小説掲示板◆◇短編◇◆のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

夜遊びweb掲示板 関西夜遊びweb掲示板 関西
エリア選択

夜遊び掲示板を検索する

スレッドタイトルを対象とした検索ができます。※スペースのあり、なしで検索結果は異なります。

掲示板リストメニュー

◆◇短編◇◆

スレッド内検索:
  • 1:

    名無しさん

    ジャンル問わず思い付きで書いていきますm(__)m
    短編なので自己満になりますが、暇つぶし程度にお付き合い宜しくお願いしますm(__)m

    2008-10-03 00:59:00
  • 2:

    名無しさん



    ■タイムカプセル■

    .

    2008-10-03 01:00:00
  • 3:

    名無しさん

    さっきから、私は同じ場所をぐるぐる回っていた。
    こ洒落た1軒のダイニングバーの前を何度も通っている。
    右からチラっと視線をやったものの、そのまま通り過ぎ、足早に近くの角を曲がる。
    また次の角を曲がり、その次の角を曲がれば、最後の角を曲がる。
    そしてまた、バーの前を通る。

    2008-10-03 01:15:00
  • 4:

    名無しさん

    次こそは。

    そう決心するのも何度目だろうか。
    私はやっぱりバーの前を通り過ぎる。
    漫画喫茶の看板を気怠そうに持つ男の前を何度も通るのが気まずくて視線は下げたまま。
    これじゃ徘徊している不審者だ。

    2008-10-03 01:21:00
  • 5:

    名無しさん

    【略部】

    これじゃ徘徊している不審者だ。

    2008-10-03 01:24:00
  • 6:

    名無しさん

    7、8回はドアを開けないまま通りすぎた店。

    次に通過してしまったら、もぅ角は曲がらないでまっすぐ駅に向かおう。

    半ばあきらめかけて、最後の角を曲がった。

    2008-10-03 01:30:00
  • 7:

    名無しさん

    ふと顔をあげると、看板を持った男と目があった。
    怪訝そうな顔をしてこっちを見ている。
    ぎくっとなって歩みが遅くなると、自然に足が店の前で止まった。
    男を意識しない様に、ゆっくりと小さな階段をあがる。
    ドアの真ん前に立つと【本日貸し切り】と書かれた紙が貼られていた。

    2008-10-03 01:36:00
  • 8:

    名無しさん

    ドアに手をかけ、看板の男を見ると、もぅ私には興味なさ気に煙草に火をつけている。
    少し緊張しているせいか、ドアは重く感じた。

    ――カランカラン。

    2008-10-03 01:40:00
  • 9:

    名無しさん

    ドアの上部に取り付けられた鐘が鳴ると、店内にいる人々が雑談をやめ、私に視線が集中する。
    店の中はイイ感じに照明が落ちていて、ゆるやかにR&Bが流れている。
    控えめなBGMが私にはっきり聞こえたのはほんの数秒で
    『榎本?』
    と、誰かが私の名を呼ぶと、人々はまた口を開き出した。

    2008-10-03 01:49:00
  • 10:

    名無しさん

    『やーん、久しぶりぃ』
    何人かがグラス片手に私の元に寄ってくる。
    『久しぶり〜!店、探してたら迷って遅くなっちゃって〜』
    はい、嘘。
    自分の頬の筋肉がひきつっているのがわかる。

    2008-10-03 01:54:00
  • 11:

    名無しさん

    卒業してからまだ5年しか経っていないのに、知った顔は皆、随分大人になっていた。
    懐かしい友人達と手を取り合い、再会の喜びに心が弾む。
    順番に挨拶を交わしながら店の奥に進んだ。

    内心、どきどきしながら。

    2008-10-03 02:06:00
  • 12:

    名無しさん

    一通り声を掛け合うと、少し気がぬけた。
    流石に全員が出席というわけではなく、何人かは来ていない様だ。

    気が楽になったのか、それとも少し落ちたのか、自分でもよくわからないままバーカウンターに落ちついた。
    『生ください』

    2008-10-03 02:14:00
  • 13:

    名無しさん

    鞄から煙草を取りだし火をつける。
    コースターと灰皿が出され、おしぼりが広げられた。
    くわえ煙草のまま、受け取ろうとバーテンの顔を見て息が止まる。
    『久しぶり』
    バーテンは元クラスメイトで、笑うと出来るえくぼはかわらない。

    2008-10-03 02:21:00
  • 14:

    名無しさん

    不意をつかれた登場に、言葉も出ないままおしぼりを受け取った。
    『しっかし、生って相変わらず呑んでるみたいだね?』
    少し笑みを浮かべながらサーバーを触る。
    よく冷えたグラスに綺麗な泡。
    グラスを持つ、懐かしい手。

    2008-10-03 02:31:00
  • 15:

    名無しさん

    彼は、私のグラスの他にもう一つグラスを手にしていた。
    『はい、乾杯』
    チン、と軽くグラスのフチを当てて音を立てる。
    私はまだ一言もしゃべらないまま、ビールを飲み干した。

    2008-10-03 02:35:00
  • 16:

    名無しさん


    彼は進藤 篤。

    ―――私の元彼氏。

    .

    2008-10-03 02:42:00
  • 17:

    名無しさん

    【略部】

    すみません、空白ですm(__)m

    2008-10-03 02:44:00
  • 18:

    名無しさん

    『…久しぶりだね。ここで働いてたんだ?前の店辞めたの?』
    『うん、半年前からここ。恵理子は元気してた?』
    『見ての通り』

    何だか ぎこちない。

    2008-10-03 02:49:00
  • 19:

    名無しさん

    さっきフロアを見てまわって、篤がいない事を確認したのに――…。

    私を徘徊させた理由は篤に会うのが気まずかったからだ。

    .

    2008-10-03 02:53:00
  • 20:

    名無しさん

    篤の家にお泊りという日は調子に乗って飲み過ぎて、2人で潰れる事もしばしば。
    吐いたり、二日酔いで苦しんだ事も、今となってはいい思い出。
    私には美容師という夢があって、よく どちらが先に店を持つかと、自分達のまだ見ぬ将来を語り合った。
    その将来図には、必ずお互いの存在があったのを覚えている。

    2008-10-03 03:08:00
  • 21:

    名無しさん

    【略部】

    篤は昼間はショップ店員、夜はバーで働いていた。

    2008-10-03 03:17:00
  • 22:

    名無しさん

    幸せな生活が永遠に続くと期待していた。
    しかし現実は同棲を始めてから、今までほとんどなかったケンカが増え、何度か別れそうになったり。
    お互い生活環境がかわり、学校や仕事と慣れるまで大変だった。
    何より、篤が仕事に打ち込み過ぎていたのが私は気に入らなかった。
    ショップは週5、バーは週6で、昼も夜も働いていて丸1日休みって日は無い。

    2008-10-03 03:32:00
  • 23:

    名無しさん

    家に居る時はずっと寝ていた。
    疲れているのがわかっているから、起こせない。

    一緒にいるのに、居ない。
    .

    2008-10-03 03:35:00
  • 24:

    名無しさん

    どーして?
    篤は寂しくないの?
    最後に一緒にご飯を食べたのはいつ?
    最後に一緒に眠ったのは?
    気付けばキスもない日々が続いていた。

    2008-10-03 03:39:00
  • 25:

    名無しさん

    同棲してから、もぅすぐ1年という時に私は専門学校をやめた。
    今までのバイトも辞めて、新しいバイトを始めた。
    『今日からこちらで働かせて頂きます、榎本 恵理子です。宜しくお願いします』
    篤の店が求人広告を出していたので、運良く働ける事になったのだ。
    ――…私の夢はいつの間にか美容師から、篤の側に居る事にかわっていた…

    2008-10-03 03:48:00
  • 26:

    名無しさん

    篤は挨拶する私を見て驚いた顔をしただけで、初日は全く話さなかった。
    朝5時、店が終わり帰路につく。
    もちろん私と篤は同じ部屋に帰る。
    篤の少し後ろを歩きながら、いつ話しかけようか悩むが、篤は一度も私を振り返らない。
    店には【店内恋愛禁止】というルールがあったので、きっとそれを意識しての行動なんだと思った。

    2008-10-03 03:54:00
  • 27:

    名無しさん

    店を出て、10分くらい歩いたところで痺れを切らして駆け寄る。
    『おつかれっ』
    『んー』
    こっちを見ようともしない彼の横顔には不穏な空気。
    また黙って2人微妙な距離で歩く。

    2008-10-03 04:03:00
  • 28:

    名無しさん

    部屋に着いて約8時間も立ちっぱなしだった足は悲鳴をあげていた。
    重い空気がイヤで
    『やぁ〜もぅ足がぱんっぱん』
    と篤に笑いかけてみると
    『んー』

    2008-10-03 04:06:00
  • 29:

    名無しさん

    これまた気のない返事。
    『もー!なに?さっきからその態度は』
    『……別に、疲れてるだけ』
    明らかおかしい。疲れている時の顔じゃない。
    『思ってる事、言ってくれなきゃわからない』

    2008-10-03 04:11:00
  • 30:

    名無しさん

    すると、篤は今日はじめて私と目を合わせた。

    『恵理子の本当にやりたいことって何?』

    少し悲しそうな目。

    2008-10-03 04:13:00
  • 31:

    名無しさん

    『だからっ、今日バイト行ったじゃん!バーテンになりたいの!』

    ――…嘘。

    『何で急に?美容師になるんじゃなかったっけ?』

    2008-10-03 04:16:00
  • 32:

    名無しさん

    『学校いったら行ったで、なんか違うって思ってて……お酒好きだしバーテンにも少し憧れてたの』

    ――…嘘。

    『本当に?』

    2008-10-03 04:19:00
  • 33:

    名無しさん

    『ホントだよ』

    ――…嘘。

    .

    2008-10-03 04:21:00
  • 34:

    名無しさん



    ホントはね、篤と居たいから。

    .

    2008-10-03 04:25:00
  • 35:

    名無しさん

    でも夢に真っすぐな篤に、そんな不純な動機だとはとてもじゃないが言えない。
    『そっか、わかった。じゃあ店では絶対にベタベタすんなよ。俺、仕事に私情持ち込みたくないから』
    『もちろん!そのうち篤より美味しいカクテル作ってやるからね!』

    ――…わかってる。

    2008-10-03 04:30:00
  • 36:

    名無しさん

    篤は私と居る事より夢を叶える事に夢中なんだ。
    邪魔はしない。

    違う、邪魔出来ない…
    .

    2008-10-03 04:32:00
  • 37:

    名無しさん

    篤と一緒の店で働く様になってから、それまで以上に自分の居場所の無さを感じた。
    ここでも結局、一緒にいるのに居ない。

    2人で居る時間を増やしたくて同じ職を選んだのに、孤独感は募るばかり。
    一緒に働いたのはたった4ヶ月だけだった。

    2008-10-03 04:37:00
  • 38:

    名無しさん

    それからは、友達に誘われるまま水商売を始めた。
    篤との心の隙間を、誠意の無いその場しのぎの会話と軽口、酒で埋めようとしていたのだと思う。

    篤は朝の6時から9時までの3時間しか部屋にいない。
    私が酔っ払って夜中2時頃に帰宅し、布団に入ると目覚めるのは いつも10時をまわってから。

    2008-10-03 04:56:00
  • 39:

    名無しさん


    今までと何もかわらない。

    何も。
    .

    2008-10-03 04:58:00
  • 40:

    名無しさん

    埋まらないままの生活は続き、私は篤以外の異性を穴埋めにした。
    寂しくて、誰かに側にいて欲しくて。
    その人との生活を選び、黙って部屋を出た。

    そして2人の同棲は3年で幕をとじた。

    2008-10-03 05:04:00
  • 41:

    名無しさん



    『篤さん、俺フードにヘルプ入りますからドリンク全部お願いします!』

    『あいよー』

    2008-10-03 05:06:00
  • 42:

    名無しさん

    金髪の若い男の子がカウンターの奥にひっこんでいった。
    篤は13杯分のドリンクオーダーのメモを見て『あいつら呑みすぎ』と笑う。
    同窓会というのもあってか、みんな赤い顔をしていた。
    『恵理子はビールおかわり?何か作ろーか?』

    2008-10-03 05:13:00
  • 43:

    名無しさん

    『じゃあ、オススメで』
    『何系?甘いとか、色とか、ベースとか』
    『全部任せる!』
    『お前いっつもそれな(笑。了解』
    何年ぶりだろうか、この会話。懐かしいやりとり。

    2008-10-03 05:18:00
  • 44:

    名無しさん

    『アッツシくぅん!生3杯追加ねぇ!!』
    フロアから陽気な追加注文。
    これで全部で17杯。
    『ちょ、恵理子、手伝え!ビールと作れるやつだけでイイから!』
    流石の篤もここまでオーダーがたまるとめんどくさそうだ。

    2008-10-03 05:25:00
  • 45:

    名無しさん

    『仕方ないなぁ〜』
    とりあえず袖をめくり、髪を一つに束ねる。
    バーカウンターの中に入ると、いつだったか一緒に働いてた頃を思い出した。
    『今日はしゃべっててイイんだよね?』
    『今はいいよ、昔はさぁマスターの目が怖かったもんなぁ』

    2008-10-03 05:30:00
  • 46:

    名無しさん

    篤が振るとチャカチャカと氷の滑る音がキレイだ。
    ビールを注ぎながら彼の動作に目がくぎづけだった。
    私が5杯のビールを注ぐうちに、篤も5杯のカクテルを作っていた。
    『はやっ!かなりレベルアップしてるみたいだね』
    『俺様だからねぇ♪つーか、ビールの泡が死ぬ前に先に持っていって』

    2008-10-03 05:37:00
  • 47:

    名無しさん

    無駄口叩きながらも、仕事は人一倍マジメ。
    篤は、篤のままだ。
    何だか嬉しくなった。
    トレンチにグラスをのせ、テーブルに運ぶ。
    『え?何?恵理子が手伝ってるの?出来た嫁ですなぁ〜』

    2008-10-03 05:40:00
  • 48:

    名無しさん

    同級生がはやしたてる。
    きっと彼女達は私達の別れを知らないから、リアクションに困った私は愛想笑いだけしてカウンターに戻った。
    『恵理子、ギムレットとマティーニ作れる?』
    『わかった』
    久しぶりに振るシェーカーはガチャガチャと鳴る。

    2008-10-03 05:52:00
  • 49:

    名無しさん

    『お前、氷ぶつけすぎな(笑。』
    『うるさいっ久しぶりだもん』
    篤と並んでお酒を作るのが楽しい。
    あの時もこんな時間が欲しかった。
    きっと、今みたいな感じなら私達――…。

    2008-10-03 05:55:00
  • 50:

    名無しさん

    2人でこなすと意外とはやかった。
    『ただ働きしたのに文句言われるからもぅ手伝わないからね』
    私が元の席に戻ると、篤もピンクのショートカクテルとコロナの瓶を持って出てきた。
    そして、自然に私の隣に腰をおろす。
    『ありがとな、おつかれ!』

    2008-10-03 06:06:00
  • 51:

    名無しさん

    本日2度めの乾杯。
    篤が作ってくれたカクテルは甘酸っぱいフローズン。
    『これ、何てカクテル?』
    『恵理子スペシャル58(笑。』
    篤が左眉の辺りを掻く。

    2008-10-03 06:10:00
  • 52:

    名無しさん

    篤の癖なんだ。

    照れてる時は、決まって左眉をかく。

    私は知っている。

    2008-10-03 06:12:00
  • 53:

    名無しさん

    『よく覚えてるな(笑。』
    『覚えてるよ、篤との事なら。58ってサバ読みすぎだよ(笑。』
    私が篤と付き合ってた時は確かに41杯めが最後。
    だから、これは42杯めじゃないとおかしい。
    『篤、間違えたでしょ?』

    2008-10-03 06:19:00
  • 54:

    名無しさん

    『間違えてない』
    『素直に認めなよ〜』
    『間違えてないって。42から57まで、ちゃんとあるし。だからコレは58なの』

    ――…え?

    2008-10-03 06:22:00
  • 55:

    名無しさん

    『はいはーい!注目!!これ以上待っても来なさそーなんで、今から順番に卒業後の5年間の報告をしてもらいます!』
    元学級委員が仕切りだす。
    周りは顔を見合わせながら笑っていた。
    『じゃー、手前から!』
    篤がBGMのボリュームを少し下げる。

    2008-10-03 06:33:00
  • 56:

    名無しさん

    報告会が始まってしまい、カクテルの話しがうやむやなまま。

    ――…ねぇ、篤。42からもあるって事は、別れてからも私に作ってくれてたの?

    しかし、それは間違えのごまかしの嘘かもしれない。

    2008-10-03 06:39:00
  • 57:

    名無しさん

    わからない。

    篤は私が家を出てから、何して過ごしてきたの?

    .

    2008-10-03 06:42:00
  • 58:

    名無しさん

    私は2年前、部屋を出てから新しい男の家に転がり込んだ。
    しかしその男とは1ヶ月も経たない間に別れ、それからは一人暮らしをしていた。
    何度、篤との部屋に戻ろうと思った事か。
    何度、後悔して泣いただろうか。
    結局、篤でないと隙間は埋まらないのだ。

    2008-10-03 06:47:00
  • 59:

    名無しさん

    ある日突然、何も伝えないままに消えた私を、どう思った?

    報告会は順調に進む。結婚した子もいれば、既に離婚までしてシングルで頑張っている子も。
    一流企業に就職した者、浪人生活を送った者。
    拍手や笑い混じりの野次の飛び交う中でいよいよ自分の番になった。

    2008-10-03 06:56:00
  • 60:

    名無しさん

    『えーと、お久しぶり。榎本です。卒業後は専門学校に行ったものの、挫折してしまい、バーテン見習いになってから、また挫折して…夜の世界へ飛び込んでいったという。
    なんか、緊張するね、コレ(笑。
    あ、でも水商売で貯金も出来たし、自分の店を持ちたいという夢を叶える為、この春から また美容師になろうと学校に行ってます。
    店だしたら来て下さい。えーと…以上(笑。』
    サッと頭を下げて腰をおろす。

    2008-10-03 07:07:00
  • 61:

    名無しさん

    拍手が起こると共に予想していた野次がとぶ。
    『貯金いくら?!笑』
    『同棲生活の報告は〜?笑』
    『てかアッ君が尻にしかれてるんでしょー?笑』
    学校でもバカップルで有名だった分、やはりそこは突っ込まれるさだめ。

    2008-10-03 07:13:00
  • 62:

    名無しさん

    『まぁ、いや、ねぇ?』
    苦笑いしながらしどろもどろしてると
    『はーい!次俺の番〜♪』
    隣の篤が元気よく立ち上がる。
    キレイにビシッと上がった手が何だか可笑しかった。

    2008-10-03 07:17:00
  • 63:

    名無しさん

    『卒業してからは〜、昼間はアパレル、夜はショットバーで働くという、睡眠時間を削る過酷な生活を送ってました!
    まぁ俺にはずっとバーを出すという夢があったから無理してでもガムシャラに働いてきて…
    ココを約半年前に無事オープンさせる事が出来ました!』
    『おめでとぅ〜!』
    『マジでココ篤の店なんだ!すごーい』

    2008-10-03 07:24:00
  • 64:

    名無しさん


    ――…マジで?!

    そんな話まったく聞いてなかったから驚いた。
    ココが、篤が作りあげた店だったなんて。

    2008-10-03 07:26:00
  • 65:

    名無しさん

    拍手や口笛が誰よりも篤におくられた。

    『まぁ落ち着けって(笑。そんな感じなんで今日はジャンジャン呑んでってくれよー!
    グラス全員持ってる?
    よし、じゃあ3年4組…かんぱーい!!』

    2008-10-03 07:33:00
  • 66:

    名無しさん


    『『カンパーイ!!』』

    ワァッと盛り上がる。
    皆が笑っているのを満足気に篤は見ていた。

    2008-10-03 07:34:00
  • 67:

    名無しさん

    『あの、ありがとうね』
    『なにが?』
    『今、私が困ってたから話そらせてくれたでしょ?』
    『ああ、助ける為じゃなかったから、お礼はいらないよ』
    コロナを一気に流し込む。

    2008-10-03 07:39:00
  • 68:

    名無しさん

    『あ…そーなんだ…』
    私の為だと勘違いしていた自分が恥ずかしくなった。
    庇うワケない、私みたいな女を。

    ――…庇われる資格なんて私にはない。

    2008-10-03 07:42:00
  • 69:

    名無しさん

    『俺は、俺が聞きたかったの。俺達の今の関係を』
    報告会は続いているが、もぅ耳に入ってこない。
    篤の声はザワつく店内でもハッキリ聞こえた。
    『…私達の今の関係って?』
    質問の意図がわからない。

    2008-10-03 07:46:00
  • 70:

    名無しさん

    『いや、さ。お前が突然居なくなって、携帯も繋がらないし…
    連絡つかないから何かあったのかと思って、お前の実家に連絡したら
    【引っ越すとだけ聞いてる】
    って言われてワケわかんなくなって…』
    篤が真っ直ぐに私の目を見つめるものだから、心苦しくなって視線をグラスに移す。

    2008-10-03 07:55:00
  • 71:

    名無しさん

    『………ごめん』
    何だか顔が熱を帯びてきて、涙がこみあがってくる。
    『ごめんじゃなくて。俺さ、やっぱあん時にフラれたってこと?』
    涙が零れない様に、篤に気付かれない様に頬杖をついて顔を背けた。
    『違う、フッたわけじゃない。篤が好き過ぎて、自分でもどーしていいのかわからなくなって…私は逃げたの……ごめん…』

    2008-10-03 08:05:00
  • 72:

    名無しさん

    『俺達って別れてんの?』
    『……わからない』

    篤が私の顔を覗き込み頭を優しく撫でると、ますます涙が止まらなくなった。
    『別れてねぇよ、バーカ。つーか泣くなって』

    2008-10-03 08:10:00
  • 73:

    名無しさん


    私との将来も
    叶える為に
    ずっと真っ直ぐだったんだ。
    .

    2008-10-03 08:26:00
  • 74:

    名無しさん

    自分の事しか考えられなかった若かった私。
    ダメにしていたのは私だった。

    だって今思えば、篤は私が朝方目をさますと抱きしめて一緒に寝てくれていた。
    朝、篤が朝食を作る時には必ず一度声をかけてくれてた。

    2008-10-03 08:33:00
  • 75:

    名無しさん

    忙しい中で、私の誕生日は絶対に1日あけてくれていた。

    どーしてそれを、ご機嫌取りや埋め合わせだと思って無視していたんだろう。

    篤はちゃんと私の側に居て、一緒に居る時間を作ってくれていた。

    2008-10-03 08:36:00
  • 76:

    名無しさん

    『ごめっん、アツ…シ……ごめんね……ヒック』
    しゃくり上げながら、ひっしで言葉を口にする。
    『恵理子はさ、俺と別れたい?』
    もぅ言葉にならなくて、首を強く左右に振る。
    『じゃあ泣くなって、俺と居る時は泣かないって一番最初に約束しただろ?』

    2008-10-03 08:45:00
  • 77:

    名無しさん

    滝の様に溢れる涙はなかなかとまらない。
    『あー!進藤が榎本泣かせたー!』
    誰かが私達に気付いて叫ぶと、
    『泣ーかした泣ーかした♪せーんせぇに言ってやろ♪』
    と合唱が始まる。

    2008-10-03 08:50:00
  • 78:

    名無しさん

    『小学生かっ!笑』
    ほろ酔いの懐かしい顔触れと、ずっと撫で続けてくれる篤のあたたかさに、自然と笑みが浮かぶ。


    そのまま篤はバイトの子に店を任せて、ずっと私の隣に居た。

    2008-10-03 08:54:00
  • 79:

    名無しさん

    同窓会のメインイベント、タイムカプセル開封。
    5年前の自分からの手紙。
    私は自分への手紙にとりあえず思い付いた事を色々と書いていたけど、
    やっぱり篤の名前がいっぱいだった。

    2008-10-03 08:59:00
  • 80:

    名無しさん

    篤は何書いたか覚えてなかった。
    そういえば、5年前に書く事ないとか言ってたっけ。

    ワクワクしながら手紙を開くと、思わず2人で顔を見合わせて笑った。
    .

    2008-10-03 09:03:00
  • 81:

    名無しさん



    【夢、叶えたか?】

    .

    2008-10-03 09:03:00
  • 82:

    名無しさん


    たった一言だけ。

    篤らしい。
    .

    2008-10-03 09:06:00
  • 83:

    名無しさん

    『とりあえず叶えた(笑。』
    『だね(笑。』


    ふいに篤の顔が近くなる。

    2008-10-03 09:09:00
  • 84:

    名無しさん



    『もぅ1個の夢は恵理子と一緒じゃないと叶わないけどね』

    .

    2008-10-03 09:14:00
  • 85:

    名無しさん

    耳元で篤が呟いた。
    私は黙って頷く。


    ――…てっきりキスされると思って目を閉じた自分が恥ずかしくて仕方なかった。

    2008-10-03 09:16:00
  • 86:

    名無しさん

    ■タイムカプセル/終わり■

    2008-10-03 09:17:00
  • 87:

    名無しさん





    .

    2008-10-03 09:36:00
  • 88:

    名無しさん

    めっちゃ良かった?
    なんか爽やかですね?

    2008-10-03 15:55:00
  • 89:

    名無しさん

    ありがとうございますm(__)m
    読んで下さった方が居てとても嬉しいですo(^-^)o

    2008-10-03 19:00:00
  • 90:

    名無しさん



    ■ドッペルゲンガー■

    .

    2008-10-03 19:01:00
  • 91:

    名無しさん

    この世には自分に似た人間が3人はいるという。

    しかし、稀に自分と同じ人間に会う事がある。
    1回めは偶然、2回めは必然。

    2008-10-03 19:03:00
  • 92:

    名無しさん



    3回めは――…

    .

    2008-10-03 19:05:00
  • 93:

    名無しさん

    駅のホーム。
    少し影にあるベンチから腰を上げた。
    昨日切りすぎた前髪が気になって、指先で引っ張ってみる。
    もちろん、引っ張って伸びるワケもなく、小さなため息がもれた。

    2008-10-03 19:06:00
  • 94:

    名無しさん

    ふと視線を向かいのホームにうつすと、私と同じようなパッツンの前髪が目に入った。
    真っ白なワンピースに、その前髪がやたら目立った。
    蜃気楼のせいか、ワンピースの女性の顔はボヤけてよく見えない。
    女性なのか少女なのか、微妙な背丈。
    少し目を細めた所で、視界はホームに入った電車で遮られた。

    2008-10-03 19:09:00
  • 95:

    名無しさん

    電車に乗り込み、もぅ一度白いワンピースをさがした。
    何故、気になったかはわからない。

    彼女は少女と呼べる歳ではなかった。
    背丈が低い、細身の女性だ。

    2008-10-03 19:10:00
  • 96:

    名無しさん


    ――…よく見ると私にそっくり。

    一瞬彼女と目が合った気がしたが、動き出した電車は加速するばかりですぐに見えなくなった。
    左肩にかけた海外ブランドのバックが、小刻みに3回ほど微振動する。

    2008-10-03 19:12:00
  • 97:

    名無しさん

    メールだ。
    確認する為、携帯を手にした時に鳥肌が立っている事に気付いた。
    特に気にも止めず、受信BOXを開く。
    【悪い、仕事が押してて今日はダメになった。本当にごめん】
    送信者はコンパで知り合った彼氏。

    2008-10-03 19:13:00
  • 98:

    名無しさん

    付き合い出して半年、彼はいつも仕事に追われている。
    今日は土曜日だというのに、まだ仕事をしているらしい。
    先週末も仕事に彼との時間を奪われ、先々週末も…
    彼に会えるのは月に2回程度、多くて3回。
    もぅドタキャンにも慣れた。

    2008-10-03 19:14:00
  • 99:

    名無しさん

    【わかった。また暇が出来たら相手して】
    皮肉たっぷりの返事。
    慣れたと言えども、正直腹は立つ。
    虚しくなるよりは、怒った方がずっといい。
    【そんな言い方すんなよ、ごめんって。来週は絶対、空けるから】

    2008-10-03 19:16:00
  • 100:

    名無しさん

    何より、土曜日だと言う事は休日出勤のはず。
    謝りの電話一本よこさないで、メールで済ませる態度が気に入らない。
    【約束だよ?】
    彼からの返事はなく、メールは途切れた。
    また一つ、ため息をついて鏡をチェックする。

    2008-10-03 19:18:00
  • 101:

    名無しさん

    せっかく念入りに化粧してきたのに、既に汗でよれた顔。
    次の駅で私は引き返す事にした。

    電車を降りた時も ため息がこぼれた。
    .

    2008-10-03 19:18:00
  • 102:

    ?

    すごい読みやすいしオモシロイ??マイペースに頑張ってください??

    2008-10-03 23:27:00
  • 103:

    ?

    すごい読みやすいしオモシロイ??マイペースに頑張ってください??

    2008-10-03 23:29:00
  • 104:

    名無しさん

    タイムカプセルよかった。なんか自分とかぶるとこあってないた。

    2008-10-04 20:51:00
  • 105:

    名無しさん

    ありがとうございますm(__)m
    何度文章を変えても
    禁止ワードばかりでて
    エラーになるので
    考え直して明日更新しますm(__)m

    2008-10-05 00:49:00
  • 106:

    名無しさん

    『ただいまー』
    帰りに通りががったドラッグストアで安くなっていたティッシュを玄関に降ろす。
    今日の為に買った新しいパンプスを揃えてケースにしまうと、余計に気分が沈む。
    『あら、早かったわね』
    母がパタパタとスリッパを鳴らしながら奥から出てきた。

    2008-10-07 19:20:00
  • 107:

    名無しさん

    私の置いたティッシュを持ち上げると
    『小百合がちゃんと覚えてるなんて、めずらしいわね』
    と、階段下の収納庫を整理し始める。
    『たまには気がきくでしょ?』
    得意げに母の肩を叩くと

    2008-10-07 19:46:00
  • 108:

    名無しさん

    『やぁね、母さんが出掛けに頼んだんじゃない』
    呆れ顔で母は言う。
    『あれ?そーだっけ?』
    少し首をひねって考えるも、記憶にない。
    昔から物忘れは酷い方だが、今日は家を出てから1時間と経たず帰宅したのに…

    2008-10-07 19:47:00
  • 109:

    名無しさん

    どんなに頑張っても禁止ワードばかりになるので、読みにくいかもしれませんが空白入れますm(__)m
    すみません

    2008-10-08 15:37:00
  • 110:

    名無しさん

    『あ ら ? 今 日 ワ ン ピ ー ス 着 て な か っ た ?』
    『着 て な い よ ? お 母 さ ん こ そ、忘 れ っ ぽ い ん だ か ら』
    リ ビ ン グ の ソ フ ァ ー に バ ッ グ を 投 げ つ け て キ ッ チ ン に 向 か う。
    冷 蔵 庫 で 冷 え て いた お 茶 を 注 ご う と し た 時、手 が 滑 っ て グ ラ ス が 落 ち た。
    あ っ と 思 っ た 瞬 間 に ガ シ ャ ン と 音 を 立 て 砕 け た。

    2008-10-08 15:48:00
  • 111:

    名無しさん

    『小百合?あら、動いちゃダメよ、硝子片が刺さるわ』
    気付いた母が掃除機を片手に、私の足元に屈みこむ。
    『…お母さん、私が着てたワンピース何色だった?』
    『やぁね、勘違いしてたけど…確か白いワンピースよ』
    一瞬、駅のホームで見た女性の事が頭をよぎった。

    2008-10-08 15:51:00
  • 112:

    名無しさん

    背筋に冷たい空気が触れたかと思うと、視界が黒く侵食されていく。
    聴力も徐々に失い、私は脳貧血で倒れた。

    2008-10-08 15:53:00
  • 113:

    名無しさん




    .

    2008-10-09 11:21:00
  • 114:

    名無しさん


    『――…んっ…』
    気が着くと、暗い部屋に居た。
    カーテンから街灯の明かりがうっすらともれている。
    頭が重い――…

    2008-10-09 11:23:00
  • 115:

    名無しさん

    寝返りをうつと、まだ重い瞼の端にチカチカと一定の間隔で光る携帯が見えた。
    手を延ばし、携帯を布団に引っ張りこむと、ディスプレイの眩しさに眉間にシワが寄る。
    【新着メール2件】
    だれだろう…?
    すぐに受信一覧を確かめる。

    2008-10-09 11:29:00
  • 116:

    名無しさん

    1通は彼氏から。
    【今日はごめんな。でも、今日待っててくれて嬉しかった。また飯作ってくれよな】

    ――どーいう事…?

    2008-10-09 11:31:00
  • 117:

    名無しさん

    全く覚えのない話だった。

    夕方前には帰宅して、今まで寝ていたのに……

    私は彼の浮気を想像して、愕然となった。

    2008-10-09 11:34:00
  • 118:

    名無しさん

    携帯を持つ手に力が入り、小刻みに震える。
    怒りと言うべきか、悲しみと言うべきか、この気持ちは何とも表現しがたい。
    落ち着きを取り戻そうと、意識的に呼吸しながら一覧に戻った。
    もぅ1通はアドレスが表示されているだけで、送信者は未登録だった。
    迷惑メールの類いか、アドレス変更通知か。

    2008-10-09 11:40:00
  • 119:

    名無しさん

    開いたメールを見て一瞬息をするのを忘れてしまった。
    【小百合は私。彼は私のもの】

    ――…気持ち悪いいたずらね…浮気相手は若い子かしら?
    .

    2008-10-09 11:44:00
  • 120:

    名無しさん

    腹立ちまぎれに思わず返信ボタンを押す。
    【あなたは誰?】
    大人げないかもしれないが、衝動が止まらなかった。
    送信完了と画面に出たのを確認して、携帯をたたみ握りしめると
    すぐに携帯は暗い部屋にカラフルな色を撒き散らして微振動を繰り返す。

    2008-10-09 11:49:00
  • 121:

    名無しさん

    いくらなんでも返信にしては早過ぎる。
    エラー通知かもしれない。
    もぅ相手はアドレスを変えてしまっていたのかも。

    少しの不安は表示された同じアドレスを見て吹き飛ぶ。

    2008-10-09 11:52:00
  • 122:

    名無しさん


    【あなたは誰?】

    本文はそれだけ。
    先に名乗れと言わんばかりに同じ言葉を返してくるなんて、厭味な性格が窺い知れる。

    2008-10-09 11:55:00
  • 123:

    名無しさん

    私はムキになって返信メールを作成する。
    【小百合ですけど。】
    送信完了の後、すぐに受信画面に切り替わるが、いくらなんでも早過ぎる。
    同じアドレスから、メールを開くと
    【小百合ですけど。】

    2008-10-09 11:59:00
  • 124:

    名無しさん

    サァッと耳鳴りがして、血の気がひいた。
    アドレスを確認すると、初期設定の英数字の羅列。
    しかし、見覚えのある…

    それは自分のアドレス。

    2008-10-09 12:01:00
  • 125:

    名無しさん


    気付けば体がすっかり冷える程の汗と、全身の毛が逆立つ不快感に包まれていた。
    一人で部屋にいるのが怖くなってベットから跳び降りてリビングへと階段を急ぐ。
    明かりの零れるドアをひらくと、父と母がソファーで晩酌していた。
    母は私の顔を見るなり、キョトンとしていた。

    2008-10-09 12:07:00
  • 126:

    名無しさん

    『やぁね、バタバタと騒々しい』
    母は父の肩を揉みながら私を睨む。
    『起きたらこんな時間でビックリして…』
    父が腕時計を確認すると、母も仲良く覗き込んだ。
    『まだ小百合が帰ってきて寝てから20分くらいよ?』

    2008-10-09 12:14:00
  • 127:

    名無しさん

    『え?グラス割って、貧血起こして倒れて……』
    『母さんが部屋に寝かしてガラスを片付けてたら、すぐに着替えて降りてきて出かけて行ったじゃない』

    なにかがおかしい。
    なんとも言えない違和感。

    2008-10-09 12:18:00
  • 128:

    名無しさん

    貧血後を思い出せないでいると、母がまだ寝ぼけてると茶化してきた。
    愛想笑いを浮かべて自分の服を見て驚いた。

    白いワンピース。
    .

    2008-10-09 12:20:00
  • 129:

    名無しさん

    これは確か、去年の夏の終わりに買ったもの。生地とデザイン的に去年は着れず、今年こそはとクローゼットの隅に置いていた。

    そう、あの駅で見た彼女も確かこれと同じものを―…

    ――…気味が悪い。

    2008-10-09 12:24:00
  • 130:

    名無しさん


    ――…私はその時
    言いようのない不安に襲われていた。
    .

    2008-10-09 12:27:00
  • 131:

    名無しさん


    翌日、目が覚めたのは昼前だった。
    熱があるのか、頭の芯が何か鈍器で叩かれているかの様に痛む。
    『あ―…会社に連絡しなきゃ…』
    遠退く意識の中で、微かに残る理性。

    2008-10-09 16:34:00
  • 132:

    名無しさん

    しかし、体が反応しない。
    少しくすんだ天井の壁紙を意味もなく焦点の定まらない目で見ていた。


    ――…あれ?

    2008-10-09 16:37:00
  • 133:

    名無しさん

    気付けば15時をまわっている。
    起きていたつもりが、知らぬ間におちていたようだ。
    さっきよりは幾分かマシになった気もする。
    こんな時間まで会社に連絡してないなんて、自分の首が繋がるか心配になった。
    寝起き早々、あーあーと発声を確認してから携帯を手にとった。

    2008-10-09 16:42:00
  • 134:

    名無しさん

    めちゃおもろい

    2008-10-09 18:07:00
  • 135:

    名無しさん

    タイムカプセル
    今の自分の状況と似すぎてて、めっちゃ泣いてしまった?

    夢に向かってがんばってるのは応援してあげたいけど、かまってくれないと寂しいんだよね??

    同じように何回も逃げようとしたけど、逃げたら絶対後悔するから、がんばってたえてます?


    ハッピーエンドで、元気をもらえました?

    ありがとうございました?

    2008-10-10 02:36:00
  • 136:

    名無しさん

    ありがとうございますm(__)m
    嬉しいです、頑張りますm(__)m

    2008-10-10 17:03:00
  • 137:

    名無しさん

    私の会社は小さな出版会社で、忙しい時期は日曜返上で出社しなければならない。
    今日の失態はかなり大きなダメージだ。
    会社にかけると取り次ぎが面倒なので、直接上司の携帯にかけた。
    『おー北嶋かぁ』
    『あ、あの、今日は連絡が遅れてすみません!』

    2008-10-10 17:12:00
  • 138:

    名無しさん

    『いやいや、大丈夫か?すぐ帰って寝ろっつっただろ』
    『は?や、今家ですけど』
    『そーか、着いたか。今日の早退は気にすんな。お前はよく頑張ってるよ』
    『え?あのっどーゆー…』
    『そんじゃ俺も手ぇ離せねぇから、お大事にな!』

    2008-10-10 17:17:00
  • 139:

    名無しさん

    電話は慌ただしく切られた。
    とりあえず何だかよくわからないが、一つ肩の荷が降りたみたいだ。
    椅子に掛けてあったカーディガンを羽織り、ベットから立ち上がると少し目眩がする。
    体重をかけ歩く足の間接は電気が走るみたいに痛んだ。

    2008-10-10 17:23:00
  • 140:

    名無しさん

    リビングに降りて行くと、母が鼻歌を歌いながら洗い物を流していた。
    『お母さん、お茶入れて』
    体温計を薬箱から探し出して脇に挟む。
    『ああ、はいはい。ちょっと待ってね』
    差し出されたお茶を口に含むと、ひんやりとして心地よかった。

    2008-10-10 17:29:00
  • 141:

    名無しさん

    『めずらしいわね、小百合が熱出すなんて』
    そーいえば、私は昔から体は強い方だったし、間接が痛む程の熱なんて記憶にない。
    ぼぅっと何も映っていない旧式の大型テレビを見ていると、ピピッと小さく電子音が響いた。
    脇から体温計を引き抜き確認すると、小さな表示画面には【38.8】
    その数字を見ただけで体が余計に怠くなった気がする。

    2008-10-10 17:40:00
  • 142:

    名無しさん

    ソファーに横になり、まどの外を見ていた。
    少し蒸し暑い。
    母はあまりエアコンが好きではないので窓がどこも全開だった。
    日曜という事もあり、近所から子供の声が聞こえてくる。
    意識を窓の外に向けていると、母がうどんを持って来た。

    2008-10-11 15:29:00
  • 143:

    名無しさん

    食欲はなかったが、食べる物を食べないと体力は落ちるばかり。
    汗だくになりながら半ば無理矢理口に運んだが、半分も食べない内に箸を置いた。
    『だから今朝、会社休みなさいって言ったのに』
    母は手際よく薬の封を破り、水を添えて出す。
    カプセル薬がなかなか喉を通らず、水だけが流れこむ。

    2008-10-11 15:35:00
  • 144:

    名無しさん


    ――…暑い。

    エアコンも入れてない部屋で、うどんを食べた私は鼻の頭に汗をかいていた。
    『……お母さん、私、今朝そんなにしんどそうだった?』

    2008-10-11 15:37:00
  • 145:

    名無しさん

    『そーねぇ、いつもより遅く起きてきたかと思うと、ご飯も食べずに出て行ったじゃない?真っ赤な顔して』
    『……そーだっけ?』
    『そーよ、熱だけ計って行けって言ったのに、小百合ったら慌ただしく…』
    『そーだったね、うん…ごめん、頭が痛くなってきたから寝るね…』
    母の話を遮って部屋に戻る。

    2008-10-11 15:43:00
  • 146:

    名無しさん

    パタンとドアを閉めると、ベットに倒れ込んだ。
    『おかしぃなー…熱のせいかな?…それとも夢遊病?』
    誰に言うわけでもなく、独り言が漏れた。
    俯せだと肺が圧迫されて余計に苦しく感じる。
    もぅ考えるのもしんどくて、このまま寝てしまおうと寝返りをうつ。

    2008-10-11 15:49:00
  • 147:

    名無しさん

    体制をかえて、うっすら目を開けると、部屋の中はオレンジ色…いや、西日のような赤色に染まっていた。
    あれ?

    違和感を感じた時、胸に強烈な痛みが走り、私は動けなくなった。
    息が出来ない。

    2008-10-11 15:54:00
  • 148:

    名無しさん

    助けを求めようと、激痛に耐えながら再び目を開く。

    『!!』

    声にならない声が出た。

    2008-10-11 15:57:00
  • 149:

    名無しさん


    ベットのすぐ脇に

    .

    2008-10-11 15:58:00
  • 150:

    名無しさん



    あの白いワンピースの女が立っていた。

    .

    2008-10-11 15:58:00
  • 151:

    名無しさん

    ヤバいッ?笑 早くダレか助けてあげてッ?

    2008-10-11 16:01:00
  • 152:

    名無しさん

    体は動かない。
    声もでない。

    女は、真っ赤に染まる部屋の中にいるのが嘘かの様に血の気のない顔色をしていた。
    まったく身動きの出来ない状態で、頭はやけにスゥッとしている。

    2008-10-11 16:03:00
  • 153:

    名無しさん

    >>158さん、ありがとうございますm(__)m
    助けてあげたいですが…笑

    2008-10-11 16:04:00
  • 154:

    名無しさん

    ――…やだ、誰っ?なんでここに居るの?!

    どんなに体を動かしたくても、指先ひとつ動かない。
    自分の鼓動が耳鳴りの様に聞こえ、動悸がすごい。
    鼻息がすんすんと鳴るのもわかるくらいに、私は大きく動揺していた。

    2008-10-11 16:10:00
  • 155:

    名無しさん

    動くのは眼球だけ。
    しかし女から視線を外せない。
    女が私の頭を掴むかの様に手を伸ばしてきた。
    自分にのびてくる青白い腕が怖くなった私は手が触れる直前に目を閉じた。

    2008-10-11 16:13:00
  • 156:

    名無しさん


    フワッ。

    何か、この世の物ではないぐらいの開放感と、重力を失ったかのような体の軽さを感じた私は、またうっすらと目を開く。
    何故かどんどん天井が落ちてくる。

    2008-10-11 16:17:00
  • 157:

    名無しさん

    天井に押し潰されるかと思い、一瞬体に力を入れたが、あと十数センチという所で天井は落ちてこなくなった。
    さっきまでの体の重さが嘘かの様に感じる程、空気がかるい。
    まるで、水の中で漂っているかのような恍惚感。
    泳ぐような動作でくるりとその場で体制をかえてみた。
    ベットには私が苦しそうな顔をして横たわっている。

    2008-10-11 16:25:00
  • 158:

    名無しさん

    そして、その横には女が私の頭を掴むかのように立っていた。

    私は一瞬で理解した。

    天井は落ちてきたんじゃない、私が天井近くまで浮かび上がっていたのだと…

    2008-10-11 16:29:00
  • 159:

    名無しさん

    またもや禁止ワードが何なのかわかりません(:_;)
    空白挟みます、読みにくくしてすみませんm(__)m

    2008-10-11 16:46:00
  • 160:

    名無しさん

    俗に言う【幽体離脱】というものか。
    不思議な事に体が動かない恐怖に比べ、全く怖いと思う事もなく、どこか気持ちいい。

    2008-10-11 16:47:00
  • 161:

    名無しさん

    フワフワと漂う自分が不思議で、ただ眼下の光景を眺めていた。

    2008-10-11 16:49:00
  • 162:

    名無しさん

    女 が 苦 し む 私 の 肉 体 か ら、【霊 体】と な っ た で あ ろ う 私 へ と ゆ っ く り 顔 を 上 げ る。
    私 と そ っ く り の 顔 を。

    2008-10-11 16:54:00
  • 163:

    名無しさん

    目があったかと思うと、女は不敵な笑みを浮かべる。
    私の頭を掴んでいた手を離したかと思うと、そのまま中指を立てて私を指し示してきた。
    ――…中指だなんて、めずらしい…
    浮いてる私は至って冷静で、そんな事を考える余裕すらあった。
    『あら、だって人差し指って…あなた今【人】じゃないじゃない?』

    2008-10-11 17:01:00
  • 164:

    名無しさん

    女の初めて聞く声に心臓がまたもや大きくなった。
    声まで私にそっくりだ。
    『あ、あんた誰よ?私に何したの?!』
    さっきまで落ちついていたのに、突然言いようのない不安に襲われる。
    『私は小百合、あなたよ』

    2008-10-11 17:09:00
  • 165:

    名無しさん


    ――…え?

    すると急に体をすごい勢いで引っ張られたかと思うと、胸に鈍い痛みが戻って来た。
    すんすん鳴り続ける呼吸を確認して、ベットから上体を起こす。

    2008-10-11 17:13:00
  • 166:

    名無しさん

    もぅ自分の意志通りに動く体を、手を握っては開いて確認する。
    安堵のため息をついたと同時に悪寒が走って、全身が痙攣してしまったかの如く、激しい震えにかわる。
    冷や汗とでも言うのだろうか、体温調節ではない汗が全身から流れ落ちていく。

    熱にうなされて変な夢でも見たのかと思ったが、リアルに残る浮いた時の感覚がそれを否定していた。

    2008-10-11 17:20:00
  • 167:

    名無しさん

    めちゃおもろい

    2008-10-11 18:10:00
  • 168:

    名無しさん

    ありがとうございます m(__)m
    めちゃ嬉しいです(^-^)♪
    もう少しお付き合い下さい m(__)m

    2008-10-12 02:24:00
  • 169:

    名無しさん

    翌日には熱も下がり、いつもの電車で出社した。
    土曜日に切りすぎた前髪が少し恥ずかしかったが、誰にも前髪には触れられないまま退社時刻を迎えた。
    帰り支度を始めた同僚に声をかける。
    『前髪、変かな?』
    『まだ気にしてるの?昨日から触りすぎ(笑。』
    ――…やっぱり。

    2008-10-12 02:33:00
  • 170:

    名無しさん

    【略部】

    ――…やっぱり。

    2008-10-12 02:35:00
  • 171:

    名無しさん

    身に覚えのない【昨日の自分】がそこには確かに居た。
    『昨日、熱であんまり記憶にないんだけど、私ヘンじゃなかった?』
    『んー、しんどそうだったけど、仕事を片付けて早退して…普通だったよ?』
    『そっか…』
    『疲れてんじゃない?今日も早く帰って寝たら?じゃーお疲れ!』

    2008-10-12 02:40:00
  • 172:

    名無しさん

    同僚は急ぎ足で出て行った。
    私はただ首をかしげるばかりだ。

    それから毎晩の様に怪奇現象に襲われた。
    金縛りにあうも、また自分と同じ顔をした女が立っている気がして目を開けれない。

    2008-10-12 02:44:00
  • 173:

    名無しさん

    体が潰れそうなぐらい、重い【何か】がのしかかってきたり、
    何もかも感じなくなって、気付けば自分を見下ろしている事もあった。
    自分がどぅなってるのかさえ分からないまま、怪奇現象により私は衰退していく。
    記憶力も病気かと思うぐらい悪くなっていたが、検査では異常はなかった。
    栄養失調以外は。

    2008-10-12 02:51:00
  • 174:

    名無しさん


    1ヶ月も経つと、なんだか変な話だが、記憶のない自分を受け入れられる様になっていた。
    記憶には残らないが、私は私の生活をきちんと送っている様だ。
    記憶の限り、今日は会社に何日かぶりに出社したはずなのに、タイムカードは毎日きちんと押されていた。
    私は怖いとも感じなかった。

    2008-10-12 02:55:00
  • 175:

    名無しさん

    ただ、体の怠さがとれない事に苛つきはあった。

    退社時刻になり、鞄をつかむと力無く挨拶して駅に向かう。
    途中、彼からのメールが届いたが今は返さない。
    私が何をしなくても、記憶のない時間の私と彼は順調だった。

    2008-10-12 03:00:00
  • 176:

    名無しさん


    私が知らない間に…

    ――…全てが順調だった。
    .

    2008-10-12 03:01:00
  • 177:

    名無しさん

    駅のホームに立つと、制服やスーツ姿の人が長い列になっていて、最後尾に並ぶと憂鬱になった。
    やってきた快速電車には人が多すぎて乗る気にならず、誰も並んでいなかった各駅停車のドア位置を示すマークの上に立つ。
    先頭ならば、シートに座れるかもしれない。
    『……疲れた』
    もぅ今朝の星占いの結果でさえ思い出せない。

    2008-10-12 03:08:00
  • 178:

    名無しさん

    何故、今の彼と付き合っているのかも思い出せない。
    何かがおかしい。何かが違う。
    が、考えるのも疲れた。
    考えたところで答えは出ない。何も思い出せないのだから。
    あるのは空白ばかり。

    2008-10-12 03:16:00
  • 179:

    名無しさん

    ただ、自分がだんだん真っ白になってゆくばかり。

    『……ハァッ』

    大きな大きなため息を着くと、急に辺りが静かになった。

    2008-10-12 03:18:00
  • 180:

    名無しさん

    不思議に思い顔をあげると、目の前にはあの女がいた。

    私と同じ顔の、私と今日もまた同じ白いワンピース。

    微かに口の端を持ち上げて笑う様は、まるで私。

    2008-10-12 03:20:00
  • 181:

    名無しさん

    体は重く動かず、彼女しか目に入らなかった。
    『あなたは 誰…?』
    『私は小百合よ』
    女は突然私の腕を掴んで線路側へと引っ張る。
    重い足は全く動かなかったが、突然 体が軽くなってすごい勢いで前によろめく。

    2008-10-12 03:27:00
  • 182:

    名無しさん

    私はそれでも目の前の女から視線がはずせなかった。

    すると女は言った。

    私と同じ顔、同じ声で。

    2008-10-12 03:34:00
  • 183:

    名無しさん



    『あなたは誰?』

    .

    2008-10-12 03:36:00
  • 184:

    名無しさん



    ――…私は…誰?

    .

    2008-10-12 03:40:00
  • 185:

    名無しさん


    気付くと周りは騒がしかった。
    西日が少し眩しい。

    どぅやら自分は駅にいる様だ。

    2008-10-12 03:42:00
  • 186:

    名無しさん

    ここが駅だということは分かるが、自分が何者なのかはわからない。
    電線を触るも、感触はなく手は宙をく。
    自分がフワフワと無重力状態なことも気持ちいいと思った。
    なにやら騒がしいホームを見下ろすと、電車がホーム中程で停まっている。
    小さな人だかりが、白いワンピースを着た女性を線路からホームに上げていた。

    2008-10-12 03:48:00
  • 187:

    名無しさん

    ホームにいた人々が皆のっぺらぼうだった。

    この軽い体の自分には人の顔が見えない。

    そればかりか、自分の顔すらも思い出せないのだ。

    2008-10-12 03:54:00
  • 188:

    名無しさん

    『貧血で…すみません』
    どこか白いワンピースの女性の声を懐かしく思ったものの、顔のない人々を不気味に思い、その場を離れた。
    何に縛られる事もなく、何に怯える事もなく、ゆっくりと空を楽しむ。

    浮遊して何日か経つと、大きなショッピングセンターに着いた。

    2008-10-12 03:59:00
  • 189:

    名無しさん

    ここが何処なのかもわからない。
    ショッピングセンター内をくるくる飛び回る。
    時折、のっぺらぼうの子供が飛び回る自分を指差しながら何か言っているのがわかった。
    だが、子供同様顔がない親達は自分には全く気付かない。
    自分はショッピングセンターに来ても男物を見るべきか、女物を見るべきかさえもわからない。

    2008-10-12 04:06:00
  • 190:

    名無しさん

    もぅ何日も飛び回っているが、自分の【仲間】にさえ会えずにいた。
    顔のない人々をみるうち、気分がわるくなっていく気がした。
    フワフワと屋外駐車場で空を見ていたら、顔のない男の子が
    『何か浮いてる!』
    と自分を見つけて不思議そうに指差した。

    2008-10-12 04:11:00
  • 191:

    名無しさん

    母親は『どこ?』といいながら、自分と違う方向を向いていた。
    『お母さん、違うよ、あそこだよ』
    男の子は必死に母親に訴える。
    自分は何人かに1人、決まって子供にしか見えない事はここ数日でわかっていた。
    親子から、再び空へ視線をうつそうとした。

    2008-10-12 04:16:00
  • 192:

    名無しさん

    『アレ何だ!?』
    大人の声に驚いて下をみると、一人の男が自分を見上げて口を開けたまま立っていた。
    自分と目が合うと、眩しそうに目をこする。

    ――…見える。ちゃんとあの男の顔が見える。

    2008-10-12 04:21:00
  • 193:

    名無しさん

    こすりすぎた目は赤く充血していたが、男の視線はもぅ既に自分を見失っている。
    しかし、自分にはあの男の顔がハッキリと見えるのだ。


    ――…見ぃつけた。

    2008-10-12 04:24:00
  • 194:

    名無しさん


    気付けば【俺】は男と家族の乗り込んだ車を追っていた。

    【俺】と【同じ顔の男】を―…
    .

    2008-10-12 04:27:00
  • 195:

    名無しさん




    ■ドッペルゲンガー/終わり■
    .

    2008-10-12 04:30:00
  • 196:

    名無しさん





    .

    2008-10-12 04:30:00
  • 197:

    名無しさん

    禁止ワードがわからなくて空白入れたり、稚拙な文章で読みにくいと思いますが、読んで下さってありがとうございますm(__)m

    読みにくくなると思い、個レス返しはしてませんが、感想書いて下さった方や、頑張れって言ってもらえてとても嬉しいです(´∀`)

    今はネタが浮かばないので、また思いついたら書きます。また通勤の合間にでも覗いてやって下さいm(__)m

    2008-10-12 04:58:00
  • 198:

    名無しさん



    ■ 影 ■

    .

    2008-10-12 08:18:00
  • 199:

    名無しさん



    ――…あ。

    もぅ電車はすぐそこまで来ていた。

    2008-10-12 08:18:00
  • 200:

    名無しさん


    タイトル間違えました(>__

    2008-10-12 08:20:00
  • 201:

    名無しさん



    ■ 靄(モヤ) ■

    .

    2008-10-12 08:22:00
  • 202:

    名無しさん



    ――…あ。

    もぅ電車はすぐそこまで来ていた。

    2008-10-12 08:23:00
  • 203:

    名無しさん

    俺はすぐに気付き、駅のホームから離れると、階段を降りきるより早くホームからは叫び声が聞こえてくる。

    徐々に近くなりながら。

    しばらく電車は動かないだろう。

    2008-10-12 08:25:00
  • 204:

    名無しさん

    混乱する前に現場から離れたかった。
    さっき通った改札機に乗りもしなかった切符を突っ込み、一度も振り返る事なく、タクシー乗り場に向かう。
    駅の改札口には徐々に人が集まってきているのが見えた。
    『西船橋まで』
    『はい、どうぞー。あれー、なんかあったんですかね、お客さん』

    2008-10-12 08:26:00
  • 205:

    名無しさん

    バックミラー越しに運転手が話しかけてくる。
    俺は携帯を捜しながら『なんでしょうねぇ』と、さほど会話は好ましくない態度をとる。
    もぅ運転手は俺の声色で空気を読んだみたいに何も言わなくなった。
    後部座席にドカッと座り、無意識に足を組む。
    ズボン右ポケットに入っていた大手携帯会社の最新機種を見つけると、人差し指にはめていたシルバーリングがぶつかる音がした。

    2008-10-12 08:27:00
  • 206:

    名無しさん

    携帯を開けば、未読メールは50件を越え、不在着信は20件全てが埋まっていた。
    一通り目を通すが、どれも返信する気にもならない下らないメールばかり。
    実の姉にだけ【今から帰る】と用件だけのメールをいれた。
    細身のラインの綺麗なスーツ。
    ボタンを一つもとめていないシャツははだけ、インナーのタンクが丸見えだ。

    2008-10-12 08:28:00
  • 207:

    名無しさん

    首周りは慢性的な肩凝りになるんじゃないかと思うぐらい重みのあるシルバーアクセを3連で。
    耳から唇へと、ピアスに通したプラチナの細いチェーン。
    襟足短めの、左流しのアシメは昨日染めたばかりの嘘くさい不自然な黒色。
    スーツに染み着いた煙草や香水。酒臭い息は吐き気がする。
    ポケットに常備してあるミントのタブレットを雑に出してかみ砕いた。

    2008-10-12 08:30:00
  • 208:

    名無しさん


    家を出てから4年、俺はホストになっていた。
    ナンバー1にはなれない、万年ナンバー3。
    可もなく不可もなく。
    別に仕事にやりがいもなく、不満は…吐いて捨てる程あるが。

    2008-10-12 08:32:00
  • 209:

    名無しさん

    なれるものがホストしかなかったから、なっただけ。
    とりあえず雨風しのげる男臭い寮があったから。
    俺の死んだ目は夜の世界では目立たなかったから。
    ただ、それだけ。

    2008-10-12 08:33:00
  • 210:

    名無しさん


    窓の外の動く景色をぼんやりと眺めていたら、ピピピっと電子音が鳴る。
    最新機種も俺にとってはどーでもよくて。
    携帯でいちいちテレビなんか見ないし、連絡手段でしかない。
    着うたに至っては生理的に受け付けなかった。

    2008-10-12 08:34:00
  • 211:

    名無しさん

    初期設定の電子音が調度いい。
    携帯をひらきメールを見たら【わかった】とだけ姉貴から返事がきていた。

    母親は地味にどんくさい奴で、いつも親父の後ろをついてまわっていた。
    5年前に携帯を買った事もあったが、不器用すぎて扱い切れずにすぐ解約してしまう程だ。

    2008-10-12 08:35:00
  • 212:

    名無しさん

    だから、何かあると決まって姉貴から連絡がある。

    今回もそうだ。

    親父が事故に遭い、病院に担ぎ込まれたと連絡があったのは朝の8時をまわった頃。

    2008-10-12 08:36:00
  • 213:

    名無しさん

    日の出営業をしているウチの店は、その時間にはほぼ毎日満席だ。
    イキナリの事で、俺は見舞う気なんか無く、行けないとだけ姉貴に電話すると
    『お父さん、酷い事故で…危ないらしいから』
    と鼻をすすりながら言われた。
    『…やばい?』

    2008-10-12 08:37:00
  • 214:

    名無しさん

    『けっこうヤバイみたい…』
    『どーにか切り上げて向かうわ』
    いつも気丈な姉貴が泣くなんて、よっぽどの事だろう。
    オーナーはかつてこの世界のナンバー1だったことが疑わしいくらい情にあつい男で、
    『行ってやれ!』と肩に手を置いてきた。

    2008-10-12 08:38:00
  • 215:

    名無しさん

    俺は呼んでいた客に事情を説明し、9時過ぎには全員を返した。
    この時間なら、電車の方が早いと駅に向かったのはつい30分程前のこと。

    2008-10-12 08:38:00
  • 216:

    名無しさん

    また楽しみにしてます

    2008-10-12 23:51:00
  • 217:

    名無しさん


    ありがとうございますm(__)m

    2008-10-14 05:21:00
  • 218:

    名無しさん


    ――…親父 大丈夫かな。

    何故か思い出したのは、俺が家を出ていった朝の親父。
    あの朝の親父は優しく笑っていたが、何か言いたげな目がやたらと気になった。

    2008-10-14 05:22:00
  • 219:

    名無しさん



    ――…始発でとりあえず東京まで出よう。

    それは18歳の誕生日前夜。

    2008-10-14 05:23:00
  • 220:

    名無しさん

    あとは自分の持っている香水全部と、コレクションしていたシルバーアクセ。
    忘れちゃいけない、5メートル近くある長い延長コード。
    俺がつめた荷物はこれだけだった。
    延長コードは何かというと、言わば電気泥棒の道具。コンセントを見つけたら携帯の充電をする。
    何が無くとも、携帯さえあればどーにかなると考えた。

    2008-10-14 05:27:00
  • 221:

    名無しさん

    誰からもお祝いメールが来る事もなく、一人で迎えた誕生日。
    もぅ慣れた。
    今まで誕生日なんか嬉しくなかった。
    また1年経ってしまったんだ…
    そんな感じだったが、この日だけは特別な気がした。

    2008-10-14 05:29:00
  • 222:

    名無しさん


    朝方5時半。
    緊張しながら足音を立てずに静かに玄関まで歩くた。
    新しいスニーカーの紐を結んでいると、急にトイレから流れる音が聞こえてくる。
    トイレは玄関近く。

    2008-10-14 05:30:00
  • 223:

    名無しさん

    ヤバイと思った時にはもぅばっちり目があった。
    新聞片手に出てきた寝癖のついた親父と。

    『どこに行くんだ』
    『………ツレと旅行』

    2008-10-14 05:30:00
  • 224:

    名無しさん

    『学校は?』
    『………。』
    無視して靴紐を手際よく結び、バッグを持ち上げると素早くドアに手をかけた。
    『裕介』
    少しだけドアを開き足で押さえる。

    2008-10-14 05:31:00
  • 225:

    名無しさん

    『なんだよ?』
    『誕生日、おめでとうな』
    優しく笑う親父。でも、どこか……
    『…おぅ』
    気付かないフリをして素っ気なく俺は出ていった。

    2008-10-14 05:32:00
  • 226:

    名無しさん


    4年前の11月4日。

    封印された俺の本当の誕生日。
    .

    2008-10-14 05:33:00
  • 227:

    名無しさん

    あん時、親父は分かっていたのかな。
    ガキの考える事なんて。
    4年経った今でも、誇れる物は何もないガキだが。

    2008-10-14 05:34:00
  • 228:

    名無しさん


    純粋に俺を思って行かせたのか。

    それとも、俺を不憫に思って行かせたのか。
    .

    2008-10-14 05:35:00
  • 229:

    名無しさん




    ――…答えなんて聞きたくもない。
    .

    2008-10-14 05:36:00
  • 230:

    名無しさん




    .

    2008-10-14 05:37:00
  • 231:

    名無しさん



    『お客さん、もぅ着くよ。お客さん、お客さん、どこに行けばいいですか?お客さん、起きて下さいよ。お客さん』
    足を組んだまま寝てたみたいで、意識がハッキリする頃には左足が痺れていた。

    2008-10-14 05:38:00
  • 232:

    名無しさん

    『〇〇病院まで』
    タバコに火をつけようと1本くわえたままライターをさがす。
    ジャケットのポケットに手応えを感じると
    『お客さん、禁煙です』
    『………』

    2008-10-14 05:39:00
  • 233:

    名無しさん

    サービスの悪いタクシーだ。
    やれ禁煙だの、分煙だの。
    ここ数年でスモーカーには住みにくい世の中になったと思う。
    『すみませんね、会社の車なんですよ』
    『………』

    2008-10-14 05:41:00
  • 234:

    名無しさん

    一旦煙草を口から離し大きくため息をついた。

    ――カチャンッ。シュッ…シュッ…

    『お客さん、お客さん、禁煙ですって』

    2008-10-14 05:42:00
  • 235:

    名無しさん

    ――シュッ。シュボッ。

    『あ、勘弁してください、ホント。お願いしますよ』

    ――スゥ-…。……スパー…

    2008-10-14 05:43:00
  • 236:

    名無しさん

    『お客さん、困りますよ、お客さん…』

    車内には白い煙りが漂う。
    窓を開け、何やら小言をいう運転手に『1本だけ』と無愛想にお願いしてみる。
    しぶしぶ許しが出た頃にはもぅ病院のすぐ近くだった。

    2008-10-14 05:44:00
  • 237:

    名無しさん


    『おつりはいいですから』
    少し機嫌の悪そぅな運転手は黙って頭を下げ、
    『ありがとうございました』
    と事務的な挨拶だけして去って行った。

    2008-10-14 05:50:00
  • 238:

    名無しさん

    更新終わります。
    >>229から書きました。

    2008-10-14 05:54:00
  • 239:

    名無しさん


    『裕介!』
    手術室の前で前屈みで祈る母親の顔はどこか血の気がひいて見えた。
    4年ぶりに見ると、なんだか母親の背中は小さくなった気がする。
    姉貴は目にいっぱい涙を溜めていた。

    2008-10-18 03:08:00
  • 240:

    名無しさん

    『お父さん、まだ手術中で…裕介…』
    姉貴は言葉を飲んだ。
    俺は姉貴から目を逸らす。
    『……親父はもぅ助からない』
    俺の言葉を聞いた母親は大声を上げて泣き出した。

    2008-10-18 03:12:00
  • 241:

    名無しさん

    姉貴も俺の前でへたりこんで、静かに顔を覆った。
    俺は姉貴の背中をさすり、母親の横に座らせてから
    『……煙草吸ってくる』
    と喫煙所に向かった。
    背中から姉貴の声も母親と共鳴するかの様に混じって聞こえた。

    2008-10-18 03:18:00
  • 242:

    名無しさん

    振り返る事なく足を進める。
    俺は悲しいのか悲しくないのか分からない。
    ただ、胸が靄々するというか、逆にからっぽというか…この気持ちを適切に表す言葉はない。
    今までに感じた事のない感覚だった。
    親父はもぅすぐ…死んでしまう。

    2008-10-18 03:23:00
  • 243:

    名無しさん

    喫煙所に着くと、調度親父と同じ歳ぐらいの男が一人と若い女が居た。
    二人とも私服な所を見ると見舞い客だろうか。
    俺は距離をとって煙草をくわえ、火を付ける。
    ――カチッ。カチッ。カチッ。
    なかなか火のつかないライターに苛々する。

    2008-10-18 03:28:00
  • 244:

    名無しさん

    『良かったらどうぞ』
    女がライターを差し出している。
    『あ、すみません…』
    俺は好意を踏みにじってはいけないと、軽く会釈して受け取ろうとしたが、手が滑りカシャンと音を立てて足元に落ちた。
    慌てて拾いあげ、素早く火を付ける。
    軽くだけライターを掃ってから女に返した。

    2008-10-18 03:35:00
  • 245:

    名無しさん


    【略部】

    軽くライターを掃ってから女に返した。

    2008-10-18 03:37:00
  • 246:

    名無しさん

    すると女は『あげる。どーせ店のライターだから』と受け取らない。
    そのまま女は煙草を消し、喫煙所から出ていった。
    貰ったライターをポケットに突っ込んで、煙草を一旦口からはなすと、鼻から口から煙りを吐く。
    メンソールで鼻がスッとする。
    右手がなんだか気持ち悪かった。

    2008-10-18 03:43:00
  • 247:

    名無しさん

    見ると、煙草を持つ手は小刻みに震えている。
    落ち着かないまま、1本吸ってはまた次に火をつけ…
    何人かが出入りするのをボヤッとした視界で見ていた。
    5人めが出て行った頃に、目と鼻を真っ赤にして姉貴が俺を呼びに来た。
    『……手術終わったよ…』

    2008-10-18 03:48:00
  • 248:

    名無しさん

    力無い姉貴の声。
    『……おう』
    言葉無く後ろをついて歩いた。

    .

    2008-10-18 03:51:00
  • 249:

    名無しさん

    それからは大変だった。
    泣き崩れる母親をなだめ、姉貴と俺で通夜、葬式の手配。
    喪主である母親はずっと泣いていた。
    ずっと。
    ずっと。

    2008-10-18 03:55:00
  • 250:

    名無しさん

    親父の顔を思い浮かべては煙草に火を付け…何日か経ち、苦しい様なこの感情はだいぶ落ち着いた。
    ふいに響いたノックの音。
    『いいよ』
    扉を開けたのは姉貴だった。
    葬式後は誰も口を聞いていない。

    2008-10-18 04:03:00
  • 251:

    名無しさん

    少し窶れた姉貴は大分落ち着きを取り戻したみたいで、しずかにベットに腰を下ろした。
    『久しぶりだね、ウチに帰ってきたの』
    『……おう』
    『仕事休んでて大丈夫?』
    『……おう』

    2008-10-18 04:08:00
  • 252:

    名無しさん

    『相変わらず無口だね。ホストしてるっていうから、もっと話す様になったんだと思った』
    『……仕事は仕事だから』
    『そっか……』
    姉貴は指先を落ち着きなく動かしていた。
    異様な空気が流れる。

    2008-10-18 04:12:00
  • 253:

    名無しさん

    部屋には壁時計の秒針の音だけが響く。

    そのまま何分が経ったのかわからないが、会話がないまま、新しい吸い殻が3本増えた。
    『……まだ見えるんだね』
    『………………おう』

    2008-10-18 04:17:00
  • 254:

    名無しさん

    【訂正】
    >>256
    誤⇒――カチッ。カチッ。カチッ。
    正⇒――シュッ。シュッ。シュッ。
    すみません、ライターの種類が変わってしまってました m(__;)m

    2008-10-18 04:23:00
  • 255:

    名無しさん


    >>252から書きました。
    更新終わりますm(__)m

    2008-10-18 04:26:00
  • 256:

    名無しさん

    読んでます?
    書き方も綺麗し面白い?
    てゆーか気になる?
    又更新待ってます?
    おやすみなさい?

    2008-10-18 04:34:00
  • 257:

    名無しさん

    ありがとうございますm(__)m
    ほめて頂けて感激です(>_

    2008-10-19 22:35:00
  • 258:

    名無しさん

    『もぅ見えなくなったって…嘘だったんだね』
    『………』

    俺は物心ついた時から、不思議な力があった。

    2008-10-19 22:36:00
  • 259:

    名無しさん


    ――まだ幼かった頃。

    ある日、母に連れられて姉貴と近くのスーパーに行った時の事。
    買い物を終えて、スーパーの前の交差点に立った時、横断歩道の向こう側に自分と同じ年頃の男の子を見つけた。

    2008-10-19 22:38:00
  • 260:

    名無しさん

    男の子は小さなボールを持っていたが、ボール以上に気になった事があった。
    男の子の周りには、赤い靄みたいな不思議なオーラが見える。
    突然、超音波かと思うくらいの耳鳴りがしたかと思うと、急に頭の中に映像が飛び込んできた。
    男の子は手を滑らせ、落としたボールを追い掛けて車道に飛び出し……宙に舞う姿が。
    『お母さん、あの子、車にひかれて死んじゃうよ!』

    2008-10-19 22:40:00
  • 261:

    名無しさん

    男の子を指差し母のスカートの裾を引っ張った時だった。

    ――キキキィーッドンッッ!!

    .

    2008-10-19 22:44:00
  • 262:

    名無しさん

    ブレーキ音と共に視線を向けると男の子は宙を舞った。

    ――ドサッ。

    目の前の光景は俺の頭に飛び込んで来た映像を忠実に再現したのだ。

    2008-10-19 22:45:00
  • 263:

    名無しさん

    辺りは騒然となった。
    アスファルトに叩き付けられた男の子の首は変な方向を向き、投げ捨てられた人形の様だったのを覚えている。
    『お母さん……』
    母親の顔を見上げると、母親は困惑した表情をして、男の子ではなく俺を見ていた。
    人が集まる交差点を母にすごい力で手を引かれ、その場を離れる。

    2008-10-19 22:46:00
  • 264:

    名無しさん

    『痛いよ、お母さん!』
    母親は手の力を緩め、歩みを止めた。
    『お母さん、男の子ひかれちゃったよ!裕ちゃんが言った通りだった!』
    姉貴がそう言うと、母親は姉貴の頭をはたいた。
    突然の事に姉貴は頭を押さえて泣き声をあげる。

    2008-10-19 22:47:00
  • 265:

    名無しさん

    『いい、今日見た事は誰にも言っちゃダメよ!裕介、美幸、絶対よ!!』
    しゃがみ込んで俺を見る母親の顔には、すごい汗の玉が浮かんでいた。
    俺は何か悪い事をしたんだと、母親の怖い程真っすぐな目を見て思った。
    それからは、母親の言いつけを守り、死の映像を見ても黙っていた。

    2008-10-19 22:48:00
  • 266:

    名無しさん

    最初は毎晩夢に見てうなされたが、段々とそれも減り、悪夢は何日かに一度になった。
    それからの何年かで、靄みたいな物は、最初は赤くない事がわかった。
    隣のおばさんに、最初は白い靄がかかっていた。
    日毎にその靄は黒く染まっていく。
    そして、最後におばさんに挨拶をした朝。

    2008-10-19 22:50:00
  • 267:

    名無しさん

    靄は赤く染まっていた。
    見え出してから5日め。
    夕方、学校から帰るとパトカーが何台か止まっていて、近所の人が集まっていた。
    おばさんは、借金を苦に自ら命をたったらしい。
    その確信を姉貴に打ち明けると、姉貴は俺を気味悪がったが、小さい時の事故を思い出し『絶対に人に言うな』と念を押す。

    2008-10-19 22:51:00
  • 268:

    名無しさん

    それから何年か経ち、事件は起きた。
    中学1年の時。
    仲良くしていた倉本に靄がかかっていた。
    信じられなかった。
    俺はいてもたってもいられず、倉本に嫌な予感がするから気をつけろと注意した。

    2008-10-19 22:52:00
  • 269:

    名無しさん

    変な奴だと俺を笑うだけで、特に気にも止めてないみたいだった。
    3日が経ち。
    4日が経ち。
    真っ黒になった靄。
    近々赤く染まるだろう、死期を知らせる靄。

    2008-10-19 22:55:00
  • 270:

    名無しさん

    何も知らず明るく笑う倉本の顔。
    やるせない気持ちでいっぱいだった俺は能力を打ち明けた。
    倉本は最初は笑って聞いていたが、自分が死ぬかもしれないと聞いて俺を突き飛ばした。
    『あんま笑えねぇ冗談言うんじゃねーよ!』
    階段をアイツが降りかけた時、靄は赤くなった。

    2008-10-19 22:56:00
  • 271:

    名無しさん

    耳鳴りがして、頭に飛び込んでくる残酷な最期の姿―…
    『危ないっ!お前、階段から落ちて死ぬんだよっ!階段から離れろ!』
    咄嗟に叫ぶ。
    倉本は俺の方を振り返り、

    2008-10-19 22:58:00
  • 272:

    名無しさん

    『いい加減にしろよっ!』
    と怒鳴り捨て階段を降りて行った。
    周りにいた同級生達が俺達を見てヒソヒソザワザワと何か言っている。
    視線が痛くなって俺も階段を下りようとした時――…
    .

    2008-10-19 22:59:00
  • 273:

    名無しさん

    『うわぁあーっあっ…がっ……』

    ――ドサドサッ。ドサッ…

    『きゃ――――――!!!』

    2008-10-19 23:01:00
  • 274:

    名無しさん

    すぐ下から聞こえた女子の叫び声に心臓が大きく鳴る。
    震える足で、手摺りを頼りに階段を下り、踊場をまがると……

    俺が見た映像と同じ光景が目の前に広がった。
    倉本は、俺が言った通り階段から落ちて死んだ……

    2008-10-19 23:01:00
  • 275:

    名無しさん

    一旦、更新終わりますm(__)m
    >>271から書きました。

    2008-10-19 23:05:00
  • 276:

    名無しさん

    それからは同級生達が俺を避ける様になり
    『死を予言する』
    そんな噂はいつしか
    『人を言った通りに殺せる』
    という噂に変わり、近所からも白い目で見られる様になった。

    2008-10-20 00:29:00
  • 277:

    名無しさん

    だから俺は友達が居なかった。
    姉貴まで虐められるようになった。
    昼夜問わず無言電話が鳴り、母親はため息をよくつくようになった。
    父親はただ黙っていた。
    だが、誰一人俺を責める事はなかった――…

    2008-10-20 00:30:00
  • 278:

    名無しさん


    中学卒業間近。
    俺は家族に不思議な靄は見えなくなったと嘘をつく。
    安心するというより、
    『辛かったね、もぅ介抱されるね』

    2008-10-20 00:31:00
  • 279:

    名無しさん

    辛かった。
    俺を『化け物』と殴り、うすら笑いを浮かべる連中を殺したいくらい憎んだ。
    そんな中、リーダー格の一人に靄がかかっていた。

    ――…ザマァミロ………

    2008-10-20 00:34:00
  • 280:

    名無しさん

    黙って暴力に耐えた。
    靄を眺めながら。
    靄が赤くなった日、ソイツを見ると最期の姿が見えた。
    最後の最後まで俺を殴っている姿が。
    昼休み、後者裏に連れて行かれ、3人に暴行を受ける。予知通り。

    2008-10-20 00:36:00
  • 281:

    名無しさん


    痛い。痛い。痛い。
    早く死んでしまえばいい。
    早く。早く。早く。早く。
    .

    2008-10-20 00:37:00
  • 282:

    名無しさん


    『柏木ぃ!お前、今日死ぬんだよ!!』

    気付いたら叫んでいた。
    憎い柏木は寝転がる俺の腹を踏み付ける。

    2008-10-20 00:38:00
  • 283:

    名無しさん

    痛みに目を閉じ、歯を食いしばる。
    まだか、まだかと柏木の顔を見た。

    柏木の頭の上空に、植木鉢。
    .

    2008-10-20 00:39:00
  • 284:

    名無しさん


    『まじキモいんだよ、おま―』

    ――ガシャン!!
    .

    2008-10-20 00:40:00
  • 285:

    名無しさん

    植木鉢は柏木に命中し砕け散った。
    膝から倒れた柏木の頭から、徐々に範囲を広めていく血の池。

    『きゅ、救急車っ!!』
    慌てふためく奴ら。

    2008-10-20 00:40:00
  • 286:

    名無しさん


    ざまぁみろ。
    ざまぁみろ。
    ざまぁみろ。
    .

    2008-10-20 00:41:00
  • 287:

    名無しさん


    『っ…は…はっ…はははははっ!……ハーッハッハッハッハハハハ!!』

    笑いが止まらない。
    .

    2008-10-20 00:42:00
  • 288:

    名無しさん



    ――…俺の中で何かが切れた。

    .

    2008-10-20 00:43:00
  • 289:

    名無しさん

    ただ、見えただけだ。
    特に警察からは何も言われなかった。

    俺は毎朝、制服を着て家を出ては学校に行ってると装い、駅のトイレで鞄につめた私服に着替えてバイトに行った。
    もう学校に行く気は無い。

    2008-10-20 00:59:00
  • 290:

    名無しさん


    早く、誰も俺の事を知らない街に行こう。

    決行の日は
    200X年11月4日。

    2008-10-20 01:01:00
  • 291:

    名無しさん





    .

    2008-10-20 01:03:00
  • 292:

    名無しさん

    『でも、まぁ元気にしてるみたいで良かった』
    姉貴は『それだけ』と部屋から出ていった。

    .

    2008-10-20 01:13:00
  • 293:

    名無しさん


    次の日。
    夜の歌舞伎町。
    そこにホストの俺が居た。
    『親父さんの事で凹んでんだろっ!飲みに行こうぜ!』

    2008-10-20 01:15:00
  • 294:

    名無しさん

    隣にはやけに明るい同期の大翔[ハルト]。
    一応、当店No.1。
    『〜〜そんな事言って営業に付き合わせたいだけだろ』
    『あっはー☆いいじゃん、いいじゃん♪』
    既に居酒屋でテンションが上がっている。
    こんなんでも仕事になると別人になるんだから、不思議だ。

    2008-10-20 01:16:00
  • 295:

    名無しさん


    【略部】兼、修正m(__)m

    こんなんでも仕事になると別人になるんだから、驚きだ。

    2008-10-20 01:18:00
  • 296:

    名無しさん


    終わります。

    今日は>>271から書きましたm(__)m

    2008-10-20 01:39:00
  • 297:

    名無しさん

    面白いです?
    続き楽しみにしてます??

    2008-10-20 01:57:00
  • 298:

    名無しさん

    ありがとうございます(>_

    2008-10-20 02:11:00
  • 299:

    名無しさん

    『まぁまぁ☆行こーぜ!』
    『…ったく、調子イイなお前』
    大翔の後ろをついて歩くと、一軒のキャバクラについた。
    大翔はウキウキしている。
    『失礼しまぁす☆』

    2008-10-20 14:53:00
  • 300:

    名無しさん

    樹里がビールをつぎながら、ワザとらしい上目使いで俺の顔を覗きこんできた。
    【美咲】とは俺の源氏名。
    『そうだけど…会った事あった?』
    『いやいや!大翔君も美咲君も有名だから知ってるだけでぇ〜、やっぱカッコイイねぇ〜☆惚れちゃいそぉ』
    キャッキャッと笑う樹里。

    2008-10-20 14:54:00
  • 301:

    名無しさん

    俺を有名だと言い切るなら、ホスト好きに違いない。
    東京での俺には【ホスト美咲】の顔しかない。
    知っているなら話は早い。
    営業をかけてみようかと思ったが、樹里の甘ったるい喋り方がいちいちカンに障るのでやめた。
    ハルトが舞を指名するとか言い出した時。

    2008-10-20 14:55:00
  • 302:

    名無しさん

    樹里が甘えて
    『美咲君に憧れてたし、ずっと隣に座ってたいなぁ』
    膨れた左頬に吐き気がした。
    『あはは、今日は大翔の付き合いだから。俺は自分の客しか指名しないって決めてるから、樹里ちゃんまたね☆』
    笑顔で断る。

    2008-10-20 14:56:00
  • 303:

    名無しさん

    指名だなんて冗談じゃない。
    『じゃあ今度、お店に遊びに行くからぁ〜』
    食い下がる樹里。
    ウザい、ウザいぞ、お前。
    『俺、女の子にはよく嘘つかれるから行動見るまで信じれないんだよね。今度行くとかじゃなくて、まず来てから言ってくれなきゃ…樹里ちゃんみたいな可愛い子なら特に。俺がハマっちゃいそうだから』

    2008-10-20 14:56:00
  • 304:

    名無しさん

    指名なんて入れるもんか。
    笑顔で樹里のくるくるとした毛先を弄ぶ。
    樹里は『可愛いなんて思ってないくせにぃ〜』と口では言うが、自信あり気な顔をしていた。
    こういう女が一番嫌いだ。
    結局、大翔は舞を指名したが、樹里は席を立った。

    2008-10-20 14:57:00
  • 305:

    名無しさん

    『あれ?お前、樹里ちゃん指名しないの??』
    舞とテーブル下で指を絡ませながら聞いてくる大翔の顔は、さっきと打って変わって仕事モードに入っていた。
    『客じゃないしな』
    『キャハハ!美咲君、ストレートだね』
    舞はハルトに指名をもらい、上機嫌。

    2008-10-20 14:58:00
  • 306:

    名無しさん

    『舞ちゃんなら指名入れたけど、大翔が気に入ってるみたいだし』
    『キャハハッうまいんだからぁ〜』
    3人で軽口を叩いていると
    『失礼します。恵です』
    落ち着いた雰囲気をまとった嬢がついた。

    2008-10-20 14:59:00
  • 307:

    名無しさん

    暗めの落ち着いた茶色の髪はサラサラのストレート。
    特に目が大きいとかじゃなく、バランスのとれた綺麗な顔立ちをしていた。
    キャバというよりは、クラブの方が似合いそうだ。
    『次、何飲まれます?』
    上品に笑う恵の手には空いたビール瓶。

    2008-10-20 14:59:00
  • 308:

    名無しさん

    『何飲みたい?』
    可愛くカクテルと言うかと思いきや、
    『焼酎かワインが飲みたいな』
    けっこう強気。
    ぶりっ子されてねだられるよりはマシかと思い

    2008-10-20 15:00:00
  • 309:

    名無しさん

    『じゃーワイン入れようか』
    営業スマイルで白ワインを頼み、俺は恵指名。
    恵をクラブに引っ張る為の営業。

    『カンパーイ☆』

    2008-10-20 15:01:00
  • 310:

    名無しさん

    驚いたのは恵の飲みっぷり。
    ワインがジュースの様に喉を流れこんでいく。
    一気した恵は
    『うまいっ☆』
    とオヤジの様な顔をして笑う。

    2008-10-20 15:02:00
  • 311:

    名無しさん

    『赤も飲む?』
    『飲む飲む!えーと、あ、名前聞いてなかった!何さん?』
    マイペースかつ、豪快。
    外見とのギャップがすごい。
    『美咲』

    2008-10-20 15:02:00
  • 312:

    名無しさん

    『女の子みたいな名前だね』
    『よく言われる』
    『今日は飲もうね!』
    やたらと恵みは酒をすすめてくる。
    恵の押しに負けて飲んでいる内、すこし頭がボォッとしてきた。

    2008-10-20 15:03:00
  • 313:

    名無しさん

    大翔が『今から別の営業』と帰った時、俺はほろ酔い気味で『後でな』とだけ見送った。
    大翔が帰り、俺と恵だけになった時、冷たいおしぼりと烏龍茶が出た。
    『酔い醒ましなよ、顔赤いよ(笑。』
    恵は俺の顔をぐいぐい拭く。
    『ちょっと酔った〜』

    2008-10-20 15:04:00
  • 314:

    名無しさん

    『ちょっと酔った〜』
    背もたれにだらしなく体重を預け、冷たい感触を楽しむ。
    恵は優しく微笑んでいた。
    『ねぇ、美咲君、恵を覚えてる?』
    グラスの水滴を丁寧に拭う指先が綺麗だ。

    2008-10-20 15:06:00
  • 315:

    名無しさん

    『……?』
    俺は恵の顔を見ながら首をかしげるも、全く覚えがない。
    『何日か前にライターあげたでしょ』
    恵が差し出したライターには確かに見覚えがあった。
    病院の喫煙所でもらったライターと同じ。

    2008-10-23 03:56:00
  • 316:

    名無しさん

    『ああ!あん時の!』
    『思い出した?』
    『化けすぎてわからんって!笑』
    『よく言われる〜(笑。』
    恵はあの日スッピンだったから、あんまり印象に残っていなかった。

    2008-10-23 04:06:00
  • 317:

    名無しさん

    たまたま大翔が選んだ店で、たまたま恵が居た。
    こんな偶然があるものなのか。
    『今日はヤケ酒気が済んだ?』
    目の前の完成型の恵は綺麗に笑う。
    『どういう意味?』

    2008-10-23 04:10:00
  • 318:

    名無しさん

    『なんかさ、あの時すごく苛々してたみたいだし、辛そうな顔してたから…気になって。あ、別に言いたくないなら聞かないよ?』
    どこか寂し気な恵の顔が気になった。
    『親父が死んだんだ…』
    自分の口から言葉が勝手に出た気がした。
    酒のせいか、やけに熱い目頭におしぼりを押し当てる。

    2008-10-23 04:19:00
  • 319:

    名無しさん

    『そっか……』
    恵は俺からワザと視線を下げた。
    俺を見ない様に。
    『死んで…ってか死ぬのはわかってたのに何にも出来ない自分に苛々して…』
    弱音を吐くのは嫌いだった。

    2008-10-23 04:23:00
  • 320:

    名無しさん

    格好悪くて。
    情けなくて。
    女の前での【美咲】には必要なかった。
    全部俺が作り上げた人格だったから。
    東京に出て来て、美咲の仮面を被らない日はなかったハズなのに…

    2008-10-23 04:29:00
  • 321:

    名無しさん

    気付けば、そこには裕介がいた。
    一度、溢れ出した涙は止まらない。
    子供みたいに泣いた。
    涙は温かかった。
    そんな事忘れるぐらい、俺は泣く事がなかった。

    2008-10-23 04:32:00
  • 322:

    名無しさん

    何人の死を見ただろうか。
    何の為に死が見えるんだろうか。

    恵は繋がらない俺の話しを黙って聞いていた。
    俺自身、何が言いたいかわからなかったが、ただ、黙って聞いていた。

    2008-10-23 04:37:00
  • 323:

    名無しさん

    しばらくして、涙は止まり、だいぶ落ち着きを取り戻した。
    もぅ言葉もでてこなかったが、俺は顔を上げれずにいた。

    ――…気まずい。
    .

    2008-10-23 04:40:00
  • 324:

    名無しさん

    急に冷静になって、自分が恥ずかしくなった。
    恵も対応に困ってるに違いない。
    ずっと口を開かないまま。
    『湿っぽくなってごめん!』
    沈黙に耐え兼ねたのは俺の方だった。

    2008-10-23 04:42:00
  • 325:

    名無しさん

    表面だけ笑顔で取り繕って顔を上げておもわず息をのんだ。
    恵は綺麗な顔のまま、静かに泣いていた。
    拭わない涙が頬を伝って落ちてはドレスに染みを広げる。

    2008-10-23 04:46:00
  • 326:

    名無しさん

    泣いていた俺につられてなのか、恵も何かあったのか。
    ボーイが気まずそうに伝票を持ってくるまで、
    俺の席では一切会話はなく、ただ2人で静かに泣いていた。

    何か不思議な気持ちだった。

    2008-10-23 04:53:00
  • 327:

    名無しさん




    『ただいま』
    『おかえりー』

    2008-10-23 04:59:00
  • 328:

    名無しさん

    あれから数ヶ月、スッピンの恵がそこに居た。
    俺は人生で初めて【彼女】が出来た。
    俺が悪夢にうなされても、恵が起こしてくれるおかげで俺は俺を保てていた。
    恵はチカラの事を知っていたが、そのことには俺が話題を出さない限りは特に触れてこなかった。
    恵と居ると止まっていた【裕介】の時間が流れていく。

    2008-10-23 05:06:00
  • 329:

    名無しさん

    何年ぶりかの、穏やかな時間だった。
    恵は他の女とどこか違っていた。
    何も言わなくても、何でもわかっている様な安心感があった。
    【美咲】でしか存在しなかった東京での俺に、
    【裕介】の時間をくれた。

    2008-10-23 05:42:00
  • 330:

    名無しさん

    【美咲】はもぅいらない。
    そう思い出した矢先だった。

    『なんか変わったね、美咲君』
    『そう?』

    2008-10-23 05:47:00
  • 331:

    名無しさん

    『うん、雰囲気が柔らかくなった』
    酒で顔を赤く染めた客に言われた。
    俺を変えたのは恵だとわかっていた。
    もぅ俺には居場所がある。【美咲】で在る意味はない。
    『そんな事ないよ』

    2008-10-23 05:51:00
  • 332:

    名無しさん

    『えーそう?』
    仕事も相変わらずNo.3で。
    今日もかわらず大翔が騒いで。
    酔ったフリして甘えてくる客を【美咲】は内心毒づきながら笑顔でかわして。
    ただ、変わったのは【裕介】だけだ。

    2008-10-23 05:55:00
  • 333:

    名無しさん

    来月には消えてしまう【美咲】に客はどーいう反応をするんだろうか。
    めんどくさいので考えない様にする。
    俺には関係ない。
    客の前からは黙ってフェードアウトしようと決めた。
    『俺、今月末で辞めるから』

    2008-10-23 05:59:00
  • 334:

    名無しさん

    その日の営業終了後。
    ミーティングで俺の言葉に1番驚いていたのは大翔だった。
    後輩達は困惑している。
    『黙って消えたいと、美咲からの希望もあるから他言無用で』
    オーナーは黙って俺の肩に手をかけてきた。

    2008-10-23 06:12:00
  • 335:

    名無しさん

    何故かオーナーに握手を求められ、大翔と続き、握手会のように後輩達が列を作る。
    『お前ら、最後の日にしろよ(笑。帰るわ』
    照れ臭くなって逃げるように店を出た。
    【美咲】としての4年。
    毎日通った店は確かに俺の居場所だった。

    2008-10-23 06:18:00
  • 336:

    名無しさん

    俺の生きながらに死んだ生活ももぅ終わった。
    もぅこの店は俺には必要ない。
    恵の待つ家へと急いだ。

    『おかえり』

    2008-10-23 06:22:00
  • 337:

    名無しさん

    『ただいま、遅くなってごめん』
    靴を無造作に脱ぎ捨て、出迎えてくれた恵に視線をあげると


    恵に白い靄がかかっていた。

    2008-10-23 06:26:00
  • 338:

    名無しさん

    片方だけ靴を履いたまま固まる俺に
    『どーしたの?疲れた?』
    といつもとかわらない恵。

    そんな……

    2008-10-23 06:27:00
  • 339:

    名無しさん

    恵が居るから俺は俺で居れるわけで。
    美咲は必要なくなって。
    来月には恵と新しい街で暮らして。
    いつか結婚して。
    年寄りになっても仲良くひなたぼっこして。

    2008-10-23 06:31:00
  • 340:

    名無しさん



    ――…恵?

    .

    2008-10-23 06:32:00
  • 341:

    名無しさん

    『やぁーね、何?酔ってんの?』

    意地悪く笑いながら頬を抓る恵。
    温かなこの手が、冷たくなるのはそう遠くない未来。

    2008-10-23 06:35:00
  • 342:

    名無しさん


    嘘だ。
    嘘だ。
    嘘だ。
    .

    2008-10-23 06:35:00
  • 343:

    名無しさん



    誰か、嘘だと言ってくれ。

    .

    2008-10-23 06:36:00
  • 344:

    名無しさん

    『恵、一週間くらい仕事休める?』
    『え?なに、イキナリ。今月いっぱいは頑張るって言ってあるから無理だよ』
    『……そぅ…だよな』
    『裕介、変だよ?』
    恵に悟られないように、自然を装うつもりが、うまく出来ない。

    2008-10-23 06:40:00
  • 345:

    名無しさん

    恵の顔を見るだけで泣きそうだった。
    食事もとらずに『体調が悪い』と布団に潜りこむ。

    恵には嘘はつかない約束だった。
    例え、それが何であれ。

    2008-10-23 06:43:00
  • 346:

    名無しさん

    だが、誰が言える?
    お前は数日後に死ぬと。
    死ぬとわかっていて、俺には何も出来ないのか…

    昼のワイドショーを観ながら笑う恵の声を遠くで聞きながら声を押し殺して泣いた。

    2008-10-23 06:46:00
  • 347:

    名無しさん


    『恵、仕事行ってくるね』
    布団にくるまってから一睡も出来ずに何時間も経っていた。
    恵が仕事に行くのはいつも19時頃だった。
    『…行ってらっしゃい』

    2008-10-23 06:50:00
  • 348:

    名無しさん

    俺は寝たフリをしながら力無く応えた。
    『体調悪いなら、今日はあんまりお酒呑んじゃダメだよ?』
    こんな時まで俺を気遣う恵。
    俺なんかどーなってもいい。
    神様が居るなら、どうか恵を助けてくれ。

    2008-10-23 06:53:00
  • 349:

    名無しさん

    そんな願いは届くはずがなく、寝室を後にする恵には靄がかかっていた。
    いてもたってもいられなくて、玄関まで恵を追いかける。
    『行くなっ!』
    恵は俺の顔を見て、驚いたのか目を白黒させていた。
    『どーしたの?』

    2008-10-23 06:59:00
  • 350:

    名無しさん

    『行くな……』
    恵を引き寄せ、力いっぱい抱きしめる。
    恵は『どこにも行かないよ』と腕をまわす。
    知らない間に俺はまた泣いていた。
    恵はこんなに元気なのに。

    2008-10-23 07:06:00
  • 351:

    名無しさん

    こんなに柔らかくて温かいのに。
    何故、恵が…


    『……靄が見えるんだ…』

    2008-10-23 07:08:00
  • 352:

    名無しさん

    恵が一瞬かたくなった気がした。
    『……どういう事?』
    恵がまわした手が、俺のスウェットの肩辺りを掴む。
    黙って泣く俺に
    『どういう事?!』

    2008-10-23 07:11:00
  • 353:

    名無しさん

    今度はハッキリと問う恵。
    『………』
    込み上げる涙で言葉にならない。
    恵は俺に体重を預けながら
    『…ちゃんと、説明してよ…』

    2008-10-23 07:13:00
  • 354:

    名無しさん

    泣き崩れていった。



    .

    2008-10-23 07:14:00
  • 355:

    名無しさん

    恵に靄が見えだして3日め。
    靄はグレーがかっていた。
    俺達はあれから、一度も外に出ていない。
    恵は店に連絡もせずに家にひきこもり、俺も店には行かず、ただ恵と過ごした。
    寝たい時間に寝て、起きたい時間に起きて。

    2008-10-23 07:17:00
  • 356:

    名無しさん

    一日に何回も恵は俺に靄の色を問う。
    俺は答えるだけ。
    恵は靄が見えだした日
    『死にたくない』
    と何度も唱えながら泣いた。

    2008-10-23 07:20:00
  • 357:

    名無しさん

    俺だって恵を失いたくない。

    【賭け】だった。
    もしかしたら、この能力で恵を救えるかもしれない。
    そう俺達は信じた。

    2008-10-23 07:22:00
  • 358:

    名無しさん

    恵は体は健康だった。
    最期の映像は靄が赤く染まるまで見えないが、きっと不運な事故か何かだとおもった。
    買い物も恐れて食事はデリバリーで済ませ、1日中テレビをつけっぱなしにして過ごす。
    だが、恵の靄は日を追う毎に黒く、暗く染まっていく。

    2008-10-23 07:26:00
  • 359:

    名無しさん

    締めまで頑張って下さい?気になって寝れない!

    2008-10-23 07:31:00
  • 360:

    名無しさん

    ありがとうございますm(__)m

    3話め、途中でグダッてしまってすみません(>_

    2008-10-23 07:48:00
  • 361:

    名無しさん

    まだ赤くない。
    まだ大丈夫。
    恵は死ぬはずがない。

    そんな気持ちと裏腹に濃くなる靄。
    期待は薄れていくが、願いは強くなる一方だ。

    2008-10-23 07:52:00
  • 362:

    名無しさん

    【略部】

    期待は薄れていくが、願いは強くなる一方だ。

    2008-10-23 07:53:00
  • 363:

    名無しさん

    そして、靄が見え出して5日め。
    『今は、何色?』
    恵にかかる赤い、鮮血のような靄。
    死の前兆。
    『…………赤』

    2008-10-23 07:57:00
  • 364:

    名無しさん

    接続がさっきからかなり悪いので更新遅くなりそうです(:_;)

    2008-10-23 08:05:00
  • 365:

    名無しさん

    恵は取り乱す事なく
    『そっか…』
    と呟いた。
    『今日を乗り切れば大丈夫!』
    恵は力無く笑い、小さく頷く。

    2008-10-23 08:07:00
  • 366:

    名無しさん

    俺は恵にかける言葉がなかった。
    恵がピザを食べたいと言うのでピザをとった。
    ピザを待つ間、恵は何か黙って考え混んでいる。
    俺は落ちつかず、冷蔵庫を開けては閉め、開けては閉め、お茶を出すまで数分かかった。
    グラス2つと恵の好きな緑茶を持ってリビングに戻る。

    2008-10-23 08:11:00
  • 367:

    名無しさん

    グラスになみなみとお茶をつぐと、恵は重い口を開いた。
    『裕介は恵の事、覚えてる?』
    『え?』
    恵の目には涙がたまっている。
    『覚えてないよね…』

    2008-10-23 08:13:00
  • 368:

    名無しさん

    恵は子供みたいにしゃくり上げながら泣く。
    『裕介ぇ、助けてよぉっ』
    にぎりしめた恵の拳が胸に当たっても、全然痛くなかった。
    泣き崩れる恵。
    『大丈夫、絶対死なせない』

    2008-10-23 08:20:00
  • 369:

    名無しさん

    俺は小さく丸くなった恵を包み込む。
    『恵っ、裕介の事っ、中学ん時から好きだったよっ…』
    『そんな昔から…ありがとう……泣くなって、俺が絶対に助けてやるから!』
    整わない息を飲み込みながら、恵は続ける。
    『裕介、絶対だよ!今度は裕介がっ、恵を、助ける番だよっ』

    2008-10-23 08:27:00
  • 370:

    名無しさん



    『恵っ、柏木をっ…裕介を助けたくて…恵が植木鉢落としたのっ…今度は裕介が恵を守って!』

    .

    2008-10-23 08:30:00
  • 371:

    名無しさん


    ――…何を言ってるんだ?

    頭が混乱してきた。
    まさか、まさか……

    2008-10-23 08:32:00
  • 372:

    名無しさん



    恵が柏木を殺した犯人だったなんて……

    .

    2008-10-23 08:33:00
  • 373:

    名無しさん

    突然、柏木が死んだあの日にフラッシュバックしたみたいに、頭に映像が流れた。
    最後に見上げた柏木の顔。
    その頭上には植木鉢。
    そして開いている校舎4階の窓から小さな白い手。
    ――…恵の手。

    2008-10-23 08:35:00
  • 374:

    名無しさん

    俺は突然吐き気に襲われて、洗面所にかけこんだ。

    ――ザァァァ…
    『うっ……』
    胃の中の原形をとどめていない残留物は、小さな排水溝へと飲み込まれていく。

    2008-10-23 08:39:00
  • 375:

    名無しさん

    吐くものがなくなっても、吐き気はおさまらず、その場に膝をついてやり過ごす。
    『裕介…?大丈夫?』
    真っ赤な靄を纏い、恵は俺の心配をする。
    それどころじゃないくせに……
    最期かもしれない時にまで俺を気遣う恵。

    2008-10-23 08:42:00
  • 376:

    名無しさん

    俺を想って手を血に染めた恵。

    もぅ頭がおかしくなりそうだ。

    ――ピンポーン

    2008-10-23 08:44:00
  • 377:

    名無しさん

    『……ピザ、来たね…』
    恵が玄関に向かう。
    ――チャリチャリ…カチャン。
    ドアチェーンの外れる音が鳴ったかと思うと、
    こめかみが激しく痛んだ。

    2008-10-23 08:46:00
  • 378:

    名無しさん

    人生で何度も付き合ってきた、嫌な耳鳴り。



    そして、恵の最期の姿――…

    2008-10-23 08:48:00
  • 379:

    名無しさん

    『恵っ!!開けるな!!』
    『なに…?』
    俺が叫んだ時にはもぅ遅かった。
    開け放たれたドア。
    振り返りながら倒れゆく恵。

    2008-10-23 08:50:00
  • 380:

    名無しさん

    恵の腹に、包丁の柄の部分が見えた。
    訪問者は、恵から包丁を抜き、また恵に振り下ろす。
    『やめろぉーー!!』
    足がもつれ、うまく歩けない俺は廊下をはいつくばった。
    目の前で、聞いた事もない低い唸り声をあげながら、何度も包丁の刃は恵の体に刺さる。

    2008-10-23 08:56:00
  • 381:

    名無しさん

    そして、恵の声は聞こえなくなった。
    『……恵……』
    廊下がやけに冷えて感じる。
    ピクリとも動かない恵の腹部は、赤く、赤く染まり……
    あの靄が消えた。

    2008-10-23 09:00:00
  • 382:

    名無しさん


    『美咲が悪いんだからぁっ!!』

    狂気地味た目は赤く充血し、返り血がやけに鮮やかに見えた。
    そこに立っていたのは【美咲】の客だった。

    2008-10-23 09:04:00
  • 383:

    名無しさん

    客が恵の血のしたたる包丁を俺に向けて、土足のまま上がりこんでくる。
    恵を失ったショックで、俺は動く事も出来ずに最期を覚悟した。


    .

    2008-10-23 09:07:00
  • 384:

    名無しさん

    『美咲、起きて』
    気がつくと俺は寝室の床に寝転がっていた。
    しかし、手足が動かない。
    腕は後ろ手に縛られ、足も何十にもロープで縛られていた。
    薄ら笑う客の目は、焦点が合わず気味が悪い。

    2008-10-23 09:10:00
  • 385:

    名無しさん

    『恵はっ!?』
    いきなり腹を蹴り飛ばされる。
    『あたし以外の女の名前呼ぶんじゃねぇーよ!!』

    ……こいつ、完璧に狂てる。

    2008-10-23 09:13:00
  • 386:

    名無しさん

    鈍い痛みに耐えながら、客を睨む。

    客は俺のベットに横たわり、満足気に俺を見下ろしていた。
    『いい子にしてないと、あんたも殺すわよ?』
    『殺せよっ!』

    2008-10-23 09:16:00
  • 387:

    名無しさん

    『……あっそう。』
    寝室から出て行ったかと思うと、手にウチの包丁を光らせながら戻って来た。
    その瞬間、左腿に激痛が走る。
    『殺すのはもっと後でね』
    客はクスクスと肩を揺らし笑う。

    2008-10-23 09:21:00
  • 388:

    名無しさん

    まるで心臓がそこにあるかの様に腿が脈打ち、赤い染みが徐々に広がる。
    痛みで体をよじると腿に深く刺さったままの刃が食い込んで余計に痛む。
    『いい子にしててね?シャワー浴びてくるから。血を落とさないと』
    奴は俺の頭をくしゃくしゃと撫で回し、寝室から出ていく。
    寝室のドアは開けたまま。

    2008-10-23 09:28:00
  • 389:

    名無しさん

    ――…恵、恵は?!

    痛む足を堪え、芋虫の様に体をよじり廊下へと首を伸ばす。
    玄関で恵が服を赤黒く染めて、最後に見たまんまの形で横たわっている。
    『ああああぁあ゛ーー!』

    2008-10-23 09:33:00
  • 390:

    名無しさん

    ベットの脚に、何度も何度も刺さったままの包丁をぶつける。
    ぶつける度に、肉が裂ける。
    血が滲むスピードも上がる。
    何度も繰り返す内、包丁は緩み、俺の腿から抜け落ちた。
    それを口にくわえ、なんとか上体を起こし、包丁を後ろ手に取った。

    2008-10-23 09:39:00
  • 391:

    名無しさん

    手がつりそうだった。
    なかなか上手く包丁が扱えない。
    肉ごと切りながら、ロープを必死に引く。
    その時、肘が横に開き、手に自由が戻った。
    手からは血がドクドクと滴っていた。

    2008-10-23 09:44:00
  • 392:

    名無しさん

    素早く俺は足のロープも切り、痛みなんて忘れて恵に駆け寄る。
    『恵っ…恵…ゴメンな』
    冷たくなった恵は、青白い顔をして、ピクリとも動く事はなかった。

    ――…もぅ恵は死んだ。

    2008-10-23 09:48:00
  • 393:

    名無しさん

    俺は恵に刺さった包丁を引き抜いて、風呂場に向かう。
    恵が動かなくなったのを見た時、もぅ一つ映像を見た。

    それは、赤い靄を纏って現れた客の最期の姿。
    シャワーを浴びながら、めった刺しにされて死ぬ、奴の顔。

    2008-10-23 09:52:00
  • 394:

    名無しさん

    『ぎゃーーー!!』
    俺は憎しみに任せて客を刺した。
    何度も、何度も―…

    やがて、シャワーの音だけが響き、客の靄は消えた。

    2008-10-23 09:57:00
  • 395:

    名無しさん

    包丁を投げ捨て、風呂場をでると、洗面所の鏡に真っ赤に染まった自分が見えた。
    自分の血と、恵の血と、奴の血で染まった俺。
    シャワーで半身だけずぶ濡れの俺。

    そして、赤い靄がかかった俺。

    2008-10-23 10:01:00
  • 396:

    名無しさん

    横たわる恵を、一度だけ抱きしめてベランダに向かう。
    俺の部屋は11階。
    眼下には汚い東京の街。

    頭から全体重をベランダの外になげだした。

    2008-10-23 10:06:00
  • 397:

    名無しさん


    ――…自分の最期もみえるんだ…


    痛みを感じる暇もなく、闇が俺を覆った。

    2008-10-23 10:07:00
  • 398:

    名無しさん



    ■靄/終わり■

    .

    2008-10-23 10:07:00
  • 399:

    名無しさん





    .

    2008-10-23 10:08:00
  • 400:

    名無しさん

    【訂正】
    >>410 この時点で、恵に包丁は刺さってませんでしたm(__)m

    ⇒廊下に落ちてた包丁を手に取り、風呂場に向かった。

    2008-10-23 10:15:00
  • 401:

    名無しさん


    3話め ちょっとグダッてしまって長かったですか??
    やっぱり100レス以内におさめた方が良いですか?
    ご意見、ご感想よければお聞かせ下さいm(__;)m

    2008-10-25 19:41:00
  • 402:

    名無しさん

    普通におもしろかったよ?もっと書いてほしい?

    2008-10-25 20:54:00
  • 403:

    名無しさん

    読んで下さってありがとうございます(:_;)
    長くなったので、飽きられてしまったのかと思いました?
    中盤から後半のグダリ癖とスマートすぎる展開どーにかしたいです(__;)ネタバレ‥‥
    次回、何か浮かんだら頑張ります(~_~;)

    2008-10-25 23:54:00
  • 404:

    名無しさん

    おもしろかったです?

    2008-10-26 10:33:00
  • 405:

    名無しさん

    楽しみにしてます??

    2008-10-26 15:40:00
  • 406:

    名無しさん

    ありがとうございます(;_;)?めちゃ嬉しいです?
    読み返してみたら変換ミス等、多かったので丁寧を心掛けますm(__)m

    2008-10-26 23:29:00
  • 407:

    名無しさん



    ■人形師■

    .

    2008-10-26 23:33:00
  • 408:

    名無しさん


    ◆CASE.1◆

    .

    2008-10-26 23:35:00
  • 409:

    名無しさん

    とある小さな街の古びた商店街。
    そこにあるどこか懐かし気な店は細い路地裏にある。
    看板もない、小さな入口には【OPEN】の掛札がドアノブにぶら下がっている。
    窓もない、その店を見つけたら勇気を出して入るがいい。
    人生を変える特別に出会えるだろう。

    2008-10-26 23:41:00
  • 410:

    名無しさん


    ――…チリンチリン…

    『いらっしゃいませ』
    ドアを開けると、少し埃っぽい匂いがした。

    2008-10-26 23:44:00
  • 411:

    名無しさん

    めちゃくちゃ面白いですよ?一番好きです?
    頑張ってたくさん書いて下さいね?

    2008-10-27 12:52:00
  • 412:

    名無しさん

    2008-10-29 08:39:00
  • 413:

    名無しさん

    新作楽しみ??

    2008-11-11 21:26:00
  • 414:

    名無しさん

    詳しくはこちら

    http://ac.la/onna

    2008-11-12 03:39:00
  • 415:

    名無しさん

    めっちゃおもろい?

    2008-11-12 14:46:00
  • 416:

    名無しさん

    放置すみませんm(__)m
    どぅも話に説得力が無いので■人形師■は書くの中断します(>_

    2008-11-27 12:41:00
  • 417:

    名無しさん



    ■暗薬屋■

    .

    2008-11-28 21:51:00
  • 418:

    名無しさん

    『この参考書は当店では扱っておりません。発注する事も出来ますが、数日かかってしまいます』
    『あ、そうですか。少し他の店も見るんでいいです』
    『申し訳ございません』

    2008-11-28 21:54:00
  • 419:

    名無しさん

    2フロアも使った駅前の本屋は、この街で一番の品揃えだ。
    僕は人込みが苦手だから、駅前にはめったに来ない。
    ここまでワザワザ足を運んだというのに今日はついてない。
    本屋を出てエスカレーターに乗る。
    両側は鏡ばりになっていた。

    2008-11-28 21:56:00
  • 420:

    名無しさん

    そりゃそうだ。一人で過ごす休み時間の友は参考書なのだから。
    この通りインドア派で、運動はからきしダメ。
    人見知りも激しく、軽く対人恐怖症ともとれる。
    まぁそれを寂しいとも思わないから別にどーでもいい。
    僕ははっきり言って地味だ。

    2008-11-28 21:58:00
  • 421:

    名無しさん


    本屋のビルを出ると、少し風が冷たかった。
    空はビルの合間が少し赤く、真上を見上げると小さく星が光ってみえる。
    10月も末になると、グッと冬らしくなる。
    今年は寒くなるのが早かったのもあるが。

    2008-11-28 21:58:00
  • 422:

    名無しさん

    少し身震いして、近くの別の本屋に足を延ばす。
    だが、記憶が曖昧で確かな場所が思い出せない。
    人込みを避け、勘を頼りに路地裏を通る。
    小さなカフェやエスニックな雑貨屋、安いシルバーアクセが並ぶ露店。
    初めて通るその道は、少し空気が違って感じられた。

    2008-11-28 21:59:00
  • 423:

    名無しさん

    辺りを見回しながら進むと、地下への階段がある雑居ビルがあった。
    1階は小さな不動産屋で、ガラスは汚れて曇っている。
    地下へ続く その階段の前には、壁にもたれかかる新しげな看板があり、古いビルに似合わず目をひいた。
    【 暗 薬 屋 】
    .

    2008-11-28 22:01:00
  • 424:

    名無しさん

    『なんて読むんだろう…』
    『アンラクヤですよ』
    『わっ!?』
    いつの間にか、隣に背の低い中年の男が立っていた。
    『まぁ、当て字ですが。薬屋です』
    男は丁寧な口調で、白い服を着ていた。

    2008-11-28 22:02:00
  • 425:

    名無しさん


    【略部】

    男は丁寧な口調で、白い服を着ていた。
    .

    2008-11-28 22:04:00
  • 426:

    名無しさん

    薬剤師なのだろうか。
    微笑む男につられて、つい僕も愛想笑いを浮かべる。
    『ただいま開店サービス中で、お好きな薬を無料で一つプレゼントしております。よければ中へどうぞ』
    『あ、いや、薬は必要ないんでいいです』
    僕は怪しげな店に入るのは嫌だった。

    2008-11-28 22:04:00
  • 427:

    名無しさん

    【暗】という漢字に不信感が募る。
    非合法ドラッグでも売り付けられたらとんでもない。
    それに、この仮面をつけた様な笑顔の男に微妙に威圧感を感じる。
    『あの、本屋に行く途中なんで失礼します』
    『おや、本屋なら駅前ですよ。何故こんな所に?』

    2008-11-28 22:05:00
  • 428:

    名無しさん

    『駅前に無かった本を、別の本屋に探しに行くんです』
    『なるほど。しかし、残念だ。もう一軒の本屋は、少し前に潰れてしまってますよ。駅の裏手にある本屋はご存知ですか?よければそこに行かれてはどうですか』
    『そうなんですか、ありがとうございます。駅の裏手ですね、探してみます』
    僕が軽く頭を下げ、踵を返すと『お待ちなさい』と呼び止められる。
    仕方なく足を止め、振り返る。

    2008-11-28 22:06:00
  • 429:

    名無しさん

    『駅裏は入り組んでいるので、よければ地図を差し上げましょう』
    正直、歩いて探せば済む話だが、場所が明確になれば余計な体力を使わずに済む。
    親切で言ってくれてるわけだし、踏みにじるのも気がひける。
    僕は地図を貰う事にした。
    『それでは、店へどうぞ』

    2008-11-28 22:07:00
  • 430:

    名無しさん

    『えっ?』
    男は手摺りをなぞりながら階段を下りて行く。
    『もぅ冷えるでしょう。地図は今から書くので、少し時間がかかるので、良ければ店で待って下さい』

    2008-11-28 22:08:00
  • 431:

    名無しさん

    階段中程で振り向き
    『大丈夫です。薬を売り付けようとなんてしませんから』
    とだけ付け足す。

    僕は少し不安ながらも男に続いた。

    2008-11-28 22:09:00
  • 432:

    名無しさん


       < 暗薬屋 >

    >>436から更新しました。
    中断しますm(__)m

    2008-11-28 22:11:00
  • 433:

    名無しさん

    階段を下りると、重そうな緑の扉があった。それは、昔の市営住宅の様な、丸いノブのもの。
    男が扉をひくと、キィッと小さくきしむ。
    『どうぞ、お入り下さい』
    招かれるまま、店に足を入れる。
    店内は薄暗く狭く、天井が低く感じられた。

    2008-11-29 12:02:00
  • 434:

    名無しさん

    広さは僕の部屋が2つ分くらいだろうか、勝手な見立てでここは10畳強とでも説明しておこう。
    ドラッグストアでも売っているような風邪薬や胃腸薬が棚に陳列されている。
    だが、開店したばかりにしては不自然な程、薬のパッケージには埃がたまっていた。
    男は店の奥に進みながら、僕を手招きする。

    2008-11-29 12:03:00
  • 435:

    名無しさん

    『こちらへ。今、お茶を入れますから』
    『そんな、おかまいなく』
    男がしめす先にはカウンターがあり、前には3つ木製の脚の長い椅子が並べてあった。
    カウンターには等間隔にアロマキャンドルに火が燈されていて、オレンジの光りの中に僕の影が黒く大きく揺れる。
    1番端の椅子に腰かけて、カウンターの中にある のれんの奥に消えたこの店の主人を待つ。

    2008-11-29 12:04:00
  • 436:

    名無しさん

    携帯を取り出して時刻を確認すると、18時40分。
    うちの母は専業主婦で、毎日19時には夕食が出来る。
    遅れる連絡を入れないと。
    自宅の番号、発信ボタンを押して耳にあてるも、呼び出し音はならない。
    不思議に思い画面を確認すると圏外の表示が。

    2008-11-29 12:05:00
  • 437:

    名無しさん

    『電話ですか?ここは地下なので電波が入らなくて。よければ店の電話をお貸ししましょうか』
    コーヒーカップが2つ並んだトレーを持って男は戻ってきた。
    『あ、いや、別にたいした用じゃないんで大丈夫です』
    『そうですか、どうぞ、あたたまりますよ』
    男の差し出したカップの中は、黄土色をしていた。

    2008-11-29 12:06:00
  • 438:

    名無しさん

    『いただきます』
    僕は一口飲んで驚いた。
    そのコーヒーには砂糖は入ってなく、多めのミルクだけ。
    僕が普段好んで飲むコーヒーの味だ。
    『では、地図を書きましょうか』

    2008-11-29 12:07:00
  • 439:

    名無しさん

    男は僕の隣の椅子に腰掛け、メモ用紙にボールペンを滑らせる。
    『まず、ここが駅で…』
    丁寧に順をおって説明しながら、白い紙には道の線が増えてゆく。
    頷きながら、その地図を見入っていると、視界がぼやけてきた。
    霞み目かと思い、眼鏡を外して目をこする。

    2008-11-29 12:08:00
  • 440:

    名無しさん

    そこで僕は違和感を覚えた。
    眼鏡を外すと視界は良好で、眼鏡をかけると世界が曲がる。
    まるでいつもと逆だ。
    『効いてきた様ですね』
    男は手を止め、僕の顔を覗き込む。

    2008-11-29 12:09:00
  • 441:

    名無しさん

    『どういう事ですか?』
    『サービスですよ。眼鏡が重そうだったんで、目の薬をコーヒーに入れておきました』
    『えっ!?』
    『ああ、いやいや、漢方薬みたいなものですから変な薬ではないですよ。効能も3日程度です』
    たんたんと話しながらコーヒーをすする。

    2008-11-29 12:10:00
  • 442:

    名無しさん

    『…すごい効き目ですね、眼鏡をしないでこんなにハッキリ見えるなんて、小さい時以来です』
    『私の薬は特別ですから』
    目尻を下げ、しわを寄せながら彼は笑う。
    胸ポケットから出てきたアルミの名刺ケースから、一枚引き抜いて僕の前に出す。
    【 薬師 斉藤 健二 】

    2008-11-29 12:11:00
  • 443:

    名無しさん

    『気にいって頂けた様ですね、少し薬をわけて差し上げましょう』
    のれんの奥にまた消え、戻った斉藤の手には、手の平サイズの小瓶が握られていた。
    小瓶の中には、少し黄色がかった粉が半分程入っていた。
    『だいたい、2〜3日に1回、スプーンすりきり1杯で効きますよ。味はないので、何か飲み物に溶かしてどうぞ』
    『そんな、僕はお金もそんなにないし、頂けません』

    2008-11-29 12:11:00
  • 444:

    名無しさん

    薬を斉藤に返そうとしても、首を横に振り受け取らない。
    『いいんですよ、開店サービスのプレゼントです。駅前のドラッグストアが流行っているので、私の様な個人商店には、あまりお客さんは来ない。私は今日も一人で朝から店番をしていて退屈してました。こうして誰かと話したのは3日ぶりです。正直、少し寂しかったので、お茶に付き合って頂いたお礼です。どうぞ、お持ち下さい』
    『はぁ、ありがとうございます』
    悪い男ではなさそうだ。
    僕は薬を眺め、制服のポケットに入れた。

    2008-11-29 12:13:00
  • 445:

    名無しさん

    『では、続きを説明しますね』
    斉藤は再びボールペンを握った。


    数分後、僕は斉藤が書いた地図を手に店を出た。

    2008-11-29 12:15:00
  • 446:

    名無しさん

    『また近くに来たら寄ってくださいね』
    『はい、また寄らせてもらいます。親切にして頂いて、ありがとうございます』
    わざわざ上まで見送りにきた斉藤に頭を下げ、本屋に向かう。
    すっかり街は夜の顔になり、路地裏は殺風景だった。
    大通りに出ると、ネオンが少し眩しく感じられたが、今の僕は楽しかった。

    2008-11-29 12:15:00
  • 447:

    名無しさん

    眼鏡無しでのハッキリとした視界が嬉しくて、つい看板の文字を順に読みながら歩いた。

    .

    2008-11-29 12:17:00
  • 448:

    名無しさん


       < 暗薬屋 >

    >>453から書きました。
    中断しますm(__)m

    2008-11-29 12:19:00
  • 449:

    名無しさん

    僕はそれから斉藤から貰った薬を3日に1回飲んだ。
    薬は効き目抜群で、おまけに肌の調子も良くなっているのか、顔色がいい。
    眼鏡をかけなくていい生活は、僕に少しの開放感を与えてくれた。

    飲みだして一月程経ったある日。

    2008-11-30 06:01:00
  • 450:

    名無しさん

    『あっ!』
    薬の瓶は指先をかすめて床に落ち砕けた。
    薬が少し舞い上がる。
    瓶を片付け終わる頃には、薬を飲めなかった視界が歪みだす。
    『あーあ、また眼鏡生活か…』

    2008-11-30 06:02:00
  • 451:

    名無しさん

    久しぶりに触るレンズを磨き、黒ブチに囲まれた僕の世界。
    鼻の付け根にかかる、少しの圧迫感が気持ち悪い。
    眼鏡をかけて、3時間程 本を読んで過ごしていると、頭痛がしてきた。
    久しぶりの眼鏡のせいだろうか。
    しおりも挟まずに本をベットに投げ捨て、鞄の中から薄汚れたノーブランドの財布を引っ張りだす。

    2008-11-30 06:03:00
  • 452:

    名無しさん

    中身を確認すると、シワが入った千円札が4枚に、小銭が少し。
    財布をジーンズのポケットに突っ込んで、僕は 暗薬屋 に向かった。

    『すみません』
    『おや、君は…お久しぶりですね、今日はどうしました?』

    2008-11-30 06:04:00
  • 453:

    名無しさん

    斉藤は相変わらず丁寧な口調だった。
    店は暇らしく、客の姿はない。
    『あの、こないだの目の薬を買いに来たんです』
    斉藤がひいてくれた椅子に腰をおろし、上着のジッパーを下げる。
    『なくされたんですか?まだ数ヶ月はもつはずですが…』

    2008-11-30 06:05:00
  • 454:

    名無しさん

    『実は落としてしまって。でも、僕は眼鏡はもぅ嫌なんです。だから、今日はちゃんと客として買いにきました』
    『そうですか…困りましたね』
    僕に前と同じようにコーヒーを作り、机に置く斉藤の顔は、少し曇っている。
    『あの薬は、もう無いんですか?』
    『いえ、今から調合出来ますが…』言葉を濁す。

    2008-11-30 06:05:00
  • 455:

    名無しさん

    『そんな…ちなみにいくらぐらい?』

    2008-11-30 06:09:00
  • 456:

    名無しさん

    禁止ワードわからなくて、イライラしてきました(-.-;)
    変な事書いてないのに。
    文章かえてもラチがあかないので、空白挟みますm(__)m
    読みにくくなってすみません。

    2008-11-30 06:15:00
  • 457:

    名無しさん

    『…半 年 分 で 10 万 円です』

    2008-11-30 06:16:00
  • 458:

    名無しさん

    頭にパンチをくらったみたいだ。
    あの薬が、まさか そんな値段だなんて。
    確かに僕ではどうすることも出来ない。
    『じゅ、10万ですか?たかが薬で?』
    『はい、あの薬ば特別"ですから、半年飲み続けると効能は一生になります。レーザー治療よりは随分安くつくかと…』

    2008-11-30 06:17:00
  • 459:

    名無しさん

    『私はこの通り、暇を持て余しています。もし、あなたが私の話相手になって頂けるなら、3日に1度ここにお茶を飲みに来て下さい。薬を入れてお出ししますので』
    『えっ、それでも僕は5千円も持っていないんです。有り難い提案ですが…』
    『なに、お金はいりません。時々、お茶うけのお菓子を買ってきて下さるというので、いかがですか?』
    まったくおかしな話だ。
    10万の薬が、お茶菓子とおしゃべりで ただになってしまうなんて。

    2008-11-30 06:19:00
  • 460:

    名無しさん

    からかわれているのだろうか。
    僕が返事に困っていると
    『この店で1人で居る事に飽きたんです。私は独身ですし、帰っても1人。歳のせいですかね、近頃寂しくて…』
    斉藤は伏し目がちに、暗いかげをみせた。
    来客の無い、この暗い店に居ては、気分が沈むのも納得出来る。

    2008-11-30 06:20:00
  • 461:

    名無しさん


    こうして、僕と斉藤の不思議なお茶会が始まった。


    斉藤の店に通い出すと、意外と僕達は仲良くなった。

    2008-11-30 06:22:00
  • 462:

    名無しさん

    斉藤は堅い人間かと思いきや、ユーモアもたっぷり持ち合わせていた。
    昔流行った事や、薬品を使った完全犯罪の方法、若返りの薬に1億積んだ女優の話など、斉藤の話は引き込まれる何かがあった。
    話を聞きながら薬の入ったコーヒーや紅茶を飲み、僕が買ってきた菓子に舌鼓する。
    店に通いだして1ヶ月と経たない内に、僕は斉藤の前では楽に居れる様になった。

    2008-11-30 06:24:00
  • 463:

    名無しさん

    彼が気にしないというので、僕はもぅ敬語は使わなかったが、斉藤は丁寧な口調のままだった。
    もぅ、それが普通の話方になっているらしい。

    ―――――――――――――
    中断します >>469から書きましたm(__)m

    2008-11-30 06:26:00
  • 464:

    名無しさん

    文章がしっかりしていて、すごく面白いです?
    もしかして主様はモバでも書いていらっしゃる方ですか?

    2008-11-30 11:23:00
  • 465:

    名無しさん

    主サン忙しいんかなぁ??

    2008-12-03 06:38:00
  • 466:

    名無しさん

    待ってます?

    2008-12-04 02:37:00
  • 467:

    名無しさん

    あげ?

    2008-12-06 09:01:00
  • 468:

    名無しさん

    (^○^)

    2008-12-10 12:34:00
  • 469:

    名無しさん

    なかなか書けなくてごめんなさい(>_

    2008-12-13 10:19:00
  • 470:

    名無しさん


    お茶会が始まって、半年が経ったある日。
    『今日のコーヒーで、一生眼鏡とはおさらばですね』
    『あ、もぅそんなに経つんだ』
    斉藤の調合した薬は特別で、効き目は抜群…いや、絶対だった。

    2008-12-20 08:22:00
  • 471:

    名無しさん

    僕はこの半年、この店に通うのが楽しみだった。
    『薬は今日で終わりだけど、かわらず遊びに来てもいいかな?』
    『ええ、それじゃあ、今日から本当の友達になりましょう』
    『え?』
    『あなたは私の話を聞いては下さるが、あなた自身の話はあまりしませんね。次は是非、あなたの事を教えて頂きたい』

    2008-12-20 08:23:00
  • 472:

    名無しさん

    そう言われれば、そうだった。
    僕はいつも彼の話に夢中で、僕の話をしたことはあまりない。
    地味で毎日を平々凡々と過ごす僕には、自分の話等、なんの面白みもないからだ。
    しかし、弱った。
    いざ、話せと言われても、何を話せばいいのか。

    2008-12-20 08:24:00
  • 473:

    名無しさん

    斉藤がどんな話を聞きたがっているのか、皆目見当もつかない。
    黙って俯く僕を、彼は肩を少し揺らして笑う。
    『あっはっは、そんなに考え込まなくても。学校や、家族の話、愚痴でもいいですよ』
    『いや、なんか何から話そうかな…って』
    僕は少し照れて頭をかく。

    2008-12-20 08:25:00
  • 474:

    名無しさん

    視界はすこぶる良好。
    『それでは、質問してもいいですか?』
    『あ、そっちの方が話題が広がるかも』
    斉藤の質問は、家族構成や、血液型、誕生日など基本的な個人情報から始まった。
    僕はお見合いみたいだと、おかしくなって斉藤と笑い合った。

    2008-12-20 08:26:00
  • 475:

    名無しさん

    『それで、今好きな子はいるんですか?』
    『ええっ??』
    それは、13個めの質問だった。
    『私が君くらいの時は、女の子を意識して見たもんです。君は恋はしてないのですか?』
    照れる様子もなく、彼の目は僕から視線を外さない。

    2008-12-20 08:27:00
  • 476:

    名無しさん

    僕が笑い飛ばそうとすると、斉藤は不思議そうな顔をした。
    『何故です?気持ちを伝えてみたのですか?』
    彼の素っ頓狂な発言に肩の力が抜ける。
    『何故って…僕みたいな奴に告白されても彼女が困るだけだからね』

    2008-12-20 08:29:00
  • 477:

    名無しさん

    2009-11-04 07:42:00
  • 478:

    名無しさん

    あげ?

    2011-03-29 02:22:00
  • 479:

    バカ女

    面白いです
    プロの作家さン?ッて位に文章も構成の組み立てもしッかりされてて、素晴らしいです
    ファンになッてしまいました?

    2011-07-12 12:07:00
  • 480:

    名無しさん

    あげてみる

    2012-06-14 16:12:00
  • 481:

    名無しさん

    2012-09-10 12:40:00
新規レスの投稿
名前 (8文字まで)
E-mail
必須本文 (750文字まで)
◆◇短編◇◆を見ている人におすすめの掲示板

スレッドタイトルを対象とした検索ができます。
※スペースのあり、なしで検索結果は異なります。