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売れない女優
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1:
夕夏
あたし、夕夏。
職業…女優。って言ってもちょい役でドラマに出たりする売れないってか売れてない女優。
そんなあたしの物語。2008-06-27 14:20:00 -
111:
夕夏
面接が終わり、次はいよいよ演技。前の審査よりも分厚い台本を渡され、一時間と言う時間が与えられた。今回は他の面接者と二人一組でやるらしい。
『なぁなぁ何歳なん?』
いきなり話かけて来たのは10番の札をつけた女の人。見たところ20代前半。
『17です。』
『あっそーなん?劇団とか入ったり演技の勉強したりとかしてるん?』2008-06-29 15:28:00 -
112:
夕夏
『全然…今回初めてオーディション受けたんです。』
『よーやるわぁ(笑)絶対落ちるやろ!!てかここまで残れたんが奇跡やな(笑)あたしやったらそんな奴落とすわぁ。次の演技あたしとあんたペアやから足引っ張らんといてな。』
“…何やこいつ。”
言ってる事はもっともだけど、見ず知らずの奴にいきなり言われる筋合いは無い『…選ぶんはあなたじゃなくて審査員の人やから。』それだけ言って休憩室に向かい、必死に台詞を覚えた。
他のペアは台詞合わせをしてたけど、あたしはそんな事する気にもならずにいた。今思えば子供だったな…2008-06-29 15:36:00 -
113:
夕夏
次の役はライバルと好きな男を奪い合う女の子。
惚れた腫れたの話にしか興味が無いのかと思うような内容に、台本を作った人に不信感を覚えた。
しかもあの女と…
やる気を無くしかけたけど逆に考えれば相手が嫌な奴な程役に入り込みやすいかもしれない。2008-06-29 15:48:00 -
114:
夕夏
そして本番。
目の前にはさっきの嫌な女『あなた?サキって女は。』“えっ…台本ではアキになってたけど…”
早速名前を間違えた嫌な女に笑いそうになりながらも憎しみを込めて台詞を言い進めて行った。
嫌な女は最後まで名前を間違っていて、内心ざまぁみろと思ってしまった。2008-06-29 15:56:00 -
115:
夕夏
『はぁー終わったぁー!!』『お疲れ!!』
迎えに来てくれていた亀ちゃんと、ハンバーグ屋に向かう。
『どやった?』
『すごいムカツク女の人がおったよ(笑)』
あの嫌な女の事を面白可笑しく話すあたしを、亀ちゃんはずっとニコニコしながら見ていた。2008-06-29 16:01:00 -
116:
夕夏
『夕夏、これプレゼント。』
『へ?いきなり何なん?』『いいから開けて。』
春休みに入ってから、毎週月曜日。亀ちゃんが休みの日は必ず泊まりに行っていた。
この日も亀ちゃん家でゴロゴロしていたあたしに、突然のプレゼント。
ピンクの包装紙に包まれた、小さい箱。2008-06-29 16:26:00 -
117:
夕夏
中を開けると、あたしの大好きなピンク色の宝石が真ん中にはめ込んである、ピンクシルバーの指輪。
『これ…』
『きもいけど一人で買いに行ってん…しかもペアやから(笑)』
ふと亀ちゃんの薬指を見ると、あたしのやつの石がはまっていないバージョンの指輪がはめられていた。
『ははっ…何で亀ちゃんそんな可愛いん(笑)』2008-06-29 16:36:00 -
118:
夕夏
『うるさい(笑)ほら、はめたるから手だして。』
亀ちゃんは照れながらも、左手の薬指にはめてくれてあたしはこの時間が続けばと、当時信じていた“神様”に何度も何度も祈った。2008-06-29 16:54:00 -
119:
夕夏
『亀ちゃん…』
『んー?』
『大好きやで。』
『俺も…』2008-06-29 16:55:00 -
120:
夕夏
なぁ亀ちゃん
あたしはこの時からどのくらい経った時に
神様なんておらんって
気づいたんやろう?
大人になるって悲しい事なんかな?それとも…2008-06-29 16:59:00