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傷だらけの月。
-
1:
◆.et2waqgrQ
赤い。赤い。綺麗な色。 今日も月は赤い。
鮮やかな血の色をした
月が ほら
あたしを見下ろす。
…2008-04-14 05:31:00 -
2:
◆.et2waqgrQ
『お姉ちゃん、…可愛いね。三万でどう?』
午前三時、眠らない街と言われるこの街で、あたしは目的もなく歩いている。 11月の下旬にもなると、風が肌を突き刺すように寒くイタイ―…。
2008-04-14 05:39:00 -
3:
◆.et2waqgrQ
バンッッ――― オヤジは、女の肩を思い切り押すと、横にあった店の看板を蹴って去っていった。
…女は、衝撃でよろめく。だけど、その衝撃は痛くもなんともない。2008-04-14 05:49:00 -
4:
◆.et2waqgrQ
心の中で冷静に呟くだけ。
…なんて滑稽なんだろう。2008-04-14 05:52:00 -
5:
◆.et2waqgrQ
名前は玲花。歳は22歳。 職業――…10分前までは、元キャバクラ嬢。仕事は、10分前に辞めた。そしてたった今、最愛の男にも裏切られた。
…失うモノは何もない。2008-04-14 06:26:00 -
6:
◆.et2waqgrQ
…赤い月が
あたしを嘲笑う。
2008-04-14 06:28:00 -
7:
◆.et2waqgrQ
出会いは、お店のホステスと店長。あたしがたまたまスカウトで入った小箱のキャバクラ。どこにでもある出会いだった。 『自分タイプやわー!』 『飯食いに行こうや!』 『客としゃべってたら嫉妬するわ……』 暗闇の中、酔っぱらったオヤジ達を相手にする中、品のあるスーツを身に纏い、ー優しい言葉をかけてくれる―、そんな“彼”は、一段と素敵に見えた。2008-04-14 07:44:00 -
8:
◆.et2waqgrQ
当たり前のように口説かれ、当たり前のように恋に落ちた。あたしがまだ、19の頃だった―。
《他の女の子にバレてはダメ!》《お客さんにバレてはダメ!》
初めて経験する店内恋愛は、スリルとドキドキの連続で、今まで経験した事のない熱い恋だ…。2008-04-14 07:50:00 -
9:
◆.et2waqgrQ
仕事が終わった後、隠れて送ってもらったり。休みの日には遠い街まで手を繋いで歩いたり、まるで他のカップルとは変わらない、
幸せな幸せな恋愛だった。
ただ一つ、…違うこと。2008-04-14 07:54:00 -
10:
◆.et2waqgrQ
“彼”には、妻子がいる。あたしの好きになった人は、結婚している。 もちろん、最初から知っていたワケじゃない。知り合って一年目で、彼からしたらようやくバレてしまったというところ…。
一つ目の悲劇だった。2008-04-14 07:59:00 -
11:
◆.et2waqgrQ
『なん…で黙ってたん!!一年間…あたしを黙してたん…ッッ!?』
泣きじゃくった。この世の終わりかというくらい、泣きわめいてたと思う。 あたしは驚きとショックでひたすらえづくばかり。
そして、彼はそんなあたしを見てもっとビックリしていた…―。所詮遊びで付き合い始めた女が、そんなに自分の事を好きになってたなんて、気付かなかったんだろう。2008-04-14 08:04:00 -
12:
◆.et2waqgrQ
『黙っててごめんな…やけど俺、玲花の事はほんまに好きやねん…。』 ……騙されるもんか、バカヤロウ!!!
心とは裏腹。涙はただ流れるばかりで、目の前のこの最低な男が、あたしの生き甲斐になっていた事に、あたし自身気付いて驚いた瞬間―…。
あたし達は別れるの……?2008-04-14 08:12:00 -
13:
◆.et2waqgrQ
『別れたくない……』
最低男に騙された、もっと最低な女。あたし達は、別れなかった。そして、この言葉を言ったのは、彼ではなくあたし―…。 あたしはこの日から、彼の玩具となると誓った。2008-04-14 08:18:00 -
14:
◆.et2waqgrQ
自分から電話をかける事は禁止。日曜日は、会えない。ラメ物は禁止。香水はつけない。グロスもダメ。 あたしは、彼の言ったことを全部守った。
割り切り―?そんなもの出来るわけがない。好きでいて欲しかっただけ。嫌われたくなかっただけ。
どんな形でもいい、一人にしないで…。
側にいて欲しいの。2008-04-14 08:51:00 -
15:
◆.et2waqgrQ
彼への依存がエスカレートしていく始まりだった。 四六時中、考えることは彼のことばかり。
『シュン、あたしの事好き?』
『好きやで、愛してる。』
その言葉だけで救われる。誰に言えない恋愛でも、周りがすべて敵になっても構わない。
シュンが好きだといってくれる。シュンが、会いたいと言ってくれる。 それだけで、報われる。2008-04-14 09:17:00 -
16:
◆.et2waqgrQ
『…絶対色やて!そんな男やめときや!!』 『色?色ってなに?』
無知だった。19歳のあたしは、夜の世界の裏側を、なんにも知らなかった。
【色恋管理】
二つ目の、試練。2008-04-14 09:20:00 -
17:
◆.et2waqgrQ
親友だった、カナエに彼のことを相談した矢先、開口一番に出た言葉だった。 カナエは、今は結婚して引退したが、もとは大手キャバクラNo.1嬢だった。
今まで誰にも言えず悶々としていた日々の中、たまたま食事に誘われ久しぶりに会った親友。そんな彼女に言われた衝撃的な言動。
2008-04-14 09:24:00 -
18:
◆.et2waqgrQ
店に引っ張る為に、女を口説くらしい。店で頑張らせる為に、付き合うフリをするらしい。自分にハマらせて店に残させる為に、キスやHをするらしい。
あたしは色管理――…?
2008-04-14 09:28:00 -
19:
名無しさん
おもしろい?
2008-04-14 14:49:00 -
20:
◆.et2waqgrQ
ありがとうございます! 頑張って完結させます?
2008-04-15 05:11:00 -
21:
◆.et2waqgrQ
カナエに言われてそう考え始めた頃、気付けば小箱ながらもあたしは店のナンバーワンになっていた…―。
彼に限ってそんなはずはない…。いや、それともあたしは騙されてるの???
頭の中で葛藤する不安と簡単に砕け散りそうなくらい小さな自信。2008-04-15 05:15:00 -
22:
◆.et2waqgrQ
『玲花が彼女で、俺も自慢やわ!!』
自慢―?…誰にも付き合ってる事内緒にしてるのに?
『お前は出来る女やねん。他とはちゃうねんから。』他とは違う―?仕事が?
それとも、利用価値が―…?2008-04-15 05:19:00 -
23:
◆.et2waqgrQ
ぐるぐるぐるぐるいろんな事が頭を廻る。悪循環だと分かっていても、考えずにはいられない。
……だって、あたしは。2008-04-15 05:22:00 -
24:
◆.et2waqgrQ
気付けば、あたしは店の更衣室で泣きわめいていた。すべての糸が、切れた瞬間。自信が不安に負けたトキ…。あたしは、初めてシュンと別れたいと思った。
『玲花…!玲花!大丈夫か?飲み過ぎたんか!?お前どないしてん…?何かあったんか!?』 彼が慌てた様子であたしに聞く。思えば、シュンの前で泣いたのは玩具になると決めたあの日以来だった…―。2008-04-15 05:29:00 -
25:
◆.et2waqgrQ
『……あたしは色なの?』
。2008-04-15 05:31:00 -
26:
◆.et2waqgrQ
…ごめんなさい。貴方を疑ってしまってごめんなさい。2008-04-15 05:38:00 -
27:
◆.et2waqgrQ
『色…?色なわけないやろ。俺はお前自身が好きやねんから!!』
そう、あたしもシュン自身が好きなのに。綺麗なスーツ姿なんかじゃなくても、優しい言葉なんてくれなくても、あたしは…
あなた自身が好きなのに。2008-04-15 05:40:00 -
28:
◆.et2waqgrQ
シュンは優しい。あたしが泣けば、いつもその日は朝まで一緒に居てくれた。 “家に帰らなくても大丈夫…―?”
気になるけど、聞かない。だって、この瞬間があたしの中で一番の幸せなんだよ。隣で彼が眠っている、その横顔にそっとキスする…
なんて、幸せなんだろう。2008-04-15 05:52:00 -
29:
◆.et2waqgrQ
『玲花、ミナミまで迎えに来てくれん?』 午前四時に鳴り響く枕元の電話。”彼専用”の着信音で、あたしは飛び起きた。2008-04-15 05:57:00 -
30:
◆.et2waqgrQ
シュンに会える……!!
それだけで、一分一秒も もったいなかった。2008-04-15 06:07:00 -
31:
◆.et2waqgrQ
そんな事が、何度あっただろう。彼に呼ばれれば何をしててもすぐに飛んでいった。彼に誘われれば、どんな約束さえ断った―。
2008-04-15 06:13:00 -
32:
◆.et2waqgrQ
シュンがいればいい。彼が側にいてくれるなら、他には何もいらない。
その大きな手で、
優しい声で、 あたしを温めてくれれば…2008-04-15 06:15:00 -
33:
◆.et2waqgrQ
『玲花、愛してんで。』 『あたしも…愛してる。』
2008-04-15 06:18:00 -
34:
◆.et2waqgrQ
彼と出会って、気付けば二年が経っていた―。 あたしは店でも古株になり、相変わらずナンバーワンを保っている。お客さんにはもちろん内密にしないといけない。
だけど、お店の中ではいつの間にか…みんながあたしとシュンが付き合っている事を知っていた。2008-04-18 05:25:00 -
35:
◆.et2waqgrQ
『なんとなく気付いてましたよ!』『お似合いですよね〜!!』
ざっくばらんになったおかけで表向きとはいえ、お店の子達はみんなこんな風に言ってくれた。
これで、ようやくこれからはこそこそしないでいいんだ……
あたしは、ただそれだけが嬉しかった。2008-04-18 05:31:00 -
36:
◆.et2waqgrQ
『ねぇ…シュン、』 『ん、何?』2008-04-18 05:32:00 -
37:
◆.et2waqgrQ
シュンの背中に腕を回して抱きつき、あたしは自然と笑顔が零れた。
『玲花、幸せ?』 『幸せ…
めっちゃ……幸せだよ。』
―…。2008-04-18 05:52:00 -
38:
◆.et2waqgrQ
ねぇ、シュン。
あの頃あたしは確かに 貴方の愛に触れた、と2008-04-18 05:55:00 -
39:
◆.et2waqgrQ
届かないはずの声が 叶わないはずの愛が
少しずつ…
貴方とあたしの中で 生まれていくのを 確かに―、感じていたの。
…2008-04-18 05:58:00 -
40:
◆.et2waqgrQ
久しぶりに、親友カナエからの電話で目が覚める。 『おはよー。てか、いつまで寝てんのさ!』 朝…って言っても、世間一般はもう夕方だけど―。寝起きから、カナエのハスキーボイスが耳に響く…。 昨日は久しぶりに飲み過ぎたせいか、頭もガンガン。2008-04-18 06:01:00 -
41:
◆.et2waqgrQ
『んー…おはよ!ごめん、二日酔いで死んでた。どーしたん?』
『あ、特に用はないんやけど!今日も仕事?暇やったらご飯でも行かない?』
『七時頃まででもいい?』『もち!あたしも透帰ってくるし、んじゃ後程!』2008-04-18 06:14:00 -
42:
◆.et2waqgrQ
―“透”というのは、カナエの旦那様だ。あたしとカナエとも同じ年で、若くて小さいながらも自分で会社を経営しているらしい。何度か会った事もあるけど、誠実ですごく優しそうな人だった。
慌ただしく電話を切るカナエを確認するとあたしも携帯を床に落とし、睡魔に負けそうになりながらも…なんとかフトンから起き上がった。頭イタ…2008-04-18 06:15:00 -
43:
◆.et2waqgrQ
仕事に行く用意をしながら、迎えに来てくれるというカナエの迎えを待つ。一時間ほどして、部屋のインターホンが鳴った。 『おじゃましまーす!玲花久しぶり!』
久しぶりに会ったカナエは、髪を切りまた一段と落ち着いてさらに“ママの顔”になっていた。2008-04-18 06:24:00 -
44:
◆.et2waqgrQ
『カナエ久しぶり!!…めちゃくちゃ大人だし』 『あははっ、これでも二児の母やからね〜。派手好きは封印なのよ。』
十代のうちに夜を上がり透さんと結婚した彼女は、現在二児のママ。十代のうちは、この街の大型店では顔と名前を知らない人はいないんじゃと思うくらい、この世界で生きる人達の中の一人だった。2008-04-18 06:34:00 -
45:
◆.et2waqgrQ
お店に着き、適当にオーダーして乾杯をする…。基本的にあたし達は、外ではアルコールは飲まないから、ウーロン茶での乾杯。 『今日は子供達は??』 『あー、透んとこのママが一緒にご飯食べるって実家に連れていった(笑)帰りに迎えに行くけどね。』 『そっかそっか!そりゃ、孫の顔見たいもんね〜』 『しょっちゅう会ってるのにさー!全く…みんな甘いからワガママに育ってこっちはてんてこまいよ。』
2008-04-18 06:40:00 -
46:
◆.et2waqgrQ
ぶつくさ言って苦笑いしながらも手際よくテーブルを整理する彼女は、なんだかとてもとても幸せそうで、―…あたしは優しい気持ちになった。
『んで、玲花はどうなん?例の彼とは、』2008-04-18 06:47:00 -
47:
◆.et2waqgrQ
話題があたしの話に変わり、カナエは少し心配そうに聞いた。カナエには、あの電話以来、シュンの事は話してない…
『あー、…うん。うまくいってるよ!一応!』 “一応”と付け足してしまうのは、あたしが今幸せの絶頂であろうとも、どうしても“絶対”と言いきれない悲しい言い訳だった。2008-04-18 06:52:00 -
48:
◆.et2waqgrQ
『そっ…か。うまくいってるなら良かった。…あたしは、さ。自分がやってたからってわけじゃないけど、この世界の人間は信じれないんよ。単なる固定 観念にすぎないんやけど。』 『…うん、』 『でも、玲花が本気で好きで信じれるなら信じて突き進み!あたしは、いつでも玲花の味方やから。』2008-04-18 07:03:00 -
49:
◆.et2waqgrQ
『……ん、ありがとう。』
カナエの言ってる事が、分かる気がした。シュンを想う気持ちに嘘偽りはない。だけと、シュンを信じたいと思う反面、あたしはいつも自分自身が何かと戦っている―…、そんな気がして仕方なかった。2008-04-18 07:10:00 -
50:
◆.et2waqgrQ
女癖が悪く、とにかく浮気性だった、―シュンは自分の過去をこう言った。狭い街で広がる噂の早さを、知っているが故、初めに作った彼なりの盾だったのだろう。
あたしはそれなりにショックを受けたけど…、周りから膨らんだ話を聞いてしまうより、本人からこうも堂々と言われると
なんとなく『そうなんだ』と、冷静で強い女を演じてしまう自分がいた。2008-04-18 07:27:00 -
51:
◆.et2waqgrQ
『玲花チャンって強いなぁ、あたしやったら無理やわぁ…』『ってか、本当に付き合ってるん?』『そうやないん?』『えー、だってさーー…』
時期がすぎればこんな噂話も、店内で出始めた。 “??店、玲花は店長に色で引っ張られてるで―” 携帯サイトにも書かれた。2008-04-18 07:40:00 -
52:
◆.et2waqgrQ
『玲花、どこ行きたい?』2008-04-18 07:42:00 -
53:
◆.et2waqgrQ
今日は、心待ちにしてた久しぶりのデート。ようやく休みが合った今日は、二週間以上前から昼間から出かける約束をしていた。 『玲花、聞いてるん??』『……』
『おい、具合悪いんか?』『ううん…大丈夫。』
シュンが隣に居るのに、どうしてだろう。―なんだか気持ちが晴れない。2008-04-18 07:48:00 -
54:
◆.et2waqgrQ
『おい、具合悪いなら帰ってゆっくりするか〜?』 シュンは、一度車を路上に止めると、心配そうに助手席に座るあたしを見た。
『本当に…大丈夫だから』あたしは彼と目を合わさずに、答えた。せっかくのデートなのに帰りたくない。それは、本心。 『…そっか、じゃあどこ行く?玲花の行きたいとこ連れてったるな!』2008-04-18 07:53:00 -
55:
◆.et2waqgrQ
『……どこでもいい。』 『なんでなん?なんかないんかー?行きたいとこ!』『…シュンの行きたいとこでいいよ。あたしは別にどこでもいい……。』 『……』
『やっぱ今日、帰ろか。』
2008-04-18 07:57:00 -
56:
◆.et2waqgrQ
シュンの冷たく低い声が、車内に響く――…。
2008-04-18 07:58:00 -
57:
◆.et2waqgrQ
『なんでなん…??』 あたしは運転席を向き慌てて尋ねる。
『だってお前、どこも行きたくなさそうやし。テンション低すぎてこっちが冷めるわ。、帰ろ。』
シュンは、ギアをドライブに入れようとする――2008-04-18 08:03:00 -
58:
◆.et2waqgrQ
『ま、待って…!待ってよ!!行く!行きたいから…!!』
『ええって、もう。』 今度はシュンが目を合わさずに答えた。冷たい口調、繋がれていたはずの手は、いつの間にか離れていた。
……… 違うの。2008-04-18 08:06:00 -
59:
◆.et2waqgrQ
『ごめ…んなさいっ!帰らない…で、帰りたくない……!!』
―――…だって、
2008-04-18 08:08:00 -
60:
◆.et2waqgrQ
過去は過去
現在が全てでしょう…―?
2008-04-18 08:10:00 -
61:
◆.et2waqgrQ
『ごめ…っ…なさ…い。』『……』
ー…。2008-04-18 08:12:00 -
62:
◆.et2waqgrQ
貴方には奥さんがいる。 変えられない事実。2008-04-18 08:17:00 -
63:
◆.et2waqgrQ
ピッタリと合ったような気がした歯車は、少しずつずれ始め…穏やかに見えた日々は音を立て崩れ始めていく。
どうして、人はこんなにも不器用なんだろう。2008-04-18 08:21:00 -
64:
◆.et2waqgrQ
貪欲な人の心は、愛までも見失い、
目の前にいる君が 真実そのものだったのに
――…。2008-04-18 08:25:00 -
65:
名無しさん
あげ
2008-04-30 09:59:00 -
66:
◆.et2waqgrQ
あたしは、いつからこんなに弱い人間になったんだろう。
男なんて所詮その時だけ″そんな決意を持っていた頃が、遠い昔に感じる。
ー…2008-05-03 13:43:00 -
67:
◆.et2waqgrQ
シュンからの連絡を待っている時間が、こんなにもツライなんて。ー…こんな事になるなら、あんな態度取るんじゃなかった。
結局、あの後シュンは無言であたしを家まで送った。二週間も前から楽しみにしていたデートは、待ち合わせから30分もしないうちに終わってしまった。
いや、…あたしが終わらせてしまった。2008-05-03 13:47:00 -
68:
名無しさん
あれから二日間、シュンからの連絡はない。
ボーイいわく姉妹店に行っているらしく、…店で顔を合わす事もなかった。2008-05-03 13:50:00 -
69:
◆.et2waqgrQ
シュンは、優しい。だけど、子供じみた嫉妬や束縛は、すごく嫌った。そんな事知っていた。初めから分かっていた。
それが例え、彼の狡い逃げ道だったとしても。あたしは、その秩序を乱すことはしてはいけない。するべきじゃなかった。2008-05-03 13:55:00 -
70:
◆.et2waqgrQ
それが、あたしとシュンが一緒にいれる最低限のルールだった。
玩具であるあたしの、最低限の約束事だったのに。
ー…2008-05-03 13:57:00 -
71:
◆.et2waqgrQ
無題
シュン、ごめんね。…もう困らせるような事しないから。連絡ちょーだい。2008-05-03 13:59:00 -
72:
◆.et2waqgrQ
あたしは、きっとバカな女だ。周りから見たら、白い目で見られるのも当然だと思う。だけど、もうそれでも構わなかった。 周りに何を言われようと、サイトに何を書かれようと彼の過去に何があろうと、
例えあたしが、騙されていたとしても―ー…
2008-05-03 14:04:00 -
73:
◆.et2waqgrQ
シュンがいないと、生きていけない。シュンから連絡がないと、ご飯も食べれない。シュンの冷たい声を思い出すと、全身が凍り付きそうになる。…
シュン、会いたいよ-……
2008-05-03 14:10:00 -
74:
◆.et2waqgrQ
Re:
最近忙しくて構ってやれんでごめんな!今日終わってから会おか。
2008-05-03 14:13:00 -
75:
◆.et2waqgrQ
『お前何食いたいー?ってか、今日飲んだ?』
たった二日間だけど、だいぶ久しぶりに感じるシュンの助手席。…また座れた事に、安心する。
シュンは、この間の事には触れようとしない。重たい話が面倒くさいんだと思う。だけど、二日間悩みに悩んでいたあたしは、ホッと肩を撫で下ろしたい気分になった。2008-05-03 14:21:00 -
76:
◆.et2waqgrQ
『あんま飲んでないよ!やから、コッテリ系でも何でも食べれそう!あ、前行ったラーメン屋行きたい!』
不自然なくらいテンションをあげていたかも知れない。…だけど、この間と同じテンションだと思われるのが嫌で、特にラーメンが食べたいわけでもなかったけどとりあえず“なんでもいい″っていうセリフだけは避けようと思った。
シュンは、『了解!』と 笑顔で車を発進させてくれた。2008-05-03 14:26:00 -
77:
◆.et2waqgrQ
ラーメン屋につき、二人でラーメンを食べながら今日の売り上げの話とか、来ていた客の話をした。
シュンと店の話をするのは、嫌いじゃない。色管理だとかは不安になるくせに、経営側の仕事の話を相談してくれたり、聞いたりするのは、なんだか心開かれてる気がして少し嬉しかった。…2008-05-03 14:31:00 -
78:
◆.et2waqgrQ
『そういえば…なんか、社長にバレてるらしいわ。俺ら付き合ってること。』
2008-05-03 16:09:00 -
79:
◆.et2waqgrQ
―ーだけど、そんなあたしの安心も虚しく…すぐに打ち砕かれることになる。
『え……社長って?なんで???』
社長にバレてるとかだいぶヤバイんじゃ…
『んー、なんか、サイトあるんやっけ?よー分からんけど。それ見たらしいわ、社長が。』2008-05-03 16:12:00 -
80:
◆.et2waqgrQ
あのサイトを―、社長が見たんだ。 … うちの系列は、黒服とホステスの恋愛は絶対に禁止で見つかれば、黒服はクビで罰金さえも払わなければいけない。
『……シュン、大丈夫?もしかしてヤバイん…?』2008-05-03 16:15:00 -
81:
◆.et2waqgrQ
社長なんて、ほとんどが系列の大型店にしか顔を出さないくらいだから…古株のあたしでさえ何度かしか会った事がない。
自分が不利になるのに告げ口する必要はないお店の女の子からバレたとは考えにくいし、やっぱりシュンの言った通り、全国ネットのパソコンからあのサイトを見て受け売りされたんだろう―。2008-05-03 16:21:00 -
82:
◆.et2waqgrQ
シュンはちょっとだけ困った表情を見せながら、
『…んー、まぁ本人には完全否定したし、従業員にはあらかじめ釘さして黙秘してもらってるからなんとかなるやろ。まぁ、個人的な送りとかは出られんなるけどな。』
と、言った。 『そっか…』あたしは、それだけ答えると、 なんだか分からないけど妙に泣きそうな気分になった。2008-05-03 16:26:00 -
83:
◆.et2waqgrQ
シュンが大丈夫だと言ってるんだから、大丈夫。やっぱり女の子にも隠し通した方が良かったんだろうか、サイトに書いたのは、おおかた女の子か客だろうし。
いろんな事が頭をぐるぐる廻ってたけど、あたしが泣きそうになった理由は… もっと単純な事だった。2008-05-03 16:29:00 -
84:
◆.et2waqgrQ
彼が頭を悩ます横で、あたしは《あー、また人目を気にしなきゃならなくなるんか…》だとか、 《送ってもらえないならラストまで働きたくないな》だとか、
これまた自分勝手でひどく幼稚な内容で、頭が錯乱し涙を堪えるのに必死だった。
まさか口に出すことは、しないけれど。2008-05-03 16:35:00 -
85:
◆.et2waqgrQ
だけど、運命というのは時に想像よりも遥かに… 驚きを与えてくれるもので2008-05-03 16:36:00 -
86:
◆.et2waqgrQ
あたしにとったら、 その驚きは 【絶望】でしかなかった
けれど、
2008-05-03 16:39:00 -
87:
◆.et2waqgrQ
嫉妬、独占欲、嘘、うわさ、裏切り、
そして、自滅…。
狂いだした歯車は 戻ることなく ただ、鈍く悲しい音で2008-05-03 16:43:00 -
88:
◆.et2waqgrQ
確実に、彼とあたしの エンドロールを
奏で始めていたーー…。2008-05-03 16:44:00 -
89:
◆.et2waqgrQ
2008-05-03 16:45:00 -
90:
◆.et2waqgrQ
あれから1週間が経った。もともと店ではお互い最低限の会話しか交わさなかったけど、あの日から更に話さなくなった。 どこでどう客が感付くか、またサイトに書かれるか分からない。義務的な会話、営業が終わったら規定のドライバーさんに送ってもらいそそくさと帰らされる。
他の女の子は普通に話せるのに、なんであたしだけ…あたしは【彼女】なのに?
…2008-05-04 05:09:00