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白い人間
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1:
正
深夜、正はフラフラと神戸市内のとある住宅街をさまよっていた。
下に紺色のジャージをはき、上は白の少しプリントされたTシャツを着ていた。
靴は履かず、家にあったスリッパをはいていた。
どこから見ても、これから恋人とご飯を食べに行くような格好ではない。
どちらかと言えば近くのコンビニに買い物をしに行くような格好をしていた。
しかし彼は恋人とご飯に行く事もなければ、コンビニにタバコを買いに行くのでもない。
2009-09-17 19:50:00 -
2:
名無しさん
あてもなく30分程歩き回り、近くにあった公園で休憩することにした。
その公園は公園と呼べるほどのものではない。
すべり台もなければブランコもない。
あるのはベンチと動物の形をし、石で出来た置物のようなものだけだ。
彼はベンチに座り、誰もいない公園を見回した後、さっき自動販売機で買ったコーラのペットボトルの蓋を開け、それを飲んだ。
『いないな…』
彼はそうつぶやいた。
2009-09-17 19:51:00 -
3:
名無しさん
昨日の事だった。
いつものように家族で夕食を済ませ、自分の部屋でくつろいでいた時だった。
彼より3つ年下の今年16歳になる弟が彼の部屋に入って来た。
そして唐突にこう言った。
『お兄ちゃん貞子のおばさん知ってる?』
2009-09-17 19:53:00 -
4:
名無しさん
貞子のおばさん…
おそらくリングという映画に出てくる貞子に似たおばさんなのだろうと彼は直感的に考えた。
正は『知らない』と答えた。2009-09-17 19:55:00 -
5:
名無しさん
弟の話によると、貞子のおばさんというのはこの地区では有名人らしく、ボサボサの髪に真っ白のパジャマを着て深夜この住宅街を歩き回っているおばさんらしかった。
2009-09-17 19:56:00 -
6:
名無しさん
『貞子のおばさんは普通の人の三倍の早さで歩き、角を曲がる時はまるで運動会の行進のように直角に曲がるんだよ』と弟は言った。
2009-09-17 19:57:00 -
7:
名無しさん
正はそんなおばさんの話を今まで一度も聞いた事がなかった。
『それは幽霊なの?』と正が聞くと弟は『生きてる…と思う』とだけ言い残し、彼の部屋を出て行った。
正はふとある事に気付いた。2009-09-17 19:59:00 -
8:
名無しさん
しかし彼がその日眠りにつく頃にはそんな弟の事は忘れ、弟が話していた貞子のおばさんの事が頭から離れなかった。
いや、頭から離れないというよりは気になるという表現が合っているのかもしれない。
2009-09-17 20:01:00 -
9:
名無しさん
正は弟から貞子のおばさんの話を聞いて怖いとは思わなかった。
そして興味をそそられた訳でもなかった。
正は無に近い状態で話を聞いていた。
しかしなぜかその話が今になって気になった。
その日正はなかなか寝付く事が出来なかった。2009-09-17 20:03:00