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記憶のかけら

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  • 1:

    目が覚めた時一番に目に入ったのは真っ白な天上だった。カーテンから漏れる光で目が痛い。何十年も土の下にいたミイラの様に僕は日ざしで目が潰れそうになった。

    2010-03-20 10:06:00
  • 2:

    名無しさん

    その時聞き慣れた声がした。「たかし!!」
    それは20年間聞いてきた声。母だ。なぜか母は泣きながら喜んでいる。声にならない声を上げて母がナースコールした。

    2010-03-20 10:09:00
  • 3:

    真っ白な白衣を着た男が慌てた様子で僕の目の前に立ち大丈夫か?と問いかけてきた。僕はその白すぎる白衣が何より嫌で「目が痛い、大丈夫じゃないよ」と言ったら医者らしき男は僕の目を人差し指と親指で広げ確認した。

    2010-03-20 10:10:00
  • 4:

    「目は特に異常ないみたいだ」ジョークだよと僕が言うと母はむすっとした顔をして少しうつむいた。

    2010-03-20 10:13:00
  • 5:

    部屋のドアがコンコンとなり「失礼します。」と僕が嫌いな真っ白な白衣をまとった医者らしき男達と目にやさしい淡いピンク色の服を来たナースらしき女達がぞろぞろと入ってきた。

    2010-03-20 10:16:00
  • 6:

    その時僕は事の重大さに気付き「ゆき!!」と声を荒げた。母が何か言おうとしたその時、目の前の真っ白な白衣の男は表情一つ変えず「ゆきさんはお亡くなりになりました」と呟いた。

    2010-03-20 10:17:00
  • 7:

    その瞬間頭が真っ白になり僕は意識を失った。
    意識が戻った時にはあの時の眩しさはなく真っ暗だった。

    2010-03-20 10:19:00
  • 8:

    起きたのにまだ闇の中を彷徨っている感じがした。この闇は永遠に続き、もう朝が訪れないようなそんな絶望間と孤独を感じた。不思議と涙は出なかった。泣き虫な僕なのに。

    2010-03-20 10:21:00
  • 9:

    朝、目が覚めるとそこには母がいた。おはようと言い僕の手をぎゅっと握った。すごく照れくさくて手を振りほどこうとしたけど思ったより力強く握り締められた手を見て僕は何かを覚悟した。

    2010-03-20 10:22:00
  • 10:

    きっと僕にとって、とてもつらい事を今から話すんだって。
    それは思った通りの結果だった。むしろそれ以上だったかもしれない。

    2010-03-20 10:24:00
  • 11:

    夜がこないでほしいと何度も思った。夜になると孤独感がより一層深まり深い闇の中に一人ぼっちの気がする。とてつもなくそれが怖かった。

    2010-03-20 10:25:00
  • 12:

    僕にはゆきと言う同級生の彼女がいた。
    彼女はとても気の弱いやさしい子だった。大学が一緒だった僕達はなんとなく話す様になり、なんとなく付き合いだした。

    2010-03-20 10:26:00
  • 13:

    どちらから告白したとかでもなくなんとなくだった。そんななんとなくな感じが僕にはとても心地がよかった。付き合った1ヶ月記念とか1年記念とかそう言うのがめんどくさい僕にとってゆきは、とても楽な相手であった。

    2010-03-20 10:28:00
  • 14:

    もちろん本気で好きだったし、相手もそうだったと思う。
    付き合いだして2年目、初めて旅行に行きたいとゆきが言い出した。

    2010-03-20 10:30:00
  • 15:

    付き合いだして2年目、初めて旅行に行きたいとゆきが言い出した。
    じゃあ行こうかと言って半年後に決まった沖縄旅行。なぜ沖縄にしたかと言うとなんとなくだった。

    2010-03-20 10:32:00
  • 16:

    どちらかが言い出した訳でもなく沖縄に決まり、泊まる民宿もなんとなく決まった。ゆきは人生出会った中で最も楽にいれる人だっただから僕は絶望間でいっぱいなのかもしれない。

    2010-03-20 10:37:00
  • 17:

    こんな自然体でいれる人ともう出会う事は出来ないと思う。ゆきが人生で最も僕に合ったパートナーだと思うから。

    2010-03-20 10:39:00
  • 18:

    母と話した時に母が僕に「2人で旅行なんて行かせなかったらよかった」と嘆いた。僕とゆきはそのなんとなく決まった沖縄旅行で事故に巻き込まれてしまったらしい。

    2010-03-20 10:41:00
  • 19:

    だが僕はまったくその事故の事が思い出せないでいる。医者は事故の後遺症でしょう。と言うが、その前に何をしたのかも思い出せないでいる。民宿についてからの記憶がぷっつり切れている。

    2010-03-20 10:44:00
  • 20:

    初めにゆきが死んだと言う話しを聞いてから何度も事故の事やその前の事を思い出そうとしても何一つ思い浮かんでこない。
    だから僕が事故の事を思い浮かべる時は、母や医者から聞いた、事実かもはっきり分からない話しを頭の中でイメージしていた。

    2010-03-20 10:45:00
  • 21:

    母は僕にこう言って聞かせた。「ゆきちゃんの背中にはたかしの手形がはっきりとついていたのよ。

    2010-03-20 10:47:00
  • 22:

    車道を歩いていた彼女は正面からくる車に気付かず、たかしが車に気付き彼女の背中を押したのよ。その衝撃で彼女は倒れ、あなたとゆきちゃんは車に巻き込まれたの。あなたはゆきちゃんを助けようとしたのよ。

    2010-03-20 10:48:00
  • 23:

    だから自分を責めるのはやめて。あなたは悪くないんだから。」と
    「そうだ。僕は悪くない。」僕は自分に言い聞かせた。そう思い込む事で気持ちが少し楽になれた。

    2010-03-20 10:51:00
  • 24:

    しかしそう思い込ませて保っていた気持ちもすぐに崩れさった出来事が起こったゆきの葬式の日。その日は風も強く大粒の雨が振り大きな雷が鳴っていた。
    僕は、僕の3メートル程前にゆきの母親が見えた。

    2010-03-20 10:55:00
  • 25:

    もともとゆきに似て小柄だったが前にも増して背中が小さく見えた。
    彼女は声を押し殺しながら小さな背中をびくびく揺らしている。
    細い腕の先にある小さな拳を握りしめ震えていた。
    前より明らかに老けた姿に僕の胸がしめつけられる。

    2010-03-20 11:03:00
  • 26:

    名無しさん

    自分の命を失ってでも彼女を守る事が正解だったんじゃないのか。
    守れなかった僕が全部悪いんだ。
    「僕のせいだ…僕の…」そうぼそっと呟いたその時、悪魔の様な声が「そうよ。あんたのせいよ」と耳もとで 囁いた。

    2010-03-20 11:06:00
  • 27:

    一瞬そら耳かと思い顔を上げるとやつれきった表情の女が立っていた。ゆきの母親だ。
    彼女は何かにとりつかれているんじゃないかと思う程やつれ、痩せ細っていた。

    2010-03-20 11:10:00
  • 28:

    僕はびっくりし、一瞬言葉を失ったが、すぐに「本当に申し訳ありませんでした」と深々に頭を下げた。
    彼女は黙って、僕の目をじっと見つめた。
    暑くもないのに僕の額にうっすらと汗がにじむ。

    2010-03-20 11:12:00
  • 29:

    怒鳴られるのか?ひっぱたかれるか?と思った次の瞬間低い小さな声で「帰れ…」と卸したての喪服に唾をはいた。

    2010-03-20 11:15:00
  • 30:

    とても悲しかった。
    まだ怒鳴られたり、ひっぱたかれた方がよかったかもしれない。彼女は僕にそれすらする気もしなかったのだろう。

    2010-03-20 11:18:00
  • 31:

    帰り道ゆきを失って初めて泣いた。
    今までこらえてきた物が溢れだして止まらなかった。人目も気にせずわんわん泣いた。
    家に着いた時には僕の顔は見事に腫れあがっていた。

    2010-03-20 11:19:00
  • 32:

    あれから1ヶ月。 僕は部屋に引きこもっている。
    何もする気がしない。どこかに出かける気にもならない。もちろん大学にも行ってない。生きる事すら投げ出してしまいたい。そんな状況だった。
    何週間ぶりに鏡に映った自分を見るとやつれた感にびっくりしてしまう。

    2010-03-20 11:22:00
  • 33:

    ゆきの母親のやつれ様に驚いてしまった自分は人の事を言える立場じゃないなと笑えた。笑ったのは何週間ぶりだろう。今まで当たり前の様にしていた事がだんだん出来なくなってきている。ご飯が食べられなくなって最後は呼吸すらできなくなってこのまま死んでしまうんじゃないかと思う時もある。

    2010-03-20 11:25:00
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