り上げを上げたい。喜ばせたい。笑顔がみたい。

    2005-06-02 18:34:00
  • 53:

    『うん!頑張った記念ゃな☆』
    心にもない事を言ってみる。
    『せゃでぇ!!今日は飲むでぃ!!』
    今日もユウの店にはシャンパンコールが響き続けた。
    『おまえセク週三にしてピンサロメインで働いたら?』
    毎日目に見える金が欲しいのかユウはそんな事を言い出した。

    2005-06-02 18:35:00
  • 54:

    ユウの言った通りセクを週三に減らしてもらい毎日ピンサロメインで働いた。未収は少しずつだかへり始めた。
    ユウもいつも優しい。涼は幸せだった。
    『今日店終わったらデートしよか!!』やったぁ!!素直にうれしかった。今までユウと出かけた事はない。初めてのデートだ。わくわくした。行き先がどこだか知らなかったのだから。

    2005-06-02 18:36:00
  • 55:

    『おまえ今身分証ある?』
    『保険証ならあるよ』
    この間病院に行った時から入れっぱなしの保険証。
    『ここの三階行って金借りて来い』
    えっ…?
    デートではなかった。まとまった金を入金しないといけないらしく、連れて行かれた先はサラ金。それでも店以外でユウと一緒にいられるのが嬉しかった。

    2005-06-02 18:37:00
  • 56:

    18で貸してくれるサラ金はなかなかなく数件回って一件30万を貸してくれる所があった。
    『ほんまごめんな、上がうるさいねん……』
    『いいよ』
    月払いの返済は魅力だった。

    2005-06-02 18:38:00
  • 57:

    ご飯を食べてデートは終わり。もっと遊んだりするのかと思ったのにな……でもいつもより長くユウといられたのでサラ金にいった事でさえ涼は幸せだった。

    2005-06-02 18:39:00
  • 58:

    朝九時からピンサロで働き、五時半にあがり、七時半からセク。セクが終わればユウの店。休みなしでそんな生活を二ヶ月ほど続けた。
    そんなある日、携帯に着信。【不在着信あり:パパ】パパといっても実の父親である。なんだろうと思いかけなおした。
    すぐに帰って来い。それだけ言ってパパは電話を切った

    2005-06-02 18:40:00
  • 59:

    ユウの店を出て朝方家に帰る。何日ぶりだろう、顔を合わすのは。店泊したり、マンキで寝たり、というかほとんどろくに睡眠をとっていなかった。
    家ではパパが深刻な顔をして涼を迎えた。

    2005-06-02 18:42:00
  • 60:

    『小林ユウって男、心当たりあるな?俺が何言いたいかわかるか?』
    直感ですべてばれたと思った。
    未収の額の多さにユウが家に電話をかけたらしい。それだけはやめてと頼んだのに。わかった、とユウも言っていたのに。
    『どうすんねん?』とパパは言った。

    2005-06-02 18:43:00
  • 61:

    この人は昔から涼に甘い。娘がホストの未収を何百万を抱えていても、パパは怒りもしなかった。涼がそんな風になったのは、自分にも原因がある、わかっているのだ。
    『がんばって返していくよ。』
    この一言で仕事から何から全部がパパにばれた。その日は家から出してもらえなかった。

    2005-06-02 18:44:00
  • 62:

    ガチャリ。ドアの開く音がした。涼がこの世でもっとも嫌いな人物が帰って来た。母親だ。
    『涼ちゃん!!!!何してたの、家にも帰ってこんと、どこにおったん?何をしていたの?またお母さんにいえないようなことをしてるの?親にいえないようなことをしてはだめって昔から言ってるでしょう??』
    キンキンと母親が怒鳴る。

    2005-06-02 18:45:00
  • 63:

    『うっさいばばぁ。黙れ!』ばたん、とドアを閉める。バン!!すごい勢いでドアがあく。
    『うっさいってなんやの!!誰に向かって物言ってるの!!あんた自分のしてること考えてからそんなん言いなさい!!働きもせんと毎日毎日どこで何をしてるの?』
    教師である母親に、自分が風俗と水商売をしてるなどいえるわけもなかった。

    2005-06-02 18:46:00
  • 64:

    涼は昔からこの女が嫌いだった。
    小学生のときの門限は五時。小遣いは月500円。中学生のときの門限は六時。小遣いは2000円。中学生にもなって2000円て。夜外出するなどもってのほかだった。

    2005-06-02 18:47:00
  • 65:

    バレー部だった涼は試合後の打ち上げでさえ参加させてもらえなかった。《子供だけで夜ファミレスに行くなんていけません。》という理由からだ。それならばと先生も一緒だとうそをついた。学校に電話をされ、あっけなく嘘はばれ、やはり行かせてもらえなかった。

    2005-06-02 18:48:00
  • 66:

    毎回来ない涼を、部員の仲間は打ち上げに誘わなくなった。次の日の部活で話についていけない。『昨日言ってたあれさぁ〜』楽しそうに喋っている。何のことだかわからない涼は話に入れてもらえない。
    とりあえず根っからのまじめ人間なのだ。八時以降のテレビは見せてもらえない。八時を過ぎたら勉強しなくてはいけないのだ。

    2005-06-02 18:49:00
  • 67:

    涼は小学生あたりから、耳がよくなった。自分の部屋で、隠れて遊ぶため、リビングから来る母親の足音や、ドアの音に敏感になったのだ。
    月曜日の学校は嫌い。【めちゃイケ】の話をみんながしている。【めちゃイケ】が何なのか涼は知らなかった。

    2005-06-02 18:50:00
  • 68:

    試合があるから、電車賃500円を頂戴。というと手紙を見せなさいという。学校から、試合があるからどうこう、という手紙を見せろと。そんな手紙がいちいち出るはずがない。
    たった500円やそこらのために毎回母親は学校に電話をかけ確認する。

    2005-06-02 18:52:00
  • 69:

    このころから涼はだんだんと不良になっていく。夜家から抜け出すすべがあった。塾に行くことだ。大手を振って夜外出できる。もちろん勉強などするわけもなく、塾でのクラスはいつも最下位。
    毎日塾に行く振りをして、遊んだ。有名進学塾だったので先生は最下位のクラスのやつなんて、来ても来なくても気にせず、行ってないからといって連絡もされなかった。遊びたい放題だ。

    2005-06-02 18:52:00
  • 70:

    親の財布から金を抜き、ジャスコの閉店時間間際には万引き。小2から窃盗癖のあった涼は、中学時代でおそらく100万はゆうに超えるほどの万引き常習犯だった。
    しかし、11時近くにもなると帰らなくてはならない。嫌で仕方なかった。
    成績がよければ遊べるのでテストをがんばった。がんばって、勉強しても、涼はあまりいい点数は取れなかった。

    2005-06-02 18:54:00
  • 71:

    そんな涼を母親は【頑張ってないから】【授業をちゃんと聞いていないから】だと決め付けた。実際聞いてはいないが、勉強はした。頑張りはしたのに、母親は結果しか見てくれなかった。
    《結果よりプロセスが大事》そんな言葉を聞いた事があるが母親はきっと聞いた事がないのだろう。

    2005-06-02 18:55:00
  • 72:

    だんだん、お金に対する執着心が沸いてくる。ユウのために使って、実際自分はほとんど何も使っていなかったが、大金が手に入るのがうれしかった。風俗を始めたあたりから金のためならなんだって出来ると思うようになった。根性が腐っていった。

    2005-06-02 18:58:00
  • 73:

    頑張れば頑張っただけお金になって返ってくる。初めて頑張りを認めてもらえた気がした。ずっと認めてほしかった。頑張ったねと、言ってほしかったのだ。給料と成って返ってきたお金はみんな涼にささやく。《涼の頑張りの分だよ》と。

    2005-06-02 18:59:00
  • 74:

    家ではパパとおかんが争っていた。パパはおかんを責めた。涼があんな風になったのはおまえのせいだと。涼が家にいると決まって二人は喧嘩する。原因が涼にあるので二人の妹は涼が帰ってきて欲しくなかったらしい。
    『なんで帰ってきたん?』
    いぶかしげに真ん中の妹、はるひが言う。ごめんねと謝り涼は部屋に引っ込んだ。

    2005-06-02 19:00:00
  • 75:

    ユウにあいたい。
    仕事をしていないので会えない。おかしくなりそうだった。家になんかいたくない。ユウの所へ行きたい。親が寝静まったのを見計らって涼は家を抜け出した。
    しかしすぐに見つかってしまい連れ戻された

    2005-06-02 19:01:00
  • 76:

    ユウに会いたい。頭がユウでいっぱいになる。ユウからも【涼に会わな元気でーへん】とメールが来ていた。
    しかしそれから二度とユウに会うことはなかった。パパが残りの未収を一括でユウに払い、二度と涼と会わないと約束させたのだ。

    2005-06-02 19:02:00
  • 77:

    毎日母親との喧嘩でユウに会いには行けなかった。あのまま会えなくなるなんて。しかし監視の目は厳しく抜け出すなど到底出来なかった。

    水商売を始めた理由を聞くと母親は泣き出した。全てあんたのせいだ、何もほめず頑張りも認めず育てたせいだとののしった。

    2005-06-02 19:03:00
  • 78:

    人のせいにするなと母親も負けじと反論してくる。何を言われても全ては過去のこと。幼かった涼が受けた傷は消えることはなかった。
    本当は母親に愛されたかった。

    2005-06-02 19:04:00
  • 79:

    その反動は男に愛される事に反映されていった。自分を好きだと言ってくれる【彼氏】と言う肩書きのある人物がそばにいないとだめになってしまった。涼は彼氏が途切れたことがない理由もそこからだった。

    2005-06-02 19:05:00
  • 80:

    昼間は自由に行動できたのでピンサロには出勤していた。夕方仕事を終えて心斎橋筋商店街を歩いていた。
    最近の密かな楽しみは商店街で何かのキャッチをしているギャル男っぽい男前の子を見る事だった。
    メッシュの入った長めの髪にカラコンの青い目。黒く焼けた華奢な体。はっきりした二重に綺麗に通った鼻筋。あんなに綺麗な男の子は見た事がなかった。

    2005-06-02 19:06:00
  • 81:

    今日も女の子に声をかけては断られ声をかけては断られしている。時間帯から見てもホストではなさげだ。自分にも声をかけてくれないかなと毎日期待して通るのだが、いまだ声をかけてくれた事はなかった。
    しばらく毎日その子に声をかけてもらえるかなとわくわくしながら通っていたある日、メールをしながら歩いているとすいません、と声をかけられた。あの子だ。エステの勧誘らしかった。何も買わなければ大丈夫、とその子に付いて上にあがった

    2005-06-02 19:07:00
  • 82:

    夜家でぼーっとしていると知らない番号からの着信。客の番号を登録し忘れたのかと思い営業用の声で電話にでる。
    『はぁいもしもしぃ?』
    『もしもし?』
    どこかで聞いたことのある若い男の声。あのキャッチの子だ!!

    2005-06-03 15:35:00
  • 83:

    『誰か分かる?』
    『かずやくん?』
    昼間お姉さんに名前を聞いていたのだ。かずやは少し面食らった様子だった。自己紹介をしたり他愛もない話を長々とした。彼氏いるのかと聞かれいないと答えた。ユウときちんと別れ話をしたわけではないが、どの道二度と会うことはないだろう。親に携帯も変えさせられた。連絡手段さえもぅない。
    『じゃあ俺とつきあう?』いともかんたんに和也は言った。

    2005-06-03 15:37:00
  • 84:

    『うん』自分も簡単に返事をしてしまった。あこがれていた男が動機がなんであれつきあうと言ってくれたのだ。断るはずがなかった。
    ユウと会えなくなってから二日しか経っていなかったが最後の方は気持ちが薄れていたためなんともなかった。【涼の彼氏】と呼ばれる人物はユウから和也に変わったのだ。
    和也の仕事が終わる時間と涼の仕事が終わる時間とは同じくらいだった。和也の店まで迎えにゆき毎日終電まで遊んだ。
    男前すぎる和也は連れて歩けばものすごく目立った。すれ違う女の子が振り返ってまで見てゆく。

    2005-06-03 15:38:00
  • 85:

    ある日和也が友達を連れてきた。レゲエ系のドレッドの男。はっきり言って不細工だ。和也と並ぶと不細工具合が一層目立つ。挨拶もしない。涼は和也とレゲエの後ろから着いて歩いた。今日のご飯はレゲエも一緒らしい。和也からレゲエの分もおごってやってほしいとメールが来た。仕方ないのでレゲエの分も出してあげた。和也はよくホストにスカウトされるらしい。
    『俺ホストしたいねん〜あかん?』
    だめに決まっている。あろう事かレゲエも一緒に乗り気になっている。ありえない……
    先輩から呼び出しがかかったからと和也は行こうとした。今日はろくに和也と喋ってもいない。引き留めたが無理だった。

    2005-06-03 15:42:00
  • 86:

    怒ったふりをし、もういい、とひっかけを一人で歩いた。ホストだらけだ。和也は追いかけては来なかった。
    追いかけてくると思ったのに……涼は泣きそうになりながら歩いた。よく考えてみればこんな時間に一人でミナミを歩くのなど初めてだった。スーツの男がわんさか。ちょっと面食らった。梅田にはこんなにホストはいない。
    『なあなあ帰るん〜?』
    案の定キャッチされた。振り向くと犬みたいなかわいい子だった。和也にほったらかされたことにいらだっていた涼は立ち止まって話をした。最近オープンしたばかりの店に勤めているという哲也。番号を交換してその日は帰った。和也からの連絡は寝るまで待ってもなかった。

    2005-06-03 15:44:00
  • 87:

    次の日、いつものように和也におはようのメールをした。返事がない。夕方仕事が終わるころには『お腹すいた〜今日はドンキいこやぁ』とメールが来ていた。
    いつものように二人でひっかけを歩く。和也がいればキャッチをされることはない。ホストも結構見とれている。和也はそのくらい男前だった。
    家に帰ってから和也と電話で話した。涼は今日言おうと思っていたことを切り出した。
    『昨日の子、なんなん?挨拶もせんと初対面で連れの彼女にご飯ご馳走になって礼のひとつもいわれへんの?』

    2005-06-03 15:46:00
  • 88:

    和也は、今地下鉄やからかけなおす、といって電話が切れた。しばらくボーっとしているとメールが来た。
    【俺の連れの文句言う女は嫌いや。もう別れよう。】
    あまりにも急すぎてびっくりした。他にもこういう所が嫌だとダラダラと長文メールが来た。
    簡単に始まった二人は、簡単に終わってしまった。

    2005-06-03 15:48:00
  • 89:

    さぁ困った、彼氏がいなくなった。今思えば和也は顔はかっこいいとは思ったけれど好きだったかといわれたらそうでもないような気がする。付き合いが短すぎてよくわからない。
    彼氏がいないなんて耐えられない。寂しいとき、どうしたらいいんだ。ふと頭に一人思い浮かんだ。大ちゃんだ。
    大ちゃんは一回お店に来ただけのお客さんだ。もう30らしいがどう見ても22,3にしか見えなかった。背も小さいし可愛らしい。こんな30いるもんかと思うくらい若く見えた。
    お店に来たときに番号を交換してそれから大ちゃんは毎日電話をかけてきてた。彼氏がいることも言った。諦めへん、と大ちゃんは言っていた。

    2005-06-03 15:49:00
  • 90:

    『おはよ〜〜〜なんしてる?』昼間にかけても大ちゃんは必ず出る。『仕事に決まってるやろ〜!!』言われてみればそうだ。
    『大ちゃんさぁ、涼のこと好きぃ?』甘えた声を出してみる。
    『好きやで、彼氏から奪いたいもん』大ちゃんも答える。まぁ、こんな様なことは毎日言われている。大ちゃんは馬鹿の一つ覚えみたいにこの台詞ばっかり言うからだ。
    『涼な、毎日大ちゃんがそう言うけん、大ちゃんのほうが気になって彼氏と別れてしもうたよ〜。もろうて!』
    大ちゃんは相当びっくりしていた。ほんまかぁ、ほな今日から俺は涼の彼氏やな!と嬉しそうに言っていた。

    2005-06-03 15:50:00
  • 91:

    良かった、また彼氏ができた。
    嘘も方便、というようにけして本当に大ちゃんが気になったからと別れたわけではない。でも、大ちゃんはそうだと思っているのでいつも嬉しそうに“奪ったんやなぁ”と言っている。かわいい。大ちゃんは社会人なので毎日会うなどは無理だったが、電話は毎日くれたし、仕事中でも電話には出てくれたので寂しくはなかった。
    出勤するたびに、商店街で和也に会う。会いたくなくとも会ってしまう。やはりかっこいいな…最初に逆戻りだ。和也を眺める毎日が過ぎた。
    大ちゃんは、可愛らしいけれど、決して男前の部類には入らない顔だった。涼は、和也の影響もあり大分垢抜けた。自分で言うのもなんだが、並以上のレベルにはいたはずだ。

    2005-06-03 15:51:00
  • 92:

    連れて歩くと、大ちゃんは結構見劣りした。が、やさしい。年の功とでも言うべきか。ただ、18歳の和也よりもお金がなかった。
    少ない給料だけで生活しているのだから仕方ないかなと思っていた。さすがに涼が出すようなことはなかったが、和也と付き合っていたときより食事は質素になった。
    大ちゃんの地元の祭に行ったり、花火大会に行ったり楽しい夏が過ぎた。ただ、花火大会で花火を見ているとき、漠然と涼は思った。来年花火を一緒に見る人は、きっと大ちゃんじゃないな、と。

    2005-06-03 15:55:00
  • 93:

    最近大ちゃんがおかしい。冷たい。寂しい。どうしたらいいんだろう。どうしたん、と聞いても疲れてるだけ、としか答えてくれなかった。疲れてるだけじゃないのは見てればわかる。
    マヤに電話をしてもらった。マヤは大ちゃんとは初対面どころか直接しゃべったこともない。それなのに、涼はマヤにかけさせた。しかも驚いたことに大ちゃんも普通にしゃべった。こいついつか騙されるんでは、と変な不安がよぎる。
    マヤが聞いたところによると、ひとのものだったから燃えたのと、年の差がありすぎてどうしていいかわからなくなってきた。女として見れなくなってきている。でも涼がまっすぐに自分を愛してくれているので余計どうしたらいいのかわからないと。

    2005-06-03 15:56:00
  • 94:

    よくもまぁ、いきなりかかって来た電話にそこまで本音をしゃべるもんだ。
    涼は、愛されなきゃ生きていけない。嘘でもいいんだ。メールとか、電話とか、言葉とか目に見えて、愛してくれたら、たとえそれが嘘でも涼は満足なのだ。
    今度はどうやら自分が大ちゃんを愛してしまったらしい。和也のときとはまったく違う感情だ。
    しかし、自分のせいで大ちゃんが悩んでいる。人のものだったから燃えたって、手に入ればそうでもないと言うこと。年が離れているのなんて出会ったときからわかっていたのに、そんなことで今更悩まれてもどうしようもない。

    2005-06-03 15:57:00
  • 95:

    でも、自分のせいで大ちゃんがつらい思いをしている。それならばと、涼は身を引くことにした。
    大好きな人に自分から別れを告げた。駅で号泣してしまった。大ちゃんはごめんな、と言って涼を抱きしめた。だいちゃん。大好きな大ちゃん。抱きしめられたら余計涙があふれた。
    でも、大ちゃんには幸せになってほしかった。泣きじゃくる涼に大ちゃんはキスをした。大好きな大ちゃんの、大好きな優しいキス。あふれ出た涙はしばらくすごい勢いで出続けた。

    2005-06-03 15:58:00
  • 96:

    今度は、和也のときのようにさぁ次、とはさすがになれなかった。やっぱ、和也のことは好きじゃなかったんだなと実感した。
    大ちゃんの好きだった曲を聴くと涙が出た。思い出が全部あふれてきて涙が止まらなくなった。暇だ。
    物事を昔からはっきり言う涼は正直友達が少なかった。しかもその少ない友達は皆昼間働いたり学校に行ったりしている。やることないなぁ〜〜…ごろん、とベットに横になる。

    2005-06-03 15:59:00
  • 97:

    そのとき着信が入ってきた。昼間、携帯が鳴ることなんか、客からくらいしかなかった。でも、着メロが違う。
    哲也だった。昨日寝すぎて店休んでしまって(起きたらもう朝だったらしい)暇だから遊ぼう、と言う電話だった。
    準備をしてミナミに向かう。今日は仕事が休みだ。そういえば、昼間誰かと遊ぶなんて相当久しぶりだ。
    哲也は昼間に私服で見ると、どう見てもホストっぽくはなかった。

    2005-06-03 16:01:00
  • 98:

    カラオケに行き、四時間ほど歌った。哲也はDragon Ashやジーブラの歌が上手だった。プリクラを撮りに行ったりUFOキャッチャーをしたりして遊んだ。夜になると哲也は出勤していったので涼は家に帰った。ふつうに遊ぶのも楽しいな。なんて思いながら珍しく早く寝た。
    しばらくしたある日の真夜中哲也から電話がかかってきた。
    『営業電話ゃろぉ?』
    『うん!営業電話ぁ〜』

    2005-06-03 16:02:00
  • 99:

    営業電話を営業電話だと認めるホストなんかいるんだ、と多少驚いたが素直さが可愛くて飲みに行った。
    店に行っても昼間と変わらずふつうに喋った。色をかけるわけでもなく、いろんな話をするだけ。それからはちょくちょく哲也の店で遊ぶようになった。
    ホストに免疫も出来、キャッチで気に入った子とは喋ったり、時には店に行ったりもした。
    不思議と哲也に惚れることはなかった。いろんなホストに遊びにいったが誰にも惚れることはなかった。ユウの一件で警戒心が働くのだろうか?

    2005-06-03 16:04:00
  • 100:

    ある日京都までバンドのライブを見に行った。数ヶ月前に友達が遊園地で野外ライブをした時、一緒に行った友達はアトラクションのフリーパスで遊びに行ったがアトラクションで遊ぶ気のなかった涼はそのまま出演バンドを見ていた。
    ちょうど友達の次に出てきたバンドでドラムの男の子に惹かれた。和也のような派手さはないがきれいな顔をしていた。バンドの演奏自体も涼の好みだった。演奏後にデモテープを無料で配るという。演奏後話しかけてデモテープとフライヤーをもらった。そこからちょくちょくホームページでメンバーと話をしていた。そして今日、昔神戸のライブハウスで見た良かったバンドも一緒にやると言うので京都まで足をのばしたのだ。
    ライブハウスに着いた。ドラムの智也を探す。知らない人だらけ。パンクバンドなので妙な身なりの人がたくさん。挙動不審になった。智也発見。智也に駆け寄る。久しぶりやなっと智也が笑う。笑顔も相当かっこいい。ライブハウス内に知り合いなどいるわけもなく、涼はずっと智也の側にいた。演奏も前で見たかったが妙な身なりの人が山盛りなので後ろから見た。ドラムを叩いている智也も相当かっこいい。智也の横にいるといろんな人が話しかけにくる。
    『智ちん

    2005-06-03 16:07:00
  • 101:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 102:

    期待してしまうじゃないか。この時涼はすでに智也に惚れていた。
    メンバーの真一が涼も打ち上げにおいでと言ってくれた。打ち上げに行ってもやはり妙な身なりの人だらけ。涼は片時も智也の隣から離れなかった。
    床に置いていたメニュー表の上で涼と智也の手が当たった。
    『今手つなごうとしてもたわぁ〜』智也が笑う。

    2005-06-03 16:10:00
  • 103:

    『つないでもいいよ?』勇気を出して言ってみた。智也は本当に繋いできた。顔が真っ赤になる。恥ずかしい。ドキドキする。
    『涼ちゃん顔赤いでぇ〜』真一がちゃかす。
    『涼お酒弱いからなぁ』酒の席なので容易にごまかせた。
    昼間働いてそのままライブに臨んだ智也は眠いらしくごろんと涼の膝の上に横になった。

    2005-06-03 16:11:00
  • 104:

    『寝るまで手、離さんといてな』
    膝枕だ…ドキドキする。寝たって離したくないよと思いながら、うん、と言っておいた。
    『涼ちゃんて智とつきあってんや?』いろんな人が聞きにくる。智也は人気者らしい。違いますよ、と否定するものの手をつないだまま膝枕をしている状況では説得力が全くなかった。
    真一やほかのバンドの人と話をしたが頭は智也でいっぱいだ。なにを話したのか覚えていない。智也の肩あたりに入れ墨のようなものが見えた。

    2005-06-03 16:13:00
  • 105:

    そうこうしてるうちに居酒屋は閉店になりお開きだ。智也を起こす。寝起きが悪い。何とか起きあがったかぼーっと座ったまま動かない。
    『智也くん墨入ってるん?何入れてんの?』
    返ってきた答えはびっくりするようなことだった。
    『何入ってるか知りたい?ほな今日俺んち泊まりい』
    えっ??智也の家に行ける!嬉しかった。

    2005-06-03 16:15:00
  • 106:

    真一の車に乗り智也の家で降りる。緊張はピークだ。智也は実家だった。さらに緊張した。幸い誰も起きていなかった。
    部屋にはいると智也はすぐにベットにもぐりこんだ。
    『涼、こっちおいで寒いやろ?』
    ベットの中で智也に抱きしめられた。あったかい。ドキドキが智也に聞こえそうなほどドキドした。

    2005-06-03 16:17:00
  • 107:

    TVをつけると日曜の朝なので仮面ライダーの最新のみたいなのがやっていた。智也とくっついたままTVを見る。仮面ライダーはなぜか内容がものすごく難しくそれでいて馬鹿馬鹿しかった。智也とつっこみどころ満載やな、こんな難しい内容子供わからんよなぁ〜なんて言いながら二人で仮面ライダーにつっこみを入れていた。
    『俺多分あと30分もつかもたんかやわ……』眠いのかなと思いそっか。と返事をした。
    『涼俺我慢できへんわ…』
    智也が首に吸い着いてきた。びっくりしたのと気持ちいいので声が漏れた。

    2005-06-03 16:19:00
  • 108:

    『そんな声出したら俺もぅ我慢できん!』
    智也が涼に被さってきた。
    智也は優しく涼を抱いた。幸せだった。軽い女だと思われたかもしれないが、幸せだった。その日も昼から仕事のある智也は終わるとすぐに寝てしまった。寝顔を見ていると彼女になれたような気がして嬉しかった。
    智也が起きて仕事に行くついでに駅まで送ってくれた。帰りたくない。智也とずっと一緒にいたい。また連絡するわなっと言って智也は仕事に行った。

    2005-06-03 16:20:00
  • 109:

    帰りの電車で思い出してにやけてしまった。多分相当気持ち悪い人になっていたと思う。でもそれくらい幸せだった。
    昼の仕事の間は電話にはでれないらしいので夜の仕事に行くまで連絡するのを待った。ちなみに智也はホストではない。
    コンビニの清掃の仕事をしている智也は部長という立場らしく現場には行くけど実労はほとんどしないらしい。日替わりで近畿のコンビニを回るらしい。12時を回って電話をしてみた。
    『おう、どしたあ?』

    2005-06-03 16:22:00
  • 110:

    ふつうの声だったが朝のことを思い出して一人で恥ずかしくなった。
    途中で何度か切ったが結局朝まで電話を繰り返した。
    それからしばらく毎日今日はどこの清掃なのかを電話で聞いて近かったら会いに行こうと思ったがなかなか近くはなかった。
    智也はいつでも電話に出たし、寂しくはなかった。でも会いたい。顔が見たい。皮肉なことにライブの予定もその月はもうなかった。

    2005-06-03 16:23:00
  • 111:

    獅子座流星群がくる日、いつものように電話をした。
    『今日はどこなん?』
    『今日は西淡路やで!』
    近い!!…事はないが今まで桂だったり富田林だったりとうてい行けない所ばかりだったが西淡路はまだ行ける。

    2005-06-03 16:25:00
  • 112:

    『西淡路のどこ?行く!!!!!』
    え!?と智也は驚いていたがチャリを飛ばして西淡路を目指す。空では流星がきらきら輝いている。30分ほどチャリを飛ばして到着。コンビニを見渡し智也を探す。コンビニの端でたばこを吸っている智也発見。
    『智也!!』
    『涼!!ほんまに来たんか!?なにで来たん??』

    2005-06-03 16:26:00
  • 113:

    『チャリ』『そんなに俺に会いたかったんか??』
    おそらく智也は冗談で言ったのだろうが、涼は本気で答えた。
    『うん!会いたかった』
    智也はそうか、と笑顔で答えた。

    2005-06-03 16:28:00
  • 114:

    従業員に指図する智也もかっこいい。結局仕事が終わるまでコンビニにいた。智也の仕事が終わったので帰ろうとした。
    『俺こいつ送っていくわ。先にここ(涼の家の近く)まで車で行っといて!!』
    え!?と涼は驚いた。チャリを全速力で飛ばして30分以上かかった距離だ。それを智也は歩いて送ってくれると言う。相当長い時間智也と一緒にいれる。チャリを押して二人は涼の家に向かって歩いた。
    歩きながらいろんな話をした。涼は嬉しさが大きすぎてあまり覚えていないが幸せだった。

    2005-06-03 16:30:00
  • 115:

    『寒いなぁ〜』
    と涼が言うと智也は手をつないでくれた。手を通してドキドキが智也に伝わりそうだ。作業着の智也はライブとはまた違ったかっこよさがあった。作業着で一緒に手を繋いで歩くなんてはたから見ればすごくラブラブのカップルのようだ。そう見える状況に涼は満足だった。
    涼を送って智也は京都に帰って行った。家に帰って寝ようとしても興奮して眠れない。
    それからまた毎日電話で勤務先を聞いたがそれから近くはなかった。

    2005-06-03 16:33:00
  • 116:

    ライブに行っては智也のそばにずっといた。毎回いろんなひとが“彼女?”と聞いてくる。ショートカットの綺麗なお姉さんが智也に近づいてきた。
    『智彼女変わったん?』
    変わったん?と言う言葉が引っかかった。智也に彼女がいるかもしれないなんて考えてもみなかった。
    『智也彼女おるん??』

    2005-06-03 16:34:00
  • 117:

    『涼は俺が大好きやもんなぁ!』
    好意を持っていることは気づいているのだろう。事実だ。智也の事が好きでたまらなかった。
    毎日夜中智也と電話し、その度好きだと言うが伝わらない。はじめてこんなに長い間【彼氏】というものがいない。でも平気だった。久しぶりの片思いだが、楽しかった。また智也の家に行った時思い切って聞いてみた。
    『彼女どんな子?』

    2005-06-03 16:39:00
  • 118:

    彼女はふつうの事務をしている智也と同い年。プリクラを見せてもらったがたいして可愛くない。勝てる。
    智也は今日も涼を抱いた。優しい。彼女はどんな風に智也に抱かれるのだろう。自分とは違うのだろうなと少しさみしくなった。
    『彼女と別れて涼とつき合うとかない?』真剣に言ってみた。
    『俺な涼の事可愛いとは思うしつき合うのは全然いいねんけど、俺なバンド関係で知り合った人とはつき合うとかしーひんって決めてんねん…』涼の思いは叶わなかった。

    2005-06-03 16:41:00
  • 119:

    いつかそのうち気が変わるかもしれない。智也に一度振られているが諦められなかった。智也を独り占めしたい。あの笑顔を自分だけのものにしたい。思いは募るばかりだった。
    最近智也は電話にあまり出ない。仕事がしんどいので部長という立場を捨てバイトに降格したらしく実労しなければならないのだ。たまには電話に出てくれるしライブに行けばあえた。あきらめがつかなかった。しかしそろそろ智也は涼が本気で自分の事を好きだと自覚しはじめたのか期待させまいとしているらしく、少しずつ冷たくなっていった。ライブに行っても家に連れて帰ってはくれなくなった。寂しくて、切なくて胸が苦しかった。
    会えない分、余計に気持ちが募る。月に3,4回のライブが何よりの楽しみだった。元から結構社交的な涼は妙な身なりの人たちともすぐ仲良くなった。仲良くなったといってもライブで顔をあわせれば喋るだけ。もう、ライブハウスに行っても一人じゃない。智也のそばにくっついているのは状況的に無理になった。
    やはり、今日も連れて帰ってはくれなかった。もう、自分には望みはないのだと、この時なぜか実感した。この頃からだんだん付き合いたいという

    2005-06-03 16:44:00
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    あぼ~ん
  • 121:

    彼氏がほしい。また始まった、涼の彼氏ほしい病。誰かがそばにいてくれないと。常にかまってくれなきゃ寂しくてつぶれそうだ。今、誰もよさげな人はいない。哲也の店には相変わらずちょくちょく行っていたが完全に哲也は《男友達》になっていた。
    どこで出会おう。大ちゃん以来、ろくな客もいない。そこまで気に入ってるホストもいない。不思議と、ユウ以外に色をかけられたことはなかった。

    ネットでよくみる恋愛相談サイトで今日もチャットで朝まで喋った。もちろん相手はどこの誰だか全く分からない人だ。今日は暇だったのでリンクも覗いてみた。出会い系サイトがランキング形式で載っている。生まれて始めて、出会い系というものをやってみた。

    2005-06-03 16:45:00
  • 122:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 123:

    バイト先の島田君と言う男前の子と仲良くなりよく一緒にスロットに出かけた。島田君にも彼女がいるので、ほんとにただの《スロット友達》だった。剛には愛されていると思っていたし、その愛も涼のコップからは溢れそうなくらい、多大なものだったから…

    2005-06-03 16:52:00
  • 124:

    ある日電話でいきなり剛が言った。
    『ごめん、俺浮気してん』目の前が真っ暗になった。浮気って…まだ付き合って二ヶ月しかたっていない。そんなに早く浮気するもんなのか?っていうか普通浮気を自分から言うか!?いろんなことを一瞬で考えた。
    なんと剛は出会い系をやめてはいなかった。そして浮気した理由は【25歳だったから】。剛は極度の年上好きだった。
    嵐のように切れ、三日後その女を呼び出させた。剛は渋っていたが『お前のこと好きって言うてんやったら、《こないだ会ったばかりやけど又会いたい》とか何とか言うたら来るんちゃうんけ!!』いつもの涼ではない切れ具合に恐れをなしたか、しぶしぶ承諾した。

    2005-06-03 16:53:00
  • 125:

    JR三田に向かう。今日はいつもより化粧も濃い目、服装もフェロモン全開。戦闘態勢だ。駅について剛発見。うつむいている。
    ほんとは自分で話をつけたかったが、自分から言うと言う。とりあえずそれを見届けなければ。駅のホームに剛と少し距離を置いて立ち、その女を待つ。駅なんだから、自分の男の隣に女が立っていたって、何も不思議はない。
    しばらくして、電車が来たのか改札からぱらぱらと人が出てゆく。Gジャンにデニムのロンスカの変な女。センスなさ過ぎやろ…と思っていたら、なんとそいつが剛に駆け寄る。
    おいおい…なんだか怒りを通り越して呆れた。相手はあんなのかよ…いくら25歳だからってあれはないだろ。

    2005-06-03 16:54:00
  • 126:

    センスの悪い女は甘ったれた声で剛に話す。
    『ごめんねぇ、待ったぁ?乗り換え間違えちゃって時間かかっちゃったぁ』キャバ嬢のような甘い喋り。顔と全く似合っていない。剛にべたべたと引っ付く。やめて。離れて。しばくぞ。結構限界だった。
    『今日は仕事もう大丈夫なん?』剛の声が震えている。どうやって話を切り出すか困っているのだろう。50cmと離れず、横でブチ切れの涼がいるので余計困惑しているらしい。
    蕎麦屋の娘らしいセンスの悪い女は又甘ったれた声で答える。

    2005-06-03 16:56:00
  • 127:

    バキ。剛の頭をどつく。
    『お前、さっさと話せや、いつまで待たせる気やねん。もう30分は経ったぞ!?』
    女は鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をした。
    『・・・誰???』めはまっすぐ剛を見ている。

    2005-06-03 17:00:00
  • 128:

    『・・・・・俺の彼女・・・』ボソッと剛が答えた。
    『さっさと話し終わらして、ご飯行こうねってゆったやろ。もうお腹すいて限界やねん。もうちょっと横で待ってたるから、はよせぇ。』
    その場を離れた。
    だらだらと、話をするのかと思えば意外にあっさり剛は言った。

    2005-06-03 17:01:00
  • 129:

    『そういうことやねん。こいつは俺の彼女でお前は浮気やねん。彼女にばれたしもう別れてな。』
    センスの悪い女は泣きながら改札の中へ消えていった。
    『ごめんな。ほんまごめんな。』強がぎゅっと抱きしめた。よしよし。頭をなでてやる。
    『よう言ったね。もう浮気しやんといてや?』うん、と涙目で剛が答え、キスをした。

    2005-06-03 17:03:00
  • 130:

    そこからデートしたのだが、剛の携帯はセンスの悪い女からメール、電話が鳴りっぱなし。
    【あんな女のどこがいいん】【剛はあの人にだまされてるよ】など、涼の文句ばかりだ。相手が、綺麗なお姉さんとかなら、そんなメールも気になったかもしれない。だが、センスの悪い女はお世辞にも可愛いとはいえない顔だった。浮気した自分の彼氏の相手の女を見て、情けなくなるほどに。
    『またメール来た…もう、ほんまうっといわ…』お前、あいつのことを好きで浮気したんじゃないのか?
    メールの剛の反応になんだか違和感を覚えた。

    2005-06-03 17:04:00
  • 131:

    甘甘な愛をくれる剛に涼はのめりこんでいった。寝てもさめても剛のことを考えた。電話とメールではいつも聞いてるこっちが恥ずかしいようなせりふを剛は恥ずかしげもなく言った。
    ある日いきなりたった一言【もう終わりにしよ。バイバイ】とメールが来た。ありえない。昨日寝る前まであんなにラブラブだったのに。今週末は梅田でデートしようねと約束したのに。慌てて剛に電話をかける。受けない。涼は震える手でメールを打った。

    2005-06-04 01:13:00
  • 132:

    『なんでいきなりそんなん言うん?何があったん?』
    なかなか返事がこない。何が原因なんだろう。何を言われるんだろう。本当に終わってしまうのか。不安ばかりが頭をかけ巡る。まだ返事が来ない。不安に押しつぶされそうだ。

    2005-06-04 01:18:00
  • 133:

    ライターをつける手が震える。うまくつけられない。それほどまでに動揺していた。剛のいない毎日など考えられない。やっと火をつけられたタバコも考えているうちに長い灰となり足に落ちてきた。熱さで我に返る。
    剛専用の着メロがなる。さらに手が震える。怖くてメールを開くことが出来ない。内容を読む勇気が出ない。覚悟を決めてボタンを押す

    2005-06-04 01:20:00
  • 134:

    【いつか涼が俺から離れていきそうで怖い。そんな思いをするくらいならもう離れた方がましやから。さよなら】
    【離れたりなんかしない!涼は剛がおらな生きて行かれへん!離れたりしないから剛から離れたりしんといて!涼には剛しかおらんねん!】手は震えていたが驚くほどの早さで返事を返した。また返事が来ない。頼むから離れていくなんて思いとどまって……祈るようにつぶやき続けた。

    2005-06-04 01:21:00
  • 135:

    【でも一生気持ちが離れていったりせえへんて保証ないやん。そうなった時が怖いねん。だからもう涼の前から消えるから】思いとどまってくれてはないようだ。
    【だから涼には剛しかおらんの!!離れたりされたら涼が無理なん!好きじゃなくなったわけじゃないやろ!?】と返事を返した。返って来る返事は同じ。怖いから無理だと。水掛け論だ。お互い言葉を変えて同じ事を主張するだけ。……どうすれば剛に伝わるのだろう。どう表せば離れたりしないと信じてくれるのだろう。言葉は使い尽くした。三時間ほど同じやりとりを続けやっと剛が信じた。信じたと言うか、口では【信じる】と言ってくれた。
    良かった。思いとどまってくれて本当に良かった。涼は言い合って疲れたが剛の深い愛を感じた。愛されてると実感した。

    2005-06-04 01:22:00
  • 136:

    剛はMだった。セックスの時も縛られたりするのを好んだ。
    また別れ話をされた。前ほど動揺しなかった。きっと原因は前と同じだと思った。が、内容こそ同じもののなんだかエスカレートしている。涼は離れないと説得するが聞かない。ものすごいメールが来た。
    【俺は涼がそばにおらな生きていかれへん。毎日明日は涼に振られるんじゃないかってびくびくしながら生きてんねん。涼の愛が欲しい。絶対的な愛をちょうだい。縛り付けて、殺してでも側にいてくれな嫌やねん】

    2005-06-04 01:24:00
  • 137:

    さすがにちょっと面食らった。殺されるのは困る。でもそれだけ自分の事を愛してくれているのだと思うと嬉しさで涙があふれた。狂気的なほどに自分の事を愛してくれている。ここまでストレートな愛情は初めてだった。
    情緒不安定なのか、不安なのか剛は別れ話をしょっちゅう切り出すようになった。内容はやっぱり毎回同じ。本当は別れたいんじゃないかと不安になる。剛の事は大好きだ。いい意味で空気のような存在。だからこそ怖い。剛がいなくなってしまったら…考えるだけで涙がでそうになる。もう別れたいんじゃないなら気持ちを確かめるために別れ話をするのは辞めて欲しかった。辞めさせよう。そう考えてこう言ってみた。

    2005-06-04 01:25:00
  • 138:

    『そんなに信じられへんのやったら別れていいよ。剛がそうしたいんやったらしたらいいやん。涼死ぬわ。そしたらあんたの望み通りやろ?どこにもいかへんくなるで』
    『涼が死ぬことないよ。最低なんは俺やから。俺が死ぬから。確かめたりしてごめんな。』プツ…
    しまった……逆効果だ……

    2005-06-04 01:26:00
  • 139:

    プルルルル…プルルルル…プルルルル電話にでない。まさか本当に死んでしまったのか??剛ならやりかねない。何度も何度もリダイヤルを押す。いっこうに出ない。どうしよう。本当に死んでいたら……電話に出てくれない事が余計に不安を煽る。直接確かめようにもとうてい真夜中に行ける距離ではない。切羽詰まって香織に泣きながら電話をかける。相当取り乱していただろう。自分でも何を言ってるかよくわからない。号泣しながら喋るのでえづく。それでも涼は香織に伝えようと頑張って喋った。

    2005-06-04 01:27:00
  • 140:

    プップップッ……
    香織の声が途切れる。キャッチだ。こんな時に誰だよ!?と思いながら耳から離し画面を見る。
    【着信中:剛】
    びっくりして香織の電話を切ってキャッチに出る。今出なければ一生話せないかもしれない。

    2005-06-04 01:28:00
  • 141:

    『もしもし……ひぃっ…うっ……』
    さっきまで号泣していたのだからいきなり普通に話せるわけがない。剛はちょっと驚いた様子だった。
    『いっいぎでで(生きてて)……涼……じっ…死なへんがらっ……』やっとの思いで話す。
    『ごめんな、俺ホンマに死のうと思った。でも涼のそばにいたいから…涼の事考えたら死なれへんかった。でもそんなに泣かせてごめん。やっぱ俺ホンマ最低やな……そばにおったら涼を悲しませるだけや……やから別れた方がいい……』

    2005-06-04 01:29:00
  • 142:

    話が振り出しに戻ってしまった。涼は泣き崩れた。別れたくない。離れないで。別れ話をしてもいいからそばにいて……言いたいことは山ほどあるのに言葉が出ない。ただただ泣くばかりだった。泣くだけで何も話さない涼に剛は言った。
    『泣くなよ、めんどくさいなぁ!!』
    ……?????
    自分の耳を疑った。

    2005-06-04 01:31:00
  • 143:

    めんどくさいなぁ!?!?!?あまりにもびっくりして涙は止まった。
    『やっと泣きやんだか。耳元でうっさいねん』
    今自分は誰と話していたんだっけ?剛のはずだ。剛は自分の事を愛しているはずだ。うっさいなんて言ったのは幻聴。他の電波を拾ってしまっただけだ…なんて無理矢理な理由をつけて落ち着こうとした。

    2005-06-04 01:32:00
  • 144:

    『俺はホンマに最低な男やから。涼に愛される資格なんかないねん。だからもう別れて。』
    また別れ話に逆戻り。
    『最低な男や、って何があるん。ゆうてくれやな最低かどうかわからんやん。涼に愛される資格なんかないって言うんなら最低かどうかは涼が決めたらいいんちゃうん!?』
    剛はしばらく黙っていたが重い口を開いた。

    2005-06-04 01:33:00
  • 145:

    今まで付き合った女はみんな涼よりはるかに年上だったらしい。さっきまで暗い口調で話していたのに急に剛は明るい口調で話し始めた。
    『女は20代後半が狙い目やねん、特に独身の地味なやつな。金ため込んでるし、甘い言葉なんか言われたことないからホイホイ騙されよんねん。将来結婚しよ、やから二人で貯金しようゆうて架空口座教えたら一発や。ホンマに振り込みしよるからなあ!』

    2005-06-04 01:36:00
  • 146:

    死ぬと言ったのも本心ではなかった。ちょっとした脅しのためだ。しかし日をおうごとに剛に対する気持ちは大きくなってゆく。剛がいないのなら死んだ方がマシだと思うようになってきた。あれからも剛は別れ話をたびたび切り出す。前まで【不安だから】が主立った理由だったがあの日を境に【愛される資格がないから】というのも増えた。いくら説明しても剛は別れ話を繰り返す。その度号泣し泣きわめき泣き叫んだ。

    2005-06-04 01:38:00
  • 147:

    完璧に自分が情緒不安定だ。この頃になると本気で『死ぬから』と言っていた。必ず剛は『俺が死ぬから』と言い返してくる。それを言われると毎回絶望感に襲われ涙は一層勢いを増す。毎日夜中になればまた別れ話をされるんじゃないかと不安が募る。悲しいまでに毎回不安は的中し死ぬだの死なないだの泣き叫ぶ毎日が続いた。

    2005-06-04 01:39:00
  • 148:

    しばらくしてから剛は別れ話をしなくなった。【結婚しよう】と言い出すようになり涼は幸せだった。結婚詐欺をしたと言っていたのが引っかかったが幸か不幸か涼は全く貯金がなかった。結婚詐欺の話を聞いた時は【(当時)16の奴に騙される20代後半ってありえへん】と思っていた。が、今なら剛に金を巻き上げられていった女たちが剛にはまった気持ちがわかるような気がした。

    2005-06-04 08:01:00
  • 149:

    春になり剛は大学生になった。三田の実家から京都の大学に通うのは無理なので一人暮らしを始めた。生活用品を一緒に見に行ったり、京都まで鍵を受け取りに行ったり幸せな日が過ぎた。春休みだった事もあり頻繁に家に行った。帰りたくない、とワガママを言って四日間泊まった事もあった。

    2005-06-04 08:04:00
  • 150:

    春休みが終わり大学が始まる。デートは週一ペースに逆戻り。春休みあれだけ一緒にいた分寂しさが募る。三田も京都もさして距離は変わらないのでそう易々と会えるようになったわけではなかった。

    2005-06-04 08:05:00
  • 151:

    新学期が始まり剛は宿泊研修に行った。親睦会のようなものらしい。この頃になると剛もすっかり垢抜けていたので心配だった。
    その年、涼も専門学校に行き始めた。秋あたりに受験して決まっていた。自分もなんだかんだと忙しかったので連絡も前よりは減った。しかし何もする事がなくなると剛の事ばかり考えていた。
    剛は京都の大学は滑り止めだった。本命には落ちたのだ。京都の大学には行く気がしない、自分より低脳しかいないとしょっちゅうこぼしていた。宿泊研修も行かないと単位がないから、としぶしぶ行ったのだった。今頃何をしているのだろう。ちゃんと友達が出来たかな??この宿泊研修が後から最悪の事態を招くなんてこれっぽっちも考えていなかった。

    2005-06-04 08:06:00
  • 152:

    今日は剛が帰ってくる日だ。わくわくしながら連絡を待つ。剛専用のメール着信音が鳴る。
    『もう俺と別れて。俺の事は忘れて。楽しかった。じゃあな』
    目の前真っ暗だ。久しぶりの別れ話は涼の心に傷を作るには大きすぎた。『なんで??理由は??納得出来やな別れへん!!』
    ふるえる指でメールを打つ。涙で霞んで画面が見えない。
    『もう涼の事好きじゃないねん!!』
    自分の周りから音が消える。今度は頭が真っ白になる。別れ話は何度もしていたが好きじゃないなどと言われたのは初めてだった。どうすればいいのかわからない。体が固まったまま動かない。瞬きをすることさえ忘れ開けっ放しの目からは大粒の涙がぼろぼろと転がっていった。

    2005-06-04 08:08:00
  • 153:


    自分の周りから音が消える。今度は頭が真っ白になる。別れ話は何度もしていたが好きじゃないなどと言われたのは初めてだった。どうすればいいのかわからない。体が固まったまま動かない。瞬きをすることさえ忘れ開けっ放しの目からは大粒の涙がぼろぼろと転がっていった。

    2005-06-04 08:09:00
  • 154:

    好きじゃない……?
    どう返事を返していいのかわからない。というより何も考えられない。
    『理由はなんなん??好きじゃないっていつから思ってたん??』
    ちょっと我に返り返事を打つ。“送信完了”と出てからほんの一瞬で返事はやって来た。
    『最初から』
    このひと言で完璧に涼は狂気をおびた。奇声を発し泣き叫ぶ。叫びすぎて喉が切れ血を吐いた。手当たり次第物を投げ、壁を殴り窓も割った。家は強盗に入られたかのような大惨事だ。涙はすごい勢いで出続ける。えづき、血を吐きながらも叫び続けた。自分を保つことが出来ない。

    2005-06-04 08:10:00
  • 155:


    このひと言で完璧に涼は狂気をおびた。奇声を発し泣き叫ぶ。叫びすぎて喉が切れ血を吐いた。手当たり次第物を投げ、壁を殴り窓も割った。家は強盗に入られたかのような大惨事だ。涙はすごい勢いで出続ける。えづき、血を吐きながらも叫び続けた。自分を保つことが出来ない。

    2005-06-04 08:12:00
  • 156:

    最初から!?剛は自分のことを愛してはいなかったのか??あの言葉は??剛の笑顔や愛してるとささやく声などが頭をかけめぐる。愛してはいないなんてそんなわけがない。そう信じたかった。
    ふっと気づくと電話が鳴っている。剛だ。自分で破壊した家具のがれきの中に座り込み電話に出る。
    『あ゛い……』
    切れているので話すと痛い。うっ…とえづきながら剛が言葉を発するのを待った。

    2005-06-04 08:13:00
  • 157:

    『また泣いてんのか、ほんまめんどくさいなぁ…。もう好きじゃないっつってんねんからわかったーゆうて別れろや』
    口振りはまるで別人だが声は剛だ。ショックが大きすぎて何もいえない。ただただ泣くばかりの涼に剛が言った。
    『別れたくないんか??』
    『別れたくない!!!!』
    『わかった。じゃぁ俺に貢げや。』

    2005-06-04 08:14:00
  • 158:

    ………????????
    ハテナが頭に大量発生したが剛と別れないですむなら貢いでも構わなかった。そばにいられるならそれでいい。剛がいなければ生きていけない。
    『わかった。貢ぐから別れんといて……』
    最後の方でまた泣き出してしまった。
    『泣くなうっとい。貢ぐんやったら別れんとくわ。じゃあな』
    プツ…プー……プー
    別れずにすんだ……安心して力が抜けた。

    2005-06-04 08:15:00
  • 159:


    プツ…プー……プー
    別れずにすんだ……安心して力が抜けた。

    2005-06-04 08:17:00
  • 160:

    またすぐに電話がかかってきた。
    『俺、バイトとかしたくないし、生活費で週10万ずつな。後、プレステ2とソフト。』
    通販の電話受付になった気分だ。でも、剛と別れるくらいなら貢いだほうがましだ。週10万…パチ屋の給料では到底無理だ。パチ屋をやめ、また夜に逆戻り。学校の課題なんかもあるので個室待機のマンヘルにしてみた。スタイルはいいと言われている。昔の客はみんな切れていたが、涼は新しい客を次々捕まえ、まぁそこそこ稼げた。

    2005-06-04 08:18:00
  • 161:

    夜中まで仕事をし、店泊、店から学校に行く。週一のデートには10万入った封筒。当たり前のように受け取る剛。貢いでいるからか、別れ話はされなかった。
    よくよく考えれば週に10万は多い。でも、その10万で安定が買えると思えば安かった。
    『お前、どうやってこの金作ってるん?』さすがに剛も疑問なんだろう。一般人に風俗をしているなどとはいえなかった。
    『おばぁちゃんちが金持ちで、家も広くて、そこの掃除とか、庭の手入れとか。』そうなんや。と剛は答えた。
    いくら金持ちだからって、そんなことで週10万もくれる親族がいるかよ、と思いつつ、突っ込んでこられなかったので安心した。

    2005-06-04 08:20:00
  • 162:

    週に現金10万、デートのときの費用、そしてまた、何かをねだられたら買う。いくら使っても、そうしていれば別れ話は出ない。安定を買うためだと、自分に言い聞かせた。
    安定を買ってでも一緒にいたかった。でも、買ってまで得たかった安定はすぐに崩れた。
    『そうやって、涼にお金をもらったり、おねだりしたりする自分が嫌や。最低やと思う。もう別れよう。』
    お金まで出したのに、別れ話をされた。どうすればいいんだろう。
    もう、自分の事を金としてしか見なくてもかまわなかった。それでもいいからそばにいてほしかった。

    2005-06-04 08:21:00
  • 163:

    『いくら払ったっていい、ほしいものも何でも買うから別れるなんか言わんといて!頼むからそばにいて!』
    『そんなんしてる自分が嫌やねん。自分の彼女に金ねだるとか最低やん。だから俺は、俺は好きじゃなくても俺のことを好きで金だけくれる女捜すから。』
    『涼がお金あげるから、ほかの女捜すとかやめて!!!』
    毎日毎日こんなやり取りが続いた。

    2005-06-04 08:23:00
  • 164:

    というか、涼の事は好きじゃないけど、貢ぐなら別れないといわれたはずだ。別れ話をされる理由が分からない。条件は十分すぎるほどに満たしているのに。
    『涼のこと、最初っから好きじゃなかったって言ってたやん。』
    『そんな訳ないやろ。あんなん嘘や。好きやから、辛いねん。』
    嬉しかった。やっぱり嘘だったんだ。ほっとしたのもつかの間、好きだといわれたって、今は別れ話の最中だ。条件を満たせていない…

    2005-06-04 08:24:00
  • 165:

    結局結論はいつものように、別れないでまとまり、またデートの日が来た。10万入った封筒を握りしめ、京都へ向かう。大好きな剛。駅で待ち合わせて家へと向かう。スーパーへ買い物に行き、ご飯を作る。ご飯を食べて、H。幸せな時間が過ぎる。
    Hが終わると、ぽつりと剛が言った。
    『もう、会うの今日で最後な。』
    頭の中で何かが切れる音がした。せきを切ったように涙があふれる。何も言葉が出ない。何度も別れ話をされ、そろそろ免疫ができてもいいはずなのに、毎回受けるショックは相当なものだった。

    2005-06-04 08:30:00
  • 166:

    『涼の事好きやから、お金とかもらうん、辛いねん。もう辞めたいねん。でもお金は欲しいねん。そんな男嫌やろ?』
    嫌ならとっくに切ってるだろうが。何でこいつはそれが分からないんだ?
    だんだん辛さよりも苛立ちが大きくなる。どうすれば伝わる?そればかり考えるようになった。
    『涼がお金もあげるから。そんな男でもいいねん。涼は剛じゃないとあかんねん!!』分かった、ごめんな、といって剛は涼を抱きしめた。

    2005-06-04 08:34:00
  • 167:

    このところ仕事が暇だ。お客さんも、たまにしか来なくなった。お金が足りない。あと何日かしたら、また10万もって行かなきゃ行けないのに財布には2万しかなかった。
    ぱらぱらとヘブンをめくる。後ろのほうまで来たとき、出会い系サイトの広告が目に留まる。
    援交すればいいんだ。店で働くより手っ取り早い。そこのサイトにアクセスした。
    案外あっさり会えて、簡単に二万手に入った。これを繰り返せば、剛に渡すお金ができる。嬉しかった。

    2005-06-04 08:35:00
  • 168:

    梅田で待ち合わせて、ホテル行って、エッチして二万。楽だ。はまった。いつものように終わって、ぶらぶら梅田を歩く。今日は早い時間にしたのでまだ終電がある。ヘップとナビオの間をボーっと歩いていると前に黒い集団。ホストだ。
    『俺今日女に振られてんやん』………びっくりして振り向いてしまった。今風の髪形をした目がきれいな子がそこには立っていた。

    2005-06-04 08:36:00
  • 169:

    タケシというそのこと連絡先を交換し帰った。今日はゆっくり寝よう。明日は剛とデートだ。
    今日は剛の家にお泊りだ。わくわくする。お風呂に入って、台所でタバコをすう。(剛はタバコを吸わないので部屋では吸えなかった。)
    ブブブブブブブ…カウンターで携帯が震えている。
    『誰から〜?』『タケシって出てる』『ぁ、いいわー。ほっといて』どうせ営業電話だ。
    手をつないで眠り、朝が来た。
    『お前さぁ、俺に隠してることあるやろ?』起きるといきなりもう起きていた剛が言った。とりあえず、寝起きはタバコをすわなきゃ目が覚めない。台所へ向かう。
    『隠してることなんかなんもないで?』『絶対ある。自分の口から言ってみろ。』

    2005-06-04 08:37:00
  • 170:


    手をつないで眠り、朝が来た。
    『お前さぁ、俺に隠してることあるやろ?』起きるといきなりもう起きていた剛が言った。とりあえず、寝起きはタバコをすわなきゃ目が覚めない。台所へ向かう。
    『隠してることなんかなんもないで?』『絶対ある。自分の口から言ってみろ。』

    2005-06-04 08:39:00
  • 171:

    言ってみろといわれたって本当に何も心当たりはない。心当たりがないのだから、何もいえない。しかし剛はそれをやましいと言った。
    『携帯見てんからな。俺。』
    そう言われて一瞬、援交のことが頭をよぎった。そのサイトはブックマークしてある。見られたら一発だ。ダイヤルロックもかけていないので、見ようと思えば簡単だ。まずい。

    2005-06-04 08:40:00
  • 172:

    『何のことか分からんって。何もないって言ってるやん。』言い通そうと思った。
    『携帯見たっつってるやろ。そう言われても、本間に何も心当たりないねんな?俺に見られて困るメール、入ってないって言い切れるねんな?』
    もう終わった…と思った。サイトを通してメールのやり取りをする。もちろん、いちいち消したりはしていなかった。
    でも、カマをかけられているのかも…もうしばらく言い通そうと思った。『見られて困るもんなんかなんもないわ!!!』
    『俺、もう見たから。メールも全部。どういうことか説明しろや。』…カマじゃなかったのか…見られたなら仕方ない、と重い口を開いた。

    2005-06-04 08:41:00
  • 173:

    『10万、足りそうになかったから援交してん…』もう、見られたなら言い訳はできない。これで、別れるかもしれない。そう思うと涙が出た。しかし次に剛が言った言葉は意外なものだった。
    『は!?!?!?援交って何やねん!!!!!!』逆にこっちがびっくりした。携帯見たんじゃないのかよ!?自爆したと思った。

    2005-06-04 08:42:00
  • 174:

    どうやら剛はタケシのことを疑ってカマをかけたらしい。昨日知り合ったばかりの男とは知らず、電話を取らなかったので前々からタケシと浮気していると勘違いしたのだ。
    よりにもよって援交がばれてしまった。どうしよう。『今週はおばあちゃんち手伝う用事少なくて……足りなかったから一回だけ……だって10万なかったら振られると思ったんやもん……』本音と言えば本音だが、一回は嘘だ。剛に渡した金のほとんどが知らないオッサンと寝て手に入った金だ。

    2005-06-04 08:44:00
  • 175:

    『辛い思いさせてごめんな。もうせんといて?10万なくても、五万以上あれば大丈夫やから』優しいんだか優しくないんだか……すべて援交で得たとは思ってないようだ。辛い思いさせてごめんなと言うならなぜもう金はいらないからと言わないのか。自分の彼女が援交したと知っても反応の薄い剛に疑問がわいた。

    2005-06-04 08:45:00
  • 176:

    その日はそのまま泊まり、また朝が来た。昨日寝すぎたらしく妙に早く目が覚めた。外はまだ薄暗い。起こすといけないのでそぉっとベッドを抜け出す。
    『んん……大丈夫??優ちゃん………』小さな小さな声だったが静かすぎる家の中でははっきり聞こえた。

    2005-06-06 08:03:00
  • 177:

    優ちゃん………
    確か宿泊研修の時に出来たと言っていた女友達の名だ。あとは斉藤、山田、大西と何人か男友達も出来たと言っていたが【優ちゃん】は一人名字ではなかったので記憶に残っていた。
    なぜその子の名を寝ぼけながら呼ぶのか。何かあるのか。台所でタバコを吸いながら考える。同じ大学なうえに剛の家は大学から徒歩五分ほどだ。来たことがあっても不思議ではない。

    2005-06-06 08:05:00
  • 178:

    落ち着こう。もう一度寝よう。ベッドに潜り込もうとする。パイプベッドがきしむ。
    『ん……?どうしたん?優ちゃん……』
    ……二度目だ。ありえない。絶対何かある。女の勘ってやつだ。もう我慢ならない。
    『残念!!優ちゃんじゃないんだな〜ぁ』
    わざとおどけながら剛の頬を軽くつねる。ひどく驚いた様子で剛が目を開ける。

    2005-06-06 08:06:00
  • 179:

    『うわっ!!涼か……優ちゃんがなんて??』
    『なんて??じゃないわこのアホ!!二回も呼んだってどおゆう事よ。』
    いつもなら泣き叫んで発狂してもおかしくない事態だが、なぜかひどく落ち着いていた。

    2005-06-06 08:06:00
  • 180:

    聞けばこの間飲み会をした時に優ちゃんがひどく酔っぱらい、その夢を見ていたと言う。そんなわけあるか!と思ったが喧嘩してまた別れ話をされるのが嫌なのでそっかぁと明るく答えた。
    しかし剛が【誤魔化しきれた】と思ったのかほっとした表情を浮かべたのを見逃さなかった。でもやはり別れ話をしたくないので見逃したふりをしてやった。

    2005-06-06 08:07:00
  • 181:

    数日後電話で話しているとまだタケシの事を疑っていたようで浮気の話になった。あまりにも自分ばかり責められるので腹が立って『寝ぼけて名前間違えたお前の方がよっぽど怪しいんじゃバカ!!』と言ってしまった。
    剛はあははと笑い明るいトーンでこう言った。
    『あ〜だって前の日優ちゃん泊まりに来てたし。間違えたんはしゃーないって』
    どのへんがしゃーないのか。とりあえず詫びるべきだろうが。と言うかだからなんで言わなきゃ分からないことをこいつは自己申告するのか。疑問で頭がいっぱいになった。

    2005-06-06 08:08:00
  • 182:

    多分これを聞いた時が今までで一番涼がトチ狂った時だと思う。非常階段のザラザラした壁を殴る。手は擦れて血塗れ。泣き叫ぶ涼の耳元で電話の向こうから聞こえる脳天気な剛の笑い声。友達もいっしょにいるらしい。

    2005-06-06 08:17:00
  • 183:

    『優ちゃんの事ゆったら発狂しとんねんけど〜あ、お前それそっちじゃないって!!』
    ゲームでもしているのか電話の向こうの涼なんてまるで存在しないかのように、友達と話をする剛。自分は一体この男の何なのか。というか剛はあたしを何だと思っているのか。剛の気持ちはもう優ちゃんにいってしまったのか??切なくて、やるせなくて、剛の心を取り戻す術も見つからなくて、泣き叫んでいるしかできなかった。

    2005-06-06 08:19:00
  • 184:

    『さっさと別れてよ!!』それくらいしか言葉がでない。返ってきた言葉で涼はさらに狂気を増す。
    『いやいや、優ちゃんと別れるんやったらお前と別れるわ。別れたくないんやったら別れへんけど、お前と別れへんかったら優ちゃんとも付き合い続けるで』
    なんというむちゃくちゃな……と言うか優ちゃんとも付き合ってんのかよ…今にして思えばその時別れれば良かったのだが当時の涼にはそれはできなかった。

    2005-06-06 08:20:00
  • 185:

    二番目だろうが、金蔓だろうが二股してようが別れなくてすむなら何だって良かった。
    『どっちの方が好き?』
    なんて愚問を問いかける。
    『涼に決まってるやんか。今までだって浮気したって最後には涼のとこに帰ってきたやろ??』

    2005-06-06 08:21:00
  • 186:

    さっきまで散々に言ってたくせにうって変わって甘い声。冷静な時に考えれば全く理屈が通っていないが、発狂した涼が元に戻るには十分すぎるほど甘い言葉。
    『じゃあ早く涼の所にかえってきてね』
    今思い返しても当時の自分がなにを考えてたのかわからない。

    2005-06-06 08:22:00
  • 187:

    その後もふつうに付き合いを続けた。頑張って【余裕のある彼女】を演じ続けた。本当は余裕なんてかけらもない。早く優ちゃんと別れて、口を開けばそればっかり出てきそうだ。
    ふっと気づいたが、剛は優ちゃんが来ているとき自分の荷物をどうしているのだろう。剛が風呂を掃除している時に音をたてずにクローゼットを開ける。すぐに目に飛び込んできた教科書の山。ダサイ服。涼の荷物は奥に突っ込まれていた。ぱっと見では確実に見えない。
    隠されている……優ちゃんは涼の存在を知らない。自分だけが剛に愛されていると思っているはずだ。そこはあたしの場所なのに…。剛を返して……あたしのなの。あんたのじゃないの……何も答えない荷物に向かって呟き続けた。

    2005-06-06 08:23:00
  • 188:

    『涼〜今日入浴剤何にする??こないだのお湯がとろとろになるやつにする??』
    はっと我に返る。あたしはこんな思いをしているというのになんと脳天気なやつだ……
    『ん〜、それのお湯がピンクになるやつにしよ♪』
    剛に悟られないようになるだけ明るく答える。風呂場でわかった〜という声が響く。たばこを吸いに台所へ向かう。ふっと目をやると冷蔵庫の上に小皿。置いた覚えはないし、今日の夕飯にも使っていない。

    2005-06-06 08:24:00
  • 189:

    『これ、なんでここにあるん??』
    『あ〜優ちゃん歯磨き塩でやるねん。たぶんそん時塩入れたやつやわ』
    確かに公認の浮気だが……というか認めざるを得ない状況にされたのだが、そんなにぬけぬけと普通に答えられては立場なしだ。もうちょっと申し訳なさそうに言えよ…と思いながら、平静を装ってあ〜そう、と答えた声は少し震えていた。

    2005-06-06 08:25:00
  • 190:

    何をしていても優ちゃんがちらつく。優ちゃんにもこんな風に優しくしたのかな……こんな風に言ったのかな……会ったこともない【優ちゃん】の陰に押しつぶされそうになる。
    その夜顔は見えなかったが【優子】と名乗る女に『早く負けを認めなさいよ』と言われる夢を見た。剛の家が優ちゃんが一時でもいた空間だとわかったとたんに、剛の家はあたしの中で【幸せな時間を過ごす場所】から【優ちゃんの陰に押しつぶされそうになる場所】に変わった。気持ちを落ち着かそうと、また台所へ向かう。たばこに火をつけふーっと息をはくと心なしか落ち着いた気がした。冷蔵庫の上に小皿ある小皿がまた優ちゃんを思い出させる。
    今時塩で歯磨くかフツー……なんて思いながら目に入らない食器棚に押し込んだ。

    2005-06-06 08:26:00
  • 191:

    月曜日の朝、剛は学校へと行く。あたしは学校に向かう大学生の群に逆らって駅へと向かう。今朝のバイバイは特別辛かった。あたしと分かれたすぐその後に、優ちゃんと顔を合わすのかと思うと嫌で嫌で仕方なかった。だが、そんなわがままは言ってられない。あたしも学校だ。
    20才で専門学校に入った為、クラスメイトはほとんどが18。顔も見た事のない優ちゃんとかぶる。彼氏とどこへ行っただとかそんな話ばかり。幸せな休みの日を満喫したようだ。羨ましいと思う反面妬ましくて仕方なかった。

    2005-06-06 08:27:00
  • 192:

    あたしは上に兄弟がいなかった上に、下が離れすぎているので同年代の子と比べても昔から精神面は大人びていると言われていた。二つも年下の子たちは話していると中身はもっと下のように感じた。【ガキ】だと思っていたクラスメイトにはあまり馴染めず、見下している相手に相談などする気にもなれなかった。

    2005-06-06 08:28:00
  • 193:

    おそらく剛と優ちゃんは平日にデートをしているだろう。次の日はこいつらみたいにきゃあきゃあと友達に話すのだろう。そう考えると何の罪もないクラスメイトに無性に腹が立った。始業のチャイムが鳴る。戻りたくないのでもう一本タバコに火をつける。一本吸い終わって仕方なしに教室に戻る。タバコの臭いを全身に纏ったままのあたしに『ばれるよぉ』と隣の席の恵理がおろおろしている。

    2005-06-06 08:29:00
  • 194:

    『涼ちゃんなんかあったの?イライラしてない?』
    『してないよ』
    本当はしてるが、口を開けば無意味な八つ当たりをしてしまいそうだったので、それだけ言って目線をそらした。
    しかし好奇心旺盛というか野次馬根性というか次々みんながどうしたのどうしたのと集まってくる。ああ、誰か助けて。こいつらにほかのことに気を移してもらうには最善策だと思っていた。

    2005-06-06 08:30:00
  • 195:

    そんなに不機嫌なのが顔に出てたか……と反省しながらあった事を話した。
    【絶対別れた方がいいって!!】
    【そんな男最低やん!!】
    口を揃えてみんなが言う。そんな事はわかっている。嫌いになれたらどれだけ楽か。あたしだって嫌いになれるもんならなりてぇよ……やっぱ言うんじゃなかったと後悔した。

    2005-06-06 08:31:00
  • 196:

    言われなくても最低な男だということはよくわかっているし、別れられるものなら別れたかった。精神的に限界が近づいているのが自分でもよくわかる。でもそれとは裏腹に世界中に存在する何よりも剛の事を愛していた。

    2005-06-06 08:32:00
  • 197:

    この頃になると【優ちゃんとも付き合いながら涼とも付き合って、しかもお金までもらってる自分が最低やから】という理由で毎晩別れ話をされていた。薬は飲み続けるとだんだん効かなくなるというが、別れ話は毎日されても慣れることはなく、毎夜泣き叫び、ものに当たり続けた。別れたくないと必死にすがる自分が我ながら情けなかったが、そんな事言ってられない。『涼の事お金としか見てなくてもいいから』とまで言うようになっていた。毎晩電話のたびに泣き続けた娘を母親も心配していた。

    2005-06-06 08:33:00
  • 198:

    人間は泣くと痩せるらしい。痩せる成分が分泌されるのだとか、何かで読んだ。本当らしい。毎夜なき続けたおかげで体重は一ヶ月で11キロもおちていた。

    2005-06-06 08:34:00
  • 199:

    別れ話は毎晩していたが本当に別れたことはなかった。今日は久しぶりのデートだ。また10万を握りしめて京都へと向かう。
    ご飯を食べてからビデオをみたのでえらく遅くなってしまった。二人とも明日の一限は落とせない。起きておくためにカラオケに行った。
    カラオケからの帰り道、『いつなったら優ちゃんと別れるん??』と聞いたらはぐらかされた。
    家につくと剛の態度は急変した。

    2005-06-08 20:53:00
  • 200:

    『お前いつ別れんのいつ別れんのってうるさいねん!!付き合ってやってんねんからそれでいいやんけ!!』
    ……付き合ってやってるって……どうしてそこまで上からものを言うのか。どう考えても悪いのはこっちじゃない。また泣き出してしまった。どうやら最近涙腺がイカれてるらしい。

    2005-06-08 20:53:00
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