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『あの夏を もう一度』
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1:
◆/fmXna4sZY
耳をすませば 今も聞こえてくる
あの日の 波の音
指の隙間から 零れ落ちる砂のように…
いつか、消えてしまうの?2006-05-22 04:35:00 -
46:
◆/fmXna4sZY
『…で、どこに向かってるの?』
コンビニに立ち寄って買った菓子パンを頬張りながら、ハンドル片手にタバコを吸う伊織に聞く。
「ん、…懐かしいとこ。」『懐かしい?なに?』 「ま、着いてからのお楽しみじゃん。食べながらいい子にしてなさい。笑」 『……あっそ。』
懐かしい場所?
あたし達の懐かしい場所って言ったらやっぱり――…2006-05-28 16:25:00 -
47:
◆/fmXna4sZY
「はいとうちゃーく!姫、足元にお気を付けてっ。」『…ん?あ、ごめん。ウトウトして……え・・?』
…予想を反する目の前の光景に、ただ驚いた―――
『ココ…って圭吾の家?』なんで………2006-05-28 16:37:00 -
48:
◆/fmXna4sZY
「懐かしいだろ?昔はみんなで…しょっちゅう集まったよな。」
伊織は、遠い記憶を思い出すように――‥反射する太陽の光を、眩しそうに目を細めた。
『…圭吾に会ったの?』 「会ってないよ。」 『そう…』
【伊織と圭吾】。誰よりも仲が良かった二人の間に、修復のきかない━亀裂━が入ってしまったあの日。 あたしはただ悲しくて、 一人で海を眺めていたんだ。2006-05-28 17:35:00 -
49:
◆/fmXna4sZY
…懐かしい場所っていうから、てっきり学校かその近くの遊び場だと思ってたのに。
伊織と圭吾が顔合わすのも二年ぶり。昔は、良く三人でも遊んでたのにな… なんだか今は、自分のいる立場にすごく緊張する。 「んじゃ、呼びますか。」『…え?あぁ、うん…。 ってか、大丈夫なの?』 「何が?」『圭吾の事…』「どしたの?泉が心配しなくてもいいよ。」
伊織は、あたしの頭を軽くポンポンと叩いた。
ピンポーン――2006-05-28 17:55:00 -
50:
◆/fmXna4sZY
ガチャ――
「はい…え……いお…り」この時の圭吾の表情は、きっと忘れられない。伊織を見た時の、圭吾の表情は―
「圭吾、久しぶり」
「…な…んで?ココ……お前今まで何処…に?」
「んーちょっとね。まぁ、色々あって。」2006-05-29 03:30:00 -
51:
◆/fmXna4sZY
「………あ…れ?泉…?」『あ…いや、さっき伊織に呼ばれてさ。……元気?一ヵ月ぶりだね。』
一ヵ月ぶりに見た圭吾は、長かった髪を切って、前より垢抜けた気がした。
「ま、なんだし中で話そうよ。圭吾、今いける?」 「お…おう……」2006-05-29 03:35:00 -
52:
◆/fmXna4sZY
都内で一人暮らしをする圭吾の家――。1LDKのマンション。
一ヵ月前までは、あたしも同じ【鍵】を持っていた。『…お邪魔します。』
去年の誕生日に貰った、赤と青のリボンのついた二つお揃いの鍵。そう、あたしと圭吾は大学を卒業してからココで同棲していた。
今はもう、“ただいま” じゃないけれど――…2006-05-29 03:46:00 -
53:
◆/fmXna4sZY
彼女と自分の違いを…痛感させられた気がしたんだ。
「でさ、圭吾話出来る?」「お…おう」
あたし達三人はとりあえずテーブルを囲んで腰を下ろし、あたしは一人、この緊迫したムードに落ち着きを取り戻せずにいた。2006-05-29 04:12:00 -
54:
◆/fmXna4sZY
「……実奈の事だけど」 「伊織っ…ごめんっ!!」
え――――??あたしは、目を疑った‥
伊織の言葉を遮るように放った圭吾の言葉。それと同時に、彼は床に両手と頭を付け土下座していた。
『ちょ…圭……吾?』 あたしは、何が何だか分からなくて…
「伊織っ…ほんとに、悪かった。俺が、俺が、あんな事しなきゃ……」2006-05-30 19:22:00 -
55:
◆/fmXna4sZY
『伊織…何?あんた達二年前に…何があったの?』 あたしの言葉に、黙って圭吾の姿を見つめていた伊織が、ゆっくりと口を開いた。
「圭吾、顔あげろよ…」 「……伊…織?」
「土下座なんてすんなよ。謝るのは…俺の方だよ。」
2006-05-30 19:31:00