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痛い愛
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1:
さゆ
掴まれた髪が痛い
締められた首が痛い
蹴られた背中が痛い
心が痛いよ2011-01-02 00:11:00 -
2:
さゆ
某年-4月
北原沙雪(きたはらさゆき)こと、さゆは新入社員として社会人として新しい一歩を踏み出していた。
資格のいる技術職で、周りの社員は9割男性。事務員はほぼ女性だったけど、さゆの配属される現場では、100名ほどの社員の中で女性はさゆの同期を含めて10人程度。拘束時間が長く、汚く、きつい、そんな仕事なので女性はすぐに辞めてしまうらしい。
「北原さんは、目立つタイプやからモテモテになってしまうんちゃうかな?」2011-01-02 00:34:00 -
3:
さゆ
県外から出てきたさゆのお世話をしてくれている人事の小川さんが、そう言いながら優しく笑った。
目立つタイプと言われたが、特別美人でも可愛いくもない。ただ、この職につくまでは水商売にどっぷり浸かっていたからその匂いがするだけ。
髪の毛も焦げ茶色にし、メイクだってアイラインも引かずにマスカラだけにしているけど、きっと水商売の匂いは残ってるんだと思う。2011-01-02 00:44:00 -
4:
さゆ
「あー。確かに視線感じます。でも、みんな話しかけてくれないんですよね。私から話しかけた方が良いんですかね?」
お昼休みにはいつもの喫煙所でヒゲさんと軽く喋るのが日課になっている。ヒゲさんだけじゃなく、小川さんも一緒になることが多く、今日も三人で話していた。
「北原さん、性格きつそうに見えるもんね。」
優しく笑いながら軽く傷つけてくる小川さん…。人事部長の彼はまだ若く、クールな外見とは違ってお茶目な一面のある優しい人だ。2011-01-02 01:16:00 -
5:
さゆ
「えっ!?私めっちゃフレンドリーなんですけど〜ちょ〜優しいし!」
「おまっ!自分でゆうなよ!可哀想だけど、すっごい生意気そうに見える。」
ヒゲさんにまじまじ言われてちょっとへこむ。
「まぁ、北原さん、気い付けなあかんよ。みんな狙ってるよ。北原さんのこと。なぁ、ヒゲも狙ってるやろ?」2011-01-02 01:25:00 -
6:
さゆ
「えー私、ヒゲ伸ばしてる人無理っす!すいませーん!」
「うわっ!俺、彼女いてるのにふられた!好きじゃないのにふられた!」
そんな冗談を言い合える職場。さゆはこの会社に入って間違いじゃなかったと思っていた。
あの人と出会うまでは。2011-01-02 01:30:00 -
7:
さゆ
入社して3月程たった7月のある日、その日は仕事が終わったのが遅く、会社を出たのはもう11時を過ぎていた。
会社の近くのマンションに住んでいたさゆは、弁当を買って帰ろうとマンション近くのコンビニに入った。
「あれ?北原さん?」
突然声をかけられて振り返ると、会社の制服を着た男の人が立っていた。2011-01-02 01:41:00 -
8:
さゆ
部署が違っていたので、名前が出てこなかったが顔に見覚えはある。
―やばい。名前出てこんのやけど…。
「あっ、7班の杉本やで。分かる?急に声かけてごめんな。」
焦っていたのが伝わったのか、どこの部署の誰かを言ってくれた。班とは、部署のことで、1〜10までの班が有る。ちなみにさゆは1班だ。2011-01-02 01:57:00