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−女神−

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  • 1:

    甲斐


    その夜、俺は恋をした。
    とても綺麗な、そしてとても儚い女神に。

    2007-11-09 00:57:00
  • 2:

    甲斐

    『早く、こんな雑誌に載れるぐらい売れたいわぁ!』
    『速水さん、やっぱカッコいぃよな。』
    とあるコンビニ。俺は同僚の新人ホスト、卓とキャッチ中をいぃ事に、ホスト雑誌を読んでいた。

    2007-11-09 01:01:00
  • 3:

    甲斐

    『まぁ俺らみたいな新人は、まだまだ載れへんよなぁ。その前に、客を掴まなあかんやろ。』
    と、パラパラとページを捲りながら、卓が言った。『ホンマやなぁ。キャッチサボッて本読んでる場合ちゃうよな。』
    俺の言った事に、卓が頷く。二人とも雑誌を棚に戻し、コンビニを出た。外に出ると、冷たい風が、俺の頬を撫でた。

    2007-11-09 01:06:00
  • 4:

    甲斐

    『さぁて、キャッチでも頑張りますか。』
    スーツのポケットに両手を入れ、俺達は歩く。時間はまだ夜の九時。キラキラとネオン輝く街は、出勤前のお水のお姉さんや、ホスト達でいっぱいだ。

    2007-11-09 01:11:00
  • 5:

    甲斐

    『皆、寒そぅやなぁ。』いつものキャッチ場所に着き、最初に口を開いたのは、俺の方。
    『幸、あの二人は?』
    俺の腕を、引っ張りながら卓が言った。卓の目線の先を追うと、見ているだけで、寒そうな格好をした二人組のギャルが歩いて来た。

    2007-11-09 01:19:00
  • 6:

    甲斐

    『あの子ら行こや?』
    と、言いながら、卓とギャルの方に歩く。
    『なぁなぁ、どこ行くん?』
    卓が最初に話し掛け、ギャル達の足をとめた。頭を金髪に近い、茶色に染めたギャルが『え?』と、怪訝そぅな顔をした。

    2007-11-09 01:24:00
  • 7:

    甲斐

    『どっか行ってたん?』卓の、人懐っこい笑顔を無視し、目がパッチリした猫顔をしたもぅ一人のギャルが口を開いた。
    『ホストとか、ダサ。』
    そぅ言って、ギャル達はどこかに歩き出した。

    2007-11-09 01:32:00
  • 8:

    甲斐

    『最近の若い子は怖いわぁ。』
    卓がギャル達の、歩いて行った方向を見ながら呟いた。
    『頭弱そうやのに、口だけはいっちょ前やったな。』
    俺が毒づくと卓が『お前…可愛い顔して、口悪いよな。ホンマ。』と苦笑いしながら言った。

    2007-11-09 01:40:00
  • 9:

    甲斐

    『よぉ言われる。』
    俺がそぅ言うと、卓はまた苦笑いした。
    『さぁ、さぁ、次行きましょ。』
    と、俺は卓の背中を軽く叩き、キャッチを再開を促した。

    2007-11-09 02:05:00
  • 10:

    甲斐

    訂正。
    キャッチを再開→×
    キャッチ再開→○

    2007-11-09 02:08:00
  • 11:

    甲斐

    キャッチを再開したのはいぃが、中々うまくいかなかった。足を止めてはくれるが、喋るだけで終わったり、暴言をはかれたり、無視されたり……。そんなのばかりだった。
    『もぅ店帰ろやぁ。』
    寒さの中、限界を感じたのか、卓が言った。
    『せやなぁ、あ、俺トイレ行ってから行くから、先戻っといて。』

    2007-11-09 02:19:00
  • 12:

    甲斐

    『分かった。ほな店でな。』
    卓と別れ、俺は近所のコンビニにトイレを借りに行く。コンビニの中に入ると、冷え切っていた体が、暖房のお陰で、温もっていく。用も足し、温かいコーヒーを買って、俺はコンビニを出た。ふと、目の前のビルにある、巨大スクリーンを観ると、まだ1ヶ月も先なのに、もぅクリスマスの事をやっていた。
    『『クリスマスか。』』
    俺が呟くと同時に、他の声が横から聞こえ、俺はとっさにそっちを見た。

    2007-11-09 02:31:00
  • 13:

    甲斐


    そこに立っていたのは、綺麗に染まった茶色の髪をアップにし、太ももまでスリットの入った、黒のシンプルなドレスにあったかそぅなファーコートを羽織った、いかにもお水!といった感じの女だった。女は、俺に気付くと、綺麗な形をした目を、一回瞬きさせ微笑んだ。

    2007-11-09 02:42:00
  • 14:

    甲斐


    一目惚れって、あると思う?

    YES or NO。

    2007-11-09 02:51:00
  • 15:

    甲斐

    −俺の答えはYESだ。
    一目惚れなんて、信じてなかった。だけど。
    実際に今、この瞬間、俺は目の前で、俺に笑いかける女に、恋をした。

    2007-11-09 02:53:00
  • 16:

    甲斐

    『君、ホスト?』
    突然の女の問い掛けに、俺は勢い良く言った。
    『ホストです!』
    俺がそぅ言うなり、女はまた笑った。

    2007-11-09 03:12:00
  • 17:

    甲斐

    『あ、えと…その。』
    俺は急に恥ずかしくなり、自分の顔が熱くなるのを感じた。
    『面白い子やね。名前は?どこのホスト?』
    『えっと、幸って言います。club leiって店で働いてます。』

    2007-11-09 03:17:00
  • 18:

    甲斐

    『leiの子かぁ。あ、私は本城 遊離。よろしくね。』
    遊離…。俺はもの凄くドキドキした。今まで、色ンな子と、付き合ってきた。だけど、こんなにドキドキする事なんてなかった。
    『あ、よろしくです。』『アハハ、そない緊張せんでもいぃやん?幸君は何才なの?』

    2007-11-09 03:21:00
  • 19:

    甲斐

    『二十歳です。』
    『二十歳なんや、なんや同い年やん。』
    と、遊離が嬉しそぅに言った。俺はその反対で、驚いていた。年上だとばかり、思っていたから。『あ、何か驚いた目してる。私の事、年上やと思ってたやろ?』
    一瞬、心を読まれたのかと思った。

    2007-11-09 03:26:00
  • 20:

    甲斐

    無言で、瞬きをする俺を見ながら遊離は続けた。『良く、年相応に見れんって言われるから、別にえぇけどなぁ。』
    『あ、えっと、それは遊離…さんが、落ち着いてるからちゃいます?』
    『なんかなぁ?てか、同い年やし、敬語はいらんよ。それにさん付けも。』
    ニッコリと笑う遊離に、俺はまたドキッとした。

    2007-11-09 03:31:00
  • 21:

    甲斐

    『幸、どないしたん?』店に戻るなり、俺の異変に気付いた先輩ホスト、時雨さんが、心配そぅな顔をしていた。
    『……時雨さん、俺、恋した。』
    店に戻ってからの俺は、顔がニヤけてニヤけて、仕方がなかった。
    『恋?お前が?』

    2007-11-09 03:36:00
  • 22:

    甲斐

    頷く俺。困る時雨さん。そんな時雨さんを無視して、俺は一人で喋りだす。
    『本城 遊離って言って、メチャクチャ綺麗な子やったんスよ〜…、用事あったらしくて、携番とアド交換してバイバイしたんスけど、ホンマめちゃ綺麗やったなぁ…。』
    本城遊離と聞いて、時雨さんが急に呟く。
    『本城…遊離?』

    2007-11-09 03:42:00
  • 23:

    甲斐

    『幸、悪い事は言わん。その女はやめとけ。』
    俺を見るなり、時雨さんが言った。
    『な!』
    俺が口を開くより先に、また時雨さんが口を開いた。

    2007-11-09 03:55:00
  • 24:

    甲斐

    『本城 遊離って言えばな、この街やったら知らんモンは、おらんって言われるぐらい有名な女や。』
    時雨さんの言葉を、聞きながら俺は『あんだけ綺麗やもんなぁ。そら有名なるわな。』とか、そんな事を考えていた。
    『…まぁ、お前みたいのは、相手せんと思うけどな。』
    時雨さんが、最後に小声で言った言葉を、俺は聞き逃さなかった。

    2007-11-09 05:08:00
  • 25:

    甲斐

    『それ、どーゆー意味っすか?』
    馬鹿にされたと思い、俺は少し口調を強める。時雨さんは、困ったよぅな、何とも言えない顔をし、ゆっくりと話しだした。
    『お前が誰を好きになろうが、それはえぇ。けどな、その女だけは、本気でやめとけ。本城 遊離。三年前に、この街一番と言われるclub Vivianにいきなり現れて、半年でVivianの看板になった、クラブ嬢や。』

    2007-11-09 05:13:00
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