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あの空と秘密ごと。
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1:
つむじ
入道雲。
蝉の鳴き声。 首を流れる大粒の汗。 君に大きな嘘をつく。 あの夏の物語。2010-06-29 02:37:00 -
2:
つむじ
少し曇った空。
顔を見せては陰る太陽。 天気予報から始まる朝。 画面の中から笑い声。 平凡な一日が始まる。
2010-06-29 02:45:00 -
3:
つむじ
「井上!」 振り返れば暑苦しい笑顔。「何でしょう」 「今日は外で飯食うぞ」 自分の腕を見下ろす。 手には白いビニール袋。 「俺、弁当買って…」 「冷蔵庫に入れておけ」 肩に腕が回される。 ごつごつとした男の腕。 何だか少し羨ましい。 「早く用意しろよ」 袋を見つめて考える。 (まぁ、良いや) 弁当は晩飯に決定。 面倒事は早めに解決。
2010-06-29 02:54:00 -
4:
つむじ
麺をすする。 冷房の効いた店内の壁には古びたポスター。 何だか良く分からない水着姿の女の子が瓶を片手に笑顔を見せている。 「櫻間先輩」 「あぁ?何んだよ」 先に出てきた炒飯を掻き込みながらこちらを見る。 これからラーメンもくるというのに良く食う人だ。 「俺今月きついんすよ」 「んー?」 少し腰を浮かし、調理場で忙しく動き回るおじさんの様子を伺っている。 待っていればいつかは来るだろうに、せっかちだ。 「こないだも言いました」 そう、言ったはずだ。 財布の中も見せた。 なのにどうして…。
2010-06-29 03:04:00 -
5:
つむじ
「会計なら心配すんな」 心配するな? 食い逃げでもする気か? そうであるのならば逃げる先輩は放っておいて警察を呼んでしまおう。 店のおじさんに迷惑を掛けるのは良くないと思う。 「食い逃げですか?」 そう問えば飯が飛んだ。 むせる先輩に備え付けられたティッシュを手渡す。 「汚いっすよ、ほんと」 「お前なぁ!聞かれたら」 咳き込む先輩を余所に冷えた麦茶を喉に流し込む。 涙目でテーブルを拭く先輩との間にぬっと伸びる腕。もくもくと立つ湯気。 腕の先には笑顔の店主。
2010-06-29 03:13:00 -
6:
つむじ
「金は払えよ?大悟」 暫しの無言。 店主の腕からラーメンを受け取り箸を割る。 パキン。 木が裂ける独特の音。 先輩が漸く動き出す。 「あんなぁオヤジ、俺だって男だ。社会人なんだ」 ポケットから取り出した財布を店主の胸にとんとんとリズミカルにぶつけながらそんな事を呟いている。
2010-06-29 03:21:00 -
7:
つむじ
「後輩の分を出してやんのも先輩の仕事の内ってよ」 言い切り財布から一枚。 湯気越しにそれを見る。 0が四つ並んで見える。 珍しい事もあるもんだ。 今日は非日常に入るだろ。 「ごっそさんです」 「可愛げねぇんだよ!」 こっちを相手にしてる内におじさんは0の四つ並んだそれをポケットへしまい込んで厨房へと消えてゆく。 「おいこらオヤジ!」 暑苦しい。 視線を器の中へと戻す。 間の抜けた自分の顔。 昔もこんな顔だったのか。
2010-06-29 03:31:00 -
8:
つむじ
「梓!見て!」 「何それ、」 小さな手の平の上。 白く光る砂。 「星の砂って言うの」 「これ星なの?」 小さな小さなその粒は皆が皆不細工な星の形。 まるで自分の絵のようだ。不揃いな砂を見てそんな事を思い浮かべる。 「本物じゃないよ」 「じゃあただの砂なの?」「うん、そう」 頷く幼い少女。 「だけどね」 眩しい程の笑顔。 頬が赤くなる。
2010-06-29 03:37:00 -
9:
名無しさん
この砂を大切に持ってれば 願い事が叶うんだって、
2010-06-29 03:39:00 -
10:
つむじ
そう言って笑った君はポケットの中からこれまた小さな瓶を取り出した。 「お土産なの」 「誰からの?」 小さな手の平で並ぶ二つの瓶を眺め、問い掛ける。 「お兄ちゃん」 何だかぽっかり開いた胸。この気持ちは何だろう。 寂しいようで悲しい。
2010-06-29 03:43:00