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ユリの花

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  • 1:

    『好きだよ』
    『愛してる』
    『離れたくない』
    愛を表す言葉は様々だけど、私にとってそれはただのチープな言葉でしかなくて本当に愛する人でなくても簡単に言える言葉だと思ってた。

    2007-11-19 20:39:00
  • 33:

    ――――…
    仕事が終わって家に帰る途中、私は携帯を取り出しておもむろに今日入ったばかりのメモリーを探す。そこにはきちんと彼の名前が入っていた。初めて知った名前は意外にもありふれたもので、私のメモリーで3番目の松田さんだ。
    マンションに着くとそこは既に電気が灯っていた。『…今日はゆっくりしたかったのに』これからまた人と話さなくてはいけないと思うと頭が痛い。『チッ…』私は軽く舌打ちをしてドアを開けた。『ただいまぁ〜』部屋から『おかえり〜』とあいつの声がする。部屋に入ると、そこには悠々とソファーに寝転がる私の‘彼氏’がいた。

    2008-06-12 04:45:00
  • 34:

    『今日は早かったんだね。ご飯パスタでいい?』バッグを床に置き、自分の部屋着を取り出しながら彼に聞く。『いいよ〜。それよりも何か忘れてない?』あ…。私は彼の方に近づくと髪を耳に掛け、少しかがんで私を見上げる彼に口づける。『ただいま。』『おかえり。』彼はソファーから起き上がり満面の笑みで私を抱きしめた。こういう時に愛されるということを実感するのだろうか。めんどくさいと感じながらも嫌ではない。付き合っているということは私は彼が嫌いではないということだから当たり前のことだが。愛してるかと言われたら疑問だ。

    2008-06-12 05:18:00
  • 35:

    >>32さん
    ありがとうございます。更新がすごく遅めなので申し訳ないですが…

    2008-06-12 05:21:00
  • 36:

    彼とは付き合って3年になる。店長に誘われた飲み会でたまたま居合わせたのが彼だった。長身で物腰が柔らかく、男前ではないが不細工ではない。それに加えて大手会社に勤めてるとくれば女の子が放っておくわけない。その飲み会でも彼は女の子に囲まれていた。

    2009-06-13 10:47:00
  • 37:

    『中原連れてきたのは失敗だったな。女の子みんな取られちまった。』店長はビール片手に隅で飲んでいた私の前に来た。『そんなの気にしてないくせに。意地悪ですね。』私は笑う。『バレたか。いや、でも少しはモテてみたいぞ。』あははと店長はまた笑った。謙遜はやはり日本の美学なのだろうか。少なくとも私の前にいる人はモテる分類だ。

    2009-06-13 11:46:00
  • 38:

    しばらく店長と話しているとお開きの時間になった。
    まだ飲み足りないあたしと店長はバーに飲みに行くことで同意し、会費を払って店をでた。店を出るときに知り合いを何人か誘ってみたが、店の男性スタッフ1人だけしか捕まらず、他の人は明日の仕事が早いらしく断られてしまった。
    バーに着くと、あたしはコロナ、店長はマッカランの12年、スタッフはギネスを頼んだ。

    2009-06-14 05:57:00
  • 39:

    アンティーク調の店内はジャズが流れ、落ち着いた雰囲気を醸し出している。カウンターが8席とテーブル席がふたつの小さなバー。カウンターには既にカップルらしい2人のお客さん、テーブル席はもう埋まっていた。3人で来て正解だったかもしれない。バーで飲むお酒は居酒屋とはまた違った良さがあり、居心地がいい。
    仕事の話やプライベートでの笑い話、私は基本相づちをうっていただけな気がするが話は尽きることなく楽しい時間が過ぎていた。

    2009-06-14 06:34:00
  • 40:

    1時間も経たない頃、店長の携帯がなった。『中原が今から来てもいいよな?』あまり知らない人間と話すのは好きではないが、基本話すのは隣の2人だろうし、店長はもう快諾のメールを返してるはずだ。嫌ではないなら断る理由はない。『かまわないですよ。』あえてそこはいいですよとは言わない。ちょっとしたあたしの抵抗だ。店長は少し苦笑いをしながら、「まぁ、イイ奴だから」とあたしに言った。あたしのさりげない抵抗は長年一緒にいる店長にはバレバレだったようだ。

    2009-06-21 07:31:00
  • 41:

    こういうところが店長のいいとこであり、あたしの苦手なところでもある。何もかも見透かされる感覚…。この人には一番素が出せ、信頼しているが、いつか一番あたしを傷つけうる存在だと思う。あたしの触れてはいけない中核に土足で入り込み、あたしが立てないほどズタズタに切り刻んであたしの前に立ちはだかる…。そしてあたかもそれが光のようにあたしを導き、この人はまた信頼を得るのだ。そんな感覚はこの人の隣にいる限り消えたことがない。

    2009-06-21 07:59:00
  • 42:

    …―――カランカラン
    ドアの鈴の音が鳴る。『すいません。突然お邪魔して。』申し訳なさそうに笑いながら店長の隣に座った。『お前あの女の子たちどうやって撒いたんだ?』茶化すように聞く。『撒くなんて…和也さんが逃げたから、あのあとホント大変だったんですから。』彼は膨れ面で店長を恨めしそうに睨んだ。…なるほど。そういうコトだったのか。

    2009-06-21 10:49:00
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