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fallin'

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  • 1:

    ◆0eliurtmUc

    さまよい願い、始まる世界…

    2007-10-06 00:51:00
  • 2:

    ◆0eliurtmUc

    《そういうわけで、誠に申し訳ないけど、今月分の給料が払えなくなってなあ》

    店長わそう言うと、湯気の立つインスタントコーヒーを啜り、気まずそうにうつむいた。

    《えっ、そんな…困ります!》

    2007-10-06 00:53:00
  • 3:

    ◆0eliurtmUc

    私わ座ってたイスから立ち上がり、店長に向かって叫んだ。

    《悪いなあ。私もどうにかしてやりたいけど、何せこの赤字で、どうにもできんくなってもうて…》

    《たっ、退職金わ!?》

    2007-10-06 00:53:00
  • 4:

    ◆0eliurtmUc

    《すまない。》

    《そんな……》

    突然の解雇通知。

    2007-10-06 00:54:00
  • 5:

    ◆0eliurtmUc

    二年近く勤めていたスーパーが、近所に新しく出来たデパートに追い打ちをかけられ、赤字が続き、ついにわ営業を打ち切り倒産すると決まったのだ。

    元々小さなスーパーで、地元の馴染みの古いお客さんばかりが顧客の、細々としたお店だったが、それなりに売り上げわ安定していた。

    だが、すぐ近所にオープンした大型スーパーわ、物珍しさと立地の良さからかなり賑わい、あっという間にうちのスーパーの客入りわ減った。

    2007-10-06 00:55:00
  • 6:

    ◆0eliurtmUc

    《大丈夫かな》と、お店の従業員と噂したりもしていたが、店長や上の人間わのん気なもので、《大丈夫大丈夫。そのうちみんな戻って来るわ》と笑っていた。

    それが突然の倒産。解雇だ。

    《私、今日から無職やん…》

    2007-10-06 00:56:00
  • 7:

    ◆0eliurtmUc

    転職するなど考えていなかった私わ、次のあてなどすぐにわ浮かばず、呆然とした。

    従業員のみんなも、突然の出来事にかなり驚いていたが、私のように怒ったりする人わ居なかった。

    と言うのも、うちの従業員わ実家組がほとんどで、《働かず家にいるのわ気まずいから》と、申し分ない程度に家へお金をいれる為、適度に働いている。といった感じの人間ばかりだったのだ。だから、《しばらくわまたプーやなあ》なんて、突然訪れたプータロー生活を、喜ぶ人すら居たりした。

    2007-10-06 00:58:00
  • 8:

    ◆0eliurtmUc

    スナックで働いていた母わ、父と別れてからわずっと酒浸り。店のお客と何度も付き合い、何度も別れてわ、また酒にすがると言う、娘の私が呆れるような、自堕落な生活をしていた。

    そんな母を見ていたら、素直に店を手伝おうという気にわなれず、進学の意志を話した時も、《出てく金わ出すから》と言った感じで、あっさりしたものだった。

    父の顔わ知らない。

    2007-10-06 01:00:00
  • 9:

    ◆0eliurtmUc

    私が生まれて間もない頃に母と離婚し、今わ小料理屋を経営してるということを、一度だけ母から聞いたが、それっきり。

    何も近況を知らなかった。

    こんな母を愛し、結婚を決めた父がどんな人なのか、興味わあったし、どうして子供の私に会おうと思わないのかと、淋しくなったりもしたが、父のお店へ行って問い詰めたところで、悲しい答えが返ってくるのも怖かった。

    2007-10-06 01:01:00
  • 10:

    ◆0eliurtmUc

    買いたてのスーツとパンプスで歩き回り、何社何十社と面接を受けたのに引っかからず、最後にやけくそになって受けた隣駅のスーパーで、何とか正社員として採用してもらえたのだ。

    給料的にわ不満だったが、店長の人柄の良さに惹かれ、気づけば二年も勤めていた。

    最初の半年わあっという間に過ぎたが、一年経つと、日々の生活でいっぱいで、学費がなかなか貯まらない現状に焦りを感じ、すすんで店の残業を手伝った。

    2007-10-06 01:03:00
  • 11:

    ◆0eliurtmUc

    毎日遅くまでお店に残って雑務をこなす私わ、店長から、《いつも頑張ってくれてるし、給料アップさせなあかんねえ〜》

    そう言われていた矢先の出来事だった。

    《明日からどうしよう…》

    2007-10-06 01:05:00
  • 12:

    ◆0eliurtmUc

    必死で貯めていた学費も、次の仕事が決まるまでの生活費の繋ぎに当てていたら、すぐに底を尽きてしまう。

    学費を削らねばならなくなった現状と、せっかく大阪まで出て来たのになというやるせなさで、落ち込んだ。

    鹿児島に帰ろうか考えた。

    2007-10-06 01:05:00
  • 13:

    ◆0eliurtmUc

    でも、向こうに居たって母の酔いつぶれた顔ばかり見る毎日わごめんだ。

    毎日お店を閉めてから、ゲーゲーとしんどそうに吐く母を看病し、ご飯を用意しながら、《お前、ほんとわめんどくさいと思ってるんだろ》なんてつぶやかれる。

    どうして家のお母さんわこうなんだろうと、何度も思った。

    2007-10-06 01:06:00
  • 14:

    ◆0eliurtmUc

    周りのみんなの母親みたいに、凝ったお弁当を作ってもらったり、誕生日を祝ってもらったりしたかった。

    テストの点が悪いと怒られたり、帰る時間が遅いと注意され、門限を作られたりしたかった。

    2007-10-06 01:08:00
  • 15:

    ◆0eliurtmUc

    構われたかった。

    心配されたかった。

    ただそれだけだったのに…。

    2007-10-06 01:09:00
  • 16:

    ◆0eliurtmUc

    大阪へ出ても彼氏の一人も出来ず、友達わスーパーの従業員のうち数人。それも、倒産してからわ疎遠になるような、薄っぺらいものだった。

    解雇を聞かされた当日わ、ショックと脱力感で何もやる気が起こらなかったが、次の日になると、《とにかく働こう》と気持ちを切り替え、街中に置いてある無料の求人誌をかき集め、めぼしい職場を探し、面接の予約を取り付けて眠った。

    とりあえず繋ぎで働ける場所を見つけて、そこで働き、ある程度貯金に余裕が出来たら、また正社員で働ける職場を探そう。

    2007-10-06 01:10:00
  • 17:

    ◆0eliurtmUc

    でも、母のドロドロとした客との恋愛を目の当たりにして来たせいか、いまいち冷めていた私わ、惚れっぽくなくて、相手から言い寄られ、それなりに《好きかな》と感じても、そこからなかなか恋愛に発展しなかった。

    だから、実際まともな恋愛経験値わゼロに等しい。

    人見知りする性格もあって、コンパみたいな軽いノリわ慣れなかったが、新しい出会い、素敵な予感のする出会いに期待して、参加していた。

    2007-10-06 01:12:00
  • 18:

    ◆0eliurtmUc

    その日のコンパわ至って普通で、普通に楽しくお酒を飲み交わし、無難に解散かな…と思ってた矢先、席替えが行われ、私からかなり遠い位置に座っていた、たける君という男の子が横に来た。

    《初めまして〜。うわっ、えみちゃん結構呑んでる!?顔真っ赤やで!可愛いな〜》

    何か出だしから軽いなと思ったが、正直ルックスわいけてると思った。

    2007-10-06 01:14:00
  • 19:

    ◆0eliurtmUc

    《お、お酒弱くて、すぐ赤くなるねん。そんなに酔ってわないねんけどね、赤くなりやすくって》

    《可愛い可愛い!何杯呑んでもびくともせん奴よりか、ずっと可愛い!》

    たける君わかなりトーク上手で、コンパの盛り上げ役にわ持って来いみたいなキャラだった。

    2007-10-06 01:34:00
  • 20:

    ◆0eliurtmUc

    笑うと笑顔がクシャッとなって母性本能をくすぐる、かなりモテそうなタイプ。

    《はいはいはーい!今からえみちゃん真剣に口説くんで、邪魔せんといてな!よろしく!》

    立ち上がって周りにそう言うと、私の顔をガッチリと見つめ、《えみちゃんていくつなん?仕事わみんなと同じやんね?今彼氏わっ?好きなタイプとか!》と質問責め。

    2007-10-06 01:35:00
  • 21:

    ◆0eliurtmUc

    周りの男の子たちに《出た!たける。始まったわこいつ〜》なんて茶化されたので、恥ずかしくなり、まともに対応してたらいけない気がした。

    《そ、そんなチャラチャラした人にわ話されへんわ!》

    私わ言ったが、《何で何で!おいこら!お前らが茶化すから、えみちゃん怒ってもーたやんけ!だほが!》と言い出し、周りわ爆笑した。

    2007-10-06 01:37:00
  • 22:

    ◆0eliurtmUc

    《ごめんなえみちゃん、気い悪くした!?俺、ノリいいせいか、よーチャラく見られんねん…。確かにこういう飲み会好きやし、誘われまくってるけど、彼女できたら一切行かへん!彼女おったら、毎日七時にわ家やで!仕事から直帰して、大人しくしてんねん!》

    大人しいたける君。

    何だか想像がつかなくて笑ったら、《えみちゃん笑顔が絶対可愛い!俺の隣で笑ってくれたら、もっと可愛いのに〜!》とギャーギャー騒がれた。

    2007-10-06 01:38:00
  • 23:

    ◆0eliurtmUc

    しきりにアピールされたが、周りの視線が気になって、なかなかうまく受け答え出来なかった。でも、コンパがお開きになる直前のトイレタイムで、《いいな〜えみちゃん、たける君に惚れられまくりで!》《あたしも思った〜!めっちゃかっこいいし!ズルい〜》なんて口々に言われたので、《私も結構、いいかなって…》と、本音を漏らした。

    結局その日わ全員誰かしらと番号を交換し解散したが、女の子チームわ、みんな《微妙》と文句を言っていて、まともに進展がありそうだったのわ、私とたける君くらいだった。

    帰りの電車でかなりからかわれたが、《私もまだ分からない》しと、その場をはぐらかした。

    2007-10-06 01:40:00
  • 24:

    ◆0eliurtmUc

    でも、お酒の勢いもあってか、チャラチャラしてそうなたける君の印象わ、悪くなかった。

    帰宅してからすぐに、たける君からメールが届いた。

    絵文字いっぱいのにぎやかなメールが、たける君らしくて微笑ましかった。

    2007-10-06 01:41:00
  • 25:

    ◆0eliurtmUc

    次の日から、毎日たける君とメールのやりとりをした。

    大阪へ出て来てから、初めてまともに意識する相手が出来たことで、私も少し舞い上がっていた。

    たける君わ、私より四歳年上の24歳。十代の頃から、クラブイベントにしょっちゅう顔を出すDJをしていたが、その時知り合った社長さんのコネで、今の不動産会社へ入社したらしい。

    2007-10-06 01:42:00
  • 26:

    ◆0eliurtmUc

    クラブなんて行ったことのない私にわ、たける君が元DJ、という経歴が、たいそう華やかに感じた。

    三人姉弟の末っ子で、お姉さんが二人。つい最近まで家族と住んでいて、実家にわ、おじいちゃんおばあちゃんも健在。まだまだ元気で、未だにお年玉なんかくれるらしい。

    私とわまるで違う明るそうな家庭環境に、少し引け目を感じたが、そんな恵まれた環境で育ったたける君に、ますます興味が沸いた。

    2007-10-06 01:43:00
  • 27:

    ◆0eliurtmUc

    《えみちゃんわ母親似っ!?父親似っ!?》

    何気なく聞かれたその言葉に、私わ内心傷ついた。

    自分わ母しか知らないし、仮に母似だったとしても、照れとかそんなんじゃなくて、心底嬉しくなかったからだ。

    2007-10-06 01:44:00
  • 28:

    ◆0eliurtmUc

    私わうろたえてしまったが、《わっ、分からへん!》と話を逸らした。

    自分のことをバンバン開けっぴろげに話せるたける君が、羨ましかった。

    家族に愛され幸せに育ったたける君の、デーンと構えた優しさに、もっと触れたくなった。

    2007-10-06 01:45:00
  • 29:

    ◆0eliurtmUc

    気づけば私わ、たける君がすごく気になっていた。

    仕事わバイトと言えど週6勤務で、土曜わ午前のみだったが、受付時間ギリギリに駆け込む患者さんが多くて、必ず残業になった。

    まともな休みわ日曜だけだったが、たける君も、土曜わほとんど仲間と飲み会だったので、空いてる休みわ同じく日曜。車でドライブをしたり、カラオケに行ったり、毎週デートを楽しみながら、友達以上恋人未満の関係が続いた。

    2007-10-06 01:46:00
  • 30:

    ◆0eliurtmUc

    ある日、いつものようにデートをしていて、プリクラ撮ろかとゲーセンに寄った。

    私わトイレに行きたかったので先にトイレへ向かい、たける君の待っているプリクラ場所に戻ると、たける君が居ない。

    《あれ?》と思って周辺をグルグル探していると、《えーみちゃんっ!》といきなり後ろから抱きしめられた。

    2007-10-06 01:49:00
  • 31:

    ◆0eliurtmUc

    《たっ!たける君、おらんかったから、探しててん!》

    《あはは!何かな、ガチャガチャあったからやっててん。ほんじゃあこんなん出て来てん、あげるわ!》

    渡して来たガチャガチャのカプセルを開けると、中にわ鍵が入っていた。

    2007-10-06 01:50:00
  • 32:

    ◆0eliurtmUc

    《鍵?》

    意味が分からず尋ねると、

    《鍵!正解!俺んちの鍵!》

    2007-10-06 01:51:00
  • 33:

    ◆0eliurtmUc

    たける君が、クシャッと笑顔を見せながら言った。

    《俺ら出会いがあんなとこやし、何か警戒されてるのかなって思って、なかなか言えなかったけど、俺まじでえみちゃんが好きや!大事にするから、付き合ってくれへん?》

    不意打ちの告白に、クラクラしながらOKをした。

    2007-10-06 01:52:00
  • 34:

    ◆0eliurtmUc

    秋の初めの出来事だった。

    まともにキスくらいしかしたことのなかった私わ、たける君とがすべて初めての経験だった。

    ハタチで経験が無いなんて恥ずかし過ぎて、初お泊まりの日わ黙ってベッドに入った。でも、直前になって緊張でパニックになり、真っ赤になりながら、《ごめん初めてやねん》と告白。

    2007-10-06 01:53:00
  • 35:

    ◆0eliurtmUc

    たける君わ驚いていたけど、黙って抱きしめキスしてくれた。行為そのものに対する感想わまだピンと来なかったが、好きな人と、肌と肌で触れ合えた幸せが、じんわり染み入る夜だった。

    それからも、毎週日曜わ、互いの家を行き来して仲良くしていた。

    私の家わさほど広くなかったが、隣の部屋がちょうど空いていて、そこわ、私の部屋の間取りに一つ部屋を足した造りになっていた。

    2007-10-06 01:54:00
  • 36:

    ◆0eliurtmUc

    たける君と、毎週新しい家具やインテリア雑貨を集めたり、揃いの食器で食事をした。

    小さい頃から家事全般をこなしていた私わ、少ないレパートリーながら作る煮物や味噌汁を、《やばい!旨すぎ!》と、たける君のどでかいリアクションで食べてもらえた。

    幸せな毎日だった。

    2007-10-06 01:57:00
  • 37:

    ◆0eliurtmUc

    親の離婚という経験からか、結婚願望なんて無かった私が、少し夢見てしまうほど、明るくて無邪気なたける君が、大好きだった。

    だが、職場でセクハラを受けるようになり、悩んでいた。

    最初わ言葉のセクハラで、胸の大きさを聞かれたり、それを冷やかす程度だったが、徐々にエスカレートし、彼氏とどんな風にしてるのだとか、どこが感じるのだとか…。

    2007-10-06 01:58:00
  • 38:

    ◆0eliurtmUc

    たまらなくなって、たける君に相談しようと思ったが、ちょうどその時たける君わ社員旅行で、沖縄に行っていた。

    大阪に戻って来るのが明後日だからと、それまで我慢して仕事。お昼休み、同僚の女の子に愚痴ってみると、以前も院長のセクハラに耐えきれず、辞めた子が数人居るらしい。

    そもそも私わ、受付の仕事を長くやる気わ無かった。正社員で働ける仕事先が見つかるまでの繋ぎだ。

    2007-10-06 02:00:00
  • 39:

    ◆0eliurtmUc

    何も言わずに辞めてしまうが、セクハラの話をすれば理解してくれるだろう。

    疲れているとわ思うが、帰って来たら、すべてを話そう。聞いてもらおう。

    そう思い、朝、職場へ向かう前に《おはよう!今日ね、帰りわ何時頃になる?話したいことがあるねんっ(。・_・。)ノ》とメールしてから、家を出た。

    2007-10-06 02:03:00
  • 40:

    ◆0eliurtmUc

    言葉のセクハラと言えど、被害を受けたのわ私で、こちらにまったく非わない。堂々としてればいいのだけれど、部屋で二人きりになって話をするのわ、何だか気が引けた。

    その日わ患者さんが少なく、夕方の診察時間終了前も、混み合わず、スムーズに仕事が終わった。

    女の子たちに《行って来る》と宣言し、《頑張れ〜っ》と応援されながら院長室へ向かった。

    2007-10-06 02:04:00
  • 41:

    ◆0eliurtmUc

    ノックをしてから院長室に入る。

    座っていた院長わ、いつものいやらしい目つきで私を見て来る。まるで私と部屋で二人きりになれた今の状況を、楽しんでいるかのようだった。

    鳥肌の立つ視線を遮り、私が言葉を発しようとした瞬間、いきなり抱きつかれ、胸を触られた。

    2007-10-06 02:05:00
  • 42:

    ◆0eliurtmUc

    《いやーっ!!!》

    思わず叫んだが、とっさに口を塞がれ声にならない。

    恐怖を感じて黙っていると、《させてくれたらお給料も増額してあげるよ、良くしてあげるから》と、スカートの下から手を入れて来たので、精一杯の力で蹴りを入れ、突き飛ばした。

    2007-10-06 02:06:00
  • 43:

    ◆0eliurtmUc

    院長わ倒れ、しりもちをつき、ズレたメガネを直しながら、《逆らうのならもう知らん。勝手にしろ》と冷たく言い放った。

    ダッシュで更衣室に戻り、着替えて病院を出て駅へ向かう。

    怖くて震える体を押さえながら、携帯を開くが、たける君から連絡が無い。

    2007-10-06 02:07:00
  • 44:

    ◆0eliurtmUc

    時間わ七時。

    まだ飛行機の中かなと思い、まっすぐ帰宅して夕飯の支度に取りかかることにした。

    キッチンに向かっていても、院長のあの視線、さっきまでの光景が目に浮かび、頭にこびりついて離れない。

    2007-10-06 02:08:00
  • 45:

    ◆0eliurtmUc

    気持ち悪くって何度も鳥肌を立てながら、まだ連絡のつかないたける君を待った。

    でも、九時になっても連絡が無く、十時になっても十一時になっても連絡が無いままで、さすがに何度か入れたメールと着信にも、無反応。

    結局その日、たける君わ帰って来なかった。

    2007-10-06 02:09:00
  • 46:

    ◆0eliurtmUc

    事故にでも遭ったんじゃないかと、明るくクシャッと笑うたける君の笑顔を思い浮かべながら、最悪の状況が頭をよぎり、不安で涙が出た。

    何度も何度も電話したが出ず、眠れないまま朝を迎えた。

    寝不足のだるさを感じながら病院へ向かうと、同僚の女の子が心配そうに駆け寄って来て、《えみちゃん、院長が、今日から来なくていいって言わはって》と言って来た。

    2007-10-06 02:10:00
  • 47:

    ◆0eliurtmUc

    《何で!?》

    慌ててシフト表を見ると、私の名前の欄に棒線が引かれ、シフトも真っ白。まるで名前だけ書き間違えたかのような扱いをされていた。

    《ひどい……》

    2007-10-06 02:11:00
  • 48:

    ◆0eliurtmUc

    院長の誘いを断った途端に、この扱いだ。

    その姑息なやり方に腹が立ったが、こんな病院こっちから辞めてやると、ロッカーに置いていた私物をまとめ、みんなに挨拶をして出て行った。

    辞めるつもりで居たとわ言え、こんな惨めな扱いを受けて辞めるのわ、悔しかったし、泣けてきた。

    2007-10-06 02:12:00
  • 49:

    ◆0eliurtmUc

    “昨日から私、ずっと泣いてるなあ…”

    そう思いながら電車に乗り、グラグラ揺られながら、まだ平日の昼前だと言うのに家へ着いた。

    ドアを開けようとすると、鍵がかかっていない。

    2007-10-06 02:13:00
  • 50:

    ◆0eliurtmUc

    開いていた。

    “あれっ、朝閉め忘れたかな…”

    ふいに中から物音がして、

    2007-10-06 02:14:00
  • 51:

    ◆0eliurtmUc

    “たける君?帰って来てるの?”

    とドアを開けようとした瞬間、

    《あはは!本間たける荷物多すぎ〜》

    2007-10-06 02:15:00
  • 52:

    ◆0eliurtmUc

    と女の声がした。

    耳を疑う。

    《しゃーないやん!あーでも全部持ってくとなると大変やなあ!俺、来る時こんなに服とか多かったっけ?!》

    2007-10-06 02:16:00
  • 53:

    ◆0eliurtmUc

    《今日が無理なら、明日の昼間もまた来ればいいやん。元彼女さん、明日も仕事やろ?》

    元彼女さん…?

    意味が分からず、ドアノブに手をやったまま、呆然と立ち尽くしていた私。

    2007-10-06 02:17:00
  • 54:

    ◆0eliurtmUc

    談笑しながら玄関へ向かう二人の声が近づいて来たので、無言でドアを開けると、

    《うわっ!えみ!?》

    驚くたける君と女の顔があった。

    2007-10-06 02:18:00
  • 55:

    ◆0eliurtmUc

    たける君の横にいたのわ、明るい茶髪の髪をぐりんぐりんに巻いた、派手な化粧をした女。香水臭くて、胸の大きさを露骨に強調したようなタイトなニットに、ミニスカートを履いて、お水っぽさ満開の女だった。

    《何してんの…連絡もよこさんと。》

    《あのなっこれにわ深い事情があってなっ!》

    2007-10-06 02:20:00
  • 56:

    ◆0eliurtmUc

    慌てふためくたける君に、

    《なーんやまだ話ついてなかったんや。最悪〜》

    と女わ言い、先に部屋を出て行った。

    2007-10-06 02:20:00
  • 57:

    ◆0eliurtmUc

    昨晩、行方が心配で泣いて眠れなかった私の気持ちを踏みにじる、残酷な出来事だった。

    あんなによく喋るハイテンションなたける君が、もごもごとハッキリしない物言いばかりしてうろたえていた。

    その滑稽さで、余計に浮気の信憑性が増した。

    2007-10-06 02:21:00
  • 58:

    ◆0eliurtmUc

    《ごめんな、どうしても好きになってもて…》

    バカ正直なたける君わ、まっすぐ私にこう言い放った。

    私わ呆れ、返す言葉が無かった。

    2007-10-06 02:22:00
  • 59:

    ◆0eliurtmUc

    あんなに好きだ好きだと真剣に言ってくれて始まったのに、あなたの《真剣》わ、半年も続かなかったね?

    2007-10-06 02:23:00
  • 60:

    ◆0eliurtmUc

    沖縄へ行ったんじゃなかったの。

    社員旅行じゃなかったの。

    二泊三日で帰って来るんじゃなかったの……。

    2007-10-06 02:24:00
  • 61:

    ◆0eliurtmUc

    聞きたいことわ沢山あったはずなのに、目の当たりにした光景ですべて悟った私わ、もう何も言えなかった。

    ただただ泣いて、《鍵を返して》と右手を差し出し、鍵を受け取ると、《さよなら》と言ってドアを閉めた。

    院長にセクハラをされ、仕事をクビになり、彼氏に浮気され、目の当たりにした浮気相手に、元カノ呼ばわりをされる……。

    2007-10-06 02:25:00
  • 62:

    ◆0eliurtmUc

    あまりに一気に重なり過ぎて、頭が混乱していた。

    溢れ出た涙わ、止めどなく流れ、玄関にしゃがみ込んでまた泣いた。

    2007-10-06 02:26:00
  • 63:

    名無しさん

    “〜わ”やめてほしい?

    2007-10-06 02:31:00
  • 64:

    ◆3AtoEaoA9k

    もしかしてMoments書いてた人??

    今回も頑張ってください??

    違ったらすいません??

    2007-10-06 14:40:00
  • 65:

    ◆0eliurtmUc

    >>69 読みにくかったですか(>_>70 はい書いてました(o^^o)わざわざコメント嬉しいです!ありがとうございます

    2007-10-06 15:04:00
  • 66:

    ◆0eliurtmUc

    次の日は雨。

    私の涙で連鎖反応を起こしたような雨は、夜中のうちから降ってたみたいで、シトシトではなくザーザーと鳴る、かなり本格的な大雨だった。

    初めてはまった大好きな彼に浮気され、浮気相手を目の当たりにしてしまうという、最悪な仕打ちを受けた私。

    2007-10-06 15:06:00
  • 67:

    ◆0eliurtmUc

    仕事をクビになり、突然時間が出来たおかげで、頭の中が空っぽになり、余計なことを考えるすき間が、ムクムクと増えていた。

    たける君が連れていた女は、明らかに昼間の仕事をしてるとは思えないような、ギラギラとした厚化粧の女だった。

    その派手な感じが母親とかぶり、ますます私を不快な気持ちにさせた。

    2007-10-06 15:07:00
  • 68:

    ◆0eliurtmUc

    《大事にするからて言ったやん…》

    あの時の言葉はもう色褪せてしまい、嘘に変わった。それでも、なぞるように、たける君が昔言ってくれた言葉、行動を思い返しては、あんな女に取られた現実を嘆いた。

    2007-10-06 15:08:00
  • 69:

    ◆0eliurtmUc

    《また振り出しや》

    人一人分抜けた淋しいクローゼット、ベッドを眺めて、職も失った私はつぶやいた。

    セクハラで悩み退職を決意したとわ言え、次の仕事を決めるべく動けていなかった。

    2007-10-06 15:09:00
  • 70:

    ◆0eliurtmUc

    それどころか、1ヶ月早くクビになり、コツコツ貯めていた貯金を、また食いつぶす生活に逆戻りだ。

    《こんなんじゃ、いつまでたっても学校行かれへん…》

    全部がマイナスのベクトルを目指して進んでるような気がして、落胆した。

    2007-10-06 15:17:00
  • 71:

    ◆0eliurtmUc

    しばらくは無気力で、テレビすら付けれず、三日はほとんど寝ていた。

    精神的なストレスが大きかったと思う。

    このままニートになりそうで怖くなり、それでも何とか自分を奮い立たせようと、仕事を探しに職安へ行った。

    2007-10-06 15:18:00
  • 72:

    ◆0eliurtmUc

    そう思いながら銀行を出て、歩きながら、通帳ケースをカバンにしまおうとしていたその瞬間、バイクに乗った男がいきなり私の通帳ケースを奪い、ものすごいスピードで走り去って行った。

    あまりに一瞬の出来事で、《あっ、わっ、私のお金…!!》と、叫んだ時には手遅れだった。

    バイクのナンバープレートなんて覚えているはずもなく、何の手がかりも無いまま、私は貯金を、見ず知らずの男に持ち逃げされてしまった。

    2007-10-06 15:20:00
  • 73:

    ◆0eliurtmUc

    もうどん底だ。

    泣く気力さえも無くて、とぼとぼ道を歩いていたら、ふとお腹が痛くなり、《生理かなあ》と駅のトイレへ行ったが、生理では無かった。

    でも、痛みはなかなか収まらず、不安になって、薬を買いに薬局へ向かった。でもふと、《あっ、私わお金が無かったんや》と思い出し、財布の中身を確認した。

    2007-10-06 15:21:00
  • 74:

    ◆0eliurtmUc

    《5473円…。》

    それが私の全財産だった。

    薬に頼らなくても収まるかも知れない腹痛に、お金をかけてる余裕はない。

    2007-10-06 15:23:00
  • 75:

    ◆0eliurtmUc

    痛む下腹部を押さえつつ、薬局を出て歩いていたら、ふと声を掛けられた。

    《あのー、ちょっといいですか?》

    見ると、ヴィトン柄のスーツケースを持ったサラリーマン。かなり真面目そうな、メガネをかけた、色白の男だった。

    2007-10-06 15:23:00
  • 76:

    ◆0eliurtmUc

    《えっ?なに…ですか…》

    私が聞くと、そのサラリーマン風の男はいきなり、

    《風俗興味ないですか?》

    2007-10-06 15:25:00
  • 77:

    ◆0eliurtmUc

    と聞いて来た。

    あまりに下品なその質問に、ビックリしてその場を立ち去ろうとしたが、男は慌てて追いかけて来る。

    《ごめんなさい!いきなりでしたよね、でも、どうかなあって》

    2007-10-06 15:26:00
  • 78:

    ◆0eliurtmUc

    《どうかなあって、あなた、何言ってんですか!》

    早歩きになりながら言い返すと、

    《話だけでも》としつこい。

    2007-10-06 15:27:00
  • 79:

    ◆0eliurtmUc

    気分悪いし、お金は無いし、不幸が何日も続いて、本気で呪われている気がした。

    五千円ちょいの全財産で、いつまで食いつなげばいいんだろう。

    職安行くにも交通費がかかる。

    2007-10-06 15:31:00
  • 80:

    ◆0eliurtmUc

    幸い定期の期限があと1ヶ月あるけど、前回の就職活動で相当苦労した記憶がある私は、1ヶ月以内に職が決まるのだろうかと、不安になった。

    それにまず今は、その日生きてく為の生活費すら足りない状態。安定だなんて求めてられない。

    日雇いのバイトだ。

    2007-10-06 15:32:00
  • 81:

    ◆0eliurtmUc

    くしゃくしゃに折れ曲がった名刺を見つめながら、

    “風俗も日払いなんかな…”

    まさかの発想が一瞬よぎった。

    2007-10-06 15:34:00
  • 82:

    ◆0eliurtmUc

    《ああ!えっとお名前は?》

    《えみって言います》

    《えみちゃん!こんなにすぐに連絡もらえるとは、思ってなかったです》

    2007-10-06 15:42:00
  • 83:

    ◆0eliurtmUc

    《はい…あの…話だけでもいいんですよね?》

    《大丈夫ですよ。いつ会えますか?》

    《今から…はだめですか?》

    2007-10-06 15:43:00
  • 84:

    ◆0eliurtmUc

    《大丈夫です!さっき僕らが出会った場所で、待ち合わせましょか。何時がいいですか?》

    《じゃあ、一時間後で…》

    《了解です!着いたらまた電話下さい》

    2007-10-06 15:44:00
  • 85:

    ◆0eliurtmUc

    へ〜と思いながら眺めた。

    風俗が、具体的に何をする所かも分かっておらず、ましてやそんな所で働くなんて考えたことが無かった私は、働いている女の子のイメージなんて、当然想像がつかなかった。でも、グラビアアイドルなんかとさほど変わらないスタイルの良さに、可愛い顔をした子が多くて、《こんな子がしちゃう仕事なんや》という印象を受けた。

    《要は男の人のアレを舐める訳です》

    2007-10-06 15:48:00
  • 86:

    ◆0eliurtmUc

    《そんな簡単に、舐めるって…無理無理》

    と私は遮った。

    《いや、何も何時間も舐め続けろってわけじゃない。プレイの中には、話をしたり、着替えやキスしたりする時間も含まれるから、時間にしてみたらほんの5分か10分そこら。実際舐めてる時間は、そんなもんやで》

    2007-10-06 15:51:00
  • 87:

    ◆0eliurtmUc

    《こんな可愛い子たちも、嫌ならしない。出来ないはずやねん。でも、それに見合ったお給料がもらえてるから、働いてるねんで》

    女の子たちを眺め、私はグッと息を飲んだ。

    《お給料って…》

    2007-10-06 16:26:00
  • 88:

    ◆0eliurtmUc

    《日にして五万〜八万。頑張れば二桁も可能。月の出勤日数によるけど、三桁稼いでる子ばかりやね》

    《三桁!》

    驚いた。こんな可愛い顔した子達が、ありえない職業で、ありえない金額を稼ぎだしている…。そして今、そんな世界に足を踏み入れかけている自分。

    2007-10-06 16:27:00
  • 89:

    ◆0eliurtmUc

    《えみちゃんは、将来の夢とか目標、あるの?》

    《私…鹿児島から、メイクの学校に行きたくて出て来たんです。でも、なかなか学費が貯まらなくって。仕事はクビになるし…彼氏に逃げられちゃうし…おまけにさっき、通帳盗まれちゃって、貯金がパーになったんです。もう、とにかくお金が必要で…》

    《すごいな。それ全部、ここ最近で起こったの!?大変やったね。でも、そこまで切羽詰まったら、逆に底力発揮できるよ。稼ぎは保証する!サポートしてくから、頑張ってみたら?》

    2007-10-06 16:28:00
  • 90:

    ◆0eliurtmUc

    確かに切羽詰まっていたし、落ちるとこまで落ちた気がした。

    失うものはない。あとは這い上がるだけ。だったらがむしゃらにでも、もがいてみようか。

    まったく踏み入れたことのない風俗の世界へ、飛び込むか迷いつつ、やったれ!いったれ!と言う心の叫びも聞こえた。

    2007-10-06 16:28:00
  • 91:

    ◆0eliurtmUc

    《やって無理ならやめたらいい。今はとにかくお金が必要。一日五万は捨てがたい…!》

    そう思い、やってみますと宣言。

    未知の世界の風俗へ、足を踏み入れた瞬間だった。

    2007-10-06 16:29:00
  • 92:

    名無しさん

    しおり

    2007-10-06 23:00:00
  • 93:

    出身一緒?(・。・)

    2007-10-07 07:22:00
  • 94:

    ◆0eliurtmUc

    奥にシャワー室と本棚、ラック、台所があり、真ん中にテーブルとカーペットが敷かれた待機室にわ、キャミソールを着て雑誌を読んでる女の子が、二人居た。

    女の子がまじまじと見て来るので緊張していると、

    《ねっ、待機室はこんな感じ》

    2007-10-07 11:36:00
  • 95:

    ◆0eliurtmUc

    グラグラ揺れる気持ちの中で、

    “チャッチャと稼いでやめたらいいねん!”

    ふとそう背中を押す自分も居た。

    2007-10-07 11:39:00
  • 96:

    ◆0eliurtmUc

    待機室に戻って簡単な履歴書を記入。店名を決めて、適度にごまかしたスリーサイズと年齢で、私はハタチのえみから、18歳のまみに変身。

    受付横に貼る写真を撮るからと、ポラロイドカメラで上半身を撮影された。

    トントン拍子で話が進む中、店長がやって来て挨拶をした。

    2007-10-07 11:41:00
  • 97:

    ◆0eliurtmUc

    逃げてる自分が惨めになって、泣きながら走るのをやめ、立ち止まり、顔に手をやり本格的に号泣してしまった。

    《あの子、彼氏の浮気相手で…》

    《えっ…》

    2007-10-07 11:46:00
  • 98:

    ◆0eliurtmUc

    《大丈夫、あの子はもともと梅田の系列店の子やから、絶対顔合わさなくて済むように、店側で調整するから!》

    そんなこと出来るのか?

    信用ならなかったが、《ララは梅田店のナンバーワンで、滅多にうちの店にはヘルプに来ないねん。今日はたまたま、運が悪かったっていうか…。まみちゃん、頑張って稼げるように、俺サポートするから、ねっ》

    2007-10-07 11:48:00
  • 99:

    ◆0eliurtmUc

    自分が負けず嫌いだと思ったことは無かったが、その時沸々とわいた感情は、ライバル意識というか、大好きな彼氏を取った人間に、仕事でまで負けたくないという、一種のプライドみたいなものだった。

    “負けたくない”

    仕事をなくして彼氏もなくして、おまけに全財産までなくした私は、それでもいざ風俗の世界へ足を踏み入れるのに、躊躇していた。

    2007-10-07 11:50:00
  • 100:

    ◆0eliurtmUc

    でも、《ララ》として働くあの女に出来ている仕事。あの女に取れているナンバーワンという座に、負けたくないという気持ちが芽生えた。

    《稼ぎたいので頑張ります》

    そう言って、明日の出勤日を約束し家に帰った。

    2007-10-07 11:50:00
  • 101:

    ◆0eliurtmUc

    あの子に負けたくない…といえど、今はとにかくお金が必要で、指名がどうとか、気にする余裕は無かった。

    だが、頭を離れていたはずの女が、《梅田店のナンバーワンララちゃん》としてふたたび近づいて来たことで、私の心はかき乱された。

    《たける君には、風俗のこと秘密にしてるんやろなあ…》

    2007-10-07 11:51:00
  • 102:

    ◆0eliurtmUc

    お店でナンバーワンとして稼ぎながら、たける君との恋愛も平行して続けているであろうあの子が、羨ましくなった。

    そうしてあまり眠れないまま、次の日を迎えた。

    お店に出勤すると、昨日の受付のお兄さんがニコニコ挨拶をして来た。

    2007-10-07 11:52:00
  • 103:

    ◆0eliurtmUc

    写真が貼ってある右の壁を見ると、さっそく新人マークの貼られた《まみ》の写真が、数有る写真のど真ん中に飾られていた。

    待機室に入ると、今日もキャミソールを着た女の子が数名、化粧を直しながら待機していた。

    《お、おはようございます》

    2007-10-07 13:51:00
  • 104:

    ◆0eliurtmUc

    部屋の壁には、デカデカと歴代の指名ランキング表が飾られていて、毎月毎月、百本以上の指名をコンスタントに取っている《ゆり》という名前が目立っていた。

    着替えた私もテレビのそばに座り、化粧ポーチと鏡をテーブルに置いて、お店の人からの指示を待った。

    付いてたテレビはドラマの再放送をしていたが、私はそんなことより、上に置いてあるモニターの様子が気になった。

    2007-10-07 13:54:00
  • 105:

    ◆0eliurtmUc

    数人のおじさんサラリーマン達が、座りながら、壁に貼られたグラビアを眺めたり、タバコを吸ったり、週刊誌を読んでいた。

    “私は今から、あの中の誰かを接客するのかな…”

    そうした目線で見てみると緊張した。

    2007-10-07 13:56:00
  • 106:

    ◆0eliurtmUc

    女の子達は、モニターの様子なんかよりドラマに夢中で、お菓子をつまみながら、テレビに釘付けだった。

    ふと扉に貼ってあった紙が目に留まり、見てみると、今日出勤した女の子の予定表だった。

    名前の横に、《○時〜○○さん △時〜△△さん》とそれぞれのタイムスケジュールが書かれてあって、誰が何時から誰を接客するのか、それを見れば丸分かりだった。やらしい話、その日のその子の給料も計算できてしまうのだ。

    2007-10-07 13:57:00
  • 107:

    ◆0eliurtmUc

    一番上に、あの歴代ナンバーワンの《ゆり》ちゃんのスケジュールが書かれていて、他の女の子たちはまだらに仕事が空く中、ゆりちゃんだけは、最後までびっしり予約が埋まっていた。単純計算しても、八万を越えていた。

    “ゆりちゃんてどんな子なんやろう…”

    純粋に興味がわいた。

    2007-10-07 13:58:00
  • 108:

    ◆0eliurtmUc

    するとバタバタ駆け込むようにドアが開き、《お疲れ様です〜っ》と女の子が戻って来た。

    《ゆりちゃんお疲れ》

    女の子やボーイさん達が言うので、私はこの子がゆりちゃんなのかと、思わず見入ってしまった。

    2007-10-07 13:59:00
  • 109:

    ◆0eliurtmUc

    細身で茶髪のロングエクステの、可愛い女の子。バタバタとせわしなかったが、頼んでた出前のお弁当をかけ込みながら、化粧を直し、携帯をチェックして、今開けたばかりのお弁当をもう閉じ、タバコを一服吸ったかと思うと、台所のモンダミンでうがいして出て行った。

    ほんの十分足らずの出来事。

    《ゆりちゃん、タイマー忘れてる!》

    2007-10-07 14:00:00
  • 110:

    ◆0eliurtmUc

    ボーイさんが追いかけて、ゆりちゃんにタイマーを渡す。

    《あーもう!ごめん〜》

    テレビに夢中だった女の子たちは、扉の向こうでもバタバタしているゆりちゃんを見て、微笑ましそうに目を合わせ、笑っていた。

    2007-10-07 14:01:00
  • 111:

    ◆0eliurtmUc

    私の初仕事の相手は、くたびれた感じのおじさんサラリーマン。

    プレイルームに入った途端、はあはあと荒い息づかいで抱きしめて来たのでドン引きしたが、私が笑顔で懸命にサービスしていると、《まみちゃん可愛いねえ》を連発し喜んでくれた。

    タイマーが鳴ると着替え、テーブルに置いてあるペンとカードで名刺を作成。名前と出勤日とメッセージを書くのだが、その人は、《また来るよ、また指名する!ありがとね》と言って、私の渡した名刺を財布の中にしまい、笑顔で言ってくれた。

    2007-10-07 14:02:00
  • 112:

    ◆0eliurtmUc

    《気をつけて帰ってね!》

    そう言って見送り、初仕事はかなりスムーズに終わってホッとした。

    待機室に戻ってうがいをし、化粧を直すと、ゆりちゃんほどでは無いが、コンスタントに仕事が詰まった状態で、ラストまで接客をこなした。

    2007-10-07 14:03:00
  • 113:

    ◆0eliurtmUc

    《お疲れ様です〜》

    もうすでに帰った女の子もいたが、ゆりちゃんはたった今仕事を終えたという感じで、まだキャミソールのままだった。

    《あっお疲れ様!まみちゃんやんね、ゆりですよろしく〜!て、めっちゃ遅なったけど!》

    2007-10-07 14:04:00
  • 114:

    ◆0eliurtmUc

    もう冷えて固くなったお弁当をつまみながら、ゆりちゃんが改めて挨拶をしてくれた。

    《初めまして、まみです!あの、凄いですね指名》

    私がそう言うと、

    2007-10-07 14:04:00
  • 115:

    ◆0eliurtmUc

    《いやいや全然!そんなことないよ〜物好きが多いだけっ!》と、ゆりちゃんは大げさに手を振って否定した。

    《あたしなんかより、梅田のララのがすごいわ!あの子先月、200行ったからなあ〜》

    本棚にあった雑誌を広げて、顔を手で覆った状態で載った女の子の写真を指差し、ゆりちゃんは言った。

    2007-10-07 14:05:00
  • 116:

    ◆0eliurtmUc

    ふと飛び出したララの名前が気になって、私は話を続けた。

    《ララちゃんて梅田店の子って聞いたけど、昨日見ました》

    《あっほんまに?エロそうな子やろ〜!あはは!何せGカップやしなあ!》

    2007-10-07 14:06:00
  • 117:

    ◆0eliurtmUc

    《Gカップ!?》

    私は、身近で初めてそんな巨乳の子に出会った。確かに胸の大きい子だとは思ってたけど、まさかGカップだったなんて…。

    ごくごく普通のCカップな私は、胸のインパクトでも負けたと思い落ち込んだ。

    2007-10-07 14:07:00
  • 118:

    ◆0eliurtmUc

    “たける君も、あの子の巨乳が良かったんかなあ…”

    ネガティブはどこまでも続いてしまう。

    2007-10-07 14:08:00
  • 119:

    ◆0eliurtmUc

    帰りわ送迎車で送ってくれると言うので、私とゆりちゃんわ車を待ちながら、着替えてしばらく喋った。

    《まみちゃんこの仕事初めて?》

    《うん。ちょっと色々あって、やることになって…》

    2007-10-07 14:10:00
  • 120:

    ◆0eliurtmUc

    《そうなんやあ。あたしもこの店で風俗デビューしたから、一緒やね!》

    《そうなん!?ゆりちゃん、ずっとナンバーワンやから、指名表見てびっくりしててん》

    《あはは!あたしもアホな借金こさえてこの世界飛び込んだからさ〜必死やったん!今わ馴染みのお客も増えて、楽しいけどねっ》

    2007-10-07 14:11:00
  • 121:

    ◆0eliurtmUc

    ゆりちゃんは、可愛くてスタイルも良くて私服もおしゃれで、街中を普通に歩いていてもかなり目立つような、華のある女の子だった。

    指名が多いからと言って天狗などならず、待機の女の子とも、バタバタ用意をしながら、いつもよく喋っていた。人見知りなのか、大人しい子が多かったから、ゆりちゃんはお店のムードメーカー。細かな気配りが出来る子だったから、お店のみんなに慕われていた。

    ゆりちゃんの開けっぴろげなキャラクターは好感が持てたし、顔の可愛さ、スタイルの良さだけでは語れない、何か人を引きつける魅力があった。それはお客さんにも伝わっていたと思うし、天性のものかなあと思った。

    2007-10-07 14:12:00
  • 122:

    ◆0eliurtmUc

    風俗なんてと思っていた私だが、ゆりちゃんと言う、思わぬ魅力的な女の子に出会えたこと、気になるララの存在が、私が店で働く意欲をかき立てた。

    ゆりちゃんみたいな魅力ある女の子になりたい!と言う気持ちと、ララがどんな子かもっと知りたいという気持ち…。

    その本音は裏腹だったが、裸の自分が名刺みたいなこの仕事に、興味を感じた瞬間だった。

    2007-10-07 14:13:00
  • 123:

    ◆0eliurtmUc

    帰り際、受付の人に鍵を渡し、財布を受け取り給料をもらった。

    全財産を失い、どん底になった私が、風俗デビューして初日に稼いだ給料は――

    《57500円》

    2007-10-07 14:14:00
  • 124:

    ◆0eliurtmUc

    《初仕事お疲れ様!どう?大丈夫やった?》

    《は、はい…何かめちゃくちゃ稼がせてもらえて》

    《あはは!謙虚にならんでいいで〜ちょっとがめついくらいにがっついて、もっともっと稼いだらいい!まみちゃん、絶対人気出るから》

    2007-10-07 14:16:00
  • 125:

    ◆0eliurtmUc

    帰りにコンビニへ寄って栄養剤とヨーグルトを買い、まだ妙な興奮が収まらない私は、テレビを付けて、ヨーグルトを食べながら、眠れるまでを過ごした。

    2007-10-07 14:18:00
  • 126:

    ◆0eliurtmUc

    私がデビューしたお店は、俗に言うピンサロ。シャワーの付いていない個室で接客と言うスタイルで、女の子達は、待機室のシャワーで体を洗っていた。

    コスプレや、イメージプレイが出来るプレイルームが充実していたこと、ゆりちゃんみたいな、雑誌に顔を出せる可愛い女の子がいたことから、インパクトが強く、客入りが良かった。

    お客さん一人付くごとに、もらえるバック(給料)わ少なかったが、数をこなすとそれなりの額になった。更に、毎月の指名本数でバックは上がるシステムだ。私わデビューしたてで、どう頑張ってもバックが上がるのは来月からだったが、新人と言うレッテルが、私を後押ししてくれて、毎回出勤日の仕事は、予約やパネル指名で埋まった。

    2007-10-07 14:55:00
  • 127:

    名無しさん

    しおり

    2007-10-07 15:29:00
  • 128:

    ◆0eliurtmUc

    顔を出し、ばんばんグラビアにも取り上げてもらっていたゆりちゃんほどでは無かったが、脱いで載った効果か、私にも雑誌指名が多く入った。

    ピンサロへ勤めて1ヶ月が過ぎると、写真に貼ってあった《新人》マークは剥がされたが、代わりに《人気急上昇》のマークが貼られた。

    毎月順調に指名が取れて、貯金が増えていく。

    2007-10-09 15:46:00
  • 129:

    ◆0eliurtmUc

    ララは昔から男に依存するタイプで、彼氏ができると仕事が嫌になり、長期休暇を決め込んでお店に来なくなる。そして彼氏と別れると、また店へ復帰する…というパターンを繰り返しているらしい。

    私は、ララのことは同じ女として気になっていたが、ララとたける君の関係は、さほど気にならなくなっていた。

    というか、風俗でセカセカと働いていくうちに、たける君に対するドロドロの未練は、時間をかけつつも薄れて行った。

    2007-10-09 15:49:00
  • 130:

    ◆0eliurtmUc

    ララと一緒の現場を目撃した時は、すごくつらかったし、女としての自信をなくしかけたが、風俗で働き、指名が返ってくるたびに、少しずつ自信を取り戻せていったような気がする。

    たとえお客は性の捌け口としてしか私を見ていなくても、私を気に入り、私を選んでプレイしてくれることは、なにか自分を認めてもらえたような、そんな喜びに繋がった。

    そうしてお客さんに恵まれ、仕事は充実していたが、家に帰ると空っぽで、一人のマンションには、いつも冷たい空気が流れていた。

    2007-10-09 15:50:00
  • 131:

    ◆0eliurtmUc

    鹿児島の母は、私が大阪へ出てから電話の一本よこさなかった。

    淋しくないと言えば嘘になるが、いざ電話があったとしても、私は何を話せばいいのか分からなかった。

    貯金にかなり余裕ができたので、学校のパンフレットをいくつか取り寄せ、入りたい学校をピックアップしてみた。

    2007-10-09 15:51:00
  • 132:

    ◆0eliurtmUc

    特に派閥など無かったが、お店は結構個人主義の女の子が多かった。だから、プライベートまで関われる相手ができたこと、しかも、それが憧れのゆりちゃんであるということは、素直に嬉しかった。

    学校は、入学式後すぐにオリエンテーションがあり、そこでグループ分けされたメンバー三人と、まず友達になった。

    専門学校ということもあり、年齢はさまざま。私と同い年の子も居れば、18や22なんて人も居て、メイク科らしく、化粧が上手でおしゃれな生徒が多かった。

    2007-10-09 15:56:00
  • 133:

    ◆0eliurtmUc

    授業は実習が多くて楽しかったし、やりたいことを学べるという充実感がすごくあった。

    クラスのみんな仲が良くって、夏休みまでの間だけでも、二回飲み会があった。隣に別の専門学校があったから、昼休みや放課後は、隣の学校の生徒が混じって食堂に溜まってたりして、声をかけられたり、何かと出会いが多かった。

    たける君に対する未練はもう無かったが、《また裏切られたら》と思うと、いまいち相手を信じきる勇気が無くて、また恋に踏み切れない、臆病な自分に戻っていた。

    2007-10-09 15:57:00
  • 134:

    ◆0eliurtmUc

    でも、男の子からちょっかいをかけられたり、周りの恋ばなを聞かされていれば、影響も受けたし、次付き合うならこんな人がいいなとか、勝手な想像を巡らせた。

    クラスの友達も、居酒屋、カラオケ、ネイルサロン等、みんなバイトしていたから、放課後全員で集まれる日は、必ず遊びに行った。カラオケに行ったり、デザートバイキングに行ったり、買い物。メイク科らしく、百貨店の化粧品コーナーもよく覗いた。

    私もバイトをしてると言おうか迷ったが、場所を特定されたり、遊びに来られるとまずいので、最初は親の仕送りでやりくりしてると嘘を付いた。

    2007-10-09 15:59:00
  • 135:

    ◆0eliurtmUc

    だが、ピンサロの出勤日に遊びに誘われ、毎度嘘をついて断ることに気が引けて、《工場の短期バイトを始めた》とごまかした。

    服やブランドには人並みに興味があったけど、昔からあまり物欲の無かった私は、収入が増えても、派手に買い物したりしなかった。

    だから仕事を怪しまれることもなく、平和な学生生活を過ごした。

    2007-10-09 15:59:00
  • 136:

    ◆0eliurtmUc

    歯切れの悪いゆりちゃんに、それ以上追求するのはやめた。

    《あんな〜まみちゃん、明日も学校朝早い?》

    《明日?明日は授業が午後からやから、朝は遅くても大丈夫やよ》

    2007-10-09 16:03:00
  • 137:

    ◆0eliurtmUc

    《そっか!いやあ、もし時間いけんねやったら、話聞いてもらいたいなって》

    《いいよ!》

    私は23時に仕事を上がると、お店の近所のモスバーガーでゆりちゃんを待った。

    2007-10-09 16:04:00
  • 138:

    名無しさん

    文章も丁寧やしおもろいしほんと好きです???主さんのファンですo(^-^)o
    待ってます??????

    2007-10-09 23:49:00
  • 139:

    ◆0eliurtmUc

    >>180 ファンだなんて、大袈裟すぎます(>_

    2007-10-10 04:08:00
  • 140:

    ◆0eliurtmUc

    ゆりちゃんが悩むなんて珍しかった。

    というか、悩んでいる顔を周りに見せたことが無かった。いつもバタバタと明るく、気丈で、優しくて…。

    そんなゆりちゃんが私に相談して来た悩み。

    2007-10-10 04:10:00
  • 141:

    ◆0eliurtmUc

    雑誌に出てフルで出勤するなら、最初に店側が借金立て替えてあげてもいいでって言われて、OKしてん。

    おかげで借金は返せたし、立て替えてくれたお店にも感謝しまくった。

    でも金銭感覚が麻痺ってるから、なかなか浪費が抑えれなくて…。

    2007-10-10 04:12:00
  • 142:

    ◆0eliurtmUc

    先月の給料全部使ってもうたてゆったら、怒られてん。》

    先月のゆりちゃんの給料なんて、ゆうに百万は越えていたはずだ。

    派手な買い物をしない私は、ひと月で百万を使い果たせてしまうゆりちゃんに驚いた。

    2007-10-10 04:13:00
  • 143:

    ◆0eliurtmUc

    《一体何に使ったの?大丈夫なん!》

    《あはは〜大丈夫!また今月頑張ればいいだけの話やし…》

    その言葉に、今までゆりちゃんに憧れの気持ちばかり生まれていた私は、ショックだった。

    2007-10-10 04:14:00
  • 144:

    ◆0eliurtmUc

    付き合ってると言う二人に対して、ぶしつけだったが聞いてみた。

    《なあ、付き合ってんねんから、ゆりちゃんが全部出さんでもいいんちゃう?》

    《うーん。あたしのが稼いでるしね!》

    2007-10-10 04:23:00
  • 145:

    ◆0eliurtmUc

    でも、さすがに貯金ゼロの現状はまずいと反省したゆりちゃんは、《500貯めて卒業する!》と宣言してから、定期預金を始めた。

    《物欲刺激するから》と、雑誌を買うのをやめて、月の買い物は一回、十万以内に押さえる。給料から出た端数は、すべて貯金箱へ投入。タクシーは使わない等…。

    今までの生活からガラリと変化したゆりちゃんの貯金生活は、見事だった。

    2007-10-10 04:25:00
  • 146:

    ◆0eliurtmUc

    意志が固まると即行動に移せて、それを確実に実行できる。

    ゆりちゃんのそんな性格に、私もまた影響を受けた。

    元々売れっ子で、月に三桁稼げる実力のあったゆりちゃんは、たまにくじけながらも、5ヶ月で目標を達成し、《お世話になったお客さんへお礼が言いたい!》と、ラスト1ヶ月、フルで出勤すると宣言した。

    2007-10-10 04:26:00
  • 147:

    ◆0eliurtmUc

    ゆりちゃんが私を羨ましいと思っていただなんて、お世辞にしろ嬉しかった。

    《そんな!ゆりちゃんこそ、私の憧れやってん。お店に入った時からずっと。可愛いしスタイルいいし、優しくて、みんなから好かれてたし…》

    《何でやねん!ないない、そんなことないよ、私はただアホなだけ〜》

    2007-10-10 04:29:00
  • 148:

    ◆0eliurtmUc

    《あっ!うん、えーと…

    別れてん》

    《え!!》

    2007-10-10 04:37:00
  • 149:

    ◆0eliurtmUc

    《辞めた日の夜!》

    至って明るく、ゆりちゃんは続ける。

    2007-10-10 04:39:00
  • 150:

    ◆0eliurtmUc

    見た目はおっさんやけど、とにかく優しくて…。

    こないだ、貯金してへんことがバレて怒られた時も、最初はあたしの為を思って叱ってくれたんやって、素直に嬉しかった。

    目的見失ってたし、頑張ろって思えてん。

    2007-10-10 04:42:00
  • 151:

    ◆0eliurtmUc

    だから努力した。

    でもな、あの人、500貯めるのは賛成やけど、風俗辞めるのは賛成できへんって言い出してん。

    あれ?って思った。

    2007-10-10 04:43:00
  • 152:

    ◆0eliurtmUc

    あーもうお金だけやったんやなって確信しちゃって…。

    あたしから別れた》

    ゆりちゃんはアイスティーを飲むと、ごまかすように笑った。

    2007-10-10 04:44:00
  • 153:

    ◆0eliurtmUc

    《ゆりちゃんつらかったやろ。何も力になれんでごめんね。

    これからは、こんな私でも頼ってよ。

    無理せんでいいから。

    2007-10-10 04:46:00
  • 154:

    ◆0eliurtmUc

    頑張りすぎたらあかんよ。》

    私がそう言ってゆりちゃんの手を取ると、ゆりちゃんは、堰を切ったように泣き出した。

    傍に居た店員は動揺し、ずっと私達のテーブルを見ていた。でもゆりちゃんの涙は止まらず、いつまでも泣いていた。私もハンカチを貸しながら、悲しい気持ちでいっぱいになった。

    2007-10-10 04:47:00
  • 155:

    ◆0eliurtmUc

    その日はそのまま、ゆりちゃんのマンションへ泊まらせてもらった。

    入り口からシャンデリアの照明が凄くて、駐車場には、外車ばかり停まっていた。部屋も広くて螺旋階段がついている、かなり綺麗なデザイナーズマンション。

    大阪へ出て来た時からずっと同じマンションに住んでいた私は、その豪華な内装に圧倒された。

    2007-10-10 04:48:00
  • 156:

    ◆0eliurtmUc

    私はピンサロへ来る前に起きた不幸の数々、過去のしょっぱい恋愛話などを話し、その延長で、ついララの名前を出してしまった。

    《えーっ!ララに男取られたん!それすごい!》

    ゆりちゃんはかなり驚いた様子で、騒いだ。

    2007-10-10 04:50:00
  • 157:

    ◆0eliurtmUc

    私も、今はたける君に未練が無いから言えた話だが、まだ未練があったら、とても惨めで打ち明けられなかっただろう。

    《最初はショックやったし、まさかお店で会うなんて思わなかったしで、めっちゃパニクったよ》

    苦笑いしながら私は言った。

    2007-10-10 04:50:00
  • 158:

    ◆0eliurtmUc

    と、どこまでも気遣ってくれるので申し訳無かった。

    《まみちゃんも、また目標決めて働いたら?!》

    コンスタントに貯金はしていたが、進学と言う一番の夢を達成してしまった私は、浪費はせずとも、少し前のゆりちゃんと一緒で、目的を見失っていた。

    2007-10-10 04:53:00
  • 159:

    ◆0eliurtmUc

    《目的かあ…》

    私は定まらない夢をいくつか当てはめ、これも違う、あれも違うと頭をグルグルさせた。

    少し寝てから、次の日の昼過ぎ、私はゆりちゃんの家を出て帰宅した。

    2007-10-10 04:54:00
  • 160:

    名無しさん

    本間更新早いし読みやすいっ(・∨・)?!いつもご苦労様です?おもろい???

    2007-10-10 08:41:00
  • 161:

    名無しさん

    あーげっ(゜∨゜)

    2007-10-10 16:28:00
  • 162:

    名無しさん

    最近めっちゃ病んでたけど、この小説見て病んでた自分が小さく思った!なんか主さんから元気もらったよ!ありがとう!頑張ってね☆彡

    2007-10-10 17:10:00
  • 163:

    ◆0eliurtmUc

    >>224 コメントほんと嬉しいです!ありがとうございます(>_>225 あげありがとうございます(^^ゞ

    >>226 私の小説読んで、そんなん思ってくれた人がいるなんて、すごく驚きました(>_

    2007-10-10 18:31:00
  • 164:

    ◆0eliurtmUc

    入れ違いで女の子が数人戻って来たが、一人知らない女の子が居た。

    《初めましてえ!》

    甘ったるい猫なで声をしたその子は、雑誌で見たことのある女の子だった。セミロングの茶髪を軽く巻いていて、白い肌と、くりっとした目とが印象的な、かなり小柄な女の子だった。

    2007-10-10 18:33:00
  • 165:

    ◆0eliurtmUc

    《初めまして、まみです》

    《ゆりでえす!》

    《えっ…》

    2007-10-10 18:34:00
  • 166:

    ◆0eliurtmUc

    今日がこの店初日だと言う新ゆりちゃんは、早速前の店からの固定客を引き連れ、仕事は指名で埋まっていた。

    お店の持ち上げムードは異様で、仕事が終わると、店長がゆりちゃんに会いに来た。

    《お疲れゆりちゃん!早速指名だらけやん、凄いな〜》

    2007-10-10 18:37:00
  • 167:

    ◆0eliurtmUc

    《あはは!そんなことないですよお》

    《マネージャーも期待しとったで!看板ネームを譲るくらいやし》

    《ね〜!ビックリですよお》

    2007-10-10 18:38:00
  • 168:

    ◆0eliurtmUc

    そんなある日、食堂で友達とご飯を食べていると、近くのテーブルに居た、別の科の男の子たちが騒いでいた。

    《まじでビビるし!あいつ本間に今日来てへんやん》

    《なあ!あいつ笑かすな〜》

    2007-10-10 18:41:00
  • 169:

    ◆0eliurtmUc

    《おう!なーかな、山本サキって覚えてる?俺らのクラスに居てた、めっちゃ地味な奴!あいつ、AV出とってん!》

    露骨な話題に、周りの視線がやすし君に集まった。

    《えっ山本さんが?!嘘やん!》

    2007-10-10 18:43:00
  • 170:

    ◆0eliurtmUc

    《本間やって!借りたAV亮んちで観てたら、山本に似てる奴が映ってて、よー見たら、本間に山本やってん。亮、山本と同じ学生マンションやから、ソッコーピンポン押してからかいに行ったら、山本、顔真っ赤にしてさあ。今日も学校休んでんねん》

    視線を集めたやすし君は、そう得意げに話すとコーラを飲み干し、一緒にテーブルに居た仲間と、再びその話で盛り上がりだした。

    《ひゃービックリやわ》

    2007-10-10 18:44:00
  • 171:

    ◆0eliurtmUc

    嘘か本当か定かではなかったが、噂は回ってしまえば勝ちなところがあるし、身近な人間がAV出演なんていう、間違いなく男の興味をそそる話題は、しばらく尾を引くのは間違いなかった。

    私は、面識のない山本さんの話が、他人事ではない気がしてゾッとした。

    お金の為に飛び込んだ風俗の世界。そこで思わぬやり甲斐を見いだし、お店やお客の人間関係にも恵まれて、今日までやって来た。こうして短期で進学の夢を達成できたのも、風俗で稼いだお金のおかげだ。

    2007-10-10 18:46:00
  • 172:

    ◆0eliurtmUc

    だが、風俗をイメージでしか知らない人間にこのことがバレれば、山本さんのように、好奇の目にさらされるのは間違いなかった。実際、風俗で働いている私でさえ、《AV出演》なんて話題には引いてしまったし、それが風俗経験のない人間なら、なおさらだ。

    仲良くなった友達に、非難されるのが怖かった。

    《バレたら私も学校に来れなくなるな…》

    2007-10-10 18:47:00
  • 173:

    ◆0eliurtmUc

    分かっていたが、馴染みの指名客や、私に癒やしを求め、会いに来てくれるお客が居るというこの仕事から、なぜか離れられず居た。

    父からも母からも愛情を感じず生きて来たからかも知れない。

    誰かに必要とされてると言う感覚が、なかなか手放せなかった。

    2007-10-10 18:49:00
  • 174:

    ◆0eliurtmUc

    学校は、進級するごとに、細かく授業がグループ分けされて行き、一緒の授業が多かったかなとは、より親しくなった。

    かなは、前に食堂でCDを貸し借りしていたやすし君と、付き合っていた。

    明るくてノリのいいやすし君に、世話焼きのかなはお似合いで、見ていてとっても和んだ。

    2007-10-11 01:49:00
  • 175:

    ◆0eliurtmUc

    《えみに彼氏ができたら、ダブルデートが実現するのに!》

    かなはそう言って、いつも私の恋愛を急かした。

    でも、やすし君はまだ子供と言うか、彼女を作って恋愛するよりも、男友達とワイワイ騒ぐ方が楽しいと言った感じで、毎日、学校以外の時間も二人で居たがるかなと、衝突が増えていた。

    2007-10-11 01:51:00
  • 176:

    ◆0eliurtmUc

    そんなある日、家でテレビを見ていると、かなから電話があった。

    《もしも〜し》

    《もしもしえみ?!あたし、どないしよう、デキちゃったみたいやねん》

    2007-10-11 01:53:00
  • 177:

    ◆0eliurtmUc

    《えっ?!》

    かなは泣きそうな声で続けた。

    《何か生理がこーへんくって、まさかと思って調べたら、陽性反応が出て。

    2007-10-11 01:55:00
  • 178:

    ◆0eliurtmUc

    どないしよう、今は生まれへんし、おろすお金も無いし、親にバレたら殺されてまう》

    早口で動揺するかな。まだ学生で21と言えど、好きな人との間に宿った命だ。混乱する気持ちも分かるが、早急に中絶を視野に入れているかなを、私はなだめた。

    《かな落ち着いて。やすし君には、きちんと話せそう?》

    2007-10-11 01:56:00
  • 179:

    ◆0eliurtmUc

    《うう…どないしよう。向こうは絶対おろそて言うと思うから、その言葉、聞きたくないっていうのもある。》

    妊娠経験が無かった私だが、かなの言ってる気持ちは少し分かった。

    《ほんまに妊娠してるのか、病院に行ってもう一度調べてもろて、そこから考えよう。私病院ついてくからさ!》

    2007-10-11 01:57:00
  • 180:

    ◆0eliurtmUc

    泣き虫なかなは泣いてしまった。

    次の日学校を二限で早退し、二人で産婦人科へ行った。

    結果はやはり妊娠していて、結果を知らされてから、先生に話をされながら、またかなは泣いた。

    2007-10-11 01:58:00
  • 181:

    ◆0eliurtmUc

    《大事な命がもう生まれているんやから、よく考えてね。》

    一週間悩んだあげく、結局かなは中絶を決意した。

    《えみ、アコムとか行ったことある?》

    2007-10-11 01:59:00
  • 182:

    ◆0eliurtmUc

    硬い表情でかなが言う。

    《かな、あんた借金するつもりなん?》

    《お金無いし、今からバイトしたって金額は知れてるし、そんなんしてる間に、赤ちゃんどんどんおっきなるし…》

    2007-10-11 02:00:00
  • 183:

    ◆0eliurtmUc

    《かな!》

    私は無茶をしようとしているかなを見ていられなくなり、中絶費用を貸すことにした。

    《利子も期限もいらんから、アコムとかアホなこと言わんといて!》

    2007-10-11 02:01:00
  • 184:

    ◆0eliurtmUc

    私はかなに、20万渡した。

    まだ21で学生の私が、キャッシュでぽーんと20万友達に貸せるなんて怪しかった。

    当然かなにも聞かれたが、《まーたまにやねんけど、パチンコしてるねん》と誤魔化した。

    2007-10-11 02:02:00
  • 185:

    ◆0eliurtmUc

    《えー意外!えみってギャンブルすんねや〜!今度あたしにも教えて!》

    《あはは!かなの体が落ち着いたらね》

    パチンコなんてしたことが無かったし、口からでまかせだったが、とにかくその場を切り抜けた。

    2007-10-11 02:02:00
  • 186:

    ◆0eliurtmUc

    中絶手術には一日入院しなければならず、かなは、親ややすし君に《えみんちに泊まる》と言って、内緒で手術を済ませた。

    その日私だけ学校へ行けば、やすし君に怪しまれると思い、私も学校を休んだ。

    かなは手術が終わると、病院から電話をくれた。結構泣いたし、また当分落ち込みそう…と言っていたが、一人でパニクっていた騒動がひとまず落ち着いたことで、声はまずまず元気があった。

    2007-10-11 02:03:00
  • 187:

    ◆0eliurtmUc

    《なあえみ、退院したら、ほんまにえみんち泊まりに行っていい?》

    《いいよ〜全然!》

    明日は仕事も無かったし、私はOKをした。

    2007-10-11 02:04:00
  • 188:

    ◆0eliurtmUc

    次の日かなを病院まで迎えに行き、私のマンションに着いたのは昼過ぎ。かなは、親とやすし君に《もう一泊する》と連絡をして、私の部屋で寝た。

    考えてみれば、たける君との同棲を解消して以来、ゆりちゃんですら、この部屋に来たことが無かったから、友達を部屋に招くと言うのは、かなり慣れなくて新鮮だった。

    《めっちゃ物少ないやん!シンプルやなあ!あたしの部屋と、大違い…。》

    2007-10-11 02:05:00
  • 189:

    ◆0eliurtmUc

    かなは物珍しそうに、至って普通な私の部屋を見渡した。

    ちょうどツタヤで借りて来たビデオがあったし、二人で観た後、私が焼きそばを作っておもてなし。お風呂へ入る前に、二人とも寝てしまった。

    次の日起きると、かなはもう目覚めていて、テーブルに置いていたお菓子を食べながら、テレビを観ていた。

    2007-10-11 02:06:00
  • 190:

    ◆0eliurtmUc

    《おはよう〜》

    スッピンのかなは童顔で、より一層幼く見えた。

    《おはよう。早いなあ》

    2007-10-11 02:07:00
  • 191:

    ◆0eliurtmUc

    《昨日一日寝てばかりやったから、すぐ目え覚めちゃって!えみまだ寝てていいよ!》

    《うん大丈夫。ちょっとシャワー浴びて来るわ》

    私はまだ少し眠い体を、熱めのシャワーでさっぱりさせた。

    2007-10-11 02:09:00
  • 192:

    ◆0eliurtmUc

    脱衣所に出て体を拭こうとしたが、ちょうどタオルが切れていたので、かなにタオルを出してくれるよう頼んだ。

    《え?どこ?ベランダ?》

    《ちゃうちゃう、新しいやつ。かなも浴びるやろ?綺麗なタオル、出しとこと思って。ドアの横の、クローゼットの棚に〜…》

    2007-10-11 02:11:00
  • 193:

    ◆0eliurtmUc

    そう言いかけて、私はハッとした。

    私が出てる風俗雑誌と、書き途中の名刺を、かなが来る前、慌ててクローゼットに閉まっていたのを思い出したのだ。

    フェイスタオル一枚持って脱衣所から飛び出し、走って部屋に戻った時は、もうすでに時遅し。

    2007-10-11 02:12:00
  • 194:

    ◆0eliurtmUc

    かなは、風俗雑誌の上に積まれた名刺の束から一枚手に取り、ハートマークが沢山描かれた《まみ》の名刺を、まじまじと見つめていた。

    2007-10-11 02:14:00
  • 195:

    名無しさん

    気っ気になる?更新お疲れさまですo(^-^)oたーのしみっ

    2007-10-11 19:50:00
  • 196:

    名無しさん

    更新してほしぃ?

    2007-10-11 19:55:00
  • 197:

    ◆0eliurtmUc

    >>267 コメントありがとうございます(*^_^*)

    >>268 今から更新します☆

    2007-10-12 02:03:00
  • 198:

    ◆0eliurtmUc

    《えみコレ…》

    動揺してはだめだと思い、自分の中で精一杯の冷静を装った。

    《あはは、ごめんごめん。友達に頼まれて描いてたやつ!何かいっぱい書かなあかんから、手伝ってくれって。一枚100円とか言って》

    2007-10-12 02:04:00
  • 199:

    ◆0eliurtmUc

    笑ってそう誤魔化したが、かなはまったく信じておらず、固まった顔のままだ。

    《イメージサロンて…何?お水ちゃうやんな…。》

    名刺の表には店名も書かれていたから、パソコンなんかで検索されればアウトだった。

    2007-10-12 02:06:00
  • 200:

    ◆0eliurtmUc

    《だから友達の》

    そう遮って、私はかなから名刺を取り上げ、新品のタオルで体を拭いた。

    《かなもシャワーどうぞ!》

    2007-10-12 02:07:00
  • 201:

    ◆0eliurtmUc

    《あ、あたしはいいわ…》

    急に、汚いものを見るような軽蔑した目でそう言うと、かなは黙って荷物をまとめ始めた。

    《もう帰るの?》

    2007-10-12 02:07:00
  • 202:

    ◆0eliurtmUc

    《うん、ありがとね》

    私はまだ濡れた髪のまま、せめてマンション下までは送ろうと部屋着に着替えたが、かなに断られ、頭にタオルを巻いたまま、玄関でかなを見送った。

    妙な空気だった。

    2007-10-12 02:08:00
  • 203:

    ◆0eliurtmUc

    かなはまず私を疑っていたと思うし、とっさに付いた《友達の名刺》と言う嘘が、仮に通っていたとしても、イメージサロンで働くような友達と、どこで知り合ったんだと言うことになる。

    助けて欲しくてゆりちゃんに電話をしたかったが、もうバリに飛び立っていたので、電話が通じない。

    《うわーどないしよ》

    2007-10-12 02:09:00
  • 204:

    ◆0eliurtmUc

    かなも徐々に笑顔を見せて話してくれるようになり、ホッとした。

    でも、放課後の帰り道、重たい話題を振る顔つきで、かなが言った。

    《なーえみ、あんたやっぱり昨日の名刺のお店で働いてるんとちがう?》

    2007-10-12 02:12:00
  • 205:

    ◆0eliurtmUc

    《えっ、》

    どストレートなかなの言葉に、ぐらぐらと目が泳いでしまった。

    《いきなり20万も減って困らん生活してるなんて、信じられへん。あーゆう店って、一日でめっちゃ稼げんねやろ?》

    2007-10-12 02:13:00
  • 206:

    ◆0eliurtmUc

    スラスラ話すかなの言葉に、私は冷や汗ダラダラだった。

    《あたし…》

    2007-10-12 02:14:00
  • 207:

    ◆0eliurtmUc

    突き放される。

    そう思った瞬間、かなから出たのは意外な言葉だった。

    2007-10-12 02:15:00
  • 208:

    ◆0eliurtmUc

    《やってみたい!》

    《え…?》

    《あたしもやってみたいねん!稼げんねやろ?》

    2007-10-12 02:16:00
  • 209:

    ◆0eliurtmUc

    《かっ、かな…?》

    ここで私がイエスと言えば、風俗勤め自体、認めてしまうことになる。それに、かなは本気で風俗がやりたいと言っているのか、にわかに信じがたかった。

    《かな、急にどうしたんよ。別に、20万は急がんでいいから》

    2007-10-12 02:17:00
  • 210:

    ◆0eliurtmUc

    《もちろん、えみに借りた20万を早く返したいって気持ちもある。でもそれだけじゃないねん、あたし、やってみたいねん!》

    かなはどうにも《やってみたい》の一点張り。

    私は、よっぽどの事情が無い限り、友達として賛成できないと言った。

    2007-10-12 02:18:00
  • 211:

    ◆0eliurtmUc

    《あたしな、家を出たいねん》

    《え…?》

    かなの両親は厳しいけれど、そこそこ裕福な家庭だと聞いていた。

    2007-10-12 02:19:00
  • 212:

    ◆0eliurtmUc

    《うちさ〜確かにお金はあるけど、お金しか無いってゆーか、親はいっつも怒鳴りあってて、まったく仲良くないねん。

    お父さんは外で真面目にやってる分、家に帰ると酒癖がひどくて、あたしらのこと、殴るわ蹴るわで最悪なん!

    お母さんもピリピリしてて、小四の頃から家庭内崩壊。》

    2007-10-12 02:20:00
  • 213:

    ◆0eliurtmUc

    かなはうつむき、爪をいじりながら続ける。

    《耐え切れなくなったらいつでも家を出れるようにって、お母さん、あたしの部屋に旅行カバン用意してるねん。

    もしお母さんが出てったら、あたしあの家で一人、ますますつらい思いすることになる。

    2007-10-12 02:21:00
  • 214:

    ◆0eliurtmUc

    自立したいねん…。》

    私は、風俗=金銭苦で働く場所と言う公式が勝手に成り立っていたから、お金に恵まれた家庭から、《自立》を理由に風俗デビューしようとするかなの、背中を押していいものか迷った。

    それに、泣き虫なかなには、刺激が強すぎる仕事と言うか、肉体的にも精神的にも、かなりハードな仕事だと言うこと。ハイリスクハイリターンの意味を、どこまで理解してるのか不安だった。

    2007-10-12 02:22:00
  • 215:

    ◆0eliurtmUc

    私は、ここまで来たらきちんと話そうと、覚悟の上で、口を開いた。

    《かな、黙っててごめん。私な、色んな事情があって、風俗を始めてん。最初すごく迷ったけど、全財産を失った直後で、もう必死やったん。

    確かに頑張れば、それに見合ったお金は稼げるよ。でも、ほんまに楽とちゃうねん。そこをよく考えて。それにかなには、やすし君が…》

    2007-10-12 02:23:00
  • 216:

    ◆0eliurtmUc

    《やすしはいいねん》

    かなは急に不快な顔をして、やすし君の話題を断ち切った。

    《あいつはもういいねん、別れる。あたしがこの数週間、どんな思いで悩んでたかも知らんと、ひさし君達とコンパ行っててん。

    2007-10-12 02:24:00
  • 217:

    ◆0eliurtmUc

    《じゃあかなちゃん、いつから来れる?》

    《明日から!》

    《了解!名前は何にしようかな〜》

    2007-10-12 02:27:00
  • 218:

    ◆0eliurtmUc

    《うーん…。明日までに考えて来ます!》

    《了解〜》

    かなの態度は堂々としたもので、まったく物怖じせず、足取りも軽くといった感じで、お店を後にした。

    2007-10-12 02:28:00
  • 219:

    ◆0eliurtmUc

    次の日は土曜で、学校は休み。

    私は仕事も休みだったが、かなは初出勤だったので、終わった頃には連絡があるかな〜と思い、待っていた。

    夜中の0時過ぎに電話があり、《何とかいけたわ〜》と、くたくたに疲れ切ったかなの声。

    2007-10-12 02:30:00
  • 220:

    ◆0eliurtmUc

    私は笑ってお疲れ様を言った。

    迷いに迷ったかなの源氏名は《じゅり》。

    三文字の名前に憧れていたから、が理由らしい。

    2007-10-12 02:32:00
  • 221:

    ◆0eliurtmUc

    《大丈夫やった?》

    《うん!何かあっという間やったけど、すごい仕事やね〜!女の子は可愛い子多いし、ララちゃんなんか、めっちゃあたしのタイプ!》

    《えっ、ララ来てたん…?》

    2007-10-12 02:33:00
  • 222:

    ◆0eliurtmUc

    長期休暇を取っていたララの存在を、私はすっかり忘れていた。

    《うん居てはったよ!あの人Gカップもあんねんて〜!あたしに2カップくらい、分けて欲しいわあ》

    《ら、ララちゃんは梅田店の子やから、なかなか会えないねんで。》

    2007-10-12 02:34:00
  • 223:

    ◆0eliurtmUc

    《は〜っ?!》

    何でも、看板だったゆりちゃんが辞めたのと、梅田のナンバーワンだったララの長期休暇が重なり、店の売り上げに影響が出たらしく、梅田店とうちの本店を統合し、新しく営業を再開することになったと言うのだ。

    何も聞かされていなかった私は、復帰して、統合されたからには、今後必ず目を合わすであろうララの存在に、胸が曇った。

    2007-10-12 02:35:00
  • 224:

    ◆0eliurtmUc

    《ララちゃんに、まみの友達ですって挨拶したら、ビックリしてたわあ!友達同士で働くなんて、変な感じやもんね》

    ララがかなに驚いたのは、別の意味も含んでたと思うが…。

    ララとのことはまた、時間を空けて話そうと思った。

    2007-10-12 02:37:00
  • 225:

    ◆0eliurtmUc

    こうして学校が夏休みに入る直前、かなはじゅりとしてピンサロデビューを果たし、私と一緒に週三勤務で、頑張って行った。

    明るく頑張る真っすぐさがウケて、かなはすぐに指名が増えて行った。

    半月で私が貸していた20万を完済し、それからひと月で引っ越し費用を稼いだかなは、保証人に母親を立てて、夏休み初日に引っ越しを決めた。

    2007-10-12 02:38:00
  • 226:

    ◆0eliurtmUc

    私のマンションは、学校からは決して近くなかったが、かなは《えみんちの近くがいい!》と言って、私のマンションの近所に部屋を借りた。

    思わぬ形で親密さが増した私達は、今まで以上に何でも話せる仲になっていた。

    かなは私と同様、あまり物欲が無く、お金にも執着が無くて、自分の体ひとつで稼いでいける可能性自体に、魅力を感じていたのかも知れない。

    2007-10-12 02:39:00
  • 227:

    ◆0eliurtmUc

    玄関先で鉢合わせしたあの時よりも、幾分痩せていたが、相変わらず抜群のスタイルだった。

    復帰早々ララは指名が入りっぱなしで、毎月コツコツ出勤して指名を維持してた私は、何だかアホらしくなった。

    挨拶以外、ほとんど会話を交わす気は無かったが、私とララの関係を知らないかなは、無邪気にララに憧れ、いつも積極的に話しかけていた。

    2007-10-12 02:42:00
  • 228:

    ◆0eliurtmUc

    ララもかなとはよく喋っていたし、妹みたいになつくかなに、嫌な気はしていない様子だった。

    《ララちゃん今月ナンバーワンかなあ!》

    Gカップのナイスバディと言う、強力な武器を持ったララの指名は、復帰後着々と本数を増やし、他店からやって来た新ゆりちゃんのぶっちぎりだった指名と、競り合っていた。

    2007-10-12 02:43:00
  • 229:

    ◆0eliurtmUc

    《どうやろう。ゆりちゃんも指名すごいし》

    先月先々月のナンバーワンは新ゆりちゃん。

    私は新ゆりちゃんの猫なで声、スタッフ達に媚びる、甘えたな態度が苦手だったが、なぜかララには負けて欲しくないなと言う、期待を寄せていた。

    2007-10-12 02:44:00
  • 230:

    ◆0eliurtmUc

    たける君に対する未練はもうすっかり消えたのに、ララが順調に良成績を残すのは、嫌だった。それは自分でも、よく分からない感情だった。

    《えみも指名多いよなあ〜》

    ふとかなが言った。

    2007-10-12 02:45:00
  • 231:

    ◆0eliurtmUc

    お店の待機室には、デカデカと張り出された歴代指名ランキングの他に、毎月の指名を棒線で表す、指名グラフも貼ってあったので、リアルタイムで自分達の指名本数が確認できた。

    私は、ゆりちゃんやララほどぶっちぎってはいなかったが、勤めて一年近かったので、固定の指名客が多く居て、毎月下がらず、上がらずと言った、安定した本数を維持していた。

    お店でのランキングは四位。

    2007-10-12 02:46:00
  • 232:

    ◆0eliurtmUc

    《ここでガツーンと頑張って、えみが一位になったら面白いのに〜》

    何気なく言ったかなの言葉に、ふと火がついた。

    ララのナンバーワンを、何も苦手なゆりちゃんに託すことない。

    2007-10-12 02:47:00
  • 233:

    ◆0eliurtmUc

    自分で勝ち取ればいいんだ。

    努力して頑張ってララの指名を越せたら、私が今も感じている、このモヤモヤとした感情が拭い去れるかも知れない。

    《だってえみは、出勤日数が少ないだけやん!ゆりちゃんもララちゃんもフル出勤してるし、えみが互角に張り合うとどうなるか、見てみたい〜》

    2007-10-12 02:48:00
  • 234:

    ◆0eliurtmUc

    かなは決して皮肉を込めた意味でなく、単純に興味がある、と言った感じだったが、

    《それにほら、夏休みやし、出勤増やしても支障ないやん!》

    と背中を押して来た。

    2007-10-12 02:49:00
  • 235:

    ◆0eliurtmUc

    《いやいや…》

    私は表向き否定しながらも、何だか目的を見つけた気がした。

    かなり無謀な気もしたが、私はこの世界に入る時、確かに決めた。

    2007-10-12 02:50:00
  • 236:

    ◆0eliurtmUc

    《ララに負けたくない》

    その気持ちを、試す時が来た気がした。

    2007-10-12 02:51:00
  • 237:

    名無しさん

    楽しみ???

    2007-10-12 04:28:00
  • 238:

    名無しさん

    あかん?めちゃおもろい?展開早いし読みやすい?
    待ってます???

    2007-10-12 08:07:00
  • 239:

    名無しさん

    前に書き込みした者ですが、私も夜してて、主さんの小説見て元気出たし自分も頑張ろうと本当に思います!これからも応援してますので、無理せず頑張ってくださいね?

    2007-10-12 09:01:00
  • 240:

    名無しさん

    感想スレ作った方がいい?

    2007-10-12 10:46:00
  • 241:

    名無しさん

    >>318感想スレまでいらんわぁ?

    2007-10-12 21:58:00
  • 242:

    ◆0eliurtmUc

    >>315 ありがとうございますf(^_^)
    >>316 そんなん言ってもらえてほんと嬉しいです、ありがとうございます(>_>317 私もそんなコメントもらえて嬉しいです、元気出ますm(_ _)mありがとうございます☆
    >>318 わざわざありがとうございますm(_ _)m検討してもらったのに申し訳ないんですが、感想スレは、何か恥ずかしいので(^^;)大丈夫です☆ごめんなさい

    2007-10-13 02:39:00
  • 243:

    ◆0eliurtmUc

    八月に入り、先月の指名ランキングが張り出された。

    移籍してから連続でナンバーワンをぶっちぎっていた新ゆりちゃんに、僅差でララが勝っていた。

    入店以来、ずっとお姫様扱いで甘やかされて来たゆりちゃんは、復帰早々指名を追い抜いたララに腹を立て、ララが待機室に戻って来ると、会話の途中でも急に黙ったり、露骨に嫌な顔をしてみせたりした。

    2007-10-13 02:40:00
  • 244:

    ◆0eliurtmUc

    私は、ブリブリと甘えるゆりちゃんのイメージが強かったから、そんな姑息な嫌がらせをするゆりちゃんが意外と言うか、心が狭いなと驚いた。

    そんなゆりちゃんを、ララは大して気にもせず、詰まった仕事をテキパキとこなしていた。

    かなは生理中に風邪をこじらせてしまい、ダブルパンチで仕事を休んでいたから、近所に住む私は、仕事前、お粥とポカリを持ってかなのマンションに向かった。

    2007-10-13 02:41:00
  • 245:

    ◆0eliurtmUc

    明るく頑張っていたとは言え、ハードな仕事だ。気が張っていたのだろう。

    かなは八度を超える熱が続き、水しか受け付けないほど体が弱っていたが、少しでも熱が下がると、私は無理矢理にでもお粥を食べるよう勧めた。

    元々よく喋るかなが、何も喋らずぐったりしてるので、かなり心配だったが、お粥を食べると元気が出たのか、《暑い》とか《しんどい》とかボソボソ言いだした。

    2007-10-13 02:41:00
  • 246:

    ◆0eliurtmUc

    《えみ風邪移るで、今日仕事やろ?》

    《うん…移るかな?ごめん、そろそろ行くわな》

    《行ってらっしゃい。あたしの分まで頑張って来て〜》

    2007-10-13 02:42:00
  • 247:

    ◆0eliurtmUc

    《あはは。了解》

    持って来たポカリをベッドの横に置き、部屋を出ようとした時、かながベッドから起き上がり言った。

    《ランキングどうやった?》

    2007-10-13 02:43:00
  • 248:

    ◆0eliurtmUc

    《ああ、ララちゃんがナンバーワン》

    《へえええ》

    こんな時までランキングが気になるなんて、かなはすっかり仕事にはまってるなと笑ったら、《来月はもっと楽しみ》と言われた。

    2007-10-13 02:44:00
  • 249:

    ◆0eliurtmUc

    《だってそこにえみが食い込んでくるやろ》

    おでこの大きな冷えピタで眉毛が隠れながら、かなはニコッと笑って言った。

    《あんた先月ゆーとったの、本気やったんかい!》

    2007-10-13 02:45:00
  • 250:

    ◆0eliurtmUc

    私は忘れてたフリをして茶化したが、えみは当然と言った感じで頷いた。

    《あたしも元気になったら頑張るし、えみも頑張れ》

    無邪気で素直で憎めない。

    2007-10-13 02:46:00
  • 251:

    ◆0eliurtmUc

    明るいかなの、そんなところが好きだった。

    八月もまだ出だしだったが、新ゆりちゃんとララは、一日単位に稼ぐ指名数が多いので、すぐに二人だけ棒線が突き出ていた。

    私はその後を行く四番目。

    2007-10-13 02:47:00
  • 252:

    ◆0eliurtmUc

    このまま無難に出勤すれば、今月も変わらず、四位をキープと言ったところだった。

    ララは先月、本店が統合されてから改めて一位を取ったと言うことで、そのインパクトだけでも、私は怯みそうだった。

    ネガティブになればマイナス思考は深まり、無い物ねだり、自己嫌悪、そこからはぐるぐると負のスパイラルだ。

    2007-10-13 02:48:00
  • 253:

    ◆0eliurtmUc

    私は自分の良さが何か分からず、どこを伸ばし、どこを改善して行けば指名が増やせるか分からなかった。

    馴染みの指名客に聞いてみても、《顔が好き》とか《くびれがいい》とか、物質的な、いまいちパッとしない答えばかり返って来た。

    中には《何か良く分からんけど癒される》と言ってくれる人も居たが、私は自分のどんなところが癒し系か、分からなかった。

    2007-10-13 02:49:00
  • 254:

    ◆0eliurtmUc

    そう。私のキャラクターははっきりしていない。

    2007-10-13 02:50:00
  • 255:

    ◆0eliurtmUc

    甘えたキャラなゆりちゃん。

    ナイスバディなララ。

    明るく真っすぐな純粋さが売りのかな。

    2007-10-13 02:51:00
  • 256:

    ◆0eliurtmUc

    でも私は……。

    これと言って際立った特徴が無かった。

    顔はまあまあ、ど不細工ではないと思う。体は標準。胸も普通。性格的にうるさくもなく、静かでもなく、年相応な感じ。服も普通だし、メイクも髪型も普通。普通…。

    2007-10-13 02:51:00
  • 257:

    ◆0eliurtmUc

    《負けたくない》

    そんな調子に乗ったプライドが、なぜあの時あれほどまでに奮い立ったのか、分からなかった。

    思い上がれるほど、自分がララに勝てる魅力は無かったのだ。

    2007-10-13 02:52:00
  • 258:

    ◆0eliurtmUc

    私は落ち込んだ。

    ちょうどその頃、バリ旅行していたゆりちゃんが帰国し、《お土産渡したいから会おう!》と連絡があった。

    電話があった時、隣にかなも居たので、《かなが来る前、お店でずっとナンバーワンやった人》と説明すると、元気になったかなは、会いたい会いたいと連呼した。

    2007-10-13 02:53:00
  • 259:

    名無しさん

    しゃしゃってすみません
    ほんとすきです?主さん更新お疲れ様です??読みにくくなるのに書いてすみません 楽しみに待ってます

    2007-10-13 02:53:00
  • 260:

    ◆0eliurtmUc

    だからゆりちゃんに了承を得て、後日二人でマンションへ行った。

    かなは、私が初めてこのマンションへ訪れた時より数倍大げさなリアクションで、感激していた。

    かなの家もお金持ち。

    2007-10-13 02:54:00
  • 261:

    ◆0eliurtmUc

    それなりに大きな家に住んでいたはずだが、

    《自分で稼いだお金でこのマンションに住めている》

    そこに大きく感動したらしい。

    2007-10-13 02:55:00
  • 262:

    ◆0eliurtmUc

    オートロックのガラス扉が開き、ゆりちゃんの部屋に着くと、バリですっかり日焼けしたゆりちゃんが、《久しぶり〜あっ!初めましてえ!》と笑顔で出迎えてくれた。

    私はかなが、絶対にゆりちゃんのルックス、キャラクターを気に入ってくれると思っていたので得意気だったが、案の定、《めっちゃ可愛い!》と大喜びで見とれていた。

    あまりに久しぶりの再会。

    2007-10-13 02:56:00
  • 263:

    ◆0eliurtmUc

    聞きたいことも話したいことも沢山あったが、かなの居る手前、どこまでセーブすればいいのか分からなかった。

    だがかなはすぐに気を利かせ、《お邪魔させてもらって、すみませんでした!あとは二人でごゆっくり》と、帰って行った。

    ゆりちゃんは、ディオールのグロスセットと、向こうのエステで気に入って買ったと言う、ハーブのいい香りがするマッサージオイルをお土産にくれた。

    2007-10-13 02:57:00
  • 264:

    ◆0eliurtmUc

    《嬉しい!ありがとう》

    《いえいえ〜》

    綺麗な小麦肌に焼けたゆりちゃんは、それがとても似合っていて、肌が白かった時とはまた違う良さがあった。

    2007-10-13 02:58:00
  • 265:

    ◆0eliurtmUc

    私は、久しぶりに見れたゆりちゃんの笑顔、ゆりちゃんとの間に流れる懐かしい空気に、胸が一杯で嬉しくなった。

    《かなちゃん、可愛いねえ》
    ゆりちゃんは微笑ましそうに言って、コーヒーを啜った。

    《うん、泣き虫やけど、めちゃくちゃいい子!お店でもね、頑張ってるよ》

    2007-10-13 02:59:00
  • 266:

    名無しさん

    リアルタイム?

    2007-10-13 03:00:00
  • 267:

    ◆0eliurtmUc

    《うんまー元気そう》

    とだけ伝え、私もコーヒーを啜った。

    お店を卒業したゆりちゃんからしてみれば、今のお店の現状なんて、聞きたくないかも…と思ったが、私の悩みとして、聞いてもらった。

    2007-10-13 03:02:00
  • 268:

    ◆0eliurtmUc

    お店の売り上げが落ち込み、系列店が統合されて、本店一つにまとまったこと。

    長期休暇を取っていたララが復帰したので、新しくなった本店で、毎回顔を合わせているということ。

    かなにはララとの関係を話してないことや、この夏休み、頑張ってララの指名を抜きたいと思っていること、全部話した。

    2007-10-13 03:02:00
  • 269:

    ◆0eliurtmUc

    仕事仲間として、同じラインに立って関わっていないせいか、私はゆりちゃんに、本音で思うまま、すべてを話せた。

    ゆりちゃんは最後まで真剣に聞いてくれた後、ニコッと笑って《応援するわ!》と肩を叩いてくれた。

    《出勤日数を増やせば、可能性は絶対にある!あとはまみちゃんの、努力次第。》

    2007-10-13 03:03:00
  • 270:

    ◆0eliurtmUc

    私は夏休みに入っていたし、出勤日を増やすのは問題無かった。体調管理も頑張る。ただ、ゆりちゃんの言う《努力》という点が不安で、分からなかった。

    《ゆりちゃんずっとナンバーワンやったやん、本間すごいなあって…》

    私がつぶやくと、ゆりちゃんは、昔と変わらず笑って否定した。

    2007-10-13 03:05:00
  • 271:

    ◆0eliurtmUc

    ゆりちゃんのスレンダーなモデル体型は、生まれつきと言うか、太った経験が無くて、ヤセの大食い。胃下垂みたいな体質をしてるからだとばかり思っていたので、私はかなり衝撃的だった。

    《もう鬼のようなダイエット!最初は気合いばっか先走って空回りしたし、断食だとかサプリとか、無茶なことして倒れたりした。

    でもその時は意地になってて、とにかく痩せて、周りを驚かせたかってんな。

    2007-10-13 03:08:00
  • 272:

    ◆0eliurtmUc

    その為には努力。しかも、継続させなあかんと思って、毎日歩いてお店に通って、夕食抜いて、ジム行く生活を続けたん。

    大変やったよ。

    でも半年で15キロ痩せれて、世界が変わった。

    2007-10-13 03:08:00
  • 273:

    ◆0eliurtmUc

    お店のランキングに載りだしたのも、それから!》

    ゆりちゃんは努力のできる子。

    それは500万を貯めきった時にも目の当たりにしたが、痩せてついた自信が、ルックスだけじゃない自信にも、結びついている気がした。

    2007-10-13 03:09:00
  • 274:

    ◆0eliurtmUc

    《私ララちゃん追い抜きたいけど、自分のどこを改善すればいいか分からなくって。》

    私が言うと、ゆりちゃんは目を丸くして声を強めた。

    《改善なんてすることないやん!あたしゆーたやろ?まみちゃんの真面目なとこに、憧れてたって。まみちゃんは真面目やし、スレてない。お客を癒やそう、楽しまそうとする思いさえ伝われば、ルックスも何も二の次やねんて。

    2007-10-13 03:10:00
  • 275:

    ◆0eliurtmUc

    現にあたし、太ってた時でも、ずっと四位をキープしててん》

    私と同じ順位…。

    だったら出だしは一緒かも知れない。

    2007-10-13 03:12:00
  • 276:

    ◆0eliurtmUc

    ゆりちゃんが、急に身近な存在に思えた。

    《乱暴なお客もがっつくお客も、一見ヤリたいだけやろって思うけど、こっちが誠意を込めて接客すれば、向こうも変わる。

    優しくなったり、笑顔を見せてくれた瞬間って、何かこっちも嬉しく思えるやん?

    2007-10-13 03:13:00
  • 277:

    ◆0eliurtmUc

    あんなお店へ来るお客って、淋しい人が多いねん、色んな意味でね》

    ゆりちゃんが辞めてから、ゆりちゃん指名で通ってたお客に付いたことは無かった。みんなゆりちゃんが辞めるのと同時に、あの店自体を卒業していたのだ。文句ばかりのにちゃんねるでも、ゆりちゃんの悪口なんて見たことがなかった。

    ゆりちゃんは、相当のプロ意識を持って仕事をしていたと思う。

    2007-10-13 03:14:00
  • 278:

    ◆0eliurtmUc

    つくづくゆりちゃんは、人間が大きいと思った。

    悩んでいる人間を励まし、勇気づけ、説得力のある言葉で褒める。

    そう簡単に出来ることでは無いのに、私はすっかりよどんだ気持ちが消え、勇気が沸いていた。

    2007-10-13 03:16:00
  • 279:

    ◆0eliurtmUc

    私の至って特徴のないキャラクター。

    逆にそれは、何色にでも染まれる可能性を秘めていることに、初めて気づかされた。

    《もっと丁寧に接客してみよう》

    2007-10-13 03:16:00
  • 280:

    ◆0eliurtmUc

    次の日からの出勤に備え、念入りにお風呂で肌の手入れをして寝た。

    2007-10-13 03:17:00
  • 281:

    ◆0eliurtmUc

    途中コメント下さった方々、ありがとうございます(>_

    2007-10-13 03:18:00
  • 282:

    名無しさん

    終わりですか??

    2007-10-13 03:21:00
  • 283:

    ◆0eliurtmUc

    >>364 はい今日はここまでにさせてもらいますf(^_^)

    2007-10-13 03:26:00
  • 284:

    名無しさん

    319やけど気に食わんレスした?シカトですか?

    2007-10-13 04:49:00
  • 285:

    名無しさん

    ↑そりゃああんな書き込みの仕方されたら誰だって少しは気悪いやろ〜。
    そんなんも分からんの?
    構ってほしいんかしらんけどしつこいし女々しい。

    2007-10-13 05:16:00
  • 286:

    名無しさん

    更新待ってます?

    2007-10-14 02:16:00
  • 287:

    書かんでよろしい!

    2007-10-14 18:11:00
  • 288:

    名無しさん

    主さん待ってます(>_

    2007-10-14 18:28:00
  • 289:

    名無しさん

    あげます?

    2007-10-15 01:25:00
  • 290:

    ◆0eliurtmUc

    >>366 レスせずごめんなさいm(_ _)m
    >>367 >>368 >>370 >>371さん
    まとめてのレスになり、申し訳無いんですが(>_

    2007-10-15 17:34:00
  • 291:

    ◆0eliurtmUc

    たった一日で何もかも変われたわけじゃ無いのに、私はゆりちゃんにアドバイスをもらえたことで、かなり前向きになれていた。

    次の日ララは休みだったが、指名グラフを見ると、私とララの間にはかなりの指名差があった。

    《早く追い抜きたい…》

    2007-10-15 17:35:00
  • 292:

    ◆0eliurtmUc

    いいところは真似ようと、私も必死になってお客に合わす接客を実践して行った。

    責め好きな人、受け身でこちらに任せっきりの人、謎に会話だけ楽しみに来るおじいちゃんなどさまざまだったが、どんなに見た目で引いてしまっても、お金を払ってくれている以上、私とプレイして良かったと印象づいてもらえるように頑張った。

    そうして意識を変えて接客してみると、今まで自分の中でマンネリ化してたサービス、会話にふと気づき、反省した。

    2007-10-15 17:37:00
  • 293:

    ◆0eliurtmUc

    腹が立つような言葉を浴びせて来る人も稀に居て、そんな時はペースを乱され、モチベーションも落ち込んだ。

    あまりに無口でコミュニケーションが取れず、最後まで手応えの無い人も居た。

    だが、私の方だけは笑顔を絶やさずと、ひたすら精一杯のテクニックと思いやりを込めて、接客をした。

    2007-10-15 17:39:00
  • 294:

    ◆0eliurtmUc

    《今から頑張ったって、リピートが返って来るのは早くても来月。

    すぐにはララを越せないやろなあ…》

    そんな気持ちも時折沸いたが、ピンサロは、ヘルスや他の風俗店に比べて値段が安かったことから、比較的早くリピートが返り出し、《ああ、あの人が!》と言うような意外なお客までもが、私を気に入りまた指名してくれた。

    2007-10-15 17:40:00
  • 295:

    ◆0eliurtmUc

    努力は継続すれば実る。

    特殊な仕事ではあったが、それを実感できた瞬間だった。

    それからは、着実に伸び、ララの指名数に近づいて行く自分のグラフを見るのが、楽しかった。

    2007-10-15 17:41:00
  • 296:

    ◆0eliurtmUc

    新ゆりちゃんは、移籍したての頃こそ知名度、話題性など豊富だったが、お客の前でも我がままな態度が見えていたようで、にちゃんねるで叩かれる常連になっていた。

    ネットの力は恐ろしいもので、嘘かほんとか分からないゆりちゃんの噂を参考にしたお客達は、見事にゆりちゃんを指名しなくなって行った。

    あんなに堂々と一位を突っ走っていたゆりちゃんが五位。

    2007-10-15 17:43:00
  • 297:

    ◆0eliurtmUc

    話題性ばかりが先行していたみたいで、リピートはほとんど0に等しかった。

    ララばかりライバル視していた私は、あっけなくゆりちゃんの指名を抜かしてしまったどころか、新人のかなまで、四位に躍り出た。

    元々デリヘルに勤めていたゆりちゃんは、店舗型の勤務態勢になじめず、しょっちゅう遅刻やドタキャンをしていたが、お客をバンバン呼んでいた時代は、店の人間も見て見ぬフリで甘やかしていた。

    2007-10-15 17:45:00
  • 298:

    ◆0eliurtmUc

    看板ネームを次ぎ、大々的にデビューを果たしたゆりちゃんの全盛期は、短いものだった。

    そんなこともあり、私は何とか二位まで追い上げたが、夏休み最後の週で生理になってしまい、やむなくお店を休み、結局ララを追い抜けなかった。

    ララとはその時点で9ポイント差。

    2007-10-15 17:46:00
  • 299:

    ◆0eliurtmUc

    あのまま出勤して頑張っていれば、その差を埋めれたかも知れないのに。

    私は悔しくて、初めて仕事で悔し泣きをした。

    かなは、私が本気で指名を稼ぐようになったので驚いていたが、《無理せんときな》とたびたび気遣ってくれて、私が生理に入ると、《今月お疲れ》と、大好きなマンゴープリンを届けにマンションへ来てくれた。

    2007-10-15 17:47:00
  • 300:

    ◆0eliurtmUc

    《ありがと〜かな》

    《いえいえ、あんた無理しすぎちゃうとか思って!

    すごい指名やったやん、今月二位やろ!》

    2007-10-15 17:48:00
  • 301:

    ◆0eliurtmUc

    かなも、昨日の時点で四位をキープしていた。

    《いやいやかなこそ、いきなり四位やんか》

    《あたしの場合はゆりちゃんのおかげてゆーか、繰り上げや!えみは凄いよ、本間に》

    2007-10-15 17:49:00
  • 302:

    ◆0eliurtmUc

    《ララちゃんも心配してたわ》

    かなが言うので、私は驚いた。

    挨拶以外はろくに会話を交わしたことの無かったララも、私の指名グラフの伸びに、気づいていなかったわけがない。

    2007-10-15 17:53:00
  • 303:

    ◆0eliurtmUc

    私がララを追い抜こうとしていることに対して、ララ自身はどう思っているか気になっていたが、逆に私の体調を心配してくれていたなんて、予想外だった。

    《そうやでえ、ララちゃんも昔、無理な出勤で体調崩したことあるからって、心配してはったわ!》

    私とララが親しくないことを知っているかなは、様子を伺いながら続けた。

    2007-10-15 17:55:00
  • 304:

    ◆0eliurtmUc

    《ほんで、えみごめん。あたしな、ララちゃんに聞いてしまってんけど、えみ、前の彼氏に二股されてんやろ?

    その二股の相手が、ララちゃんやってこと、聞いてしまって》

    遠い昔に傷ついたプライドが、また傷ついた気がした。

    2007-10-15 17:55:00
  • 305:

    ◆0eliurtmUc

    たった今見直したばかりのララにも、《勝手にかなに喋ったな》と言う怒りが募った。

    《ララちゃんあんたと気まずいからって、悩んではったよ。誤解を解きたいって》

    《誤解…?》

    2007-10-15 17:56:00
  • 306:

    ◆0eliurtmUc

    《うん。えみが浮気を知らんかったように、ララちゃんも浮気されてるの知らんかったって。
    あんた、ララちゃんと一度話してみたら?

    あんたはララちゃん目の敵みたいにしてるけど、そんなに悪い子ちゃうと思うねん》

    2007-10-15 17:58:00
  • 307:

    ◆0eliurtmUc

    何だか私だけずっと意地を張ってるみたいな言い方をされ、カチンと来たが、はっきりさせるのが何より楽な解決法だと思い、了承した。

    かなはホッとした顔を見せてから携帯を開き、ララちゃんにメールした。

    返事が返って来ると、《あっララちゃんも今日休みやねんて!梅田に居てるらしいで》

    2007-10-15 17:58:00
  • 308:

    ◆0eliurtmUc

    と言うので、私は戸惑いながらも、流れで梅田に行くと了承してしまった。

    《四時にビッグマンの前でもいい?やって〜》

    かなはいつものテンションに戻り、明るく聞いて来た。

    2007-10-15 17:59:00
  • 309:

    ◆0eliurtmUc

    《う、うん、ええよ》

    かなにメールで約束を取り付けてもらった私は、うまく整理がつかないまま、ララの待つ梅田へ向かった。

    待ち合わせ場所に着くと、ララは、壁にもたれながら携帯で誰かと喋っていて、私に気づくと慌てて電話を切り、駆け寄って来た。

    2007-10-15 18:01:00
  • 310:

    ◆0eliurtmUc

    《ごめんないきなり、今日時間大丈夫やった?!》

    《うん大丈夫、今日からお店も生理休暇やし》

    私は慣れないララとのシチュエーションに、かなりぎこちなく戸惑った。

    2007-10-15 18:01:00
  • 311:

    ◆0eliurtmUc

    お店の外で見るララは久しぶり。

    玄関先で居合わせた、あの時以来だった。

    スタイルが良くて目を引くララの、隣を歩くのは気が引けた。

    2007-10-15 18:02:00
  • 312:

    ◆0eliurtmUc

    《どっか入ろう》と、適当にカフェを探して入り、二人でミルクティーを注文した。

    ミルクティーがやって来るまでの間は、まるで初対面のお客に対して接客するかのように、無難でありきたりな会話が続いた。

    ララも私も、相手の顔色を伺いながら会話を繋げる。

    2007-10-15 18:03:00
  • 313:

    ◆0eliurtmUc

    しばらくしてからミルクティーが到着すると、二人ともいそいそとストローを差した。

    そのタイミングが同じだったので、ララが笑った。

    それを見て、何だか私もおかしくなった。

    2007-10-15 18:05:00
  • 314:

    ◆0eliurtmUc

    硬かった空気が一瞬緩み、ララはひと口飲んでから、話を始めた。

    《ごめんねあたし、嫌な思いさせて》

    開口一番、ララは謝って来た。

    2007-10-15 18:05:00
  • 315:

    ◆0eliurtmUc

    《あの時のこと、今更どう言ったって信じてもらえない気がして、何度も話そうとしたけど、話せなくって。

    結果まみちゃんは傷ついた訳だし、何を言っても言い訳になるなって。

    だから謝りたくて、ほんとにごめんなさい》

    2007-10-15 18:06:00
  • 316:

    ◆0eliurtmUc

    ララにだって、いろいろ言いたい複雑な気持ちがあっただろうに、それらをすべて飲み込んで、謝って来た。

    私が返事に困っていると、ララは続けた。

    《あれからあたしもすぐに別れたの。

    2007-10-15 18:07:00
  • 317:

    ◆0eliurtmUc

    お店でまみちゃんと一緒になってから、毎回まみちゃんの真面目に働く姿見てたら、罪悪感てゆーか、いろいろ考えてしまって。

    確かに浮気はムカついたけど、それでもたけるはあたしを選んでくれた。

    最初はその優越感に浸ってたけど、浮気相手の傷ついた顔を見ちゃってからも付き合いを続けてるなんて、結局あたしも同罪やんとか、思い出しちゃって。

    2007-10-15 18:08:00
  • 318:

    ◆0eliurtmUc

    その…

    うまく言えないねんけど、ごめんね。》


    確かにあの場に居合わせた時、たける君を取ったララに腹は立った。

    2007-10-15 18:10:00
  • 319:

    ◆0eliurtmUc

    でも、そこから先は嫉妬だとか、自己嫌悪。ララの存在を飛び越えた憎しみの感情ばかり沸いていて、決してララ自身に腹を立てていた訳ではなかったのだ。

    悪いのはたける君。

    どちらにもハッキリしなかったあの男自身だったが、そのたける君に対する未練さえ消えた今、ララを避けるのも拒むのも、完全に意味ない気がした。

    2007-10-15 18:11:00
  • 320:

    ◆0eliurtmUc

    ララの指名に負け、悔しかった。

    でもなぜか達成感があった。

    《ララを追い抜く》と決意してから、自分の接客態度を見直し、努力を重ねた結果、目に見えて指名が増えたからかも知れない。

    2007-10-15 18:12:00
  • 321:

    ◆0eliurtmUc

    結果はララを追い抜けなかったにしろ、自分自身がすごく成長できた気がして、今は満足に近い、充実感があった。

    ララに勝つ。

    それを決めた時点で、自分自身、すでに変われていたのかも知れない。

    2007-10-15 18:13:00
  • 322:

    ◆0eliurtmUc

    《いやいや、ララちゃんが謝る意味が分からんよ、考えすぎ。

    私もたける君にはもう未練無いし、ララちゃんに腹が立ってるとか、謝って欲しいとか、考えたこと無いねん。

    そんなん言うなら、私こそごめん…。》

    2007-10-15 18:14:00
  • 323:

    ◆0eliurtmUc

    決して打ち解けることは無いと思ってたララに対して、私は思うまま話した。

    私がずっとララに出していた《親しくする気はない》と言うバリアに、ララの方こそ傷ついたはずだし、やりにくかったはずだ。

    冷静に考えてみれば、甘やかしてくれなくなった店側に腹を立て、スネて逃げて行った新ゆりちゃんと、変わらなかった。

    2007-10-15 18:14:00
  • 324:

    ◆0eliurtmUc

    反省した。

    子供だった私。

    私もララもしばらく謝り合った後、互いにたける君をバカにして笑った。

    2007-10-15 18:15:00
  • 325:

    ◆0eliurtmUc

    硬かった空気はすっかり和み、一年以上わだかまっていた気持ちが、スーッと浄化されて行く気分だった。

    2007-10-15 18:16:00
  • 326:

    名無しさん

    調子乗ってるみたいやけで全然おもんないし無駄に更新多くてうっとしい、辞めて。

    2007-10-15 22:07:00
  • 327:

    名無しさん

    ↑あんたが一番うっとうしい。
    空気読んでや?
    momentsからずっと読んでいます。
    主さんは書き方が上手でおもしろいしいつも楽しませてもらってます。荒らしや変な阿呆みたいなんも出てきますがどの小説でも出てくるし気にせず無視して頑張って下さい?

    2007-10-15 23:21:00
  • 328:

    名無しさん

    うんうん!同じくおもしろいと思う〜☆☆(*´∀`)ノ?

    2007-10-16 02:54:00
  • 329:

    名無しさん

    なんの言い掛かりなん?
    おもしろいし更新早いし?主さん待ってます??

    2007-10-16 07:33:00
  • 330:

    名無しさん

    楽しみにしてま〜す

    2007-10-16 07:55:00
  • 331:

    名無しさん

    書いて??????

    2007-10-16 18:47:00
  • 332:

    ◆0eliurtmUc

    >>414 >>415 >>416 >>417 >>418 まとめてのレスで申し訳ないですが、すごく嬉しいです(>_

    2007-10-17 03:56:00
  • 333:

    ◆0eliurtmUc

    結局、ララに勝ちさえすれば拭い去れると思っていたこの気持ちは、ララと向き合うことによって浄化され、綺麗に解決してしまった。

    改めて接してみると、周りの言う通り、ララは見た目と違って大いに控え目で、謙虚だった。

    見た目のけばけばしさや、Gカップのインパクトからしたら、かなりのギャップだ。

    2007-10-17 03:57:00
  • 334:

    ◆0eliurtmUc

    やっぱりナンバーワンを維持している子には特別な魅力がある。

    またそれを痛感させられたが、ララと話せて良かった。

    心からそう思えた。

    2007-10-17 03:58:00
  • 335:

    ◆0eliurtmUc

    解散してから携帯を開くと、世話焼きなかなからメールが来ていた。

    私がララとどんな会話をしたか、まず真っ先に聞きたがるなと思い、電話した。

    かなはいちいちリアクションが大きかったが、《良かった良かった》と安心してくれた。

    2007-10-17 03:59:00
  • 336:

    ◆0eliurtmUc

    二日後からは後期の授業が始まる予定だったので、その日の話をしたりして電話を切った。

    夏休みが終わる――。

    目標を定めて突き進んだこのひと月。

    2007-10-17 03:59:00
  • 337:

    ◆0eliurtmUc

    得られたものが、沢山あった気がした。

    ララを越せなかった私が、ララに負けまいと努力をし、自信がついた。

    苦手意識ばかり膨らんでいたララと、向き合って話すことができた。

    2007-10-17 04:00:00
  • 338:

    ◆0eliurtmUc

    和解した。

    むしろララは、思ってた以上にいい子だった。

    何だか急に脱力と言うか、やりきれた感でいっぱいになった。

    2007-10-17 04:01:00
  • 339:

    ◆0eliurtmUc

    後期の授業が始まると、かなと、互いのマンションの間にあるコンビニで待ち合わせして、学校へ行った。

    初日は午前で学校が終わり、すぐに帰れたが、検定を申し込みに学生センターへ行った時、やすし君と鉢合わせしてしまった。

    かなは無視して検定用紙を選び、サッサと記入を済ませてカウンターに提出し、その場を去ろうとしたが、やすし君は呼び止め、腕を掴んだ。

    2007-10-17 04:02:00
  • 340:

    ◆0eliurtmUc

    《おい、何で無視やねん》

    《…》

    《お前何か勘違いしてるやろ》

    2007-10-17 04:03:00
  • 341:

    ◆0eliurtmUc

    《…》

    《ちゃんと話し合おうや》

    《…》

    2007-10-17 04:04:00
  • 342:

    ◆0eliurtmUc

    《なあ、今どこに居てんの?》

    《関係ないやろ》

    《おい!》

    2007-10-17 04:04:00
  • 343:

    ◆0eliurtmUc

    やすし君が声を荒げたので、私は慌てて二人を引き離した。

    《かな、あんた引っ越したこと、ゆーてへんの?》

    《必要ないもん、別れたし》

    2007-10-17 04:05:00
  • 344:

    ◆0eliurtmUc

    かなはそう言うが、どうやら二人は正式には別れて居なかった。

    かなが一方的にやすし君を避け、関係が途切れてしまっていただけで、やすし君はまだ納得していなかったのだ。

    《いきなり連絡つかへんくなるから、家行ったけど、お前んとこのおばさん、何も教えてくれへんから》

    2007-10-17 04:06:00
  • 345:

    ◆0eliurtmUc

    《…》

    かなは親とも連絡を取り合って居なかったし、黙ってしまった。

    《かな、ちゃんと話し合った方がいいって》

    2007-10-17 04:07:00
  • 346:

    ◆0eliurtmUc

    私はそうなだめたが、かなは黙る。

    《私もララと、ちゃんと話せて良かったと思ってる。かなもちゃんと話し合い、ほら!》

    私は、二人を残して先に学校を出た。

    2007-10-17 04:08:00
  • 347:

    ◆0eliurtmUc

    “まったくかなは、私の心配ばかりして、自分の彼氏はほったらかしやったんかい!”

    突っ走るかなに呆れたが、そこまで私を気にかけてくれていたかながまた、憎めなかった。

    乗り換えた駅に着き、歩いていると、かなから電話があった。

    2007-10-17 04:08:00
  • 348:

    ◆0eliurtmUc

    《えみ、やっぱりあたし、やすしとやり直すわ!》

    うまく話が出来たみたいで、私は喜んで祝福をした。

    《それがいいよ、きっとコンパも出来心やって》

    2007-10-17 04:09:00
  • 349:

    ◆0eliurtmUc

    《うん、何かやすしは未だに否定してるけどな…。でも、久しぶりに顔見て話したら、やっぱ好きやなあって思って、許せてしまったわ!》

    男友達とつるんでばかりいたやすし君も、かなが居なくなり、初めてかなの大切さに気づいたのだろう。

    好きな人同士、たまには気持ちを確かめ合う為に、距離を作るのも必要なのかなあと、かな達を見て思った。

    2007-10-17 04:10:00
  • 350:

    ◆0eliurtmUc

    仲直りしたかなとやすし君は、すぐにかなのマンションで同棲を始めた。

    かなは元々お金持ちだったから、突然の引っ越しに関しても、やすし君は特に気に留めていなかったが、やっぱり同棲して居る状況でのピンサロの出勤は、難しくなっていた。

    かな自身も、《彼氏が居るのに風俗で働く》と言う後ろめたさから、出勤しない日が続き、そのままお店を退店した。

    2007-10-17 04:11:00
  • 351:

    ◆0eliurtmUc

    かなが《やすしに見られたら気まずい!》と言うので、かなの花束も私の部屋に飾ったが、嬉しかったので、お互い写メを撮って待ち受けにした。

    何だか心が洗われるような、淡くて澄んだ、綺麗なシクラメンだった。

    最悪な展開ゆえに飛び込んだ風俗の世界だったが、こんな風に温かく見送ってもらえたのは、嬉しかった。

    2007-10-17 04:14:00
  • 352:

    ◆0eliurtmUc

    ララには最後、お店で顔を合わすことのないまま卒業してしまったが、ホームページを見て卒業を知ったララの方から、《お疲れ様!》とメールがあった。

    デコメ絵文字たっぷりの可愛いメールが、ほんとにララらしくないと言うか、つくづく見た目とギャップのある子やなあと思って、おかしかった。

    お店を卒業した私とかなは、何事も無かったように、学校ではテスト勉強、図書館やファミレスに溜まっては、検定勉強に明け暮れた。

    2007-10-17 04:15:00
  • 353:

    ◆0eliurtmUc

    私は、かなとやすし君に誘われ三人で勉強していたが、二人の邪魔をしてる気がして遠慮がちにしていると、やすし君が、友達を連れて来るようになった。

    友達の多いやすし君は、日替わりでコロコロいろんな男の子を紹介してくれたが、そのたびかなが、横からチャチャを入れて来ては、《昨日のたかしより、今日の大地のがお薦め!》なんて言うので、調子が狂った。

    特に、その大地君と言うのが、もろに私の好みだったので戸惑った。

    2007-10-17 04:16:00
  • 354:

    ◆0eliurtmUc

    久しぶりに、異性として意識できる相手が出来た。

    浮かれる気持ちも少しあったが、私以上に、かなが浮かれて冷やかして来るので、困った。

    《だって〜あたしがえみと友達になってから、初めてえみがときめいた男やもん!興味あるわ!絶対応援するからっ!》

    2007-10-17 04:18:00
  • 355:

    ◆0eliurtmUc

    かなの気持ちは嬉しかったけど、私も大地君も、ガツガツ積極的にアプローチ出来るタイプでは無かったし、進展にはかなり時間がかかった。

    テスト期間を終えたら、《お疲れさん》だの、何かしら理由を付けて、飲みに行こうだの、出来たかも知れない。

    でも、私と大地君はきっかけを作れず、ゆるゆると会うペースが減って行っていた。

    2007-10-17 04:19:00
  • 356:

    ◆0eliurtmUc

    そんなある日、いきなり大地君が映画に誘って来た。

    私は、何だかべたなデートプランがくすぐったかったが、OKし、学校も勉強も関係ないまったくのプライベートで、初めて大地君と会った。

    学校は私服だったし、見た目は特に新鮮味など無かったが、緊張して、互いに目をあまり見ず会話した。

    2007-10-17 04:20:00
  • 357:

    ◆0eliurtmUc

    映画を観た後、食事して、ぷらぷら街をウィンドーショッピングしてから、お茶をして、あまり会話も弾まないのに、互いの終電ギリギリまで居たのは、離れたくなかったから。

    例え会話はすぐ途切れても、二人にとっては心地よい空間。

    手も繋げない微妙な距離の中でも、私は何だか幸せで、笑っていた。

    2007-10-17 04:21:00
  • 358:

    ◆0eliurtmUc

    そして最後、改札で別れる直前に告白をされ、私は嬉しくて、その場でOKをした。

    自分はガツガツ騒げるタイプでは無いから、たける君のように、自分と対照的な、賑やかなタイプの人間に惹かれがちで、そういうタイプと合うと思っていた。

    でも、大地君と付き合い出してからは、それまでの恋愛に対する価値観が、少しズレていたなと思った。

    2007-10-17 04:21:00
  • 359:

    ◆0eliurtmUc

    相手が同じタイプなら、同じような波長を感じて楽だし、喋らなくても、一緒に居れるだけで落ち着いたり、暖かい気持ちになれたのだ。

    しかも、それが向こうも同じだと知った時は、また更に幸せな気持ちが膨らむ。

    大事にして行きたいと思える相手だった。

    2007-10-17 04:22:00
  • 360:

    ◆0eliurtmUc

    かなとやすし君は、定期的にダブルデートを計画してくれて、四人でも良く遊んだ。

    学校を卒業し、互いに就職してからも付き合いは続き、忙しくも充実した日々。

    私も大地君も、某海外化粧品メーカーのメイクアップアーティストとして就職を決め、百貨店勤めの毎日だ。

    2007-10-17 04:23:00
  • 361:

    ◆0eliurtmUc

    メイクの世界は上下関係が厳しく、技術とか接客云々の前に、社員同士の人間関係で悩み、押しつぶされそうだった。

    でも、勤めていたスーパーが倒産したあの日から、バタバタと急展開で、ここまで辿り着いた。

    決して平坦な道のりでは無かった中、やっと自分で勝ち取った夢。

    2007-10-17 04:24:00
  • 362:

    ◆0eliurtmUc

    そこを思い出すと、どんなにくたくたに泣いてめげても、翌朝には起きて、支度していた。

    今とても充実している。

    この幸せな日々。

    2007-10-17 04:25:00
  • 363:

    ◆0eliurtmUc

    止まらず歩き続けたい――



    《完》

    2007-10-17 04:26:00
  • 364:

    ◆0eliurtmUc

    最後まで読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)前作から読んで下さった方も、ありがとうございます(>_

    2007-10-17 04:27:00
  • 365:

    名無しさん

    前作も読ましてもらってましたが、どちらもオモシロかったです(^O^)??   おつかれさまでした??

    2007-10-17 04:37:00
  • 366:

    名無しさん

    お疲れ様です?すっごいよかった??主さんありがとう???(゜∨゜)

    2007-10-17 07:41:00
  • 367:

    ◆0eliurtmUc

    >>455 前作から読んでくれてたんですね(>_>456 そんなん言ってもらえてほんと嬉しいですm(_ _)mありがとうございます☆温かい読者様ばかりで、有り難いです

    2007-10-17 15:22:00
  • 368:

    名無しさん

    目標を貫き通せてすごいですね?これからも頑張って下さい?

    2007-12-22 19:44:00
  • 369:

    名無しさん

    ここの主さんの書く小説おもしろくて好きです?
    もう次は書かないんですか??

    2007-12-23 16:40:00
  • 370:

    ◆0eliurtmUc

    >>458 久しぶりに見たら、コメントあって驚きました(>_>459 そんなんゆってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!また書くかは考えてなかったけど、機会があれば、書きたいです☆

    2008-01-19 23:25:00
  • 371:

    名無しさん

    ?

    2008-01-20 22:49:00
  • 372:

    名無しさん

    本間おもろかった(?д?!)

    2008-01-23 12:42:00
  • 373:

    名無しさん

    あげ

    2008-01-23 18:07:00
  • 374:

    ◆0eliurtmUc

    >>462>>463ありがとうございます(o^_^o)

    2008-01-24 22:41:00
  • 375:

    名無しさん

    実話ですか?

    2008-01-26 03:57:00
  • 376:

    あり

    今読みました!めちゃ良かったです(^_^)

    2008-05-06 01:25:00
  • 377:

    名無しさん

    ?

    2009-03-15 12:27:00
  • 378:

    名無しさん

    良作?

    2009-03-15 17:51:00
  • 379:

    名無しさん

    2011-02-20 01:18:00
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