小説掲示板‐裏稼業‐のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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‐裏稼業‐

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  • 1:

    名無しさん

    『バイトせーへん?』   藍子からのメール。     そーいえば最近バイトしだしたとか言ってたような。 『どんなバイト?』    私もバイト探しをしている最中で仲の良い藍子となら楽しくできるんじゃないかと一瞬頭をよぎる。それも仕事内容によるけれど。              『何でも屋的なやつ♪』             すぐに返事は返ってきた。何でも屋?       そんな物が本当にあるんだろうか。        普通の求人雑誌では見た事も無いけれど、藍子はどこでそんな仕事を探してきたんだろう。                   『1週間体験でやってみーへん?皆優しいし』   藍子からもう一通のメールが届いた。        『怪しい仕事じゃない?』少し心配になって返事を返してみた。       『大丈夫やで!』    体験が出来るならそれで仕事内容がわかるはず。  詳しい事は行ってみないとわからない。                  『やってみよかな』   私は藍子にメールを返信した。これが私の人生を大きく揺るがす事になるなんて考えてもみなかった。

    2009-02-21 12:15:00
  • 2:

    名無しさん

    その後、藍子からは仕事の話が出る事は無くたわいもない話をした。     飲んでいた物も無くなり、喋っているだけで2時間が過ぎていた。      『あッ!』       藍子が店の時計を見て驚いた。          『どーしたん?』    『時間がやばい!』   藍子は立ち上がって私の手を引っ張った。     『店長帰ってきてると思うねん!早くあわせたいねんなー』         喫茶店での支払いは藍子が一瞬で済ませた。    『お金!』       『後であとで』     藍子は私の手を離して、さっきよりもゆっくりと歩きだした。

    2009-02-21 12:36:00
  • 3:

    名無しさん

    『店長雰囲気は不思議な人で最初は怖いかもやけど、馴れるから大丈夫やで!』藍子が楽しそうに話をする            『バイト先は?』     『もーちょい』     意外に家から近いらしい。喫茶店を出て5分も経っていない。藍子は家と家の間にある通路の様なところへと入っていく。     『近道やねん』     だんだんと薄暗くて、大通りから離れた場所へと入っていく。                    細い路地を右に曲がった瞬間強い風が吹いた。   『風つよ…』      私が一瞬下を向くと藍子は動くのをやめた。    『ついたよー』     顔をあげると、路地裏を思わせない程の広い空間に大きな和風の家が一軒立っていた。路地裏なのに日当たりも良くて、暖かい空気が流れていた。                  桜の様な梅の様な木も沢山庭に咲いていて、綺麗な景色が広がっていた。

    2009-02-21 12:46:00
  • 4:

    名無しさん

    『でかい家やろ?』   藍子が嬉しそうに私の顔を見た。         『うん』        私も想像してたものとは程遠い家で唖然とした。  『おかえりー』     後ろから低い声と、肩をぽんぽんと叩かれて驚いて後ろを振り返った。                『店長!』       藍子が笑っている。   後ろを振り返ると着物の様な袴の様な物を着た、優しそうな顔の男の人が立っていた。         『お昼ご飯をね』    手に持っている袋を上にあげて私達に見せる。   『安土さんは?』    『千尋君はお昼なんだよね。今は僕1人なんです』 私にはさっぱりわからない人の名前が出てきたもので会話についていけない。             『挨拶遅れました花苅紺之です。歳は内緒だけどね』花苅と名乗った男の人は庭を歩いて家へと向かって歩いていく。       『山吹七緒です!』   男の人の背中に向かってでかい声で名前を言うと、花苅さんは驚いた様な顔をして私を振り返った。   私の顔が赤くなっているのを見て花苅さんは笑顔になった。私の隣では藍子が爆笑している。

    2009-02-21 13:08:00
  • 5:

    名無しさん

    『そんな爆笑せんでも…』急に恥ずかしくなって俯く『おいでー』      花苅さんが家へと歩きながら右手を振っている。  『はーいッ!』     藍子は笑うのをやめて私の手を引いて走っていく。             花苅店長の第一印象は、藍子が言っていた通り不思議な人だったけど決して怖くは無かった。

    2009-02-21 13:13:00
  • 6:

    名無しさん

    『おじゃまします』   家のドアは開いたままで、玄関にしかれたマットの上にオレンジと白の斑模様の猫が寝転んでいた。    『小太郎ただいまぁ』  花苅さんが猫の頭を軽くたたくと猫は起き上がって花苅さんの後ろをついていった。          『すご』        私が驚いていると藍子が後ろから背中を押してきた。『ほら入って入って』  『あ…はい』      靴を脱いで中に入る。              家の中は古い作りで、どこを見ても木だった。   目の前には大きな木の置物が置いてあって、お金持ちなのは確かだった。

    2009-02-21 13:56:00
  • 7:

    名無しさん

    居間に入ると花苅さんはそそくさと縁側に座り込んだ『僕がご飯食べおわるまで待っててもらえるかなぁ?適当に家の中見てもらってても大丈夫だからね』  そういうと花苅さんは袋からお弁当を取り出して蓋をあけた。                    『わかりました』    藍子は私を手招きして、奥の部屋へと移動した。  『ひろー…』      一つの部屋がかなりの広さで一階だけでもいくつかの部屋がある事がわかった。
    『あのさ』       私が口を開くと藍子は階段を登って上の階へと行ってしまった。       『どしたん?』     声だけが聞こえる。   『花苅さんて凄いお金持ちそうやけど何してる人なん?この家広すぎやん』  私も階段を登っていくと藍子が上から私を覗き込んだ            『それだけ凄い人やねん!仕事ってなったら人が変わったみたいにおとぼけキャラじゃ無くなるねんで』 藍子は嬉しそうに話す。 きっと花苅さんに少し気があるんだろう。

    2009-02-21 16:27:00
  • 8:

    名無しさん

    上にあがると藍子がとある部屋へと入って行った。 私も後を追って中へ入るとクッションを投げつけられた。 『いたッ!!』      クッションを掴んで藍子を見ると藍子は座り込んでいた。『何この部屋』     その部屋は藍子の大好きな俳優のポスターが貼りまくられていて、花苅さんの部屋では無い事がわかった。 『ここあたしの部屋!』 藍子は私に座りと言って座布団をひいてくれた。              『ここでバイトするてなった時に花苅さんが用意してくれてん。急な仕事が入った時は泊まり掛けになる事もあるから自由に使ってくれたらいいよーて』    藍子は自分の部屋を見回しながら楽しそうに話をする            『あたし七緒にもここ来て欲しいねんな。ここでの仕事本間楽しいし、店長もそやけど安土さんてさっき言ったやん?あの人も本間に優しい人やねんか』               藍子のこんな顔は初めて見るかもしれない。

    2009-02-21 16:41:00
  • 9:

    名無しさん

    『ただいまー』     ガラガラとドアが開く音がして若い男の人の声がした『おかえり』      藍子が階段から下に向かって声をだした。     『藍子!下降りてこいて店長が呼んでるで!』   『わかりました!』   どーいう関係かはわからないけれど、この3人はかなりの親密度らしい。               『下行こう』      藍子はまた私の前を進んで下に降りて行った。   『あ!うん』      下に降りてそのまま居間へと向かった。

    2009-02-21 16:52:00
  • 10:

    名無しさん

    居間に入ると牛乳をらっぱ飲みしているツンツンで金髪の頭をした若い男の人が立っていた。        『ぉ…おじゃましてます』驚いて声がどもってしまった。          『いらっしゃい』    決して笑ったわけじゃ無かったけど冷たそうな人でもなさそうやった。                『藍子ちゃん』     縁側に座っている花苅さんが藍子を呼んだ。    『はい!』       『僕ちょっとその子と話がしたいんだけど、千尋君と席を外してもらえるかな』花苅さんはこちらに目を移すことなく、膝に寝転がっている猫を撫でている。             『あいよ』       『はい』        藍子と千尋と呼ばれる男の人は居間から出ていってしまった。

    2009-02-21 17:06:00
  • 11:

    名無しさん

    『そこ座ってもらえる?』居間の真ん中に、漫画で出てきそうな真ん丸の木のテーブルが置いてある。  『はい』        テーブルの周りに置いてある座布団に座る。    『失礼します…』    座り込むと花苅さんは笑いだした。        『そんなお堅い話じゃあないんだよ。ごく普通に接してくれたら良いからね』             花苅さんの声はやたらと落ち着けた。       『はい』        『んじゃ説明しようか』 花苅さんは私の顔をまっすぐと見た。       少しの間睨めっこ状態だったけれど我慢出来なくなって私が目をそらした。  『ははは!可愛いね!』 『店長さんやー』    隣の部屋から千尋さんの声が聞こえた。      『セクハラ大概にしな俺が無理矢理とめんで?』  『おっかないねぇ』   これが花苅さんの趣味らしい。

    2009-02-21 17:21:00
  • 12:

    名無しさん

    『ていうか千尋君いつまでそこにいるのかなぁ?』 『あんたがセクハラやらへん様になるまでやろな』 普通の親子の様な会話をしていて、何だか笑えてきた。            『アハハ!』       『………』       花苅さんと千尋さんの会話がピタリと止まった。  『あ!すいません!』  『いやぁ笑いたい時には笑うもんだよ。少しは緊張が解けたかな?』     花苅さんはまた縁側へと移動して座りこんだ。               『どうも緊張してしまうらしいね。このまま話をしても大丈夫かい?』    花苅さんは外を見た状態で、どうやら私に気を使ってくれているらしい。   『はい!大丈夫です』  『んじゃ本題にね』   今度こそ話を始めてくれた

    2009-02-21 17:29:00
  • 13:

    名無しさん

    『僕達は何でも屋の様なものなんだよ。名前の通り頼まれた仕事は出来る範囲で何でもやるんだけど…』 どうやら藍子の話していた事は本当の事らしい。              『依頼をうけて初めて仕事が出来るわけなんだよね。内容的には小さい物なら、家の掃除、ペットの捜索、ごみ拾いとか本当に些細な物から大きな依頼になると…』            『店長!』       千尋さんの声がまた隣の部屋から聞こえてきた。  『まだ話す事ちゃうやろ』『そうかもしれないけど、これを言わなきゃ彼女を騙している事になるでしょ』『…………』      千尋さんは黙った。   私は何が何だか良くわからないまんまだった。               『僕達は表向きは何でも屋なんだよ。一応近所でも有名だし、遠くからの依頼も結構あるんだけどね。でももう一つ仕事があるんだ。それが裏稼業。つまりは怖い事もするんだよ。危険な仕事もね。表向きは何でも屋。ひっくり返せば裏稼業。それが僕達なんだけど』             一瞬何を説明されているのかがわからなかった。  藍子は確かに危険な仕事じゃない。楽しいって言っていたはず。なのに…。   裏稼業と聞いたところで、私は何だか包丁でも突き付けられているような不思議な緊張感に襲われた。逃げれないような、怖い感覚。
                『藍子は…』      『ん?』        『藍子は確かに危ない仕事じゃないと言いました。藍子は嘘をつく子じゃないのにそれを教えたのは貴方達なんですか?』     怖くて声になっていなかったかもしれないけれど、私は聞いてみた。

    2009-02-21 18:01:00
  • 14:

    名無しさん

    『あの子には何も教えちゃいないからね。』    『え…?』       花苅さんは空を眺めたまま静かに口を開いた。               『あの子にはお母さんしかいないらしいじゃないの。病弱だって聞いてるし。 藍子ちゃんが良い子なのは一目見れば大体わかる。 あの子を裏へ引っ張れば元に戻す事はできない。  母さんのもとへ今の純粋な彼女のまま返してやれるなんて保証も無いんだよ』             花苅さんが危険な人だという事がわかった。だけど今の話を聞くかぎり絶対に悪い人じゃないはず。

    2009-02-21 18:12:00
  • 15:

    名無しさん

    『あの子は特別純粋な子でね、一度信頼した人や自分の傍にいてくれる人のためならきっと何でもしちゃうような子なんだよ。   僕が仕事を彼女に頼めば、
    いけない事だとわかっていても彼女は仕事を引き受けるはずだよ。      でもそれは僕のやり方じゃないからやらないんだ。 ひどい事はしたくない。 だから僕は彼女にここを辞めてもらう事にした。  あ!行き場が無くなるわけじゃないんだよ?    僕がきちんとした会社を用意してあるからね。だから彼女は自分の変わりになる君を選んできたんだと思うんだけれど』

    2009-02-21 18:19:00
  • 16:

    名無しさん

    『失礼な話、君は天涯孤独というやつらしいね。』 花苅さんの言う通り。  私が5歳の頃、両親は自殺して亡くなっている。  お祖母さん達がいたけれど母さんや父さんの事をみっともないと言い私を受け入れてはくれなかった。  それから私は施設で生活していたのだ。                  『大丈夫だよ。そんな不安そうな顔はしないでちょーだいな。僕も千尋君も同じ様な物だからね。    千尋君は親からの虐待で施設に預けられていたんだ。ひょんな事から僕らは友達になってね。      僕が預かりたいと思って施設にかけあってみたんだ。千尋君も両親とは完璧に縁が切れているからね。今は僕の大切な家族なんだよ』

    2009-02-21 18:26:00
  • 17:

    名無しさん

    『花苅さんは…?』   私はつい聞いてはいけない事を聞いてしまったような気がした。       『僕かい?』      花苅さんは少しの沈黙の後口を開いた。                  『僕はこういう家の長男として産まれたんだよ。下にはもう1人弟がいるんだけど。そいつは利口でね。  昔から僕はこんな適当な性格をしてたもんで弟から嫌われてしまってね。   弟はきっと自分の方が勉強も出来るし、利口なのに長男や次男っていう関係だけで家を継ぐものが決まるのが本当に嫌だったんだろうね。          僕は長男だったから両親や周りの人間から可愛がられた。大事にされたんだよ。 だけどその反面弟はいつも1人ぼっちでね。とてつもなく寂しかったはずだよ。僕はそんな弟をみていて決めたんだ。       僕が家をでれば弟が家を継ぐことになるのは確かだったから家を出て行った。 両親からも周りの人間からも止められたけどね、僕は父さんだけじゃなく母さんまで殴ってしまってね…』

    2009-02-21 18:42:00
  • 18:

    名無しさん

    花苅さんは一度喋るのを辞めて猫を撫でていた。  『そこで両親が僕に言ったんだよ。出ていけ。縁は切っておくからなって。悲しくなんかなかったんだけど、最後の最後まで弟は僕を睨み付けていたんだ。   一度も好かれる事は無かったって事だね』                 花苅さんは俯いてしまった            『ひどいです』     私は思った事はすぐ口に出るタイプで、簡単に何でも言ってしまう。     『ひどくなんかないさぁ。ひどいのは僕だからね。 両親を傷つけて、弟も傷つけて。兄としても息子としても本当に最低なのはこの僕の方なんだから』               花苅さんは立ち上がると私の前に座りこんだ。

    2009-02-21 18:49:00
  • 19:

    名無しさん

    『重たい話を聞いてくれてありがとうね。     本当申し訳ないよ』   花苅さんが頭を下げた。 『頭あげて下さい!』  私の一声で花苅さんはもう一度深く頭を下げて頭をあげた。                     『君は今いく場所はあるのかい?』        花苅さんが私の顔を見る。『行く場所…』     『お付き合いしている方がいるとか、やるべき事があるとか、そういうのは?』            私はしっかりと花苅さんを見た。         『どちらも無いです』  花苅さんは考えこんで私の前へと小さな紙を差し出した。          『どうだろうか?僕等の下で一緒に働かないかい?不安ならば藍子ちゃんから聞いただろうが一週間だけでもいいんだよ。     君を1人のままにさせておくのもどうも不安でね』             花苅さんは立ち上がった。『僕に出来る事はこれだけなんだよ。後は千尋君にお任せしようかな…』   そういって部屋から出て行ってしまった。

    2009-02-21 18:57:00
  • 20:

    名無しさん

    襖をあけると千尋さんが膝をついて座っていた。  『任せて大丈夫?』   『あぁ』        『宜しくね…』     花苅さんは少しふらつきながら違う部屋へと移動していった。                    『あのおっさんいらん事まで喋りよってからに…』 ぶちぶちと文句を言いながら私の前に座る。    『大体の話わかったやろ?どないする?すぐに決めれるもんとちゃうかもしれんけど…』        思ったよりも優しい声で喋りかけてくれた。                『……』        『今日で決めれんかったら明日明後日でもいけるで』今の私にはほんの少し時間が足りなかった。    『また来てもいいですか』小さい声できくと千尋さんは勢いよく立ち上がり  『当たり前やろ!』とにっこり笑った。                  『藍子は?』      『あのアホは寝てるわ』 頭をかきながら猫を見ている。          『藍子はどこで知り合ったんですか?』      『俺はよー知らん。店長が急に連れてきよったから』『そーなんですか…』              私が下をむくと千尋さんはあたあたとしながら   『また聞けばええやろ!』と大きな声をだした。              そのまま私は一度家へ帰される事になった。

    2009-02-21 19:06:00
  • 21:

    名無しさん

    千尋さんから渡された小さな紙は『契約書』というやつらしかった。     名前、電話番号。     それ以外は書く場所が無くて、判子を押すだけの簡単そうな契約書だった。              自分の家の中で色々と考えこんでいた。      両親の事や自分の事。  考えてみたって答えの見つからないような何とも言えない事ばかりが頭の中をぐるぐると回った。                ピリリリ…ピリリリ…                 携帯を開くと藍子からの電話だった。       『はいもしもし?』   電話に出ると酔ってるであろう藍子のでかい声が聞こえた。         『ななぉ?』      『どしたん?』     藍子は完璧に酔っているらしく私の質問も無視で電話の奥で笑っている。   『どこおるん?』    『てんちょとこー…』  『店長ッ!?』     店長て事は男2人しかいない場所に藍子は完璧に酔った状態でいるって事になる            『行くから待ってて!!』携帯をきってパジャマ姿のまま自転車を飛ばして迎う。何をされるかわかったもんじゃない。      藍子自体あそこまで酔う程お酒は飲まないはず。

    2009-02-21 23:52:00
  • 22:

    名無しさん

    花苅さんの自宅について、急いで玄関を叩く。               バンバンッ…                   叩いている最中に玄関がほんの少し開いた。    開き戸になっているドアで横に滑らせると簡単に開いていった。       『藍子ッ!?』     走って家の中を探し回ると小さい声がもれている部屋の前までついた。    『てんちょー…ッ』   『千尋君押さえてッ!』 『ハハハッッ』       3人の声が聞こえて扉を勢いよく開いた。                 『藍子に何してんよ!!』今にも泣きそうな声で叫んだのと同時に部屋の中を見るとお酒を瓶ごと飲もうとしている藍子の腕を掴んでいる花苅さんと、その横で1人で笑っている千尋さんの姿があった。                 『七緒ちゃん!!』   花苅さんは疲れ切った顔をして私に助けを求めた。 『もー無理…』     『てんちょ好きでッす!』藍子が今度は花苅さんの腕を掴んで押し倒した。              私は見ていられなくて花苅さんから藍子をひっぺがして思い切りほっぺたを叩いた。          『いーかげんにしてよ!』叩く音で千尋さんの笑いも止まり、藍子も花苅さんの上に馬乗りになった状態で止まった。       花苅さんはぐったりと横たわっている。

    2009-02-22 00:08:00
  • 23:

    名無しさん

    花苅さんの顔は赤くなっていて息遣いも荒かった。 『花苅さん!?』    首を触ると一瞬で熱がある事がわかった。     『千尋さんッ!今頼りになるのは千尋さんしかいてないんですよッ!!!お願いやから起きて下さいッ!』            私の声で千尋さんは飛び起きて近くにある電話をとって電話をかけはじめた。 『飛鳥さん!?俺ッす!はい!おっさんが熱出してるんすけどどないしたら…』誰かに電話をしているらしい。          千尋さんの顔も焦りで真っ青になっていた。                『私に代わって下さい!』電話を千尋さんから奪い取って電話をかわった。  『お電話変わりました、七緒と申します。』    『酔ってないな?』   電話の相手は男の人だった            『はい!』       『今医者そっちにむかわせてっから今から言う事を応急処置としてやっててくれるか?』        『はい!』       私はこの人がただ者じゃないと言うことがわかった。酔っていたとはいえ、私の声で一気に酔いが覚めていた千尋さんの声の微かな変化に気付いたらしい。  あの状態から酔っていると気付くのは素人じゃ無理なもんだった。

    2009-02-22 00:24:00
  • 24:

    名無しさん

    『そいつが熱出したりすんのは日常茶飯事だから気にすんなよ。とにかく身体に毛布かけてくれるか?』 『はい』        受話器を一度置いて後ろを振り返ると引き出しの中から布団を取り出している。『これでええか?』   布団はゆっくりと花苅さんの上にかけられた。   『はい』        受話器をとって電話の相手に声をかける。     『出来ました』     『んじゃ後は氷枕とかそんな感じのを使ってやってくれるか?そんだけでいい』『はい』        返事をすると相手の男の人は、もうすぐ着くから待っててくれと言って電話をきった。

    2009-02-22 12:55:00
  • 25:

    名無しさん

    『氷枕…』       後ろを振り返ると花苅さんのおでこには熱冷まシートが貼られていた。    『頭いたー…』     隣の部屋から水を飲みながら千尋さんが入ってきた。『飛鳥さんこれ以外に何か言うてた?』      花苅さんをあごでさして私を見る。        『いえ』        千尋さんは花苅さんの横に座って布団をかけ直した。            『悪かったな。飲み過ぎて焦ってしもた。いつもは言われんでも当たり前みたいに出来る事が出来へんなってしもてん…。     あんたにも心配かけた。』            私に背中を見せたまま水を飲んでいる。      『気にしてません』   私が返事をするとまた立ち上がり、引き出しから薄めの毛布を取り出した。  隣の部屋の襖を全開にしてため息をつく。

    2009-02-22 19:11:00
  • 26:

    名無しさん

    『こいつにも呑ませすぎたなぁ。本間何してんやろか俺は。飛鳥さんにまたどやされてまうんやろな…。』襖の奥では両手両足を開いたまま寝転がっている藍子がいた。        『藍子!?』      そういえば私がほっぺたを叩いたんだった。    千尋さんは藍子に近づこうとする私を止めて、藍子に毛布をかけに行った。              『ゆっくりさせたって』 藍子の横に座りこんで藍子を見ている。      妹を見るような優しい目をしていた。                   バタンッー…                  家の前でドアが閉まる様な鈍い音がした。     それからガラガラとドアが開いて低い声がした。

    2009-02-22 19:16:00
  • 27:

    名無しさん

    『千尋くーん』     低くてゆっくりとした喋り方で千尋さんの名前を呼んでいる。        部屋に入って来たのは真っ黒な頭で怪しげな雰囲気のラフな服装の男の人と、可愛らしい女の人だった。             『飛鳥さんッ!』    千尋さんは勢いよく頭を深々と下げた。      『すんません!俺呑み過ぎてもーたみたいで…』  『言い訳はいらんよ』  煙草をくわえて千尋さんの髪の毛を鷲掴みにした。 『病気なめんなよな』  髪を掴んでいる手を開いて千尋さんを座らせた。              『何回言わすんじゃ』  冷たい目で千尋さんを見つめていた。       『あんたが七緒君?』  『へッ!?』      急な私の名前を呼ばれて男の人の顔をのぞく。               やっぱり冷たくて睨まれているかの様な気分になった

    2009-02-22 19:27:00
  • 28:

    名無しさん

    『ありがとさん』    そう言って私の頭を軽く撫でてくれた。      『おい紺之』      花苅さんの横に座って煙草をふかしている。    『寝てるか』      花苅さんの首を触って体温をはかっているらしい。 『咲惠?』       『何?』        どうやら一緒にいる女の人は咲惠さんと言うらしい。

    2009-02-22 19:35:00
  • 29:

    名無しさん

    あげ☆

    2009-02-23 01:51:00
  • 30:

    名無しさん


    ありがとうございます(^^)

    2009-02-23 20:31:00
  • 31:

    名無しさん

    『これ位なら俺一人で手が回るが。どーする?』  咲惠さんは飛鳥さんの顔を見て微笑んだ。     『私もいます』     『そうか』       飛鳥さんは頷いて花苅さんの布団をかけなおした。             『千尋…』       『はいッ!』      茫然と座り込んでいた千尋さんは急な呼び掛けで、勢いよく立ち上がった。  『悪かった。』     飛鳥さんは千尋さんの顔を見る事無く謝る。    『いや…ッ』      『反省している』    どうやら悪い人では無いらしく、静かに謝った。               『俺が…あんなんやから』千尋さんの腕はカタカタと震えていた。      『もーいい』      飛鳥さんは立ち上がった。『上へあがりなさい』  『はい…』       千尋さんは俯いたまま飛鳥さんにお辞儀をして部屋から出て行ってしまった。

    2009-02-23 20:45:00
  • 32:

    名無しさん

    『咲惠灰皿を』     『はい』        咲惠さんと目があった。 私に向かって微笑むと台所の方から灰皿を持ってきた『ありがとう』     『ええ』        何だか静かな人で、礼儀正しそうな人だった。               『挨拶が遅れたな』   飛鳥さんは私の方へと向きを変えると煙草を消した。『紺之の主治医をやっている。佐野飛鳥だ』    軽くお辞儀をした。   『私は東條咲惠です』  咲惠さんも優しく微笑みながら頭を下げた。                『山吹七緒です!』   深々と頭を下げると咲惠さんが肩を支えてくれた。 『普通にして下さい?』 にこにことした顔に安心感をおぼえてしまう。どこからか良い匂いのする咲惠さんは本当に綺麗な人だった

    2009-02-23 20:56:00
  • 33:

    名無しさん

    『いやぁ悪いね。また君を呼んでしまったようで…』飛鳥さんの後ろから静かに声が聞こえた。     『目が覚めたか』    花苅さんは深くため息をつきながら重たい身体を持ち上げて座り込む。    『寝てないか』     飛鳥さんの言葉を無視して真っ直ぐ縁側の方を見ている。          『千尋君は悪くないからね。どうか優しく接してやってはくれないかなぁ?』 『…………』      重たい空気が流れる。              『俺もそーしたいが。何故だかあいつにはすぐ腹を立ててしまうんだよ。後々反省する事はわかってるんだが…。どうもな』    飛鳥さんは花苅さんの隣に座り込んでポケットから煙草を取り出して火をつけた

    2009-02-23 21:32:00
  • 34:

    名無しさん

    『未だに僕に懐いてはくれないけど大切な家族なもんでね。飛鳥君の言う事もわからなくは無いんだけど』『あぁ』        花苅さんにとって千尋さんはやっぱり大切な人のようだった。                    『嫉妬ですよ』     咲惠さんが花苅さんの背中にそっと毛布をかけた。 『え?』        花苅さんは毛布を受け取りながら咲惠さんを見る。 『飛鳥は花苅さんのお気に入りの千尋君に嫉妬してるだけですよ。ね?飛鳥』 『ほっとけ///』    飛鳥さんは耳を赤くして、何事も無かったかの様な平然とした顔をしている。             『あー…』       花苅さんは横目で飛鳥さんも見るとにやりと笑った。『飛鳥君は昔から僕が大好きだものねぇー』    『黙れ』        飛鳥さんは立ち上がり足で花苅さんを倒した。   『今から布団を敷く間黙って寝てろ。自意識過剰が』花苅さんと咲惠さんはクスクスと笑っている。               『素直じゃないねぇ』  飛鳥さんが投げた枕が見事に花苅さんにヒットした。『痛いよー』      『黙ってと言ったが?』 無表情で煙草をふかす。 『…はい』       花苅さんも飛鳥さんとは逆の方向を向いて静かに布団をかぶりなおした。

    2009-02-23 21:53:00
  • 35:

    名無しさん

    『そういえば藍子ちゃんはどーしたのかな?』   ポツリと声を出した。  『藍子は隣の部屋です!』今まで話に入れる雰囲気じゃなかった私もやっと声を出す事ができた。                『寝てるの?』     『はい!』       花苅さんは頭をかいている『悪く事しちゃったね。千尋君に頼んで上へ運んでもらうとしようか』    『俺が運ぼう』     布団を敷き終わった飛鳥さんが煙草を消して、腕まくりをしている。                 『えー大丈夫?そんな細い身体じゃ壊れるよ?笑』 花苅さんが鼻で笑う。  『お前がでかいだけじゃないのか?それに俺はお前より健康的だからな』               ここで初めて咲惠さんがため息をついた。     『いいから早くして?』 『ん?あぁ』      飛鳥さんの方が身分的に上なのかと思ったけれど、そんな事も無いらしい。

    2009-02-23 22:04:00
  • 36:

    名無しさん

    おもしろいです?
    更新頑張ってください!

    2009-02-23 22:12:00
  • 37:

    名無しさん


    37さん
    ありがとうございます?

    2009-02-24 00:56:00
  • 38:

    名無しさん

    『……ッ』       飛鳥さんは藍子を持ち上げると立ち上がった。   『こいつの部屋は?』  『私が行きます!』   『頼む』        私は昼間藍子に案内された通りに藍子の部屋へと飛鳥さんを誘導した。                『頑張るねぇ飛鳥君』  『紺之の前だからね』  『怒ってるでしょ?』  『別に?』       『素直じゃないねぇ』  『………』       下ではそんな会話が繰り返されていた。

    2009-02-24 01:03:00
  • 39:

    名無しさん

    『入って下さい』    『あぁ』        部屋へと入り藍子の布団をめくる。飛鳥さんがゆっくりと藍子を下ろした。  『はぁ…』       飛鳥さんは立ち上がって腰に拳を当てている。   『ありがとうございます』『あぁ』        飛鳥さんは藍子に布団をかぶせると先に部屋から出て行ってしまった。                下へ降りると咲惠さんと花苅さんの間に微妙な空気が流れていた。      『何を言ったんだ?』  飛鳥さんが微妙な空気に気付いて花苅さんを睨み付ける。          『素直じゃないよねって話をしてただけだよ』   咲惠さんはさっきの優しそうな顔から無表情に変わっていた。                    『咲惠を怒らせるなよ』 飛鳥さんはため息をついて煙草をとりだした。   『3本目だよ?』    『ん?』        『煙草』        花苅さんが煙草を指さす。『俺は健康だからな』  『言い訳だね』     飛鳥さんは立ち上がって花苅さんを足蹴にする。  『暴力はんたーぃ!』  『黙れッ』                   『アハハ』        私はつい笑ってしまった。一人暮らしで、最近はバイトもやめたばかりで人と接する機会が減っていて尚更楽しく感じた。     『すいません///』   私が下を向くと花苅さんは笑いだした。      『気にしないでよ』   『兄弟みたいに仲が良いでしょ?本当うるさくて…』咲惠さんも微笑んでいる。            本当に仲が良いらしい。

    2009-02-24 01:20:00
  • 40:

    名無しさん

    『ったく…』      飛鳥さんが煙草を床に放り投げて座り込む。    『咲惠茶をくれ』    『はい』        咲惠さんが台所へと向かって行った。       『君はどーするんだ?』 飛鳥さんが肩膝を立てながら私の顔を見る。     (何だか違和感が…)   『私ですか?』     一瞬何か頭を過ったけれどすぐに消えてしまった。 『私はもう帰ります』  時計を見ると深夜一時を回ってしまっていた。               『だめだよ』      花苅さんが横になって私に声をかけてきた。    『?』         『危ないじゃない』   目を丸くしてこちらを見ている。         『大丈夫ですよ?』   少し笑うと花苅さんが真剣な顔をして布団から身体を起こした。                   『今まで変な人に襲われた事は?』        私を見る事は無く首を下へ向けて目を瞑っている。 飛鳥さんはさっきと同じ体制で煙草を吸っている。 『あります…けど』   一瞬花苅さんの指が動く。『ストーカーには?』  『無いことも無いです…』確かに私は一人暮らしのせいで、何度か怖い思いをした事がある。      危ない事もわかってはいるし若干心細いけれど、迷惑はかけられない。

    2009-02-24 18:45:00
  • 41:

    名無しさん

    『やっぱだめだよ』   体調が戻ってきたのか、顔には血の気が巡っている。『え?』        『危なすぎ。ね飛鳥君』 『………』       飛鳥さんは黙って頷く。 『今晩は泊まっていきな』花苅さんが優しく微笑む。『でも…ッ』      『僕達が迷惑をかけてしまったんだからこれくらいはしないとじゃない?』  頭を押さえてゆっくりと立ち上がる。                   『痛いか?』      飛鳥さんが座った状態で花苅さんを見上げる。   『ほんの少しね』    目を瞑って息をととのえると、トイレに行くと行って部屋が出て行った。               部屋の中には飛鳥さんと私の二人だけ。      物静かな飛鳥さんとは会話になるはずもなく静かな時間が流れる。      ほんの数分のはずなのに長く感じるのは何故だろう。奥の部屋からは咲惠さんがお茶を入れているのか、陶器がぶつかる音がする。

    2009-02-24 18:54:00
  • 42:

    名無しさん

    『あぁ…』       飛鳥さんは煙草を消すと掌で目を押さえた。    『……!?』      急に声を出されたものでこちらも驚いた。     『大丈夫?』      ゆっくりと現れたのはお茶を入れに行っていた咲惠さんだった。私の心も落ち着きを取り戻していく。              『痛いな…』      『外しなよ』      飛鳥さんがつぶやくと、襖の柱に身体を寄せている花苅さんが声をかけた。  『見えなくなる』    『夜だから良いじゃない』どうやら飛鳥さんは目が悪いらしく、コンタクトをつけているらしい。       『見えないのは中々辛いもんなんだがな…』    ため息を一つ洩らすと飛鳥さんはテーブルの前へと移動して、持ってきた鞄の中からコンタクト用の入れ物を取り出した。

    2009-02-24 19:01:00
  • 43:

    名無しさん

    咲惠さんがゆっくりと飛鳥さんの前に湯呑みを置く。『悪いな』       『無茶は身体に毒です』 静かに飛鳥さんの背中をさすると、お盆を持って花苅さんの前へ移動した。  『悪いね』       花苅さんは湯気の出る湯呑みを受け取ると、そーっとお茶を飲んだ。     『あなたも…』     咲惠さんは微笑んで私の前へと座り込んだ。    『あ…ッ!すいません!』私が頭を下げると肩を撫でてくれた。       『春とは言えど夜は冷えますからね。薄着の様だし藍ちゃんから服を借りてきましょうか』       咲惠さんの微笑みには女の私もさすがにやられる。 『すいません///』   きっと私の顔は真っ赤な筈だ。顔が燃えるように熱い。            『さっちゃんにそんな事されたらドキドキするよねー』花苅さんがゆっくりとテーブルに湯呑みを置いて布団の上へと座り込む。   『あ…はい///』    下を俯くと咲惠さんはクスリと笑って部屋からでて行ってしまった。                 憧れてしまう程の品の良さに私は心地よさを覚えてしまったらしい。

    2009-02-24 19:11:00
  • 44:

    名無しさん

    『いって…ッ』     飛鳥さんが小声で呟いた。『大丈夫かい?』    花苅さんが飛鳥さんの肩に手を乗せる。      『今日はとくに痛む』  歯を軽く食い縛りながらゆっくりとコンタクトを外す。  『また資料と睨めっこしてたんだろ?仕事熱心だからねぇ。でもあまり勉強しすぎりとそれなりに負担も大きくなっちゃうよ?』  飛鳥さんは片方のレンズをコンタクトケースに直すと蓋を閉めた            『目が見えなくなるまでに全部記憶してやるさ』  静かに鞄から目薬を取り出して目にさす。     『可愛くないねぇ…』  花苅さんがポンポンと二回肩を叩いた。      飛鳥さんはコンタクトケースを鞄に直そうとしている。    (ん?)         『あの…』       私は自然と声を出していた

    2009-02-24 21:47:00
  • 45:

    名無しさん

    『飛鳥さん、片目だけコンタクトなんですか?』     飛鳥さんは私が話かけた事に少し驚いてはいたけれど静かに返事をしてくれた。『あぁ』        その割には様子がおかしい            すぐ近くの物も見えないらしく湯呑みを倒しそうになりながら湯呑みを掴んだ。それなら両目ともコンタクトなはずなのにな…なんて思いながら飛鳥さんを見ていた

    2009-02-24 21:59:00
  • 46:

    名無しさん

    『遅くなってごめんなさいね?藍ちゃんに掴まれてしまって逃げれなくて』  咲惠さんが襖の横で笑っている。         胸には藍子の物と思われるパジャマが抱えられていた『はいどうぞ』     咲惠さんがパジャマを私の膝に置いてくれた。   『すいませんッ!!!』 私が頭を下げると咲惠さんは困った様な顔をする。             『謙虚な子ね』     私の頭を数回撫でると下を向いて目を瞑った。   『私は偉い人じゃないの。そんなに謙虚に振る舞われたら困るわ?』     最後には微笑んで私の腕をつかんだ。       『今日でお友達になれたんだし、ね?』      『はい…』       私は素直にうれしかった。今まで私は施設にいたためか、人との付き合いが苦手で学生の時も藍子以外とはあまり付き合いをもたなかった。         狭く深くの付き合いが自分が傷つかない唯一の方法のような気がしていた。              口で言われただけなのに、私は素直に嬉しかった。

    2009-02-24 22:29:00
  • 47:

    名無しさん

    『ふふ』        花苅さんが私と咲惠さんを見て笑っている。    『何?紺之』      咲惠さんは楽しそうな花苅さんに微笑み返す。   『いやぁ、姉妹の様でね!見ていて楽しいよ』   花苅さんもにこやかに微笑んでいる。       『あらそう?』     咲惠さんは一瞬目を瞑って下を向いた。                  ガタン…                    飛鳥さんが無表情のまま立ち上がる。       『悪いが寝るぞ』    『私気を悪くッ…』   飛鳥さんは俯いたまま立ち上がった私の肩に手を置いた。          『そんなわけないだろう。ただ目を使い過ぎたもんで頭が痛いだけだよ。それにもう二時を回ってる。お前達も寝ないと体を壊すぞ』飛鳥さんはそれだけ言うと、違う部屋へと移動した。

    2009-02-24 23:36:00
  • 48:

    名無しさん

    花苅さんは指で顔をかきながら時計を見る。    『本当だね』      『あら…』       何だか残念な気がした。 少しの間なのに何故だか居心地が良くて、もう少しこのまま皆で話がしたいと思ってしまっていた。   『寝るとこどーする?藍ちゃんの部屋行く?』   『起きた時に藍ちゃんが驚いてしまうわ。私は違う部屋で寝ましょうかしら』 そう言うと束ねていた髪を下ろした。       背中位まであるサラサラの髪は綺麗に輝いていた。               『やめてよ咲惠ちゃん。僕ドキッとしちゃったよ』 花苅さんはほんの少し顔を赤らめている。     『以外に純粋ね』    咲惠さんは鼻で笑うと私の方を向いた。      『一緒に寝ましょうか』 優しい顔で私を見る。  『はいッ』       『良いなぁ』      花苅さんが布団に伏せながらぶつぶつと独り言を喋っている。                    『おやすみなさい』   咲惠さんは冷たい目で花苅さんに手を振る。    『おやすみぃ』     花苅さんの悲しそうな声だだんだん小さくなる。  咲惠さんが先に別の部屋へと移動したのを見て、私も花苅さんに挨拶をした。             『お先にすいません』  花苅さんは顔を伏せていたために私に気がつかなかったらしく驚いていた。  『おやすみぃ。今日はごめんね?ゆっくり寝ると良いよ。また明日ね』    布団に顔を乗せて笑っている。                      『花苅さんも身体に気をつけて下さいね』     私は頭を下げて部屋を後にした。

    2009-02-24 23:51:00
  • 49:

    名無しさん

    咲惠さんが入って行った部屋はギリギリ見える所にあって、急いで中へ入る。  『失礼しまーす』    中へ入ると、暗い部屋の中で咲惠さんが服を着替えている最中だった。    『あッ!すいません///』 私が部屋から出ようとすると咲惠さんは笑った。  『気にしないで。七緒ちゃんも着替えないと…』  パジャマのボタンをつけながら笑っている顔が暗がりに見えた。       『そういえば…』    私もまだ着替えが終わってなかった。       焦って着替える。                『楽しかった?』    咲惠さんは布団の中に入りながら静かに質問をしてきた。          『はい!』       『ごめんなさいね?飛鳥怖かったでしょ…』    咲惠さんが悲しそうな声を出した。

    2009-02-25 00:00:00
  • 50:

    名無しさん

    『いえ…』       咲惠さんの悲しそうな表情に私は気がついた。   『飛鳥さんは…』    私が口を開くと咲惠さんのいつもの表情が戻り、私を見つめている。     『咲惠さんとは?』   聞いて良いのかわからなかったけれど、ここにいれば誰しもが気になるだろうと私は思った。                  咲惠さんは一瞬目を開いて、私を見たけれどすぐにうつむいてしまった。   『今は友達よ?』    『今は?』       私はずけずけと咲惠さんの心の中へと入る。    『少し前はね。私の恋人とも言える人だったの』  (やっぱり…)      二人の関係は怪しかった。            『あの人は去年事故を起こしてしまって、左目を無くしてしまったの』    『左目!?』      私は驚いてしまった。  確かに左っかわの方が前髪が長くて見えにくかったけれど確かに目があった。 『あの人の左目は義眼よ』衝撃をうけた。     確かに動いていたし、きちんと瞬きもできている。 なのに…。        (何て事をッ…)     ふと思い出した。    『片目だけコンタクトなんですか?』         確かに私は飛鳥さんに聞いてしまっていた。    空気の読めない最悪な女だったと今は後悔するだけ。

    2009-02-25 23:49:00
  • 51:

    名無しさん

    『私が運転していた車の助手席に座っていたんだけどよそ見が原因で他の車と衝突してその時割れた硝子の破片が左目に…』    やっぱり咲惠さんは悲しそうな顔をした。     『そんな…』      私の声を聞いて咲惠さんは私に向かって悲しそうに笑った。         『ひどいでしょ?』   『そんなつもりじゃ…ッ』私が勢いよく咲惠さんの腕をとったもんで咲惠さんはほんの少し後ろへ下がった『すいません…』    静かに謝ると咲惠さんは私の頭を撫でてまた話を続けてくれた。
                『私が飛鳥を前にすると泣いてしまうからと言って別れようって話になったの』『………』       私にはわからない。   今でも好き同士なら寄りをもどせば良いのに。   『もどらないんですか?』『私からは何も言えないから。私の我儘であの人を振り回し過ぎたのよね。もしかしたらあの人はもう私の事は友達としか思ってないかもしれないし…ね?』 笑ってはいるけど目が笑ってはいない。

    2009-02-26 00:06:00
  • 52:

    名無しさん

    しおり☆

    2009-02-26 03:48:00
  • 53:

    名無しさん

    続き気になる?

    2009-02-27 22:36:00
  • 54:

    名無しさん

    おもしろいから結構楽しみにしてたのに、結局途中で書かんくなるんや?

    2009-03-07 01:38:00
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