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売れない女優
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1:
夕夏
あたし、夕夏。
職業…女優。って言ってもちょい役でドラマに出たりする売れないってか売れてない女優。
そんなあたしの物語。2008-06-27 14:20:00 -
631:
夕夏
ピンポーン…
チャイムが鳴り、玄関を開けると…亀ちゃんの姿。
『夕夏…俺研修で東京行ってて…今親父さんの事聞いた…。線香あげさせてもらっていい?』
『うん…どうぞ…』
久しぶりに見る亀ちゃんは前より少し大人びたように思う。2008-09-14 04:18:00 -
632:
夕夏
『…何てゆったらいいかわからんけど…おばちゃんの事支えたりな。』
リビングでお茶を飲みながら話す亀ちゃん。
なんだか付き合っていた頃を思い出す。
『じゃあ俺そろそろ帰るわ…』
『うん…』2008-09-14 04:27:00 -
633:
夕夏
玄関で、亀ちゃんが立ち止まった。
『…どしたん?』
『夕夏…あの時はごめん。俺ずっと気になっててん…受け止めてあげれんかった事…』
まだ…気にかけてくれていたんだ。2008-09-14 04:29:00 -
634:
夕夏
『ううん…あたしこそごめん。』
『…俺は…昔と変わらずお前が出てるテレビも雑誌も観てるから。…一ファンとして…応援してるからな。』
…ありがとう、亀ちゃん。そんな亀ちゃんが可愛らしい女の子と結婚するのは、もう少し先の話。2008-09-14 04:33:00 -
635:
夕夏
『亀ちゃん、こんな時にあれやけど…あたし今幸せやで。やから亀ちゃんも幸せになってな?』
『おう。ありがとう。』
…こうして、あたしと亀ちゃんは再び“友達”に戻った。
どんなにどん底に落ちたって、いつか歯車はまた動き出すんだ。2008-09-14 04:35:00 -
636:
夕夏
…そして数日後東京に戻ったあたしは、まだ泣けないまま信也の待つ家に帰った。
『お帰り!!夕夏!親父さんから手紙来てんで!!俺も仕事でしばらく帰らんかってさっきポストん中見たら入っててん!』
『嘘やん!?』
あたしは鞄を放り出して慌てて封を開けた。2008-09-14 04:39:00 -
637:
夕夏
夕夏へ
最近はよくテレビに出てて父ちゃんは嬉しいです。
会われへんのはちょっと寂しいけどな。
応援してるから立派な女優さんになってください。
父ちゃんより2008-09-14 04:41:00 -
638:
夕夏
…消印は、事故に遇った日のものだった。
こんなベタすぎる程の奇跡は、お父さんが仕組んだ様にしか思えなかった。
『お父さん…お父さぁん…!!』
あたしは気が狂った様に泣き続けた。
信也はそんなあたしをただただ抱き締めてくれている。2008-09-14 04:43:00 -
639:
夕夏
『おっちゃんも粋な事するやん!こんなん普通やったらありえへんで。』
『お父さん…昔から人びっくりさせて泣かすん好きやからな…。天国で多分してやったって笑ってるわ…』『…ええおっちゃんやな…』
『…世界一のおとんやわ…』2008-09-14 04:46:00 -
640:
夕夏
…それからあたしは、今まで以上に必死に仕事を頑張った。
お父さんが見守ってくれてる。
そう思うと恐い物なんて無かった。2008-09-14 04:47:00