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1:
結愛
これは、私の現在に至るまでの実話です。
どこにでも溢れている、だけどかけがえのない、たった一つの自分だけのストーリー。2006-05-30 14:07:00 -
86:
結愛
『じゃあ…今日はほんまにありがとう。お金出来たら絶対返すから!!』
「ほんまいいって。これ俺の番号とメアドやから、携帯買ったらかけてきてな。」『うん、気つけてな。』
車のドアを閉め、大樹の車が見えなくなるまでまだ薄暗い空の下、手をふり続けた。2006-06-01 12:37:00 -
87:
結愛
妹達を起こさないように気を遣い、玄関の扉を静かに開けると階段を誰かが下りてくる足音が聞こえた。
「彩花?今帰ってきたん?」
一つ下の妹、直美は私を呼び捨てにする。
『うん、仕事見つかったで。』2006-06-01 12:41:00 -
88:
結愛
「その頭…もしかして水商売?」
『うん…』
直美は見た目は派手なわりに頭も良く、少し硬い考えを持つ子だ。
「そんなんせんでも直もバイトするし普通の仕事しぃや!!」2006-06-01 12:46:00 -
89:
結愛
「彩花、ありがとう…。」普段よく憎まれ口をきく直美が、素直にお礼を言うのを見て何だか可愛く思えた。それから二人でお弁当と朝ご飯を作り、三人で朝食を食べ学校へ送り出した。片付けや掃除、洗濯を済ますと時刻はもう十時をまわっていた。
化粧だけ落とし布団に潜り込むと五分もたたないうちに眠りについた。2006-06-01 13:03:00 -
90:
結愛
ピピピピ…ピピピピ………目覚ましが鳴り響く。昨日のシャンパンが残っているのか頭が痛い。お客さんがほとんど飲んでくれていたので二、三杯しか飲んでいないとは言え、お酒をあまり飲んだ事がなかった私には結構きつかったようだ。
重い体を起こし、お風呂に入ると少しすっきりとした。2006-06-01 13:14:00 -
91:
結愛
慣れない化粧を済ませ、携帯ショップに向う。
委任状を受け取り向かった先は…実家。
この時間なら義父はまだ仕事に行っていて家にはいないだろう。母と顔を合わせるのは一週間ぶりぐらいだったと思う。
勇気を振り絞りドアを開けリビングの扉を開けた。2006-06-01 13:21:00 -
92:
結愛
私を見た母の第一声は…
「あんたか。勝手に入ってこんといてくれる?」
この言葉に怒りが込み上げてきたが、携帯を買うためだ、とぐっと我慢した。
『…ごめん。携帯買うからこの書類書いて欲しい。』「え?誰か他に借りてくれる人おらんの?まぁいいわ。絶対お金はちゃんと払ってお母さんに迷惑かけんといてよ。」2006-06-01 13:27:00 -
93:
結愛
『…はい。』
「仕事見つかったん?どうせ水商売やろ?」
母の勘はかなり鋭い。まぁいきなり派手になった私を見れば一目瞭然だったのかもしれないけど。
この日の母との会話はこれだけだった。ありがとう、と吐き捨てるように言うと家を飛び出した。2006-06-01 13:32:00 -
94:
結愛
本当は、少し期待してた。お帰り、元気にしてた?そんな言葉をかけてくれる事を。
まだ子供だった私にも悪い所はたくさんあったのかもしれない。でも母を憎む事しか知らなかった。そんな気持ちとは裏腹に、やっぱり私にとってはたった一人の母で…心のどこかではいつも母の愛情を求めていた。2006-06-01 13:43:00 -
95:
結愛
………――何とか携帯を手に入れた私は、ミナミに向かう電車の中で早速大樹にメールを送ってみた。
するとすぐに返事が返って来て、ひっかけ橋で逢う事になった。
その頃はまだ橋は石で出来ていて、もたれかかりながらぼぉっと道頓堀川を見つめていた。2006-06-01 13:48:00