小説掲示板君に幸あれのスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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君に幸あれ

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  • 1:

    今日は、なにをがんばろうかな…

    だって、がんばったらがんばったぶん愛してくれるんだよ?

    2008-11-11 16:42:00
  • 2:

    ※この小説は、ムックの「君に幸あれ」をヒントに構成しています。

    2008-11-11 16:44:00
  • 3:

    積み木をひとつひとつ重ねる。
    陽は傾き、橙色に頬が染まっていた。
    ━━━ガチャン。
    崩れた積み木が小さな音をたてる。
    「あーやっぱりまだ会えないや。」

    2008-11-11 16:47:00
  • 4:

    少女はポツリ、呟いた。
    その小さな体に似合わぬ重い空気を感じた紗弥加は、まだ小さな手を握った。
    「積み木遊びは今日はおしまいにしよっか?」
    少女は紗弥加の目を見ずに、俯き首を縦に振る。
    「…まだ早かったのかな。」

    2008-11-11 16:53:00
  • 5:

    紗弥加は一瞬、悲しい目になるのを隠せなかった。
    言葉の意味を理解していないフリをし、握る手に力を入れる。
    「お片付けしようね。」
    小さな手が握り返してきたそれは、強かった。
    「今日の晩ご飯はカレーだよ。好きだったよね?」

    2008-11-11 16:58:00
  • 6:

    「うんっ!」
    紗弥加を見上げた少女の笑顔は痛かった。

    二週間前にやってきた、少女の身体は無数の痣で染められていた。
    痩せ細って、まるで心まで痩せてしまったようだと紗弥加は思った。

    2008-11-11 17:03:00
  • 7:

    何かが足りない。
    愛を与えられないでも、こんなにも愛を持って待ち続ける少女には何が足りないのか。
    いつか分かる日が来る。
    少女自身が嫌という程思い知る日が来ることを。
    紗弥加は知っている。

    2008-11-11 17:08:00
  • 8:

    痛い程の愛情が、悲しい憎しみに変わることを。

    2008-11-11 17:14:00
  • 9:

    ━━━━━━━
    痛い痛い痛い。会いたいよ。
    今日も痛かった血がでてた。
    でも今は今日も会えなかった来てくれなかった。会えなかった。会えなかった。もう会えないの?
    嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき……

    2008-11-11 17:19:00
  • 10:


    ……積み木なんか壊してやる!!


    ━━━━━━━━

    2008-11-11 17:22:00
  • 11:


    少女が、愛情故の憎しみと知ることなく、憎み続けて生きる日々は、もう近い。
    紗弥加は少女の背中に優しく微笑んだ。

    ━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-11 17:27:00
  • 12:


    2話「本当の、僕」

    ━━━━━━━━━

    2008-11-11 17:33:00
  • 13:

    今日も疲れた。笑った笑った笑ってあげた。
    みんな何も知らない偽りの僕を見せてあげた。
    僕……?

    「おかえりなさい。今日も楽しかった?」

    2008-11-11 17:36:00
  • 14:

    彼は、その言葉をひどく嫌っている。
    毎日交わす会話の中で、恐れているようにも見えた。
    紗弥加は気づいていたが、彼の目はまるでおびえる子猫だった。
    「楽しくなかったのなら、それで構わないのよ?」
    紗弥加の笑顔に彼は、戸惑いを見せる。

    2008-11-11 17:46:00
  • 15:

    「う…ううん楽しかったよ!」
    必死な笑顔に紗弥加は真実を見る。
    「そう。明日も楽しいといいね。」
    彼が絶望色に染まっていくのが分かった。
    追いつめたい訳じゃない。
    紗弥加は、ただ気づいて欲しいと願った。

    2008-11-11 17:49:00
  • 16:

    そのすべて己だということに。

    2008-11-11 17:56:00
  • 17:

    ━━━━━━━
    違う!違う!あんなのは僕じゃない!
    いつも本当の僕はこうして泣いているんだ誰もそんなこと知らない。
    本当の僕は笑ってなんかいない、僕は本当の僕は、僕は……あいつらになんか見せてたまるか。僕は、
    ……本当の僕?

    2008-11-11 18:00:00
  • 18:

    ………僕は誰だ?

    誰が偽物?僕は…どこへ行った?

    ━━━━━━━━

    2008-11-11 18:02:00
  • 19:

    泣いている?
    違和感がある?本当は笑っていない?

    ………そのすべて、あなたでしょう。
    紗弥加は彼の閉じられた部屋の前で、小さく呟く。

    2008-11-11 18:06:00
  • 20:

    一生つきまとう。
    早く、気づきなさい。いや、一生気づかず苦しみ生きていくことを紗弥加は知っていた。
    本当の僕なんていない。それこそが、自分の作り出した幻想の僕だと、彼が気づく日は……

    ━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-11 18:09:00
  • 21:


    3話「大きな人形」

    ━━━━━━━━━━━

    2008-11-11 21:29:00
  • 22:

    「昨日もね、お父さん、お布団の中入ってきたんだ。」
    震える少女の肩は、細く白い。
    「お母さんは、きっと……知らないと思う」
    それ以上語らせぬよう、紗弥加は明るく微笑んだ。
    「今日は、ここでお姉さんと一緒に寝ようか?」

    2008-11-11 21:35:00
  • 23:

    「…いいの?」
    そう呟く少女はまだまだあどけなく、しかし影は濃かった。
    「手つないで寝てもいい?」
    幼すぎた少女の躰は、もう純粋と呼べないのだろうか。
    心にのしかかる影が汚した訳ではない。

    2008-11-11 21:39:00
  • 24:

    なぜ、この少女の心に影が残らなくてはいけなかった?
    なぜ、この世にこの少女が残らなくてはいけなかったのか。

    お母さんは、本当に知らなかったと思っている訳ではないことを紗弥加は知っている。
    この世を去らなくてはならなかったのは、父親ではなかったか。

    2008-11-11 21:43:00
  • 25:

    ━━━━━━━━━
    痛い。痛いよ。痛い痛い痛いよ。
    お父さんのおもちゃなの?人形なんかじゃないよ…痛い。
    …お母さんはどこ?
    お母さん……?

    2008-11-11 21:48:00
  • 26:

    お母さん、お母さん…お母さん行かないで……!!

    ━━━━━━━━━━

    「おかぁさぁああん!!」

    2008-11-11 21:52:00
  • 27:

    見上げた少女を上から睨めつけるように、母親はぶら下がっていた。
    まるで大きな人形かのようだった。
    愛すべきものを捨てた、というより愛すべきものに裏切られたんだと、その空虚な眼は語っていた。

    少女は、ただいつまでも見上げていた。

    2008-11-11 22:00:00
  • 28:


    「…やっぱりお母さんはね、」
    真夜中、少女は目覚めたのかいきなり口を開いた。

    「知らなかったと思う。」

    2008-11-11 22:05:00
  • 29:

    紗弥加は、ただ頭を撫でてやるしかできなかった。
    それは母に対する愛情なのか、人形と化した姿でさえも母であるのなら、なぜぬくもりを持つ父親は曲がった愛情しかなかったのか。
    それとも、父親のそれは曲がってなどいなかったのか。

    「お父さんもね、優しいんだよ」

    2008-11-11 22:09:00
  • 30:

    この先、父親以上に誰かを愛することがこの少女にできるのだろうか。
    母親を、父親を憎まず誰を憎むのか。
    ただ自分の心に影を背負わし続ける少女が、紗弥加には見える。

    ━━━━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-11 22:14:00
  • 31:

    ※3話のストーリーは、Dir en greyのembryoを元に構成しています。

    2008-11-11 22:17:00
  • 32:

    名無しさん

    意味わからん

    2008-11-11 23:08:00
  • 33:

    名無しさん

    うん。嫌悪感半端ない。
    お前の中途半端な文章で
    しょーもないこと書くな。

    2008-11-12 00:31:00
  • 34:

    名無しさん

    一話?短い話なのにも関わらず、?レス?の内容がスゴク奥深くて面白いと思います^^

    続きも楽しみにしているんで頑張って下さい☆

    2008-11-12 00:32:00
  • 35:

    >>32-33
    気分を害されたならごめんなさい。これからもこのようなストーリーが続く予定です。
    >>34
    ありがとうございます。

    2008-11-12 03:25:00
  • 36:

    4話「流るる、血」

    ━━━━━━━━━━

    2008-11-12 03:30:00
  • 37:


    ……あぁ、あったかい。感じる。
    生きてる。…赤い。流れていけ。

    ━━━━━━━━━

    2008-11-12 03:31:00
  • 38:

    名無しさん

    詳しくはこちら

    http://ac.la/onna

    2008-11-12 03:34:00
  • 39:

    腕から血を垂れ流した制服姿の少女は、白いカッターシャツを真っ赤に染めて立っていた。
    「痛くなんかないんだ。」
    消毒する紗弥加に、恍惚にも近い顔で話す少女。
    「悲しむ人もいないしね。」
    そう言った目は、悲しみに涸れていた。

    2008-11-12 03:35:00
  • 40:

    「…生きてるって思えるの。」
    紗弥加は、包帯を巻き終えると優しく問いかけた。
    「死にたい訳ではないんでしょう?」
    その言葉を少女がどう受け止めるか、紗弥加は分かっていた。
    「…死んじゃったら切れなくなっちゃう。」

    2008-11-12 03:41:00
  • 41:

    少女は言葉を続ける。
    「切るために生きてて、でもいつかその果てに死んじゃえたらなって思ってるの。」

    「…そう。」
    俯く少女のこたえも、本音ではないと紗弥加は分かっていた。

    2008-11-12 03:49:00
  • 42:

    両手両足傷だらけの少女。しかし深い傷はひとつもない。
    傷跡ばかりを残して、それに伴う痛みを感じず、それから滲む悲しみも感じていない。

    紗弥加は、この少女に教える必要があると思った。
    繰り返し流れる血でさえ、少女の命の一部であるということを。

    2008-11-12 03:58:00
  • 43:

    だから、少女のこの後の行動も覚悟の上で問いかけた紗弥加。

    知るか失うかは、少女に賭けるしかなかった。

    2008-11-12 04:03:00
  • 44:

    ━━━━━━━━━
    切ってやる!切るだけじゃない死んでやる!
    みんな、みんなみんな…死ぬ勇気もないと笑ってるんだ!
    切って死んで、後悔させてやる!!
    …死んで?私が死んでどうなるの……

    2008-11-12 04:07:00
  • 45:

    死ぬために切ったら、生きれない…

    私は生きるために切っていた…?

    ━━━━━━━━

    2008-11-12 04:12:00
  • 46:


    その晩、少女は21針縫うほどに腕を切り裂いた。

    少女は、涙溢れる目を静かに閉じていた。
    失くさずにすんだ命から、死を感じ生を知ったことを紗弥加は願う。

    2008-11-12 04:21:00
  • 47:

    死なくして生はありえない。生あれば死は避けられない。
    傷跡は、たとえ消えようとも心に永遠に残る。
    塞いだ傷が痛んだとき。耐えるかえぐりとるか、少女の未来は紗弥加も知らない。

    ━━━━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-12 04:29:00
  • 48:

    5話「骨」

    ━━━━━━━

    2008-11-13 02:22:00
  • 49:

    ……欲しい…欲しいよ…

    早く…なりたいんだ…血を巡る快感が……

    「その腕、どうしたの?」

    2008-11-13 05:28:00
  • 50:

    紗弥加の言葉に、彼女は少しの動揺を見せた。
    「い、…今はしてないよ。」
    細い腕をぎゅっと握った手は、骨が浮いている。
    「…そう。約束したものね。」
    紗弥加は追求はしないことにした。

    2008-11-13 05:37:00
  • 51:

    「信じてくれてるよね…?」
    震える声は、まるで深い暗闇の底から聞こえてきたよう。
    「…私を信じていればね。」
    紗弥加の言葉に彼女は、深い底に落ちたかのように俯いた。
    「前を見なくては、何も見えないわ。」

    2008-11-14 00:27:00
  • 52:

    去っていく彼女の後ろ姿は、まさに地獄へ向かう死者。
    信用ひとつで語れるなら、あんな姿になりはしなかっただろう。
    紗弥加が彼女と初めて会ったのは三年前。

    ふっくらとして健康的だった笑顔の少女は、注射ひとつで枯れ果てた。

    2008-11-14 00:49:00
  • 53:

    今となってはもう、きっかけなどないに等しい。
    以前の彼女を思い出すことも、たやすくはない。
    紗弥加は、信じることをやめるつもりも彼女を見捨てるつもりもなかった。
    ただ、見届けなくてはならない。

    2008-11-14 01:12:00
  • 54:

    理性と本能では語れない、欲望と依存の絡む成れの果てを。

    2008-11-14 02:00:00
  • 55:

    ━━━━━━━━
    だめだよ?…ひとりになっちゃうよ……
    …ちがうよもうひとりだよ。だから大丈夫。
    最後に。…最後にすればいいの
    だから…早く。

    2008-11-14 02:03:00
  • 56:

    大丈夫…みんなを裏切ってなんかいない。

    これがあるから私なんだから……

    ━━━━━━━━━━

    2008-11-14 02:07:00
  • 57:

    部屋で倒れているのを発見されたとき、彼女の腕には注射器が刺さったままだった。
    血はドロドロに詰まっていた。
    僅かに発見が遅れれば、命は失かったと聞かされた彼女の顔は、一筋の光を見つけたように紗弥加には感じられた。

    「…まだ…大丈夫だね…」

    2008-11-14 02:17:00
  • 58:

    巻き込まれた歯車が動き出せば、もう止めることはできないのか。
    失うものがひとつ、ふたつと増えるたびに彼女の脳みそを喰らう魔物も彼女は増やした。これ以上は……。
    しかし、紗弥加の目に映る彼女はまだ果てていない。

    ━━━━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-14 02:23:00
  • 59:

    ◆ZRTIlV/r3k

    あげ

    2008-11-16 21:05:00
  • 60:

    名無しさん

    あげ

    2008-11-17 02:09:00
  • 61:

    6話「憎悪」

    ━━━━━━━━━

    2008-11-17 04:42:00
  • 62:

    「あいつがさぁ…」
    「ギャッハハハ!」「なにそれ〜」
    「ありえなくね?」

    雑踏の中、耳を澄まさないでも聞こえてくる、群がる人間たちの声。

    2008-11-17 04:45:00
  • 63:

    ━━━━━ザワザワ……パァーッ!!……クスクス……ザワザワ……………


    紗弥加は、ひとり目を閉じ立っていた。
    聞こえるのは街の音、そして伝わってくるのは人間たちの心。

    2008-11-17 04:50:00
  • 64:

    歩き行くそれぞれが、言葉のない心を抱えている。
    暗い心。悲しい心。寂しい心。
    愛する心もあるのだろうが、紗弥加の心に響いてくるのは、どれも憎悪に満ちた醜い心ぱかりだった。

    ━━━━━憎い。

    2008-11-17 04:54:00
  • 65:

    友人と並んで歩く、黒い制服の少年。
    「まじ羨ましいよ!」
    ━━━━━━━━━━━
    こいつ、まじ金持ってるな…働いてもないクセに、親の金で遊びやがって。
    …俺なんかバイトしてもバイトしてもあいつに奪われて……憎い。憎い憎い…━━━━━

    2008-11-17 04:59:00
  • 66:

    彼女らしき女と手を繋ぐ、金髪の少年。
    「どうする?飯行く?」
    ━━━━━━━━━━━
    飯なんかどうでもいい、この女なに笑ってやがんだ…?俺の何も知らねーでついてきてんじゃねーよ!お前の価値はねぇ……なら俺の価値はこいつ以下か……?
    …憎い。一緒なんかじゃねー……憎い憎い憎い━━━━

    2008-11-17 05:05:00
  • 67:

    仕事を終えた、同僚と駅へ向かう女教諭。
    「先生のクラスをお手本にしようかなぁ」
    ━━━━━━━━━━━━
    あの糞ガキ共のせいでっ………私まで笑われる……あいつら、許さない。
    …私のせいなんかじゃない!!………憎い。憎い。憎い!━━━━

    2008-11-17 05:12:00
  • 68:

    スーツの男に連れられ、友人と歩く水商売風の少女。
    「え〜?だって2人ともNO.1なりたいもん〜」
    ━━━━━━━━━━
    この女、本気でてっぺんなれると思ってんの?……無理無理、あんたは底辺でいたらいーんだよ!
    ……あたしより売れようと思うなんて許せない、絶対勝ってやる!!……憎い憎い憎い…━━━━

    2008-11-17 05:20:00
  • 69:

    母親より一歩下がって歩く、少年。
    「わかってるよ、絶対合格するよママ。」
    ━━━━━━━━━━━
    吐き気がする。てめーのメス豚くせぇ行動も知らねぇと思ってんのか?俺の苦しみもわかっちゃいやしない……
    ……殺してやる…いつか………憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い……━━━━

    2008-11-17 05:26:00
  • 70:


    笑顔や笑い声の裏側に張りついた、重い心たち。
    紗弥加は目を開き耳を押さえた。

    今度は、歩く人々の憎悪が見てとれた。

    2008-11-17 05:30:00
  • 71:

    本人たちの意識下からなのか、気づいていないフリをしているのか。
    それぞれの胸でただ渦巻くだけの憎悪は、紗弥加の心に響くことで言葉を持つ。

    醜い心の正体を知ったとき、彼らは何を思い起こすのだろうか。
    気づかぬフリはできないであろう。

    2008-11-17 05:38:00
  • 72:

    自分を省みる?憎悪に流され、他人を傷つける?
    憎悪の果てに愛情を見出すことができれば……いや、愛情故の憎悪と知らぬ彼らの憎悪が辿り着く場所は…。
    紗弥加は、ゆっくり雑踏を振り返った。

    ━━━━━━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-17 05:40:00
  • 73:

    ◆ZRTIlV/r3k

    頑張れ

    2008-11-18 02:09:00
  • 74:

    名無しさん

    おもんない

    2008-11-18 02:28:00
  • 75:


    7話「空虚」

    ━━━━━━━━━━

    2008-11-23 11:11:00
  • 76:

    体が…生あたたかい

    感触も残ってる……顔も覚えてないのにね…

    でも……これであたしの……存在が初めて存在として生まれる。

    2009-01-28 21:56:00
  • 77:

    …あたしの価値はちゃんとある。

    ━━━━━━━━━

    「避妊はしているの?」
    紗耶香は、ミニスカートから伸びた細く白い足が自慢の少女に問い掛けた。

    2009-05-21 03:07:00
  • 78:

    「…たまにね。」
    そう言って少女は、ポケットから派手な柄のコンドームを出して見せた。
    「でも、相手は一人じゃないんでしょう?」
    静かに、けれど厳しく紗耶香は伝えた。
    少女の心の色が、見てとれた。

    2009-05-21 03:12:00
  • 79:

    暗く鈍った色。

    2009-05-21 03:13:00
  • 80:

    「誰か一人に愛されたい訳じゃないの。あたしが必要とする時にいてくれればいいだけ。」

    そう言って少女は紗耶香を背にし、部屋をでた。
    何が少女に必要なのか、少女が求めているものは何なのか───。

    2009-05-21 03:18:00
  • 81:

    「あなたの価値は。寂しさを埋めることでは生まれないわ。」
    そっと呟いた言葉の意味を、いつの日か少女が知ることが来るであろうか。

    一人ぼっちではないと誰かを求め、求めれば求め返されることに安心しては心に穴が開いていく。

    2009-05-21 03:24:00
  • 82:

    紗耶香は、知っていた。
    体で繋がらなければ心を感じられないことがいかに虚しいかを、少女自身、誰より解っていることを。

    ━━━━━━━━━
    ほら、今日もあたしを抱いてくれる人がいるのよ。…ぬくもりが……

    2009-05-21 03:32:00
  • 83:

    ……あたしにはそれだけの価値が…
    価値?あたしの価値は体を求められること…じゃあ?
    あたしだけの価値は…ないの?

    ━━━━━━━━━

    2009-05-21 03:34:00
  • 84:

    女と男。
    心がふたつでひとつになれるなら、重ね合わせた体のように心も重なり合うのなら。
    少女のように存在価値を体に投影せずにすんだのかも知れない。

    けれど、見えないものだからこそ寂しさでごまかしてはいけない。

    2009-05-21 03:37:00
  • 85:

    ひどく壊れそうな頭を抱えながら、今日も少女は携帯片手に体を通して心のぬくもりを盗みとる相手を探している。
    そうして広がっていく少女の心の虚ろな穴が、塞がる日がきますように。
    紗耶香は静かに、優しく微笑んだ。

    ━━━━━━━━君に幸あれ。

    2009-05-21 03:42:00
  • 86:

    u


    8話「蟲」 

    ________________

    2009-05-21 12:14:00
  • 87:

    何かが…私の中にいるの……止まらないの。

    ねぇ助けて…苦しいよ…!!

    ━━━━━━━━━━

    2009-05-21 12:24:00
  • 88:

    眠る少女の足元には、スナック菓子やパン、お弁当などが大量なゴミと化して散らばっていた。
    紗耶香はそれらを片そうとせず、ただ少女の細く小さな背中を見つめていた。

    「…また、、やっちゃったの。」

    2009-05-21 12:34:00
  • 89:

    少女は紗耶香の存在に気づいたのか、背中ごしに呟いた。
    声は震えていた。

    「そう。おいしかった?」

    「…もう嫌だよ…食べたくなんてないの…!」

    2009-05-21 12:37:00
  • 90:

    紗耶香は優しく少女の肩に触れた。
    「あなたは太ってなどいないわ。」
    少女がそれに納得しないことを知りながら、なお少女を追い詰めるように紗耶香は続ける。
    「今度、一緒においしいランチでも食べに行きましょう」

    2009-05-21 12:40:00
  • 91:

    紗耶香は優しく少女の肩に触れた。
    「あなたは太ってなどいないわ。」
    少女がそれに納得しないことを知りながら、なお少女を追い詰めるように紗耶香は続ける。
    「今度、一緒においしいランチでも食べに行きましょう」

    2009-05-21 12:40:00
  • 92:

    「…ダメよ。行かない…だって、私の中には何か…虫がいるもの。」

    少女の声を背中で聞きながら、紗耶香は部屋を出た。
    そして空を仰いだ。
    このどこまでも抜けていく青空のように、少女の食欲も底がないのだろう。

    2009-05-21 12:45:00
  • 93:

    しかしそれは、食べたい欲求からくるものではない。
    何かが足りないそれがわからない。
    だから少女は止まることない食欲を、自分の中にいる誰か、虫 がいるせいだと思い込む。

    そしていつか、「ぜんぶ吐けば虫も出ていく気がするの。」と虚ろな目で語っていた。

    2009-05-21 12:53:00
  • 94:

    ━━━━━━━━
    うぅ…なぜ?!みんな私を太らせようとするの…?
    嫌っもう食べたくない食べたくない食べたくない食べたくない…食べてはいけない?
    食べたい食べたい食べたい食べたい…
    埋めなきゃ。…何を?わからない

    2009-05-21 12:56:00
  • 95:

    食べれば埋まるの…ねぇ
    ほら..、虫が呼んでるから食べなきゃ……!

    もう…嫌なのに。

    2009-05-21 12:57:00
  • 96:


    ━━━━━━━

    少女は次から次へと、片っ端から口に入れてはろくに噛むこともせず飲み物で流しこんでいく。
    涙を流しながら、何かに憑かれたように動きを止めることはなかった。

    2009-05-21 12:59:00
  • 97:

    ──ザーッ

    ……虫。虫ね。蠢く心に巣食う何かは、確かに蟲なのかもしれない。

    紗耶香は、少女が流すたびにトイレから響いてくる音をドア越しに聞いていた。

    2009-05-21 13:02:00
  • 98:

    「うっオォエ…っ」

    その蟲が自分の中に存在する理由や、胃から吐き出し続けても蟲はいなくならないと少女が知る日は……まだまだ遠いのかもしれない。

    ━━━━━━━━━君に幸あれ。

    2009-05-21 13:14:00
  • 99:


    9話「落ちた花」

    ━━━━━━━━━

    2009-05-21 17:33:00
  • 100:

    えっちゃんはねっ…ママのお迎え待ってるんだっ

    だってママ言ってたもん!
    絶対来てくれるって!ほんとだよね…?

    2009-05-21 17:36:00
  • 101:

    ひとりには慣れてるから…
    ママ、待ってるよ…!

    ━━━━━━━
    「それは何の絵?」

    2009-05-22 02:34:00
  • 102:

    まだ幼く、けれど端正な顔立ちの少女は熱心に何かを描いている。
    ふっと一人、みんなから離れている少女に気づいた紗耶香は声をかけた。

    「えっちゃんの花なの!」
    少女は紗耶香を見上げ、あどけない笑顔で答えた。

    2009-05-22 02:37:00
  • 103:

    それは暗い穴の底にぽつんと咲く花の絵だった。
    真っ黒な背景にグレーの色の花。
    「えっちゃんね、いつもひとりなの」
    その言葉を聞いて、そういえばこの少女を良く思わない子供達が多いことを思い出した。
    「学校でもみんなここと一緒で、えっちゃん嫌われ者みたい」

    2009-05-25 16:36:00
  • 104:

    ──妬み。からくるいじめでもあるのだろう。
    この少女は、大人から見ても綺麗な顔をしている。

    紗耶香はふとこの少女がここに来たときのことを思い出した。
    母親は、妹を抱いたままこの少女の手を離した。

    2009-05-25 16:39:00
  • 105:

    種違いの妹、そして少女に幾多の傷を与えた新しい父親、それらから逃げるように新興宗教にすがった母親。
    この少女がどこまで知るかは分からない。
    だが自分が必要のない人間なのだとは、理解していたはずだった。
    それを証明するように少女は呟いた。
    「慣れてるからいいんだ。えっちゃん、おうちでもひとりだったもの」

    2009-05-25 16:49:00
  • 106:

    それでも少女が、いつか母親が迎えに来てくれると信じ待ち続けていることを紗耶香は知っている。
    そして、母親は面会にこそ来るものの、少女を再び家庭に迎えいれる日はこないだろうことも。

    「えっちゃんは優しい子よ。私は大好きよ」
    紗耶香は微笑んだ。

    2009-05-25 17:09:00
  • 107:

    少女は顔を明るくさせた。
    「ほんとっ?そんなこと言ってくれるの先生だけだよっえっちゃん嬉しい!」

    紗耶香は胸が痛んだ。
    慰め?同情?わからない。憐憫の思いがあったのは確かだった。

    2009-05-25 17:12:00
  • 108:

    その言葉を少女は素直に喜んだ。
    紗耶香を信じている。

    こんなに小さな体で、周りに誰もいない訳ではないのにひとりで生きてきた少女。
    そうそれはまるで、地に開いた穴に落ちたかのように。
    上には笑いながら生きる人間がいる。

    2009-05-25 17:15:00
  • 109:

    この先少女がその穴からはい上がれる日はこないかも知れない。
    いや、これからも落ちたままでひとり花を咲かせていくことを紗耶香は知っている。
    それでも素直な心を忘れずにいれるかは…──

    ━━━━━━━━━君に幸あれ。

    2009-05-25 17:18:00
  • 110:


    最終話「紗耶香」

    ━━━━━━━━

    2009-05-25 17:20:00
  • 111:

    気づけば、ここにいた。
    誰の悲しみもみな同じなのだと知ったときから、幸せなど望まなくなった。

    なのに悲しみに暮れる少年少女達を見れば、幸せを願う。

    2009-05-25 17:23:00
  • 112:

    ここに来て欲しくないのだ。
    幸せを置き去りにした、怒りや憎しみもなければ愛情などありもしないこの場所には。

    ─だから、紗耶香はいつも矛盾に襲われる。
    幸せを望まぬ自分が彼らの幸せを願うのは、偽りの思いなのだろうかと。

    2009-05-25 17:28:00
  • 113:

    愛情ではないのは確かだが、救いたいなどと偽善者ぶった考えもない。
    ただ苦しみを感じたい。

    ひとりで悩み抱える姿には美さえ感じるのだ。

    2009-05-25 17:32:00
  • 114:

    でもそれが美しく思えるのは、どこか彼らが希望を忘れていないから。
    もしかしたら、紗耶香はそれを羨んでいるのかも知れない。

    ──「自分を忘れないで」。紗耶香はただ願う。
    ━━━━━━━━━君に幸あれ。

    2009-05-25 17:35:00
  • 115:

    名無しさん

    昨日 夢を見た 僕はもう死んでいた

    2010-06-10 05:19:00
  • 116:

    名無しさん

    「さようなら。」

    音は帰らず 響くのは心臓

    2010-06-10 05:21:00
  • 117:

    名無しさん

    慟哭。少女は ただ立ちすくむ

    2010-06-10 05:22:00
  • 118:

    名無しさん

    救えぬ手は差しのばさぬ。

    アナタニハスクエナイ

    2010-06-10 05:24:00
  • 119:

    帰ってきたの。死にたいの。相変わらずだね

    2013-07-05 23:23:00
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