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奇跡の人
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1:
主
こんなに人を好きになれた。
こんなに人をいとおしいと思えた。
あなたは奇跡の人2008-01-04 12:55:00 -
2:
主
「ずっと一緒におろな」
隣に座る彼が微笑みながら私の目を見つめて、そう囁いた。
それなのにどうしてこんなに不安になるんだろう。
なんて考えなくても分かってる。
彼の目は笑っていない。
決められた台詞のような甘い言葉を彼は何の恥じらいもなく私に囁く。
「お前は俺のかけがえのない人」
「結婚しよな」
「愛しとうで」
2008-01-04 13:08:00 -
3:
主
そんな言葉なんていらない。ドラマの見すぎなんじゃないのかって思うほどのくさい台詞。そこに心なんてなかった。
彼に「大好きやで」と言われるたびに「何で?」「どこが?」と聞きかえすようになった頃、ちょうど付き合って3ヵ月ほどが経っていた。2008-01-04 13:18:00 -
4:
主
4年近く経った今でもはっきり覚えている。ある土曜日の夜8時すぎ。携帯のメール着信音がなった。ライトの色を見て彼からだと気付く。[受信:シン
好きな女出来た。別れよ。]
2008-01-04 13:26:00 -
5:
主
明日は彼の誕生日だったのに…。テーブルに置かれた小さな箱を見つめた。昨日こっそり買いに行ったそのキーケースの入った箱の横にさっき私が彼に書いた手紙があった。もう行きさきを無くしてしまったその手紙は、私みたいだった。そっとそれに手を伸ばしなんとなく読み返してみると、悔しいのか悲しいのかむかつくのか、なんだか分からなかったけど涙が出た。
2008-01-04 13:39:00 -
6:
主
手紙を半分に破り、ごみ箱にそっとほかした。テレビをつけてバラエティー番組を見るけれど、ちっとも集中出来なかった。考えるのは彼の事。依存するってこうゆう事かってため息を吐いた。明日からは、もう会えない。気持ち悪いと思っていたあのくさい台詞たちも、もう聞けないのかと思うと淋しかった。だけど別れ話をメールですませようとするような人を好きだったなんて馬鹿馬鹿しくも思えた。所詮彼にとって私はその程度の女でしかなかった。携帯を開き彼に[分かった]とだけ返事をした。
2008-01-04 13:52:00 -
7:
主
そして彼と私の関係は、彼氏彼女から他人に変わった。彼は新しくできた"好きな女"の子と付き合えたらしく、結局その子とは1年近く続いていた。私はというと彼と別れてからは毎日友達と遊んだ。明けても暮れてもはしゃぎ続けた。そのおかげか半年後には、彼を思い出すこともなくなっていた。そんなある日、ずっとニートだった私はお姉ちゃんに身分証を借りて地元のパチンコ店でアルバイトを始めた。
2008-01-04 14:10:00 -
8:
主
初めての出勤。アルバイト自体が初めてだったのもあって凄く緊張した。だけどみんな優しくていい人ばっかりで安心した。私に色々教えてくれる担当?になった佳奈ちゃんが「タメやんっ!よろしく♪」ってニッコリ笑ってくれた。佳奈ちゃんは目が大きくて細くて綺麗な茶髪がサラサラで本当に可愛い人だった。18歳らしく、私の二つ上だったんだけど姉に借りた身分証が、18歳になっていたからタメということになった。佳奈ちゃんは「ため語で喋ってやぁ(笑)」って言うけど、やっぱり何か気を使ってしまってずっと敬語を使った。
2008-01-04 14:26:00 -
9:
主
佳奈ちゃんは教えかたが上手くて物覚えが悪い私でもすぐに仕事を覚えられた。仕事の合間に色んな話をして佳奈ちゃんとは、初日で仲良くなれた。なんやかんやで夕方になり遅番の人と交代の時間になった。そしたら佳奈ちゃんが「あっそうや!遅番にもう一人タメの子おんねん!来て来て♪」と言って私の腕を引っ張って店の奥の方まで行った。
2008-01-04 14:49:00 -
10:
主
「淳(ジュン)〜!」
佳奈ちゃんが、そう呼んだ目線の先を見ると"淳"って人らしき後ろ姿が見えた。(なんやろ…嫌な予感する)そして淳が振り返った。…予感は的中した。鼓動が早くなって握りしめた手に汗が滲む。振り返った淳の表情が段々ひきつっていくのが分かった。そんな私と淳を交互に見た佳奈ちゃんが不思議そうに「知りあい?」と聞いた。先に口を開いたのは淳だった。「いいや、知らんわ。」2008-01-04 15:03:00