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執事は1人だけ
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1:
主
『奈緒様ッ―…!』 『―…ン…ヤメろッ』 『我慢の…限界ですッ―』『痛ッ―ヤメてッ―…』
2008-06-05 19:14:00 -
9:
主
『皆おはよーッ!』 部屋を覗き込みながら挨拶をしていく。 大半の使用人は奈緒様の声を聞いて部屋から飛び出してくる。 『おはようございます!』『せっちゃん気分は?』 『とても良いです』 『良かった良かった♪』 そんな会話をしながら廊下を進んでいく。 すると廊下の先が静かになった。 (まさか―…) 上機嫌な奈緒様の肩を掴んで歩みをとめる。 『なんだよ花南?』 奈緒様の前に立って廊下の先を見つめる。 『何してんだ?』 不思議そうに私の背中に手を置いている。 『……旦那様です―』 私の言葉を聞いて奈緒様の手が私の服を握りしめる。『そんな…』 奈緒様の声が震えている。 『奈緒様? 先に朝食をとってきて下さい。私は後から行きます』私の言葉に首を振った。 『花南は…?』 こういう時は特に子供の目をする奈緒様。 愛しくて仕方ない。 『すぐに行きますから』 笑顔で答えると頷いて走っていった。 奈緒様からすれば旦那様はとても恐ろしい存在で奈緒様自体は旦那様を好いてはいない。 (はぁ―…) 私も旦那様は苦手だ。 とにかく今は会わせたくはないのが本音。
2008-06-06 20:25:00 -
10:
主
廊下の先に旦那様と旦那様の執事が何人か見えた。 頭を下げる。 周りにいた使用人達もざわざわと話してたのを止めて頭を下げる。 『冬弥久しぶりだな』 頭をあげて旦那様の顔を見る。 『いらっしゃいませ旦那様。お久しぶりです。 何かご用事あったのですか?』 機嫌をとるかのように作り笑顔で挨拶をする。 『いやー。 長い間奈緒をほったらかしにしていたからな…。 たまには顔を出してやるのもいいだろう?』 旦那様はハハハと笑った。 『連絡をしてくださればお迎えに上がりましたのに』『お前達には学校があるからな。迎えはいらんよ』 『旦那様がわざわざ来て下さったのに学校へ行く事は出来ませんよ』 笑って答えると旦那様は首を振った。 『いらんいらん。 こいつ等が着いとる』 後ろの執事達を顎で指す。『そうですか…。 残念です。奥様はどうなさいました?』 『あいつは晩にでも来るだろう。 私は奈緒が帰ってくるまで知り合いと逢ってくる。 それまで奈緒を頼むぞ?』『かしこまりました』
2008-06-06 20:49:00 -
11:
主
『その前に奈緒に挨拶でもしておこう。 奈緒はどこに?』 『朝食をとっております』『わかった』 そのまま廊下を歩いていく 頭を下げる。 旦那様の執事の中の1人がこっちを見て微笑む。 紫苑(シオン)。 私と同い年の少年。 旦那様の執事をしている。身分でいえば紫苑の方が上なのかもしれないが私達には関係なかった。
2008-06-06 21:04:00 -
12:
主
私が少し疲れた顔をすると紫苑は困った顔をしながら頷いて歩いていった。 1人になってしまった私は奈緒の元へ行くことも出来ないので部屋へ戻る事にした。 部屋のベッドに座った状態で何もしない時間を過ごす。扉が開いた。 キィ―… 『奈緒様…ノックを―』 奈緒様の顔は弱っていた。『ごめん』 私の顔を見ないまま制服の上着を着る。 『悲しいお顔はなさらないで下さい。 きっとすぐに帰られますから―…』 奈緒様は頷いてカバンを抱えて部屋から出ていく。 『奈緒様ッ―…』 奈緒様から鞄を預かって後ろを歩く。 『ごめんな。 飯食えてないな…』 『そんな事ですか…。 私は大丈夫ですよ?』 少し笑うと奈緒様がこっちを向いた。 『愛しているよだって』 気持ち悪そうな顔をしている。 『ハハ…。馬鹿にしてはいけませんよ』 『だって―…。 嬉しくねぇもん』 『奥様に言われれば?』 『…嬉しい…かな?』 『ハハ…』 奈緒様が旦那様を嫌う理由は沢山ある。 まぁ子供が親を嫌うのと同じ様なものだろう。 私も両親を愛してはいない 親なんて嫌われるためにあるようなものだろう―…
2008-06-06 21:19:00 -
13:
主
私が両親を嫌う理由はただ1つだけ―…。 顔を覚えてはいないから。 産まれてすぐに奈緒様の家に連れてこられた。 両親は私を売ったのだろう。 小学生になった頃に旦那様と話している女性と男性をみた事がある。 きっとその人達が私の両親なのだろう。 子供の直感というものだろう。 だからと言って何も思わなかったけれど両親を知らないだけあって愛されるという事を知らないまま育った だけど奈緒様はある日私に言った。
2008-06-06 21:26:00 -
14:
主
『俺にはお前しかいない。だから誰にも愛されてないとか思ってんじゃねーぞ? 俺は花南を信頼してる。 一生俺のそばで働いてくれ 執事はお前1人だけだ』
2008-06-06 21:30:00 -
15:
主
その瞬間奈緒様しか見えなくなっていた。 私のすべては奈緒様の物だと考えた。 何もかも常に完璧だった私はこの頃が奈緒様にだけは自分を見せた。 『何だか疲れました…』 ベッドに座ってうつむいたまま奈緒様に伝えた。 呆れられると思っていた私に向かって奈緒様は一言。『俺にはそういう弱音吐けよな。いつでも聞いてやるから』 奈緒様は人を勇気づける何かを持っている人。
2008-06-06 21:39:00 -
16:
主
車から降りると私達の前にも車が止まった。 ガチャ―… 『菜摘!菫!』 『はよー奈緒ちゃん♪』 菜摘さんは違う財閥の跡取りで奈緒様とも仲が良い。『ちす』 菫は私と同じで菜摘さんの形だけの執事。 普段は普通の友達の様に話をしている。 『今日さー父様帰ってきたんだぜ?だりーよな』 『大変だな』 私達4人は幼稚園の頃から一緒で一番仲の良いグループかもしれない。 『奈緒ちゃんは今日も可愛いねー♪ 毎日一緒にいるんだからドキドキだね? お風呂も一緒に入ったりするの???ワラ』 『無いですね…』 菜摘さんは私の気持ちを知っているだけあって私をからかうのが趣味らしい。 『あたしの執事が冬弥なら良かったのになー』 『菫がいるでしょう』 『菫といると常に喧嘩だし。しんどいしー…。 冬弥なら毎日一緒にお風呂入ってーイチャイチャしたりして…』 『無いですね』 菜摘さんの言うことはどこまでが本当でどこまでが嘘なのかがわからなくて困る 『おもんないなー』 不満そうな菜摘さんを見るのは面白い。 肌が白くて身体も細く顔もとびきり綺麗な菜摘さんを見ると完璧な人間というのはこの人の事なんだろうと考えさせられる。
2008-06-06 22:08:00 -
17:
主
『はよー!』 奈緒様が挨拶をするのも無視で個人個人好きな事をしている。 『はよ♪
今日も元気だね』 教室の一番前の席に座っている皐月が手を振っている 皐月は小学生の頃に転入してきた。 珍しい事に執事を連れていない。 かなりでかい財閥の跡取りだが実際のところ家の話をしたがらないため誰も良く知らない。 『早いな!』 奈緒様が皐月の後ろに座る『当たり前でしょ♪ フリーだから自由行動が基本なんだよね』 『普段は2時間目あたりから遅れて登校してくるのに珍しいですね…』 『それは言っちゃだめでしょー?花南ならわかってくれると思ったのにな』 『すいません』 皐月はすねた顔をして机に頭を伏せる。 皐月の悪いところはマイペース。 自由奔放で行動が読めない2008-06-06 23:18:00 -
18:
主
それから授業が始まる。 奈緒様は私が見ていない時にさぼるクセがある。 常に奈緒様を見ていないといつの間にか寝ている事もある。 奈緒さんと菫は以外にもかなり几帳面で授業中にさぼる事はない。 私は奈緒様と皐月を起こすのに必死で先生の話はほとんど聞く事が出来ない。
2008-06-06 23:25:00