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メビウスの輪
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1:
ナツミ
私はナツミ…。
いつの日からか目を瞑ると、あの日の傷がつくりあげた世界が見える。
2008-01-06 04:56:00 -
2:
ナツミ
チュンチュン…。
ー朝?会社行きたくない…。
泣きはらした目が重たく、ナツミはなかなか起きれない。
2008-01-06 05:00:00 -
3:
ナツミ
それでも渋々起き、ナツミは会社に行く支度をする。
携帯を見ると彼氏からの着信。
ーあぁ…昨日連絡つかなかったから心配してるんだろうな…。
一息ついて電話に出る。2008-01-06 05:05:00 -
4:
『もしもしナツミ?おはよう。昨日どしたん?』
「ゴメンね。昨日遅くまで研究してて帰ったの朝方やってん」
『勘弁してくれよ〜。事故でもしたんかと思って心配したやんか!!一言メールしてくれよ…。俺、心配で心配で眠れんかった…』
ー相変わらず優しい彼氏。名前は涼。
「ゴメン、涼くん!心配かけて…。あ、頭大丈夫?ハゲなかった?」
ーすぐふざける私。『も〜。相変わらずやなぁ〜。ハゲたわ!俺の大切な毛、残り数える程やわ!弁償して!可哀想な俺にヘアコンタクト買うてあげて!』
「のし上がったらヘアコンタクトでもなんでも買うたるわ!それまで残り数本大切にな!」
『…お前、のし上がるのもええけど、夜中徹夜するとか苦労しすぎや〜。そんなん辞めて俺んとこに来いっ。ナツミにはずっとかわいくいて欲しいねん!何も不自由させへんし、ナツミは苦労せんでええの!』
「いーやーだーーーいッ!なんやねん、“その楽させたる”ってのは!ナツミを誰やと思ってんの?!あんたに恵まれなくても一人で十分生きてけるわ!」
ー可愛くない私。
『いや、そういう意味で言ったんちゃうって〜。朝から怒るとかかわいくないぞー★なっ?ナツミがのし上がりたいとかよく解った。けど…辛くなったら俺んとこ逃げて来いよ!』
ー“俺んとこ逃げて来いよ”これが涼の口癖。いつも私がピンチになるとこれを言ってくれる。これを聞くと“あぁ、私には失敗しても逃げ場所があるんだ”と不安が吹っ飛び、気持ちが安らぐ。
2008-01-06 05:49:00 -
6:
私の勤める研究所は主にバイオテクノロジーの研究をしている。
私の夢は、ガンやエイズの治療薬を作り世界の人々を救うこと…。
特にエイズの治療薬の研究を熱心にしていた。2008-01-06 05:55:00 -
7:
研究所は男性ばかりで女性はいない…。それどころか意外とこの業界で研究分野は女性はいないのだ。男性社会で生きるナツミ…。
“のし上がってやる”
この思いはこの境遇のせいだろう。2008-01-06 05:57:00 -
8:
世の中の研究分野は男性社会であることが多い。そして男性社会で生きる男性は、女性を下に見る。成功しようものなら“女のくせに”とか“枕したんやろ”とか陰口叩かれるのは常である。
女である為に辛い思いをするだろうという未来が怖くて泣いた日もあった。女であることが悔しくなって泣いた日もあった。でもナツミはめげなかった。そんな社会に嫌気がさして、ぶち壊したくて、“女が輝ける世界を作る”こう心に決めた。そのために“のし上がってやる”という野心をもって日々死に物狂いで頑張った。2008-01-06 06:07:00 -
9:
男性社会で生きること。これに悩みを持つ子は多かった。だがナツミはこんな社会にすぐに意味慣れた。それはもともとサッパリした性格のためなのか、何を言われても感心を持ってないことは右から左へ受け流す性格のためなのか…。
だけど悩んでる友達を見ると、人一倍友達思いのナツミの心に火がつき、何かしてないと気が収まらなかった。
2008-01-06 06:15:00