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-華物語-

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  • 1:

    五つの朱い糸で綴じられた物語

    2008-11-20 00:31:00
  • 2:

    壱話:桜の物語

    今、全てを想い出した。
    この銃声で何もかもが消えると分かっていながら、私は…。

    彼を…。

    2008-11-20 00:40:00
  • 3:

    それまでは全てが平穏だった。ごく普通の家庭に生まれ、育ち、不自由なく生活してきた。何もかもが変わってしまったのは、15歳の時。
    私は両親を亡くした。正確に言えば"何者かに殺された"。二人とも体中をメッタ刺しにされていたことから、犯人は相当の恨みを持って犯行に及んだのではないか…そう聞かされた。
    そんなはずはない。あんなに優しかった両親が誰かから殺したいほど怨まれるなんて。

    2008-11-20 00:55:00
  • 4:

    名無しさん

    事件の後、私は祖父母の家に引き取られた。そして18歳になった時一人で暮らす事を決めた。仕事はアパート近くの小さな本屋でのアルバイト。特にお洒落に気をつかわない私からすれば、生活に十分なお給料がそこでは貰えた。毎日が単調だった、けれど波風が立たずに過ぎていく事で、辛い過去を想い出さずに済んだのかもしれない。

    2008-11-20 01:14:00
  • 5:

    それから三年が過ぎたある日、私はいつものように開店前の本屋へと急いでいた。店の前に着き、シャッターの鍵を取り出す。いつもならスムーズに出てくる鍵が、この日は寒くて手がかじかんでいたせいかなかなか出てこない。やっと鍵が出せたと思うと、鍵についていたキーホルダーが取れ、店の前にあったタバコの自販機の下に入ってしまった。

    2008-11-20 01:39:00
  • 6:

    幸い、かなり手前に落ちていたので手を入れて取ることができたが、何かがキーホルダーに絡まっているのに気付いた。

    「指輪…?」

    まだ落ちて日が浅いらしく、軽く埃を払うとそれが繊細な透かし模様の指輪であることが分かった。

    2008-11-20 02:36:00
  • 7:

    「きっと、誰かがタバコを買う時に落としたんだ…。」
    そう思い、交番に届けるか店のレジに置いて落とし主が訪ねてくるのを待つか…色々考えたが、私はそれを実行に移さなかった。その繊細でありながらもどこか挑発的な指輪の魅力にすっかり虜になっていたから…。

    2008-11-20 02:47:00
  • 8:

    その指輪は、私の右手薬指に丁度だった。他の指は微妙にサイズが違うらしく関節でひっかかってしまうが、右手薬指だけは何の違和感もなく綺麗に嵌まる。嵌めてみるまで分からなかったが、模様は花がモチーフとなっていた。私は指輪を丁寧に磨き、次の日から毎日身に付けることにした。

    2008-11-20 02:57:00
  • 9:

    私は仕事中も家に帰ってからもお風呂に入る時でさえ指輪を外す事はなかった。自分でも少し異常じゃないかと思う程に指輪に執着していた。そんな日が続いて数カ月経ったある日、彼は現れた。

    2008-12-05 02:57:00
  • 10:

    初めから、変わったお客さんだと感じていた。ここは本屋なのに、本を買わずに煙草だけを買って帰る。うちの本屋は煙草は煙草でも主に外国の煙草を扱っていて、若い人よりもおじさんやお年寄りが買って行くことが多い。新聞や文庫本と一緒に煙草を買う人が殆どで、煙草だけを買う若いお客さんというのは今までで初めてだった。

    2008-12-05 03:05:00
  • 11:

    彼はレジにいた私のところまで来ると「JOKERを」と低い声で言った。店主が外国煙草に詳しくよく話を聞かされていたが、JOKERは外国煙草の中でもかなり思い種類だそうだ。色々な煙草を吸い飽きた人が最後に辿りつくのがこの煙草だとも聞いた事がある。私はレジの奥のケースから紺色パッケージのJOKERを一箱出し、彼の前に置いた。

    2008-12-05 03:14:00
  • 12:

    名無しさん

    糸冬。

    2008-12-05 03:17:00
  • 13:

    彼がトレーにお金を入れた時、私は偶然にも見てしまった。それを見た瞬間、私の体中に電流のような衝撃が走った。見間違いではない。確かに見たそれは…

    私の右手薬指に嵌めている指輪と全く同じ、彼の右手薬指で光っている指輪だった…。

    2008-12-05 03:23:00
  • 14:

    名無しさん

    読んでます☆
    おもしろそう?
    更新楽しみ♪

    2008-12-05 14:44:00
  • 15:

    >>14さん
    読んでくれて有難うございます。短篇にするつもりがかなり話が膨らんでしまって長編になりそうです?更新遅くなるかもしれませんが、頑張って書きます?

    2008-12-06 14:21:00
  • 16:

    一瞬、彼も私の指輪に気付いたような気がした。彼の右手と私の右手。不思議な感覚に襲われながらも、彼はどこか平然としているように見えた。
    「有難う」
    一言だけ私にそう告げると、彼は店を出て行った。私は妙な胸騒ぎとその不思議な感覚からしばらくの間抜け出すことができなかった。

    2008-12-06 14:29:00
  • 17:

    指輪を見る度に思い出すのは、彼の事。同じ指輪をしていたのは単なる偶然?でも、嵌めていた指の位置まで同じだった。彼は明らかに私の指輪に気付いていたはず。最後まで私と目を合わせる事はなかったけれど、私の手に視線を落としていたことは確かだったから。

    2008-12-06 14:36:00
  • 18:

    それから一週間後、また彼は私の前に現れた。先週と全く同じ金曜日の夕方、同じ服装で。グレーのカットソーの上に黒のカーディガン、黒いパンツ。そして右手薬指にはあの指輪…。
    あの時と同じトーンでやはり彼は「JOKERを」と告げた。私は自分の指先が細かく震えているのを感じながらJOKERを一箱取り出す。彼はトレーにお金を置き、JOKERを受けとると何事もなかったように店を出て行く。私はその後姿をただ見つめることしかできなかった。

    2008-12-06 15:01:00
  • 19:

    彼が店を出た後、ふと私は煙草のケースに目を移した。驚いた。JOKERは先週から一つも減っていない。もともとあまり売れる煙草ではなかったので入れ替わりも少なく、買っていく人もあまりいない。つまり、この一週間でJOKERを買ったのは彼だけだったのだ。

    2008-12-06 15:06:00
  • 20:

    それから毎週金曜日の夕方、彼はJOKERを買いに店に来た。決まって言うことは「JOKERを」と「有難う」の二言だけ。そして必ず代金はきっちり一箱分を用意して出していた。服装はその時によって違っていたが黒以外を着ることがなく、時々あるトレードマークのようなものが見えることがあった。

    2008-12-06 15:17:00
  • 21:

    そのマークは一言で表すとまるで土星のような…輪の中心に球体があり、その球体の上には十字架というデザインだった。彼はいつもどこかにそのマークが入った服を着ていた。ある時はセーターの左胸、またある時はジャケットのボタン、シャツの衿。

    2008-12-06 23:26:00
  • 22:

    きっと彼の好きなブランドのシンボルなんだろう。黒い服に鮮やかな色で刺繍されたシンボルマークは印象に残るものだったが、私はそれぐらいにしかそのマークの事を気にしていなかった。

    2008-12-06 23:35:00
  • 23:

    それから数カ月後、私の元に一本の電話があった。それは長い間連絡を取っていなかった祖母からだった。

    祖父が亡くなった…ー。

    持病だった心臓病が急に悪化し、入院した数日後に亡くなったという。祖母もあまりに急な出来事だった為、私への連絡が遅くなってしまったと受話器の向こうで涙声で嘆くのだった。

    2008-12-06 23:41:00
  • 24:

    私はすぐに荷物をまとめ、祖母の元へ向かった。祖母の家までは電車で二時間、さらにバスを乗り継いで行かなければいけないので、明日の朝の出発では遅く、なにより祖父を亡くした祖母に寂しい思いをさせたくなかった。私は最終の一本前の電車に乗り、祖母の元へ急いだ。電車の窓から見える景色が懐かしい風景に変わり始める。両親を亡くしてからの三年間、まるで自分たちの子供のように育ててくれた祖父のことを思い出し、涙が溢れ出た。

    2008-12-06 23:56:00
  • 25:

    久しぶりに会った祖母は見るからにやつれていた。人生の大半を共に過ごした人を亡くしたのだ。その悲しみと喪失感が痛いぐらいに伝わってくる。
    「私が来たから、大丈夫だよ」
    そんな言葉しか出てこない自分が情けななくて仕方なかった。

    2008-12-07 00:01:00
  • 26:

    祖父の葬儀は身内だけの密葬となった。祖母の負担を少しでも軽くするための計らいだったが、葬儀から数日後、今度は祖母が病に倒れた。やはり祖父を亡くしたことのショックが大きく、みるみる痩せて遂には食事も喉を通らなくなった。
    私は祖母の看病のためにバイト先に連絡し、一ヶ月の休みを貰うことにした。

    2008-12-07 00:09:00
  • 27:

    医者を呼んで診てもらったが、精神的にかなり弱っていることが原因で、薬で治るものではない、この歳ではどんな状況になってもおかしくないから今すぐ入院が必要だと言われたが、祖母は断固として入院を拒否した。
    「私はこの、おじいさんと暮らした家で静かに死にたい」
    ただそれを繰り返すばかりだった。

    2008-12-07 00:17:00
  • 28:

    私は祖母の側にいよう、精一杯看病しようと決めた。私に残されたたった一人の肉親、一人ぼっちになってしまった私に深い愛を注いでくれた人。せめて、最期を迎える時は私が側にいてあげたい…そう思った。

    2008-12-07 00:26:00
  • 29:

    昨日から降り続いていた雨が嘘のように止み、綺麗な夕焼けに空が染まったある日の夕方、祖母は私を枕元に呼び、か細い声で話し始めた。

    「桜…あんたは今年いくつになったんだい?」
    目を閉じたまま、顔だけをこちらに向けてそう聞いた。
    「21になったよ…」
    「そうかい…もう21かい…そら私がこんな歳になったんだものな。大きくなるはずだよ。」

    2008-12-07 00:36:00
  • 30:

    祖母の閉じた目からは涙が流れ、夕日が当たってキラキラと輝く。私も自分の頬に涙が伝っているのを感じた。
    「あんたが21なら、あの子はいくつだ…確か五つ違いの…」
    そこまで言うと祖母は急に咳込み始めた。
    「おばあちゃん!?」
    私は皺だらけの小さな手を取り、強く握り締めた。

    2008-12-07 00:46:00
  • 31:

    咳込み、か弱いながらも祖母は必死に何かを伝えようとしている。私は必死にその声に耳を傾けた。
    「あんたの…為…と…思って…ずっと言わ…なか…た…ど…」
    「あんた…には…きょ……がいて…今も…どこ…かで…生き………」
    「なま…え…は…はる…」

    2008-12-07 01:04:00
  • 32:

    細過ぎる祖母の声は後の言葉を私に伝えきれないまま、空気に溶け込んでいった。気付いた時には祖母の体は冷たくなり、私はその布団の側で涙が枯れるまで泣いた。

    2008-12-18 18:22:00
  • 33:

    祖母の葬儀は祖父の時と同じように身内だけの葬儀となった。気付けばその日は祖父の葬儀から丁度一ヶ月が経った日だった。私の耳について離れない、祖母の言葉。はっきりとは聞こえなかったけれど、確かに祖母は"きょうだいがいる"と言っていた。そして"私のためと思って言わなかった"とも。

    2008-12-18 18:31:00
  • 34:

    祖父母が住んでいた家はかなり老朽化が進んでいた為、家具を引き払って取り壊すことになった。土地の権利は長男である叔父に渡り、私は一緒に暮らした年月が長かったことから家財道具等の整理を頼まれた。狭い家だったが歴史が長い分、色々な物が残っていた。畑仕事に使うものから、正月の餅つき道具、桐の箪笥や古い文箱まで…。

    2008-12-18 18:40:00
  • 35:

    私は勿体ないと思いながらも、二人が大事にしていた六段の引き出し以外は全て処分した。祖父母は大事なものや大切にしなければいけないものを全てこの引き出しに仕舞っていた。引き出しを開けると、印鑑や通帳、土地の書類や電化製品の保証書などあらゆるものが出てきた。何でも大事にとっておく二人だったから、ここに入れておけば忘れないと思ったのだろうー…。私はそんなことを考えながらその引き出しを自分のマンションの部屋に持って帰った。

    2008-12-18 18:53:00
  • 36:

    身の回りの事が全て片付き、心の整理もついたので私は約二ヶ月ぶりにバイト先の本屋へと出向いた。店主は「急な事で大変だっただろう」と労を労ってくれた。そしてふと、こんな事を言い出した。
    「毎週JOKERを買いに来てた子がいてただろ?あの子、桜ちゃんのこと気にしてたよ。いつもレジに立ってた子辞めたんですか?って。」

    2008-12-18 19:03:00
  • 37:

    私は不思議に思った。単なる本屋の一店員を何故彼が気にかけるんだろう?単なる好奇心?心配?それとも…同じ指輪をしているから?私は忘れかけていた彼の事を思い出し、右手薬指に嵌めた指輪に目をやった。煙草の棚を見ると、JOKERは順調に減っているらしく、きちんと補充されている。それは彼が毎週金曜日に欠かさず煙草を買いに来ている何よりの証拠だった。

    2008-12-18 19:18:00
  • 38:

    次の日から私はこれまで通り仕事に出た。店の掃除、商品の陳列、レジ打ち…。また忙しい日々に戻ったが、そうすることで両親が死んだ時と同じように祖父母の死も時間をかけて受け入れられると思った。唯一気がかりだったのは祖母が残した言葉だったが、私はその言葉をいまいち信用できないでいた。私は生まれた時からずっと一人っ子として育ったし、"きょうだい"がいた記憶は少しもないのだ。

    2008-12-19 00:53:00
  • 39:

    その週の金曜日、彼は煙草を買いに現れなかった。店主の話によると、彼が私が店を辞めたかどうか聞いたのは先週の事で、詳しい事情は言っていないが都合で休んでいると伝えたところ、彼はそうですかと一言だけ言ってJOKERを買い、店を出たらしい。それまでは今までと同じ、金曜日の夕方に煙草を買いに来ていたそうだ。

    2008-12-19 01:07:00
  • 40:

    「いつも店を出て駅の方に歩いていたから、この辺に住んでる人じゃないと思うよ。いつも小綺麗な恰好してるし、雰囲気からしてこの辺の人じゃないね。」
    店主もJOKERを買うお客さんが珍しいらしく、ひそかに観察していたようだ。ますます彼に対する不思議な感覚が私の中で募っていた。

    2008-12-19 01:08:00
  • 41:

    ある日のこと。私はいつも通り本屋の二階にある休憩室で昼食を取っていた。休憩は一人ずつなので暇つぶしにいつも本を持ってくるのだが、今朝は珍しく慌てて家を出たのでどうやら忘れてしまったらしい。早く持ち場に戻っても支障はないが、時間は平日の昼間。お客さんが一番少ない時間帯なのだ。店に出るのも手持ち無沙汰なので暇を潰せそうなものを探していると、部屋の隅に積まれている雑誌が目に入った。

    2008-12-19 01:28:00
  • 42:

    ここに積まれている雑誌は時期過ぎの雑誌で店頭に出せない為、自由に読むことが許されていた。普段から雑誌は読まないので何となく気が進まなかったが、今回は仕方ないと思い、一番上にあったファッション誌を手に取った。

    2008-12-19 01:33:00
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