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1:
はなみず◆2KeyQ5arcI
彼女と出会ったのは大学に入る年、あたしが18歳の時だった。
当時あたしは大阪の大学に入るのが決まって奈良の実家から大阪へと引越しをした。
実家から充分に通学出来る距離にも関わらず大阪での一人暮らしを許されたのは
義母とあたしとの仲が悪かったから父が距離を置かせようと考ての事だと思う。
同じ同性で血の繋がりもなければ義母もあたしも「うざい」と思うのは当たり前の事。2007-03-17 14:27:00 -
2:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「交通の便がいい所に住みたい」一人娘には甘いと言う事を知っていたから
父に我侭を言い市内の都心に1DKの部屋を借りてもらった。
家賃は共益費ガス込みで52000円、駅まで徒歩5分。
エレベーターは無いがオートロックも完備していたので
あたしは父の選んだ物件に満足した。2007-03-17 14:32:00 -
3:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「いいか?花、女の子の一人暮らしは危ないからな?何かあった時、隣人と仲良くしていると
部屋で強盗に出くわした時とか、そのなんだ?変な人に襲われそうになって助けてって叫んだ時に
助けてくれるかもしれない。だから隣人への挨拶はしといて損はないぞ」
そんな事を言いながら父はタオルと饅頭を手に引越し当日に付いて来た。
要は心配性で過保護。2007-03-17 14:36:00 -
4:
はなみず◆2KeyQ5arcI
『今時、引越しの挨拶する人なんている!?時代遅れだわ』
『饅頭も喜んで食べるのはお父さん位だわ』
そう思いはしたけれど口にはせずタオルと饅頭を持って両隣の人へ挨拶に父と向かった。
生憎、平日の昼間。
留守宅もありインターホンに反応したのは両隣の内の右隣の住人。2007-03-17 14:41:00 -
5:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はーい?どちらさま?」
少しハスキーな女の声だった。
「今日、隣に越して来た娘の父親ですが挨拶に伺いました」
父はインターホンに向かって喋り続ける。
「粗品ですがタオル菓子折り持って来ましたので受け取って下さりませんか?」2007-03-17 14:44:00 -
6:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はい、わざわざすみません」
数秒後にドアを開けて出てきた彼女を見て思わずあたしは見とれてしまった。
誰が見ても「綺麗」と言う顔だったから。
薄化粧ではあったけども目鼻立ちがはっきりしているせいか
少し派手な感じはしたけれど嫉妬心も吹っ飛ばしてしまう程の綺麗さだった。2007-03-17 14:49:00 -
7:
はなみず◆2KeyQ5arcI
それから暫くは彼女と再び顔を合わせる機会がなかったけども
大学に通い出して間もない頃に出掛けようとしてる彼女と丁度、大学から帰宅して来たあたしは
マンションの玄関前で鉢合わせになった。
「あ、お隣さんだー。引越しして来た日以来だよねー?」
無邪気に話掛けてくる彼女は引越し当日の日と何だか違った印象で親しみが沸く可愛さだった。2007-03-17 15:00:00 -
8:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はい、えーと・・・・」
突然だったから言葉が上手く出てこなく詰まるあたしに
彼女は構わず気さくに話かけてくれた。
「そうそう名前まだ言っていなかったわね、これ」
彼女はそう言いながらヴィトンの煙草ケースから名刺を出して渡して来た。2007-03-17 15:03:00 -
9:
はなみず◆2KeyQ5arcI
第一印象で『多分どこかのホステスなんだろうな』と予想していたあたしは
何の疑問も持たず名刺を受け取り、それを見た。
彼女の勤めているであろう店の名前の下に
「水華」と印刷されていた。
素直にあたしはそれを「すいか」と読んだ。2007-03-17 15:06:00 -
10:
はなみず◆2KeyQ5arcI
それを聞いた途端、彼女はそれまでの上品さと打って変わって「ギャハハハハ」と笑い出した。
彼女のツボに余程に効いたのであろう。
「ちょっとあんた!誰が好んでそんな読みの名前選ぶと思うの!?ギャハハハ、ひー馬鹿で面白いわ。みずかよみずか!」
「馬鹿」と言われて少しむっとしたけれど本当の事なので反論出来なかった。
「花です、花美だけど花ってみんなに呼ばれます」2007-03-17 15:12:00 -
11:
はなみず◆2KeyQ5arcI
略部分「花です、花美だけど花ってみんなに呼ばれます」
「はなみ・・・ずか」
彼女は仕返しするかのようにいたずらっぽく、そう呟いた。2007-03-17 15:16:00 -
12:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「花ちゃんね、まあすいかでもいいわ、適当によろしくー。じゃあ出掛けるわねー」
すいかは手をヒラヒラ振りながらマンションの玄関を抜けて行った。
大阪に来てから私は同世代とまともに話した時がなかった。
口下手なのもあるし人見知りが災いしてなかなか自分から声を掛ける事が出来なかった。2007-03-18 08:32:00 -
13:
はなみず◆2KeyQ5arcI
だから寂しさを感じ始めてたあたしは人懐こく話しかけてくれたすいかに親しみを覚えた。
GWに入って何も予定がないまま部屋でファッション雑誌等読みながら
ゴロゴロしている時、インターホンが鳴った。
オートロックのインタホーンと部屋のインターホンは分かれていて鳴ったのは部屋の方のインターホン。2007-03-18 08:36:00 -
14:
はなみず◆2KeyQ5arcI
『オートロックが開いていたのかな?勧誘だったら居留守を使おう』
ソロリソロリとドアの覗き穴から訪問者が誰かと確認するとすいかだった。
「はい?」
ドア越しに返事をした。
「おーい暇してる?ならドア開けてちょうだい」2007-03-18 08:39:00 -
15:
はなみず◆2KeyQ5arcI
ドアを開けるとすいかは「やっほー」と言いながら滑り込むように玄関に入って来た。
古着のジーンズとTシャツと言うシンプルでラフな服装だったけれど
すいかは細くて長身のせいか様になっていてとてもオシャレに見えた。
「ねーねー、近くにパスタ屋あるんだけどランチしに行かない?」2007-03-18 08:43:00 -
16:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「誘ってくれるの?」
「うん、ファミレスとかパスタ屋って一人でご飯するにはちょっと寂しいから」
突然の誘いだったけど嬉しかった。
暇をして時間を持て余してたのもあるけど何より・・・
大阪に来てから友達がいなかったから。2007-03-18 08:46:00 -
17:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「廊下で待っててね!」
着替えの為にすいかを玄関から追い出していそいそと準備をした。
『どんな服着ようかな?』
『すいかに合わせてジーンズかな?』
誰かと出かける事が久し振りで胸を弾ませて顔がにやける私がそこにいた。2007-03-18 08:49:00 -
18:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしはとっておきの・・・自分ではそう思うEVISのジーンズを手に取り
ヒステリックグラマーの古着っぽいロングTシャツを着て玄関から出た。
「お待たせ」
「あんまり長いから置いて行こうかと思ってた所」
すいかは少し意地悪そうな笑みを浮かべて言った。2007-03-18 09:02:00 -
19:
リラクマ
なんか面白そう?
2007-03-18 09:39:00 -
20:
名無しさん
゜みたい
2007-03-18 21:48:00 -
22:
はなみず◆2KeyQ5arcI
真っ直ぐな姿勢で颯爽と歩くすいかの後ろから付いて行く。
「あそこ、あそこ」
すいかの指す方向を見ると看板には「ジョリー・パスタ」2007-03-19 02:07:00 -
23:
はなみず◆2KeyQ5arcI
大阪にはいくらでもオシャレな飲食店があるんだろうけど
奈良の狸や鹿が日常茶飯事に道端で散歩している田舎から来たあたしは
「ジョリー・パスタ」に行った事がなかった。
わくわくしながら店の中に入りショーケースの中のケーキをイの一番に物色してた。
「ケーキも食べたいな・・・」2007-03-19 02:12:00 -
24:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「もしかして花ちゃんって・・・ジョリパ初めてなん?」
田舎者丸出しにケーキを眺めて感動して店内をキョロキョロ見渡して
目を輝かせてたら、誰でも気付く。
「はい・・・初めて」
馬鹿にされて笑われるのを覚悟でそう返事した。2007-03-19 02:18:00 -
25:
はなみず◆2KeyQ5arcI
だけど、すいかは馬鹿にもしなかったし笑いもしなかった。
「そっか・・・あたしもね実家が新潟でさ初めて大阪に来た時、沢山の人やビル、
お店に驚いて感動して花ちゃんみたいにキョロキョロと街並みを見渡していたわ」
すいかは煙草に火を点け吐いた煙を見ながら遠い昔を思い出すかのように呟いた。
『何か寂しそうな顔』そう思う表情だった。2007-03-19 02:24:00 -
26:
はなみず◆2KeyQ5arcI
注文したメニューが来るとすいかは元の明るい顔になり
「さ、食べようか」と笑顔でパスタを口にし出した。
食べながらすいかは色々な質問をあたしに投げかけた。
「実家はどこ?」「学校はどこ?」「GWの休みはいつまで?」
聞かれる度に一つ一つ質問に答えた。2007-03-19 02:37:00 -
27:
はなみず◆2KeyQ5arcI
けれど「大阪には慣れた?」と言う質問にだけは言葉を濁した。
少しの間の沈黙と重い空気。
すいかはそれを振り払うように明るい声で言葉を発した。
「よーし!今日はあたしも仕事が休みだから、お姉さんが大阪を案内してあげる!」2007-03-19 02:45:00 -
28:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「え?」
戸惑うあたしをよそにすいかは
「ちゃっちゃっと食べなさい」とパスタを食べるように急かした。
「はい」
あたしはペースを早くしてパスタをフォークを絡ませ口に運んだ。2007-03-19 02:52:00 -
29:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「今日はあたしから誘ったから出すよ」
お店を出る時にすいかはそう言ってあたしにお金を出させなかった。
それでもあたしはお金を出そうとしたけれど「年上の言う事は聞いておいて損はないの!」と
理にかなうのかかなわないのか、そんな理屈を言い、あたしの財布をひっこませた。2007-03-19 02:57:00 -
30:
はなみず◆2KeyQ5arcI
店を出るとすいかはじーっとあたしを見つめた。
視線を頭のてっぺんから足の先と何度も移して値踏みするような目だった。
「あの・・・何?」
すかいの行動に少し不快な気分になり棘のある口調になった。
「化粧した事ある?2007-03-19 03:04:00 -
31:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はぁ?」
予想してない言葉に間抜けな顔で聞き返すあたしに構わずすいかは続ける。
「化粧した事ある?服はどんなのある?髪はいつもどうしてるの?」
早口で捲くし立てるすいかに呆気に取られ更にポカーンとするあたし。
「あたしの部屋においで」2007-03-19 03:08:00 -
32:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかに言われるがままに付いて行き、すいかの部屋に入った。
すいかの部屋は整理整頓されていて真っ白なカーテンが清潔感を漂わせていた。
あたしの部屋はと言うと朝起きて時間割に合わせて教科書を鞄に詰める為、
そこら辺に教科書や筆記用具が散らばり洗濯物も取り込んだら床にそのまま放置するから
雑多な雰囲気を漂わせている。2007-03-19 03:23:00 -
33:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「ここに座って」
すいかはクッションを床に投げポンポンと叩き、そこに座るように促した。
「近所のスーパーに出かけるって訳じゃないから、もうちょっと身だしなみをちゃんとしないとね」
すいかのその一言で先程の行動も言葉の意味も良く理解が出来た。2007-03-19 03:27:00 -
34:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかはスチールラックの棚からカチャカチャ音を立てて
メタル製のメイクボックスを取り出した。
すいかが蓋を開けると中からいろとりどりのメイクパレットが表れた。
「プロみたい!!!!」2007-03-19 04:33:00 -
35:
はなみず◆2KeyQ5arcI
感動して発した言葉にすいかは当たり前のように
「美容師の専門学校行ってたからね」と笑顔で答えた。
「なるほどね・・・」
納得して興味津々にメイクパレットを手に取り眺めるあたしにすいかは
「化粧するからこっち向いて」と言った。2007-03-19 04:38:00 -
36:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかの方にまっすぐ顔を向けると「目をつぶって」と更に続ける。
目をつぶるあたし。
接近した距離のすいかからは酔いしれるような花のいい香りがした。
「すいかの香りいい匂い」
「ああ、香水の匂いじゃない?後で香水も振ってあげるわ」2007-03-19 04:42:00 -
37:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかは喋りながらも手を動かす。
コットンに含ませた化粧水のひんやりした感触があたしの肌に触れる。
心地よい手つきですいかはパッティングを始めた。
「あんたさ・・・眉毛位はもう少し手入れしようよ」
すいかは呆れたように言った。2007-03-19 04:47:00 -
38:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「顔剃りでちょくちょくはみ出た部分は剃ってるよ!」
反論するかのように興奮して言うあたしにすいかはプッと笑いを漏らし続けて言う。
「いや・・・飛び出した毛をハサミで切るとか毛抜きで抜くとかをしようよ」
「はい・・・」2007-03-19 04:52:00 -
39:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかとの出会いがなかったら、あたしは今でも野暮ったい女だったろうな。
すいかのおかげであたしは綺麗にする努力を始めたんだよ。
癪(しゃく)に障るからすいかに言う事はなかったけどね。2007-03-19 05:04:00 -
40:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかの手つきは気持ち良かった。
時々くすっぐたい感触に見舞われたけど、
それさえも「気持ちいい」と思うような感触だった。
あんまり気持ちいいからあたしはウトウトとまどろみ始めた。2007-03-19 05:35:00 -
41:
はなみず◆2KeyQ5arcI
そろそろ夢の世界に入りそうと言う所で
「はい、完成!!」と言うすいかの声で現実に引き戻された。
パチッと目を開けるとすいかはにやにやしながら手鏡を渡して来た。
ボーとする頭で無意識に手鏡を受け取り顔を覗き込んだ。
「わ!綺麗!!!可愛い!!嘘!?」2007-03-19 05:39:00 -
42:
はなみず◆2KeyQ5arcI
鏡に映るのは今まで見た事のない自分の化粧された顔。
血色の悪さも目の下のくまも全部隠して見事に彩られた自分の顔が鏡に映っていた。
自分の顔なのに「綺麗」「可愛い」と褒めるのもおかしな話なんだけども
そう言わざる負えない程、いつもと違う自分の顔がそこにあった。2007-03-19 05:43:00 -
43:
名無しさん
おもしろそう?頑張って下さい?
2007-03-19 07:46:00 -
44:
名無しさん
あげ?
2007-03-20 03:47:00 -
46:
「どう?あたしもなかなか凄いと思わない?」
すいかは誇らしげな笑いを浮かべて聞いて来た。
「うん!凄い凄い!」
「髪も少しセットするわ」
すいかはさっきと同じように心地よい手つきであたしの髪をいじりだす。
2007-03-20 04:31:00 -
47:
はなみず◆2KeyQ5arcI
ルーズにすくった髪の束をピンでどんどんアップスタイルにして行く。
それを食い入るように必死で見た。
『真似して自分でしてみよう』
そう思ったから。
「適当に一度ねじってピンで留めると不器用でも簡単よ」
2007-03-20 04:34:00 -
48:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかはあたしの気持ちを見透かした様にアップスタイルの仕方を教えてくれた。
「うん、今度自分で出来るように練習してみる」
だた髪をアップにするだけ雰囲気の違うあたしが出来上がった。
いつもと違うあたし。
「いじれば結構あんたも可愛くなるわね」2007-03-20 04:38:00 -
49:
はなみず◆2KeyQ5arcI
出来上がった自分の完成品をチェックするかのようにすいかは
少し遠めにあたしを見てそう言った。
「本当!?」
綺麗なすいかに「可愛い」と言われ浮かれ気味になり興奮して聞き返す。
すいかは意地悪っぽく笑って「まあ、あたしがいじったから当たり前か」と言った。2007-03-20 04:41:00 -
50:
はなみず◆2KeyQ5arcI
その言葉でしょんぼりしてるあたしを気にも留めずすいかはクローゼットを漁り出す。
既に興味は「何を着せるか?」と言うテーマに移っていたようだ。
「花ちゃんは背が低いからな・・・」「あたしの服じゃちょっとイメージがな・・・」
すいかは色々な洋服を手に取りながらぶつぶつ独り言を呟く。
「ああ。これでいいわ」2007-03-20 04:47:00 -
51:
はなみず◆2KeyQ5arcI
一枚のワンピースを手にした時にすいかは動きを止めてそれを広げて眺めた。
黒をベースにした白のバイヤスライン、大き目の飾りボタンが胸から腰にかけて
3個ずつ二列に並んでる60年代風のデザインのワンピースだった。
「通販で衝動買いしたんだけどさ、丈が短くて着てなかったのよ」2007-03-20 04:54:00 -
52:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかの身長はどう見ても170センチを越えていた。普通の標準サイズで丈が足りないのも納得だ。
「あたしも準備するからこれ自分の部屋で着替えておいで」
すいかはワンピースをあたしに渡し、玄関まで追いやった。
「あ、そうそう靴はどうあがいてもサイズ合わないから後で買いに行こう」
玄関を出る時、思い出したかのようにそう言われドアを閉められた。2007-03-20 04:59:00 -
53:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしは自分の部屋に戻りワンピースに着替えた。
部屋の隅に置いている全身鏡に自分を映しニヤニヤ笑いながら何度も何度もポーズを変え鏡を見た。
そうこうしているうちにすいかがドアをノックして
「行くわよ〜」と言う声が廊下から聞こえた。2007-03-20 05:46:00 -
54:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしはその声で慌ててクローゼットを開け小さな黒い鞄を取り出し
財布や携帯を詰めだした。
『やっぱり鞄も合わせないとおかしいよね』
あたしなりのオシャレへの気遣いだった。2007-03-20 05:49:00 -
55:
はなみず◆2KeyQ5arcI
部屋を出るとすいかはパスタ屋を出た時のように頭のてっぺんから足の先と
視線を何度も移して今度は笑顔で「靴以外は上出来」と言ってくれた。
その言葉が嬉しくて嬉しくてあたしは「うひひ」と気味の悪い笑い声を漏らす。
それを聞いてすいかは怪しい物を見るような目つきであたしを一瞥すると
「行くわよ」とマンションを出るように促した。2007-03-20 05:57:00 -
56:
はなみず◆2KeyQ5arcI
七分丈のパンツにカジュアルなオフショルダーのカットソーと言うすいかの格好は
さっきとは違う体のラインが出る服装ですいかのスタイルの良さをよりいっそう際立たせていた。
すいかは服の着こなしが上手くどんな服でも「自分に似合う」じゃなく「自分に合わせる」と言う感じだった。
その為にはきっと色々な努力を陰でしていたんだと今なら思う。2007-03-20 06:06:00 -
57:
名無しさん
書き方好きです。
2007-03-20 09:58:00 -
59:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかは当時、若者に人気だったフォルクスワーゲンのビートルに乗り込み
ハンドルを握って車を走らせた。
「最近、免許持たない若者が多いんだって」
話題作りの為に運転するすいかに話しかけた。2007-03-22 05:47:00 -
60:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかは前を向きながら
「新潟で車無しはきついから大概、18歳にになると免許取るのが普通だったわ」と答え
続けて「で、花ちゃんは免許あるの?」と質問をした。
「ある」
奈良も大阪の隣の県だけども車がないと不便な土地柄で男女問わず18歳になったら免許を取るのが当たり前だった。2007-03-22 05:52:00 -
61:
はなみず◆2KeyQ5arcI
略部分
奈良も大阪の隣の県だけども車がないと不便な土地柄で男女問わず18歳になったら免許を取るのが当たり前だった。
2007-03-22 05:55:00 -
62:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「中古でいいから安い車で練習がてら運転するといいよ」
フォローのようにすいかはアドバイスをくれた。
「そうだね」
そのまま車を走らせ向かった場所は大阪ミナミ。2007-03-22 06:05:00 -
63:
はなみず◆2KeyQ5arcI
GWと言う事もあり道路は渋滞ですいかは歩いた方が早いと考え
車を少し離れた場所に駐車する事にした。
「ちょっと歩くけど我慢してね」
すいかは人込みを抜けるように歩き出す。
遅れないようにあたしもすいかの歩調に合わせ付いて行く。スニーカーで。2007-03-22 06:11:00 -
64:
はなみず◆2KeyQ5arcI
持っている靴がどれもこれもボロボロでまともな靴が無く
仕方なくCONVERSEのONESTARを履いて来ていたのだ。
レザー素材のスニーカーでカジュアルなパンツスタイルには似合う靴だけども
今日のあたしのワンピーススタイルには似合っていない。
誰が見ても靴だけ浮いてる。2007-03-22 06:15:00 -
65:
はなみず◆2KeyQ5arcI
そんなちぐはぐな格好でミナミの人の多い場所を歩くのは正直恥かしかった。
あたしは恥かしさで俯いて歩いた。
すいかはそんなあたしに気付いてない様子で歩いて行く。
御堂筋を抜け、少し細い路地を抜けすいかが足を止めたのはアメ村に着いた時。2007-03-22 06:21:00 -
66:
名無しさん
この小説好き?主サン書いて−?
2007-03-23 15:24:00 -
68:
名無しさん
あげとく?
2007-03-27 10:55:00 -
70:
はなみず◆2KeyQ5arcI
ワゴンで売るたこ焼き屋も三角公園でたむろする人の服装も
ばらばらに統一感なく立ち並ぶお店も全てが珍しくて、初めて目にする物だった。
「キョロキョロするのは後にして早く早く」
すいかの急かす声で我に返り再び歩き出したすいかの後に付いて行った。
すいかが再び足を止めたのは一軒の古着屋の前。2007-03-28 00:46:00 -
71:
はなみず◆2KeyQ5arcI
こじんまりとした小さな店内に入ると、
すいかは店主であるらしいティアドロップのサングラスを掛けた茶髪の男に親しげに声を掛けた。
「中ちゃん、この子に靴見立ててあげて」
中ちゃんと呼ばれるその人はあたしの足元を見て「ブッ」って誰でも気付く笑いを漏らす。2007-03-28 00:48:00 -
72:
はなみず◆2KeyQ5arcI
自分でもすごく格好悪いのは分かっている。自覚していてもやはり誰かに笑われると恥かしい。
すいかはいつまでも笑いを堪えて仕事に取り掛かろうとしない店主に苛立ちミュールを履いた靴で店主の足を軽く蹴った。
「いって!」
「ほらほら、いつまでも笑ってないでさっさとしなさい」2007-03-28 00:51:00 -
73:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はいはい」
何故か女王様口調のすいかと奴隷のように従う店主の光景がおかしくて
あたしは思わずさっきまでの恥かしさを忘れ笑みをこぼしたた。
「靴のサイズいくつ?」
「23.5です」2007-03-28 00:56:00 -
74:
はなみず◆2KeyQ5arcI
それを聞くと店主は棚に並べられていた黒いエナメルのストラップパンプスを取りあたしの足元に置いた。
「履いてみ?」
あたしは言われた通りスニーカーを脱ぎパンプスを履いた。
「あ、似合う!これね、この前俺が目利きして仕入れたばかりでね〜」2007-03-28 01:00:00 -
75:
はなみず◆2KeyQ5arcI
聞いても居ない事をベラベラ喋り出す店主を放置してすいかはあたしを全身鏡の前に立たせた。
鏡に映るあたしはバービー人形みたいで家の鏡で見た姿よりもっとオシャレに見えた。
「完璧だ」
すいかは満足気にそう言うと「履いて帰るうからそっちの靴包んで」と店主に告げた。
「はいはい」2007-03-28 01:03:00 -
76:
はなみず◆2KeyQ5arcI
店主が包んでくれたスニーカーの入った紙袋を受け取るとすいかは
「いつも通りツケでよろしく」と悪びれずに言いあたしの手を引きお店を後にした。
店主はそんなすいかに慣れているらしくて「あいよ」と答えすいかの背中を見送った。
「この靴いくらかな?」2007-03-28 01:06:00 -
77:
はなみず◆2KeyQ5arcI
お店を出るなり靴の値段を聞くとすいかは「忘れた」と言いパスタ屋の時と同じく払わせようとしなかった。
「でも・・・」と言うとすいかはさっきあたしが物珍しそうに見ていたワゴンのたこ焼き屋を指差した。
「あれ奢ってくれたら許す」2007-03-28 01:09:00 -
78:
はなみず◆2KeyQ5arcI
結局、靴の代金はたこ焼きでチャラになり、払う事はなかった。
何の変哲もないたこ焼きなんだけど
いつもと違うオシャレな格好ですいかと話しながら三角公園の一角で食べるたこ焼きは美味しく感じた。
何もかもが新鮮でアメ村をただ歩くだけでも楽しくて時間はあっと言う間に過ぎて行った。
2007-03-28 01:12:00 -
79:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「じゃ、またね」
「うん。またね」
すいかと部屋の前で別れお互いの部屋へと帰った。
部屋に入るとあたしは真っ先に全身鏡の前に立ち自分の姿を見てにやついた。
『端から見たらあたしキモイな』2007-03-28 01:15:00 -
80:
はなみず◆2KeyQ5arcI
分かってはいるけどにやける顔をなかなか元に戻す事が出来なかった。
すいかは化粧が上手で、すいかの連れて行ってくれたお店はオシャレで、すいかは綺麗で話も面白くて・・・
何もかもがキラキラ眩しく輝いていて
あたしは今日一日ですいかの事が大好きになっていた。2007-03-28 01:18:00 -
81:
はなみず◆2KeyQ5arcI
6月になりあたしは焼肉屋でバイトを始めた。
まかないで夕飯代が浮くと言う理由と洋服や化粧品などを買うお金が欲しくなったからだ。
いくら父が娘に甘いと言っても家賃や学費を負担させてる中で
オシャレする為のお金を出してもらうのはさすがに罪悪感が沸く。2007-03-28 01:21:00 -
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はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかとはあれからも仲良くし出勤前のすいかの部屋に遊びに行く事もあった。---5
もっとも、あたしが押しかけてるような形だったけども
すいかは文句を言いながらも歓迎してくれてる様子だった。
2007-03-28 01:24:00 -
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はなみず◆2KeyQ5arcI
待ちに待っていた7月の半ば。
初めての給料日と大学の夏休み。
あたしは日曜日にすいかの部屋を訪ねた。
激しくインターホンを鳴らし、ドアが開くのを待った。
「もう寝かせてよ!」2007-03-28 01:27:00 -
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はなみず◆2KeyQ5arcI
眠そうなすいかの顔が開いたドアの隙間から現れた。
問答無用でドアに足を開け体が入るスペースを確保して玄関に入り込んだ。
「バーゲン行こう!!」
既にあちこちのお店では夏のセールを開催して街はバーゲン一色。
給料日を指折り数えこの日を待っていた。2007-03-28 01:30:00 -
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はなみず◆2KeyQ5arcI
当然すいかはそんなあたしの気持ちを知らないから
「はぁ?」と呆然とあたしの顔を見ていた。
この日知ったのは「すいかの寝起きは動きがとろい」と言う事。2007-03-28 01:33:00 -
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はなみず◆2KeyQ5arcI
起き抜けの一服に始まり、カフェオレを入れてゆっくりテレビを観ながら飲み、
飲み終えて準備をするかと思いきや又、煙草に火を点けとだらだらと動く。
結局1時間以上、待たされた。
2007-03-28 01:36:00 -
87:
はなみず◆2KeyQ5arcI
待たされたせいで少し苛々は感じたけども目的のファッションビルに着く頃には
頭の中は洋服の事で一杯だった。
すいかと「あそこ行こう、あっちも行こうと」とお互いに言い合い、二人で洋服を買い漁った。
2時間後には二人とも大量の色々なお店の紙袋を抱えていた。2007-03-28 01:39:00 -
88:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかと笑い合いあれやこれやと試着しまくり店内の洋服を物色した跡は
さながら松尾芭蕉が詠んだ「兵どもの夢の跡」と言った所だろう。
その日は帰宅した後もすいかの部屋で小さなファッションショーを開いてるみたいに
次々と一緒に戦利品の洋服を着せて見せ合った。2007-03-28 01:45:00 -
89:
はなみず◆2KeyQ5arcI
しまいには二人とも妙なテンションになりお互いの洋服を交換して着ていた。
すいかの服は今までずっと「CUTIE」や「Zipper」を愛読し、その系統の服を着ていたあたしからしたら初めての物で
すいかはすいかで見事なまでにあたしの買った洋服は似合っていなかった。
それはあたしも一緒でお互いを指差し、二人ともお腹を抱えて「似合ってない」と大笑いした。2007-03-28 01:48:00 -
90:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたし達はGWに初めてすいかと一緒に出掛けた時のワンピースにスニーカーと言うちぐはぐな格好みたいに
二人並ぶとちぐはぐで、どちらも浮いてしまうような感じだったけど
一緒に居るだけでお互い楽しくて大親友になっていた。
だからすいかもなかなか言い出せなかったんだと思う、自分の秘密や抱えてる悩みを。2007-03-31 21:49:00 -
91:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「すいかの事が大好きだよ」と口に出してたら、すいかはもっとあたしに心開いてくれたのかな?
すいかの秘密を知ったのは大学の夏休みが明けて間もな10月。
「花、10月誕生日なの?」2007-03-31 21:51:00 -
92:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかの部屋にいつも通り遊びに行った時に唐突に言われた。
「何で知ってるの!?」
あたしはすいかに誕生日を教えた事がなかったからすごく驚いて聞き返した。
「ここのマンションって壁が薄い作りでね〜」
そう前置きしてから話してくれた。2007-03-31 21:54:00 -
93:
はなみず◆2KeyQ5arcI
少しさかのぼって一週間程前、大学から自分の部屋に帰宅した時間を見計らってたかのように父から電話あった。
「はい、もしもし」
「花〜久し振り。たまには電話してくれなお父さん寂しいわ」
父は電話に出ると少し拗ねた声でそう話した。2007-03-31 21:57:00 -
94:
はなみず◆2KeyQ5arcI
学校に慣れるのに必死だった事と、すいかと仲良くし出し寂しさが紛れていたせいでホームシックにかかる事もなく、あたしは父に近況の電話を余りしていなかった。
「あー!ごめん」
父の電話でまるで今、父を思い出したかのような声を上げ謝ると父は余計、拗ね出した。
「ま、いいわ。電話したんはその事じゃなくてな花、もうすぐ誕生日やろ?」2007-03-31 22:00:00 -
95:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すっかり自分の誕生日を忘れていた。
「お父さん、花にプレゼント買ってあげたいけど何が喜ぶか分からないから誕生日の前の日に少しお金を銀行に入れておくな」
そう言って「何でも欲しい物買って遣い。今年は祝ってあげられないでごめんな」と付け加えた。2007-03-31 22:03:00 -
96:
はなみず◆2KeyQ5arcI
父の寂しそうな顔が電話越しに分かり父に申し訳なくて元気付ける為に「冬休みには一旦帰るよ」と声を掛けた。
「そっか!楽しみやわー」
父はその一言で嘘のように元気になり「じゃあな」と機嫌の良い声で電話を切った。
2007-03-31 22:06:00 -
97:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「で、壁越しに花のでかい声の「もうすぐ誕生日〜!わ〜い!お金お金〜♪うひょ〜!!!」って声が聞こえた訳だ」
話し終えたすいかはあたしの顔を見て「プッ」って笑った。
壁が薄くても声が聞こえるとは余程にあたしも浮かれて興奮して叫んでいたのだろう。
もうすぐ19歳になると言うのに自分の子供っぽさがすいかの話で思い知らされ恥かしくなった。2007-03-31 22:09:00 -
98:
はなみず◆2KeyQ5arcI
恥かしさで無言になっているとすいかは意外な一言を投げた。
「あたしからも誕生日プレゼントするよ、何がいい?食べたい物とか、欲しい物ある?」
現金にも、その一言で元気になり『誕生日って素敵!!!』なんて思い一気に満面の笑みのあたし。
すいかはあたしのコロコロ変わる表情に「あんたも現金だな〜」と苦笑いを浮かべた。
「食べ物とか欲しい物じゃないけどお願いがある」2007-03-31 22:12:00 -
99:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「何?」
あたしは夜の世界に興味を持ち出していた。
お金が一杯欲しい、お酒が沢山呑みたいとかじゃなく、ただ単純な好奇心だ。
だから少し働いてみたかった。
「すいかのお店で一日だけ働いてみたい」2007-04-02 02:01:00 -
100:
はなみず◆2KeyQ5arcI
それを聞くとすいかの顔が一気に曇り出した。
言ってはいけない事を言ってしまったとすいかの表情で分かった。
が、今更、言ってしまった事は取り返しようもなく、すいかは不機嫌な声で「ちょっと今日はもう帰って」と言った。
あたしは素直にすいかの言葉に従い自分の部屋に帰った。
初めて見るすいかの顔だったから、どうしていいか分からなかった。2007-04-02 02:05:00 -
101:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしの気分も最悪だった。
すいかを怒らせてしまい自分自身が自己嫌悪に陥っていたのだ。
『あんな事を言い出さなきゃ良かった』
『どうしよう?謝れば許してくれるかな?』
学校でも部屋でもその事ばかりが頭に浮んでいた。2007-04-02 02:10:00 -
102:
はなみず◆2KeyQ5arcI
謝る機会がなく、すいかの部屋にも訪問しないまま数日経過した。
ピンポーン
いつかのように部屋のインターホンが鳴った。2007-04-02 02:13:00 -
103:
はなみず◆2KeyQ5arcI
滅多に鳴らないインターホンの音に驚いたけれど何となく期待と予想をした。
「すいか!!」
あたしは訪問者を確認せずにドアを開けた。
「久し振り」
すいかは少し照れてるように見えた。2007-04-02 02:16:00 -
104:
はなみず◆2KeyQ5arcI
それはあたしも同じで照れくさく妙に恥かしくて俯き加減に「久し振り」と返事をする。
数日口をきかないだけでこんなにお互い照れくさくなる物なんだろうか。
「あーうーん、まあ取り敢えず中入れて?」
「うん!どうぞどうぞ!!」
あたしは嬉しさで自分の部屋の散らかりを具合を無視してすいかを中に招き入れた。2007-04-02 02:20:00 -
105:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかにはいつも「少し掃除しようよ」と言われていたけど「はいはい」と空返事ばかり繰り返し
結局あたしの部屋はいつも散らかったままだった。
今日のすいかにも「掃除しようよ」と呆れ顔で言われたけども、あたしは嬉しそうな顔で「はいはい」と答えた。
あたしはすいかの為にカフェオレを作り出し、すいかはすいかで散らかった床を自分の座るスペースの部分だけ整理して教科書やら雑誌をきちんと重ねて隅に置いていた。2007-04-02 02:23:00 -
106:
はなみず◆2KeyQ5arcI
こう言う綺麗好きなすいかの性格をあたしは前から感心していた。
すいかのように部屋も綺麗にしようと思うけど現実は学校やバイトで忙しくなかなか上手く行かない。
ホットカフェオレを入れたカップを2個手にしすいかと向かい合わせに座りテーブルにカップを乗せた。
「この前はごめん」
謝って来たのはすいかの方からだった。2007-04-02 02:27:00 -
107:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしから謝らなくちゃいけないと思っていたからすいかの言葉は意外だった。
「こっちこそごめんね、突拍子もない事を言い出して」
「いや、個人的な事情で機嫌が悪くなったから、あたしがやっぱり悪いわ」
すいかの「個人的な事情」が何か知りたくてあたしは又、ここで好奇心を剥き出しにしてすいかに訪ねた。
すいかは暫く言いにくそうにして、切り出した。2007-04-02 02:30:00 -
108:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「これ聞いて驚かないでね、多分、驚くと思うんだけどね・・・あたしの事、嫌いにならないで」
すいかは真剣な目であたしの顔をじっと見る。あたしも真面目な顔で「嫌いにならないよ」と答えた。
その時はまだ『どうせ大した事ないでしょう』と気持ちの中で軽く見ていたけれどすいかの続く言葉は
本当に驚く物だった。2007-04-02 02:33:00 -
109:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「うん、あのね、あたしの働いているお店、ニューハーフのお店なんだわ」
頭の中は混乱、しばらく真っ白になっていたと思う。
口もポカーンを半開きだったような気がする。2007-04-02 02:37:00 -
110:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「えーと、すいかは男って事かな?」
やっと口に出した言葉は単刀直入、ストレート勝負だった。
すいかは怒りもせずにそこから真面目に色々話し出してくれた。
自分が性同一性障害で体は男でも内面が女である事。2007-04-02 02:44:00 -
111:
たかし
おっと?意外性にビックリ?頑張って?
2007-04-02 02:45:00 -
112:
はなみず◆2KeyQ5arcI
物心付いた時から自分の体に違和感があった事、家族にカミングアウトした物の両親の理解が得られず
男性として生きる事を強いられ苦痛に感じ家出同然で家を出て大阪に来た事。
そして精巣除去手術と豊胸手術を行い、ほぼ体は女性である事。
全て話してくれた。
この時になってやっとあたしはすいかが過去を話したがらない理由が分かった。2007-04-02 02:47:00 -
113:
はなみず◆2KeyQ5arcI
>>114さん
意外性を狙った訳じゃないんですけど、本当に当時は驚きました。
それまで女性だと思っていたで(・ω・;)2007-04-02 02:50:00 -
114:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「家族の了承が得られないからまだ完全な女って訳ではないんだけどね」
寂しそうにすいかは最後にそう言った。
「どんなすいかでもあたしは嫌いにならないよ」
混乱する頭を整理してあたしはすいかに話した。
それは嘘じゃなかった。驚いたのは事実だけどもすいかを嫌いにはなっていない。2007-04-02 02:53:00 -
115:
名無しさん
?早く?
2007-04-11 03:35:00 -
116:
名無しさん
ばりおもろぃゃん?
2007-04-11 05:25:00 -
117:
名無しさん
めっちゃ気になる??
2007-04-11 08:07:00 -
118:2007-04-11 09:09:00
-
119:
はなみず◆2KeyQ5arcI
あたしの言葉を聞いて、すいかは子供のように小さく伏せていた目を見開き笑顔を見せた。
すいかの口から詳しく聞くまであたしは、誤解をしていたのだけれど
性同一性障害と同性愛は別種の物である。2007-04-13 06:35:00 -
120:
はなみず◆2KeyQ5arcI
性同一性障害は自分の認識する性別と体の性別の不一致を感じる人で
同性愛者は比較的その不一致がなく自分の体の性別を受け入れていると言う。
ただ、すいかは「女性としての幸せを夢見て普通に男性に恋する時もある」と言っていた。
すいかは「女として男に恋をする」だけれど同性愛は「男として男を好む」「女として女を好む」
と言う事なのだ。2007-04-13 06:37:00 -
121:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかの秘密を知ってからも、あたしの態度は変わりなく普通に女友達として、すいかに接していた。
すいかも、あたしを同性の友達として扱っていた。
すいかの仕事に関しては、あたしの中で触れてはいけない事になり、口に出す事はなかった。
けれど、すいかは、あたしが「すいかのお店で一日だけ働いてみたい」と言った事を覚えていて、叶えてくれた。2007-04-13 06:40:00 -
122:
はなみず◆2KeyQ5arcI
日曜日の晩、そろそろ寝ようかと言う時に、すいかは部屋に訪問して来た。
ドアを開けるとすいかも寝ようとしていたのか化粧気のない顔で立っていた。
「明日、学校終わったら、あたしの部屋にすぐおいで」
すいかは部屋に入らず用件だけを告げた。
あまりに突然に言う物だから、あたしはすいかの意図を図りかねて首をかしげた。2007-04-13 06:43:00 -
123:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「誕生日プレゼントあげるって言ったでしょう」
すいかは約束を守る人だった。
あたしが既に忘れていた希望も、すいかは覚えていて叶えようとしていた。
「ありがとう」
あたしは嬉しくて多分、顔をほころばせていたと思う。2007-04-13 06:46:00 -
124:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかは、そっけなく「じゃあね」と言い、ドアを閉め自分の部屋に帰った。
翌日、大学を終えてから、その足ですいかの部屋を訪れた。
すいかは既に出勤を準備に取りかかっていたようで、顔には、ほんのりと化粧が施されていた。
すいかの部屋に入ると、あたしは言いにくそうに、ぼそぼそした声ですいかに話した。2007-04-13 06:49:00 -
125:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「今日、実はバイトなんだ・・・」
けれど、すいかは気にも留めず、あっけたかんと「仮病って言えばいいよ」
と悪びれずに言い放つ。2007-04-13 06:52:00 -
126:
はなみず◆2KeyQ5arcI
確かに「風邪をひきました」「腹痛で今日は無理です」と言えば、一日位、大目に見てくれるバイト先ではあったけれど、
店長を騙す自信がなく渋った。
そんな、あたしのどっちつかずの態度に、すいかは痺れを切らし口を開いた。
「店長ってさ、花の家族構成知ってる?」2007-04-13 06:55:00 -
127:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「そこまで親しく話した事はないな」
その返事を聞くと、すいかは当たり前のように手を出した。
「バイト先に電話かけてあげるから、携帯貸して」
「はぁ?」
すいかが何をする気なのか予想がつかず、思わず間抜けな声を出した。2007-04-13 06:59:00 -
128:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかは意外に強引な所もあり、自分のペースで物事を運ぶ時がある。
「姉の振りして妹が病で寝込んでるんで〜す、とでも言ってあげるよ」
悪戯っぽく、すいかは口の端を上げニヤリとした。
あたしは、すいかの差し出した手の平に携帯電話を置いた。2007-04-13 07:03:00 -
129:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「登録名は何?」
「たつみ」
それを聞くと、すいかは慣れた手つきで携帯電話のキーを押した。
あたしは自分の声が携帯電話に届かぬように、押し黙ったまま、すいかの姿を見ていた。2007-04-13 07:06:00 -
130:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「もしもし、あの花美の姉の水華と申しますが妹の体調が悪く、さっきからトイレを行ったり来たりで治まらないんです。申し訳ございませんが、本日はバイトを休ませてもらえますか?」
『それって遠回しに下痢って言ってるよね・・・』
もっとマシな病名が思いつかなかったのかと今すぐ、すいかに文句を言いたい位、あたしには不愉快な病気だった。2007-04-13 07:09:00 -
131:
はなみず◆2KeyQ5arcI
「はい、分かりました。ありがとうございます」
すいかは、あたしの視線を気にせずに話を続け、見えない電話の相手に向かって満面の笑顔を浮かべていた。
電話でも作り笑いをしてしまうのは仕事から癖になっているせいだろう。
「花、休んでもいいって。それとお大事にだってさ」
「ねぇ、風邪って言い訳は思いつかなかったの?」2007-04-13 07:13:00 -
132:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかを冷めた目で見ながら、あたしはふてくされ気味に聞いた。
「それだと咳とか出ないで、次のバイトに行った時すぐにばれるわ」
もっともな意見で、あたしはそれ以上、文句を言わなかった。
「化粧するから、花も座りな」
すいかに促され、クッションの上に腰を下ろした。2007-04-13 07:16:00 -
133:
はなみず◆2KeyQ5arcI
相変らず、すいかのあたしを化粧する手は気持ち良かった。
夜が近付くキタの街は様々な人々でごった返していた。
仕事を終え家路に向かうスーツ姿の人もいれば、今から出勤のきらびやかな格好の人もいた。2007-04-13 07:19:00 -
134:
はなみず◆2KeyQ5arcI
全く意味が分からない。
けれど夜の世界の事は何も知らないので素直に従う事にした。
すいかの勤めている店に入ると開店前で薄暗く、寂しさを漂わせていた。
「更衣室はこっち」
すいかに案内され店の裏に回り更衣室に足を入れた。2007-04-13 07:27:00 -
135:
はなみず◆2KeyQ5arcI
その光景は別世界、圧巻物だった。
「でさ〜、そうそう」
「アハハハハ」
入り乱れる、ハスキーな声や可愛い声、そして男の声。
顔は綺麗に女性っぽくはなっているが、体にまだ少し、男を残してる人。2007-04-13 07:30:00 -
136:
はなみず◆2KeyQ5arcI
すいかのように、全く外見も女性の人。
だけれど、みんな見とれる程、美しい顔をしていた。
絶句する程、面影が「おじさん」と言う人も、いたにはいたがニューハーフの店だと言うのを知れば、そんなに違和感を感じる物でもない。
「ママ?」2007-04-13 07:33:00