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背徳者〜血の報復〜

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  • 1:

    名無しさん

    王位を廻って疑心暗鬼と策略による内乱が続くローズ帝国……
    この黒い渦は、力を求めず只々平穏を求めた者達さえも巻き込み暗い水底に沈めていった

    2010-07-29 00:32:00
  • 2:

    名無しさん

    『ギャーーー!』「キャーー」

    夜も更けきった頃、大きな館に断末魔が鳴り響いた。
    寄り添うように眠っていた幼い兄妹達は、飛び起きるように目を覚ました。

    2010-07-29 00:34:00
  • 3:

    名無しさん

    「ガルスお兄様…今の何?…こわいよ」
    『あぁ。父様と母様の部屋からだ。何かあったのかも。様子を見てこよう。大丈夫だよユリア。僕がついてる』
    オリーブランプを手に兄ガルスがユリアの手をひく。

    2010-07-29 00:37:00
  • 4:

    名無しさん

    いつもと何かが違うそう思いながら廊下を進む。そんな不安からか歩きなれたはずの廊下は果てしなく、永遠に続いているかのように感じた。
    「お兄様…こわい…何か変だよ?」
    『……大丈夫。僕がまもってあげるから』
    そうは言ったものの、やはり何か変だ。

    2010-07-29 00:40:00
  • 5:

    名無しさん

    静かすぎる。
    この館には門番の他に、館内には召し使いが数人。
    あの大声を聞こえていない筈が無いだろうに……誰も訪れる気配がなかった。
    (何かまずい事が起きている…?)
    ガルスの額にジワリと汗が滲んだ。

    2010-07-29 00:44:00
  • 6:

    名無しさん

    永遠に続くかのように思われた廊下もあとわずか、ようやく目的地だ。
    寝室に辿り着いた兄妹は何かを察知し、扉の前で固まった。
    父と母の部屋から物音が聞こえる。嫌な空気が立ち込めていた。
    【入るなっ!】本能がそう叫んでいる。
    しかし本能の叫びよりも、父母の安否の確認の方が勝った。

    2010-07-29 00:50:00
  • 7:

    名無しさん

    「お兄様…こわい…」
    ガルスは返事の代わりに妹の手をギュッと握り返した。

    そして妹の額にキスをし『ユリア、お前はここにいて…』
    そう言いガルスは寝室のドアに手を掛けた。
    「待って!ユリアも行くっ」

    2010-07-29 00:53:00
  • 8:

    名無しさん

    ――バンッ――
    ドアを力の限り押し開け、ガルスは部屋へ飛び出した
    『……何だ…これは…』
    ガルスは呆然とたちつくした。これは夢かもしれない…。そうだ夢だ。
    (はっ!ユリアっ!この部屋を見せちゃいけない)
    『来ちゃ駄目だ!!』
    直ぐ様割れに返り、大声で怒鳴りつけたが、少しばかり遅かった。小さな妹は、兄に続きすぐ後ろまで来ていた。
    空かさずガルスはユリアを制止させようと小さな妹を抱き締めた。
    しかし9つになったばかりのガルスの体では、この部屋の有り様をユリアから隠す事はできなかった。

    2010-07-29 01:04:00
  • 9:

    名無しさん

    ユリアがガルス越しに見たその先には地獄絵図が広がっていた。
    5つになったばかりの幼い妹は父母に何が起きたのかわからず立ち尽くしている。
    部屋は散乱し、辺りは血の海と化していた。
    先日、兄妹が父と母に送った手作りの花の髪飾りと月桂樹の髪飾りは無残にも踏みつけられ、血の色に染まっていた。
    兄妹の足元のすぐ先に、体から切り離された父が転がっていた。

    2010-07-29 01:12:00
  • 10:

    名無しさん

    小さな妹は床に転がる父を呆然と見つめていた。
    そして、ゆっくりと視線を上げたその先に寝具に横たわる母が見えた。
    すらりと伸びた長いあの足は母様に違いない。
    そう思った瞬間、ユリアは兄の制止を振り払い走りだした。
    『まって!行っちゃ駄目だユリア!!』
    「母様っ!!」
    ユリアは明かりも持たず無我夢中で走りだした。
    血の絨毯を走り抜けユリアは母の元へと駆け寄った。

    2010-07-29 01:22:00
  • 11:

    名無しさん

    母様のスラリとした足は月の光に照らされ、いつも以上に美しくみえた。
    もう少しで母様にたどり着く!
    月の光だけを頼りに暗闇を駆けたせいか、母まであと僅かという所で何かに躓き転んでしまった。

    2010-07-29 03:59:00
  • 12:

    名無しさん

    とっさに受け身を着いた手の先に、生暖かい液体と濡れた絹糸のような物が絡み付く。
    この手触り、知ってる。
    この絹糸は…長い絹糸は!!!そんなまさか!

    2010-07-29 04:00:00
  • 13:

    名無しさん

    視線を後ろに向けると、オリーブランプを手にしたガルスがユリアの元へ近づいて来ていた。

    『ユリア…見ちゃいけない。さぁ…こっちにおいで』

    (まさか…まさか…)
    ユリアは視線を再び絹糸へと戻す。

    2010-07-29 04:02:00
  • 14:

    名無しさん

    ランプに照らされたそれは見覚えのあるものだった。
    金色に輝く綺麗な絹糸。
    お兄様と同じ綺麗なブロンドの髪。
    そのブロンドを辿り見ると首だけになった母が転がっていた

    2010-07-29 04:03:00
  • 15:

    名無しさん

    「いやぁーーー!!!!いやぁーー!!母様ぁー!!父様ぁ!!」
    ガルスは小さな妹に駆け寄り、再び強く抱き締めた。

    2010-07-29 06:05:00
  • 16:

    名無しさん

    「うるせーよ!」
    ガルスの背後から男の声が聞こえた。闇夜に溶け込むように隠れていたのだろう振り返ると全身黒づくめの男が現れた。

    2010-07-29 06:05:00
  • 17:

    名無しさん

    「お嬢さまー、ちょっと静かにしてくれないかな?折角、見逃してやろうとしたのに、起きて来ちゃったの?そう騒がれるとマズイんだよね。」
    兄妹の背丈ほどもある大剣を構えた男が立っていた。大剣は血で赤く染まっていた。

    2010-07-29 06:08:00
  • 18:

    名無しさん

    『お前か!父上と母上を殺めたのは!いったい何の為に!』
    ガルスは小さな妹を背後に回し勇敢にも男にくってかかった。

    2010-07-29 06:08:00
  • 19:

    名無しさん

    「見りゃ分かるだろ。僕と相棒(大剣)がやったに決まってる。ちなみに門番ちゃんとメイドちゃんも今ごろ冥土さ。なんちゃって。何の為にって忠義の為さ。主のご命令なんでね。僕を見てしまった君達は念の為ここで死ななきゃいけない決まりなんだけど。…参ったなぁ…お子ちゃまを切る趣味はないんだよね。僕も相棒も。そこで提案なんだけど―」
    『ふざけるなぁぁぁー!!』
    ペラペラとよく喋る男の言葉を遮り、ガルスが叫び走りだす。

    2010-07-29 06:11:00
  • 20:

    名無しさん

    護身用の短剣を懐から取り出し、男目掛けて降り下ろした。
    ―ガシャンッ―
    男の一蹴で短剣は床に落ち、ガルスも床に倒れこんだ。
    『っつぅ…』
    「お兄様!!」
    ユリアは落ちた短剣を広いあげ兄のかわりに男に立ち向かった。

    2010-07-29 06:11:00
  • 21:

    名無しさん

    『やめろ!ユリア』
    ―ガシャンッ―
    再び短剣は床に落ち、ユリアは男に腕を捕まれ暴れている。

    2010-07-29 06:14:00
  • 22:

    名無しさん

    「はなせ!父様と母様の敵!殺してやる!殺してやる!」
    「言われなくてもはなすわよ!うるさいなぁ。」

    ―ドスンッ―
    「きゃっ」
    ユリアは僕の側まで投げ飛ばされた。

    2010-07-29 06:21:00
  • 23:

    名無しさん

    (無理だ…勝てない…今の僕じゃ勝てるわけがない。ユリアだけでもなんとかしなければ…なんとか…くそっ!どうすれば…)

    2010-07-29 06:22:00
  • 24:

    名無しさん

    『妹は…妹だけは殺さないでくれ…頼む…いや、お願いします』
    ガルスは床に這いつくばり額を父母の血で染まった床に強く押し付け懇願した。

    2010-07-29 06:24:00
  • 25:

    名無しさん

    「話は最後まで聞きましょう。僕も相棒も子供は切らない趣味なの。起きて来なきゃ泥棒の仕業って事になったのに。そこで提案。君達は死んだ者として処理するから、この館から去りひっそり生きていくなら見逃してやってもいいよ。どうする?」
    軽い調子で男が問う。

    2010-07-29 06:25:00
  • 26:

    名無しさん

    『も…もし、僕達が喋ったら?』
    「主の耳に届いたなら、証拠隠滅の為に君達も関わった人達もお亡くなりになるね。僕も危ないし。いや僕の立場も危ないよな本当。やっぱり今殺っちゃった方がいいか―」

    2010-07-29 06:27:00
  • 27:

    名無しさん

    『…くっ…わかった。絶対に言わない。言う通りにしよう。ただ…最後に一つだけ…』
    「ん?」
    『お前の主は誰だ。』

    2010-07-29 06:29:00
  • 28:

    名無しさん

    「君達の親族に…王族に決まってるじゃん。僕の主は慎重な御方でね。脅威となる可能性がある者は始末しちゃう主義なの。君達は兄妹は幼いから脅威にもならないでしょ?だから見られない限り生かせと言われていたんだけどねぇ。起きてきちゃうんだもん。プッ。
    じゃあ僕の気が変わらないうちに、さっさと出てってくれる?後始末があるからさ」

    「嘘…そんな…」
    『……』

    2010-07-29 06:32:00
  • 29:

    名無しさん

    ガルスは一度大きく深呼吸をし、それから立ち上がりった。小さな妹を抱き起こし優しく囁いた。
    『ユリア…行こう』
    「待ってお兄様。父様と母様が…父様ぁー母様ぁー!必ず戻って来るから。必ず敵を打つから!」
    父と母をこのまま残して去るのは無念だった。急がねば。男の気が変わらぬうちに館から去り、逃げなければ。強引にユリアの手を引いて部屋を後にした。


    (父上、母上、いつかかならず……………)

    2010-07-29 06:39:00
  • 30:

    名無しさん

    序章は終了
    まだ続きます

    2010-07-29 07:00:00
  • 31:

    名無しさん

    いや、もう続かなくていいよ。うん。

    2010-07-30 22:32:00
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