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そばにいたくて
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1:
名無しさん
『蘭さんドコ行きます?』『綺麗な所』 『ハハ…例えば?』 『わかんない』 蘭さんは僕の大切な人だ。16歳の蘭さん。 8歳という歳の差は結構大きいもの。 だけどそれ以上に僕は蘭さんに好きという気持ちを伝える事が出来ない理由が。 僕は蘭さんの世話役。 常に蘭さんの隣にいないといけない存在だ。 だけど蘭さんは偉い人で、身分が違う。 僕に想いを伝える権利はない。
2008-04-17 01:03:00 -
9:
名無しさん
『あぃお待ちどーさん』 海鮮丼を大将が持ってきてくれた。 『ありがとうございます』『おいしそうだね』 大将は嬉しそうな顔をして『当たり前だわ』 と笑った。 蘭さんに海鮮丼を渡す。 『いただきます』 蘭さんが先にお箸を付けてから僕は食べる事が出来る 誰かがそうしろと言った訳じゃないけど僕にとって尊敬出来る存在だから。 1度蘭さんに言われた事があった。 『そこまでするな』と。 僕はやっぱり 『蘭さんは尊敬出来る人ですから』と答えた。 『どーです? 美味しいでしょ?』 僕が蘭さんの顔を覗き込むと口をもぐもぐさせながら『美味しい』 と答えた。 感情を出す事はあまりしない蘭さんだけど、最近はなんだか今どうしたがっているのかとかが解る様になってきた。
2008-04-18 21:51:00 -
10:
名無しさん
蘭さんが一口食べたのを見届けてから僕も 『いただきます』をした。食べている間は喋るなと教えられてきたけれど、 蘭さんと2人きりの時は特別に…という蘭さんの提案で喋る事が出来る。 『うまッ』 僕が食べるのをまじまじと見ている蘭さん。 『…何ですか?』 『ハムスターみたいだね』蘭さんはクスッと笑ってまた食べはじめる。 『ハムスターって…』 若干ショックを受けつつも食べるスピードは変わらない。 『ごめん…』 そう言って蘭さんは立ち上がって店の奥に進んでいった。 蘭さんは身体が強いわけではない。 菜々さんは病弱でずっと寝たきりだった時もあった。蘭さんはきっと菜々さんの血を受け継いだんだろう。 それと愁さんから受けるストレスも原因だろうと医者に言われた事がある。 愁さんだけじゃない。 仕事や学校。 ストレスの元は沢山あった 僕はとにかく支えてあげる事しか出来ない訳で…。 身分の違いはこういうところで残酷な物になる。
2008-04-18 22:02:00 -
11:
名無しさん
僕も席をたってトイレに向かった。 『蘭さん? ドア開けて下さい』 とんとんとドアを叩く。 『ん…待って』 蘭さんががさがさと何かをしてようやく扉が開いた。 『座ってて下さい』 『………』 蘭さんを座らせた。 『大丈夫ですか?』 『うん…』 毎日見る光景。 蘭さんはいつも悲しそうな目をしてうつむく。 子供みたいだ。 『ごめん…せっかく出掛ける事出来たのにな』 僕の顔も見ずに呟く。 『また来ましょう』 そう言って僕はトイレから出た。 このままだと 自分を押さえられなくなりそうだったから…。 1人で元の席に戻る。 『あの兄ちゃんは?』 大将が不思議そうな顔をしている。 『あぁ…もうじき戻ってきますよ』 それから僕は蘭さんの分と自分のご飯を平らげた。 本当なら食べるべき時じゃないし一緒にいてあげないていけないんだと思うけど蘭さんは 『頼むからそういう時位ほっておいてくれ』と いつも言っていたから…。
2008-04-18 22:14:00 -
12:
名無しさん
頑張れ
2008-04-18 23:34:00 -
13:
名無しさん
そして僕が1人でご飯を食べおわった頃蘭さんは戻ってきた。 『ごめんなさい。 また来ますね』 大将に頭を下げて僕の所へ来た。 『先に車に戻るから…』 今日は特にしんどそうだ。先に店から出ていった蘭さんを追い掛けるためにレジに迎う。 『すいませんッ!いくらでしょーか?』 大将は察してくれたみたいで何も聞くことはしなかった。 『2100円ねー』 『はい』 お金を渡してすぐに店から出た。
2008-04-18 23:44:00 -
14:
名無しさん
蘭さんは車には乗っていなくて車の近くに座り込んで景色を見ていた。 『寒いでしょう?』 渡しそびれたコートを背中にかける。 『車乗りましょ?』 『…うん』 今までは弱音を吐く事もせずにいつでもきりきりとしていた蘭さんがその頃から本音を話す様になっていた 車のドアを開けて蘭さんを乗せる。 いつも後部座席に乗ってもらっているのだけれど蘭さんから 『前に乗りたい』 と言い出したので取りあえず前に乗ってもらう事にした。 『2時間はかかりますから寝てて下さいね』 『もう少し起きてる』 『そうですか…』 車を運転しながら蘭さんの様子を見る。 窓からずっと景色を見ていて目が合わない。 『すいません。 いつも仕事で疲れているのに休みの度に外に連れ出したりなんかしちゃって…』前を向いて運転していても蘭さんがこっちを振り向いたのがわかった。 『俺の楽しみはコレだけだよ?その楽しみを取られたら何も残らないじゃん』 少し笑いながら僕の肩を叩く蘭さん。
2008-04-19 02:34:00 -
15:
名無しさん
『本当ですか…』 いつも思う事があった。 いつだって蘭さんは僕に付き合ってくれていた。 仕事と学校があるにも関わらず傍にいてくれていた。 きっと誰よりも大変な思いをしていて休みの日位ゆっくりしたいだろうに 休みがある時は 『凌どこいこうか』 と嬉しそうな顔をする。 それは無理に付き合ってくれているだけじゃないかと思うことが何回もあった。 『本当だよ。何で?』 『怖くなるんです』 『……何が?』 『蘭さんが気を使ってくれているんじゃないかと…』蘭さんはまた車の窓に目を向ける。 『長い付き合いだからって気を使わないわけじゃないでしょーが。 信頼してるからこそ気を使う時だってあるし…』 やっぱり出掛けるのはしんどい物なんだ…。 『じゃぁ今度の休みは家にいましょうか…』 『はぁ?意味わかんない』『だって気を使うって』 『馬鹿じゃないの? 俺が言いたいのは普段の生活で凌に気を使う事もあるって事だよ。 凌が俺に気を使ってくれるお返しだろ?』 蘭さんはきっと呆れた顔をしていただろう。 僕は顔を見る事ができなかった。
2008-04-19 02:46:00 -
16:
名無しさん
『だからッ!』 蘭さんがキレた。 『俺は凌に気を使わせている自分が嫌いなの! 凌はいつだって俺の事を1番に考えてくれるし、 俺に優し過ぎるの! だから………… 俺も凌に甘えて欲しいっていうか…。 少し位お願いを聞いてあげたいというか…。 第一俺は出掛けたくないって言ってないし! たった一つの楽しみを凌は俺から取るの? 凌がそれでいいなら俺はこれからも行かないよ。 凌は出掛けたくないの?』 蘭さんがここまで一気に喋る事なんてなかったから少し戸惑った。 『僕は…一杯思い出作りたいです。 いつまでもこのまま2人で居れるわけじゃないと思いますし僕は買い物とか沢山行きたいです。 蘭さんと一緒にいれる時間がまだまだ欲しい位…』 続きを言おうとしたら蘭さんの腕が伸びてきて僕の左腕を掴んだ。 『それ以上言わなくて良いし…。こっちが恥ずかしいでしょ』 蘭さんは僕の腕を離しながら続けた。 『凌はいつまでも一緒は無いって思ってるかもしれないけど俺は一緒にいようと思ってるよ』 蘭さんが少し照れているのが声に出ていた。 気のせいだったかもしれないけれど僕にはこれ以上ない程嬉しい言葉だった。 『必要とされている』 僕の存在理由。
2008-04-19 03:01:00 -
17:
名無しさん
遠い遠い思い出… 『痛いよッ!やめてッ!』 僕が小学生の時。 両親からの虐待。 毎日母に抑えられて父に殴られたりカッターで身体を切られたり…。 どうしてそんな事をしたのか何て今でもわからない。 今ではちゃんと自立出来た僕でも昔は闇に包まれていた。 『凌はいつだって母さんと父さんの道具になれるよね。可愛い凌』
だけどその可愛がり方が普通の親とは違ったんだ。 毎日愛してるよと言う言葉を聞いた。 だけどお酒を飲むとたちまち豹変する両親。 『お前は道具だからな』 父はひどい時は僕を10時間殴ったり蹴ったりを続けた。 壊れたかの様な父を見て吐き気がした。 母は母で自分の腕を切っては僕に 『あたしの血よ』 と見せびらかした。 きっと精神的にいかれていたんだと思う。2008-04-19 03:32:00 -
18:
名無しさん
中学になると姉の友達に襲われた。 姉は『好きに使いな』と、部屋から出ていった。 後は男に抑えられて初めて『ヤル』と言うことを覚えた。 それから友達は自分がやりたい時にきた。 姉は僕を見ていつでも笑っていた。 『気持ち良いん?』と。 好きでもない人とやって幸せな気持ちになれる訳もないし気持ち良い訳もなかった。 姉の友達は薬もやっていたみたいだった。 『お前もやれや』と姉の男友達に勧められたけれど、どうにかそれは逃れる事が出来た。
2008-04-19 03:38:00