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愛子

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  • 1:

    愛子

    愛子。
    誰からも愛される子になるように。

    あたしのお父さんとお母さんは名付けたらしい。

    2007-07-20 23:35:00
  • 2:

    名無しさん

    お父さんは徳仁 お母さんは雅子 という名前。

    2007-07-21 00:53:00
  • 3:

    愛子

    でもあたしはそんな名前がほんまに嫌いやった。
    両親は二つ下の妹に溺愛していた。

    華奢で優しくて笑顔のかわいい美保。

    デブでなんのとりえもないあたし。

    愛された事なんてなかった。家にいてもいつもひとり。学校にも友達なんかいなかったし。

    2007-07-21 03:41:00
  • 4:

    愛子

    バイトの休みの日、あたしはまた1人で出かけた。にぎやかな駅の前をさえないあたしが通り過ぎる。

    2007-07-21 03:46:00
  • 5:

    愛子

    ナンパなんてほど遠い世界で、男の子とまともに話したことすらなかった。
    「買い物??」
    日頃からうつむき加減で道を歩くのが癖になっていたあたしはまさかと思いながら顔を上げた。
    「えっ?」

    2007-07-21 05:53:00
  • 6:

    名無しさん

    顔を上げると笑顔の男の子と目があった。
    「買い物でもいくん??」
    明るい色の髪の毛に整えられた眉毛。はやりの服装に女の子みたいな目。
    あたしが見つめるその先には薄茶色の瞳があった。

    2007-07-21 05:57:00
  • 7:

    愛子

    それが環奈-かんな-との出会いやった。
    梅雨が終わりかけの季節、小雨にあたりながらあたしは環奈の瞳に吸い込まれた。

    2007-07-21 06:03:00
  • 8:

    愛子

    「しゃべりかけたんまずかった?」
    形のいい眉毛をハの字にして困ったように環奈が言った。
    「そんなことナイ…」
    消え入るような声で言ったのに環奈の耳には届いていた。
    「ほんまぁ?ほなよかったぁ?」

    2007-07-21 06:07:00
  • 9:

    愛子

    きっとこの時からなんやろう。環奈の笑顔が好きなのは。優しくて穏やかな顔。
    あたしに笑いかけてくれる子なんていなかったから。
    目を見てはなしてくれる子がいるなんて思ってなかった。

    2007-07-21 06:09:00
  • 10:

    愛子

    「なぁなぁ!名前教えてやぁ!俺環奈?」
    ?かな?
    あまりにも勢いよく言うからかなに聞こえた。
    「かな?女の子なん?」
    まじめに聞くあたしに環奈はふきだした。
    「かなちゃうかんなやって?もちろん男やで?信じれんならみせよか?」
    そういって冗談でチャックに手をかける環奈を見てあたしは顔が赤くなるのを感じた。

    2007-07-21 06:14:00
  • 11:

    愛子

    か「嘘やって?」
    −この笑顔のために、あたしは生きたんよね。愛されたくて。幸せになりたくて。すべてを環奈にささげたんやで。環奈は今、あたしに出会ったことどう思ってる?−

    2007-07-22 03:54:00
  • 12:

    愛子

    か「暇なんやったら俺の昼ご飯つきあってやぁ?昨日の晩から何も食べてへんねん…。」
    切ない顔をする見ず知らずの男の子にあたしはとまどった。

    2007-07-22 03:56:00
  • 13:

    愛子

    あ「暇やけど…」
    か「ほなええやん?」
    霧雨も止んで雲がきれて晴れ間がのぞいて、環奈の顔が明るくなるからあたしの目線が少しあがる。環奈はあたしを今までと違う世界につれだしてくれた。

    2007-07-22 04:00:00
  • 14:

    愛子

    駅前の通りにあるふつうの喫茶店。もちろん男の子と喫茶店にはいるのも初めてやった。
    「俺ランチにしよ!それとミルクティー。なにする?」

    2007-07-22 04:03:00
  • 15:

    愛子

    メニューから顔を上げた環奈と目があった。
    「てか俺名前知らんしおしえてや!」

    2007-07-22 04:07:00
  • 16:

    愛子

    「愛子やで。愛するの愛に子供の子。」
    何が誰からも愛される子やねん。愛されない子供の愛子やん。
    そんなことを考えながら言ったからかもしれんけどあたしの表情は曇った。

    2007-07-22 04:13:00
  • 17:

    愛子

    「愛子かぁ!ええ名前やん。何でそんな嫌そうな顔なん?暗い顔に合わんで?」
    環奈が困った顔をした。その時からなんやろな。あたしは環奈の困った顔が嫌い。環奈の困った顔を見ると悲しくなる。
    「いやぁ…ふつうの名前やしあんまきにいってないし。」

    2007-07-22 04:16:00
  • 18:

    愛子

    「俺はええ名前やと思うで。俺がいい言うてんねんからええやん!」
    自信たっぷりに環奈が言った。
    「もー…オムライスでも食べときっ。」

    2007-07-22 04:18:00
  • 19:

    愛子

    環奈はランチとオムライスとミルクティーを二つ店の人に頼んだ。
    なれた手つきでたばこに火をつける。
    「オムライスって幸せな気持ちにならん?おいしいし!だいたい黄色に赤とかばり元気な色やん?しかも中身オレンジとか完璧な食べ物やで」

    2007-07-22 04:22:00
  • 20:

    愛子

    −あたしが1番好きな食べ物はオムライス。その日からずっとそう。たばこを吸うときの煙たそうな顔も得意げに話すときの輝いた目も全部あたしの1番大好きなもの−

    2007-07-22 04:25:00
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