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  • 1:

    あや

    例えば、あたしの香りがあんたに移るぐらいに一緒に居て
    例えば、何でも無い会話をする為だけに電話をして
    例えば、月曜日に一緒に休みを取って

    例えば…

    2008-09-27 01:09:00
  • 2:

    あや



    そんな顔で笑いかけられるあの人が、羨ましかった。

    2008-09-27 02:12:00
  • 3:

    あや

    『ヤバいわぁ…髪染めに行かな…』
    あたし、あや。22歳。
    知り合いが起こしたアパレル関係の小さな会社で、デザイナーとして働いてる。
    デザイナーってゆっても…勉強を始めたばっかりで、ほんまに大したもんじゃないんやけど。

    2008-09-27 02:16:00
  • 4:

    あや

    『じゃあさ、うちが行ってるとこ行きや。上手いで!』
    お気に入りの焼酎をロックで呑んでるのは、あたしの大親友の真央。いつも行っていた美容院の担当が辞めてしまって、どこに行こうか悩んでたあたしにそう持ちかけた。
    『カラーとカットとエクステと…いくらするやろ?』
    あたしの給料は手取り16万ぐらいで、一人暮らしをしてるからたまに泣きそうなぐらい貧乏な時もある。
    エクステをつけへんかったらもっと安いんやろうけど…。まぁ理由は後ほど。

    2008-09-27 02:23:00
  • 5:

    あや

    『紹介やったら安くなるし行ってみぃや!担当めっちゃ格好いいで(笑)』
    『頭さえちゃんとしてくれたら出川みたいなんでもいいわ(笑)色とかうざいしなぁ。』
    そんな馬鹿みたいな会話をしてたら、もう時間は11時。
    とりあえず真央に美容院の番号と担当の名前を聞いてその日はお開きとなった。

    2008-09-27 02:28:00
  • 6:

    あや

    彼氏は…もう一年ぐらい居ない。
    あたしは前の彼氏が大好きで、大好きで。
    勝手に未来を描いてたけどどうやらそれはあたしだけだったらしい。
    わずか半年足らずでその関係は一方的に幕を閉じた。

    2008-09-27 02:32:00
  • 7:

    あや

    数日後…
    午後から有給を取り、真央に紹介して貰った美容院に向かう。
    『いらっしゃいませ。初めての方ですか?』
    『はい。1時に予約してたんですが…』
    可愛らしい店員さんに紙を渡され住所や名前、髪質等を記入していると、ふと頭の上から声が聞こえた。

    2008-09-27 02:37:00
  • 8:

    あや

    『初めまして。真央ちゃんのご紹介の方ですよね?ご指名ありがとうございます。誠です。』
    …ふいに顔を上げると、見た目はかなりいかつい、けど綺麗な顔をした男が不自然な笑顔であたしを見ていた。
    『あっ…はい。これ書けました。』
    『はい。じゃあお席の方へどうぞ。』
    誠の第一印象は…胡散臭い。ただそれだけだった。

    2008-09-27 02:44:00
  • 9:

    あや

    それから髪色などを伝え、お決まりの営業的な会話が始まった。
    でも誠は接客業として大丈夫なのかと思うぐらい無口で、あまり会話は弾まない。
    喋るのは喋るんやけど…。笑った後に必ず気まずい沈黙が生まれるのも、職務質問みたいになるのにも、エクステをつけ終えた頃にはもう慣れていた。
    まぁ、綺麗にやってくれたら文句は無いし。

    2008-09-27 02:51:00
  • 10:

    あや

    『うわ…めっちゃ色綺麗。ありがとう、また来ますね。』
    誠は…かなりカラーが上手くて、あたしは初めて仕上がりの色に満足した気がする。カットは普通やけど。
    『お待ちしてますね。ありがとうございました。』
    見送ってくれた彼は、相変わらず胡散臭い笑顔。
    接客業も大変やなぁ…とか思いながら家に帰った。

    2008-09-27 02:55:00
  • 11:

    あや

    それから、数回誠の店に足を運んだ。
    あたしは、大体月に一回ぐらいのペースで髪を染める。行く度にお互い慣れて来て、冗談を言い合ったりあの胡散臭い笑顔がちょっとマシになって来た頃。
    あの日は確か月曜日。
    いつもより早く仕事を終え、真央との待ち合わせ場所であるバーに向かって居た時のこと。

    2008-09-27 03:01:00
  • 12:

    あや

    目の前にはカップルらしき二人組が歩いていた。
    “うわぁ…何となく幸せそやな…傘でつついてやりたいわ。”
    ちょっと僻みながら男の顔を見る。
    ・・・誠やん。

    2008-09-27 03:05:00
  • 13:

    あや

    幸せそうに笑いかける誠とは正反対に、隣を歩いている女の人はずっと前を向いていて顔は見えない。
    声をかける理由も無かったので、何となくバレない様に下を向きながら後ろを歩いていた。
    気づかれたら気まずいし。…ふいに見えた女の人の横顔。
    化粧は少し濃いめやけど、俗に言う“美人”な人。
    誠も面食いやなぁとか思いながら裏道に入り、バーに着いた。

    2008-09-27 03:13:00
  • 14:

    あや

    真央はもう着いていて、カウンターでビールを呑んでいる。
    『ごめんお待たせ!さっき誠見たで。彼女らしき人と歩いてた(笑)』
    『あ〜今日休みやもんな。そりゃあんだけ格好良かったら彼女の一人や二人おるわ(笑)あたしには番号教えてくれへんかったのに…』『あんた番号聞いたん?(笑)彼氏おるくせに(笑)』
    真央はもう付き合って四年になる彼氏が居る。

    2008-09-27 03:19:00
  • 15:

    あや

    『うちの店番号交換するの禁止やねん、とかゆわれて見事撃沈やったわ(笑)』
    『御愁傷様(笑)』
    …この時のあたしは、誠に彼女がおっても別に何とも思わんかったし、むしろ彼女が見れて面白かった。
    あんな、店では見せた事無い顔を見たんも…あれが初めてやったなぁ。

    2008-09-27 03:23:00
  • 16:

    あや

    『なぁ、今度遊びに行かん?』
    …今日もあたしは、いつも通りカットとカラーとエクステをつける為に誠の美容院に来ていた。
    突然の彼の言葉に、思わず吸っていた煙草の煙でむせる格好悪いあたし。
    『えっ何で!?だって誠…』
    “彼女おるやん。”その言葉を咄嗟に飲み込んだ。だって、いつか彼は“彼女なんかおらん。休みはいっつも寝てるだけやし。”そう言ってたから。

    2008-09-27 03:29:00
  • 17:

    あや

    『ん?』
    『いや…まっまぁ暇やったらゆってや。』
    思わずそう答えた。
    何でそんなん言ったんかは自分でもわからんけど、少なからずあたしは惹かれてたんやと思う。
    誠の、何かに。

    2008-09-27 03:32:00
  • 18:

    あや

    帰り際、ちょっと待っててと言われて店の前で待っていたあたしに、誠は番号とアドレスが汚い字で書かれた紙を渡して来た。
    『さっきの本気やから、家着いたらまた連絡して。』『う、うん…』
    …正直、彼女が居る人はごめんだ。自分が彼女やったら相手の女に鼻フックしてやりたいぐらいムカつくやろうし、それは“やってはいけない事”として自分の中に刻み込まれていたから。
    やのに…

    2008-09-27 03:38:00
  • 19:

    あや

    家に着いて、しばらく考えたあたしは番号と今日のお礼だけの当たり障りの無いメールを送った。
    …夜の10時半。
    お風呂から上がりベッドの上で携帯をいじっていると突然着信が入った。
    もちろん相手は…誠。

    2008-09-27 03:42:00
  • 20:

    あや

    『もしもし…』
    『お疲れ!今終わったわぁ。てかいつ暇なん?』
    『あれ…本気やったん?』『本気やで(笑)』
    『彼女おんのにいいん?』“あっ…ゆってしまった…”
    よく滑る口に嫌気がさす。

    2008-09-27 03:45:00
  • 21:

    あや

    『彼女はおらんで!…微妙な女はおるけど。』
    サラっとカミングアウトした誠に、少し驚く。
    『実はな、前誠と女の人が一緒に歩いてんの見てんやん。ロングヘアの綺麗な人。』『あっほんま?そいつそいつ。俺が惚れてる女。』
    またまたサラリと答える。…と言う事は誠はあたしを恋愛対象として見て無いって事か。
    急に何かを期待していた自分が恥ずかしくなった。

    2008-09-27 03:51:00
  • 22:

    あや

    結局、次の休みの日に呑みに行く約束をして電話を切った。
    “何着て行こ…”
    誠はお洒落やし、何よりも隣を歩いていた誠の“好きな人”に何故か負けたく無かった。
    …まぁ顔面では百負けてるんやけど…
    どこか誠に惹かれてる自分に気づかないふりをして、その日は眠りについた。

    2008-09-27 03:55:00
  • 23:

    あや

    そういや、真央は誠に番号を教えて貰われへんかったと言っていた。
    あいつはどう言うつもりなんやろ。
    てかあの人彼女じゃなかったんや。
    あー何でこんな気になるんやろ…
    …誠と遊ぶ日まで、毎日こんな事を考えていた。

    2008-09-27 04:03:00
  • 24:

    あや

    そしていよいよ約束の日。女ばかりの職場で出会いも無かったあたしは、男友達以外と遊ぶのも久しぶりでドキドキしていた。
    『お待たせー!行こか。』サングラスをかけてやって来た誠は…いかつい。
    男前やけど、ジャニーズとかそっち系じゃなくて、不思議な雰囲気を醸し出している。
    あたし達は適当に少しお洒落な居酒屋に入った。

    2008-09-27 04:07:00
  • 25:

    あや

    『『乾杯!!』』
    最初は緊張していたあたし達も、お酒が進むにつれてどんどん深い話になっていく。
    『彼氏一年おらんとか嘘やろ?』
    『いやほんまやって。』

    2008-09-27 04:12:00
  • 26:

    あや

    …一年前、突然彼氏に言われた一言。
    『俺、こいつが好きやねん。やから別れて。』
    そっけ無く話す彼氏の横には、サラサラの綺麗なロングヘアの女の子がいた。
    無理だと分かっていても、その子に少しでも近づきたくて、未練がましいあたしはその日から髪を伸ばし始めると同時にエクステをつけるようになった。
    もうよりを戻したいとか言う感情は無いけど。

    2008-09-27 04:24:00
  • 27:

    あや

    『誠は好きな人とは付き合えへんの?』
    そんなあたしの質問に、彼は少し険しい表情をしながら答えた。
    『…彼氏おるからなぁ。もうすぐ俺が彼氏なるけど。今でも体の関係はあるし』“…何この変な自信。”
    『嫌じゃないん?…ふたまた…やろ?』
    『…いいねん、別に。』

    2008-09-27 23:18:00
  • 28:

    あや

    誠の表情から、彼女を好きな事が痛い程伝わってくる。
    相手に恋人が居ても構わない程に、誰かを好きになれるなんて…すごい。
    けど…なんか不健全やな。まぁあたしも人の事言われへんけど。。
    彼女は誠とどんなつもりでそんな関係になってるんやろ?
    誠は…それでいいんかな?

    2008-09-27 23:24:00
  • 29:

    あや

    『頑張りや!てかあたしと遊んでていいん?』
    『いいんちゃう?たまには俺だって他の子とおっても。』
    そう言った彼はどこか哀しそうだった。もしかしたら、彼女と何かあったからあたしをご飯に誘ったのかもしれない。
    『てか、あいつは本気で妬いたりしぃひんから。ただの独占欲しか無いっぽいし。』
    “ほんまは…これでいいと思ってないんちゃうんかな?”

    2008-09-27 23:33:00
  • 30:

    あや

    『なんか…誠だけそんな辛い想いしてるんおかしい』『…当然の報いやから。人の彼女こっそり横取りしてるんやし。』
    …やっぱり、平気なわけないんや…。
    店で見る誠はいつも気丈に振る舞っていて、こんな風に哀しい顔を見せる彼に少し戸惑う。
    それと同時に、そんなに想って貰っている“彼女”に敵意を感じた。

    2008-09-27 23:40:00
  • 31:

    あや

    その時、誠の携帯が震えた。
    『…この後ちょっと逢ってくるわ。』
    どうやら彼女かららしい。『そっか…じゃあそろそろ出よっか。』
    会計の時、あたしも出すと言っても決して誠はお金を受け取らず、“楽しかったし。お礼。”そう言って笑ってた。
    やばい…その笑顔は反則やわ…

    2008-09-27 23:44:00
  • 32:

    あや

    顔が赤くなって、体温がどんどん上がって行くのが自分でもわかる。
    そんなあたしとは正反対に苦しそうな表情の誠。
    好きな人に逢いに行くのに…なんでそんな顔するんやろ…
    『応援してるから、また何かあったら相談乗るで。』『…ありがとう。』

    2008-09-27 23:51:00
  • 33:

    あや

    それから、誠は毎日仕事終わりに電話をかけて来てくれる様になった。
    たまに元気の無い時はあったけど、“何かあったん?”自分からそうは聞かなかった。
    誠から話さなければ、あたしからは訊きたくない。
    心から励ましてあげられる自信がないから。
    他愛もない会話をするだけの電話が日課になる頃にはあたしはもう完璧誠にはまっていて、いつも誠からの連絡を心待ちにしている自分がいた。

    2008-09-28 00:04:00
  • 34:

    あや

    でも、あたしから電話はかけない。…正しく言えば、かけれなかった。
    もしかしたら“彼女”と居るかもしれないから。
    いつかけて来ても出るあたしに誠は、“寝て無いん?いっつも出るよな”そう言って来て、そのたびに“元からあんま寝られへんねん”そう答えたけど、誠の指定着信音が鳴るとどんなに眠くても飛び起きて出ていただけの事。
    寝ていた事を悟られない様に、必死にテンションを上げて喋っていた。

    2008-09-28 00:12:00
  • 35:

    あや

    もちろん、誠に惹かれれば惹かれる程に寂しさは募って行った。
    どれだけ仲良くなってお互いの口癖が移る程になっても、自分の物にはならない事がもどかしくて、時折わざと不機嫌に見せるあたしを彼は気づいて居ない振りをしながらも宥めた。
    誠は、どこか他人には踏み込ませない雰囲気を持っている、そんな人だった。

    2008-09-28 00:21:00
  • 36:

    あや

    ただの美容師と客。
    そんな関係を続けてもう数ヶ月が経った頃。
    突然、休みのはずの誠から夕方頃に電話が鳴った。
    仕事をしていたあたしは慌ててトイレに駆け込み電話に出た。

    2008-09-28 00:45:00
  • 37:

    あや

    『もし?今日飯行かん?』休みの日にご飯に誘われた事が無かったあたしは、もちろん行けると返事をしてまだ書きかけだったデザインを鞄に入れ待ち合わせ場所に向かった。
    うちの会社は比較的自由で、期限までにデザインが出来ていればたまにこうして早く上がる事も出来る。
    その分深夜まで会社に残る事もあったし、出張やら何やらで1ヶ月丸々休みが無いなんて事もザラにあったけど。

    2008-09-28 00:50:00
  • 38:

    あや

    『珍しいな、休みの日に誘ってくるとか。』
    『あー…なんかお前の顔見たくなって。』
    “彼女”に逢えなかったからかな、なんて考えはその一言でどうでもよくなる。あたし…ほんまあほ。
    いつも2人で行く居酒屋で乾杯をして、美味しいご飯を食べて…周りから恋人同士に見えてんのかな?もっといい服来てくれば良かった。そんな事を考えながらも幸せだった。

    2008-09-28 00:54:00
  • 39:

    名無しさん

    久しぶりにワクワクする!続き待ってます!

    2008-09-28 00:56:00
  • 40:

    あや

    『あーめっちゃ酔った…』居酒屋を出る頃には二人ともフラフラで、暫くプラプラと歩く。
    『今からどうしよっか?』そう言われても…カラオケって雰囲気でも無いし、お酒はたらふく呑んだし…
    『…お前ん家行っていい?』
    …突然の誠の言葉にびっくりして、思わず彼の顔を見る。

    2008-09-28 00:59:00
  • 41:

    あや

    >>40さん初レスめっっちゃ嬉しいです??
    文章書くん初めてで『〜た。』ばっかりやし下手くそですがこれからも読んでいただけたら嬉しいです?

    2008-09-28 01:01:00
  • 42:

    あや

    『ごめん…厚かましいな』呆然としているあたしに謝る誠。
    他の男やったら、これが目的やったんか、とかヤりたいだけやん、とか思うけどそうは思わなかった。
    中々進まない関係に苛々していたのかもしれない。
    誠を家に入れてしまえば、後戻りは出来ない。…けど…好きな気持ちに負けた。

    2008-09-28 01:07:00
  • 43:

    あや

    『いいよ。行こっか!!』変な雰囲気にならない様にわざと明るく振る舞った。あたしが意識してる事を悟られる訳にはいかない。
    だって…彼には好きな人が居るから。
    正直、あたしももう子供じゃないし、家に入れるからにはもし何かが起こったとしても“無理矢理ヤられた”なんて思わないし、今以上に辛くなる事にも覚悟は出来てる。
    二番目でもいい。
    あたしは誠が好きやから。

    2008-09-28 01:14:00
  • 44:

    あや

    誠はチャリで来ていて、ドキドキしながら後ろに座る。
    『ちゃんと掴まっときや』そう言うとあたしの手を腰に持って行った。
    指先から伝わる体温に、体が熱くなる。
    中学生みたいにはしゃぎながら10分程の所にある家に着いた。

    2008-09-28 01:19:00
  • 45:

    あや

    『お邪魔しまーす!!』
    『どうぞ。適当にその返座って。』
    『綺麗にしてるやん!女の子って感じの部屋やな。』…昨日、部屋を掃除しといて良かった。仕事で遅くなる日が続いている時のあたしの部屋は“ゴミ屋敷”って言葉がぴったりなぐらいに荒れ果てているから。
    『何か飲む?』
    『ビール!!』

    2008-09-28 01:23:00
  • 46:

    あや

    『まだ呑むん(笑)…あたしも呑もっと。』
    あたしは基本、家に一人で居る時は呑まないけど酒好きの真央がいつ泊まりに来てもいい様に、常に冷蔵庫にビールを冷やしている。『お前も呑むんかい(笑)じゃあ乾杯!!』
    …呑まずにいれるか。
    あたしの空間に…誠がいる。それだけでシラフじゃ居られない。

    2008-09-28 01:28:00
  • 47:

    あや

    お酒が入ると、誠はよく喋る。最初の胡散臭い笑顔を浮かべていた時とは比べ物にならないぐらいに。
    でも…今日は無理にはしゃいでいる気もする。彼女と何かあったに違いない。
    落ち込みかけたけど、そうじゃなければ今ここにこうして居る事は無かったんだと自分に言い聞かせた。
    『あや〜…俺もう無理…』呑み始めて数時間が経った頃、ソファーに隣同士に座ってDVDを観ていた誠があたしにもたれかかって来た。

    2008-09-28 01:33:00
  • 48:

    あや

    『大丈夫?』
    動揺しているのを悟られない様に、必死に平気な顔をして問いかけた。
    『無理…寝ていい?』
    …いよいよだ。いや、でもかなり酔ってるみたいやしほんまに寝るだけかもしれんし…とりあえず…
    『いっ…いいよ。じゃあベッド行きや。あたしもうちょっとここおるし先寝てて。』

    2008-09-28 01:38:00
  • 49:

    あや

    誠をベッドに寝かし、音量を小さくしてDVDを観ていた。
    横目で誠の方を見ると寝息を立てていたから、本当に眠っているらしい。
    …あたしきもっ…盛りのついた中学生みたい…
    ちょっと期待していた自分に呆れながらも、テレビを消して誠の隣に潜りこんだ。…誠がつけている香水の香りが広がる。それだけで何故か安心出来た。

    2008-09-28 01:44:00
  • 50:

    あや

    “そや…お風呂入ろ。”
    中々寝付けずにいたあたしは、お風呂に入る事にした。
    誠の前でお風呂に入るのはヤル気満々と思われそうで嫌だったけど、誠はもう寝てるし昨日の夜入ったきりお風呂に入らないまま寝る方が汚いし。
    出来るだけ物音を立てたく無かったから、湯槽にお湯を溜めるのを諦めてシャワーを浴びに行った。

    2008-09-28 01:51:00
  • 51:

    あや

    お風呂から上がり、まだ寝ているのかを確かめにベッドに向かい、誠の顔を覗きこんだ瞬間…
    『…………ッッ!!』
    いきなり腕を引っ張られて覆い被さる様に倒れた。
    『ちょっ………!!』

    2008-09-28 02:03:00
  • 52:

    あや

    押し倒され、必死にもがくあたしの手を押さえつけたままキスをされた。
    『えっ………』
    真っ直ぐにあたしを見つめる彼の目から、視線をそらせない。
    『…ごめん。嫌やったらゆって。』

    2008-09-28 02:12:00
  • 53:

    あや

    …嫌。なんて…言える訳が無いのに。
    きっと、誠もそれに気づいてる。
    それでも…あたしは誠が好きだから…誠が少しでも楽になるなら…
    体で寂しさをまぎらわす事は出来ても、埋める事は出来ない。一年前のあたしがそうだったから。
    “彼女”の代わりなんだ。いや、もしかしたら代わりにすらなれないかもしれない。…それをわかっていても、あたしは誠を求めた。

    2008-09-28 02:19:00
  • 54:

    あや

    『誠…まこと………』
    何度も絶頂を迎えながら、頭の中にはあの日見た誠の笑顔が思い浮かぶ。
    …この日あたしは、自分が愛されているのかが分かるセックスがあるなんて事を初めて知った。
    あたしを抱く誠の瞳は黒く濁っていて、まるであたしを見ずに遠くを見ているみたいだったから。

    2008-09-28 02:24:00
  • 55:

    あや

    『あや…ごめんな…』
    あたしを抱きしめながら、何度も耳元でそう呟くその言葉に聞こえない振りをして、目を瞑った。
    今の誠はあたしを見ていない。
    あたしは必死で、あたしに向けられた誠の笑顔を思い出した。
    謝って欲しくなんかない。被害者なんかじゃなく、共犯者だから。

    2008-09-28 02:30:00
  • 56:

    あや

    “色”だとか“好きな人が居る”だとか…
    考える事は沢山あった。
    けど…今は何も考えず、ただこの温もりを感じていたい。
    “彼女”は誠で寂しさをまぎらわす。“誠”は“あたし”で寂しさをまぎらわす。
    端から見れば本当に馬鹿な女。都合の良い女。それは自分が一番よく分かってる。でも理屈じゃない。道徳なんて知らない。あたしはこれが悪い事なんて思わないから。

    2008-09-28 02:44:00
  • 57:

    あや

    先の無い事なんて、分かりきっていた。
    八割の哀しみと絶望。
    けど…残されたたった二割の希望や安らぎの為に、あたしはこの道を選んだ。

    2008-09-28 11:58:00
  • 58:

    あや

    『…おやすみ。』
    事が終わると、あたしの右手を握りしめすぐに寝息を立て始めた。
    もし、ここであたしが“付き合って”なんて言葉を放ってしまえばすぐに終わりを迎えるだろう。体を重ねれば何かが変わるかもしれない。そんな期待はどうやら無駄に終わったようだ。
    …冷たい左手で目から溢れ出る温かい液体をぬぐい、熟睡出来ないまま朝を迎えた。

    2008-09-28 21:22:00
  • 59:

    あや

    愛しい、愛しい人の横顔。どうして女は体の関係を持ってしまえば感情が入ってしまうんだろう。
    どうして覚悟を決めたはずの事が割りきれなくなるんだろう。
    行為の最中すらも“愛情”なんて感じられなかったのに。
    あたしはそっと繋がれたままの右手をほどき、冷蔵庫に向かうと野菜ジュースを取りだし一気に飲み干した。『あや…?』

    2008-09-28 21:27:00
  • 60:

    あや

    『あっ起きたん?ご飯食べる?』
    『うん…』
    『じゃあちょっと待っててな。すぐ作るし。』
    誠がいつか大好きだと言っていた半熟の目玉焼きを作り始めた。ベタだけど、トーストとハムエッグ、それにサラダにしよう。
    こんな事をしていると、まるで“恋人同士”の様な錯覚すら覚える。

    2008-09-28 21:31:00
  • 61:

    あや

    『コーヒーはブラック?』
    『ううん。えーっと…』
    角砂糖を一つと、クリープをスプーンに半分。
    そんな事すらも誠を知っていくみたいで嬉しかった。パンをかじりながら笑う彼が、愛しくて愛しくて仕方無い。
    人は、何て欲張りな生き物なんだろう。何かに満足しても、また次、次はこれ。そうして黒い渦がどんどんお腹の奥の方から広がっていく。

    2008-09-28 21:38:00
  • 62:

    あや

    『じゃあ俺一回家帰るわ。ご馳走さま。またな。』
    食事を終えると、いつもと変わらない様子で帰って行った。
    “またな”その言葉に少し安心する。それは、今日で終わりじゃないって証だから。
    まだ誠の温もりが残るソファーに座り、急いで化粧を済ませると仕事に向かった。

    2008-09-28 21:46:00
  • 63:

    あや

    『おはようございます!』『あやお早う!…なんかいい事でもあった?』
    職場で一番仲が良い、一つ上の香がニヤニヤしながら話しかけてくる。
    『えっ…何で?』
    『だっていつもより化粧とか服に気合い入ってるし…良い匂いもする!それに顔がニヤけてるで(笑)』
    あたしは昔から、何か良い事があると自然に身なりに気合いが入る。香水も、仕事に行く時はいつもつけないけど、今日は少しつけていた。“匂いって大事やと思うねんなぁ。俺香水めっちゃ好きやねん。”そう誠が言っていたから。…あたしは影響されやすい。

    2008-09-28 21:55:00
  • 64:

    あや

    『実はさぁ…』
    昼休み…って言っても仕事が忙しくてもう3時を回っていたけど、近くの喫茶店でハンバーグ定食を食べながら香に誠との事を話した。『それ…かなり都合の良い女やなぁ…体だけやん。』香はいつも素直な厳しい意見を言ってくれる。
    『まぁなぁ…でもヤってもうたもんはしゃあないし。とりあえず頑張るよ。』
    『そっか…じゃあ応援するわ!つかさ、合コン行かん?』

    2008-09-28 22:02:00
  • 65:

    あや

    『合コン!?…あんたあたしの話聞いてた?(笑)』
    『お願い!男友達に頼まれてんねん!!もしかしたら良い人見つかるかもしれんやん?』
    『いや…一応あたし誠の事好きなんやけど…』
    『付き合ってないやん!』…まぁそうやけど、ちょっと傷つく(笑)
    『とりあえず決まりな!』結局強制的に、参加を決められてしまった。

    2008-09-28 22:08:00
  • 66:

    あや

    “合コンかぁ…”
    実はあたしはこの年にして、合コンをした事がない。学生時代も何度かそんな話があったけど、飢えてる人みたいで何となく行かなかった。
    “今頃…誠は仕事かな…”誠の眼差しや香りが、ずっと頭から離れない。
    体だけって事が哀しかったはずなのに、何故か思い出せば出す程に顔はにやけて行く一方だった。

    2008-09-28 22:15:00
  • 67:

    あや

    その夜も、いつもと変わらず誠から電話がかかって来た。
    昨日の事には触れない彼に、あたしも何も言えず以前の様に当たり障りの無い会話をして電話を切った。
    きっと…それは“触れるな”って事。
    いつもより広く感じるセミダブルのベッドが、無性に寂しさを際立たせた。

    2008-09-28 22:20:00
  • 68:

    あや

    …今日は合コンの日。
    仕事終わりに開かれる事になっていたから、一応お洒落な服を着て会社に来た。メンバーはあたしと香と、会社の人二人の合計四人。女社長が仲間と共に立ち上げた会社と言う事もあり、女しか居ない環境で働いているあたし達にとったらちょっとしたイベント。…らしい。
    『いい男掴まえておいでや!!』
    『検討を祈る!!』
    そんな感じで戦場に向かう兵士の様に送り出された。

    2008-09-28 22:28:00
  • 69:

    あや

    何やかんや言って、初対面の人に会うのはそれなりに緊張する。マントヒヒとか、臼みたいな人やったらどうしよう…。
    正直顔は気になる。
    まぁ楽しかったらいいか。そんな事を考えていると、待ち合わせの居酒屋に着いた。
    相手はもう中で待っているらしい。

    2008-09-28 22:37:00
  • 70:

    あや

    『香!こっちこっち!!』ものすごい笑顔で手を振っているのは、香の友達の達也くん。まぁまぁ男前だ。その隣のホストみたいな子はかなりのイケメンの武志君。
    後の二人は…モヤシとマッチ棒のハーフみたいな子と、オデブタレントの内山君みたいな子。
    もちろん、みんなの視線は達也君と武志君に向けられている。

    2008-09-28 22:43:00
  • 71:

    ぽにょ

    読んでまつ
    頑張って下さい(´・ω・`)?

    2008-09-29 01:42:00
  • 72:

    名無しさん

    頑張って?

    2008-09-29 09:16:00
  • 73:

    名無しさん

    書いて欲しいです☆彡^^

    2008-10-05 21:49:00
  • 74:

    真央

    ぁや忙しそうやけど頑張れょ?

    2008-10-05 23:58:00
  • 75:

    あや

    皆さんほんまにありがとうございます??
    仕事忙しくて更新遅くてごめんなさい?また読んでいただけたら嬉しいです?
    真央?頑張るでぇ?

    2008-10-06 18:10:00
  • 76:

    あや

    『『かんぱーい!!』』
    男軍団とあたしと香はビール、会社の人達はカクテルでとりあえず乾杯をした。
    後はお決まりの自己紹介やフリートークが繰り広げられる。達也君と武志君は二個一らしく、合コンがお開きになる頃にはあたしと香と四人でかなり仲良くなっていた。
    『二次会どこ行く?』
    達也君のその問いかけに、内山君達と会社の人達は明日も仕事だからと帰って行った。

    2008-10-06 18:17:00
  • 77:

    あや

    あたしと香は次の日は休み。まぁそれを狙ってこの日に合コンをしたんやけど。達也くん達はあたしの一個上でもう働いてるけど、土曜日なので休みだった。
    『じゃあカラオケでも行きますか!』
    武志くんのその一声で、歩いて五分程のカラオケに行く事になった。
    …ふいに、誠がつけていた香水の香りがする。
    “…誰やろ…”

    2008-10-06 18:23:00
  • 78:

    あや

    『武志くん、香水つけてる?』
    『うん、ほら。』
    目の前に差し出された右手首に少し顔を近づけると、誠と同じ香りがした。
    …さっきまで忘れていた、ううん、忘れたふりをしていたのに、一気に頭の中が誠で埋め尽くされる。
    “匂いって大事やと思うねんなぁ。同棲とかしてて同じシャンプー使い出したら終わりやと思うもん”シャンプーは同じのんでも良くない?と言ったあたしを笑いながら否定した誠の顔が浮かんで来る。

    2008-10-06 18:33:00
  • 79:

    あや

    香りだけで、こんなにも思い出すなんか…ほんまあたしはまってんなぁ。
    そんな事を考えているとカラオケに着き、団体用のだだっ広い部屋に案内される。
    『じゃあ一番俺行きまーす!!』
    武志くんが入れたのは切ない恋の歌で、合コンで最初に歌う曲ちゃうやろって突っ込みながらも歌詞を見ていた。
    何をしてても思い出すあたしとは正反対に、誠はあたしの事なんて気にもしてないんやろなぁと思ってしまう自分に嫌気がさす。

    2008-10-06 18:44:00
  • 80:

    あや

    『あや彼氏おるん?』
    数時間後、お互い呼び捨てで呼び合うようになった頃武志が聞いて来た。
    『好きな人はおんで。』
    酔いも回り正直にそう答えたあたしに、すかさず香が突っ込む。
    『あんた合コンでそんなんゆうたらあかんやん(笑)しかも武志も合コン来てんのに彼氏おるん?とか(笑)』香と達也以外は今日会ったばっかりなのに、昔からの友達みたいに打ち解けていた事もあり、いつの間にか部屋に流れるテレビの音量を下げあたしの恋愛相談みたいになった。

    2008-10-06 18:50:00
  • 81:

    あや

    『好きになったもんはしゃあないからなぁ。』
    全てを話し終えた時、みんなが口を揃えてそう言った。
    てっきり否定されると思っていたあたしは、予想もしていなかった言葉に驚く。『確かに体だけやけどさ、好きになってもうたんやしとことん頑張ったらいいと思うで。あや見てたら誰にでもそんなんする様な子ちゃう思うし。そりゃ相手にほんまもんの彼女がおったりしたら止めるかもしれんけど…』
    『でもな、絶対しんどいし上手く行ったとしてもまた次は自分の時みたいに浮気してんちゃうかとか思うやろし、不安は付きまとうと思うで?それでもいいんやったら俺らも応援するし』武志に続き、達也もそう言ってにっこりと笑った。

    2008-10-06 19:06:00
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