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君が笑ってくれるなら。

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  • 1:

    ◆qKVw/6MKg6

      
    君が笑ってくれるなら  なんだって出来る。     

    少なくともあたしは   あの頃―
    本気でそう思っていた。

    2007-09-12 00:38:00
  • 21:

    ◆qKVw/6MKg6

    『了解、了解。』 
    と、適当に返事をしてあたしは退散。内緒にしたいなら、接客中のあのあからさまな態度はどうかと思うんだけどね。…うんうん。 なんて1人で考えながら、あたしは止まっていたタクシーに乗り込んだ。

    着いた先は、某レンタルビデオ店。借りていたDVDを返してから、また一通り店内を見渡して適当にいくつか新たなDVDを借りる。 土曜日の夜の、もう恒例化してしまったあたしの過ごし方。店員さんも、見慣れた顔ぶればかりだ。   「あ…!お疲れさまです。」『あ、ども…こんばんは。これお願いします。』     
    "いらっしゃいませ"じゃなく、"お疲れさまです。"と言われてしまうところが、少し気恥ずかしかったり。

    2007-09-12 22:16:00
  • 22:

    ◆qKVw/6MKg6

    家に帰って、メイクを落とすととりあえず携帯をチェックする。正吾からメールるがきていた。
    【受信:正吾】 
    {土曜の夜に1人でDVD鑑賞とか淋しいことだけはやめろよ(笑)おやすみ。}  超能力者かい。…なんて、突っ込みたいところだけど長年付き合ってたらパターンなんて読めるのね。  {今、家帰ってきた。ご馳走様でした〜。いつも本当にありがとう!ちなみに、今日ビデオ屋のポイントカードがいっぱいになった。…おやすみなさーい☆} こんな感じで返信をして、他のお客様にもメールをしてからDVDをセットする。

    どれだけ疲れていようが、どれだけ酔っ払っていようがその日のうちに《お礼メール》だけは、必ずする。そう心がけていた。

    2007-09-12 22:40:00
  • 23:

    ◆qKVw/6MKg6

    水商売に最も必要なのは、器量の大きさと、マメさだと―。あたしは思う。それを備えていれば、きっと周りは認めてくれるんだと。


    今の店に入ったきっかけはスカウトだった。たまたま前の店を辞めたばかりで、あたし自身困っていた時に声をかけられ入店した。 なんだかんだで一年ほど続いているけど、これといった未練も感情もなかった。

    2007-09-13 03:53:00
  • 24:

    ◆qKVw/6MKg6

    「…ってな、感じやねんけどな。俺としては残ってもらいたいねん。でも、上からの話やから…決めるんは葉月自身やからなー。」 だから、こんな急な引き抜きの話にだって特別驚きも微動だにしなかった。  

    『んー、まぁ姉妹店なわけでしょ?そこって。』  「おう。うちの系列の、一番大きい箱やで。名前くらい聞いたことあるやろ?」『うん、普通に。アフターで来られたりもするし』 「…そやな。で、どうする?実際お前に抜けられるんはほんま痛いで。だけど、お前が上をめざすなら絶好のチャンスやからな。」 

    確かにそうだ。○○と言えば、この辺りじゃ一番争いをする有名店。そこから声がかかるなんて、恐れ多い話なんだろう。

    2007-09-13 04:01:00
  • 25:

    ◆qKVw/6MKg6

    『うーん、あたし行くわ。せっかくの話やし…やるからには上目指したいから』「そう言うと思ってた(笑)ほんま淋しくなるけど、あっちでいじめられたら…いつでも戻ってこいよ!」 『いじめられたら、しっぽ巻いて帰ってくるわ〜。』「おう、待ってるわ(笑)」

    そう言って、店長は少し寂しげに笑った。この店で、唯一信頼を置いていた彼と離れるのは少しだけあたしも寂しかった気がする。

    彼も気付いていたんだろう。あたしがここにはもう二度と戻ってこないことを。

    2007-09-13 04:09:00
  • 26:

    ◆qKVw/6MKg6

    あたしの希望で女の子達には、何も言わずに辞めることに決めた。店を辞めるとはいえ、系列店に移動するためとなれば、少なからずいい顔をしない子達だっているだろうから…。

    「葉月ちゃん!!またいつでも連絡下さいねっ…☆本当に寂しい〜(泣)また相談にものって下さい!!」 唯一、沙織を除いては。 沙織だけには、当日辞める事と辞める理由を伝えた。理由は、特にない。ただ、なんとなく彼女には言っておいてもいいと思ったから。 
    『うん、また連絡するね。沙織も頑張りなよー。いつでも相談のるからさ。』 そう言って、彼女とお店のスタッフに別れを告げ、あたしは店を後にした。

    2007-09-13 04:16:00
  • 27:

    ◆qKVw/6MKg6

      
    大型店で、新たなスタートを切ることに、正直不安と期待が半分半分だった。

    この世界のことを一通り理解したと思っていたあたしは、これから数多くの衝撃を受けることになる。

    2007-09-13 04:19:00
  • 28:

    ◆qKVw/6MKg6

    人間関係、ナンバー争い、嘘、偽り、人の心、そして数多くの裏切り‥―。    

    目を逸らしてはいけない。ここで生きていくには、全てぶち当たる試練なんだ。

    2007-09-13 04:24:00
  • 29:

    ◆qKVw/6MKg6

    そして、君に出会えたこと。あたしは、誇りに思っている。決して後悔なんてしてない。

    あの頃、確かにあたしは君の傍にいたこと。       

    あたしは忘れたくない。

    2007-09-13 04:27:00
  • 30:

    ◆qKVw/6MKg6



    2007-09-13 04:27:00
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