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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
451:
◆lZf.ArgVp2
「………アンジュ、お前は似ているな。姿形じゃなくてもっと深い所が。深い悲しみを抱いている目が。
お前の目は黒いけど、内在する哀れみは同じ色だ。
悲しみをそのまま具現化させた青い瞳。その目を人生で唯一、美しいと思った。」
「…………ステファン?」2008-07-16 03:14:00 -
452:
◆lZf.ArgVp2
動けなかった。瞬きすらできないでいる間にステファンの腕に囚われる。抵抗すらできないでいるのに、その力は強い。それでもどこか震える指は恐れている様にあたしの肩を抱く。
「……ベス。お前の母親だ。」
2008-07-16 03:20:00 -
453:
◆lZf.ArgVp2
「産まれてから今まで彼女だけを尊いと思った。美しかった。
ぐちゃぐちゃにしてやりたいと思う程に。だけど彼女は汚れなかった。汚す事ができなかった。
だから憎かった。
だから壊した。」
2008-07-16 03:24:00 -
454:
◆lZf.ArgVp2
「お前も汚してやりたかった。母親の血に塗れてもお前もやはり汚れなかった。」
腕を振りほどいて、後ろに飛び退いた。本能的恐怖。
狂っている、そう思った。2008-07-16 03:30:00 -
455:
◆lZf.ArgVp2
さっきの男に向られていた凶暴性とは違う。もっと甘くて濁っている。震える足で出口へと向かう。
「まだ話の途中だ」
大きく体が崩れる。不思議な事に床に叩き付けられた上体の方が痛みを感じた。
足を打たれた。2008-07-16 03:35:00 -
456:
◆lZf.ArgVp2
「アンジュ、お前だけが俺の夢を叶えられる。偽りの夢を終わらせてくれる。」
太股から血が溢れる。痛い、熱い。それでも逃れようとしてもがくと血で手が滑った。
「アンジュってのはよくつけたなあ……この世界を捨てた時、案内するのは確かに天使だ」
2008-07-16 03:40:00 -
457:
◆lZf.ArgVp2
「………どこまで話したかな?えーと……あ、痛いか?ごめんな」
あたしを抱き抱え、ソファに運ぶと優しく座らせる。動く度に激痛が走った。白いソファに血が染み込んでいく。
「……あ、そのソファいいだろ?なんかの映画で神様が座る椅子があって、それに似てたんだ。アンジュが座れば丁度いいと思って。」
そんなことを言いながらステファンは微笑む。あたしも逃げられない事を悟ったからか、恐怖が痛みに気を取られたのか、幾分落ち着きを取り戻し、笑って見せた。
ただその笑顔は痛みで歪んでいるだろう。2008-07-16 03:48:00 -
459:
名無しさん
アンジュ?どうなんの?メッチャ気になるやん〜?
2008-07-16 21:38:00 -
462:
◆lZf.ArgVp2
>>474「これが最後の残りなんだ。おれは体質的に合うのか依存症はでない。けど、これがなかったら生きている意味がない。」
量にしてほんの数グラムだと思う。ただの透明の小さいカケラ。
「これがないと…………………ベスに会えない。」
2008-07-17 04:45:00 -
463:
◆lZf.ArgVp2
「……お母さんは死んだんだよ。どこにもいないんだ。もう二度と会えないんだよ。」
「………会えるんだ。コレがあれば。」
2008-07-17 04:49:00 -
464:
◆lZf.ArgVp2
「ほんとはさ、最近かなり近いものができたんだよ。昔と同じ、ほぼ偶然みたいなもんで。
スミトモとかいうガキ何しやがったと思う?研究者を殺しやがった。昔コレ作り始めた時、製造法押さえたら邪魔だし作った奴を殺そうとしてて、その頃の事知ってる奴だったからそいつもだんまり決め込んでたんだよね。だから、またふりだし。残りはこれだけ。
俺、もうめちゃくちゃ悔しくてさー気付いたら滅多打ち。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
まあ俺がやらなくても時間差で上の奴にやられたと思うけど。」
2008-07-17 05:06:00 -
465:
◆lZf.ArgVp2
スミトモは汚い事はしていないと言えば嘘になるけど、麻薬は大嫌いだった。
マフィアに入る前のただのごろつきの頃から、下の子には絶対に薬物なんかさせなかったし、薬物関係の仕事はどんなにお金が良くても、どんなに自分の立場が悪くなろうともやらない、とレイチェルがよく話していた。
『スミトモの弟もおじいちゃんも薬で亡くなってるの。だからスミトモは絶対、下の子にさせないし関わらせない。
スミトモね、ほんと馬鹿みたいなんだけど、いつか力を持って……そりゃ今は悪い事してるよ?
で、この街の子が子供らしく暮らせるようにしたいんだって。麻薬絶対ダメ!!ってポスターみたいな事いつも言ってるし…………壮大な…夢よね』2008-07-17 05:18:00 -
466:
◆lZf.ArgVp2
スミトモが死んだ理由。大きな儲けの可能性を潰せば死の報復があることなど承知のうえだっただろう。
自分の命を懸けて
悲劇が再び起こるのをくいとめようとしたんだ。2008-07-17 05:24:00 -
467:
◆lZf.ArgVp2
それしか方法がなかったかは、あたしにはわからない。
スミトモらしい死に様だ。彼の守りたかったものはきっと未来。
人殺しかも知れない。でもスミトモは、殺したくなかったから殺したんだ。
涙が流れた。あたしの中でスミトモは完全に死んだ。スミトモの死を受け止めた途端、涙はとめどなく溢れる。2008-07-17 05:39:00 -
469:
名無しさん
毎日更新楽しみにしてます?
2008-07-17 18:54:00 -
471:
◆lZf.ArgVp2
>>484
「………何を泣く?」
不思議そうにあたしを見つめるステファンは何本目かの煙草に火をつける。少し甘い匂いのする煙がこちらに漂ってきた。その紫煙を払う。それは意思表示の現れでもあった。
「…死っていうものは本来こういうものだよ、ステファン。こうして泣いて苦しんで忘れはしないけど越えていくんだよ。
いつまでもすがりついちゃいけない。自分の都合いい幻覚なんかで引っ張り出してあげたりしたらいけない………………そんなの………………」2008-07-18 02:21:00 -
472:
◆lZf.ArgVp2
「可哀相だよ!!!!お母さんが!!!」
2008-07-18 02:22:00 -
473:
◆lZf.ArgVp2
ステファンとお母さんがどんな関係だったかなんて知らない。2人の間に何があったかなんて知るよしもない。
お母さんは優しい人だった。今のステファンを見たらきっと泣くだろう。
「……静かに眠らせてあげようよ!」
2008-07-18 02:26:00 -
474:
◆lZf.ArgVp2
「…………………………嫌だね。とっとと死にやがってアイツ。苦しみつづければよかったのに。もっともっと苦しんでもっともっと汚くなればよかったんだ。
ベスに打ったのと同じ薬だよ。これは。
俺がベスをあんな風にしたんだ。
お前が刺さなきゃもっと生きてるはずだったのに」
2008-07-18 02:34:00 -
475:
◆lZf.ArgVp2
空気が細く震えたと思った瞬間、今度は腕を打たれた。
幸い、少しかすった程度。それでも衝撃で体はかたむき、床に倒れこんだ。さっき打たれた左太股の傷周辺に割れたガラスの破片が刺さる
。呻き声をだしながら転げ回って痛みに耐える。他の場所にも破片は軽く刺さったようだが尋常じゃない痛みのせいでもはや何がなんなのか。
「…………ど…ぅ…して……………ぇ?」2008-07-18 02:46:00 -
476:
◆lZf.ArgVp2
「…………さあな、わからないんだよ。ほんのたまに全てが七年前…………いや…もっと前に戻ればいいと思う時がある。
…………………………………………………………ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ戻ったところで同じ道を辿るだけなのにな。
俺の悪い夢はじき終わる。happinessの為に散々金を使った挙げ句、これだ。もうすぐ上も気付くだろう。始末………いや……廃棄されるまでもう時間も余りない。
お前がここに来なきゃ、一人で死ぬつもりだった。だけど気が変わったんだ。」2008-07-18 02:54:00 -
477:
◆lZf.ArgVp2
「ま……お前とつるんでるガキを殺ったら、必ず来るとおもってたけど。
お前がアレに気付くかは賭けだった。わざと証拠を残しといたんだよ。
……………話がずれたな。
どこまで話したっけかな……………」2008-07-18 02:57:00 -
478:
◆lZf.ArgVp2
「まあ 聞いてくれや。これは俺の懺悔…………………いや、違うな。
遺書だ。
残す必要もないから、ただ話してるだけだけどな!アハハハ!」2008-07-18 03:00:00 -
479:
◆lZf.ArgVp2
「あゎ…れ……」
「……なんか言ったか?って痛くて話せないよな」
哀れな人。悲しい人。ステファンに対する怒りはもう既になくなっていた。怒りなんか及ばない。ただ哀れだと、そう思った。
2008-07-18 03:06:00 -
481:
◆lZf.ArgVp2
>>496 一歩一歩近付いてくるステファンの足が見える。膝をついた彼はあたしの髪を引っ張って頭を持ち上げさせると顔を近付けてまじまじと見る。
「そっくりだよ。目が。だからお前だけが俺を罰せる。」
「…ちが…う。あたしは…かあさ…じゃな…ぃ」
「………わかってるよ。そんな事は」2008-07-19 04:04:00 -
482:
◆lZf.ArgVp2
「許され…たい…ん………だね?」
母さんを薬漬けにした男。こいつはあたし達の当時は普通と思っていた、今では夢の様な幸せな時間を壊した。憎しみはない。
どこで歯車が狂ったのか。ステファンは母さんを愛していたんだろう。確かに。
でも何かがぐちゃぐちゃになってしまってステファン自身どうしようもなかったのだろう。
許されたいがばかりに自ら破滅したがっている。自分を傷付ける事でしか、この人は生きてこれなかったんだ。2008-07-19 04:16:00 -
483:
◆lZf.ArgVp2
ごめんなさいと言っても苦しんでも、泣き叫んでも、どんな答えでもいいのに返ってくる声を聞く事はできないのだから。
あたしがお母さんに許しを乞うたところで返事がないように。
ごめんなさい、スミトモ。あなたを殺した人なのに憎いと思えない。
あまりにも哀れで。2008-07-19 04:22:00 -
484:
◆lZf.ArgVp2
「い…よ。許…してあ……げる。だか…ら、もう…誰も……殺さな……ぃで」
あたしにはできない。罰する事なんて。
気持ちがわかるから。いっそ誰かに罰せられて消えてしまいたい、そんな思い。
自分が少しも大切に思えない程、むしろ不幸になるのを望む程、罪の意識は重たい。
一人の夜、美しい朝、この世の全てに踏みにじられ押し潰され、えぐられる。毎日毎日それは続く。2008-07-19 04:30:00 -
485:
◆lZf.ArgVp2
死に急ぐ事で、破滅に身を投じる事でそんな思いから逃げようとしている。むしろその方が罪悪感は薄らぎ楽なのかもしれない。
でも本当は、幸せに生きようとする毎日の中で、苦しみを背負い続ける。
それが罰。2008-07-19 04:36:00 -
486:
◆lZf.ArgVp2
あたしはそう教えられました。アメに。ドクターに。レイチェルに。
もういないスミトモに。
そして母に。
罪には罰がある。ステファンがあたしに罰をと望むなら、そういうふうにこの人を裁く。
「……許…すよ」2008-07-19 04:43:00 -
487:
◆lZf.ArgVp2
髪を掴んでいた指が離れ、あたしの頬は再び冷たい床の感触を感じる。
目と鼻先すぐの床にぽつんぽつんと滴が落ちる。
ステファンの涙だ。
頭上から震える声が降って来る。つぶやく様に。
「許されたいわけじゃない………」と。2008-07-19 04:48:00 -
488:
◆lZf.ArgVp2
長いことそのまま静止したように時間は流れた。燃える様な痛みだった太股もズキンズキンと痛みが強まったり弱まったりの周期がくるようにまでなっていた。
痛みが弱い時にそっと動かすと痛みは走るもののちゃんと動く。神経なんかにはなんら問題はなさそうだ。出血も治まってきている。
ゆっくり体を起こすと、あたしの隣りで膝をついたまま放心したようにうなだれていた。2008-07-19 04:54:00 -
489:
◆lZf.ArgVp2
「だめだよ………アンジュ。お前が俺を殺さないなら…………………………俺がお前を殺さないといけない」
2008-07-19 04:56:00 -
491:
名無しさん
たぶんみんなちゃんと見てて邪魔になるだろうとコメントがないんだと思います?
毎日見てるので頑張って下さい2008-07-19 06:43:00 -
493:
◆lZf.ArgVp2
>>507
ゆっくりと首に手が回された。冷たい手。その感触は七年前のあの日へとあたしを突き落とした。
「やだあああああ!!!!!!!!!」
2008-07-24 01:07:00 -
494:
◆lZf.ArgVp2
渾身の力を振り絞ってその手を降り払う。イモムシのように床を這いつくばりながら逃れようした。
それはステファンからなのか、あの日の記憶からなのか。手にガラスが刺さろうが、止まりかけた血がまた吹き出そうがどうだっていい。
「やだやだや…だ……ゃ…だ………やだやだやだやだ」
こ な い で2008-07-24 01:14:00 -
495:
◆lZf.ArgVp2
「アンジュ お前の苦しみももう終わる…………俺がお前を殺せばお前は天使になれる。すぐ会えるよ、べスにも」
実際には数メートル進んだだけで、あたしの前に立つステファンに見下ろされていた。
「もう泣かなくていい。」
少しの間その場を離れたステファンはハンカチを濡らして持ってくるとあたしを優しく起こして壁にもたれさせかける。涙と血でぐちゃぐちゃであろう顔を拭ってくれた。2008-07-24 01:22:00 -
496:
◆lZf.ArgVp2
まるで我が子にするように優しく………
「………あたし……死ぬの?」
「大丈夫。………一人じゃないから」2008-07-24 01:27:00 -
497:
◆lZf.ArgVp2
あたしをそのままにしてステファンはソファの所まで戻った。ぼんやりとその動作を見ていた。
アメ……ドクター…スミトモ……レイチェル…………………愛してる。
みんながあたしを救ってくれたんだ。ステファンをあんなふうにした闇はあたしの心にも確かにいるのだから。
「生きよ…………生……きて 償おう」
「…聞いて……生きよう……ステファン」2008-07-24 01:41:00 -
498:
◆lZf.ArgVp2
ステファンの心は取り返しのつかないところまで堕ちてしまったんだろうか
ちがう
だって貴方だって泣いたじゃないか2008-07-24 01:46:00 -
499:
◆lZf.ArgVp2
「こんなこ…と、誰も望まない……お母さんだっ……て」
陳腐な事を言っているのはわかっている。お母さんがどう思うかなんてあたしにはわからない。それでも
「あた…しは ステファンに………生きて…ほし……」
ステファンはこっちを見ようともせず、彼の手元はカチャカチャ音を立てている。例え、ステファンに届かなくても。それでもあたしは言わなくちゃいけない。2008-07-24 01:54:00 -
500:
◆lZf.ArgVp2
悲しみはここで終わり。母の死から始まった悲しみはもう繋げてはいけない。
あたしが運良く生き残り、幸福にも愛された意味はそこにあるんだと、今はそう思うから。
届かなくても届けなくちゃ。
「これ以上……殺さ…ないで………あた…しを殺さないで」
そして、なにより2008-07-24 02:01:00