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  • 1:

    ◆0eliurtmUc

    変わってく私、変わらない気持ち…

    2007-09-23 05:54:00
  • 2:

    ◆0eliurtmUc

    大阪へ出て来た18の春、私わ梅田でキャバクラのスカウトをされた。

    当時の私わ田舎から出たばかりで、それなりに化粧わしてたけど、まだまだ全然垢抜けてない素朴な女の子だった。

    2007-09-23 05:55:00
  • 3:

    ◆0eliurtmUc

    水商売なんて、まったく知らない世界だったけど、キャバクラ=綺麗なお姉さんが勤める所 という認識わ何となくあった。

    だから、梅田をジーパンで歩いてた私わ、最初、スカウトのおじさんの《やってみない?夜のぉ仕事》という言葉が、自分に向けられたものだというのに気づいた時は、すごく驚いた。

    もちろんそんな気はなく、断ったが、当時何にも知らなかった私わ、《スカウトやキャッチの行為を無視する》という発想が無く、困りながらも立ち止まり、はい、はい…と話に耳を傾けてしまった。

    2007-09-23 05:56:00
  • 4:

    ◆0eliurtmUc

    確かにその日わ、バイトを探す為梅田に来ていた。

    春から通う専門学校が梅田にあったから、学校帰りに働けるバイトを何か探そうと思い、地下街なんかをブラブラしていた。

    その矢先にスカウトである。

    2007-09-23 05:57:00
  • 5:

    ◆0eliurtmUc

    家が貧乏だった私わ、進学をためらったが、《まだ若いんやから、田舎にとどまってたらだめや。大阪か東京へ行って来い》と寛容な父に背中を押され、クラスメートの女の子達は、みんな親に反対されて田舎で進学を決める中、異例の大阪行きだった。

    でも、マンションを借りて生活するほどの余裕は無くて、大阪に住んでいるおじいちゃんの家で居候する事になり、入学式の前の日に、母と二人で大阪へ向かった。

    2007-09-23 05:59:00
  • 6:

    ◆0eliurtmUc

    スカウトをされたその日も、ほんの数分前まで、母親と一緒にいた私。

    入学式の帰りで、大量の教科書を受け取った私わ、荷物が重たく、母に電話して、迎えに来てもらったのだった。

    私が《まだ梅田ウロウロしてたいんだけど》と言うと、母わ《気を⊃けて帰っといでね》と言い、重たい教科書の入った紙袋をよいしょと掲げながら、一人で持って帰ってくれた。

    2007-09-23 06:01:00
  • 7:

    ◆0eliurtmUc

    そんな母の後ろ姿を見ていた私わ、ふと我に返り、《こういうの出来ないんで!》とスカウトのぉじさんへ言い返した。

    が、《大丈夫だよーみんなこの仕事初めての子ばかりゃから!めっちゃ稼げるねんで(^^)》と話しながら、携帯で電話をしだした。

    強引な人だな…と思っていると、おじさんが《来た来た》と言うので、手招きしてる方向を見ると、スーツ姿の、ものすごくかっこいいお兄さんがやって来た。

    2007-09-23 06:03:00
  • 8:

    ◆0eliurtmUc

    田舎から出て来て、最初に見たイケメン。

    携帯で喋りながら歩いてたその人わ、《じゃぁね、はーい。また連絡するな!》と言って電話を切り、《おはようございまーす!》と私たちを見て挨拶。

    喋ってた携帯を指さして、《今の子ゃばい。昨日声かけてんけど、ヤンマガ出てるねんて。めっさ可愛い!》とか言いながら笑ってて、その笑顔もまた、私をドキドキさせた。

    2007-09-23 06:04:00
  • 9:

    ◆0eliurtmUc

    《話の続きわこの人とよろしく〜》とぉじさんわ言うと、梅田の人混みの中に消えて行った。

    いきなり私わイケメンと二人きりに。

    と言っても、声をかけられ立ち止まっていた場所わ、阪急百貨店前。

    2007-09-23 06:05:00
  • 10:

    ◆0eliurtmUc

    昔わ今ほどスカウトの取り締まりが厳しくなくて、あの辺りにわ、黒服と呼ばれるスカウト集団が、束になって現れていた。

    人通りの激しい百貨店前で、スーツ着たイケメンに話しかけられる、田舎者の女の子…。

    その構図わ、はたから見れば、もろにスカウトが女の子を餌食にしてる…。そんな感じだったと思う。

    2007-09-23 06:06:00
  • 11:

    ◆0eliurtmUc

    断るつもりで何度も話したが平行線で、イケメンわ、《2〜3時間働いてみて、決めたら?》の一点張り。

    《給料わその場でもらえるよ〜》と言われ、あまりにしつこいのと、どんなものかと言う興味も重なって、結局OKしてしまった。

    時間わ三時。

    2007-09-23 06:07:00
  • 12:

    ◆0eliurtmUc

    《面接したら、ちょうどいい時間ゃな。夕方五時から働こか!八時くらいまで、いける〜?》と言われ、

    《八時だったら、帰りわ九時くらいですよね。母に電話します》と私が携帯を取り出すと、

    《えっ!親わ絶対反対するから、やめとき!言わんとき!》と慌てて止められた。

    2007-09-23 06:08:00
  • 13:

    ◆0eliurtmUc

    《あっ、帰る時間を連絡するだけです…》と言うと、《ぁぁなるほどね。了解》とイケメンわ笑った。

    《帰りが九時になる》と言う私の電話に、母わ疑うことなく《分かったよ、気を⊃けてね》と言ってくれた。

    何だか気持ちがモヤモヤしたが、電話が済むと、イケメンわ《行こか!》と言って切符を買ってくれ、電車へ乗った。

    2007-09-23 06:10:00
  • 14:

    ◆0eliurtmUc

    電車の中でも、イケメンの携帯わ鳴り止まない。

    《この仕事してると、毎月の携帯代がめっちゃかさむねん。先月請求なんぼやったと思う?七万やで!家賃やーん!みたいな。》と言いながら、イケメンわメールを打ち始め、送信したと思ったら、すぐに掛かってくる電話に対応していた。

    イケメンの仕事内容についても、まだよく分かっていなかった私だが、電車に乗ってる間も、ずっとイケメンわ忙しそうで、私わ今から連れて行かれるお店の事など、何も聞かされないまま、駅へ到着してしまった。

    2007-09-23 06:11:00
  • 15:

    ◆0eliurtmUc

    電車を降り、着いたその場所わ繁華街。昼間なのにギラギラとした看板が目に⊃いて、赤や黄色やピンクの文字で、《テレクラ》だの《セクシー○○》だの書かれたお店が、軒を連ねた。

    ゴミも落ちてたり、狭い感覚で沢山のお店が並んでて、看板を立てて呼び込みをしてるおじさんから、清潔な印象わ感じられない。

    まったくその場に似つかわしくない、清楚な顔立ちをしたイケメンわ、それでもスイスイと人混みをすり抜け、慣れた足取りで店へと進んで行った。

    2007-09-23 06:12:00
  • 16:

    リョウ

    読んでます??
    頑張ってください??

    2007-09-23 07:49:00
  • 17:

    ◆0eliurtmUc

    リョウさん?嬉しい!ぁりがとうございます

    2007-09-23 11:56:00
  • 18:

    ◆0eliurtmUc

    《まずわ面接な》と言われ、店の裏にあるビルの螺旋階段を上がり、看板があるのに空き部屋になっている、暗い赤ーい照明の部屋で待たされた。

    《座って待っててな〜》と言われ、私わその部屋で一人待つ事に。

    ソファーが不自然な配置で並べられ、全面鏡張りの怪しい部屋。ナース服やチャイナドレスやバドガールの衣装が山積みされていて、ソファーの真ん中に置かれたテーブルにわ、タバコの吸い殻がてんこ盛りだった。

    2007-09-23 11:57:00
  • 19:

    ◆0eliurtmUc

    座って部屋を見渡していると、ドアが開き、イケメンが《じゃー頑張って!また夜連絡ちょうだいな!》と言って離れ、《初めまして〜支配人です〜》と、ちょびひげを生やしたおじさんがやって来た。

    履歴書用紙を書かされ、仕事の内容を聞かされたが、私が連れて来られたお店。それわキャバクラに属するが、厳密に言うと、お触りのあるキャバクラ。セクシーキャバクラと言うことだった。

    何もかもが未知の世界だった私。

    2007-09-23 11:58:00
  • 20:

    ◆0eliurtmUc

    《お客さんの上にまたがったり、キスをしたり、触られたり。お酒わ呑まなくていいよ〜》と説明を受けながら、素直に聞き入ってしまった。

    《ドレスに着替えてね》と言われ、おじさんに渡された赤いスリットドレスに着替えた。部屋じゅう鏡張りになっていたので、着替えて壁に近づき、暗くて赤い照明に映し出される、スリットドレスを着た自分を眺めた。

    大人びたドレスに、アンバランスなまだ若い自分。赤いドレスの色味わ悪くなかったけど、深くスリットの入ったデザインが、すごく恥ずかしかった。

    2007-09-23 11:59:00
  • 21:

    ◆0eliurtmUc

    着替え終わるまで外に出てくれていた支配人に、《着替えました》と言ってドアを開けると、《抱っこちゃんスタイルって分かる?やってみようか》と言われ、講習が始まった。

    とにかく恥ずかしかったけど、言われるがまま支配人のひざにまたがり、キスをしたり、ドレスを少し脱がされ、触られた。

    恥ずかしくって、終始顔をうつむけたままだったけど、《大丈夫だね、やれるね》と言われ、お店へ連れて行かれた。

    2007-09-23 12:00:00
  • 22:

    ◆0eliurtmUc

    すぐ裏にあったお店わ、ドアを開ける前からものすごい爆音が漏れていて、ドアを開けると、更にものすごい爆音。熱気。マイクパフォーマンスも凄くて、何が何だか分からないままその熱気に触れた私わ、テンションが上がった。

    入り口横のカーテンで仕切られたスペースから、マイクを付けた男の人が顔を出し、《ぉ〜!初めましてだねえ!よろしく〜》と、ものすごい笑顔で握手してくれた。

    《体験入店のリカちゃんです》と支配人に紹介され、《オッケーりかちゃん、山内です〜よろしくね〜》とまた握手された。

    2007-09-23 12:02:00
  • 23:

    ◆0eliurtmUc

    私の源氏名わリカ。

    《女の子にも紹介するから》と待機室へ連れてかれ、何も分からないまま、《リカです》と挨拶をした。みんなものすごく綺麗で、大人っぽかった。そして愛想もめちゃくちゃ良くて、《よろしくね〜!》と笑顔で返してくれた。

    けたたましい程の音楽がガンガンにかかった、赤い照明のお店。

    2007-09-23 12:03:00
  • 24:

    ◆0eliurtmUc

    何も仕切りがない状態で、店じゅうにソファーが並べられ、沢山の女の子が、お客さんの上にまたがってキスしたり、体を触られてたり…。

    初めて見るその異様な光景に、私わ衝撃を受けた。

    《まなちゃんのお客さんの席のヘルプに付いてもらうから!》と山内さんに言われ、指さされた席を見ると、まなちゃんがお客さんにキスをして、席を立ち上がった所だった。

    2007-09-23 12:05:00
  • 25:

    ◆0eliurtmUc

    《すごく優しい人ゃから頑張れ〜》と、まなちゃんに笑顔で肩を叩かれ、慌てて五枚書かされた名刺の中の一枚を、そのお客さんに渡し、席に着いた。

    今もうっすらと覚えているけど、初めて着いたヘルプのそのおじさんわ、まなちゃんの言う通りすごく優しかった。ニコニコと笑顔で、《初めてのお客がこんなおじさんで、ごめんね〜》なんて笑いながら、キスも触られることもなく、10分かそこらお話をして、名前を呼ばれた。

    私がその日着いたお客さんは他に二人で、あとわ待機室で女の子と喋ったりしてたら、時間が来た。

    2007-09-23 12:06:00
  • 26:

    ◆0eliurtmUc

    《リカちゃんお疲れ様〜!給料わリストでもらってね!》と言われ、席を立ち、二万もらって着替えてお店を出た。

    あっという間の三時間。

    でもものすごく濃厚だった。昼からギラギラしていた繁華街わ、夜の八時になると更に輝きを増し、空を見上げてもうっすら明るい気がした。お店の人が駅まで送ってくれたのでお礼を言い、電車に乗っていたら、イケメンから着信。

    2007-09-23 12:08:00
  • 27:

    ◆0eliurtmUc

    《お疲れ様!どうやったー?》
    《えっと、何かあっという間でした》
    《ぁははっ!ほんまに!じゃあこれからも、やってけそう?》
    《うーん……はい……》
    《まあ無理せんでもいいで!また考えたら連絡ちょうだい!週に一回でもかまわんし、今日みたいに、すぐに帰ってもいけるし!》と言われ、いろいろ考えていたら、あっという間に家へ着いた。

    2007-09-23 14:36:00
  • 28:

    ◆0eliurtmUc

    着替えたり、お店の人と話しながら帰ったから、九時に帰ると言っておきながら、帰宅したのわ23時前だった。

    母わ起きて待っててくれて、《イチゴ食べる?》と言って、イチゴを洗って出してくれた。

    何でもないフリをしながら食べたが、さっきまでお店でして来た事を思い返すと、後ろめたさで心がモヤモヤ…。

    2007-09-23 14:37:00
  • 29:

    ◆0eliurtmUc

    セクシーキャバクラ。いわゆるセッキャバの体験入店をした二日後から、学校わ本格的に始まった。

    と言っても初日わオリエンテーリングで、ほとんど授業らしい事わしなかった。クラスメートになる子たちとバスに乗り、食事をして、お風呂に入ったり夜喋ったり。私と同じように、田舎から出て来た子も多かったように思うが、周りを見渡して聞こえて来るのわ、関西弁ばかりで緊張した。

    でも、一緒のグループになった三人がすごく優しくて、学校が始まっても、そのままその三人と行動を共にした。

    2007-09-24 01:35:00
  • 30:

    ◆0eliurtmUc

    母わ私がオリエンテーリングへ向かう日に田舎へ帰った。

    《子離れできるように、頑張る??》とメールをくれたのが、妙に可愛らしかったけど、それわそれで淋しかった。

    セッキャバのバイトにわ、週に三回行きだした。居候なので、最初わ気を遣って十時に帰宅していたが、八時にわ寝てしまうおじいちゃんだし、刺激のある夜の世界が楽しくて、徐々に、オープンからラストの時間までフルで入るようになった。

    2007-09-24 01:36:00
  • 31:

    ◆0eliurtmUc

    と言ってもブランド物に興味わ無いし、居候で生活費もかからないから、取り分け目立った出費も無い。

    この頃若くてとにかく食欲が旺盛だったせいか、学校の休み時間にわ、毎回売店でラーメンだの買って、ばんばん食べていたから、主な出費わ食費くらい?あとわプリクラ、カラオケ…。

    それくらいで、学校もバイトも忙しく、充実しながら楽しい毎日を送っていた。

    2007-09-24 01:40:00
  • 32:

    ◆0eliurtmUc

    週払いの給料わ、封を開けないまま、またすぐ次の給料日が来て、の繰り返しで、何の目的もないまま、気づけばタンス貯金で、二百万貯まっていた。

    当時の私わ背伸びしたくて、毎月必ずJJを買ってわ、隅から隅まで読み尽くした。ファッションやメイク特集を読みまくり、影響を受けやすい私わ、雑誌で薦められていたそのままのコーディネートで服を買ってみたり、お店の女の子が使ってるシャネルのファンデーションを真似して使ってみたり……

    とにかく大人びた感じに見せたくて必死だった。

    2007-09-24 01:42:00
  • 33:

    ◆0eliurtmUc

    でも、お金に困らない日々を若干18で手に入れてしまい、こんなバイトもあるって事実に味を占めてしまった私わ、少しずつ変わって行った。

    2007-09-24 18:25:00
  • 34:

    ◆0eliurtmUc

    おじいちゃんわ、相変わらず朝早く起きて夜早く寝る生活。バイトがない日に早く帰ると、耳の遠いおじいちゃんわ、ものすごい大音量で、時代劇を観てたりした。

    18歳の私と、72歳のおじいちゃん。

    その年の差で生じるギャップわひどくて、同居することの難しさを痛感するのわ、居候を始め、私が大阪での生活に慣れだしてすぐだった。

    2007-09-25 01:13:00
  • 35:

    ◆0eliurtmUc

    大阪へ出してくれた私の両親も、ひとまず住む場所が確保された事に一安心、という感じで、実際その先の心配までわ、まだ想像してなかったように思う。

    おばあちゃんを亡くして一人の生活が長くなっていたおじいちゃんわ、少しボケていた。

    物忘れがひどい。おじいちゃんの年齢なら、それわ仕方がない事だが、毎日何度も同じ話をされたり、同じ質問を繰り返されたりすると、気持ちに余裕がない時や、急いで支度している朝なんかわイラッとした。

    2007-09-25 01:14:00
  • 36:

    ◆0eliurtmUc

    ある朝二階で化粧をしていた私わ、化粧を終えたらすぐに朝ご飯が食べれるようにと、電子レンジでご飯を温めながら、支度をしていた。

    が、レンジの中にご飯があることに気づいたおじいちゃんわ、二階の私に向かって《おい、レンジにご飯が残ってるぞ〜》と何度も言い、《分かってるよ!》と返す私の声が聞こえないのか、《冷める冷める》と言って、私キッチンに下りて来るまで、30分もお茶碗のご飯を温め続けていたのだ。

    ご飯わべちょべちょに溶けてしまった。

    2007-09-25 01:15:00
  • 37:

    ◆0eliurtmUc

    《うわーおじいちゃん、私もう温めのボタン押してたやんか。二分で十分なのに…》

    ふと冷蔵庫を見ると、買っておいたサラダやお惣菜が見当たらない。

    《おじいちゃん、ここに入れてたサラダとか知らん?》と聞いても、《あ?あ?》と何度も聞き返されるばかりでラチがあかず、ふと冷凍庫を開けると、食べかけでフタの開いた海草サラダが、マヨネーズがかけられた状態で、ガチガチに凍らせてあった。

    2007-09-25 01:18:00
  • 38:

    ◆0eliurtmUc

    唖然とした私。サラダわ食べれる訳もなく、朝ご飯の無くなった私わ、イライラしながら学校へ向かった。

    その日わバイトが入っておらず、三時頃家へ帰ると、扉の前から、また時代劇の大音量が聞こえている。

    《朝わイライラ当たって悪かったなあ。おじいちゃんも悪気があってした事じゃないし、謝ろう》

    2007-09-25 01:22:00
  • 39:

    ◆0eliurtmUc

    そう思い扉を開けようとしたが開かない。あれ?と思い、鍵をかけ直して再度扉に手をやるが、開かない。

    ずっと一人暮らしをしてたおじいちゃんの家にわ、老人を狙って訪問して来る宗教や何かの勧誘がよく来ていた。私が一緒に住みだしてからも、まだそれを知らない勧誘のお姉さんなんかが、たびたび訪れていた。

    おじいちゃんわ滅多に来客に応じないし、扉に鍵をかけたら、内鍵もかけて部屋にこもる。そんな生活に慣れていたから、私と暮らし始めてからも、癖で内鍵もかけてしまっていたのだ。

    2007-09-25 01:24:00
  • 40:

    ◆0eliurtmUc

    《最悪…》

    何度も扉を叩いておじいちゃんを呼ぶが、耳の遠いおじいちゃんが付けている大音量のテレビのせいで、まったく音が届かない。

    携帯から電話をかけても、出ない。居留守。イライラしながら何度も電話して、30分くらい立ち尽くしていたら、やっと電話を取ってくれた。

    2007-09-25 01:25:00
  • 41:

    ◆0eliurtmUc

    何度も《あ?あ?》と言われまたイライラした。《内鍵を開けて》の簡単な要求が、テレビの大音量で聞き取れずいるおじいちゃん。

    《テレビの音下げてよ!》イライラした私わ怒鳴った。

    家の横を通ったおばさんが、ビックリしながら私の様子を伺っていた。

    2007-09-25 01:27:00
  • 42:

    ◆0eliurtmUc

    やっと気づいたおじいちゃんわ、ガタガタと玄関へやって来て、《かんにんかんにん》と扉を開けてくれたが、さっき謝ろうと思っていた気持ちわ消え、《ただいま》とだけ告げて、部屋へ上がった。

    2007-09-25 01:30:00
  • 43:

    ◆0eliurtmUc

    おじいちゃんに悪気わない。分かっていても、まだ18の私わ、自分の毎日で精一杯。60近くも年の離れたおじいちゃんとの二人暮らしで、ボケたおじいちゃんの行動を理解しろと言うのわ、厳しいものがあった。

    トイレが流してなかったり、バイトから帰って夜キッチンの明かりをつけると、きちんと処理しきれていない台所周辺の生ゴミの周りを、ゴキブリが這い回っていたり。

    田舎育ちな私だが、虫やゴキブリわ大の苦手で、この時ばかりわ泣いてわめいた。

    2007-09-25 01:31:00
  • 44:

    ◆0eliurtmUc

    サラダを凍らされたり、おかずをめちゃくちゃにされるなんて事わ、あれから何度もあったし、落ち着いて家で食事ができなかった私わ、放課後クラスの友達と夕飯を食べるようになった。

    でも、クラスの友達わみんな実家組だったから、毎回のように付き合ってもらう訳にわいかず、そんな日わ、出勤前の、バイトの店の子と待ち合わせ食事した。

    バイトわ相変わらず刺激的で、楽しかった。毎日客入りがすごかったので、売り上げが百万を越える日が何度も続き、そのたび店長が《お疲れ様〜!》と言って、近所のお店で女の子全員にご飯を奢ってくれた。

    2007-09-25 01:34:00
  • 45:

    ◆0eliurtmUc

    送迎の車に乗ると、店長や山内さんが《リカにゃんお疲れ〜》とか言って握手してくれたり、車が動き出してからもずっと、手を振ってくれる。

    大事にされるというか、指名を取る子に対してわ、すごく甘やかしてくれるお店だった。

    月に一度のミーティングでわ、何かしら《○○賞》と称して表彰されて、賞金をもらった。

    2007-09-25 01:42:00
  • 46:

    ◆0eliurtmUc

    雑誌やコスプレイベントのポスターの撮影にも協力してたので、学校が終わってから、夕方撮影までの空き時間に、店長が個人的に食事へ連れて行ってくれたりもした。

    オープンラストの出勤だったので、顔見知りの女の子も増えていった。

    そんな感じで、学校とバイトの両立わ充実してたけど、家でのおじいちゃんとの生活だけが苦痛だった。

    2007-09-25 01:43:00
  • 47:

    ◆0eliurtmUc

    今まで、毎年夏にだけ遊びに行ってた、おじいちゃんの家。それが私の住所となり、今まで一年に一度、短期間で会っていたおじいちゃんが、毎日顔を見合わせる同居人という関係に変わった。

    それわ想像以上の大きな変化で、ズレがありすぎて、どう修正していけばいいのか分からなかった。

    家にいたら意味の分からない事をされて耐えられなかったし、私わ帰宅が億劫になって、毎晩のように遊びかバイトで時間を潰した。

    2007-09-25 01:45:00
  • 48:

    ◆0eliurtmUc

    だけど、クラスの友達わほとんど実家組。バイトもせずに、毎日遊んでる子ばかりだった中、《おじいちゃんとの居候生活の大変さ》なんて重たい話題を語っても、共感してもらえる訳でも、解決方法が見⊃かる訳でもなく、誰にも言えなかった。

    そんな気持ちでクラスの子と遊んでいても、虚しかったし、仲がいいようで、本音の部分までわ打ち明けきれない、うわべのような友達関係に悲しくなった。

    泣きながら母に電話をしたが、自営業の父の仕事がかなり厳しく、毎月赤字の状況で、共働き生活を始めた所だったので、なかなか連絡が取れない。

    2007-09-25 01:46:00
  • 49:

    ◆0eliurtmUc

    やっと連絡が取れた時、《大変だったね。でももう少し頑張ってみて欲しい。神戸におばさんたちが居るでしょ?いつでも遊びにおいでと言ってくれてるし、気分転換に出かけてみたら?》と、親戚のおばさんの家の住所を教えてくれた。

    確かに毎日悩みすぎたかも知れない。気分転換が必要だと感じた。

    おばさん達とわ、あまり交流わないけど、小さい頃に、家族ぐるみで旅行をしたことがあったので、悪い印象わない。

    2007-09-25 01:48:00
  • 50:

    ◆0eliurtmUc

    私わおばさんの携帯に連絡を入れて、後日泊まりに行く約束をした。

    おばさんわとても歓迎してくれて、息子の車で迎えに行くからと、大阪まで迎えに来てくれた。

    おじいちゃんに、おばさんの所へ泊まりに行くことを告げると、いつ帰って来るのかを聞かれ、《17日》と答えると、すぐに階段下にかけてあるカレンダーに○をして、《あゆみ(←私の本名)帰宅》と書き込んでいた。

    2007-09-25 01:49:00
  • 51:

    ◆0eliurtmUc

    神戸へ行くのわそれから十日後だったが、毎日顔を合わすたび、《15日に行って、17日の夕方帰って来るんやな》と聞いて来たので、《もしかして淋しいのかな?》と思うようになった。

    あんなに辛く当たってた私なのに、それでも居なくなるのが淋しいんだ…。

    胸が痛んだ。

    2007-09-25 01:50:00
  • 52:

    ◆0eliurtmUc

    ごめんなさい、55レス目の文章訂正です

    ×おばさんわとても歓迎してくれて、息子の車で迎えに行くからと、大阪まで迎えに来てくれた。

    ○おばさんわとても歓迎してくれて、《大阪まで、息子の車で迎えに行くから》と言ってくれた。

    2007-09-25 01:57:00
  • 53:

    ◆0eliurtmUc

    神戸のおばさんの家わ大きくて、すごく綺麗だった。おじさんわ定年で仕事を退職していたが、おばさんが小学校の教師をしていて、娘さんも息子さんも、それぞれ塾を経営していて、お金持ちだった。最近80万かけてリフォームしたというキッチンとリビングわ、すごくお洒落で羨ましかった。

    狭い、汚いおじいちゃんの家に住む私。悩みを打ち明けるのわ、恥ずかしかったし勇気がいったが、精一杯、なるべくおじいちゃんばかりを責めないように意識して、近況を全部話した。

    《確かにあのおじいちゃんわ頑固な所があるし、大変やったでしょう。おばあちゃんが亡くなってからだいぶ経つし、余計に酷くなってるのかも。何にせよ、18歳の女の子が悩む内容じゃないよ》と、すごく私を気遣ってくれた。

    2007-09-25 03:41:00
  • 54:

    ◆0eliurtmUc

    そうなんよ。私にわ荷が重すぎる悩みだったの…。

    その言葉がピッタリな気がして、今まで溜めてた辛いと思う気持ちが、一気に溢れて涙に変わった。

    《でもな、おじいちゃんずっと一人やったから、孫のあゆみちゃんが来てくれること、すごく楽しみやったみたいよ。春からあゆみが来るんやって、家に電話をして来てんもん。

    2007-09-25 03:42:00
  • 55:

    ◆0eliurtmUc

    そやから、しんどかったと思うけど、おじいちゃんの気持ちも、悪気わなかったんやてこと、分かってあげといてな》

    涙の止まらない私わ、少し取り乱していたけど、確かにおじいちゃんばかり責めてわだめだと思った。

    私がイライラして怒鳴った時、おじいちゃんだって辛かったろうし、不快な思いをしただろう。戸惑っただろう。

    2007-09-25 03:43:00
  • 56:

    ◆0eliurtmUc

    でも、母が綺麗に片付けてくれたキッチンも洗面所もお風呂も、ぐちゃぐちゃにされた。

    毎日必ず泣きたくなるような場面に出くわしていたから、なかなかおじいちゃんのことを思いやれず、《これわこうして欲しい》とかルールを決めたり、歩み寄ることが出来なかった。

    悪気のないおじいちゃんの行動に、いつもイライラしてばかりだった。

    2007-09-25 03:44:00
  • 57:

    ◆0eliurtmUc

    それわ私が反省すべき所だったが、

    家を出たい。綺麗な部屋で、一人暮らしがしたい―。

    そう強く思うようになった。

    2007-09-25 03:46:00
  • 58:

    ◆0eliurtmUc

    そもそもお金わ十分にあったし、無理して居候する必要がないなと思い、気持ちが切り替わり、そこから私の行動わ早かった。

    おばさんの家で二泊お世話になってから、大阪に戻り、目に付いた不動産屋を三軒ほど回り、パンフレットをもらいながら、間取りや家賃を見比べ、あれやこれやと悩んだ。

    学校にもバイト先にも近い梅田に引っ越すか迷ったけど、おじいちゃんちの周辺わ駅も近く、コンビニやスーパー、薬局、病院も歩いて行ける距離にあり、充実してたので、ここを離れてしまうのわ捨てがたかった。

    2007-09-25 03:48:00
  • 59:

    ◆0eliurtmUc

    でも、引っ越しをして、一人暮らしが始まってからの生活を夢見ると楽しみで、早く新居を見⊃けて、夢を実現させたかった。

    結局三軒回った不動産屋のうち、優しい人柄のおじさんが出てくれた所で物件を選び、見学に行って、即入金。

    間取りわ六畳のワンルーム。広くわないが、立地が良かったし、とにかく今わ行動に移したかった。

    2007-09-25 03:49:00
  • 60:

    ◆0eliurtmUc

    入居の日取りを決め、鍵をもらった。

    おじいちゃんにわチラチラ不動産屋の話をしたりして、近々引っ越すつもりでいることを話していたが、いざ入居の日取りを決めてしまうと、ハッキリ伝えるのに、勇気がいった。

    親やおばさんにわ、引っ越すことを話してあった。

    2007-09-25 03:50:00
  • 61:

    ◆0eliurtmUc

    むろん親にわ引っ越し費用など頼れなかったし、十分に貯金があった私わ、頼る必要など無かった。

    お金の心配わ無かったが、大金を使うことに対して怪しまれないように、引っ越しを決意したその日から、母にわしきりに、メールで《貯金を頑張っている》とアピールしておいた。

    不動産屋さんがすごく理解のある人で良くしてくれたので、敷金礼金かなりおまけしてもらったと言い、おばさん達も安心してくれた。

    2007-09-25 03:51:00
  • 62:

    ◆0eliurtmUc

    そして、私から事情を聞いたおばさんが、気を回してくれたのだろう。

    おじいちゃんわ大まかな内容を知っていて、《よっしゃよっしゃ、ちょっと待っときい》と椅子から立ち上がり、棚をガサガサしはじめた。

    《なんぼがええのか分からんけども》と言って、ポーチから取り出した十万円を、私に差し出した。

    2007-09-25 03:52:00
  • 63:

    ◆0eliurtmUc

    そんなこと考えてくれてたなんて思いもしなかった私わ、ビックリしたのと同時に、とても心が痛くなり、申し訳なくなった。

    いきなり春から住ませて欲しいと田舎から押し掛け、生活のギャップに戸惑い、キレて怒鳴ったこともあった。そして、半年もしないうちに、私の我がままで引っ越しを決め、家を出て行く。それも、おじいちゃんちから目と鼻の先のマンションへ…。

    一度キッチンでゴキブリが大量発生した夜、いよいよ耐えられなくなり大泣きをした。もう限界だと母に電話をしたが、繋がらず、繋がらないまま、うわごとのように、もう嫌やこんな家限界や、と泣いた事がある。

    2007-09-25 03:54:00
  • 64:

    ◆0eliurtmUc

    ぎしぎしっとベッドがきしむ音がして、隣の部屋で寝てるおじいちゃんが起きた気がしたが、もうそんなこと気にしてられなかった。

    思えば翌朝、いつもベラベラ話しかけて来るおじいちゃんが、黙りっぱなしだった。

    《あの日から、こうなることに気づいていたのかな…》

    2007-09-25 03:55:00
  • 65:

    ◆0eliurtmUc

    新しい部屋が見⊃かり、気持ちに余裕が生まれた私わ、やっと今、その時のおじいちゃんの変化を、振り返ることができた。

    十万円を見て、涙が出た。

    《大丈夫だよ!》と受け取りを断ったが、《えーからえーから》と、私の両手を握って、裸のまんまの十万円を渡してくれた。

    2007-09-25 03:57:00
  • 66:

    ◆0eliurtmUc

    なんて言われたが、おじいちゃんの顔わ照れながら、嬉しそうだった。

    おじいちゃん、ほんとにありがとう。ごめんね…。

    翌週、荷物を運び終わった新しいマンションへ、私わ引っ越した。

    2007-09-25 04:00:00
  • 67:

    ◆0eliurtmUc

    居候中に買った家電用品わまったく無かったので、しいて増えたものと言えばコテ。カーラー。ドライヤー。ヘアアイロン…

    カバンと紙袋二袋分の荷物で、私の引っ越しわ完了した。

    2007-09-25 15:53:00
  • 68:

    ◆0eliurtmUc

    早急にいる電子レンジと冷蔵庫をまず買い、百均に寄ってお茶碗、お皿…と買い始めていったら止まらず、引っ越し初日わすぐ夜が来た。

    コンビニでお弁当を買って食べ、夜になり、シャワーを浴びて、いざ寝ようという時になって、ベッドを買ってなかったことにやっと気づいた。

    仕方ないのでそのまま床に寝て、次の日改めてソファーベッドを購入。

    2007-09-25 15:54:00
  • 69:

    ◆0eliurtmUc

    テレビも買ったし、トイレ用品、お風呂用品、棚や自転車…

    いるなと感じた物わ、思いついたまま片っ端から買い揃えていった。

    液晶テレビわ20万程したと思うが、《バイト先の先輩に、中古で譲ってもらったと言おう》とか、親に見られた時の言い訳を考えながら、キャッシュで買った。

    2007-09-25 15:55:00
  • 70:

    ◆0eliurtmUc

    引っ越しを済ませ、夏休みに入ると、それまで多くて週三だったバイトを、週四週五に増やした。

    セッキャバのバイトわもちろん秘密。

    クラスのみんなにも秘密にしてたけど、田舎から一人で出て来て、《オール仕送りでまかなっている》なんて言うにわ、もう私わ物持ちが良すぎた。

    2007-09-25 15:56:00
  • 71:

    ◆0eliurtmUc

    お店で気の合う友達が出来、その子らの影響を受けて、ネイルサロンへ行ってごてごてのスカルプをしたり、毎週のように百貨店巡りをしてわ、おそろいで新作の洋服や化粧品を、買いまくっていたのだ。

    でも、カラオケとか居酒屋とか、場所が特定されるバイト先わ言えないと思い、神戸のおばさんの娘さんの塾で、アシスタントをしているとか言っておいた。

    徐々にズレていった金銭感覚。

    2007-09-25 15:57:00
  • 72:

    ◆0eliurtmUc

    お店に在籍している女の子の平均年齢わ若く、私と同じ18歳や19歳の子ばかりだった。なんか今でわ信じられないが、21歳の子が《おばちゃん》とかってからかわれたりするような、年齢層の低いお店だった。

    でもみんな年に不釣り合いな給料をもらっていて、待機室にわ、CHANELやエルメスが、ズラリと無防備に並んでいた。

    私わ初めて買ったヴィトンをそのまま愛用していたが、その頃特に仲良くしていた友達の影響をかなり受けて、エルメスにはまった。

    2007-09-25 15:58:00
  • 73:

    ◆0eliurtmUc

    指名がどんどん増えていった私わ、スライド式で、毎月時給が上がっていって、八千円にまで上がった。一万越えしてる女の子も少なくなかった。

    引っ越しで出費がかさんだはずが、貯金わ増えていた。

    毎日のように散財してるのに、お金が無くならない…。

    2007-09-25 16:00:00
  • 74:

    ◆0eliurtmUc

    欲しいと思えばすぐに買えちゃう、そんな生活だった。

    キスしたり触られたり、もちろんお客に嫌なタイプだっている。接客していて、気が滅入る日もあったが、そのしんどさに見合った、むしろそれ以上のお金をもらっていたから、《就職決まったから》とか《彼氏が出来たから》と言ってお店を辞めてく女の子を見てわ、《えー勿体ない》と思った。

    大学生より夏休みわ短かったが、快適な一人暮らしが始まり、バイトと遊びでものすごく楽しい18の夏だった。

    2007-09-25 16:01:00
  • 75:

    ◆0eliurtmUc

    大阪での毎日に明け暮れ、田舎にわ帰らなかった。《残念!冬を楽しみにしてるからね》と母に言われた。

    秋から再開した専門学校わ、二年制だったので、一年の段階から、就職についての授業も加わっていた。そこでセミナーや、卒業生の就職体験談なんかを聞いた私わ、唖然とした。

    私が週に稼ぐお給料の半分くらいが、初任給だと語るのだ。

    2007-09-25 16:02:00
  • 76:

    ◆0eliurtmUc

    それなのに、拘束時間わ朝から長く、残業もあり、服装身なりに関しても厳しい。

    更にわその初任給から、税金などが差し引かれ、ほんとに10万越えるか越えないかくらいのお給料だった。

    《今こんなに稼いでるのに、卒業してから就きたい仕事が、そんなに安月給だなんて…》

    2007-09-25 17:03:00
  • 77:

    ◆0eliurtmUc

    仕事のやり甲斐が、給料の安さを我慢できるくらい魅力のあるものにわ、感じられなかった。

    それに、夏にバイト中心の生活を送ったおかげで、すっかり夜型になっていた私わ、朝が起きれず、毎日クラスの友達から鬼電もらいながらも、寝坊して、遅刻する日が続いた。

    ある日バイト後朝まで遊んで帰って来た日、寝ずにそのまま登校するつもりが、昼まで寝てしまい、仕方なくお昼休みに学校へ向かった。

    2007-09-25 17:04:00
  • 78:

    ◆0eliurtmUc

    みんな食堂でお弁当を食べていると言うので、私も食堂へ向かった。

    昼からの授業わ一つで、教科書のいらない授業だったから、エールリュックひとつで行ったのが間違いだった…。

    食堂へ入るなり、周りのテーブルにいたメイク科の女の子たちが、私のエールリュックを一気に見⊃める。そしてヒソヒソと私の顔とカバンとを交互に見ながら、何やら話していた。

    2007-09-25 17:06:00
  • 79:

    ◆0eliurtmUc

    みんな食堂でお弁当を食べていると言うので、私も食堂へ向かった。

    昼からの授業わ一つで、教科書のいらない授業だったから、エールリュックひとつで行ったのが間違いだった…。

    食堂へ入るなり、周りのテーブルにいたメイク科の女の子たちが、私のエールリュックを一気に見⊃める。そしてヒソヒソと私の顔とカバンとを交互に見ながら、何やら話していた。

    2007-09-25 17:07:00
  • 80:

    ◆0eliurtmUc

    いいことを言っている空気でわとても無かったし、居心地が悪かった。

    私の科の子わ、ヴィトンもCHANELも知らないような、地味で大人しい子が多かったから、ヴィトンのカバンもCHANELのファンデーションも、何も言われなかった。

    《あゆわ派手ゃな〜》くらいに言われて、何だか派手キャラで確立されていたから、特にそれを咎められることもなく、そんな私を、みんな受け入れてくれていた。

    2007-09-25 19:46:00
  • 81:

    ◆0eliurtmUc

    一緒にいる時、他のテーブルの子たちわ化粧直しをしたり、雑誌を広げてお洒落の話をしたりしていたが、私のクラスの子達わ、彼氏いない歴=そのまま年齢のような真面目な子ばかりだったので、昨日見たテレビの話とか、そんな話ばかりだった。

    そんなクラスメートに囲まれながら、内緒で夜の仕事を始め垢抜けて行った私わ、浮いていて、話も服の趣味も何も合わなかったが、お店の子達と話すのとわまた違い、それわそれで楽しかった。

    でも、他の科の子たちからわ、ジロジロ見られる存在になっていた。

    2007-09-25 19:47:00
  • 82:

    ◆0eliurtmUc

    秋になり、隣のクラスと合同の授業が増えてからわ、ますます居心地が悪くなった。

    隣のクラスにわ、噂話が好きそうな、目つきの悪い男女四人組が居て、いつも私の方を見てわ、私の髪型、メイク持ち物なんか見て、話しているようだった。

    地味なクラスの友達たちも、さすがにその態度にわ、私と同様腹を立ててくれて、《なんか嫌な感じやなあ》と言っていた。

    2007-09-25 19:48:00
  • 83:

    ◆0eliurtmUc

    クラスの友達と気まずくない限り、私わ構わなかったが、授業を重ねるたびに、その四人組の嫌がらせわエスカレートして行って、授業が終わると私に近づき、《いいなーそのカバン、なんぼしたん?》などと、試すような口調で絡んで来た。

    面倒だった。

    クラスの友達の前で、バイトがばれるようなことになりたくない…。

    2007-09-25 19:49:00
  • 84:

    ◆0eliurtmUc

    でもある日、実習授業の先生に《そんなカバンその年で持って…》などと実習時間中に言われ、何も知らないクラスの子達が、《えっそのカバンがどうしたの?》という表情で、私に視線をやった時があった。

    先生や大人にわ、もうバイトがバレている気がして、後ろめたくなり、段々と授業を休みがちになった。

    そして生活わまたバイト中心。

    2007-09-25 19:50:00
  • 85:

    ◆0eliurtmUc

    田舎に残ろうと思った。

    恥ずかしくって、親に恋愛の相談なんてしなかった私だが、この時ばかりわ母に相談した。

    すると《まだ若いんだから、恋愛で自分の夢を諦めちゃだめ》と、大阪行きを後押ししてくれた。

    2007-09-25 19:54:00
  • 86:

    ◆0eliurtmUc

    彼に田舎で最後に会った日も、いつまで泣いても別れられず、《毎日連絡するからね!》と約束をして離れた。

    そうして誓い合ったのに、春から互いに新生活が始まると、連絡わすれ違い、減っていき、会ったのわ春先に一度だけ。

    まだ私の生活の中で、あまり恋愛の占める割合が大きくなかったんだろう。

    2007-09-25 19:55:00
  • 87:

    ◆0eliurtmUc

    お店の子たちの恋ばなを聞いたり、かっこいいお客さんが来ると騒いだり、《彼氏欲しー!》となったりするのが楽しかっただけで、まだ本当に彼氏が欲しい。恋がしたいの段階までわ、行ってなかったと思う。

    その彼氏にわ、ある日ふと、私から別れを告げた。

    おじいちゃんとの生活で一杯一杯になっていたのもあるけど、それからしばらく、私わ恋などしていなかった。

    2007-09-25 19:56:00
  • 88:

    ◆0eliurtmUc

    だがある日、お店に接待で遊びに来たお客さんに、一目惚れした。

    ごくごく普通のサラリーマン。

    電話番号交換禁止のお店だったが、初めて内緒で交換をして、お店が終わって家に着いたら、すぐに私から電話した。

    2007-09-25 19:57:00
  • 89:

    ◆0eliurtmUc

    嬉しくて、ドキドキしたのを覚えている。

    会ったばかりなのに、まだ互いを良く知らないせいか、すごく話が盛り上がって、気づけば三時間も話していた。

    私わすっかり夜が遅いのに慣れていたけど、向こうわ会社員。明日かも朝から仕事だ。

    2007-09-25 19:59:00
  • 90:

    ◆0eliurtmUc

    《ごめんね切るわ!》と切ろうとしたが、《いやいや、俺の方こそごめん。会ったばかりやのに、こんなに盛り上がるとわ思わなくって…。何かもう会いたいなあ》

    思いもかけない嬉しい返事だった。

    もう会いたい。その気持ちわ私も同じだったし、時間が許すなら、私も今からでもまた会いたかった。

    2007-09-25 20:00:00
  • 91:

    ◆0eliurtmUc

    結局週末会うことになり、アドレスも交換して、金曜の夜約束をした。

    爽やかと言えば聞こえがいいが、とりわけ特徴のない、普通の男の人だった。

    でも25歳。18の私からすれば大人の男で、穏やかでよく笑い、包容力のようなものを感じる人だった。

    2007-09-25 20:05:00
  • 92:

    ◆0eliurtmUc

    金曜の夜、家の近くまで車で迎えに来てもらい、ドライブをして、イタリアンを食べた。

    そこでも話わ尽きなくて、すごく楽しかったが、彼わ自分に彼女がいることを打ち明けて来た。

    《でももう四年も付き合っていてマンネリ。同棲してるから、なかなか言い出せなくて、もー別れよう!と思ってた矢先に、あゆちゃんに出会ってん》

    2007-09-25 20:06:00
  • 93:

    ◆0eliurtmUc

    お客とみなしてなかった私わ、彼に本名を教えていた。

    彼女が居ることわ驚いたが、まだまだ恋愛経験の少なかった私。

    《別れようと思ってた矢先に、あゆちゃんに出会った》の言葉にコロッと安心してしまい、すぐに別れて私が正式な彼女になるんやと思い、まったく咎めず、納得してしまった。

    2007-09-25 20:07:00
  • 94:

    ◆0eliurtmUc

    その日わ慣れないお酒も呑んで、少しほろ酔い…。

    もちろん泊まりになることわ予想してたし、私も嫌じゃなかった。

    同棲している彼女への言い訳が気になったが、《会社遅いから、近所に住んでる連れんとこ泊まるわ》と伝えて来たらしい。

    2007-09-25 20:08:00
  • 95:

    ◆0eliurtmUc

    彼わとっても優しく抱きしめてくれ、終わってからも、何度も何度もキスしたりじゃれていた。

    ただ彼わヘビースモーカーで、どうにも口がタバコ臭かった。

    次の日の朝、寝ぼけ眼の私が彼に抱きつくと、寝てた彼わキスを返してくれた。

    2007-09-25 20:09:00
  • 96:

    ◆0eliurtmUc

    でもディープキスわタバコ臭くて、つい口を閉じると、《あゆもタバコわ苦手か〜》と言った。

    《あゆもタバコわ苦手か〜》

    その言葉で、彼女が浮かんだ。

    2007-09-25 20:11:00
  • 97:

    ◆0eliurtmUc

    寝ぼけてふと口を出た彼の言葉で、私と同じくタバコが苦手であろう、彼の彼女の存在が引っかかった。

    18の私なりに、かなり真剣に彼を好きだった。

    その気持ちに対して、彼も一杯応えてくれたが、彼女と別れてくれないことだけが、どうにも引っ掛かった。

    2007-09-25 20:11:00
  • 98:

    ◆0eliurtmUc

    ある日電話した時、呼び出し音が鳴ったと思った矢先に、ツーツーツーと切られた。

    直感で、《今電話に出れない状況=彼女と家に居る》と分かった。

    2007-09-25 20:13:00
  • 99:

    ◆0eliurtmUc

    悲しかった。

    二番目な気がした。

    淋しくなると、たまたま家の近かったお店のSちゃんに電話して、広くて綺麗な向こうの家へ、遊びに行ったりしていた。

    2007-09-25 20:14:00
  • 100:

    ◆0eliurtmUc

    Sちゃんわセッキャバ一本で生活していたフリーターで、私の一個上。少しヤンキーっ気があったのか、私が淋しくて電話した日なんか、よくそこら辺の自転車をパクって乗って、迎えに来てくれた。

    姉御肌って感じで、かなり大人びていた。

    彼にハッキリ彼女との関係を聞くべき!とアドバイスを受けて、後日、私わ思い切って彼を問いただした。

    2007-09-25 20:19:00
  • 101:

    ◆0eliurtmUc

    久しぶりに会えたのに、彼を困らせたりしたくない…。

    会って彼の顔を見ると決心が揺らいだが、好きだったから、知りたかった。

    彼わ黙ってしまい、沈黙を貫いたその後、《別れられないのわ妊娠したかもと言われたから。来週病院に行って検査すると言われた》と言った。

    2007-09-25 22:14:00
  • 102:

    ◆0eliurtmUc

    信じられなくて私わ泣いた。

    《四年も付き合っててマンネリ》なんて言ってたし、てっきり私わ、もうそんな体の関係が無いものとばかり思ってたから、まさか別れられない理由が妊娠だなんて、ショックだった。

    言葉にならず泣いた。

    2007-09-25 22:16:00
  • 103:

    ◆0eliurtmUc

    《妊娠してないと分かったら、すぐに別れる》と言った。

    私わ何を祈ればいいの?

    辛くて悲しくて、その日わホテルへ行く前の車で、降ろしてもらった。

    2007-09-25 22:18:00
  • 104:

    ◆0eliurtmUc

    Sちゃんに泣きながら電話すると、すぐに行くと言って、自転車で私を迎えに来てくれた。

    泣き腫らした私の顔を見て、《辛かったなあ》と肩を抱き、自転車の後ろに乗せてくれた。

    Sちゃんちまでの十数分、夜の風に吹かれながら、気持ちわ最悪なのに、なぜか心地よかった。

    2007-09-25 22:19:00
  • 105:

    ◆0eliurtmUc

    好きな人とわうまく行かない。でも、自分にわ味方の友達が居るという安心を、実感できたからかも知れない。

    Sちゃんの家に着き、涙も落ち着いた私わ、泣き疲れたまま寝てしまった。

    次の日起きると昼前で、その日わ土曜日だったが、検定の試験で学校の日だった。だがとても行く気になれず、ブッチ。

    2007-09-25 22:24:00
  • 106:

    ◆0eliurtmUc

    Sちゃんに言うと、《あたしと同じ道たどんなよ〜》なんて笑ってた。Sちゃんも去年まで専門学校へ通っていたが、夜の仕事にはまって辞めたらしい。家庭が複雑だったSちゃんわ、グレてた時期も多く、一匹狼のような、姉御肌気質わ、そこから来ているような気がした。

    その日わ一日Sちゃんの家で語りまくった。なつく私を妹みたいやと言い、あまり自分のことを話さないSちゃんが、風俗雑誌を広げて、ホストクラブのページに載っている、ホストの一人を指さして言った。

    《あたしのダーリン!最近喧嘩ばっかやけどね》

    2007-09-25 22:25:00
  • 107:

    ◆0eliurtmUc

    驚いた。

    ホストというのをよく知らないが、ホストわあかん!と、セッキャバの店長たちに、口を酸っぱくして言われていた。

    お店に置かれている風俗雑誌にも、いつも最後の方にホストクラブの特集が載っていたが、絶対に見せてくれなかったし、だからますます気になり、こっそり読んでいたら、めちゃめちゃ叱られた。

    2007-09-25 22:26:00
  • 108:

    ◆0eliurtmUc

    《ホストわ女から金を巻き上げる最低な奴らやから、絶対に関わんなってことやねん。でもあたしわそーわ思えへん。ストレス発散になるし、金だってそんなかからへん。

    それにゆうとは付き合ってるから、彼氏やしな》

    Sちゃんがホストクラブへ通ってたのわ初耳だったが、何とその店わセッキャバの真裏。

    2007-09-25 22:27:00
  • 109:

    ◆0eliurtmUc

    《リカも行く?お金わあたしが持つし》と言われ、興味半分、Sちゃんの彼氏を生で見てみたい気半分といった感じで、ついて行った。

    初めてのホストクラブ。

    怒る店長にビビって、こそこそとビルのエレベーターへ駆け込んだが、そのスリルもまた面白かった。

    2007-09-25 22:28:00
  • 110:

    ◆0eliurtmUc

    青く薄暗い照明の中、綺麗なボトルが沢山並べられた、ソファー席のお店。《いらっしゃいませ!》の声とともに、前から歩いて来たのがSちゃんの彼のゆう君だった。

    雑誌で見るより細身でかっこよく、女の子みたいに綺麗な顔立ちをしていた。きつい物言いのSちゃんも、この店のホスト達にわ心を許してるらしく、笑顔で話していた。

    お酒の呑めない私だが、楽しい雰囲気に呑まれてカクテルを四杯。Sちゃんわ、キープしてあったボトルを飲み干して、お店を出た。

    2007-09-25 22:29:00
  • 111:

    ◆0eliurtmUc

    何度か笑ってゆう君に寄り添うSちゃんわ、私が初めて見る新たな一面だった。

    Sちゃんに付き合ってもらい気分の晴れた私だったが、肝心の彼のことわ、すぐ嫌いになれる訳もなく、どうしてもまだ離れられなかった。情けないけど、彼女が妊娠していないという希望にかけ、連絡を待った。

    友達と遊び、仕事に行き、たまに学校に行く…。

    2007-09-25 22:31:00
  • 112:

    ◆0eliurtmUc

    一人暮らしを始めてからも毎日わ目まぐるしくて、一人の淋しさを感じる時間など無かったけど、彼を好きになってから、一人が淋しいと思うようになった。

    結局金曜待ちきれなくて、私から電話した。仕事が忙しかったと言う彼から、《妊娠してた》と言われた。

    悔しくてまた泣いた。

    2007-09-25 22:32:00
  • 113:

    ◆0eliurtmUc

    この時私に、彼を憎む気持ちわ無かったし、それでもまだ離れたくなかった。付き合っていたかった。

    私わ彼を好きで、同棲・妊娠している彼女がいると知って、苦しんでいる。なのに、一方の彼女わ私の存在を知らない。何も知らずに妊娠をして、彼のそばに居る。そっちの方が憎かった。

    結局そのままズルズルと関係わ続いてしまった。

    2007-09-25 22:34:00
  • 114:

    ◆0eliurtmUc

    会えば好きだが、会えない時間を悲しく待つのが嫌で、私も本気で好きになれる人が他に欲しい!と思った。

    何度かお客さん、友達が紹介してくれた男の子と遊んだが、好きになれず、《出会いがなーい!》なんて言いながら、やっぱり友達と遊ぶのが楽しかった。

    学校わ休みがち。クラスのみんなも心配して、ノートのコピーを取ってくれたりしたが、近づく就活に対してなかなか向き合えず、ダラダラと惰性に流されながら、ついつい遊びやバイトに重心を置いた生活だった。

    2007-09-25 22:35:00
  • 115:

    ◆0eliurtmUc

    冬になり、田舎へ帰った。

    ヴィトンのカバンで帰省した私に驚いていたが、《お帰りお帰り》と、沢山の手料理や刺身を用意して待っていてくれた。

    私の好きな食べ物わトンカツ。お肉が大好きだったが、大阪の一人暮らしで偏った食生活をしてたおかげで、お味噌汁とかお漬け物とか、あっさりとした体に良さそうな、質素な和食が恋しかった。

    2007-09-25 22:36:00
  • 116:

    ◆0eliurtmUc

    田舎に帰るとそれだけで癒された。

    学校のことを聞かれ、私わ正直に《思っていたのと違う。進みたい職種じゃない》と言い、このまま学校を続けていくべきか相談した。

    お金がない中、大変な思いで大阪へ出してくれた父も母も、私を一切責めたりせずに、《あゆみが好きなようにしたらいい。後悔しないようにね》と言ってくれた。

    2007-09-25 22:38:00
  • 117:

    ◆0eliurtmUc

    私わ、惰性に流され休みがちだった自分を反省した。

    だが、冬休みが明けて初登校の日、久しぶりに会うクラスメイトと盛り上がっていたら、隣のクラスの男女四人組のうちの女二人が、いきなり私に向かって携帯の写メを見せて来た。

    《なー夜の仕事してるん?友達が、風俗雑誌に載ってるの、見つけたらしいねん》

    2007-09-25 22:46:00
  • 118:

    ◆0eliurtmUc

    写メわ、毎回お店に張り出されていたイベントのポスターで、ナースの衣装を着た私が写っていた。

    まさかこんな形でバイトがバレるなんて、思いもしなかった。

    でも何で?

    2007-09-26 00:47:00
  • 119:

    ◆0eliurtmUc

    動揺した私わ、《えっ、それ私ちゃうよ》と言って否定をしたが、すぐにトイレへ駆け込んでしまった。

    次に教室へ戻った時わ、私へ一斉に視線が集まり、クラスじゅうのみんながヒソヒソと話していた。

    あまり話したことのなかった子や、隣のクラスの子たちが、眉をひそめたり、笑いまじりで、たった今流された噂をすでに脚色をして、盛り上がっていた。《えっホステスなん?》とか聞こえたり、さっきの写メわもう、みんなに送信されていた。

    2007-09-26 00:48:00
  • 120:

    ◆0eliurtmUc

    先生が来たので授業を受けたが、頭の中わパニックで、変な汗ばかりかいて、気まずくてすぐに早退した。逆効果だったと思う。ますます噂に刺激を与えたと思う。

    オリエンテーションの時から仲良くしていた三人だけわ、かばってくれて、教室を出てく私を追いかけ、《デマなら私ら否定するから!逃げたらあかんやん》と言ってくれたが、デマじゃない以上、どう言うことも出来なかった。

    何も言えずに学校を出た。

    2007-09-26 00:50:00
  • 121:

    ◆0eliurtmUc

    パニックになって携帯のリダイヤルをいじり、とっさに目についた店長に電話した。

    事情を話すと、オープン前に時間を作ると言い、会ってくれた。《うちのお店のポスターわ系列店のキャバクラにも貼ってるから、そこで働いてる子に、同じ学校の子が居てるんかもなあ》

    系列店があるのわ知っていたけど、ポスターが貼られていたのわ知らなかった。写メを送ったであろう犯人に対しても、卑怯だなと思った。けど、無防備に雑誌に出ていた自分も、反省した。

    2007-09-26 00:51:00
  • 122:

    ◆0eliurtmUc

    母から家に成績表の通知などが届いたと電話があり、出席率の低さ、取れていない単位の多さを心配された。

    学校を辞めると決意して、母に話した。母わうん、うん、と話を聞いてくれて、《おじいちゃんの様子も気になるし、来週お父さんと大阪に行くから、その時改めて今後のこと話をしよう》と言ってくれた。

    私わあれからおじいちゃんにわ、月に2〜3度会いに行っていた。

    2007-09-26 14:49:00
  • 123:

    ◆0eliurtmUc

    あんなに内鍵を癖でかけていたのに、私が出て行ってからわ、ほとんど内鍵がかかっておらず、たまに近所のスーパーへ寄った帰りなど家へ寄ると、もらった合い鍵で必ず入れた。

    でも寝ていることが多く、手紙を書いて出て行ったり、買って来たお総菜を置いて行ったりしている程度だった。

    両親が来る二日ほど前におじいちゃんちへ寄ると、明かりがついてなかった。中に入ると誰も居なくて、暗くて狭い部屋が、急に怖くなり、ゾゾッと寒気がした。

    2007-09-26 14:50:00
  • 124:

    ◆0eliurtmUc

    心配で母に電話すると、《ごめんごめん、あゆみに言ってなかったね。おじいちゃん、昨日から神戸のおばさんの所へ泊まりに行ってるんだって。結構頻繁に呼ばれてるみたいだよ》とのことだった。

    でも、翌朝おばさんから連絡があって、おじいちゃんが、風呂場でそのまま息を引き取ったと言う。

    めんどくさがりで、お風呂になかなか入らなかったおじいちゃんが、息を引き取る最期、頭も洗ってひげを剃り、体の綺麗な状態で最期を迎えられたのわ、すごいと思った。

    2007-09-26 14:51:00
  • 125:

    ◆0eliurtmUc

    急遽お通夜が行われ、親も喪服を用意して大阪へ来て合流。葬儀の行われる会館で、夕方、親戚やおばさん家族らと合流した。

    私わ会館に着くと、奥の中央に置かれた棺に入った、おじいちゃんを覗いた。たくさんのお花に囲まれて安らかに眠る、おじいちゃん。その顔わほんとに眠ってるようで、揺すれば起きるんじゃないかと錯覚した。それくらい、綺麗な死に顔だった。遺影の写真も、おばあちゃんと二人で写ったものを使っていたので、良く見ると目が笑っていた。

    おじいちゃんの笑顔を見て思った。

    2007-09-26 14:53:00
  • 126:

    ◆0eliurtmUc

    私わおじいちゃんと住んでいた時、おじいちゃんの笑顔を何度見れただろうか。おじいちゃんとの生活を、苦痛に感じて文句ばかりだったが、そんな私と一緒に暮らして、おじいちゃんこそ、ずっと息苦しい思いをしてたんじゃないのか。

    もう戻れない、謝ることもお礼を言うことも。悲しくて淋しくて、涙がいっぱい溢れた。

    《あゆみわ一緒に暮らしてたから、余計に辛いでしょう》と母が言ったが、私わ申し訳なさと言うか、何とも言えない淋しい気持ちになった。

    2007-09-26 14:54:00
  • 127:

    ◆0eliurtmUc

    式の当日わほんとに泣いてばかりで、泣き疲れてしまい、でもやたらと穏やかに晴れた、天気のいい日だったのを覚えている。

    式を終えてから次の日、親と梅田へご飯を食べに出かけた。父が連れて行ってくれた割烹料理のお店で、天ぷらを食べながら、今後の生活について話をした。

    父も学校を辞めることを許可してくれて、母と同意見だった。田舎へ戻って来いとも言わず、《こっちにわ若い子が働ける職場が少ないから、大阪で残って頑張りい》と言ってくれた。

    2007-09-26 14:55:00
  • 128:

    ◆0eliurtmUc

    母わ《辛くなったらいつでも帰っておいで》と言ってくれて嬉しかったが、甘えず、自分なりに頑張ろうと思った。

    ふとトイレに行こうと立った母の後ろ姿が、とても小さく感じた。

    《あんなに背中小さかったっけ…》

    2007-09-26 14:56:00
  • 129:

    ◆0eliurtmUc

    おじいちゃんが亡くなり、感傷的になっているせいか、ふと母の体が心配になった。

    父の顔を見つめた。

    《皺が増えたなあ、白髪も…》

    2007-09-26 14:57:00
  • 130:

    ◆0eliurtmUc

    私わ今、目的を見失ったまま、ダラダラと学校を辞めてフリーターになる。就職もせず、頑張っている姿を親に見せることもないまま、親に死なれたらどうしよう。

    おじいちゃんが亡くなった時以上の、辛くて悲しくてたまらない気持ちを想像したら、想像しただけなのに、胸が痛くなった。

    親が田舎へ戻ってから、モヤモヤしながらも、久しぶりにセッキャバへ出勤した。こんなに長期で休んだことわ無かったので、お店の人も女の子も、久しぶりやん〜と心配してくれた。

    2007-09-26 14:58:00
  • 131:

    ◆0eliurtmUc

    普通こんな業界って訳ありで働く子が多いし、女の子同士の派閥もあり、ひとつのお店で長続きする子が少ないと聞いた。確かに訳ありっぽい子も居たけど、女の子同士の仲の良さわ抜群で、他店から来た子も、《こんなに働きやすい店わ初めて》と言って、長く在籍した。

    何も分からず入った私も、気づけばこの店で一年を越す古株。みんな在籍が長いと言いつつも、同期の女の子わ、仲良しのMとY含め、五人ほどだった。

    《いつまで続けるんやろ…》

    2007-09-26 14:59:00
  • 132:

    ◆0eliurtmUc

    染まってしまった夜の世界で、何となく抜け出せずいる時期だった。

    2007-09-26 15:01:00
  • 133:

    ◆0eliurtmUc

    家が近かったSちゃんとわ、前ほど頻繁にでわないが遊んでいた。

    私より先輩だったSちゃんわ、正直指名をあまり取れてなくって、店長の、Sちゃんに対する扱いもどこか違った。

    Sちゃんのホスト通いを知っていた店長わ、ちょくちょく注意をしていたようだが、Sちゃんわ聞く耳を持たず。心を開けば愛想のいいSちゃんなのだけど、誰に対しても、反抗的な態度を取りがちだった。

    2007-09-26 15:06:00
  • 134:

    ◆0eliurtmUc

    そんなSちゃんと私が仲良くしてるのを、店長わあまり良く思っていなかったらしく、帰り道が一緒のSちゃんと、わざと送迎車を変えられたりした。

    Sちゃんわ気にしてなかったみたいだが、じきにお店を辞めると言った。

    すごく淋しかったけど、確かに指名を取れてなかったし、仕事が嫌になったのかも知れない。

    2007-09-26 15:07:00
  • 135:

    ◆0eliurtmUc

    ホストのゆう君に対する愚痴も、増えていた時期だった。

    何度かSちゃんに連れられホストクラブへ行っていた私だが、《かっこいいなー》と思える人が居ても、どこか一線を置いていて、Sちゃんみたいに通い詰めるほど、ハマる事わなかった。そんな私だったから、Sちゃんから聞く悩みの中にわ、理解できない部分もあった。

    両想いで互いに好きなのに、なぜそこまでして不安になるの。疑うの。何より、誕生日に何百万も使うとか、ボトルを卸すとか、そこら辺の行動が理解出来なかった。

    2007-09-26 15:11:00
  • 136:

    ◆0eliurtmUc

    《彼女やのに、そんなにお金使わなあかんの?》と私が聞くと、《彼女やから、助けてあげてんねん》とSちゃんわ言った。

    それでも毎週大金をはたくのに、Sちゃんわ無理してるように思えた。なのに、セッキャバの出勤わランダム。Sちゃんの資金繰りが気になった。

    2007-09-26 15:13:00
  • 137:

    ◆0eliurtmUc

    《彼女やねんから、お店で会わんでも、日曜デートしたらいいやん》
    《ゆうお酒弱いし、日曜わずっと寝てるねん》
    《一緒にいるだけでも、いいやんか。ゆう君一人暮らしなら、同棲したらいいやん》
    《もう!あんたにわ分からへんねん!》

    Sちゃんとゆう君のことで、私らが言い合いになることもあった。

    2007-09-26 15:14:00
  • 138:

    ◆0eliurtmUc

    そしてSちゃんわ、ある日いきなりセッキャバを飛んだ。

    しばらく連絡がつかない日が続き、携帯に電話しても留守電。そのうち、携帯が繋がらなくなった。心配で家まで行ったが、Sちゃんわ不在で、嫌われたのかなと思った。

    それからわ、MやYとまた三人で遊ぶ日が増えた。

    2007-09-26 15:16:00
  • 139:

    ◆0eliurtmUc

    MもYも売れっ子で、三人同じ時給だったので、毎週貯金する額を決めて定期預金を始めたり、三人でおそろいの洋服や財布、サングラスなんかをいっぱい集めた。

    でもある日、Mまでホストにはまるようになった。

    きっかけわナンパで、そのホストわ、Mと同い年の大学生。ホストのバイトわ副業と言ってるらしいが、お店じゃ幹部クラスで、かなりの指名客が居た。一緒に写ったプリクラを見せてもらったが、ものすごく男前。すごく優しそうで、ラブラブだった。Sちゃんの時みたいに、泣いて悩む様子など無くて、毎週デートを重ねていた。私とYわ、Mが抜けて二人で遊ぶ日が増えたが、YわMの彼氏を怪しんでいた。

    2007-09-26 15:17:00
  • 140:

    ◆0eliurtmUc

    それを打ち明けて来たのわ、Mが彼氏の誕生日に、百万使った次の日のことだった。

    《ダイエット》と言ってカロリーメイトばかり食べていたMが、おなかが減ったと泣くので、Yと二人で心配になり、食事に誘うと、《お金ないから》と断ってきたのだ。

    《何ゆーてんの》とMの腕を引っ張ると、《昨日けんじのバースデーに百万使った。俺のこと好きなら、誠意を見せてって言われて…。定期も解約してもーたから、本気でお金無いねん。ごめんな》とまた泣き出してしまった。

    2007-09-26 15:20:00
  • 141:

    ◆0eliurtmUc

    Mがご飯を抜いてカロリーメイトばかり食べていたのわ、ダイエットじゃなかった。本気でお金が無かったんや…

    Yわキレて、《あんた目を覚まし!何でそんな切り詰めてまで無理せなあかんねん!向こうがほんまにあんたを好きなら、こんなに必死なあんた見て、心配するのが普通やろ!》と、Mに怒鳴った。

    Mわただただ泣いた。

    2007-09-26 15:21:00
  • 142:

    ◆0eliurtmUc

    私もYもホストに行かない。そんな私らに相談しても、理解してもらえないと思い、今まで相談できずにいたと言う。

    彼女なんだと信じていいのか?騙されたくない…その狭間で、Mわ思い悩み揺れていた。自分の生活費まで削り、彼にお金を使っていたのだ。

    悲しくなった。

    2007-09-26 15:26:00
  • 143:

    ◆0eliurtmUc

    Mわ純粋に彼を信じて、彼のために尽くしていたんだと思う。ただ相手がホストだったばかりに、こんなにお金が絡んだりして、互いの気持ちが見えにくくなったんじゃないのか。

    ゆう君を想うSちゃんも、Mと同じ様に誰にも言えず、悩んでいたのかな…。

    幸いMわ、そのホストに借金(未収)を残していなかったので、もう縁を切り!と、その場でメモリを消去させた。

    2007-09-26 15:27:00
  • 144:

    ◆0eliurtmUc

    しばらくわ、思いを引きずり泣いてたMだったが、Yと私わ毎日のように一緒に居た。カラオケで騒いだ。クラブで騒いだ。最強に仲良しな気がした。

    Mも徐々に元気を取り戻し、《また貯金頑張る!》と言って、バンバン働くようになった。

    2007-09-26 15:29:00
  • 145:

    ◆0eliurtmUc

    その頃、Sちゃんから久しぶりに連絡があった。私わビックリして興奮し、毎日電話してたこと、家にも行ったが留守だったことを話し、今どうしてるのかと質問責めにした。

    《あはは、待て待て、落ち着け。今どこ?》と言うので、家やと言うと、そっちに行くわとタクシーでやって来た。

    自転車で十数分の距離をタクシー。相変わらずやなと思ったが、久しぶりにSちゃんに会って、更に私わその見た目に驚いた。

    2007-09-27 02:44:00
  • 146:

    ◆0eliurtmUc

    かなりの露出狂…。

    それ下着わどうなってんの?と言いたくなるような、がっつり胸の開いたホルターネックのミニワンピに、髪わ金髪。メイクもだいぶきつくなってた。

    《相変わらず可愛らしいなあお前わっ》と笑顔のSちゃん。胸にCHANELのネックレスわもう無かった。

    2007-09-27 02:45:00
  • 147:

    ◆0eliurtmUc

    Mのことがあったし、Sちゃんのゆう君とのその後も、何となく想像わついた。今考えると、MもSちゃんも同じポイントで悩み、それに対してホストが返す答えわ、似たり寄ったりだった気がした。

    私わゆう君の話を振らなかったが、Sちゃんの方から、《別れちゃった》と言って来た。

    誕生日イベントでお金を用意できず、約束してたボトルわ卸せないけど、家で料理を作るからと言ったら、そんなんいらんとキレられたらしい。そこで目が覚めたって。

    2007-09-27 02:46:00
  • 148:

    ◆0eliurtmUc

    《人違いかも知らんけど、Mを見かけたわ!人違いかなあ?幹部の○○君に、でっかいシャンパンタワーとか卸しててん》

    私わ、Mが最近ホストに騙された話をした。Sわ黙ってそれを聞き、《でもあたしわ後悔してへんから!》と笑った。

    《最近何してるの?》と聞くと、《仕事ばっかり。ホテヘル行ってんねん》と言われた。

    2007-09-27 02:48:00
  • 149:

    ◆0eliurtmUc

    《何それ?》
    《ホテルヘルス》
    《ヘルスなん?》
    《そうやで》
    《…大丈夫なん?》
    《うん。セッキャバと違ってな、口臭い客にわ歯磨きしてもらえるし!》

    2007-09-27 02:49:00
  • 150:

    ◆0eliurtmUc

    ホテヘルが何をする所なのか知らなかった私わ、歯磨きという意味が分からなかったが、セッキャバよりも稼げる仕事ということわ、Sちゃんの派手な身なりと、でっかなエルメスのカバンで想像できた。

    Sちゃんわ変わった。

    でも、強気な所わ変わってなかった。

    2007-09-27 02:49:00
  • 151:

    ◆0eliurtmUc

    ふと、ほんとわ誰よりも弱い子なんじゃと思った。

    《無理しないでね》私わ心からそう思い言った。

    《もう変なのにわ引っ掛からんよ〜》と、Sちゃんわ笑った。

    2007-09-27 02:50:00
  • 152:

    ◆0eliurtmUc

    みんなどんどん新しい道を進んで行く。

    失恋から立ち直り、またバンバン稼いでお金を貯めたMわ、メイクの専門学校へ入学し、スタイリストを目指し頑張り始めた。

    元々百貨店でアパレル販売をしていたYも、セッキャバのシフトを徐々に減らしながら、販売メインで頑張ると言った。

    2007-09-27 02:51:00
  • 153:

    ◆0eliurtmUc

    お店でずっとナンバーワンを張っていたRちゃんわ、プライベートで遊ぶことわ無かったけど、仕事で悩むとよく相談に乗ってもらった。Rちゃんに、仕事を辞めたいと思ったことが無いかと聞いたら、《一度も無いよ》と言われた。

    《あたしわ夜の仕事が向いてると思うし、嫌いじゃないんだな〜。資格も学歴もないあたしやけど、水商売わ、あたし自身を見てもろて、お客が気に入ってくれたら、指名もらって、それが即自分のお給料に繋がる。それってすごいことやと思うねん!》

    Rちゃんわいつも堂々としてて、自信たっぷりなオーラがあった。そのキャラに好感が持てたし、無いものねだりなせいか、私わ強く惹かれた。

    2007-09-27 02:53:00
  • 154:

    ◆0eliurtmUc

    Rちゃんのように、このままこの業界で頑張りたいのか。就職したいのか。何がしたいのか…。

    私わこの先どーしたいんやろ。

    お店の人に相談しても引き留められるだけだし、ひたすら悩んだ。

    2007-09-27 02:55:00
  • 155:

    ◆0eliurtmUc

    別の仕事を始めてみようと、ふらっと目に入ったカフェのバイト募集の張り紙に電話をして、面接を受けてみた。

    初めての履歴書。

    職歴にわ適当に、カラオケ勤務などと書き、面接を受けた。制服ありの、梅田の喫茶店。正直制服だけが決め手だったので、時給わ安かったが、貯金わあったので、やり甲斐を優先。梅田という立地もあって、かなり客入りのいい、人気のカフェだった。

    2007-09-27 03:01:00
  • 156:

    ◆0eliurtmUc

    仕事内容わ簡単。オーダーの取り方が手書き伝票だったので、メニューの略語を覚えるのが大変だったが、オフィスビルの側だったので、お客わサラリーマンが目立つ。ほとんどがコーヒーを頼むような客層だったので、楽勝だった。

    セッキャバのバイトと掛け持ちで出勤していたが、新しい職場に新鮮味を感じ、カフェのバイトがメインの生活に変わった。

    そんな中、ある男の人と出会い、恋をした…。

    2007-09-27 03:02:00
  • 157:

    ◆0eliurtmUc

    背わ低くて細身の、アパレルっぽい男の人で、名前も分からなかったが、頻繁にお店へ来ていた。

    大概昼過ぎに同僚らしき人らと三人で来て、ホットコーヒーを頼み、仕事の話というか、息つき。

    笑顔がめちゃくちゃかっこよくって、お店の他の女の子まで好きとか言ってたら、どうしようと思った。

    2007-09-27 03:04:00
  • 158:

    ◆0eliurtmUc

    単純な私わ、毎日その人に会いたくて、平日すべてをカフェのバイトに当てた。どうにかして接点を持ちたかったが、いつも向こうわ三人で来てるので難しかった。

    ある日初めてその人が一人で来店した時があり、感動した私わ、ついお店の子に《あの五番テーブルの人が好きやねん》と打ち明けてしまった。

    《えっまじで!あの人いっつも来てる人やん〜今日一人やし、声かけてみたら?》と、後押ししてくれたので、白々しいくらい、何度も近くのテーブルに水を注ぎに行ったりしたが、意識しすぎてしまい、なかなか本人のテーブルに向かえなかった。

    2007-09-27 03:06:00
  • 159:

    ◆0eliurtmUc

    何度もレジ前に戻ってわ《あかん勇気ない〜》と尻込みする私だったが、チャンスわ向こうから訪れた。

    その人の会計でレジを打ち、お釣りを渡したら、レシートわいらないからとレシートを手のひらに返され、一緒に名刺を渡されたのだ。

    その人の名前と、会社名、携帯番号と、会社のパソコンのアドレス…。裏にわ携帯のアドレスが書いてあった。

    2007-09-27 03:07:00
  • 160:

    ◆0eliurtmUc

    泣きそうなくらい嬉しくて、走って裏に行き、携帯に登録をした。お店の子に話すと、その日一日その人の話で持ちきりだった。

    家に帰って私から連絡をして、お店以外で待ち合わせして、食事をしたりした。

    照れ臭いからと、カフェにわ来なくなったこと。ほんとわ会社の最寄りに別のカフェがあるが、前に行った時私を見て一目惚れし、それから同僚を誘って、わざわざ遠いうちのカフェへ来てくれていたこと。いつも笑って話してたのわ、仕事のことじゃなく、《いい加減アプローチしろよ!》と、同僚から急かされていた下りだと言うこと。

    2007-09-28 21:43:00
  • 161:

    ◆0eliurtmUc

    色々教えてくれた。

    名前わあつし君。年わ24で、すごく口数わ少ないんやけど、誠実な感じがしたし、何より見た目がどストライクだった。

    モテそうやなあと不安になったし、こうして名刺を渡したりする事、よくあるのかなと勘ぐったりもした。何より、彼女がいるのかが気になった。でもそれを聞くと、《何でやねん!》と大否定され、《俺ってそんなに遊んでる風に見える?》と、逆に凹ませてしまった。

    2007-09-28 21:44:00
  • 162:

    ◆0eliurtmUc

    私がこんなに疑ってしまう理由、過去の恋愛を打ち明けた。

    《俺わ同棲してないし結婚してないし、そんな誠意のない事わせーへんよ》

    その言葉を聞き安心した。

    2007-09-28 21:45:00
  • 163:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君とわ、それから毎日連絡を取り合い、週に一度デートをした。でも食事止まりで、ちょっとお酒を呑んで帰るくらい。車で家まで送ってもらう時、何度家へ誘いたくなったか。

    でもがっついてると思われたくなかったし、でも、このまま食事友達になってしまうのか不安になりだした。

    あつし君を好きになってから、セッキャバの仕事が苦痛になった。

    2007-09-28 21:46:00
  • 164:

    ◆0eliurtmUc

    もうほとんど出勤していなかったが、たまの出勤日がものすごく憂鬱。好きでもない人とキスをして、触られる。今までこんな事無かったけど、発狂したくなるほどイライラして、お客が全員気持ち悪いものに見えた。そんな時、マナーの悪い乱暴な泥酔客に当たり、あまりにしつこく触るので、つい手を払いのけてしまった。酔ってたお客わ怒鳴りだし、チェンジと叫びながら私を蹴飛ばした。

    お客にこんな事されたのわ初めてだったし、自分が悪いと言えど悔しく、みじめになって、裏で泣いてしまった。

    《辞めたい…》

    2007-09-28 21:47:00
  • 165:

    ◆0eliurtmUc

    店長わしきりに慰めてくれたが、私わ泣きながら、《これで踏ん切りがついたかも》と感じた。

    あつし君と出会ってから、私わ変わった。こんなにも人に気持ちを支配されるのわ初めてだったし、それなりに真剣だった前の彼も、あつし君を想う気持ちに比べたら、大したことない気がした。

    その時貯金わ十分にあったし、ほんとに辞め時だと思い、お世話になった店長に話をした。

    2007-09-28 21:48:00
  • 166:

    ◆0eliurtmUc

    最初わ話すら聞いてくれず困ったが、渋々卒業を許してくれた。その時、誰の仕業か知らないがにちゃんねるで叩かれ、《ぶす》だとか《整形》だとか、挙げ句《デリヘルと掛け持ち》だとか書かれていたから、店長も、《まさかデリヘルちゃうやんな?》なんて聞いて来たので笑った。

    《私わ夜の世界を卒業したいんです。でもこの店にわめちゃめちゃお世話になったから、ほんとに感謝してます》と言うと、私の店名リカを、永久欠番にして残しておくからと言ってくれた。

    こんなに可愛がってもらい、卒業を悔やんでもらい、有り難かったな…。

    2007-09-28 21:50:00
  • 167:

    ◆0eliurtmUc

    最後の日わお客さんから花束をもらい、店長からも花束、お店の女の子たちから、色紙をもらった。

    隠し事が無くなった私わ、淋しくもあったが、気持ちが自由になり、改めてカフェのバイト一本に打ち込んだ。

    疎遠になってたYやMとも、生活が朝型のリズムに戻ると、よく会うようになった。特にMわ学校が堂島だったので、私のカフェにも、友達を連れてよく来てくれた。南の百貨店で働いていたYとも集まり、三人でクラブに行った。もともとファッションセンスがかなりあったYわ、アパレルに戻り、更にお洒落が洗練されて可愛くなっていた。

    2007-09-28 21:51:00
  • 168:

    ◆0eliurtmUc

    Mわ学生一本だったので収入わゼロ。私とYわ、互いの今の月収を暴露し、笑った。

    あんなに稼いでたのになー!と、何だか昔が夢のようで不思議だった。

    恋ばなもした。Yわメンズスーツの社員さんといー感じで、Mもクラスの男の子と付き合っていた。私の恋ばなをしたら、《ドラマかよっ》とか、かなりギャーギャーからかわれてしまったが、帰りに撮ったプリクラに、《早く付き合えー!》とか書いてくれた。

    2007-09-28 21:52:00
  • 169:

    ◆0eliurtmUc

    なかなか進展のないままでモヤモヤしたりしたが、私の誕生日の十月十日、あつし君から、正式に交際を申し込まれた。

    見た目わ今風なのに、結構やることが古風で、たまにダサい。子供っぽい。意外にゲームが好きなオタクだし、寝顔わほんとに不細工!でも、すごく優しくて、すごくよく笑う。私の中で、どんな人よりナンバーワンだった。

    私の金銭感覚わ、まだ少し麻痺していた。

    2007-09-28 21:53:00
  • 170:

    ◆0eliurtmUc

    値札を見て買わないので、スーパーへ行って、一度に五千円以上使ってしまったり、Sちゃんと遊んでた時期についた癖で、どこへ行く時もすぐにタクシーを呼んでしまったり…。

    アロママッサージなんかも好きでよく通っていたけど、冷静にその金額を見て《贅沢だったな》と反省し、月に一度、よっぽど体が疲れてパンパンの時だけに減らした。

    化粧品なんかわ、CHANELやDior、ほとんどがそのブランドネームやデザインに釣られて買っていただけ。メイク雑誌やカフェの女の子たちの口コミを聞いて、安くて優秀なコスメを買うようにした。

    2007-09-28 21:55:00
  • 171:

    ◆0eliurtmUc

    タクシーわ、癖になっているとなかなかやめられず、意外に断ち切るのが大変だった。

    服わ大好きだったし、アパレルYのセンスの良さにも憧れてたので、毎月欲しいと思う服わすべて買っていた。メンズアパレルで勤めてたあつし君も、かなりおしゃれだったので気が抜けなかったが、あつし君もYも、着回しが上手だった。

    シンプルなアイテムに、柄物を適度に合わす…。重ね着なんかが苦手な私だったが、あつし君に服を見立ててもらいながら、頑張っていった。

    2007-09-28 21:56:00
  • 172:

    ◆0eliurtmUc

    《収入が減った不安》

    それわあったし、また夜の仕事に戻ってしまうのでわと言う、不安もあった。

    でもあつし君が好きで、隠し事わしたくなかったし、今のこの幸せな日々を、壊すことなく続けたかった。その為にわ、やっぱり夜働くのわ、裏切りになるような気がした。

    2007-09-28 21:57:00
  • 173:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君も、私との付き合いを大切に思ってくれていて、互いの家を行き来してた関係から、同棲に発展した。

    私わ、おじいちゃんと住んだりして、思い出の詰まったこの街を離れるのが淋しかったので、離れたくないと言うと、私の住んでるマンションの周辺で、部屋を探そうと言ってくれた。

    2007-09-28 21:58:00
  • 174:

    読みやすいしおもしろ?い?

    続き待ってます???

    2007-09-29 13:00:00
  • 175:

    ◆0eliurtmUc

    >>184さん 嬉しい!見てる人居るのかなーなんて思いながら更新してたので(^_-)嬉しかったです☆ぁりがとうございます!

    2007-09-30 20:40:00
  • 176:

    ◆0eliurtmUc

    同棲生活わ楽しかったが、喧嘩も増えた。あんなに大好きなあつし君のこと、消えて欲しいと思うくらい憎くてイラついた日もあった。泣いて家を出ようとした日もあった。同棲しだして、距離が一気に縮まりすぎた分、衝突をかなりした。

    でも、喧嘩を繰り返しながら、互いにとってちょうどいい距離が見つかり、同棲一年目にわ、パタリと喧嘩が減った。

    誕生日に指輪をもらい、私もそのお返しに、ブレスレットを送った。

    2007-10-02 00:06:00
  • 177:

    ◆0eliurtmUc

    同棲生活わ楽しかったが、喧嘩も増えた。あんなに大好きなあつし君のこと、消えて欲しいと思うくらい憎くてイラついた日もあった。泣いて家を出ようとした日もあった。同棲しだして、距離が一気に縮まりすぎた分、衝突をかなりした。

    でも、喧嘩を繰り返しながら、互いにとってちょうどいい距離が見つかり、同棲一年目にわ、パタリと喧嘩が減った。

    誕生日に指輪をもらい、私もそのお返しに、ブレスレットを送った。

    2007-10-02 00:07:00
  • 178:

    ◆0eliurtmUc

    写真嫌いのあつし君も、クリスマスだけわプリクラを撮ってくれた。年末も一緒。お正月も一緒…

    そうしてなかなか帰って来なくなった私に、田舎の母わ、メールで催促をした。それを知ったあつし君が、《あゆの田舎へ行ってみたい!》なんて言ってくれたりもした。

    付き合いだしてから一年と半年。同棲しだして一年が経ってたし、たまに結婚なんてフレーズが頭をよぎったが、まだ私わハタチだったし、あつし君から結婚の話をされたりもしなかったので、あまり考えずいた。

    2007-10-02 00:09:00
  • 179:

    ◆0eliurtmUc

    でも、あつし君のお嫁さんになる。

    それわ私にとってすごく幸せなことだし、結婚するならあつし君としたい、と強く思った。

    そんな矢先に、事件わ起きた。

    2007-10-02 00:11:00
  • 180:

    ◆0eliurtmUc

    ある日《仕事で遅くなる》とあつし君が言ったので、私わ久しぶりに、バイト後Yの店へ買い物に行った。昔みたいにポンポン買うことわ出来なかったけど、久しぶりのYと、たわいもない話をしながら、新作のワンピとトップスを買った。

    Yとそのままご飯でも…と思い誘ったが、ミーティングあるから遅くなるかも、とのこと。私わ今日わ時間があるから、近場で時間を潰しておくねと言って、ミナミをぶらぶらすることにした。

    商店街を歩いていると、前からホスト風の男が歩いて来た。《あーホストか》くらいに思い、すれ違おうとした瞬間、いきなり腕を掴まれ、ビックリして振り返ると、そのホスト風の男わ、あのセッキャバの店長だった。

    2007-10-02 00:12:00
  • 181:

    ◆0eliurtmUc

    《いやーリカっち何してんの〜!》店長わ、ニヤニヤしながら掴んでた腕を離し、私の頭を撫でてきた。《えーっ!えーっ!店長こそ何してんの?ミナミで!今日、お店わっ?!》私わ久しぶりの再会にかなり興奮し、商店街のど真ん中で人目もはばからず、ギャーギャー騒いでしまった。

    思えばその日わ月曜で、セッキャバわ定休日だった。でも店長わ、昼から会議があったとかで、この日もスーツを着ていた。

    ストライプの入ったグレーのスーツに、黒のネクタイ黒のシャツ。細身で色黒で茶髪な店長わ、相変わらずホストっぽいと言うか、夜のオーラをものすごく放っていた。

    2007-10-02 00:13:00
  • 182:

    ◆0eliurtmUc

    今Yを待ってると言うと、更に会話が盛り上がってしまい、《ちょっと話そうや!》と、近場のカフェに入って話を始めた。

    とにかくお互い近況が知りたくてマシンガントーク。。

    私やMやYが在籍していた時代から、お店わ状況がかなり変わっていて、ずっとナンバーワンを張っていたRちゃんも、辞めてしまったらしい。《今わセッキャバ自体が下火》らしく、ヘルスに変えるか悩んでいるとか言ってて、ビックリした。《今わほんとに女の子のレベルも落ちちゃったから。ヘルスサービスせなあかんくらいやねん》

    2007-10-02 00:14:00
  • 183:

    ◆0eliurtmUc

    そこから私の今してるバイトの話や、近況報告を交えつつ、昔の話で盛り上がっていた所で、Yから電話。

    《ごめんな〜!今終わって店出たわ!あんた今どこ?》

    私わYを驚かせてやろうと思い、電話を店長に代わってもらった。

    2007-10-02 00:15:00
  • 184:

    ◆0eliurtmUc

    《もしもしYちん〜誰か分かる?》

    ふざけたノリで聞く店長に、私わ爆笑。

    え?え?とうろたえる様子のYに、店長が、セッキャバのマイクパフォーマンスを始めた。

    2007-10-02 00:16:00
  • 185:

    ◆0eliurtmUc

    《YちゃんYちゃん、リストバック〜》

    あーっ!!と叫んでYも店長の声に気づき、興奮している。それでも店長わやめず、Yの口癖なんかまで物真似しだしたので、私わ笑いが止まらなくなって、《あかん、店長、おもろすぎ〜》と店長の肩をしばきながら、涙を流して笑っていたら、

    《おい》と声がした。

    2007-10-02 00:18:00
  • 186:

    ◆0eliurtmUc

    振り返ると、あつし君だった。

    今までギャーギャー笑っていた私わ、一瞬のうちに凍り付き、動揺してしまった。

    《何してんねん》と言われ、《あっ、てっ、店長と…》と言ってしまったが、私の隣にいる店長わ、どこからどう見てもホスト風。とても昼間の仕事をしてる人間にわ見えなかったし、実際私わあつし君に、《うちのカフェの店長わヒゲが生えたおじさん》などと話していたので、目の前の店長がカフェの店長でないことわ明白。まったく説得力が無かった。

    2007-10-02 00:19:00
  • 187:

    ◆0eliurtmUc

    かと言って、昔のバイト先の店長だなんて言えるはずがないし…。

    あつし君わ、すぐさま店長を睨みつけ《どちら様?》と冷たい口調。

    ちょうどその時ナイスなタイミングでYがやって来たので、店長わ、顔色変えずにYの隣へ行き、《俺らわこの子の友達です》とニコニコ店長スマイルで言い放った。

    2007-10-02 01:16:00
  • 188:

    ◆0eliurtmUc

    事情が読めないYも、とっさに会話を合わせようとしてくれた。だが、夜のオーラむんむんの店長を挟んだ私とYの三人の光景わ、冷静に見ると、かなり違和感があった。しかも、私が店長と呼んだその人が、私との関係を《友達です》とか説明しちゃうし、隣に居たYわポカンとしてるし…。

    当然あつし君わ納得するはずがなく、私わ腕を引っ張られ、車へ連れて行かれた。

    訳が分からず立ち尽くすYと店長の方を振り向き、口パクで《ごめん!》と言いながら、私わ半泣きだった。

    2007-10-02 01:17:00
  • 189:

    ◆0eliurtmUc

    車に私を連れ込んだあつし君わ、無言で車を走らせた。家へ向かうのかと思ったら、人気の少ない駐車場へ車を停めて、無言で車の鍵を抜いた。

    耐えがたい沈黙――。

    《仕事であの近くに寄ったから、車を停めて、タバコを買いに行っててん。戻る時、でっかい笑い声が聞こえたから見たら、お前が、男の肩叩いて、バカ笑いしとって》

    2007-10-02 01:18:00
  • 190:

    ◆0eliurtmUc

    もともと嘘が下手な私わ、パニックも手伝ってますます混乱し、何も言えずに黙ってしまった。

    《とっ、友達やねん!Y居てたやん?あの子と店長が、今いー感じで…》

    《だから店長って何やねん》

    2007-10-02 01:20:00
  • 191:

    ◆0eliurtmUc

    《まっ、前のバイトの…》

    《あんなホストみたいな男が、塾の先生やって言うんか?》

    とっさに嘘を重ねてもちぐはぐだった。

    2007-10-02 01:22:00
  • 192:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君にも、《カフェで働く前わ親戚のおばさんが経営してる塾のアシスタントしてた》と、以前学校の友達に話していたのと、同じ嘘をついていた。

    それなのに、あんなホストみたいなカッコした男の人を、店長と呼んで騒いでた私…。

    大体塾の人間を店長呼びするなんておかしいし、最初から、どこをどうつついてもボロが出る話だった。

    2007-10-02 01:23:00
  • 193:

    ◆0eliurtmUc

    夜の仕事をしていたと言う、消せない過去。

    消したいと思ったことわないし、出会って、学べたことも沢山ある世界だった。

    でも、中身を知らない人間からわ、差別的な目で見られたり、偏見を受けがちな世界。

    2007-10-02 01:24:00
  • 194:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君わ、仕事の付き合いなんかでも接待が無かったし、プライベートでも、キャバクラに行ったことがないと言っていた。実際かなりの人見知りだし、お酒も弱いし、キャバクラを楽しむようなキャラじゃないことわ、私にも分かった。

    だから、風俗雑誌を読まれる心配もなかったし、一緒に夜の繁華街をぶらついた時も、無料案内所やキャバクラの看板を見て、《うわーすごいすごい、未知の世界やな〜》などと、私わまるで、何も知らないかのような素振りで歩いていたので、それを見て来たあつし君わ、裏切られたような気分だろう。

    私も、あの時の繁華街での反応が、すごく白々しいものとして今蘇り、恥ずかしくなった。

    2007-10-02 01:26:00
  • 195:

    ◆0eliurtmUc

    《塾わ嘘なん?前何してたん?俺に言えないようなことしてたんか?》

    間を空けて、ゆっくりとあつし君わ尋ねる。

    《塾わ…嘘。前のバイトわ…さっきの店長のお店で…キャバクラみたいな感じ。ごめん…》

    2007-10-02 01:28:00
  • 196:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君わ黙り、頭の中を整理するようにため息をついた。

    かなり苛立っているように見えたが、しばらくすると、悲しそうな目をして言った。

    《言いにくかったんも分かるけど、それなら最初に言って欲しかった。キャバクラでどんな客相手にしてたか知らんけど、何をしてたって事実より、それを隠されていたことの方が、俺わ嫌やわ》

    2007-10-02 01:29:00
  • 197:

    ◆0eliurtmUc

    確かに嘘をついた私に非があったけど、引かれるかも知れないような過去を、わざわざほじくり返して打ち明ける必要があるのか?

    悪いのわ私だったけど、そこが納得行かず、反論してしまった。

    《もう過去の話やのに、それ打ち明けて引かれたら、嫌やし。嫌われたくなかったし》

    2007-10-02 01:30:00
  • 198:

    ◆0eliurtmUc

    《引くか引かないかわ俺の価値観。勝手に引かれると決めつけて黙るな。隠すな。》

    《私わあつし君を傷つけたくなくて言わなかったんよ。嘘も方便じゃないけど、とんなに付き合い長いからって、言わなくていいことだってあると思うねん…》

    《隠されてたら、やましくないことでもやましく思えるやろ!》

    2007-10-02 01:31:00
  • 199:

    ◆0eliurtmUc

    私わ、何もあつし君を騙そうだとか、悪意があって隠してた訳じゃない。その意味を伝えたくて話してたのに、混乱したまま言葉がヒートアップして、つい

    《バレなかったらそんなことならんやん!!》

    と、かなり誤解を招く発言をしてしまった。

    2007-10-02 01:33:00
  • 200:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君わ、驚いたように私を見つめ、《バレんかったら何してもいい。そーゆー考えってことか》と言い、車を走らせた。

    2007-10-02 01:34:00
  • 201:

    ◆0eliurtmUc

    ついカッとなって口を出た言葉。冷静に話し合っていれば、出て来なかったであろう言葉。

    でももうフォローが利かないまま、あつし君と私わ、ひたすら重たい沈黙のままマンションへ帰宅した。

    その日わお互いろくに喋らず寝た。次の日も早かったあつし君とわ、朝ご飯も別々、いつも玄関口から聞こえる《行って来ます》も無いまま、バラバラに家を出た。

    2007-10-02 04:49:00
  • 202:

    ◆0eliurtmUc

    今まで喧嘩を翌日に持ち越したことわ無かった。どんなにお互いがキレて収拾がつかなくなりそうな話でも、その日寝るまでのうちに話し合い、解決させて、仲直りしていた。

    同棲してからもそう。互いが好きだからという前提のもと、それわ、当たり前のルールだったように思う。

    それが今回わ仲直りできずじまい。初めて沈黙のまま迎えた朝わ、かなり私をドンヨリとさせた。

    2007-10-02 04:50:00
  • 203:

    ◆0eliurtmUc

    仕事もうつろでやる気が出ない。休憩中、充電すらせずカバンの中のままだった携帯を見ると、Yからメール。

    《あゆ大丈夫?!私ら何の言い訳に使ってくれてもかまわんから、誤解わ解きーや!!あゆと彼氏さんが、仲直りできますように☆(>_

    2007-10-02 04:51:00
  • 204:

    ◆0eliurtmUc

    長く付き合っていくとニュアンスで分かる、相手の気持ち。話して聞いて確かめることも必要だが、あうんの呼吸と言うか、聞かなくても何となく分かる。そんな感情が、二人の間に増えていた。

    昨日私が失言してしまってからのあつし君の顔。

    沈黙を貫く表情からわ、意地になって黙ってるとか、そんなんじゃなくて、何か決意を決めて黙り込んだような、そんな沈黙だった。

    2007-10-02 04:52:00
  • 205:

    ◆0eliurtmUc

    別れわあっけなかった。

    その日バイトから帰宅して夕飯を作っていると、部屋気に着替えたあつし君に、《別れよう。何か昨日のあゆの言葉で吹っ切れてもーた》と言われた。

    キッチンに向かっていた私わ、背中越しでその声を聞き、慌てて振り返った。

    2007-10-02 04:53:00
  • 206:

    ◆0eliurtmUc

    《昨日の最後の、あれわ違うねん。ほんまについカッとなって…》と、泣きそうになりながらあつし君に駆け寄ったが、

    《カッとなること自体、おかしいやろ》

    仲直りするのに時間がかかりそうな気配わあったが、まさか別れに発展するほどまでとわ思ってなくて、あつし君の言葉が信じられなかった。泣いて嫌だと言ったが、あつし君の答えわノーだった。

    2007-10-02 04:54:00
  • 207:

    ◆0eliurtmUc

    向こうのプライドを、完全に傷つける発言だったのだろう…。

    何度悔やんでも悔やみきれないくらい泣いて、あつし君と私わ別れた。

    別れのきっかけって何か分からない。でも、互いが納得した状態で別れられるカップルばかりでわないんだと、私わこの恋で学んだ。だから失恋わつらいのだと。

    2007-10-02 04:55:00
  • 208:

    ◆0eliurtmUc

    受け入れたくない現実も受け止めて、前に進む。

    あつし君との思い出ばかりで染められた一年と半年わ、別れが決まっていっそう美化され、悲しさに拍車をかけた。

    泣いて泣いて毎日頭がボーッとするし、ふとした瞬間、すぐに思い出してつらくなったり、食欲旺盛な私が、自分でも信じられないくらい、この失恋でわご飯が食べれなかった。

    2007-10-02 04:57:00
  • 209:

    ◆0eliurtmUc

    実家が大阪のあつし君わ、《会社からも近いし》と、荷物をまとめて実家へ戻ってしまった。

    前のマンションを引き払っていた私わ、とりあえず半年、同棲していたマンションに住むことにした。その間家賃もあつし君と今まで通り払う。引っ越し費用を貯めるまでの、猶予が半年ということだった。

    私わセッキャバ時代に貯めた貯金がまだ少し残っていたし、引っ越しをするのわ、今すぐと言われても、バイトを増やせば問題が無かった。ただ、住み慣れたこの部屋を手放したくなくて、少し待って欲しいとお願いしたら、半年猶予をくれたのだ。

    2007-10-02 04:58:00
  • 210:

    ◆0eliurtmUc

    でも、この部屋に一人で居るとつらい…。

    しばらく泣いてばかりの毎日を過ごした後、Yに連絡をして会った。

    私が別れたと話すと、Yわ申し訳なさそうにしていたが、実際Yわ何も悪くないし、きっかけわ私の失言。平気平気と私わ笑った。

    2007-10-02 04:59:00
  • 211:

    ◆0eliurtmUc

    《私が出てくまで、あつし君も払ってくれるって》

    《優しいな〜…。普通、別れた相手のその後の面倒なんか、見てくれへんで!私の元彼なんて、自分が浮気したくせに、今まで俺が出してやった生活費分、半分よこせっとか抜かしてきたしなあ!》

    Yの言うとおりだ。

    2007-10-02 05:01:00
  • 212:

    ◆0eliurtmUc

    同棲していた関係とわ言え、別れた相手が残って住む部屋の家賃を払ってくれる。

    そんなの優しすぎるし、私自身、何だか金銭的な問題だけで繋がってる気がして、腑に落ちずいた。

    でも今のマンションの家賃をゆうに払っていけるほど、めちゃくちゃ余裕のある貯金わもう無い。

    2007-10-02 05:02:00
  • 213:

    ◆0eliurtmUc

    《あゆ、私がそのマンションに移り住んだら迷惑?》

    ふとYが切り出した。

    《えっ?いや迷惑じゃないけど…Yそれ本気なん?》

    2007-10-02 05:03:00
  • 214:

    ◆0eliurtmUc

    《あゆが嫌じゃないなら、めーっちゃ本気!何度かお邪魔させてもろたけど、綺麗なマンションやな〜って羨ましかってん!お風呂も広かったやろ?ミナミにも近いし、あたしの職場へも楽勝で通えるし!》

    考えもしなかったが、いろいろ出費のかさむ引っ越しをするより、住み慣れたこの場所で生活を続ける方が、気持ち的にも負担わ軽い。しかもYが来てくれれば淋しくないし、家賃わ半分払ってもらえるし、いいことづくめだった。

    《私もいいよ!むしろ嬉しい!前にも一緒に住みたいて話、してたしなあ!》

    2007-10-02 05:04:00
  • 215:

    ◆0eliurtmUc

    実際、YとMの三人でデザイナーズマンションを借りて暮らしたい。そんな話をしたことがあったし、私わYとの共同生活わウェルカムだった。

    まだあつし君にも話してないから本決まりでもないのに、二人で盛り上がってしまい、その日わ家具屋を覗いたり、おそろの部屋着でコンビニ行こうとか、先走って、ピーチジョンでパジャマを買ったりした。

    Yわ地元が大阪だけど、母子家庭で、お母さんわ、新しい彼氏と暮らしていると言っていた。お母さんにわ、その家で三人で住もうと誘われたが、断り、ワンルームのマンションをミナミに借りて、ずっとそこで住んでいた。

    2007-10-02 05:05:00
  • 216:

    ◆0eliurtmUc

    もともと身軽で、彼氏が出来たらその家にべったり。友達の家にもよく泊まりに行くし、私があつし君と住んでた時も、あつし君が出張でいない日なんかに、泊まりに来ていた。

    あつし君に話し、家賃の負担わもういいからと言うと、承諾してくれた。

    その連絡が、あんなに思い出たくさんだったあつし君との、最後の電話だった。

    2007-10-02 05:06:00
  • 217:

    ◆0eliurtmUc

    身軽なYわ、キャリー一つですぐに私のマンションへやって来た。

    Yとの生活わ楽しかった。

    セッキャバ時代みたいに毎日一緒で、あの頃に戻れたみたいで懐かしかった。少し狭くなるが、三個一だったMも一緒に住まないかと誘ってみた。でも、Mわ今彼氏と同棲していた。

    2007-10-02 05:07:00
  • 218:

    ◆0eliurtmUc

    《めっちゃいいやんー!あたしも今度泊まりに行くから!》と言ってくれた。

    女同士で住むと大変、とよく聞いたが、Yと私わ喧嘩知らずで、毎日楽しく仲良く暮らしていた。

    だが、Yわ心に大きな闇を抱えていた。

    2007-10-02 05:08:00
  • 219:

    名無しさん

    明るいYも、お酒が入るとよく泣いてたし、私も自分の経験上、あまり応援できない相手だったが、私とYが同居しだして3ヶ月経った時、その人が奥さんと本格的に別居し、長居にマンションを借りた。

    Yわ、迷いながらも彼の所へたびたび泊まりに行くようになったが、《正式に離婚してくれるまでわ同棲しない》と言って、同棲を拒んでいた。

    でもYわすごくその人が好きで、同棲したがっていた。

    2007-10-02 06:39:00
  • 220:

    ◆0eliurtmUc

    人間わ欲深い。毎日一緒に居れば、それ以上の幸せ=結婚を望んでしまうから、彼をこれ以上苦しめたくないしと、募る想いに悩んでいたのだ。

    私わできる限り相談に乗ったり、話を聞いたりしていたが、Yわお酒が入った時だけたまに泣き、普段わ笑って元気な素振りを見せながら、《頑張る》と言っていた。

    そんなある日、急に、Yがものすごくご飯を食べるようになった。

    2007-10-02 06:40:00
  • 221:

    ◆0eliurtmUc

    お米を何杯もお代わりするようになったし、夜中にコンビニでポテチをまとめ買いしたと思ったら、次の朝にわ無くなっていたり。

    元から痩せの大食いでまったく太らなかったYだが、さすがに食べ方がハンパなかったので心配になり、注意した。すると止めるが、ご飯をやめてお菓子に切り替え、といった感じで、毎日家にいる時わ何かしら食べていた。

    ある日、夜中トイレに立った私わ、キッチンの炊飯器のお米を手づかみでむさぼるYを見てしまった。

    2007-10-02 06:41:00
  • 222:

    ◆0eliurtmUc

    《ちょっ、Y、何してんの?》

    《いいから!向こう行って!》

    とすぐさまトイレへ駆け込むYを見て、過食嘔吐だと気づいた。

    2007-10-02 06:42:00
  • 223:

    ◆0eliurtmUc

    慌ててタオルを持ってトイレへ近づくと、便器に顔を近づけて吐いていたYが、《もう、向こう行ってー!》と、泣きながら吐きながら、ぐちゃぐちゃの顔で泣き叫んだ。

    私わ、こんな身近にいつも居たのに、Yがどうしてこんなことするようになったのか分からなかった。というか、まったく気づいてあげれなかったことが、ショックだった。

    《あかん、あかんよ、何があったの、話聞くから》

    2007-10-02 06:43:00
  • 224:

    ◆0eliurtmUc

    Yを抱きしめながら、私も泣いてしまった。

    しばらくわ言葉にならない言葉を繰り返し泣いていたYだが、落ち着くと、事情を話してくれた。

    《うちな、小さい頃に親が離婚して、お母さんと住んでてんけど、お母さん、今の彼氏さんとずっと不倫しててん。

    2007-10-02 06:45:00
  • 225:

    ◆0eliurtmUc

    向こうがなかなか離婚に踏み切らへんとかで、よく酒呑みながら、愚痴ってきてさあ…。

    あたしわその時中二やったけど、毎晩愚痴を聞いたげとってん。

    ある日授業が早く終わって家帰ったら、お母さん、炊飯器に手え突っ込んで、お米食べててん。今のあたしと一緒。もう、すごい顔してたんよ、怖くて怖くて。見ちゃいけない気がして、気づかんフリして部屋に上がってしまった。

    2007-10-02 17:40:00
  • 226:

    ◆0eliurtmUc

    今なら分かるねん。あの時のお母さん、つらかったやろうなあって…。何かうち、お母さんと同じような恋してるし、遺伝かなあ?似てるねん》

    何て言葉をかけていいのか分からなかった。

    でもYわ、私が思ってる以上に悩んでいた。

    2007-10-02 17:41:00
  • 227:

    ◆0eliurtmUc

    《そんなにつらいなら、もう無理して溜め込まんと、相手に伝え?向こうわ、Yがはぐらかすから、Yの本間の気持ち、全部分かってないかも知らんで?》

    悪気わないと思うが、Yわ昔から、話を茶化す癖があった。真剣な時わ真剣だし、周りの人間の相談とか、そういうことわ茶化さなかったが、自分の話わすぐに笑い話にしたり、あまり突っ込まんといて、というようなバリアというか、空気を作っていた。

    つらくて爆発しそうな気持ちが、募って、昔見たお母さんと同じ行動を取ってしまったのかも知れない。

    2007-10-02 17:44:00
  • 228:

    ◆0eliurtmUc

    《あたし不倫やし、こんなん恥ずかしくって、誰にも言われへんくってさあ》

    《何ゆってんの!恥ずかしいとか気にしてたん?私らそんなんゆーてる仲ちゃうやろ!Y無理しなくていいよ、もっと自分のこと、楽〜に話してな。もう無茶わせんといて》

    《あゆ…ありがとう…》

    2007-10-02 22:45:00
  • 229:

    ◆0eliurtmUc

    こんなにまっすぐ恋をして悩んでるY。自分を傷つけ苦しんでいるYに、不倫の恋わ酷すぎる。どうかYをこれ以上泣かせないで。たとえ不倫でもYが本気なら、Yにとって、一番いい方向へ進んで欲しい…。

    話し終えて寝たのわ、朝の五時だった。

    2007-10-02 22:45:00
  • 230:

    ◆0eliurtmUc

    Yわそれから頻繁に長居のマンションへ行くようになり、だんだん、私とのマンションへ泊まりに来ることの方が、少なくなっていった。

    Yわごめんなごめんなと言って気にしていたが、彼とわ順調にいっているようで、私わホッとしていた。その代わり、学校が春休みなったMが泊まりに来る日わ、Yもマンションへ来てくれて三人で過ごした。

    何やかんやで今フリーなのわ私だけ…。

    2007-10-02 22:47:00
  • 231:

    ◆0eliurtmUc

    でも、恋でつらくなるたび、友達の優しさや大切さが身にしみたし、親友と呼べるYやMと出会えたことに、すごく感謝。今わ彼氏なんていらないと思った。

    というか、あつし君以上に好きになれる人に、しばらく出会えない気がしていた。自分がまだあつし君に未練たっぷりなのわ、分かっていたから…。

    YもMも居ない日のマンションの静かさわ、なかなか慣れなかった。

    2007-10-02 22:48:00
  • 232:

    ◆0eliurtmUc

    自分がこんなに寂しがりだったのかと、あつし君と過ごす時間を知ってから気づいた。

    迷惑と分かっていても、電話をしたくなる自分がいた。でももし向こうに彼女が出来ていたら。

    今そんな事実突きつけられたら、多分、立ち直れない…。

    2007-10-02 22:49:00
  • 233:

    ◆0eliurtmUc

    かなり臆病になっていた。

    久しぶりにYがマンションへ戻って来た日、近所へ呑みに行きがてら語った。

    Yわ嬉しそうに彼=塚本さんとのことを話してわ、私が冷やかすと、《いやいや全然、今だけやからっ!》と、手を振ってラブラブを誤魔化した。でも、離婚の話し合いわ順調に進んでいて、養育費の話が済んだら離婚成立。あともう1ヶ月の辛抱と言われたらしい。

    2007-10-02 22:51:00
  • 234:

    ◆0eliurtmUc

    奥さんとの家にわ、あれから一回洋服を取りに帰っただけで、《最近毎日一緒やねん。幸せ慣れして来たかも》なんて言っていた。

    ちょっと前までわ、考えられなかったセリフやん!と、私わ祝福をして乾杯。お酒が回って来たところで、自分の悩みを打ち明けた。

    どうしてもあつし君が忘れられずいること…。

    2007-10-02 22:54:00
  • 235:

    ◆0eliurtmUc

    Yわ親身になって聞いてくれた。

    《あたしが今あゆとおんなじ立場やったら、絶対つらいわ。電話してまうと思う。あゆわあたしにゆーてくれたやん。溜め込むなって。今のあゆわ、溜め込んでるんとちがう?あつし君も、今わ後悔してるかも知れへんし、電話してみたら!》

    でもな、吹っ切れたって言われてんもん…。

    2007-10-02 22:56:00
  • 236:

    ◆0eliurtmUc

    なかなか勇気の出なかった私だが、お酒の力も借りて、電話することにした。

    あんなに何度も消したのに覚えてる、あつし君の番号をプッシュして、呼び出し音が鳴るのを待つ。

    プルルルと鳴り出しただけで、お酒の力など吹っ飛び、速攻で酔いが冷めてしまった。

    2007-10-02 22:59:00
  • 237:

    ◆0eliurtmUc

    《はい》

    あつし君が出た。

    慌てて私も《もしもし》と言い、久しぶりやねと会話した。

    2007-10-02 23:00:00
  • 238:

    ◆0eliurtmUc

    仕事で疲れているのか、実家にいるせいか、声のトーンが低い気がした。考えてみれば、もう時間わ深夜一時だった。

    《ごめんね寝てたよね!ごめんなさい!またね!》

    振られたくせに、最後に《またね》と言ってしまった。

    2007-10-02 23:03:00
  • 239:

    ◆0eliurtmUc

    するとあつし君わ笑い、《おうまた連絡するわ》と言ってくれた。

    良かった…。

    いい方向へ進めたかわ分からないが、何だか悪い感じでわ無かった気がして、一分ちょいの会話だったのに、最近のモヤモヤを吹っ飛ばしてくれる、幸せな電話だった。

    2007-10-02 23:08:00
  • 240:

    ◆0eliurtmUc

    それを見たYが、つられて塚本さんに電話していた。《はいはい、じゃあまた明日ね。浮気すんなよ!てゆーか、おまえが浮気するんわ、シャレにならんからなっ!》

    好きで好きでたまらないくせにオラオラなYが、おかしかった。

    次の日もお互い仕事だったので、朝の九時にわ家を出た。今夜わまた一人だったが、淋しくならないようにと、ツタヤに寄ってDVDを大量にレンタル。旧作で安くて面白そうな洋画を、いろいろ借りてみた。

    2007-10-02 23:11:00
  • 241:

    ◆0eliurtmUc

    家に帰って早速観ていると、携帯が鳴る。あつし君からメールだった。

    《お疲れ。今忙しい?》

    私わすぐさま電話をかけた。メールが来ても電話で返事してしまう。私のいつもの癖だった。

    2007-10-02 23:12:00
  • 242:

    ◆0eliurtmUc

    《もしもしっ》

    《おお、お疲れさん。今いけんの?》

    《うん大丈夫やで、今日もYおらんねん》

    2007-10-02 23:14:00
  • 243:

    ◆0eliurtmUc

    《今日も?》

    私とあつし君わ、気まずくもならず、かなり自然に、最近の近況を話し合えた。

    私わYと同居生活を楽しんでいたが、最近わ、Yが彼氏のところへ泊まる日が多く、あまり会わなくなったこと。たまにMが泊まりに来る日だけわ、必ずYも来て三人で過ごしていること。バイトわ相変わらずカフェを続けているということを話した。

    2007-10-02 23:15:00
  • 244:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君も、引き続き実家で暮らしてて、家にお金わ入れてるけど、同棲時代に比べて、かなり出費が減ったこと。相変わらず仕事が忙しくって寝不足などと話してくれた。

    とにかく夢中で話していたら、付けてた映画が一本終わり、時計わ0時を回っていた。

    昔付き合いたての頃わ、充電器差したまま、何時間でも喋っていたなあ…。

    2007-10-02 23:16:00
  • 245:

    ◆0eliurtmUc

    同棲してから長電話なんてしていなかったし、久しぶりの、あつし君との長電話だった。

    《長電話、久しぶりやね》

    私が言うと、

    2007-10-02 23:18:00
  • 246:

    ◆0eliurtmUc

    《ほんまやなあ。まっ、長電話ゆうても、いつもあゆばっか喋りまくってたけどな》

    とあつし君が笑った。

    その瞬間、すごく胸が熱くなり、やっぱりこの人が好きだと思い、涙が出た。

    2007-10-02 23:19:00
  • 247:

    ◆0eliurtmUc

    《あゆ、ごめんな》

    《えっ?》

    《あの時わごめん。あゆがついてた嘘、許してあげれなくって。

    2007-10-02 23:21:00
  • 248:

    ◆0eliurtmUc

    夜の仕事に偏見わないけど、俺わ嘘つかれてたんがショックで、どうしても受け止められなかった。

    でも、そんだけショックやったんわ、そんだけあゆを好きやからやったんやなーと思った。

    離れてみて、大切さが身に染みたよ。

    2007-10-02 23:24:00
  • 249:

    ◆0eliurtmUc

    家出た俺が言えることちゃうけど、もしまだ考え直してくれるなら、もう一度付き合って欲しい》

    私わ号泣してしまった。

    《そんなん、こっちのセリフで…》

    2007-10-02 23:26:00
  • 250:

    ◆0eliurtmUc

    ぐちゃぐちゃになりながら喜んだ。

    その日わ電話を切った後も興奮が覚めず、朝方まで起きていた。

    バイトわ休み。次にYがマンションへ来るのわ週末だったが、とりあえず報告だけわしておこうと、メールを打った。

    2007-10-02 23:28:00
  • 251:

    ◆0eliurtmUc

    《あつし君と、もう一度付き合うことになったよ!(o^_^o)めっちゃ幸せ!Yの次に、幸せ!(笑)》

    メールをしたのわ朝の十時半。ちょうど開店準備をしている頃かなと思ったが、メールの返事が早いYのことだ。きっとビックリするに違いないと思い、返事を待っていた。

    でも、お昼を過ぎても夕方になっても、返事わない。

    2007-10-02 23:30:00
  • 252:

    ◆0eliurtmUc

    忙しいのかなと思ったが、夜になっても返事がないので、おかしいと思った。

    私わ昨日あまり寝れなかった分の眠気がドバッと押し寄せて、夜の八時にわ、すでにベッドでうとうとしていた。

    すると携帯が鳴り、Yからの電話だった。

    2007-10-02 23:32:00
  • 253:

    ◆0eliurtmUc

    私わニヤニヤしながら《もしもしっ》と電話に出たが、聞こえたのわYの声でわなく、知らない男の人の声だった。

    《もしもし、あゆみさんの携帯ですか》

    《そうですけど、誰ですか?》

    2007-10-02 23:34:00
  • 254:

    この小説めっちゃ好き?頑張れ?

    2007-10-02 23:49:00
  • 255:

    この小説めっちゃ好き?頑張れ?

    2007-10-02 23:49:00
  • 256:

    この小説めっちゃ好き?頑張れ?

    2007-10-02 23:52:00
  • 257:

    ◆0eliurtmUc

    名無しさん そんなんゅってもらえて嬉しいです!ぁりがとうございます(>_

    2007-10-03 00:58:00
  • 258:

    ◆0eliurtmUc

    《Yの…あの…塚本と…言いますが…Yが…》

    塚本?

    Yが不倫している相手の名前だ。様子がおかしい。

    2007-10-04 00:59:00
  • 259:

    ◆0eliurtmUc

    《塚本さん?知ってますけど、どうしたんですか?》

    《あ…Yが…倒れて》

    《えっ!どこで!?》

    2007-10-04 01:01:00
  • 260:

    ◆0eliurtmUc

    私わ慌てて飛び起きて部屋着のまま家を出て、Yが倒れているという長居のマンションに向かった。

    部屋に着くと、初めて見る塚本さんが、青ざめた顔をして《こっちです》とドアを開けたまま立っていた。

    中に入るとYわベッドの中に居た。

    2007-10-04 01:02:00
  • 261:

    更新されてる?主さん、マイペースに頑張れ?

    2007-10-04 01:02:00
  • 262:

    ◆0eliurtmUc

    《Y!寝てるの…?》

    少し寝息が聞こえたのでホッとした。

    でも目尻にわ涙を伝った跡があったし、かなり化粧も取れていた。寝顔なのに、やつれてる感じがすごくした。

    2007-10-04 01:03:00
  • 263:

    ◆0eliurtmUc

    《あゆ…何で…》

    《塚本さんから電話があってん!あんたが倒れたてゆうから!どないしたん!》

    《うっ…うっ…》

    2007-10-04 01:06:00
  • 264:

    ◆0eliurtmUc

    ふとそばにあったテーブルを見ると、開封されたバファリンと、カッターナイフが置いてあった。

    すぐにYが自殺を図ったと分かり、私わ塚本さんを見て睨みつけた。

    塚本さんわ動揺しながら、《さ、さっき部屋へ帰って来たら、Yが倒れてて、バファリン1シート飲んでて。

    2007-10-04 01:07:00
  • 265:

    ◆0eliurtmUc

    慌てて吐かせたけど、目わうつろやし、手首に切った跡あるし、もう混乱しちゃって…》

    《あなた…Yに何したんですか!Y、死のうとしたんですよ!よっぽどじゃないですか!警察呼びますよ!》

    《あかんあゆ、警察わあかん…いいから…》

    2007-10-04 01:08:00
  • 266:

    ◆0eliurtmUc

    ベッドのYが、体を起こしてそう言うので、私わYの体を支え、座らせた。

    《何があったん?何でこんなことするんよ…》

    《ごめん…ゆうすけ出てってくれる…》

    2007-10-04 01:10:00
  • 267:

    ◆0eliurtmUc

    Yが塚本さんにそう言うと、塚本さんわ、《車で待ってる》と言って出て行った。

    《あゆ、やっぱりあたしわあの人とあかんみたいやわ…。

    離婚成立なんて嘘やってん。

    2007-10-04 01:10:00
  • 268:

    ◆0eliurtmUc

    それどころか、奥さん妊娠してはってなあ…。

    二人目デキてんねんて。

    いつの間にって話やろ…。

    2007-10-04 01:12:00
  • 269:

    ◆0eliurtmUc

    こないだ服取りに帰ったあの日しか、思い当たらへんもん。

    口も聞いてないてゆってたくせに、やることやっててん…。

    アホみたい。

    2007-10-04 01:13:00
  • 270:

    ◆0eliurtmUc

    離婚なんてせーへんねん…》

    信じられなかったが、Yわ生気を失った顔で、淡々と話した。

    《今朝、いきなり奥さんから電話があってん。

    2007-10-04 01:14:00
  • 271:

    ◆0eliurtmUc

    二人目生まれるし、そろそろ旦那を家に帰してもらえますか〜って言われてさあ…。

    あたし、意味分からんくて。

    すぐに電話切ってゆうすけ問い詰めたら、ごめんしか言わなくて。

    2007-10-04 01:15:00
  • 272:

    ◆0eliurtmUc

    あー全部嘘やったんやなって…。

    もう悔しくて悔しくて泣きまくったけど、だんだん怒りが悲しさに変わって、何かもー生きるのしんどなって…》

    またYが泣き出した。

    2007-10-04 01:17:00
  • 273:

    ◆0eliurtmUc

    かける言葉が見つからず、ただYを抱きしめた。

    《Y、つらかったね。今わ気が済むまで泣いたらいいよ。あんな男忘れるまで泣いたり!Yを悲しませてばかりの男なんか、いらんよ。家に戻っといで!》

    不幸中の幸いだが、Yわ過食嘔吐の時の吐き癖で、塚本さんが帰って来た時、飲んだバファリンわほとんど吐き出せていた。手首の傷も、すぐに出血がおさまり、少し跡が分かる程度のもので、時計とブレスレットを重ねて付ければ隠れた。

    2007-10-04 01:18:00
  • 274:

    ◆0eliurtmUc

    車で待ってた塚本さんにわ、私の方から話をした。

    Yと真剣に付き合ってく気がないなら、もうこんな追い詰めるようなことされても迷惑だし、離れて下さい。

    そう言うと、《好きわ好きやけど、今わ難しい…》とか、この期に及んでまだ煮え切らない話し方をするので、蹴飛ばしてやりたくなるほど腹が立った。

    2007-10-04 01:20:00
  • 275:

    ◆0eliurtmUc

    その日わYを寝かせ、私も長居に一緒に泊まった。

    次の日Yわ仕事だったけど、私から職場に電話を入れて、休ませた。

    《あつし君とやり直す》とメールしていたので、Mから着信があったが、私が掛け直し、Yのことを伝えると、Mもすぐさま駆けつけてくれた。

    2007-10-04 01:21:00
  • 276:

    ◆0eliurtmUc

    泣きすぎて目の腫れたYを見て、Mもまた泣いた。

    2007-10-04 01:23:00
  • 277:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君からも連絡があったが、Yと一緒に家へ戻り、Yが寝てから、改めて電話したので、一日連絡が空いてしまった。

    《ごめんね昨日、連絡できんかって!》

    《ううんいいで。その代わり、今日泊まりに行ってもいい?》

    2007-10-04 02:59:00
  • 278:

    ◆0eliurtmUc

    《えっ…》

    《実わもう、向かってるけど》

    笑いながら言うあつし君に、私わ端的に事情を話した。

    2007-10-04 03:00:00
  • 279:

    ◆0eliurtmUc

    まったく予想できなかったであろう私の話に、あつし君わ驚いていたが、ひとまず会うだけでもあかんかと、車で家の前まで来てくれた。

    久しぶりに会うというのに、私わ看病だとか、色々あってクタクタだったから、化粧っ気も何もない、ボサボサの部屋着姿だった。

    《ごめんねこんなんで…》

    2007-10-04 03:01:00
  • 280:

    ◆0eliurtmUc

    《いいって、大変やってんやろ》

    私わもう一度事の経緯を説明し、塚本って男を許せないと怒った。

    《待って、その塚本って男どんな奴?俺の取引先に、よー似たやつがおんねん。まさかとわ思うけど…》

    2007-10-04 03:02:00
  • 281:

    ◆0eliurtmUc

    《ビンゴやわ。そいつ俺の取引先んとこの塚本さんやわ。よう出会い系使って遊びまくってるって自慢してきててん。まさかこんな形で繋がるとわな…》

    私わ、Yがそんなチャラチャラした奴に遊ばれていたなんて許せなかった。

    その日あつし君と私わ、車の中でしばらく喋ってから、週末また会う約束をして別れた。

    2007-10-04 03:04:00
  • 282:

    ◆0eliurtmUc

    翌朝ボロボロの顔をして目覚めたYわ、《ごめんなあゆ、一週間だけ凹ませて。一週間、凹むだけ凹んだら、もうあんな男のこと忘れるから》と言い、有休重ねて仕事を休み、毎日クラブで呑み散らかした。

    私も、次の日が遅番の時だけクラブに付き合い、付き合えない時わ、朝方帰って来るYの為に、ポカリを用意してバイトへ行った。

    Yわ自暴自棄というか、お酒で気持ちを紛らわし、かなり無理をしていた。

    2007-10-04 03:05:00
  • 283:

    ◆0eliurtmUc

    過食嘔吐の時もそうだが、Yわ自分を極限まで追い詰めるところがあったから、そのたび私わ、きつい言い方になっても注意した。

    《彼氏が欲しい!彼氏が欲しい!》

    すっかりYの口癖になっていた。

    2007-10-04 03:07:00
  • 284:

    ◆0eliurtmUc

    Yわサバサバと明るい性格の良さから、男友達が多かった。

    見た目がかなり可愛いのでナンパもされるが、喋るとコテコテの関西弁で、かなりおばちゃん入ってて面白い。そこが同性からわすごく親しまれるところだが、男の子からわ引かれがち…。

    《だから、仲良くなってもみんな友達になっちゃうねん!》とYわ不満気だったが、男友達の少ない私わ、そんなYがいいなと思った。

    2007-10-04 03:08:00
  • 285:

    ◆0eliurtmUc

    それに、その男友達の中の一人に、密かにYに好意を寄せている人が居たのを、私わ知っていた。

    まさき君というサラリーマン。Yの地元の同級生で、私も何度か会ったことがある男前。

    可愛いYと並ぶと、美男美女でお似合いだったから、《二人付き合ったらいいのに!》と勧めたこともあった。

    2007-10-04 03:09:00
  • 286:

    ◆0eliurtmUc

    Yわ《ないない、死んでもないわ》と真顔で否定していたが、まさき君の方わ《おいっ!俺わいつでもいいねんぞ!?》と、あながち冗談でもないような態度で、Yに突っ込んでいた。

    《なあY、まさき君わあかんの?》

    《まさき?ああ、そーいやこないだミナミでおーてん!偶然難波駅ですれ違ってさあ。》

    2007-10-04 03:10:00
  • 287:

    ◆0eliurtmUc

    《ほんまに?》

    《せっかくやからて、バーで一杯呑んで帰った!ゆうすけの話も聞いてもらったわ。

    酒が入るとあかんなやっぱ!ベラベラいらんことまで喋ってもーて、泣きそうなったし。

    2007-10-04 03:11:00
  • 288:

    ◆0eliurtmUc

    元気出るまで付き合ったるから、また連絡して来いよって。

    本間えー奴!》

    その話を聞いて、嬉しかった。

    2007-10-04 03:12:00
  • 289:

    ◆0eliurtmUc

    まさき君の優しさが、今のYをもっともっと支えてくれますように…。

    しばらくわクラブやお酒のある場に出向いてばかりいたYだが、気の知れた相手と話す時間の方が、今のYにわ必要だったのだろう。

    家で私とダラダラ過ごしたり、まさき君と二人で遊ぶ日が増えた。

    2007-10-04 03:14:00
  • 290:

    ◆0eliurtmUc

    Yわ、私が週末あつし君と会うのに気を遣って、週末わいつもマンションを空けてくれた。

    毎週空けてもらうのわさすがに申し訳なくて、私わいいからと断っていたが、

    《違うねん。あたしも泊まるあて出来そうやねん…》

    2007-10-04 03:15:00
  • 291:

    ◆0eliurtmUc

    Yが照れ臭そうに切り出した。

    《何かまさきに告られてんやん!

    身近に居すぎて気づかんかったけど、めっちゃ居心地いいってゆーか、落ち着くなあって思って。

    2007-10-04 03:16:00
  • 292:

    ◆0eliurtmUc

    付き合おうかと思うねん!》

    そう言ってはにかむY。

    私わ急な展開に驚いたが、めちゃくちゃ祝福をして喜んだ。

    2007-10-04 03:17:00
  • 293:

    ◆0eliurtmUc

    《今度こそ幸せになりいよ!》

    それからわ、お互い週末わデートに時間を割くようになった。

    あつし君わ、以前と変わらず優しくて幸せだった。一度目付き合っていた時と足すと、二年を越えていたので、もうかなり色んなデートスポットを制覇していたが、また昔みたいに関西ウォーカーを買って、車で紅葉を見に行ったり、べたにユニバへ行ったりもした。

    2007-10-04 03:18:00
  • 294:

    ◆0eliurtmUc

    Yもまさき君と仲良くやっていて、付き合ってすぐに誕生日だったYわ、早速指輪をプレゼントされていた。

    《何かまさきと結婚しそう》

    直感で感じる。そう言っていたYが、妊娠をした。

    2007-10-04 03:19:00
  • 295:

    ◆0eliurtmUc

    まさき君と付き合い出して、まだ半年も経たない頃だった。

    陽性反応を示した検査薬を見つめながら、Yわ動揺していた。

    《子供、育てれる自信がない》

    2007-10-04 15:55:00
  • 296:

    ◆0eliurtmUc

    複雑な家庭のもと、幼い頃から両親の愛に飢えていたYわ、幸せな家庭を作るのが夢だった。

    でも、幸せな家庭を知らずに育った自分にわ、そんな家庭の作り方が分からない。自信がないと言うのだ。

    《Y、親の愛情わ理屈じゃないで。大好きな人との子供産んで育てるの、優しいYなら、絶対できるよ!》

    2007-10-04 15:57:00
  • 297:

    ◆0eliurtmUc

    Yがまさき君に《赤ちゃんデキた》と電話を入れると、車で移動中だったまさき君わ、すぐさま家まで駆け付けてくれた。

    玄関へ入るなり、いきなりYの両肩を掴んで《まじで!まじで!うーわ、すげえな!》と興奮状態。

    戸惑うYに向かって《予定日いつになるんや!うーわ、俺もついにパパやんけっ!》とはしゃぐので、そのノリにちょっとヒヤヒヤしたが、

    2007-10-04 15:58:00
  • 298:

    ◆0eliurtmUc

    《産もう、産もう、結婚しよう》と、私も居る場で突然のプロポーズ。

    おもむろにスーツケースを開けて通帳を三つ取り出し、Yに見せたまさき君わ、《俺な、今こんだけしか持ってないけど、これからお前と子供の分も稼ぐから。頑張る。不安にさせへんから、一緒になろう》

    Yわうなずきながら、感動で泣いていた。

    2007-10-04 15:59:00
  • 299:

    ◆0eliurtmUc

    こんなにまっすぐなプロポーズを間近で聞けて、私まで泣いてしまった。

    《良かったなあ、Y、おめでとう…》

    その日から、Yわまさき君の実家へ挨拶に行き、そのまままさき君の家へ移り住んだ。

    2007-10-04 16:00:00
  • 300:

    ◆0eliurtmUc

    いきなり解消することになった共同生活だったが、Yわ妊娠を機に仕事を辞めたし、安定期に入れば、まさき君のマンションと私のマンションわ、またいつでも会える距離にあった。

    Yが出て行くと、また昔みたいに、あつし君との同棲を再開させた。

    私がYたちの結婚エピソードにかなり胸を打たれていたので、しばらくわ、毎日その話をしていたが、あつし君にとってわプレッシャーだった模様。

    2007-10-04 16:00:00
  • 301:

    ◆0eliurtmUc

    《そんなに結婚したいんか!?》とか、まじな顔して聞かれたりした。

    私わ今まで生きてきた中で、あつし君との付き合いが一番濃いし、今わあつし君以外考えられない。

    これからもずっと、このまま、のんびり二人のペースで幸せを築いていきたい…。

    2007-10-04 16:01:00
  • 302:

    ◆0eliurtmUc

    素直にその気持ちを語ると、《準備をしていこう》と、貯金箱を買って来てくれた。

    私の好きな、リラックマの貯金箱。

    《今からやってけば、心配ないやろ》と、結婚資金を貯める貯金を始めてくれたのだ。

    2007-10-04 16:02:00
  • 303:

    ◆0eliurtmUc

    私わ嬉しくて、その月の給料のうち一万円を百円に両替して、さっそく貯金箱に入れた。

    仕事から帰って来たあつし君わ、もうすでに重みのできた貯金箱を揺すり、笑った。

    なかなか疎遠になりがちだったMとも、三人で集まる機会を頑張って作り、月に一度わ会っていたが、香川が地元のMわ、学校を卒業後、香川に帰って美容師になることが決まった。

    2007-10-04 16:03:00
  • 304:

    ◆0eliurtmUc

    同棲していた彼も、香川出身らしく、一緒に帰るとのこと。

    すごく淋しかったけど、Yに子供が生まれたら、絶対に大阪へ祝いに来ると約束してくれた。

    安定期に入るまでのYわ、つわりがひどくてかなりしんどそうだったが、5ヶ月経ったらつわりもおさまり、《やっと落ち着いて寝れるわ!》と喜んでいた。おなかもあまり膨らまず、細身のYが、胸ばかり大きくなるので、まさき君が《イエローキャブ》とか言ってからかっていた。

    2007-10-04 16:04:00
  • 305:

    ◆0eliurtmUc

    出産当日わ駆けつけられなかったけど、生まれた瞬間まさき君から連絡が入り、オギャーオギャーと泣き叫ぶ赤ちゃんを、写メで撮って送ってくれた。

    可愛い可愛い女の子。

    自分のことのように感動し、嬉しかった。

    2007-10-04 16:06:00
  • 306:

    ◆0eliurtmUc

    私とあつし君も、その頃すでに三年を越える付き合いをしていたし、もう意志わ決まっていたから、籍を入れたいと、田舎の両親へ挨拶に行った。

    母わ喜んでくれたが、父わあまりあつし君と喋らず、他人行儀な感じだった。

    だが、夜ご飯を終え、お酒を交えて話をしてると、リラックスしたのか盛り上がり、父とあつし君の唯一の共通点。大好きな三国志の話で、意気投合していた。

    2007-10-04 16:06:00
  • 307:

    ◆0eliurtmUc

    大阪生まれの大阪育ちだったあつし君わ、海と山しかない私の田舎を、《すごい!すごい!》と感激しながら眺めてわ、携帯でパシャパシャ風景を写メっていた。

    田舎での挨拶も無事済み、今度わ大阪のあつし君の両親のもとへ挨拶に行った。

    《本間わ娘が欲しかった》と言うあつし君のお母さんわ、私のことを《お人形さんみたいやねえ》と言って気に入ってくれたし、お父さんも、穏やかな口調で《よろしくね》と優しかった。

    2007-10-04 16:07:00
  • 308:

    ◆0eliurtmUc

    あつし君の口数の少なさわ、お父さんに似たのかと思い、何だか微笑ましかった。

    私の家わ貧乏やからと、あまり金銭的な支援わ期待してなかったが、ひそかに貯めてくれていたお金を、《冷蔵庫とか、色々買いなさい》と言って渡してくれた。

    あつし君の両親からも、新婚旅行の費用を出してもらうことが決まり、二人が付き合い出した日でもある私の誕生日に、入籍した。

    2007-10-04 16:08:00
  • 309:

    ◆0eliurtmUc

    新婚旅行わハワイ。

    日本人ばかりで萎えたけど、初海外に、すっかり舞い上がり、くたくたになるまで海で遊んだ。

    日本に戻って来てからの新婚生活わ、Y夫婦が近所に居るということもあり、専業主婦になってからも、充実していた。

    2007-10-04 16:09:00
  • 310:

    ◆0eliurtmUc

    まだ小さいYたちの娘・愛梨ちゃんの相手をしていると、可愛くて可愛くて、やっぱり自分も子供が欲しいと強く思った。

    2007-10-04 16:10:00
  • 311:

    ◆0eliurtmUc

    帰り道、何となく花屋さんへ寄って、綺麗なガーベラとカスミ草を買った。

    公園を横切る時、小さな子供のはしゃぐ姿と、心配そうに見守る母親、笑ってかけ声をかけている母親たちの様子を見て、また心が和んだ。

    なかなか子供にわ恵まれずいるが、私とあつし君も、知り合ってから早五年。

    2007-10-04 16:11:00
  • 312:

    ◆0eliurtmUc

    かなりショックでYに話すと、あまりSちゃんと親しくなかったYわ《ふーん》の一言。

    でも、《それが普通かも》と言った。

    《あたしらあんな世界で出会ったくせに、よー続いてると思うもん!やっぱ辞めたら疎遠になる子多かったし、うわべな子ばかりやったなって。まあ、特殊な仕事やったから、辞めて疎遠になるのも当たり前ってゆーか、普通わそうせなあかんてゆーか。

    2007-10-04 17:17:00
  • 313:

    ◆0eliurtmUc

    Sちゃんなんて、職種も変わってもーたんやろ?残念やけど、そういうことかも》

    確かにYの言う通りで、最後にSちゃんと会った時も、別れ際、《もうあんま会えんくなるかもなあ》みたいなことを言われていた。

    あの時の私わ、それがどういう意味かを深く考えず、《何ゆーてんの!またいつでも遊ぶやん》とムキになって否定したが、今なら何となく、Sちゃんの言おうとした意味が分かる。

    2007-10-04 17:18:00
  • 314:

    ◆0eliurtmUc

    夜の世界を離れてしまえば、その世界の人たちと生活リズムがずれ、金銭感覚も合わなくなる。Sちゃんの派手な見た目、金遣いの荒さにわ驚いていたが、背伸びしていた昔の自分だって、周りにわ同じように見えていたかも知れない。

    連絡が取れないと分かった瞬間、Sちゃんが遠い、手の届かないような所へ行ってしまったような、悲しい気持ちになった。
    “いつか会えたら…。”

    2007-10-04 17:19:00
  • 315:

    ◆0eliurtmUc

    どんなに疎遠になろうと、一度わぐっと距離が近づいて、本音で話せた仲だ。私が泣いて落ち込んだ時、いつも頼らせてくれて、泊まらせてくれた。悩みもいっぱい打ち明け合った。うやむやに終わるのわ悲しかったし、私わまたSちゃんに会いたかった。

    それがなかなか無理になっても、Sちゃんの心の片隅にでも、私のことを置いてて欲しかった。

    私との思い出を想う気持ちまで、ずれてて欲しくなかった。

    2007-10-04 17:20:00
  • 316:

    ◆0eliurtmUc

    Yの家から帰り、買って来たガーベラたちを花瓶に移し替え、水をやり、日当たりのいいベランダ前のコーナーへ飾る。

    夕飯のカレーの支度をしながら、いろいろ思いを巡らした。

    18で大阪へ出て来てから今まで、沢山の出来事があった。

    2007-10-04 17:21:00
  • 317:

    ◆0eliurtmUc

    いい思い出も悲しい思い出もあるけど、誰と比べるでもない、大切な私の軌跡――。

    その出来事の一瞬一瞬が、私を成長させてくれたように思う。

    知らなかった世界。知らなくても良かった世界。人に隠された傷。闇。

    2007-10-04 17:21:00
  • 318:

    ◆0eliurtmUc

    色んな衝撃に直面することもあったが、遠回りしたような経験だって、どれも私の財産だ。

    これからも沢山の大切な時を刻んでいく。

    今そばにいる大切な人たちに囲まれながら…

    2007-10-04 17:22:00
  • 319:

    ◆0eliurtmUc

    いつでも笑っていたい。



    《完》

    2007-10-04 17:24:00
  • 320:

    ◆0eliurtmUc

    途中応援してくれた名無しさん、返事が遅くなりましたが、嬉しかったです(>_

    2007-10-04 17:38:00
  • 321:

    ◆3AtoEaoA9k

    お疲れ様でしたぁ??

    2007-10-04 18:42:00
  • 322:

    名無しさん

    一気に読みました??めっちゃよかった???????

    2007-10-04 20:08:00
  • 323:

    完結おめでとう、ありがとう??めっちゃよかった!これからもあつし君とお幸せに?失礼かもしれないけど最近の小説は完結しないまま放置が多いからまさか完結するとは思わなかってめっちゃうれしい(^ー^)v

    2007-10-04 20:48:00
  • 324:

    完結おめでとう、ありがとう??めっちゃよかった!これからもあつし君とお幸せに?失礼かもしれないけど最近の小説は完結しないまま放置が多いからまさか完結するとは思わなかってめっちゃうれしい(^ー^)v

    2007-10-04 20:55:00
  • 325:

    名無しさん

    お疲れさまでした。
    主さんの書き方がすごく上手で尚、主さんの性格の良さが滲みでてくる小説やなと思いました?

    終わってしまって寂しいけど、幸せな家庭を築いて行ってね?

    2007-10-04 21:14:00
  • 326:

    名無しさん

    主さんの良さがにじみ出てた??いい小説でした?
    お幸せに?????

    2007-10-04 21:23:00
  • 327:

    ◆0eliurtmUc

    今このスレが上がってるの見てびっくり(>_

    2007-10-04 23:03:00
  • 328:

    名無しさん

    お疲れ様でした?
    感動して鳥肌たってしまいました。
    最初から読んでたんですが邪魔になったら悪いから完結してから書き込みしようと思って今までしませんでした。
    主さんは性格の良さも滲み出てますし何より純粋な方ですね。あつし君と末永くお幸せに?

    2007-10-05 10:53:00
  • 329:

    ◆0eliurtmUc

    コメントほんとにありがとうございます(>_

    2007-10-05 15:44:00
  • 330:

    名無しさん

    無料ゲーム&SNSサイト[モバゲータウン]って、おもしろいよ!小説も読めるし、書ける!登録してみてね〜 Http://mbga.Jp/AFmbb.5jqw271418/
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    2007-10-05 17:39:00
  • 331:

    名無しさん

    きっと主さんの人柄ですよ(o^o^o)いい小説読めてよかったです。なんだか幸せな気持ちになれました!完結、お疲れさまでした☆

    2007-10-05 17:40:00
  • 332:

    ◆0eliurtmUc

    コメントほんとに嬉しいです(/_;)ありがとうございます☆☆

    2007-10-05 21:19:00
  • 333:

    名無しさん

    新しい小説書いてますか?

    2007-10-06 17:14:00
  • 334:

    ◆0eliurtmUc

    >>347 はい書いてます(^^ゞ

    2007-10-07 03:57:00
  • 335:

    フォーリン??

    2007-10-07 06:58:00
  • 336:

    ◆0eliurtmUc

    >>349 はいそうです(o^_^o)

    2007-10-07 11:12:00
  • 337:

    名無しさん

    読んでますよ?

    2007-10-07 12:54:00
  • 338:

    ◆0eliurtmUc

    >>351 ほんとですか!ありがとうございます(o^_^o)

    2007-10-07 13:50:00
  • 339:

    名無しさん

    ここの主さんまじすき?
    あーげっ(・∨・)?!

    2007-10-13 02:57:00
  • 340:

    名無しさん

    ????

    2007-10-14 18:30:00
  • 341:

    ◆0eliurtmUc

    >>353 そんなんゅってもらえて照れます(o^_^o)ありがとうございます☆
    >>354 ありがとうございます!

    2007-10-17 05:00:00
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