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執事は1人だけ

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  • 1:

    『奈緒様ッ―…!』   『―…ン…ヤメろッ』    『我慢の…限界ですッ―』『痛ッ―ヤメてッ―…』

    2008-06-05 19:14:00
  • 2:

    1年のうち何回こうやって奈緒様を起こしただろう。学校があるにも関わらず揺すっても起きない頑丈な瞼をしている。      だから少し手荒だけれど、ベッドから引っ張り下ろすと何故だか目を覚ます奈緒様。          今日も目覚めは良くなくてベッドから下ろしても少しの間目を覚まさなかった。            毎回私が諦めかけるときにやっと目を覚ます。

    2008-06-05 20:41:00
  • 3:

    『ん―…。       おはよう…花南』    かなり眠そうに目を擦っている。         そんな姿も可愛らしい。             『目覚めました?』   『…まだ』       『………ハァ―…』    奈緒様を抱き抱えて部屋を出る。         私の腕の中でスースー寝息をたてている。     毎日こんな状態で朝を迎える。

    2008-06-05 20:49:00
  • 4:

    奈緒様は財閥の跡取り。 旦那様からすればとても大切な方。        大切だと思うのは旦那様だけではないけれど―…。             まだ17歳という若さでそんな重い運命を背負っている奈緒様。       一応私も奈緒様と同い年で奈緒様とは幼稚園より少し前に出会っている。               それから私は奈緒様の執事として育てられ、小学生になる頃には完璧に身の周りの事は任されていた。

    2008-06-06 00:26:00
  • 5:

    『奈緒様…』      奈緒様をリビングのソファーの上に降ろす。    『ん…ありがと』    そう言って少し目を開ける『おはよ』       『おはようございます』 奈緒様はすぐに立ち上がって服を着替えると言った。            奈緒様の周りにはすでに何人かの使用人が付いていた。           制服を準備して奈緒様が着替えるのを今か今かと待っている。        やはり奈緒様が着替える姿を見せるのはあまり気分が良くないので毎日違う部屋へ連れていく。                 『別に見られてもいいし』奈緒様の口癖。     奈緒様はもっと自由に生きたいのだそう。

    2008-06-06 00:33:00
  • 6:

    それはやっぱり私が許すはずもなく毎日しょぼくれた顔をしながら着替えに行く奈緒様。        可哀想だと思う事も多々あるけれど仕方ない事で私はどうする事も出来ない。

    2008-06-06 13:18:00
  • 7:

    着替えを済ませて部屋から出てきた奈緒様。    『よしッ!行くか!』  歩き出そうとする奈緒様の腕を掴んで止める。   『ネクタイが…』    奈緒様を私の方に向かせてネクタイを直す。    『サンキュー♪』    ニコニコしながら私の前を歩く。                     (身長のびましたね…) 何だか子供をみている様で大きくなるに連れてほんの少し悲しい感覚に襲われる            奈緒様は小柄な体型で  164センチで私よりも遥かに小さい。       『花南はいいなー…』  などと呟く事も多い奈緒様だけれど私からすれば正直奈緒様には小さいままで居てほしい。       何だか奈緒様が奈緒様で無くなってしまう気がして…

    2008-06-06 13:26:00
  • 8:

    『何ボーッとしてんだよ?早くしないと遅れんぞ!』『あ…ハイ』       奈緒様のお屋敷は使用人が住み込みで働いているため普通は考えられない程の部屋数がある。      奈緒様は朝起きると必ず部屋を回って使用人達に挨拶をする。        もう1つ驚かされた所はこれだけな使用人がいて皆の名前を覚えている所。  後はこき使わない所が奈緒様の良いところ…好かれる所かもしれない。

    2008-06-06 13:46:00
  • 9:

    『皆おはよーッ!』   部屋を覗き込みながら挨拶をしていく。      大半の使用人は奈緒様の声を聞いて部屋から飛び出してくる。                    『おはようございます!』『せっちゃん気分は?』 『とても良いです』   『良かった良かった♪』 そんな会話をしながら廊下を進んでいく。                 すると廊下の先が静かになった。         (まさか―…)     上機嫌な奈緒様の肩を掴んで歩みをとめる。    『なんだよ花南?』   奈緒様の前に立って廊下の先を見つめる。     『何してんだ?』    不思議そうに私の背中に手を置いている。                 『……旦那様です―』  私の言葉を聞いて奈緒様の手が私の服を握りしめる。『そんな…』      奈緒様の声が震えている。            『奈緒様?       先に朝食をとってきて下さい。私は後から行きます』私の言葉に首を振った。 『花南は…?』     こういう時は特に子供の目をする奈緒様。     愛しくて仕方ない。               『すぐに行きますから』 笑顔で答えると頷いて走っていった。       奈緒様からすれば旦那様はとても恐ろしい存在で奈緒様自体は旦那様を好いてはいない。        (はぁ―…)      私も旦那様は苦手だ。  とにかく今は会わせたくはないのが本音。

    2008-06-06 20:25:00
  • 10:

    廊下の先に旦那様と旦那様の執事が何人か見えた。 頭を下げる。      周りにいた使用人達もざわざわと話してたのを止めて頭を下げる。                  『冬弥久しぶりだな』  頭をあげて旦那様の顔を見る。          『いらっしゃいませ旦那様。お久しぶりです。   何かご用事あったのですか?』          機嫌をとるかのように作り笑顔で挨拶をする。   『いやー。       長い間奈緒をほったらかしにしていたからな…。  たまには顔を出してやるのもいいだろう?』    旦那様はハハハと笑った。             『連絡をしてくださればお迎えに上がりましたのに』『お前達には学校があるからな。迎えはいらんよ』 『旦那様がわざわざ来て下さったのに学校へ行く事は出来ませんよ』                 笑って答えると旦那様は首を振った。       『いらんいらん。    こいつ等が着いとる』  後ろの執事達を顎で指す。『そうですか…。    残念です。奥様はどうなさいました?』      『あいつは晩にでも来るだろう。         私は奈緒が帰ってくるまで知り合いと逢ってくる。 それまで奈緒を頼むぞ?』『かしこまりました』

    2008-06-06 20:49:00
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