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そばにいたくて

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  • 1:

    名無しさん

    『蘭さんドコ行きます?』『綺麗な所』      『ハハ…例えば?』    『わかんない』                 蘭さんは僕の大切な人だ。16歳の蘭さん。    8歳という歳の差は結構大きいもの。       だけどそれ以上に僕は蘭さんに好きという気持ちを伝える事が出来ない理由が。            僕は蘭さんの世話役。  常に蘭さんの隣にいないといけない存在だ。    だけど蘭さんは偉い人で、身分が違う。      僕に想いを伝える権利はない。

    2008-04-17 01:03:00
  • 2:

    名無しさん

    『そうですか…』    質問をした自分が馬鹿だと思った。        何て事を聞いたんだろうと後悔した。                   僕が蘭さんの世話役としてこの家に呼ばれたのは僕が18歳の時。      蘭さんは10歳だった。 その時からネクタイを着けて歩き回っていた蘭さん。いつも窮屈そうな服を着ていた。                     『初めまして。僕が今日から貴方のお世話をさせて頂く香山凌です』     まだ小さい蘭さんの前にしゃがみ込んで貴方の目を真っすぐに見た。                 『僕は桃咲蘭だよ』   蘭さんは小さいながらに可愛く笑い学校へ出かけていった。         その頃から僕が唯一癒されるのは蘭さんのそばにいれる事だけになっていた。

    2008-04-17 10:35:00
  • 3:

    名無しさん

    蘭さんは女の子だ。   でももしかしたら心の中は男の子なのかもしれない。普段から『僕』や『俺』と言うのもそのせいだろう。            蘭さんには男の子でいなくちゃいけない理由がある。それは愁さんにある。  愁さんは蘭さんの父親で、とても凄い人だ。    だけど蘭さんの母親、菜々さんは病気で1人しか子供を産むことが出来ない身体だった。        菜々さんは皆に期待され、辛かったと思う。    そして産まれたのは女の子だった。        菜々さんは自殺も考えたらしい。         お母さん達には     『どうして女の子なの?』顔を合わせるたびに言われたといっていた。    愁さんはそんな菜々さんを愛した。        だけど唯一愛せない物が…蘭さんだった。                 蘭さんは女の子に産まれてしまったせいであまり可愛がられなかった。    菜々さんはとてもとても蘭さんを愛していた。   だけど周りの大人は蘭さんを愛そうとしなかった。

    2008-04-17 10:44:00
  • 4:

    名無しさん

    愛を受けずに育った蘭さんはいつの間にか感情も薄くなっていったと菜々さんは言った。        学校では常に1番でいなければいけなかったし   身内の目は冷たいもので、蘭には辛い物を背負わせてしまった。       と菜々さんはいつも言っていた。                     だけど僕は蘭さんの前に進もうという姿勢が好きだ。『そんな事気にしてない』蘭さんはいつだって僕に笑っていたけれど本当は辛いだろうしもっと親に甘えたかったと思う。                 いつも最後に言う言葉。 『俺をなめるな』    自信満々に僕の背中をポンポンと叩きながら前を見る姿が愛しかった。

    2008-04-17 10:51:00
  • 5:

    名無しさん

    『海に着きましたよ』  後部座席で寝ている蘭さんを起こす。       『海…?』       寝起きの顔がまた可愛い。『はい!起きて下さい』 車の扉を開けて蘭さんに景色を見せる。                  『うわー。綺麗だね』  いつもよりも輝いた目で海を見る。        『早く降りて下さい?歩きましょ?』       僕は久しぶりの蘭さんとのデートでテンションがあがっていた。                   車から降りて海を見る蘭さん。          『…………でも寒いね』 蘭さんがしゃがみ込む。 車の中からコートを取り出して蘭さんの背中にかける            『ありがと』      しゃがみこみながら海をずっと見ている。     何かを考えているのかもしれない。        『…凌も座りな?』   僕のコートの裾を掴んで下に引っ張る。      『いや…僕は』     『凌もゆっくり休みな?』『…………はい』    僕も一緒にしゃがみこんで座る。         蘭さんのこういう優しさが嬉しくてたまらない。

    2008-04-17 11:01:00
  • 6:

    名無しさん

    『少し喋ってから歩こう』『はい』        蘭さんは海を真直ぐ見るだけで何も話さない。   『蘭さんは…』     『何?』        『僕が来て良いことってありました…?』     蘭さんは不思議そうな顔で僕を見ていた。                 『変わったよ。毎日が』 『そうですか…』    『楽しくなった』    『………』       蘭さんにそういってもらえと嬉しかった反面なんだか悲しかった。

    2008-04-17 11:12:00
  • 7:

    名無しさん

    『楽しすぎる位だ』   そう言って蘭さんは立ち上がった。        『行こ?時間がない』  ポケットに入れてある携帯をチェックする蘭さん。 メールが来ているみたいだ            『あ…どうされました? 仕事の話ですか?』   『あぁ…うん』     それから携帯を閉じて僕の袖を引っ張る。     『さぁ行こう』     普段遊びに行く事は出来ない蘭さん。       だから仕事が休みの時は僕が蘭さんを連れ回す。              『何処いきます?』   『ん…ご飯食べたい』  『はい』        休みの日位楽しませてあげたいから。

    2008-04-17 13:33:00
  • 8:

    名無しさん

    それから僕と蘭さんは歩いて近くにある海鮮屋に向かった。         『ここの海鮮丼美味しいんですよ?』       『ふーん』       蘭さんはいつもそう。  あまり楽しそうにしない。僕は笑って欲しくてたまらないんだけど…。                店の中に入る。     『いらっしゃい!何名で』『2人です』      『そいじゃココどーぞ』 『ありがとございます』 僕と蘭さんは店の人に案内された席に座った。   『何食べます?』    『凌と同じ物』     『大盛り食べますよ?』 『普通さいずで』    呆れた顔で僕を見る蘭さん            とりあえず時間もそこまでないって事で大将を呼ぶ。『すいません』     店自体が小さいから声だけで十分だ。       『海鮮丼大盛り1つ…。 あと普通サイズが1つ』 『あいよ!』      店の中にはまだ人がいない            『この後は何します?』 『帰ろう』       『…仕事ですか?』   『………うん』     まだ家から出て3時間しかたっていないのに…。  ほとんど車の中だったし。

    2008-04-17 22:45:00
  • 9:

    名無しさん

    『あぃお待ちどーさん』 海鮮丼を大将が持ってきてくれた。        『ありがとうございます』『おいしそうだね』   大将は嬉しそうな顔をして『当たり前だわ』    と笑った。                   蘭さんに海鮮丼を渡す。 『いただきます』    蘭さんが先にお箸を付けてから僕は食べる事が出来る            誰かがそうしろと言った訳じゃないけど僕にとって尊敬出来る存在だから。  1度蘭さんに言われた事があった。        『そこまでするな』と。 僕はやっぱり      『蘭さんは尊敬出来る人ですから』と答えた。               『どーです?      美味しいでしょ?』   僕が蘭さんの顔を覗き込むと口をもぐもぐさせながら『美味しい』      と答えた。       感情を出す事はあまりしない蘭さんだけど、最近はなんだか今どうしたがっているのかとかが解る様になってきた。

    2008-04-18 21:51:00
  • 10:

    名無しさん

    蘭さんが一口食べたのを見届けてから僕も     『いただきます』をした。食べている間は喋るなと教えられてきたけれど、  蘭さんと2人きりの時は特別に…という蘭さんの提案で喋る事が出来る。               『うまッ』       僕が食べるのをまじまじと見ている蘭さん。    『…何ですか?』    『ハムスターみたいだね』蘭さんはクスッと笑ってまた食べはじめる。                『ハムスターって…』  若干ショックを受けつつも食べるスピードは変わらない。          『ごめん…』      そう言って蘭さんは立ち上がって店の奥に進んでいった。          蘭さんは身体が強いわけではない。        菜々さんは病弱でずっと寝たきりだった時もあった。蘭さんはきっと菜々さんの血を受け継いだんだろう。            それと愁さんから受けるストレスも原因だろうと医者に言われた事がある。  愁さんだけじゃない。  仕事や学校。      ストレスの元は沢山あった            僕はとにかく支えてあげる事しか出来ない訳で…。 身分の違いはこういうところで残酷な物になる。

    2008-04-18 22:02:00
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