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じゆうがちょう

  • 1:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺らはいつも三人一緒。俺と裕司と梅子と。押し入れには古い自由画帳があって、半分くらいまでクレヨンで描いたヘタクソな絵がびっしり。
    どの絵にも男二人に女一人、俺と裕司と梅子。
    どんだけ仲いいねんてなあ。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-07-31 06:34:00
  • 2:

    ◆lZf.ArgVp2

    蝉の声がうるさい。俺は昨日クラスの奴に借りたファイナルファンタジー徹夜でやってて寝てへんねん。
    ぶっちゃけ眠かってんけどなかなかセーブポイントがみつからんかって、やっと今寝ようとしたら蝉が鳴き出した。
    俺わりかしデリケートやねんな。寝れへんやんけ。
    その状態から一時間くらい、ようやく眠りの神が降臨してウトウトしだした頃。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-07-31 06:41:00
  • 3:

    ◆lZf.ArgVp2

    「りゅ〜う〜い〜ち〜」
    …………裕司や。今何時やおもてんねん。げっまだ七時や。
    「うるさい!!!まだ七時や!!!!!」
    「もう七時やろ〜朝マックしよー」
    二階のベランダから叫ぶと下で裕司がへらへら笑っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-07-31 06:44:00
  • 4:

    ◆lZf.ArgVp2

    駅前のマクドで俺は寝てへんし食欲ないわー言いながらソーセージエッグマフィンを2個頼んだ。育ち盛りやからしゃあない。裕司は俺と同じプラスホットケーキと芋のなんか塊をあげたやつみたいなんあるやん?それを4個も頼んでいた。
    朝からどんだけ食うねん。
    みているだけでデリケートな俺は若干腹膨れた気になった。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-07-31 06:49:00
  • 5:

    ◆lZf.ArgVp2

    「せっかく夏休みやのになんで毎日俺んちくんねん。しかもなんでガッコある時よりはよくんねんな」
    「だってせっかく夏休みやで〜。毎日ワクワクして朝はよはよ目ぇ覚めんねん。おかげで寝不足やわ〜」
    こいつは田舎の小学生か。
    「ゲームでもしとけやっ貸したろか?」
    「こないだプレステ踏んで潰してもうてん。兄貴めちゃキレとったしなー」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-07-31 06:54:00
  • 6:

    ◆lZf.ArgVp2

    そりゃキレるやろと思いつつ、裕司のホットケーキを一枚くすねた。
    「さすがに腹いっぱいやわー。あっそういや梅子帰ってくるて。聞いた?」
    梅子は小学生の時の同級生。小6のときに両親が離婚して母親の田舎に行った。中3になった今でも夏休みは毎年帰ってくる。
    「………いや聞いてないで。いつ聞いたん?」
    「おとついかな?デンワでそう言うとった。…………いたた。なんか腹痛いわ」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-07-31 07:00:00
  • 7:

    ◆lZf.ArgVp2

    「こんなに食うたら腹いとうもなるわっ」

    トイレにいった裕司はなかなかもどってこない。
    ……梅子、裕司にだけ電話したんか……。自分の携帯の一昨日の着歴を見てみたが梅子の名前はない。
    っていうか着歴ほぼ裕司なんやけど。毎日遊びに来といて電話までかけてくるってなんの用事があるいうねん。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-07-31 07:06:00
  • 8:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いやー今日もいっぱいでたわ」
    「全くいらんしな、そんな報告」

    外はむちゃくちゃ暑くなってて自転車のサドルの熱は殺人的。裕司の家に行って涼しなってきたらどっか出掛けることにした。
    「………なあなあ」

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-07-31 07:10:00
  • 9:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なにー!?」
    「………梅子いつくるて?」
    「えーと明後日?来週?そんくらい!」
    今日は月曜日やから明後日と来週て全然ちがうんやけど。
    けどまあ、今年も梅子が帰ってくる。また三人で遊べる。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-07-31 07:13:00
  • 10:

    ◆lZf.ArgVp2

    隣りから聞こえる声がエスカレートしてきたけど裕司はもう慣れたもんなのか気にもとめないふうにいいともを見てた。
    「このこバリかわいない?」
    「どれー?」
    細くて髪のながいちょっとタレ目のタレントは少し梅子に似ている………ような気がした。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-07-31 07:28:00
  • 11:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司とは幼稚園から一緒の幼馴染み。小2の時転校してきたんが梅子。大人しくてひっこみじあんで友達の少ない梅子が女からいじめられてんのを裕司がかばって、そっからよく遊ぶようになった。
    俺は梅子がいじめられてんのを助けてやりたかったけど冷やかされたりとかすんのが嫌で黙って見てた。
    見るなり「お前らやめとけや!ブスがもっとひどなるぞ。ブスが」ていうてとめたんを素直にかっこいいおもたし、羨ましかった。
    ブスは余計やと思ったけど。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-07-31 07:35:00
  • 12:

    ◆lZf.ArgVp2

    「うわープレステまじで壊れてるやん!……ひび入ってるし」
    可哀相なプレステ2。
    「全体重かけてふんだうえにそのままスライディングしてもーたからなあ……隆一今何やってんの?」
    「……FF7」
    「今更?笑」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-07-31 20:50:00
  • 13:

    ◆lZf.ArgVp2

    「うるさい!7は名作や。ティファかわいいしな」
    「いやリュックやろ」
    ……それ7とちゃうやん。裕司はハンドパワーでプレステを直すとか意味の分からん事を言い出したかと思ったら、そのうちプレステ抱えて眠りこけてしまいよった。
    朝っぱらから人の事起こしといてなんのマイペースやねん。
    急に静かになった。ありがたい事に隣りの部屋も静かになっていた。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-07-31 20:55:00
  • 14:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司は寝たらなかなか起きひんし、ジャンプ読んで暇つぶししてたけど、生憎こないだ立ち読みしたばっかりで読むとこがあんまりない。

    便所行って出てきたら開けてすぐんとこに女が立ってた。
    「……裕司の友達?」
    誠司クンの女か。さっきまでアンアン言うとった。すっごい色の白い子でキツそうな顔。目の周りなんて真っ黒やし。いかにもちゃらっちゃらな誠司クンの女って感じのルックスやな。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-07-31 21:01:00
  • 15:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司は寝っぱなやし、プレステは潰れてるし、漫画も読んだんばっかやし俺は帰る事にした。
    日が暮れて大分涼しなってる。夏の夕暮れっていうのは、なんていうかどうしようもない程途方もないというかなんか飲み込まれてしまいそうやな。
    携帯が鳴る。この音は裕司か……やっと起きたか。

    ……って違うわ。梅子や。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-07-31 22:43:00
  • 16:

    ◆lZf.ArgVp2

    この着信音が鳴るのは裕司と梅子の二人だけ。
    友達とかはこれが鳴る度、なんのクラシックやねん!て笑う。
    けどすきやねんな。昔梅子んち遊びにいったら梅子のおバチャンがよお弾いとってんピアノ。
    ドビュッシーだかリュビッシーだかの月光ていう曲

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-07-31 22:58:00
  • 17:

    ◆lZf.ArgVp2

    「も………もしもしっ」
    急いで通話ボタンを押した。
    「梅子やでー。りゅうちゃん久し振りー」
    久々聞く梅子の声。そおそお、こんな声しとったわ。
    「今日帰るってゆうたのに裕ちゃん電話してんけどでえへんねん」

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-07-31 23:27:00
  • 18:

    名無しさん

    先黄昏の赤完結させてや

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2008-07-31 23:35:00
  • 19:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>20さん
    それもそうですね?すいません。黄昏の赤が暗めの話なのでなんか気分を切り替えたくなって。黄昏の赤の方も夜中に更新します!せっかく読んで下さってるので赤を書きますね

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-07-31 23:45:00
  • 20:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>19
    裕司の奴、何が明後日か来週やねん。一昨日聞いた事もお前は正しく覚えられへんのか。
    「裕司寝てもうとるわー」
    「ほな、しばらくおきひんなあ」
    さすが梅子。よくわかってるわ。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-05 02:16:00
  • 21:

    ◆lZf.ArgVp2

    「今どこ?迎え行ったるわ」
    「今、駅ついたとこ!」
    俺らの住んでるとこははっきり行って田舎で、遊ぶとこなんて街までいかなない。カラオケすらないんやから。それでも駅前にはちいちゃい商店街があって夕飯時はそれなりに賑わっている。
    「りゅうちゃーん!」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-05 02:22:00
  • 22:

    ◆lZf.ArgVp2

    「毎日見てるからわからへんやって」
    「梅子背ぇまた伸びたな」
    「りゅうちゃんも伸びたやん?前はあたしの方が大きかったのに今は同じくらいや」
    そういえばそうやった。街灯に照らされて伸びる影も今は一緒くらいの長さ。薄暗くなって影のかかる梅子の横顔になんとなくドキドキした。幼馴染みに緊張するなんてこれやから青春ヤローは、と裕司が言いそうな事を自分に思った。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-05 02:39:00
  • 23:

    ◆lZf.ArgVp2

    「結ちゃんやないのー久し振りやねえ」
    相変わらず声のデカいうちのおかん。梅子は本当は結(ムスビ)っていう。
    むすび→おにぎりって感じで裕司がしゃけとか梅とか呼び出していつのまにやら梅子で落ち着いてた。
    「おかん、いつまでしゃべっとんねん」
    梅子の親戚の家は俺んちを過ぎてちょっと行った所。たまたま玄関の外に出てたおかんに掴まった梅子はにこにこしながら立ち話していた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-05 02:47:00
  • 24:

    ◆lZf.ArgVp2

    このままやったらおかんはいつまでも喋るやろうし、俺の余計な話をしよるやろからいい加減にせえと思ってた頃。
    「おばちゃん、料理の途中やったんやない?」
    「せやせやいややわー鍋火にかけっぱなしやったわー。隆、ちゃんと結ちゃん送るんやで!」
    急いで家に引っ込むおかん。今日の夕飯はどうなることやろう。まあ正直助かった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-05 02:59:00
  • 25:

    ◆lZf.ArgVp2

    「りゅうちゃん、行こっか。」

    俺は女子ってぎゃあぎゃあうるさいし苦手やけど梅子と一緒にいるんは全然嫌ちゃう。裕司もモテる癖に男とばっかりとつるんどるけど梅子とは仲いいし。
    スキとかそんな感情とは違う気するけど俺は昔から梅子の事を気にしてた。
    なんか不思議な子やから。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-05 03:06:00
  • 26:

    ◆lZf.ArgVp2

    勘がいいというか鋭いというか。話さなくてもわかってるというか、見透かされてる感じはするけど嫌な感じではない。
    よく失くした物を見つけてきたり、天気を当てたり。
    そもそも梅子が転校してきたばかりの時苛められはじめたのも、失くした物をよく見つけてくるから梅子が盗ったり隠してるんとちゃうかって噂になったからやった。
    もちろんそんな奴じゃないっていうのは仲良くなったらすぐわかったけど。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-05 03:12:00
  • 27:

    ◆lZf.ArgVp2

    まあそんなん置いといても、すごい可愛らしい笑い方するからってのも大きいな。
    「ありがとう。送ってくれて」
    「別にええよ。んな、明日な。」
    夏休みやっていうのに裕司とじゃれ合うだけの日々は普段と別段代わり映えなく。夏にだけ帰ってくる梅子が来ると毎年夏休みやなーっていう実感が込み上げてくる。
    ちなみにその日の晩飯はカレーで、長話で放置されていたカレーには焦げがまざっていた。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-05 03:20:00
  • 28:

    ◆lZf.ArgVp2

    飯を食い終わってただつけてるだけのテレビの音をかき消すように雷鳴が唸り出した。
    なんとなく裕司に電話をかけた。一回目話し中で二回目も話し中。裕司はあほやしキャッチのとり方がわかりよらん。

    俺はなんとなく梅子と話してるんやろうなってそう思った。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-06 16:56:00
  • 29:

    ◆lZf.ArgVp2

    その夜、夢をみた。
    真っ暗なとこで啜り泣く女。あんまり悲しそうやから「大丈夫ですか」って声をかけた。
    女は顔をあげたけど暗くてその顔は見えんかった。
    ただ恨めしそうに俺を見る目だけが暗闇の中らんらんと光って見えて俺は息ができんくなる。
    やめろや。こっちを見るな。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-06 17:01:00
  • 30:

    ◆lZf.ArgVp2

    女はゆっくりこっちに近付いてくる。
    映画の「リング」みたいに這いながら。

    くるなくるな。
    その青白い手が俺の足に触れそうになった瞬間。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-08-06 17:04:00
  • 31:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………!!!!」
    鳴っているのは月光。開けっ放しの携帯の液晶にはウメコの表示。
    「……………もしもし」
    でた瞬間電話は入れ違いで切れた。夜中の3時。かけ直す気にもなれへんくて、つけっぱなしになってたテレビを消そうとしてやめた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-06 17:09:00
  • 32:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………助かった」

    思わず独り言がもれる。クーラーの風があたった所が冷たくなるほどシーツまで汗まみれになってた。
    夢の女に触られそうになった右足の指先を見る。
    どうもなってへん。……………当たり前か。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-06 17:13:00
  • 33:

    ◆lZf.ArgVp2

    そういえば何日か前、裕司とくだらん心霊番組を見た。
    「呪い」とかなんとか在り来たりで夏になるとレンタル稼動がよくなるようなやつ。
    その内容に似ていたような気がする。
    所詮、夢は夢。起きて時間が経つ側から夢の内容はあいまいになっていき、いつのまにやら二度寝し始める。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-06 17:18:00
  • 34:

    ◆lZf.ArgVp2

    「お〜き〜ろ〜やあ〜」
    寝てる俺にむかって力一杯放たれたタックルで目が覚める。最悪な目覚めや。
    「…………俺きのうあんまり寝てへんやけど」
    「そんなん知らんやん」
    ……ほんまになんでこんな自己中な奴と十年以上友達なんやろう。ざっと考えてみたけど家が近いという理由が一番有力な気がした。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-07 22:20:00
  • 35:

    ◆lZf.ArgVp2

    「おまえ梅子帰って来るんて昨日やったやろ」
    「えっそうやっけ?電話しーよおっと」
    裕司は聞いてなかったわ!とでも言いたげな態度で携帯をいじりだす。
    「……まだ7時やろが」
    昨日は梅子と電話してたんとちゃうねんや。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-07 22:25:00
  • 36:

    ◆lZf.ArgVp2

    普通に俺んちで当たり前のような顔をして朝飯を食う裕司。せめて食ってこいよ。
    「あら、裕司くん、はやいんやねー」
    「お邪魔してまーす」
    「おばちゃんスッピンやし恥かしわあ」
    「いやいやいつも綺麗っすよ」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-07 22:28:00
  • 37:

    ◆lZf.ArgVp2

    お世辞でしかあるわけがないのに「んもういややわ〜この子は〜」なんてご機嫌におかんは引っ込んでいった。
    …ほんまにこいつは、と裕司をみる。三杯目の飯をかきこんどる。
    「昨日きとった女なんなん」
    ふと箸を止める裕司。
    「……ああ、レイちゃん?兄貴の彼女」

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-07 22:35:00
  • 38:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ほんまに彼女なんやら」
    誠司クンの彼女っぽい……ぽいっていうのはぽいてだけで彼女なんかは知らんけどそういう女なら何人も見た事ある。片手じゃ足りんくらい。
    「……彼女やで。兄貴女とか用が済んだら帰らせよるけど、レイちゃんはおさせよるもん」
    用がすんだらて………オイ。2コ違うだけやけど俺にはわからん世界やわ。
    「なんでー?」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-07 22:42:00
  • 39:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……別に」
    チビて言われてムカついたから。なんてダサい事は言いたくない。
    自分からふったけど誠司クンの女事情なんて全くどうでもいい情報やった。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-07 22:45:00
  • 40:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ゆうちゃ〜ん久し振り〜」
    裕司の家に移動して、昼過ぎくらいに梅子も来た。
    「梅ちゃん、おおきなったなー」
    近所のオッチャンか!みたいな事をわざわざ裕司の部屋に顔だしてまで誠司クンが言いに来た。誠司クンは女にはなんていうか簡単にいうと最低やけど面倒見は良くて、俺にも優しいし梅子のことも昔から「梅ちゃん、梅ちゃん」と可愛がっていた。
    黙ってたら怖いけど、笑った顔はやっぱ兄弟やし裕司に似てる。姉ちゃんしかいいひん俺は兄貴っていうんが少し羨ましい。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-07 22:55:00
  • 41:

    ◆lZf.ArgVp2

    「裕司、せっかく梅ちゃん来てんやからアイス買うてこい。」
    「はあ、嫌やわ暑いのに」
    「はよいけ。」と誠司クンにシバかれる裕司。しぶしぶ出て行く裕司に「俺スイカバー」と投げ掛ける。
    「じゃあ……あたしもスイカバー」と梅子が気を使う。
    「俺パピコ」と俺は全く気をつかわん。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-07 23:02:00
  • 42:

    ◆lZf.ArgVp2

    何を言いよんねん、この糞兄貴
    「別にそんなんとちゃうし」
    「別に……!!!別にやって!!!おもろいなあ〜梅!」
    年下おちょくって何がそんなに面白いのか、誠司クンは無邪気な顔して楽しそう。自分かて女といるとき別に…みたいな顔しとるくせに。
    梅子もケラケラ笑っとる。もう15やっていうのに梅子の笑い顔は子供ん時と一緒や。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-07 23:14:00
  • 43:

    名無しさん

    おもろい?

    IP強制表示中:210.136.161.48
    2008-08-09 17:13:00
  • 44:

    名無しさん

    >>47さん ありがとうございます☆今から更新します

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 14:02:00
  • 45:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>46 裕司がアイス持って帰ってきた。
    「お前、人の金やおもてハーゲンダッツとか買うてきてんちゃうぞ!それ梅ちゃんにやり」
    「はあげんでぁーっつ(外人発音)……うまー(・∀・)」
    無駄な発音の良さはなんやねん。お約束に誠司クンにしばかれる裕司。
    「アホやなーコイツ。夏はやっぱりスイカバーやんなー。なあ梅??よって隆一お前もアホや。パピコとかふざけんな」

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 14:12:00
  • 46:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…………パピコ一本くれ。」
    ってパピコ食べたいんかい!!!!
    誠司クンにパピコとスイカバーをトレードした。スイカバーは箱入りのやつやったから何本もあるのに、誠司クンは裕司にはやらんかって裕司がしょげてた。梅子と爆笑しながらそのやり取りを見てた。
    「梅子にもらうからいいし」
    裕司は梅子の手に持ってた食べかけのスイカバーを一口かじった。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-11 14:18:00
  • 47:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ヤられたーーー梅子お前裏切ったな!!!!!!!!これメロンバーやんけ!!!」
    裕司が大袈裟に畳の上を転がる。スイカバーはなんかスイカバーとメロンバーが半々で入ってるやつで梅子が食べてんのは確かに緑色やった。
    「梅は俺の弟子やからな。お前にスイカバーはやらん」
    アホな兄弟漫才はまだ続いていて梅子も笑い転げとる。
    けどなんか俺だけフリーズしてもうた。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-11 14:26:00
  • 48:

    ◆lZf.ArgVp2

    戸惑ってしまった。
    食べさしのもんを一口ちょうだいっていうやつ。子供の頃から見慣れた光景の筈なのに梅子と裕司が妙になまめかしく見えて。
    俺は半分くらい残ってた自分のスイカバーを一口で食った。
    「隆一も裏切ったーーーーーー」
    裕司が横から叫ぶ。………そんなにスイカバーがいいならスイカバー買ってこればよくないか?それをいったら実も蓋もないってやつか。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-11 14:35:00
  • 49:

    ◆lZf.ArgVp2

    ドアが開く。みんな気付かんかっていつからあいてたんかしらんけど。
    「お前きてたん?」
    「……………メールした」
    いつぞやのチビ呼ばわりされた女。誠司クンの彼女がドアの前に立ってた。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-11 14:44:00
  • 50:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…………誰?」
    梅子を見て誠司クンに尋ねる。
    「……裕司の友達」
    ダルそうに誠司クンが答えた。なんていうか白けたというか一気に空気が凍り付いた。誰とかお前に関係あるんか。
    誠司クンは彼女と自分の部屋に帰った。スイカバーの箱にはまだスイカバーが残っているのに裕司は手を付けず冷凍庫にしまいにいった。その後もみんなでなんだかんだゲームしたり喋ったりしたけどあんまり盛り上がらん気がした。隣りの部屋からは梅子を気付かってか変な声が聞こえてくる事はなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 14:53:00
  • 51:

    ◆lZf.ArgVp2

    いつもはもっと遅くまで裕司んちに入り浸るけど梅子を送らなあかんし夕飯前には家をでた。
    カナカナカナカナカナ……夕暮れ時なったら鳴き出す蝉の声がセンチメンタルな気持ちにさせる。
    チャりで二人乗りして帰ってもいいねんけど、こないだステップをパクられてそのままやし歩いて帰る。
    自転車やと一瞬の道のりも女の子の歩くペースで帰ったら割りと長い。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-11 14:59:00
  • 52:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………ゆうちゃんってさっきの女の子の事好きなんなね」
    何を言い出すのかと思ったらそんな有り得へん

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 15:01:00
  • 53:

    ◆lZf.ArgVp2

    「誠司クンの彼女やで!!!ないない!!」
    誠司クンの彼女やなくても、尻軽そうやし、口悪そうやしなんか気い使う感じやし、とりあえず好きになる要素なんて一個もない気がする。
    ましてや自分の部屋の隣りでアンアン言うんの聞いてて好きになるとか有り得へん。
    「………りゅうちゃん、あんまりあの子と仲良くせんほうがええよ」
    梅子は下向いて自分の足先をみとる。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-11 15:07:00
  • 54:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…………………」
    それからお互い何も話さないまま梅子の家についた。「また明日ね」て梅子は笑ったけどいつもみたいな笑顔じゃなかった。
    家帰っておかんの飯食って風呂入って、布団に入った。なにしててもなんか上の空。
    『あんまりあの子と仲良くせんほうがええよ。』
    梅子の言葉が浮かぶ。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-11 15:12:00
  • 55:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子がそんなこというの初めて聞いた。人の陰口なんていうような女ちゃうのに。
    梅子、裕司、誠司クン、あの女
    色々考えている内に眠ってしまった。
    裕司がはよはよ起こしにくるから、最近夜はいつも眠い。ほったらかしのFF7の事が頭をかすめた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-11 15:17:00
  • 56:

    ◆lZf.ArgVp2

    暗い…………ん?街がある。活気のある街やな、人がぎょうさんおる。市場みたいなかんじやな。………なんか危なそうなとこや。柄悪い。普通に武器を携帯したやつがうようよおる。銃刀法違反もいいとこや。
    「あなた何してるの?」
    急に肩を捕まえられる。勢い良過ぎて転びそうなった。
    「げっ!……………エアリ○!?」
    ……………そうかこれは夢や。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 15:30:00
  • 57:

    ◆lZf.ArgVp2

    「そうよ。あたしはエアリ○。あなた何やってるの!!?何の装備もないじゃない!!レベルも全然足りないし………ほら、行くわよ!」
    エアリ○は俺の腕を掴むと強引にグイグイと引っ張っていく。………どうせならティ○がよかった。
    「……そんなに巨乳がいいの?」
    俺はおっぱい星人やないし。誠司クンは巨乳が好きやけど。せっかく夢なんやから楽しもう。しかしリアルな夢や。
    「キョロキョロしない!」………怒られた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-11 15:38:00
  • 58:

    ◆lZf.ArgVp2

    人込みの中に女の子が見えた。ティ○や!!!!!やっぱ可愛いなあ。足長いしめちゃ色白いし。
    「何やってるの……もう!!!見つかった!!!走って!!!!」エアリ○は走り出した。手を引っ張られている俺も仕方なく走り出す。せっかくティ○がいたのに。
    「急いで!!!!」
    いつのまにか周りはただの暗闇になってた。暗闇の中見えるのは俺を掴む手だけ。
    怖くなった。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-11 15:44:00
  • 59:

    ◆lZf.ArgVp2

    振りほどこうとしてもその力は強い。
    「りゅうちゃんあかん!!」
    エアリ○はいつのまにか梅子になってた。勢い余って梅子の手を振りほどいてしまった。その瞬間、暗闇のトンネルを抜けて建物の前に立っていた。
    病院?
    到って普通のどこにでもあるような病院。人が出入りしていて、車椅子を押す若い看護士さんの姿も見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-11 15:51:00
  • 60:

    ◆lZf.ArgVp2

    足が勝手に病院の中へと進む。中もほんま普通。自販機があって外来の受付があって待合の椅子で話してるじいちゃんばあちゃんがいる。
    突然、電気が消える。目がなれてへんくて何にも見えんくなったけど気配で今まで周りにあったもの全てが消えてしまった事がわかる。
    ヒタ………ズル…ズルッ ペタ………………………ズルッ
    暗闇に浮かぶ二つの目。この間の夢の女や。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-11 15:57:00
  • 61:

    ◆lZf.ArgVp2

    やばい事に足がうごかへん。足っていうか身体全てが動かへん。
    その分研ぎ澄まされた感覚が近付いてくる女との距離を計る。
    10メートル…………………5メートル…………………3…………
    助けてくれ!!!!
    おとん おかん おねえ 死んだじいちゃん 裕司 ……………………………誰か誰か……………女の指が軽く足の親指に触れる。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-11 16:02:00
  • 62:

    ◆lZf.ArgVp2


    ……………梅子!!!!!!!

    音楽が聞こえてくる。それと同時に女も暗闇もさっきまであった病院も姿を消した。
    ただ明るい月の光がさしてた。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-11 16:07:00
  • 63:

    ◆lZf.ArgVp2

    野原に寝そべっている小さい俺が見える。隣りにいる女の子は小さい頃の梅子だ。
    そういえばああやって二人で月見した事があったな。
    小さい梅子がなんか言ってる。聞こえへん。ここからでは聞こえへんねん……梅子。

    目を覚ます。また汗をビッショリかいていた。携帯のランプがチカチカしてる。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-11 16:14:00
  • 64:

    ◆lZf.ArgVp2

    不在着信一件。

    ………梅子

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-11 16:15:00
  • 65:

    名無しさん

    続き気になるのでよろしく?

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2008-08-11 17:31:00
  • 66:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>69さん
    暇なんでガンガン更新したいと思います笑
    コメントありがとうございます☆

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-12 00:45:00
  • 67:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>68 背筋を冷たいものが走った。身体がすごい寒くてクーラーをきった。すぐに部屋は熱帯夜らしい気温になったけど身体の中の細い一本の芯が凍ってもうてるかんじ。ムシムシする湿度に汗が吹き出してきたのに皮膚に鳥肌はたったまま。

    『隆一くん達は結ちゃんの事気持ち悪くないの?』
    小学生の頃クラスの女の声を思い出す。どんな奴やったかすら覚えてない、そんな奴の声に身震いした。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-12 00:58:00
  • 68:

    ◆lZf.ArgVp2

    気持ち悪いなんてある筈がない。梅子と裕司と三人で色んなとこに行った。いつも楽しかった。
    今は気心知れた筈の梅子が少し怖い。
    あの気持ち悪い女の夢を見た後、決まって梅子からの着信がある。偶然とは思えへんかった。
    電気を付ける。まだ4時過ぎやけど今日は眠れそうにない。
    やりかけのFFも今日はもう見たくもなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-12 01:04:00
  • 69:

    ◆lZf.ArgVp2

    ふと夢で女に触れられた親指を見る。違和感を感じて指に触れる。
    …………感覚がない。
    他の指は動くのに親指だけどないしても動かへん。
    「……嘘やろ…」
    あの夢が途切れへんかったら、目がさめへんかったら……俺は一体どうなってたんやろう。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-12 01:10:00
  • 70:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は一人で起きてんのが怖くなって裕司に電話をかけた。絶対寝てると思ってダメもとでかけたのに意外にも裕司は電話にでた。
    「なんやねん。こんな時間に」
    「怖い夢見た」
    「子供か!」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-12 01:20:00
  • 71:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司の声聞いたらなんか安心した。
    悩むんが馬鹿馬鹿しくなってくるっていうのもあるけど。
    俺らは適当にわけわからん話して笑って電話を切った。
    『人のこと影でごちゃごちゃいうてお前らのほうがよっぽど気持ち悪いわ!』

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-12 01:26:00
  • 72:

    ◆lZf.ArgVp2

    そうや、梅子の事でクラスの女らが俺に色々言いにきた時、裕司はそう言いよった。
    裕司んちはおとんもおかんもほとんど家にいいひん。ダブル不倫っていうんかな、どっちにも愛人がいるっていうのはみんなが知ってる話やった。
    裕司は結構やんちゃやから何かにつけて影で家の事いわれてたみたいやった。
    まー確かによう裕司がこんだけ真直ぐに育ったなっていうような事もあったみたいやけど詳しくはよう知らん。裕司の口からもそんな話聞いた事もない。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-12 01:34:00
  • 73:

    ◆lZf.ArgVp2

    そんな裕司やから梅子の気持ちがわかったんかな。
    俺がスケボーで複雑骨折して入院した時、毎日裕司と見舞いに来てくれた。裕司はただ見舞いにもらったお菓子食いにきとっただけやけど梅子は授業のノートやらプリントやら持ってきてくれた。裕司と大喧嘩した時もうまい事取り持って仲直りさしてくれた。犬のジョンが死んだ時、一緒に泣いてくれた。
    俺は姉ちゃんがいるけど年が十個以上離れとって、しかもはやいこと結婚したから一人っ子みたいなもんやねんけど、そんな俺に時に姉ちゃんみたいに接してくれた、そんな梅子。
    俺は一瞬でも梅子を怖い思たんを恥かしく思った。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-12 01:54:00
  • 74:

    ◆lZf.ArgVp2

    気付いたら朝になってた。
    俺は適当に朝飯を食うと裕司の家にむかった。
    まだ六時やけどええやろ。いつも裕司にかけられる迷惑に比べたらまだかわいい。
    「おじゃま〜」
    裕司んちの鍵はいつもかかってない。裕司曰く「なんも盗るようなもんないしな」らしい。最初はかけてたらしいけど裕司と誠司クンが夜中帰ってきて鍵忘れた時とか普通に壊して入るから親とかも馬鹿らしくなったんやて。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-14 19:40:00
  • 75:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司の部屋を勢いよく開けてまた勢いよく閉めた。
    部屋間違えたかな…………てそんなわけない。何百回と来てるんやから。
    もう一度そっとドアを20センチ位開ける。

    見たらあかんもん見てしもた…………。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-14 19:43:00
  • 76:

    ◆lZf.ArgVp2

    馬鹿ヅラで眠る裕司の隣りにピッタリより添って眠る女の子。

    誠司クンの彼女である“レイちゃん”がこっちを睨んでた。
    急いで階段を駆け降りる。それで裕司は昨日夜中に起きてたんか………とか頭は意外と冷静やった。
    足をつっこんだつもりのスニーカーがなかなかはけないのはやっぱり冷静じゃないのかもしれない。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-14 19:49:00
  • 77:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あんた待ちや」
    その声にびっくりし過ぎて玄関の傘立てに顔突っ込んでもうた。
    ぶつけたおでこを押さえながら恐る恐る振り返る。
    「誠司にしゃべったら殺すで?………別になんもないけど」
    物音で裕司も降りて来てしまった。いつもはなかなか起きひん癖に!………最悪や。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-14 19:54:00
  • 78:

    ◆lZf.ArgVp2

    誰もしゃべらん。……気まずい。
    一番最初に口を開いたんは裕司やった。
    「レイちゃん、もうバスでてるし……送ってくわ。」
    “レイちゃん”は無言で二階に上がって荷物もって下りてきた。俺もなんとなく流れで一緒に出て帰ろう思ったら
    「隆一、お前俺の部屋いといて」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-14 19:58:00
  • 79:

    ◆lZf.ArgVp2

    …………はい。
    俺も無言で裕司の部屋に上がる。“レイちゃん”の匂いが残る部屋はなんか居心地が悪い。一眠りさしてもらおうと布団にダイヴ。
    「……………」
    枕元にコンドームの袋を発見してしまった。
    …………あの女何が『なんもない』やねん。ありやろ。これ大ありやろ。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-14 20:03:00
  • 80:

    ◆lZf.ArgVp2

    中身のない端の破れた変な水玉のやたらファンシーな柄のゴミは俺の心をしょっぱくした。
    先を越されたとかそんなんちがくて、……………裕司、何やってんねん。あんな女と………兄ちゃんの彼女と。
    夏の太陽のようにすかんと気持ち良く笑う裕司にこんなん似合わへん。
    甘ったるい香水の匂いが鼻に付いて窓を開ける。
    はよ、消えて無くなれ

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-14 20:09:00
  • 81:

    ◆lZf.ArgVp2

    「窓開けたら暑いやんけ」
    裕司が帰って来た。コンビニの袋ガサガサさして。
    「…………ん」
    渡されたペプシの蓋を開ける。プシッと音がしてペプシは盛大に吹いた。
    「お前……振り過ぎ」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-14 20:16:00
  • 82:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司はいつもみたいな馬鹿ヅラしてなくて黙ってる。気まずい気まずい!開けっ放しの窓からは蝉が景気良く鳴く声がうるさいくらいに入ってくる。
    夏の眩しい輝きをバックにこの部屋は有り得辺くらいに静かで、俺は下を向いた。
    「やかましいなー蝉」
    カラカラと裕司が窓を閉める。あの女の匂いはもうなくなってた。
    「………好きなん?あの女の事」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-14 20:22:00
  • 83:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………わからん」
    無表情に答える裕司。
    「まあ1回くらい間違いもあるやろ!………………据膳食わねばとかいうしな…………!!!!」
    乾いた笑いが部屋に響く。
    「じじいみたいな事言いよって……………………そんなんちゃうし。もー何回もしてる」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-14 20:25:00
  • 84:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺付き合い長いからわかるで。わからんちゃうやろ。好きやろ裕司。だってなんか傷ついたみたいな顔してんもんお前。
    「兄貴の彼女やで……?」
    「………せやなー」
    そう言って自嘲気味に笑った裕司があんまりにも大人びてて俺は戸惑った。
    裕司の知らんとこなんてないって思ってたけど今前にいる裕司は知らん奴みたいに見える。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-14 20:31:00
  • 85:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺はあんな女が裕司に好かれてるってのがなんか嫌やった。ものすごい嫌やった。
    「どこがいいん?あんなん」
    「乳でかいとこ!……………………………………………嘘」
    それ以上はなんも言えんかった。恋とかなんか俺にはむづがゆくて、ほど遠くて。
    リアリティがない。裕司の傷ついた顔も、布団の横のコンドームの箱も……俺には違う世界のように感じる。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-14 20:37:00
  • 86:

    ◆lZf.ArgVp2

    それからいつもと変わらずに適当にだべってた。プレステが奇跡的に蘇生したらしくゲームしたりして。
    昼過ぎ梅子が来たときにはもうすっかりいつも通りで俺はめちゃくちゃほっとした。
    コンドームはいつのまにか隠されていて、梅子にバレずに本当によかったと思った。別に俺が焦る事じゃないけど。
    ただ様子がおかしかったのは梅子や。
    なんか裕司の部屋に来た時からそわそわしてたし、なんか上の空やった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-14 20:44:00
  • 87:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………この部屋……誰か来てたん?」
    梅子が裕司の目を真直ぐ見て言う。俺は焦った。梅子の目は裕司を責めてるみたいに見えたから。あまりにタイムリーな質問やったからそう見えたんかも。
    「……別に。なんで?」
    裕司の返答にも焦った。なんでそんな冷たいねん。「あ……ごめん。いいねん」
    裕司は下にいってもうた。裕司はたまにこういう時ある。すごい冷たい、っていうかちょっと怖い。気分屋っていうかムラっ気があるていうかたまに周りにこうなる。でも梅子や俺に矛先が向く事はほとんどなかったのに。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-14 20:50:00
  • 88:

    ◆lZf.ArgVp2

    「怒らしてもうたな。………昔は結構こういう事あったね」
    梅子が笑う。
    「えっそうやったっけ!?」
    「りゅうちゃんにはないんかな?あたしは昔は結構あったよ。ゆうちゃんりゅうちゃんの事めちゃすきやからなあ」
    「なんやねん あいつきしょいなあ笑」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-14 20:54:00
  • 89:

    ◆lZf.ArgVp2

    幼馴染みってなんかこういう時困る。言葉なんかなくてもなんか伝わってしまう。
    梅子は裕司の事好きなんやな。
    ずっと前から、ずっとずっと前から知ってたけど。………裕司も多分知っとる。
    「八つ当たりや、あんなもん。ほっとけ」
    梅子の顔が近付く。焦った俺は顔を背けた。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-14 20:59:00
  • 90:

    ◆lZf.ArgVp2

    夏でも少し冷たい梅子の手が触れる。
    ヒヤッとするのに触れられた所がたまらん熱い。耳元で梅子が囁く。

    「りゅうちゃん……………親指どうしたの?」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-14 21:02:00
  • 91:

    ◆lZf.ArgVp2

    「な………んでっ…………」

    ゾクゾクっと身体を何かがすり抜けていった。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-14 21:03:00
  • 92:

    名無しさん

    やばいくらいおもろい

    IP強制表示中:210.153.84.71
    2008-08-14 23:03:00
  • 93:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>96さん 前のにもコメントくれてた方ですかね?(〃・∀・〃)
    違ったらすいません?読んでくれてありがとうございます☆

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-15 00:42:00
  • 94:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>95 梅子の指はゆっくり俺の親指に触れた。やはり俺の親指にその感覚はない。
    「だから仲良くするなって……関わるなって言ったのに……」

    混乱した。額の汗が玉になる。どういう事だ?
    あれはそう、夢だ。ただの夢の筈なんやから。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-15 00:49:00
  • 95:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………ごめん。あたし帰るわ」
    俺は黙ってた。引き止めてもなんて言ったらいいかわからん。頭は真っ白。………というか、真っ黒。色んな事が混ざり合い過ぎてメモリーが飛んだ。
    梅子の足音がパタパタと遠くなっていってガラガラピシャンて家からでていく音をただ聞いてた。
    裕司と二人になんのも気まずいし俺も帰ろうと腰をあげた時。
    「なんやー梅子は?」………帰ってきよった。なんて間の悪い。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-15 01:03:00
  • 96:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は「帰った」てだけ答えた。なんか裕司は一人でよお喋りよる。適当に聞き流す。っていうか聞ける状態じゃなかった。
    裕司の持ってきたコンビニ袋の中に梅子の好きな菓子パンが入っているのを見つけて、商品名のロゴをぼんやりと見つめてた。
    「梅子になんかした?」
    ニヤニヤ笑う裕司に腹が立った。
    「お前と一緒にすんな!」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-15 01:10:00
  • 97:

    ◆lZf.ArgVp2

    まずかったと思っても既に遅し。再び訪れる気まずい空気。
    「……………ごめん」
    裕司はまた朝の時みたいに「へっ」て笑う。
    「いいでー別に。俺、最低やし笑」
    「……悪い」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-15 01:14:00
  • 98:

    ◆lZf.ArgVp2

    幼馴染みの俺にまでそんな虚勢をはらせてしまった事に情けなくなった。
    男同士ってのはどうにも言葉がたらん。テンションとかようわからん、ガーってなる気持ちは共有できても、こんな時にはお互い黙るしかない。
    女ってすごいなってこういう時思う。すごいなんでもがーって喋って解決するやん?
    俺らはそんなんできひんもん。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-15 01:21:00
  • 99:

    ◆lZf.ArgVp2

    「俺、帰るわ」
    「………おん」
    なんか泣きたい気持ちやわ。……泣かへんけど。朝から散々や。
    赤く染まった雲は綺麗でなんかますます自分がちっぽけに感じてしまう。
    チャリでバス停の横を通り過ぎる時、丁度バスが停車した。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-15 01:26:00
  • 100:

    ◆lZf.ArgVp2

    擦れ違いざま本日一番見たくない顔を発見。俺はUターンしてすぐさま引き返した。
    「誠司クンならいてへんで!!」
    歩いて来る進行方向のど真ん中にチャリをとめた。
    ふてこいふてこい顔して俺を睨む“レイちゃん”の前に。
    「………知ってる。今誠司、海いっとんもん」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-15 01:31:00
  • 101:

    ◆lZf.ArgVp2

    立ち止まりもせずそれだけ答えると普通に俺を避けてさっさと歩いていく。
    自分やってチビやんか。低い身長に不釣り合いなたっかいヒール。
    「ほななんでいくねん!用事ないやろが!!!!!」
    そう後ろから叫んだ。“レイちゃん”はようやく立ち止まるとふてこさ全開の顔で振り向いた。
    「うち年上やで?なんなんその口の聞き方」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-15 01:37:00
  • 102:

    ◆lZf.ArgVp2

    お前みたいなんに丁寧に話す意味なんてない。ブリーチし過ぎで傷んだ髪、倖田來未気取りかっていう格好、おっぱいだけは確かに立派なもんやけどそんなもんでコイツのマイナス要素は払拭しきれん。
    「なんで裕司にちょっかいだすねん。誠司クンが好きやねんろ!?」
    “レイちゃん”は鼻で笑いよった。
    「自分友達思いのつもり?なんのおせっかいなんかしらんけど、関係ないしな。」
    どうせ枝毛だらけやろっていうような毛先を指にくるくる巻き付けながら言われた言葉にキレそうになった。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-15 01:44:00
  • 103:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………誠司クンに話すで」
    “レイちゃん”の顔つきが変わった。
    「………別に言うたらええやん。誠司そんなん信じよらへんし勝手にしいや」
    そうは言うものの動揺してるのは明らかで俺はハッタリをかました。
    「誠司クン気付いてるかもしらんで?今日裕司んとこあんな時間にいったんも誠司クンに頼まれたからやし」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-15 01:49:00
  • 104:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………といて」
    “レイちゃん”は青ざめて下を向いてる。
    「誠司にはいわんといて…………なあ」
    しがみつかれた腕を振り払った。俺は生理的に“レイちゃん”受け付けん。触られた瞬間、虫酸が走ってなんともいわれん怒りが沸いた。
    “レイちゃん”は目にいっぱい涙を溜めてた。単純馬鹿な裕司は「女の子の涙は最大の武器や」みたいな事いってたけど、この女の涙みたとこでなんにも心は動かん。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-15 01:55:00
  • 105:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は自分で思ってたよりずっと冷たい奴なんかもしれん…………



    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-15 01:58:00
  • 106:

    ◆lZf.ArgVp2

    なぜか俺は今鼻に付く甘ったるい匂いに包まれていた。
    匂いの素である“レイちゃん”をチャリの後ろに乗っけて走っている。
    梅子の為に買ったステップを一番にコイツに使われるハメになるなんて。
    「話したい」と言ってきた“レイちゃん”をあしらいきれず行く先を探す。
    裕司んち行くのも不味いし、自分ちにこの女あげんのも嫌やし、道端なんて人目についてしゃあないしで、取りあえず近所の公園に向った。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-15 02:17:00
  • 107:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司と梅子とよく遊んだ公園は久々に来るとこんなちっこかったけ!?と思う。
    日が暮れてしまった後の公園は誰もいない。
    自分から話したいって言った癖に“レイちゃん”は押し黙っている。うっざ。
    普段裕司にはフェミニストやなーとか言われてる俺やけど、この女には情のカケラも動かん。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-15 02:21:00
  • 108:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………誠司クンとうまくいってないの?」
    やっぱりフェミニストやった、俺。順風満帆でないこと位二人になんの関係もない俺にでもわかる。
    「………誠司冷たいし………浮気するし………今日かて友達と海行くのに、うちは連れてってくれんし」
    …………そりゃナンパしにいくのに彼女は邪魔やろな。なんで誠司クンが女と遊んでる間に俺がこの女の面倒みなあかんねん。
    「浮気されるから自分もするん?」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-15 02:28:00
  • 109:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…………………」
    ………しかも裕司の口振りからすると一回や二回じゃないっぽいし。
    「なんで裕司なん?」俺はもうほんまにこれ以上ないよっていう位イライラしながら聞いた。
    「だって裕司優しいし」
    下を向いて例のごとく髪の毛くるくるしながら話す馬鹿っぽい仕草もその自己中さにもあきれる。裕司は同情で優しくできる程人間できてない。優しいのはお前がすきやからやんけ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-15 02:35:00
  • 110:

    ◆lZf.ArgVp2

    「じゃあ誠司クンと別れて裕司と付き合えや」
    ………もーほんまに勝手にして下さい。腹減ったし帰らして下さい。
    「誠司が好きやねんもん………。裕司は誠司に似てるもん。やからっ……やから、うち………」
    俺の中でムカつきを通り越して体温がどんどん下がっていくような気がした。
    「なあ?黙っといて?お願い………一回だけならいいで。…………………な?」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-15 02:41:00
  • 111:

    ◆lZf.ArgVp2

    “レイちゃん”は俺の手首を掴んで自分の胸に俺の手をもっていく。「な?」て困ったように俺を見上げて笑いながら。

    俺は“レイちゃん”を殴った。
    「最低やな、自分」
    掃き捨ててチャリに飛び乗った。後ろで「ちょっとどうやって帰れっていうねん!」とか叫んどったけど関係あるか。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-15 02:46:00
  • 112:

    ◆lZf.ArgVp2



    汚い。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-15 02:47:00
  • 113:

    ◆lZf.ArgVp2

    誠司クンと裕司が似てるのなんて兄弟なんやから当たり前やろうが。
    裕司の気持ちをなんやと思ってんねん。
    「な?」ってなんやねん。

    ほんまに汚い。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-15 02:50:00
  • 114:

    ◆lZf.ArgVp2

    家に着くと、とりあえず飯食って風呂入ってぼーっとしてた。
    携帯を見ると裕司から鬼のような着信。どうせあの女がなんか言ったんやろな、しょうもない。
    投げ捨てようとした時、月光が鳴り出す。
    「…………もしもし」
    だいたい何が言いたいかわかる。幼馴染みやもん。はっきりいって今日は疲れたしもうめんどい。けどでやんかったら家まできよるやろからそっちのがめんどくさい、そう思って観念した。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-15 02:56:00
  • 115:

    ◆lZf.ArgVp2

    「お前今からでてこいや」

    久々に聞く裕司のぶちキレの時の声。
    「……いったるわ」
    俺もすっかり怒りに支配され、考えなあかんこと、すべきこと、全部がなんにも見えへん。もうなんでもいい。どうでもいい。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-15 03:01:00
  • 116:

    ◆lZf.ArgVp2





    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-15 03:15:00
  • 117:

    ◆lZf.ArgVp2

    「喧嘩してんて?」
    目が覚めたら梅子が部屋にいてびっくりした。
    「ほらこっちきて!消毒するから。もおー口の中めっちゃ切ってるやんか…………あほやなあ………」

    昨日結局裕司にぼっこぼこにされて帰った。始めから裕司に喧嘩で勝てるわけないのはわかってたけど。肝心のなにを話したかって事はあんま覚えてない。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-15 03:20:00
  • 118:

    ◆lZf.ArgVp2

    「何があったん?」
    「あ……いや別に」
    梅子には話せへん。“レイちゃん”の事とか“レイちゃん”と裕司の事とか。黙ってたら梅子に耳引っ張られた。
    「別にで喧嘩しいひんやろ笑。……………ええで隠さんでも。知ってるから。………聞いてるし……ゆうちゃんに」
    知ってるってどこまで梅子に話したんやろ…………裕司の奴。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-15 03:25:00
  • 119:

    ◆lZf.ArgVp2

    そんなん、だって残酷やんか?

    消毒液はめちゃめちゃしみた。……色んな意味で。
    「痛い!もっとそっとやってくれや」
    「…………罰や!叩いてんて?どんな理由があっても女の子叩いたらあかんなあ。……りゅうちゃんらしくないで」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-15 03:28:00
  • 120:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……………」
    そんなとこまで知ってるんや。じゃあ当然、裕司と“レイちゃん”の事も知ってるんやろうな。
    自分が嫌になる。俺一人、浅はかでガキで空回ってる………。
    「あたしはりゅうちゃんの素直なとこ羨ましいけどな。多分ゆうちゃんもそう思ってんで。…………………せいちゃんにも困ったな笑。小学生の時から女癖わるかったもんな。あたしも昔、せいちゃんを巡る女の争いみたいなんに巻き込まれた事あるもん笑」
    そういって梅子は笑う。俺の顔に絆創膏はりながら。言葉にしなくてもわかるって俺だけじゃなくて梅子らにしたって一緒やねんな………………しかもフォローまでいれて。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-15 03:37:00
  • 121:

    ◆lZf.ArgVp2

    やっぱり女には…………………………………………梅子にはかなわへん。
    「はい、オシマイ」
    鏡で見た自分の顔は腫れ上がってえらいことなってた。口の中は痛いし、喋るのも大変やし………飯食うんも大変そうや。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-15 03:42:00
  • 122:

    ◆lZf.ArgVp2

    「おかんは?」
    「おばちゃんならとっくにパート行ったで。もう昼過ぎやもん」
    時計をみるともう二時過ぎやった。
    「……何時に来たん?」
    「朝方かな。ゆうちゃんに電話もらってすぐ。」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-17 02:37:00
  • 123:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………なんで」

    梅子はしばらく黙ってた後「心配したんや〜ん」って笑った。
    その顔は見てわかるくらいクマがくっきりできていて寝てないんやなって思った。
    昨日裕司とバトって朝方帰ってすぐに寝た。その後に梅子がきたって事か。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-17 02:42:00
  • 124:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ちゃんと仲直りしいや〜。ほんまはゆうちゃん、りゅうちゃんがゆうちゃんの事思ってやったってわかってはるから。」
    「………………」
    裕司の事を思って………か。そんなに俺は良い奴かな。あの女殴った時俺は自分の事しか考えてなかった。
    ………「最低やな」そうあの女を罵っておきながらあの女の胸触って、
    俺の体温はあがった。興奮した………あんな女に。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-17 02:48:00
  • 125:

    ◆lZf.ArgVp2

    「りゅうちゃんはそれでいいんよ。そうやって嫌なもんは嫌ってできるやろ?へこめるやろ?」
    梅子の言ってる事の意味がわからず梅子をみた。梅子は俺に話しかけてる癖に向こうを向いたままで俺を見ない。
    「あたしんちも……ゆうちゃんちもやけど、ちょっと変やん?なんかな……嫌な事あったら、嫌やって思うんやけど……反発できひんねん。受け入れてまうねん。…………………そっちの方が楽やから。」
    俺は黙ってた。梅子の華奢な肩をただ見つめてた。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-17 02:56:00
  • 126:

    ◆lZf.ArgVp2

    「他人にも甘いから自分にも甘いねん。
    ………だからゆうちゃんはりゅうちゃんが好きなんやと思う。前『隆といたらガキのままでおれる』っていうてた。素直になれるんやろな、りゅうちゃんといると」
    「…………なんやねん。俺がガキって事?」
    なんか裕司と梅子の間にはそんな踏み込んだ会話があるねんやって置き去りにされた気持ちなった。三人でいるときはいっつもしょうむない事ばっかして笑ってるだけやのに。
    「………そういう意味ちゃうって笑。うちらはりゅうちゃんがすきやでって話」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-17 03:03:00
  • 127:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は下を向いた。よーわからん。わからんわ。仲直りったって一方的に殴ってきたんは裕司やん。
    無言がやけに長いと思ってたら梅子はクッション抱えて寝息を立ててる。疲れてるんかな。俺は梅子を抱えて布団に寝かした。
    ……軽っ。背は同じくらいやのに肩とか腕とかめっちゃ頼りない。なんか寂しかった。
    段々俺らは男と女に“違う人間”になっていくんやなって漠然と感じた。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-17 03:12:00
  • 128:

    ◆lZf.ArgVp2

    腹が減って下へ行こうとして階段の最後4段くらいのとこで滑ってもうた。足を思い切り柱にぶつける。鼻につんとくる痛み。
    「………つぅーーっ…!!!!」
    ……あっ…俺親指動かへんのやった。
    色々あって忘れてたけど病院とか行ったほうがいいんかな?

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-17 03:17:00
  • 129:

    ◆lZf.ArgVp2



    『りゅうちゃん…………親指どうしたの?』
    記憶が再生される。そういや誰にも話してない。親指が動かんの知ってるのは俺だけ。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-17 03:21:00
  • 130:

    ◆lZf.ArgVp2

    おかんが作っといてくれたみたいで鍋に味噌汁とテーブルに焼き鮭がラップしておいたった。
    鮭一匹で飯3杯はいける。
    飯を頬張りながら昨日の事色々考えた。
    きっと見てわかる位へんな歩き方してたんやろう。
    今日は変な夢も見やんかったし気のせいや、意外と俺は神経質らしい。デリケートやけど。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-17 03:26:00
  • 131:

    ◆lZf.ArgVp2

    部屋に戻ると、梅子はまだこーこー寝息をたてとった。………子供みたいな顔しよって。
    『隆一、梅子の事好きやろ?』

    梅子が引っ越す前、裕司が俺に言った。「わからん」と答えた。
    今もその気持ちは変わらん。触れたいとか付き合いたいそんなんじゃない。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-17 04:03:00
  • 132:

    ◆lZf.ArgVp2

    笑ってて欲しいと思う。悲しい事や苦しい事からは遠ざけてやりたい。

    三人で遊ぶようになってもしばらくは梅子は裕司としか喋らんかった。今ではいけしゃあしゃあと生意気もいいよるけど、出合った頃は人見知りで。
    初めて梅子が俺がくだらん冗談言って笑った時、とにかくめちゃくちゃ嬉しくてよっしゃあ!て言いたくなった。
    タレ目な目が笑うと目尻が下がって、めちゃくちゃ可愛いと思った。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-17 04:08:00
  • 133:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ごめんっ!?…………寝てもうてた」
    まだ眠たそうな梅子を送って家に帰る。今日はわりと涼しかった。

    「おかん 金くれ!」 
    「はあ?何につかうねん。あかん!」

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-17 04:11:00
  • 134:

    ◆lZf.ArgVp2

    「病院」
    「あんたピンピンしてるやないのー。頭悪いのは病院じゃ治らんで。」
    おかんは典型的な関西のおばはんって感じでどんな時にも笑いを忘れへん。
    「病院代とかいうてガメる気ちゃうやろな!?…………………………なんか顔色悪いやないの?大丈夫か?」
    デリカシーのカケラもないけど心配そうに覗き込む顔はやっぱおかんやなと思う。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-17 04:16:00
  • 135:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……喧嘩もほどほどにしとかなあかんで」
    おかんから金を受け取ると近所の整形外科にチャリを走らせた。
    子供ん時からお世話になってるお前が大丈夫か!?っていうよぼよぼのじいちゃんの先生で、病院なんてめんどくさいとこに自ら行くのはじいちゃんに会いたいからっていうんもある。
    八卦とか人相学とか占いみたいなんも研究している変人やけど。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-17 04:22:00
  • 136:

    ◆lZf.ArgVp2


    「なんも異常ないわ。」
    「親指動かんのにそんなわけないやろ!」
    診療時間がちょっと過ぎた診察室は看護婦さんっていってもおばさんも帰ってしまって俺とじいちゃん二人だけやった。
    「これ見てみ?骨もヒビ一つないし健康そのものや」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-17 04:26:00
  • 137:

    ◆lZf.ArgVp2

    レントゲン写真には俺の骨が写し出されている。……まあ俺が見たところで異常あってもわからへんねんけど。
    「気になるんやったら大きい病院で検査したらいいけど、ちょっと様子みよか。まあ神経系の病気の前触れってこともあるから続くようならまた来なさい。そういや、こないだ裕坊もきよったわ」
    「裕司どっか悪いん!?」
    「寝る時膝痛とうて寝れんいいよってな。………あいつはただの成長痛や。」
    ……あいつ、まだ成長する気か。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-17 04:33:00
  • 138:

    ◆lZf.ArgVp2

    「そんな事より、隆坊お前、相が悪い」
    じいちゃんは黒ぶちの虫眼鏡みたいな分厚い眼鏡の奥でギロリと俺を睨んだ。
    「裕坊となんか危ないことしてへんやろうな??」
    じいちゃんは優しいけど怒るとその辺の大人なんて話にならん程怖い。誠司クンですらじいちゃんには敬語で挨拶する。
    「してへんわ!!!裕司はどうやったん!?」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-17 04:39:00
  • 139:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あいつは心配ない。殺しても死なん。憎まれっ子世にはばかるいうやろ」
    俺のじじくさい喋りはじいちゃんの影響なんかもしれん。
    「危ないおもたら近付なんこっちゃ。お前みたいなんは特に」

    じいちゃんの忠告に年寄りは心配しいやなーと思ったりした。帰りに「食べきれんから」と桃をもらった。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-17 04:44:00
  • 140:

    みゆ

    きになる

    IP強制表示中:210.153.84.72
    2008-08-20 12:09:00
  • 141:

    更新楽しみに待ってます?

    IP強制表示中:210.153.84.129
    2008-08-20 15:06:00
  • 142:

    名無しさん

    うわー!めっちゃおもろい!主さん天才やな本だしてやー!まじおもろすぎやから!

    IP強制表示中:210.153.84.135
    2008-08-20 20:53:00
  • 143:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>144 みゆさん 前の話しから読んでもらってて嬉しいです
    >>145さん 少しでも楽しんでもらえれば幸いです
    >>145さん 褒めすぎです笑 他にも書いたやつとかもあるんでまた暇つぶしに読んでみて下さい♪調子乗りました

    夏の話なので暑い内にか書き切りたいんですがもしちんたらしたらすいません?

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-20 23:17:00
  • 144:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>143 「あんたいつも先生んとこいったらなんかもろてきてーー!明日お礼におかず持っていってや」
    桃を冷蔵庫にしまいながらおかんがいつものように言う。
    「隆!聞いてんのか!………んでどうもなかったんか?」
    「………多分」
    俺にだってようわからんし適当に返事した。おかんは早くに自分のおとんを亡くしてるからじいちゃんの事が気になるらしい。なにかにつけて俺に惣菜を持って行かす。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-20 23:25:00
  • 145:

    ◆lZf.ArgVp2

    そんなに気になるなら毎日持って行ったればいいのに、それはそれで気を使わすからあかんとか大人の事情があるらしい。そんなん気にする前にもうちょい料理の腕前を気にしてくれたらええのに…………。

    じいちゃんははやくに奥さんを亡くして、今は一人で病院の近くに住んでる。
    おかん曰く若い時は男前やったじいちゃんが後妻さんをもらわんかったんをおばはん連中は「美談やわ〜」なんてゆうとるけど、じいちゃんが再婚できひんかったんはじいちゃんが変人やからやと俺は思う。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-20 23:31:00
  • 146:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺と裕司は子供の時、怒ったじいちゃんにほうきでぶったたかれた事がある。
    泣き叫んだけど許してもらわれんかって相当しぼられた。
    理由は確か家からちょっと離れたとこの空き家を裕司と秘密基地とか呼んでて、そこで遊んでたらたまたま通りかかったじいちゃんに見付かった。
    あの怒りようは異常やった。
    なんか説教されたけどじいちゃんの形相が恐ろしすぎて、それしか覚えてへんくらいやもん。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-20 23:40:00
  • 147:

    ◆lZf.ArgVp2

    それからじいちゃんの事もしばらく避けてたしあの空き家には近付きもせんくなった。
    今でも空き家は避けて通る。じいちゃんがトラウマになっているらしい。

    今思うと空き家いうても人の土地やし、床とか穴開いてるとこがあるくらい古い家やったから心配してくれてんろうなあって思う。
    じいちゃんに殴られたんはそん時だけやし。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-20 23:44:00
  • 148:

    ◆lZf.ArgVp2

    飯食って風呂にはいったものの、昼過ぎまで寝てたから全く眠くない。することもないしダラダラとしていた。
    窓がコンコンとなる。一瞬ビビったけどそこには裕司が窓ガラス越しに立っているのが見えた。
    「ええツラなったやんけえっ」
    ケケケと裕司が笑う。
    俺の部屋のベランダは丁度その下に塀があって、ちょっと運動神経がいい奴ならすぐによじ登ってこれり不用心極まりない造りになっている。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-20 23:53:00
  • 149:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺の親は割りと放任でなんも言わんし「玄関から入れよ」て言うてたけど、裕司が窓から入って来る時は、おかんとかおとんとか俺の家族に顔合わしたないんやなって気付いてからなんも言わんようになった。
    「……悪かったな。けどお前も俺殴ったしあいこな!!」
    俺よりはマシやけど、所どころ顔を腫らした裕司がすかんと笑った。
    ………なんて爽やかな奴!!!
    俺は裕司を見ないで「……おう」とだけ答えた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-21 00:00:00
  • 150:

    ◆lZf.ArgVp2

    なるべくそっけない風に言うつもりやったのに、ちょっと口元がニヤけてもうた。

    「あほか!!!あはは!!!!危ない!」
    真夜中のたまに車が通るくらいの道をチャリで全力疾走。
    途中でカッコいいチャリの乗り方を開発。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-21 00:05:00
  • 151:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いやいや!!!それちゃうやん!!!乗り方ちがくてただ変な顔してチャリ乗ってるだけやん!!!!」
    「らんらんる〜〜!!!!!!」
    「ぎゃははははは」
    やっぱり裕司といたらめっちゃおもろい。ちょっとあほな事やっただけで底無しに笑える。
    裕司はいつものボケ全開で俺の突っ込みも冴え渡った。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-21 00:10:00
  • 152:

    ◆lZf.ArgVp2

    「写真判定お願いしまーす」
    「あほか!!!どう見ても俺の勝ちや」
    「お前が勝ちなら俺は勝ち様や!」
    結局、勝敗はうやむやになり、その辺を一回りした後、公園に来た。裕司がコーラを買ってくれた。
    何にも考えてなかったけど、ここはこないだ糞女にビンタかました所やった事を思い出し、急激にテンションは下がっていく。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-21 00:27:00
  • 153:

    ◆lZf.ArgVp2

    「やっぱコーラやな!むしろコークやな!!!こないだペプシ買ったんコークに謝るわ。もう一生お前だけやしなコーク…………………………………………………」
    隣りでボケ続けていた裕司が黙った。
    夏の割に星が綺麗でもう少し明るくなってきつつあって、青くなり始めている空の中でもはっきり光の丸が見える。
    吸い込まれそう、落ちてきてまちそう……。
    「詩人やな……お前」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-21 00:36:00
  • 154:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……何ひとの心読んどんねん!笑」
    「だって目がなんかポエムってるもん」
    …………でた裕司語。飲み干したコーラの缶をゴミ箱に投げ入れると裕司はポツリと言った。
    「……レイちゃんな、淋しい子やねん」
    俺は黙ってコーラを飲む。……男は黙ってセブンスター。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-21 00:41:00
  • 155:

    ◆lZf.ArgVp2

    「俺は兄貴おるけど………レイちゃんちは誰もおらん」
    ……別にあの女の身の上なんかどうでもいい。連れだって親共働きでいつもあんま家おらんって奴なんかいっぱいいる。
    ………もっと深い意味での話なんやろなって事くらいほんまはわかるけど、同情なんかしたくない。そんなんなんの解決にもならん。
    「茶みたいにコーラ飲むなや!もっと大陸的に行け!!アメリカを感じろ!!!」
    意味分からん裕司の振りに乗って、俺なりのアメリカを体現しながらコーラを一気。静かな公園に笑い声が響いた。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-21 00:49:00
  • 156:

    名無しさん

    主さんもういっこ書いてるやんなぁ(^-^)プロの作家目指してるんですか?まじで文才ありまくりやな!書き出し見ただけでひきこまれた!!がんばってな☆

    IP強制表示中:210.136.161.151
    2008-08-21 11:02:00
  • 157:

    更新ありがとう??

    楽しみにしてます(^-^)

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2008-08-21 11:34:00
  • 158:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>162さん はい☆頑張らして貰います?プロとか憧れますが目指すとか具体的な事は考えた事ないです?趣味ですが読んで貰えるのは嬉しいです☆
    >>163花さん こちらこそコメント嬉しいです☆☆☆

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-08-22 01:26:00
  • 159:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>161 目が覚めると裕司はおらんかった。携帯にメールがきてて、風呂入りに帰るからお前も起きたら来いとの事だ。
    今日は雨。雨音で目覚めた。時計は二時まわってるのに、夕方かと思う程に外は薄暗かった。
    家を出る頃には雨は止んでたけど、妙に風がある。
    台風が来る前みたいな感じ。学校がある時は、暴風警報でもでてないかとニュースを見るけど、夏休み真っ最中の今はさほど関係ない。
    雨だろうが風だろうが、結局は遊びに出掛けるんやから。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-22 01:36:00
  • 160:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司の家の玄関に見覚えのあるたっかいヒール。……まだおるんかい。自分かって入り浸ってる癖に眉間にしわをよせた。

    「…………………」
    てっきり誠司クンといると思ってた“レイちゃん”は今日もなぜか裕司の部屋にいた。裕司の布団に寝転んで、何をするわけでもなく、裕司のプレイ中のゲーム画面を眺めとる。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-22 01:45:00
  • 161:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あんた、また来たん?」
    チラリと俺を見ただけですぐにテレビに視線を戻しながら糞女は言った。
    ………お前の家か!!ほんまムカつくわ、この女。
    『誠司に言わんといて』とかなんとか、半泣きなってた癖に。我が物顔で裕司の部屋に居座っとる。
    この女の性格ゆうか神経ゆうか常識ゆうか………………とにかく色々信じられん。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-22 01:53:00
  • 162:

    ◆lZf.ArgVp2

    テレビ画面からはボス戦らしき壮大なBGM。裕司はここが山場やっていうんはわかるけど、ゲームに夢中で俺が来てるんすら認識してるんか怪しいし。その集中力をもっと他のとこで役立てろよ……。
    “レイちゃん”はもちろん俺に話し掛けたりしいひんし、俺も話す事なんて社交事例ですらでてこやん。
    しょうがないから裕司の戦いを暖く見守る以外、俺に出来る事はなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-22 02:43:00
  • 163:

    ◆lZf.ArgVp2

    「とったどぉぉぉ!!」
    裕司の大声に肩がビクッとなる。“レイちゃん”もビクッてなってたんも視界の端にうつった。奇妙な人間関係のトライアングルの一点達は、みんなしてテレビ画面を見つめてたけど、その内二人は心ここにあらずやったって事やな。
    ファンファーレが鳴り響き、ブラウン管の中の勇者立ちは、飛び跳ねたり剣を振り回したりしていた。
    「ちょお!!!4回目にしてやっと倒したって〜〜〜……ああ!隆来てたんか」
    ……1時間前からな。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-22 04:13:00
  • 164:

    ◆lZf.ArgVp2

    セーブをすませると裕司は我慢していたらしいトイレにダッシュしていきよった。
    裕司抜きの二人ならそれなりに話せる事もある。
    「……誠司くんは?」
    「出掛けた……多分、今日は帰ってこおへん」
    俺は聞こえるようにため息ついたった。裕司といたって別に会話なさげやし。裕司ゲームしとるくらいやからな。そんなんでも“レイちゃん”がここにいる理由がわからん。おもんないやん、そんなん。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-22 04:23:00
  • 165:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あんさあ……」
    “レイちゃん”はテレビ画面を執拗に見つめてるから、最初は俺に話しかけてるって気付かんかった。
    「…………こないだ…ごめんな?」
    思わず“レイちゃん”をガン見。まさか謝られると思わんかったから。
    “レイちゃん”はテレビを見る体制を少しも変えず、目にはテレビの画面の光が映り込んでる。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-22 04:31:00
  • 166:

    ◆lZf.ArgVp2

    その目の端が、少し潤んで赤くなってた。俺はテンパった。先に謝られると自分がすごく悪かったような、大人気ないような気になってきて…………。
    「……べっ…別にかまへんで……」
    あー俺、最悪。しかもめっちゃ冷たい言い方になってもうた。
    “レイちゃん”はうつむいた。一瞬悲しそうな顔したんが見えたけどすぐに無表情に変わった。そういう顔に覚えがある。
    「……………俺も………殴ったん…ごめん。」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-22 04:42:00
  • 167:

    ◆lZf.ArgVp2

    “レイちゃん”が笑った。笑った顔っていうか…ブスッとした顔以外初めて見た。
    全然ニコッて感じじゃない。笑うのへったやなー。眉毛が下がって泣く前みたいにも見える。けど目が嬉しそうやから笑ってるんやと思う。………多分。
    裕司は女の涙に弱いらしいけど、俺は女の笑顔に弱い。
    たかがちょっと微笑まれたくらいで“レイちゃん”のイメージが良くなった。
    ……俺って馬鹿。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-22 04:53:00
  • 168:

    ◆lZf.ArgVp2

    笑顔っていうか……ほんまは違う意味で一番俺が弱いんは無表情なんやけど。
    梅子が苛められてた時、初めは悲しそうな元気なさそうな顔しとった。けど段々無表情になっていきよった。
    どんな悲しそうな顔より無表情な方が悲しい気がするねん。

    俺は気にしてただけで、梅子を助けたんは裕司やけど。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-22 05:06:00
  • 169:

    ◆lZf.ArgVp2

    「スイカバー食おうぜ!!」
    こないだのスイカバーの残りを持って来た裕司。
    「うちスイカバー大好き!!!………あぁっメロンしかないっ!!!邪道や!!」
    なんか急に打ち解けた雰囲気になった。
    「俺はメロンバー結構好きやけどな」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-22 05:12:00
  • 170:

    ◆lZf.ArgVp2

    「邪道やっ!!!」
    裕司と“レイちゃん”が声を揃える。いつの間にか普通に話してた。
    「あっ、レイちゃ………レイさん」
    「レイでえーで」
    ニッコリ笑うのは下手くその癖に、上から目線ぽく「へっ」て笑うのは得意みたいやった。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-22 05:17:00
  • 171:

    ◆lZf.ArgVp2

    「レイでえーで」などと言われても、誠司クンの彼女を呼捨て出来る筈もない。
    裕司が呼んでるようにレイちゃんと呼ばせてもらう事にした。

    時計を見ると5時過ぎ。
    「梅子遅いなあ……」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-08-22 05:21:00
  • 172:

    ◆lZf.ArgVp2

    昨日『また明日ね』て別れたし当たり前に来ると思ってたけど。
    「今日もう5時過ぎてるし来んのとちゃう?電話してみろや」
    梅子の携帯を鳴らしてみた。何回か鳴って留守電になった。切ろうとした瞬間、俺は固まった。

    ザ……ザ…ザと雑音混じりの留守電のアナウンス。その音声の声はこの世のものじゃない………直感ていうか本能が、そう告げた。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-22 05:32:00
  • 173:

    名無しさん

    ヒャー!
    気になるぜ

    IP強制表示中:210.153.84.33
    2008-08-22 06:12:00
  • 174:

    しおり

    IP強制表示中:118.12.222.2148
    2008-08-22 10:02:00
  • 175:

    くま

    続き楽しみに待ってるからね〜(^∀^)ノ

    IP強制表示中:210.153.84.35
    2008-08-22 23:51:00
  • 176:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>179 今から更新します☆
    >>180 読んでくれてありがとう
    >>181 くまさん 今から更新します
    コメントくれた方ありがとう☆嬉しいです

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-08-24 12:08:00
  • 177:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>178 ザ……ザザ…ザザザ……メッセージ…メッセージメッセージ…ジ……………ピーと…ピーと…………発信音…はっ……しん……おん……
    最初は機械的な女の声だったアナウンスが、段々音割れが酷くなっていき、腹から絞り出すような太い声に変わった。その声は女か男かも曖昧で、その周波数を受信した耳から体が凍った。
    ザザザ…と鳴り続けるノイズはいろんな人間の息遣いや声が混じっているようで……とにかく気味が悪い。
    発信音がそれらの音全てをつんざくみたいに、その音だけ正常にピーっと鳴った。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-24 12:18:00
  • 178:

    ◆lZf.ArgVp2

    急に何の音も聞こえなくなったと思ったら、また微かな音が聞こえてくる。
    啜り泣く声。
    段々大きくなって何か言っているようにもおもえる。
    「………く………て………はや………く」
    聞いたら……あかん。そう思うものの俺の体は固まってて、耳に体の器官が全部凝縮されてる。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-24 12:25:00
  • 179:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は冷静や。
    女の声の意味がわからないように、ただの音として聞き流すように努力した。動かそうとする指は吹き出した汗で湿っている。
    「隆一?どしたん?」
    携帯が手からすべて畳に落ちた。俺は電話切った時、通話料が表示されるようにしてるんやけど、何もでない。
    というか電源が切れてた。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-24 12:33:00
  • 180:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………なんか電話………おかしかった……………」
    携帯の電源のボタンを長押しする。何ごとも

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-24 12:35:00
  • 181:

    ◆lZf.ArgVp2

    なかったように携帯会社のロゴが画面に現れた。……落ちた衝撃で電源が落ちたんかもしれん。
    「梅子の携帯普通に繋がるで〜…………あっもしもし梅子?」
    裕司が自分の携帯を耳に押し当ててきた。
    「もしもし……りゅうちゃん?」
    さっきの電話の声じゃない。梅子は鼻が詰まったような、しゃがれたような声に少しなってた。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-24 12:41:00
  • 182:

    ◆lZf.ArgVp2

    「風邪?」
    「ううん、寝起きやねん。ごめんな。明日またね」
    自分の携帯を見直すと確かに梅子にかけたはずの発信履歴がなかった。
    なんか履歴が残ってた方が怖かった気がする。俺は携帯を持ったまま梅子にかけようとした所で一瞬寝てたんかもしれん。
    納得いかん気もしたけどそう思うしかなかった。だってなんの証拠も………夢じゃないって思う確証みたいなんもないわけやから。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-24 12:49:00
  • 183:

    ◆lZf.ArgVp2

    おかんからメールが来たから、まだ早いけど家に帰った。お姉が帰ってきたから今日は寿司らしい。
    家に帰るなりお姉が居間で待ち構えとった。テレビ見ながらお茶飲んどるだけやけど、こういう空気んときは絶対なんかある。
    「隆一、こっちおいで」
    ちゃぶ台に広げられてるんは、俺の通知表。「ようもこれだけ2揃えたなあ……いいの体育だけやないの」
    お姉は小学生のちっちゃな学習塾で事務をやってて、成績にはうるさい。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-24 12:58:00
  • 184:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺の中学は部活動だけはやたら盛んで、今だって夏休みやいうのに熱っついグランドでは毎日えいおーえいおー声が響いてる。
    小学生んときは俺も裕司と野球チームに入ってた。学校のクラブと違って有志の草野球やけど。
    中学に入って裕司ともちろん野球部に入ったけど、顧問が熱血体育教師みたいな奴で裕司と合わんかった。
    誠司クンは中学で既に素行悪くて有名やったから弟の裕司は目えつけられるというか、俺の目から見ても顧問の態度は陰険やったと思う。裕司は大人にあんまりなつかんし、そういうのも顧問は気に入らんみたいやった。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-24 13:20:00
  • 185:

    ◆lZf.ArgVp2

    そういうの見てたらアホらしくなってきて、中学最初の夏が来る前に二人揃って辞めてしまった。
    「桜台はあかんからな」
    桜台っていうのは誠司クンが行ってる学校で、頭悪い、柄悪い、就職率進学率が共に悪いの3Wで地元の人には評判が悪い。
    誠司クン曰く、入試で名前が書けりゃ受かるらしい。
    姉ちゃんはちゃぶ台になんやらパンフレットを大量に広げるとニッコリ笑った。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-24 13:31:00
  • 186:

    ◆lZf.ArgVp2

    「隆一、塾行き。夏期講習」
    俺は無言で抵抗した。
    「自分でやるとかいうてもあかんで?自分でやった結果がこれやろ?
    ちょっと行って勉強の仕方教えてもらっといで!!!」
    台所の向こうで「おかん、よーわからんから、美緒がしっかりしてるしたすかるわ〜」と呑気に呟くおかんの声がした。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-24 13:37:00
  • 187:

    ◆lZf.ArgVp2

    「まあ…もう申し込んでるんやけどな、このコースや。明日説明会やからちゃんと行きや」
    ……俺の意見関係なしか。けどおかんとお姉の会話を聞いてると費用はお姉が出してくれたっぽくて「行きたくない」なんて言えなかった。
    俺が明日から行くらしい塾はちょっと街まででなあかんけど、ここいらでは有名な進学塾で俺が入る事すら場違いな気がした。
    お姉がもってきたパンフレットはご丁寧に蛍光色のマーカーでラインがひいてある。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-24 14:09:00
  • 188:

    ◆lZf.ArgVp2

    “今までの学習に疑問・不安がある生徒向き、3年間総復習・総仕上げコース”(今までの学習の要点を独自のカリキュラムで総復習します。今までの学習で疑問を持ったままのお子様、また不安を残すお子様にお勧め致します。新学期からの授業にスムーズに対応する為に講師一同万全の構えで臨みます。個別質問時間も設けております)
    ………なるほど要は今まで全然勉強してへん奴向けコースか……。
    朝九時から夜六時まで………。
    せっかくの特上寿司もなにやら味気無く喉を通り過ぎていった。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-24 14:20:00
  • 189:

    ◆lZf.ArgVp2

    塾近くのマクドは塾生でごったがえす。俺は列に並びながらブルーな気持ちを味わっていた。
    配分されたテキストの量の多さ、重さ。女の子なんて持って帰るにも一苦労なんじゃ。
    列が少しずつ進んでいくと斜め前に知ってる顔を見つけた。
    ごったがえす店内で一人優雅に本を読んどる。
    「レイちゃん!?前座ってええ?」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-08-24 14:36:00
  • 190:

    ◆lZf.ArgVp2

    一応聞いたものの、返事も聞く前からトレイをテーブルに置いた。「………一人?」
    かけていた眼鏡を慌ててはずしながらレイちゃんが言う。今日はいつもに比べたら化粧がめっちゃ薄かったし、服もいつもにしたら普通やった。
    はっきりいってその方が可愛かった。
    「いや………そこの塾行くことなって」
    「うそやん。うちもあっこ行ってるで」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-24 14:42:00
  • 191:

    くま

    更新ありがと!!!
    梅子ちゃんが気になります(>_

    IP強制表示中:210.136.161.152
    2008-08-24 15:10:00
  • 192:

    名無しさん

    更新されてる!ありがとう(:_;)やっぱりおもろすぎるわ

    IP強制表示中:210.136.161.53
    2008-08-24 20:08:00
  • 193:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>200くまさん 梅子はこれからもでてきますよー コメントどうもです
    >>201さん コメントありがとう

    お二人とも こちらこそ読んでもらってありがとうです

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-27 22:54:00
  • 194:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>199 「レイちゃん結構サボってるやろー?」
    ニヤニヤしながら俺が聞くとレイちゃんにでこピンされた。
    「さぼってないわ。復習の日はいってないけど」
    「復習の日って絶対いかなあかんもんなんちゃうの!?」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-27 23:09:00
  • 195:

    ◆lZf.ArgVp2

    すいません(´A`)
    何回やっても禁止ワードになってしまいます? 禁止ワード調べてまた書きますね
    何があかんやろう(-д-;)

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-08-27 23:20:00
  • 196:

    名無しさん

    禁止ワード‥ウザイですよねぇ(-_-#)小説書いてる人は特に辛いと思います!でも、めげずに頑張ってやp(^ー^)q

    IP強制表示中:210.153.84.131
    2008-08-28 03:41:00
  • 197:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>203 塾の夏期カリキュラムは週六日。そのうちの二日がその週の復習の時間にあてられていて、特に大事な時間やと講師が説明で熱っぽく語っていた。
    「……わざわざ塾で復習とか。そんなん勉強してへん奴だけやったらいいねん」
    レイちゃんは強気に言い放つとカフェオレを一気に啜った。ズズズとストローが音を立てる。
    「怒られへん?」
    「次の週のテストで満点とったら怒られへん」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-29 02:45:00
  • 198:

    ◆lZf.ArgVp2

    な…なんか格好いいやん、レイちゃん。
    今日は説明だけで終わりやから、そのまま裕司の家に行くというレイちゃんと一緒に帰った。
    ゴトンゴトンと揺れる電車はキンキンに冷房がきいているにも関わらず、オッさんの頭みたいな生臭い匂いがする。
    「レイちゃん、なんでそんなに頭いいの?」
    レイちゃんは鏡を見ながら、まつげをヒジキみたいにするべく塗りたくっているいる手を止めて、びっくりするほどでっかいポーチに銀色の化粧品をしまう。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-08-29 02:51:00
  • 199:

    ◆lZf.ArgVp2

    「別に頭良くないよ。勉強なんて単にやり方やねん。新しい方程式発見しろとかゆわれてるわけちゃうねん。もうやり方のわかってる事を覚えるだけやから」
    なんか頭の良い人の意見やなあ……それを覚えるだけっていうんが大変なんやん。
    「うち、いつも予習すんねん。で…わからんとことかチェックしとく。そしたら授業まじめに聞けるやん。それに復習なるし。で、家帰ってもっかいザッと復習して明日の予習する。そしたら塾の復習の時間なんていかんで良いやん。できてるんやし」
    レイちゃんってなんかそういう自分の事ちゃんとできひん人なんやろなって思ってたけど、意外にコツコツやる人なんやなってコツコツとは無縁の生活を送ってきた俺は普通に少し尊敬してしまった。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-29 03:02:00
  • 200:

    ◆lZf.ArgVp2

    駅に置いてあったチャリンコの後ろにレイちゃんを乗っける。
    前はあんなに険悪な雰囲気やったのに、今はどの塾先がヅラやとか、あの講師は事務員とデキてるとかで蝉の声にも負けんくらいに盛り上がった。
    レイちゃんはやっぱり笑うんは下手やけど、そんなところがレイちゃんは可愛いのかもしれない。

    裕司の家に着いたら、やっぱり今日も誠司クンはおらんかった。がっかりしているかとレイちゃんをみると、別に気にもとめてへんみたいに見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-08-29 03:18:00
  • 201:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺はレイちゃんにならうべく、人生で初めての予習に挑もうと早めに帰る事にした。
    裕司とレイちゃんを二人きりにして帰るのはなんか気がひけたけど、丁度帰り際に誠司クンが帰って来てほっとする。

    チャリで爽快に走りながらレイちゃんと塾が一緒でよかったなって、そう思った。
    チャリカゴの中の鞄に突っ込まれたテキストが、ガタガタ揺れて音を立てていた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-08-29 03:26:00
  • 202:

    ◆lZf.ArgVp2

    塾のテキストは学校の教科書よりとき方が細かく説明してある。
    最初、ページをめくった瞬間は魂の抜けるような思いがしたものの、理解できると問題を解くのはそう苦じゃない。
    今までの学校の授業という授業を睡眠に費やした俺には一個の公式を理解すんのにおっそろしく時間がかかった。
    それでも見覚えがある公式がそれなりにあって、勉強した覚えもないのにちょっと例題を見ただけで解けたりしたらテンションがめちゃ上がった。
    そうかあほやなかったんやな、俺は。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-29 03:34:00
  • 203:

    ◆lZf.ArgVp2

    おかんが勉強してる俺が嬉しいのか、夜食を持って来てくれた。
    夕飯食べて一時間で夜食ってどんだけ張りきんねん。……しかも夏にココア(ホット)って。
    おかんのセンスに疑問を感じつつ、ココアはしばらく置いといて冷めてから飲む事にする。
    俺がとってる授業は数学と英語。「とりあえず単語は覚え」とレイちゃんのアドバイス通りに今度は英語テキストの重要単語に目を通す。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-29 03:41:00
  • 204:

    ◆lZf.ArgVp2

    一階から「明日異常気象で雪ちゃうか」と嬉しそうに話すおかんの声が聞こえて来る。
    電話の相手はお姉やろう。
    胸の奥から気恥ずかしさがウワーと込み上げてきて口がグニャリと変な形に歪む。

    なんな慣れへん事してるせいか、子供に戻ったようなこそばゆい思いを俺は奥歯で噛み砕いた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-08-29 03:46:00
  • 205:

    ◆lZf.ArgVp2

    親指は動かんままやったけど夢もぱったりみんくなって、勉強して脳が疲れてるせいか夜は爆睡やし全く気にしてなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-29 04:09:00
  • 206:

    ◆lZf.ArgVp2

    そんなんよりも気になるのは梅子やった。
    ぱったりと梅子は顔をださんくなった。電話をかけてもでない事が多い。
    でても眠そうに「明日いけたらいくね」といつも同じ事をいった。
    「体調でも悪いんかな………」
    「さあ……」

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-08-29 04:13:00
  • 207:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司が冷たく答える。
    俺と裕司の間にも最近微妙な空気が漂っていた。
    理由はレイちゃんしかないと思う。確かに三人でいるとレイちゃんは裕司より俺とよく喋った。
    塾っていう共通の話題があるからやとは思うけど。
    話に入れへん事もあって裕司は三人でいる時ブスッとしてる事が最近多い。レイちゃんはそんな裕司を知ってか知らずかは知らんけど、裕司がどうしてても気にならんみたいで、正直俺はもっと裕司に気を使ってやって欲しい。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-08-29 04:20:00
  • 208:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>205さん
    禁止ワード増えたみたいですぐ引っ掛かってしまいます(´A`)何が?っていうようなんばっかりでイライラ笑なんとか更新できました。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-29 04:23:00
  • 209:

    名無しさん

    おーもろー!

    IP強制表示中:210.153.84.38
    2008-08-29 09:35:00
  • 210:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>218 土曜日、復習の日やからレイちゃんは来なかった。
    慣れてきたけど六日間毎日八時間の授業を受けたわけやからどっと疲れた気がする。
    頭脳労働は体を使うんとまた違うしんどさがあると一人妙に納得しながら電車に揺られ、裕司の家へとむかった。
    てっきりレイちゃんと一緒やと思ってた裕司は、部屋の電気もつけずにテレビをぼんやりと眺めている。
    なんかのアニメの本日クライマックスなアクションシーンがガラス玉みたいに光る裕司の両目に写っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-29 18:25:00
  • 211:

    ◆lZf.ArgVp2

    隣りの部屋から壁を叩くくぐもった音。『何がいいたいねん!?』誠司クンの怒鳴り声。………今日はいる訳ね。『どうせ浮気しにいくねやろ!!』レイちゃんの鼓膜にツンとくるような声が続く。
    『…もう今日はヤッたったやんけ……もおええやろ別に』…うわ!誠司クン相変わらず最低。
    階段を降りて行く音がして隣りは静かになる。俺と裕司はお互い無言やった。
    前からこんな事なかった訳じゃないけど、相手の女の子を知ってると複雑な気分になるもんやな。
    壁をコンコンとノックしてみる。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-29 18:34:00
  • 212:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……レイちゃん?大丈夫?」
    レイちゃんは答えへんかった。しばらくしてから赤い目をしてこっちの部屋にやってきたレイちゃんは「誠司なんか最悪や」と裕司の布団に突っ伏してしまった。
    「……何があったん?」
    一部始終聞いてて知ってるやろうに裕司が声をかける。しらこい感じは全然なくて、年下の小さい女の子に言うみたいに優しかった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-08-29 18:41:00
  • 213:

    ◆lZf.ArgVp2

    「兄貴、友達家あげんの嫌いやねん。うち親いんから友達とかはたまり場にしたがっとるみたいやけど、家あげよった事ないで。やしわざわざでよる時は友達とあそんどんやで」
    弟である裕司の言葉に信憑性があったのか、泣くのに飽きたのか、レイちゃんは静かになった。
    涙をティッシュで拭くとむっくり起き上がり、布団の跡と拭き切れてない黒い化粧の跡の残る顔で「…そっか」と寂しそうに呟いた。
    「だいたいあのボォケがそんなモテへんで。」
    裕司の言葉に「あんたの兄貴やろ、そのボォケは」とレイちゃんは少し笑った。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-08-29 18:57:00
  • 214:

    ◆lZf.ArgVp2

    「帰るわ」
    一件落着を見計らって俺が言う。
    「うちも……今日は帰る。誠司に会いたない。隆一、バス停まで送ってや」
    「おお」と答えた時、裕司と目があった。
    心臓がバクバク脈打つ。それは俺が初めて受ける男からの嫉妬やった。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-29 19:02:00
  • 215:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ゆ……じも来る!?」
    咄嗟にだした声はかすれた。
    「えーわ、みたいテレビあんねん」
    俺らの会話なんてスルーしてレイちゃんはさっさと帰り支度をしている。
    裕司はそれを子犬のような目で見守ってた。いつもより黒目がでかいような、潤んでるような、静かに震えるような目で。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-08-29 19:07:00
  • 216:

    ◆lZf.ArgVp2

    外から裕司の家を見ると、裕司の部屋だけ晃々と電気がついている。当然ながら他は真っ暗。
    裕司の部屋の光が明るく見えれば見える程、他の部屋が空っぽの暗い穴ぐらのように感じる。
    俺はだいたい飯どきには帰る。一緒に食うときもあるけど、毎回裕司とコンビニ飯食う程の小遣いもないし。
    裕司の寂しそうな目が頭に浮かぶ。俺は今まで裕司が俺が帰った後どうしてるかなんて考えた事なかった。
    暗闇の中のポツリとした明かりで一人飯食う裕司の事なんて、考えた事なかったなあ…………………………。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-08-29 19:15:00
  • 217:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なんでレイちゃんは裕司に冷たいん?」
    冷たいっていうんかは違うかもしれん、なんかよそよそしいっていうか。
    「………………」
    レイちゃんはまた例の髪の毛くるくるをしてた。
    「………息が…」
    「えっなんて?」

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-08-29 21:07:00
  • 218:

    ◆lZf.ArgVp2

    聞き取れへんくらいちっちゃい声。
    「息が詰まりそうになる」
    「どういう意味!?」
    「裕司は優しい……けど、誠司と一緒。優しいけど冷たい。一緒にいると息が詰まりそうになる……そういう時がある。」
    レイちゃんは独り言みたいに話す。レイちゃん自身、なんでなのかよくわからないんとちゃうかな。言いたい事もよくわからんし、更にうまく言葉にもならん…そういう時は俺にもある。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-08-29 21:14:00
  • 219:

    ◆lZf.ArgVp2

    ただ息が詰まりそうっていうのは、裕司があんまりに可哀相な気がした。
    そんな二人が彼氏彼女でもないのにセックスしたりとか………
    あーもう俺にはようわからん。
    頭の中に勝手に浮かんできた、レイちゃんがゆっくり裕司の首に舌を這わせる妄想をかき消す。
    丁度バスがやってきて、なんだか俺は歯切れ悪くレイちゃんを見送った。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-08-29 21:20:00
  • 220:

    ◆lZf.ArgVp2

    家に帰るとエビフライの歓迎を受けた。
    「一週間お疲れ様。」
    他にも肉じゃがにキンピラ、俺の好物が並ぶ食卓は全体的に茶色っぽい。エビフライはおかんがテレビで見たらしい揚げなくてもできるとかいう不思議な作り方が採用されたらしく、率直な感想を言えば揚げた方がうまいと思った。
    特に会話が弾むわけでも、外人みたいに何時間もかけて食べるわけでもない平均的な日本の食卓。俺はそれを楽しいとか面白いとか意識した事はない。
    それでもこんなふうにたかだか勉強を頑張っているというだけで華やぐ食卓は俺が思ってるよりずっと幸せなんやと思う。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-01 01:50:00
  • 221:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺には裕司やレイちゃんの気持ちなんてわかりようがない。
    寂しいやろな、なんて想像する事は簡単でも所詮は想像で。
    俺の家には当たり前のように色んな部屋に明かりが灯るんやから。

    理解しようのない裕司の思いっていうのが、あの寂しげな目に詰め込まれているような気がした。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-01 01:56:00
  • 222:

    ◆lZf.ArgVp2

    おかんの料理はお世辞にもうまいとはいえへんけど、このイモがどうしようもない程煮崩れた肉じゃがが俺はすきや。



    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-01 02:02:00
  • 223:

    ◆lZf.ArgVp2

    『お前のせいやろが』怒鳴りながら顔をグチャグチャにして裕司が泣いている。
    その横にぐったり横たわる梅子。眠っている様に見えたけど薄目を開けて笑っている。
    裕司は梅子の首に手を回す。どれだけ力が入っているかは腕に浮かび上がる血管を見ればわかる。梅子はジタバタ暴れ、二人はもつれ合い、腕を噛まれた裕司が叫ぶ。這って逃れる梅子は髪を掴まれ引きずられる。
    その二人の向こうに黒い固まりが見える。
    あれは…………………………………………………俺?

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-01 02:34:00
  • 224:

    ◆lZf.ArgVp2

    黒く見えたのは血……?
    梅子が泣き叫ぶ。裕司も叫びながら何か言っているけど言葉になっていない。

    再び梅子の首にめり込む裕司の指。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-01 02:38:00
  • 225:

    ◆lZf.ArgVp2

    そうわかっている。
    これは夢。
    スクリーンに写し出される映像を俺は呆然と眺める。
    小さな古い映画館の椅子に俺は座っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-01 02:42:00
  • 226:

    ◆lZf.ArgVp2

    画面の中の梅子は喉から嫌な空気の音を立てる。裕司は動物の鳴き声のような奇声を発し続ける。

    「………やめてくれや」
    俺は涙を滝のようにながした。悲しくて仕方がない。……悲しいとはちゃうな。空っぽのただ真っ白の自分の形をした空間に痛みだけが走り続けて、切ったら溢れて流れる血のように涙が流れる。
    俺の手を誰かが握る。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-01 02:49:00
  • 227:

    ◆lZf.ArgVp2

    誰もいなかったはずの椅子の隣りには子供の梅子が座っていた。
    小さい手が俺の手を握っていた。
    チビ梅子の唇が動く。俺は安心して頷いて、どっちが子供かわから。
    そうやんな……これは俺らの話じゃない。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-01 02:54:00
  • 228:

    ◆lZf.ArgVp2

    よく見たら裕司は裕司と少しも似ていなかったし、年も大分上みたいやった。梅子やと思ってた女も梅子やない。
    血まみれの女が楽しげに口笛を吹きながら原っぱを歩いて行く。ススキを一本引っこ抜き口笛の調子にあわせて振りながら。
    そこでブザーの音がして幕がゆっくり下がっていく。

    俺はまた涙を流してた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-01 03:00:00
  • 229:

    ◆lZf.ArgVp2

    目を開けると梅子がいて、俺の手を握っていた。
    俺は驚きもしんくて、梅子がそこにいるのが当然な気さえした。
    「………怖い……夢みた」
    声が枯れいてほとんど息だけで話した。
    「……うん。うなされてた……悲しい夢やったんやね」

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-01 03:05:00
  • 230:

    ◆lZf.ArgVp2

    明るい。時計を見ると八時やった。
    「隆一!せっかく結ちゃんが起こしにわざわざ来てくれたんやしおきやー!!」
    下からおかんの朝から元気炸裂な怒鳴り声が響いてきた。
    その声を聞いて、二人同時に少し笑う。
    ……そう、現実はこっちや。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-01 03:11:00
  • 231:

    名無しさん

    ほんま天才。前作もやけど、主さんまじで出版してほしい(>_

    IP強制表示中:210.153.84.35
    2008-09-01 03:57:00
  • 232:

    名無しさん

    本間おもしろいです!
    続き楽しみにしてるので頑張って下さい(>_

    IP強制表示中:222.5.62.209
    2008-09-01 12:18:00
  • 233:

    名無しさん

    めーっちゃ気になる
    うますぎる

    IP強制表示中:210.153.84.133
    2008-09-03 03:01:00
  • 234:

    名無しさん

    これ怖い系の話しですか??
    怖い系苦手やけど
    ここまで読んだしおもろいから
    続き読むか迷う?

    IP強制表示中:210.153.84.36
    2008-09-03 12:57:00
  • 235:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>243 嬉しいです。今は投稿とかは考えてないんですけど 書きたい話がいっぱいあるのでこれからも書いて行きたいです。243さんのお言葉でもう少し自分の身の振りが落ち着いたらそういうのもしてみたいなと思いました?前作も読んでくれてるなんて嬉しいです
    >>244さん ありがとうございます?これから更新します?
    >>245さん コメントどうもです
    >>246さん 夏ぽい話を意識したので風物詩ということでホラー風味ですがホラーメインではないのでトイレに行けなくなったりはしないと思います?これからもよんでもらえれば嬉しいです

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-03 20:40:00
  • 236:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>242 おかんは友達と約束があるとかで出掛る準備をしていた。おかんの勝負服であるヒョウ柄のコーディネートが起きたての目に眩しすぎる。
    「結ちゃん、いっぱい食べていってやー!隆!二人っきりやからって結ちゃんに変な事しなや!!!」
    「なんやねん!!!はよ行けや!!!!!」
    そんなん言われたら逆に意識してしまう。梅子はクスクス笑いながら食卓に座る。
    「おばちゃんの料理久し振りやあ」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-03 20:48:00
  • 237:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子が来たから張り切ったんはやろうけど、二人で食べる朝飯にしては量が多すぎる。普通に飯と味噌汁となんかでいいのに、ダシ巻きや鮭、昨日の残りもんがところ狭しと並ぶ。
    「相変わらずへたくそやろ……不味かったら無理せんでええで。」
    「いただきます」をいって梅子は味噌汁を一口啜った。
    「そんなことないで。なんか……懐かしい味やわ笑。ダシ巻きとかすごい美味しいし。」
    「ダシ巻きだけは異常に旨いよなー。それも意味わからんけど」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-03 20:54:00
  • 238:

    ◆lZf.ArgVp2

    「肉じゃがもりゅうちゃんちならではの味や。笑」
    梅子は姿勢をぴんと伸ばして飯を綺麗に食べる。躾ってこういうとこにでるんやろうか。うちの茶の間にいるとは思えん程上品やもん。
    「……梅子、お前飯食うてる?……どっか悪いんか??」
    さっきまで若干寝ぼけて気付かんかったけど、梅子は見てはっきりわかるくらい痩せてた。やつれてるって感じ。顔色も良くないような気がする。
    「………最近、なんか夜更かししてもうてて。ちょっと生活リズム狂てるかも。」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-03 21:02:00
  • 239:

    ◆lZf.ArgVp2

    「それで最近でてこおへんかったん?」
    「……だーいーじょーぶっ。そんな顔しやんといて。ほんま最近たるんでるだけやから」
    俺は渋々納得して、飯を口にいれる。俺は女じゃないしわからんけど、梅子の痩せ方は短期間にしてはおかしい気がする。
    梅子は解りやすく言うとドラえもんのシズカちゃんみたいな子で、生活態度とかきっちりしてる。夜寝て朝は早起き!みたいな。
    長い付き合いの俺は夏休みやからって梅子が夜更かしして体調を崩したりするなんて、なんなく腑に落ちひん。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-03 21:19:00
  • 240:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……なあ、怖い夢ってどんな夢やったん?」

    カチ…カチ……、壁にかけてある時計の音がやたら大きく聞こえる。
    最後にみた血まみれの女の顔が脳裏に甦った。……というかずっと焼き付いて離れへんかったんを思い出してしまう。
    どんな顔立ちやったとかどんな服装やったとか、そんな事は記憶にないのに、あの女の表情だけが鮮明に残っている。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-03 21:37:00
  • 241:

    ◆lZf.ArgVp2

    血に塗れているっていうのに……幸せそうに笑っていた。
    「……ようわからん。不気味やけどなんか悲しかった」
    俺の貧弱なボキャブラリーではそれだけ伝えるんが精一杯。それにこの時には夢の内容はかなり所々しか覚えてなかった。
    笑う女と、女が歩いてた原っぱが夕焼ける前の太陽の光で黄色くひかってて揺れてて、それが綺麗やったこと……そのくらいしか思い出せんかった。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-03 21:44:00
  • 242:

    ◆lZf.ArgVp2

    腹いっぱい食って、ワイドショーを見て、昼までダラダラ過ごした後、チャリの後ろに梅子を乗せて裕司んちに向かう。
    天気がよくて真っ青な空に夏にしかお目にかかれないモクモクした雲が浮かんでいる。
    「ラピュタ発見〜!!!」
    梅子がすぐ後ろで吹き出した。
    「りゅうちゃん、パズウって柄ちゃうし!」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-03 21:50:00
  • 243:

    ◆lZf.ArgVp2

    心に沈んだ嫌な事なんて空に吸い取られてしまったようで、ケラケラ馬鹿みたいに笑いながら裕司んちに到着。
    ……よし、靴はなしっと。
    誠司くんもレイちゃんも不在なようで更にテンションが上がる。レイちゃんと仲良くなったとはいっても、レイちゃんが何かと気を揉む女の子であることに変わりはない。
    「宅配サービスです」
    裕司は寝ぼけながら「そんなもんはいりません」と答えた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-03 21:58:00
  • 244:

    ◆lZf.ArgVp2

    「せっかく昼飯持ってきたったのに〜」
    親切な俺たちは梅子が作ったおにぎりと残り物を適当にタッパーに詰めて持ってきた。
    「げっ隆一のおばちゃんの殺人肉じゃがやん…………」
    「文句いうな!!」
    寝癖がつきまくったネコッ毛をかきむしりながら裕司がいう。可愛らしさのカケラもない実に残念な寝起きやった。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-09-03 22:05:00
  • 245:

    ◆lZf.ArgVp2

    「すごいなーイモと人参がいっしょくたになるまで煮れるとか……一種の超能力やな。」
    確かに見た目は冗談でも美味しそうとは俺でもよういわん。
    「んでまた……味が意外とうまいところがまた不思議やな。」
    裕司は文句を言いながらも全部食べ切った。完食後もごちそうさまもいわずに「たりひん」とまた文句を言う。
    「ごっそーさん……ておばちゃんに言うといて。」

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-03 22:11:00
  • 246:

    ◆lZf.ArgVp2

    散々悪態をついた後ポツリと裕司がいう。コイツはこういうところが憎めへん。
    梅子が下にタッパーを洗いに行き、女の子はやっぱこういう気遣いがええなとか思った。
    「…なんか梅子変とちゃう?……痩せた?」
    「お前もそう思う!?」
    裕司は自分からふっといて「まあ女の子は色々あるんちゃう!?」と適当にまとめよった。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-03 22:18:00
  • 247:

    ◆lZf.ArgVp2

    男子中学生たらぬサラッとした物言いに面食らってしまった俺はそれ以上の追求もできず、話はそこで終わった。
    綺麗に洗い終わったタッパーをもって梅子が戻って来て、「何話してたん?」なんて聞くもんやから、俺は変に口ごもり、それを見た裕司が意地悪く笑った。
    梅子がDVD借りてきて、晩飯にカレー作って食べながら見ようというので、「暑い、暑い」とひたすらゴネる裕司を連れて出掛ける。
    梅子がいるとやっぱり普段じゃ有り得へん女の子ならではの企画がでてきて、俺は結構楽しかったりする。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-03 22:47:00
  • 248:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司は鬼畜にも俺のチャリの後ろに立って梅子に漕がせている。
    「梅子ーもっと気合いいれてけ〜〜」
    ………鬼か。「ゆうちゃん、最悪やなあ」と言いながら梅子はなかなかのスピードをみせた。
    いっそ電車で街まで行った方がなんでもあるけど、地元で充分遊べてしまう俺らには電車代すらもったいない。
    代わり映えしない、と思ってた地元も梅子と遊んでた頃からしたらやっぱり少し変わっていると、三人でいると実感する。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-03 22:58:00
  • 249:

    ◆lZf.ArgVp2

    三人でよく遊んだ空き地はアパートが建った。いつのまにか新しいコンビニが何件かできている。俺らが通ったボロい小学校も壁が綺麗に塗り替えられていた。
    「この駄菓子屋まだあってんや!!」
    毎日のように通った駄菓子屋。ここ数年は全く来てなかった。
    「まだ ババアおるかな」
    裕司が言う。よくチャリンコを店の隣りの家の前止めて怒られた。裕司なんかいつもズルして景品貰おうとするから、ババアにどつかれとったっけ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-03 23:06:00
  • 250:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なつかしなあ〜〜。いってみようやあ」
    梅子が目を輝かす。俺らはちゃんと店前の片隅にチャリを停めると、立て付けの悪い戸を開けた。
    「うわっまだこんなんあるんや、どこの工場が作ってんやろうな」
    ……“こんなん”の為に小学生にしては大金を突っ込んだ裕司を知ってる俺と梅子は思わずニヤニヤしてもうた。
    今ぐらいの時期には冷蔵庫で冷やしたるチューブみたいなんに入った着色料バリバリのゼリーを三人色違いでよお買おた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-03 23:15:00
  • 251:

    ◆lZf.ArgVp2

    んで『全部食うなよ!一口交換な!!!』って三人で回した。今やったらわかるけど、交換なんてしんくてもほんまはみんな同じ味。
    あの頃は色が違うだけで、全然違う味に感じたのに。
    騒がしくなったのに気付いて奥から人がでてきた。期待で半開きになった口は三人揃って静かに閉じられる。出て来たんはババアとちゃうかった。
    「……あの…おばあちゃんは?」
    梅子の質問に答えたのは、若い……とはギリで言えへんくらいの年の女の人で少し沈黙が流れた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-03 23:23:00
  • 252:

    ◆lZf.ArgVp2

    ゴクリ……誰かが生唾を飲む音が聞こえた。
    「あたしなあ、孫なんですけど……おばあちゃん今入院してて」
    ……焦った!死んだかと思った!!!
    適当に地元トークをした後、何戸か駄菓子を買って店を出る。
    「また来てあげてな〜、おばあちゃん死ぬまでは店たたまんいうてるから!」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-03 23:28:00
  • 253:

    名無しさん

    リアルタイム?
    夜中トイレいけるくらいの
    怖さなら大丈夫です?
    完結するまで読みます?

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2008-09-03 23:31:00
  • 254:

    ◆lZf.ArgVp2

    ババア代打の孫に手を振り、チャリに乗る。はしゃいだ気持ちは萎み、みんな無言になってもうた。時間が経つっていうのはこういう事やねんな………。
    今度は俺が後ろに梅子を乗せる。夏の青い空が余計寂しい気持ちのを濃くした。
    「たたたたったじゃーーーーん!!」
    裕司が急にすっとんきょうな大声を出す。正直イラッとしながら裕司の方を見た。
    「………ぐっじょぶ」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-03 23:35:00
  • 255:

    ◆lZf.ArgVp2

    何を最後コソコソ買うてるかと思ったら……………。
    俺は黄色。裕司は青。梅子はピンク。
    配色もそのままのゼリー。
    「一口交換な!!!」
    俺らはチャリからわざわざ降りてゼリーを取り合った。裕司が俺に渡さんもんやから、じゃれてたら飛び出したゼリーが裕司の頭に着陸。梅子と俺は腹かかえて笑う。……一口ずつ交換したゼリーは不思議と味がそれぞれ違うような気がした…………。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-04 00:01:00
  • 256:

    名無しさん

    お疲れ様?
    これからもがんばって下さいp(#^∇゚)qファイトッ

    IP強制表示中:210.136.161.48
    2008-09-04 08:39:00
  • 257:

    名無しさん

    >>265さん 嬉しいです。涼しくなってきたので焦りめで更新します
    >>268さん コメントありがとうです

    コメント下さった方ありがとうm(__)m励まされます

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-05 01:58:00
  • 258:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>267 「たたたたたたたたたたたたあっ!!!!!!」
    「お前……飛び散らしてるだけやしな」
    裕司の刻んだ玉葱が床の至るところに飛び散っている。
    「うわっ足の裏はりついたやんけっ」
    「ふわちゃあっ!!!!!!」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-05 02:03:00
  • 259:

    ◆lZf.ArgVp2

    「包丁持ってんのに騒がんといてっ!……もう、ゆうちゃんもったいないやろ!!!」
    ……怒られた、俺まで。
    流しでは梅子がジャガイモの皮を剥いている。料理している女の後ろ姿はなんかいい。
    「目にきたっめっちゃ目に来たっっ」
    裕司は騒ぎながらも、怒られたせいか真面目にやっていた。ただデカい……玉葱の粒の一個一個が。最初のほうに切ったやつとか肉じゃが用?具が大きいにも程がある。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-05 02:11:00
  • 260:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ま……いいわ。その代わりしっかり炒めてや」
    俺と梅子は並んで台所にたつ。玉葱を炒める俺。人参を切る梅子。俺の鍋にちょっかいをだしてくる裕司。
    「ゆうちゃんは自分で散らかした玉葱の掃除!!」
    ぶつくさ言いながら裕司は大人しく言う事を聞いていた。
    「……なんか、家族みたいやな」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-05 02:17:00
  • 261:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子が笑う。その顔を横目で見てると胸がギュッとした。嬉しいし楽しい……けどなんか少し寂しい、なんでそう感じるんかはわからんけど。
    玉葱は中々炒まらず、鍋の中であっちいったり、こっちいったり。もういいかと何回も梅子に聞いたら、梅子の奴こっち見もしんとまだまだーと答えよる。
    「米、なんか黄色いねんけどーー」
    自炊なんて活動の起こることない裕司んちの米は微妙に黄色く変色していた。
    「……大丈夫やろ。多分」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-05 02:23:00
  • 262:

    ◆lZf.ArgVp2

    火を通したらなんでも食える!
    やっと梅子のオッケーがでて、玉葱から開放された。梅子は人参を手際よく鍋に放り込む。
    「これ量おおない?」
    具材を残しといたところでどうせ腐らすだけやからと、買ってきたもの全部放り込んだ鍋は、水を入れる前から大物になる予感がする。
    「カレーとかシチューとかは山盛り作ったらいいねん。余ったら冷凍すればいいし。チンするくらいはゆうちゃんにもできるやろ」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-05 02:29:00
  • 263:

    ◆lZf.ArgVp2

    例えば、俺と裕司の立場が逆でも梅子がそうするってわかってても、なんだか面白くなくて。
    しょうもない感情を隠す為に、どうせジュースと酒しか入ってない冷蔵庫を開ける。
    開けたものの、すぐ閉じた。
    冷蔵庫には駄菓子屋のゼリーが一個入ってた。紫色の。
    きっとあれはレイちゃんのぶんや。居間でゴロゴロしている裕司の後ろ姿に切なくなる。ごめんな……なんか見んでいいもんばっか発見してもうて。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-05 02:38:00
  • 264:

    名無しさん

    主さーん
    出来れば更新終わる時書いてもらえたら嬉しいな

    IP強制表示中:210.136.161.148
    2008-09-05 02:39:00
  • 265:

    ◆lZf.ArgVp2

    カレーらしい匂いがゆっくり漂ってくる。
    「カレーめっっちゃ久し振りやわ!!!」
    裕司は幼稚園児のような手放しに嬉しそうな顔。
    「………あたしも久し振りやわ」
    梅子は少し寂しそう。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-05 02:41:00
  • 266:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>276さん 了解です!今回から書きますね。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-05 02:42:00
  • 267:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>277 寂しそうな理由は鈍い俺でもなんとなくわかる。
    梅子は今、母ちゃんの田舎に母ちゃんと二人で暮らしている。家のカレーって人数多くないとあんまり作らんよな。
    「お母さん……カレーあんまり好きとちゃうから」
    あれ、外れたわ…。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-05 02:47:00
  • 268:

    ◆lZf.ArgVp2

    「飯たけたわ〜〜」
    「お前んち……料理なんてせん癖にえらいハイテクなもんあるなあ」
    ピカピカの炊飯器はCMでやっているような最新式のやつやった。
    「おかんがな〜電化製品好きでたまに買ってきよんねん。使いもせん癖にあほやろ。笑」
    裕司んとこは両親共に家にはおらんけど、裕司や誠司クンと仲が悪いわけではないみたいやった。おっちゃん、おばあちゃんのどっちにも会った事あるけど、二人とも愛想がいい。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-05 02:52:00
  • 269:

    ◆lZf.ArgVp2

    「おばちゃんらしいわ。笑」
    裕司のおばあちゃんはびっくりする程若いし美人。ちょっと派手やけど。性格とかあっけらかんとしてて男っぽいし。誠司クンはおばちゃん似かな、裕司はどっちかいうとおっちゃん。
    ほぼ梅子が作ったカレーはこれぞカレーってかんじでゲリラ的に入ってる肉じゃがサイズの玉葱を除けば完璧。
    二階までもってあがるんダルいから一階の居間でちゃぶ台だしてテレビもつけた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-05 02:59:00
  • 270:

    ◆lZf.ArgVp2

    何気にテレビ、AQUOSやし!DVDプレイヤーとかあるし!
    誰も一階でテレビなんか見んのに!
    勝手知ったる他人の家と思ってたけど意外に裕司の部屋以外知らんもんやな。
    DVDは悩んだ末、話題になってたスパイもんにした。裕司はなんかホラーがいいっていうてたけど俺が阻止した。
    あほやし、ババン!ぎゃあ〜みたいなんしかわからん裕司には悪いけど。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-05 03:05:00
  • 271:

    ◆lZf.ArgVp2

    「カレーうまいなあ」
    三人ともこういうの集中して見るタイプで、カレーもそもそ食べながら画面に釘付けになってた。
    「いいにおいやな〜♪」
    誠司クンが帰ってきた。
    「せいちゃんも食べー。いっぱいあるし」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-05 03:08:00
  • 272:

    ◆lZf.ArgVp2

    「梅ちゃんが作ったんかー? レイ、お前も食うけ??」
    ………レイちゃんもおった。喧嘩してたんとちゃうんかい。俺の映画への平和な観賞と集中はこの時点で失われた。
    「誠司!!!食べに行こうって言うたやん!?」
    レイちゃんは今日も怒っている。一応仲直りのデートってかんじやったんかな。
    「別にあるんやから、食うたらいいやんけ。お前いらんかったら食わんでいいで?。せっかく梅が作ったのににゃ〜」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-05 03:14:00
  • 273:

    名無しさん

    主さん所々おばあちゃんになってるよ

    IP強制表示中:210.153.84.131
    2008-09-05 03:17:00
  • 274:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ちゃうでっみんなで作ったんやでっ」
    レイちゃんにはめっっちゃキツいのに梅子に優しい誠司クンに、梅子は空気を読んで頑張ってるけど……もう遅い。
    後ろなんて振り向かんでもレイちゃんの怒りがビシバシ伝わってくる。
    裕司も後ろを振り向かんけど、もう映画なんて見てないんやろうな。
    今すぐ誠司クンにレイちゃん連れてでてってほしい。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-09-05 03:18:00
  • 275:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>285さん すいません。やっちゃった〜て感じです。変換ミスです(´A`)
    おばあちゃん→おばちゃんです。実は漢字も所々誤字がいっぱいあるんですが流しといて下さい?もし誤字、脱字で意味わからんかったら聞いて下さいね?すいません

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-05 03:22:00
  • 276:

    ◆lZf.ArgVp2

    レイちゃんを傷付けるような事言う誠司クンにも、梅子にあたるレイちゃんにも、何もいえへん俺にも、同じく何も言わん裕司にも。
    「梅ちゃん、いい嫁さんなるわーー」
    まだ言うか………。
    誠司クンの携帯が鳴る。なんで黒電話の着信音やねん……。
    「もしもし?おー誰きてんの?どこ?……あーハイハイ。ほな今から行くわ。」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-05 03:33:00
  • 277:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ちょお!誠司どこいくん!?……うちは………」
    「あっお前いてても帰ってもどっちでもええで。梅ちゃんごっそーさん」
    ……ちょお!!!ほんまにどんだけ自由やねん。
    気まずさだけを置いて誠司クンは出て行った。怒りなんてもう消えてしまって、食卓に突っ伏すレイちゃん。
    ……ないやろ、このメンバーでこれは…。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-05 03:38:00
  • 278:

    ◆lZf.ArgVp2

    今日はここまでです
    更新分>>270-290

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-05 03:40:00
  • 279:

    名無しさん

    ありがとう

    IP強制表示中:210.153.84.35
    2008-09-05 03:48:00
  • 280:

    名無しさん

    お疲れ様!いつも楽しみにしてます!

    IP強制表示中:210.136.161.148
    2008-09-05 05:42:00
  • 281:

    名無しさん

    更新まってます?

    IP強制表示中:210.136.161.45
    2008-09-08 01:12:00
  • 282:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>292 こちらこそ読んで頂いてありがとうです(´・ω・`)
    >>293 仕事がきつくて更新ペース落ちてしまってますが少しでもできるようにします。少しでも楽しみになればうちも嬉しいです
    >>294 今から更新しますね♪

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-08 21:09:00
  • 283:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>290 映画はもはやついているだけで、風景の一部になってしまった。
    もういっそ帰ればいいのに、レイちゃんは重い空気を製造し続け、裕司は裕司で無言。

    映画のカーチェイスのブレーキ音が部屋にこだまする。
    「梅子……かえろか?」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-08 21:15:00
  • 284:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司には申し訳ないけど……俺と梅子がいない方がまだましやろ。
    「……おう」そう答えた裕司の顔は悪いなというのと助かったていうのが半々。梅子はほっとした顔をしていた。
    「隆一ちょっと待ちいや。」
    レイちゃんに呼び止められた。
    「………どしたん?」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-08 21:22:00
  • 285:

    ◆lZf.ArgVp2

    100パア面倒になる予感がした。レイちゃんは機嫌がいつの間にか治ったみたいでウキウキしてる。
    「うちなー今度、誠司らと怖場いくねん。あんたらも聞いや」
    「はっ?」
    「こ わ ば !!!心霊スポットやん。肝試しいくねんーー」
    「誠司クンの友達とかもくるんちゃうん??嫌やわ〜」

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-09-08 21:27:00
  • 286:

    ◆lZf.ArgVp2

    レイちゃんはなんか急にモジモジし始めた。………もーはよ話せって。話に置いてかれてる梅子にすぐすますからなって目で合図をした。「えーよ。別に。」って小声で返事した顔は不機嫌そう。
    そりゃそうやわな。
    「………あんな」
    ようやくレイちゃんが本題を切り出した。
    「……怖場行ったらさ……うちなんかあった振りするから、それに合わして欲しいねん」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-08 21:43:00
  • 287:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……なんかって何?」
    呆れたような声で聞いたんは裕司。
    「例えば……霊に取り付かれたとか、具合が悪くなったとか、なんか落ちて来て怪我したとか…………」
    「………なんで?」
    裕司以上に呆れた声をだした俺。レイちゃんの答えなんて聞くまでもなく、もう話が見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-08 21:47:00
  • 288:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………だってそうしたら誠司がうちの事ほんまに好きなんかわかるやん………」
    しょうむな…………やっぱり面倒臭い話やった。秀才がたてたとは思えんあほくさい計画に俺はため息をついた。もちろん断るつもり。
    「………だっさ」
    ……うんうん。その通り。そんな人の気持ち変に探るような事……………………………………。
    「なんなん!!!あんたっ」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-08 21:53:00
  • 289:

    ◆lZf.ArgVp2

    逆上したレイちゃんが梅子に掴みかかる。
    「……だってそうやん。」
    俺の気持ちを代弁したのは梅子やった。裕司も俺も唖然としてる。まさか梅子がそんなこというなんて………。
    バチンっと聞いただけでイタタな音が響く。梅子は頬に手を当ててレイちゃんを真直ぐに見ていた。
    「レイちゃん、もうやめとき。………梅子、言い過ぎやわ」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-08 22:00:00
  • 290:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子の方を見ようともしない裕司の態度は冷たいどころの話じゃない。
    「裕司……痛いっ」
    「あっ……ごめん」
    梅子にむかって振り上げられた手を止めるべく握った手を裕司が離す。梅子には軽蔑の色すら匂わせている癖に、レイちゃんには…………優しい。
    やっぱ裕司は誠司クンの弟やって感じる瞬間やった。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-08 22:11:00
  • 291:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ええで、俺いくで」
    裕司はレイちゃんをなだめるように優しく笑う。
    その顔をみた時、俺は傷付いたような気持ちになった。冷蔵庫の中の紫色のゼリーの事を思い出す。
    裕司……かなわへんってわかってるのに。そんなんしたって惨めなだけやのに。……傷つくような方へなんでむかっていくねん。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-08 22:17:00
  • 292:

    ◆lZf.ArgVp2

    「りゅうちゃんはいかへんよな??」
    「え………いや……わからん………………塾…塾もあるし」
    俺は混乱していて、どもりながら辛うじて返事をした。梅子も今日なんかおかしい。今言うタイミングちゃうやろ。
    「土曜の夜やで」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-08 22:21:00
  • 293:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……あ…そうなん?」
    なんで断りたいような微妙な時にだけ、うまい事都合がつくんやろう。次の土曜日は丁度夏期講習が無事終わるわけで。
    とにかく適当に返事してその場は引き揚げた。裕司ははやく帰れっていうオーラをだしまくっとったし、梅子はずっと下を向いていた。
    うっすらと赤い手形が残る頬を見ると、俺は俺で冷静さを失いそうになった。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-08 22:27:00
  • 294:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>296-307

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-08 22:30:00
  • 295:

    名無しさん

    お疲れさまです?
    仕事たいへんやのに更新ありがとうございます?

    IP強制表示中:210.136.161.54
    2008-09-09 01:11:00
  • 296:

    名無しさん

    主さん大変なんはわかるんやけど続きが早くみたい
    気持ちです

    IP強制表示中:210.153.84.43
    2008-09-09 02:46:00
  • 297:

    名無しさん

    書いて下さい??

    IP強制表示中:210.153.84.134
    2008-09-15 04:30:00
  • 298:

    名無しさん

    今初めて読んだけどめっちゃおもろい?

    IP強制表示中:219.125.145.14
    2008-09-15 07:45:00
  • 299:

    名無しさん

    お疲れさま!
    更新ありがとう

    IP強制表示中:210.136.161.53
    2008-09-15 08:34:00
  • 300:

    ◆lZf.ArgVp2

    たくさんコメントどうもです!
    遅くなってごめんなさい?明日休みなんで今日仕事が終わったら更新しますね

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-15 11:44:00
  • 301:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>304 俯いて歩く梅子とその隣で前だけ見て歩く俺。チャリを2ケツして帰る際のやり取りすらできなくて、なんとなく歩きだしたらこうなった。
    道を薄暗く半端に照らす電灯はボロくてたまにジジジと音を立てる。
    目に見えない、お互いがお互いを遠ざける壁のようなものが確かにはっきりとあるのがわかる。
    「…………なあ、りゅうちゃん。」
    梅子の声は弱々しく、たまに一瞬消えたりする電灯の光の下で揺れた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-16 01:03:00
  • 302:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺はその声に答えんかった。無視したわけじゃなくて、声の出し方までわけわからんくなってて、どう返そうか悩んでる間に何秒かが過ぎ何分かが過ぎて、結果的に答えなかった事になってもうた。
    「………りゅうちゃんてばっ!!」
    梅子が足を止めたから俺はやっとこさで、「おん?」て返事する。
    電灯がぱって消えてまたブォンと点く。また消える。
    「………………なんであの子と仲良くすんの??」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-16 01:10:00
  • 303:

    ◆lZf.ArgVp2

    仲良いっていうたって………前の事を考えたら仲良くなったとは思う。けどなんか別に気持ちが通じるとこがあるわけじゃなし、俺にとってレイちゃんは知り合いである前に“誠司クンの彼女”。
    もっというてまうと“親友の兄貴の彼女。”

    そして“親友の片思いの相手。”
    「…………なんでて………別に……塾とか一緒やし」

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-16 01:15:00
  • 304:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺の言葉はほんまに言葉通りの意味しかなかった。
    もし誠司クンの彼女じゃなかったら、裕司の思い人じゃなかったら、塾が一緒じゃなかったら、出会うこともなかったやろうし、出会ってても関わる事もなかったと思う。
    ただ人との出会い方にあんまり意味はないと思う。
    意味は後からついてくるんやから。
    ………ジジイの受売りやけど。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-16 01:20:00
  • 305:

    ◆lZf.ArgVp2

    少なくても、今俺はレイちゃんが嫌いではなかった。
    「……なんやねんな、梅子お前さっきから……。」
    腹が立ってしょうがない。奇妙な三角関係を作った原因であろう誠司クンの態度に。裕司を利用しているようにも見えるレイちゃんの弱さに。それを受け入れる裕司にも、根源である兄貴には向けられずに、なぜか俺に向かう嫉妬に。意味わからん梅子らしくない言動に。
    きつく言い過ぎたと思ったけど梅子は黙ってしまったし、俺も言う事はなかった。
    重苦しい空気を背負ったまま、「じゃあ」だけ言って別れた。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-16 01:28:00
  • 306:

    ◆lZf.ArgVp2



    「もうあかんやん。それは○○の分なんよ。せっかくきちんとわけたのに」

    ふくれっつらで俺にそう言う見た事ない女の子。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-09-16 01:31:00
  • 307:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あっお父さん帰ってきたわ。………おかえりなさい、あなた。」
    俺の目の前に並ぶ葉っぱの上に盛られたどんぐり。
    「ほら……あかんよ。手を洗ってからですよ。あなたお仕事はどうやったの?」
    石段の食卓。
    ああ、そうか。これはママゴトや。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-16 01:36:00
  • 308:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いただきまーす」

    そう言って手を合わすホッペがふくふくとした女の子。葉っぱの食器に小石やらどんぐりやらを楽しげに盛り付けて、俺に食べさせる不利をする。
    俺はというと楽しくもないし、つまんなくもないけど、ただ楽しそうに女の子がしているのを見ているのが嬉しかった。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-16 01:48:00
  • 309:

    ◆lZf.ArgVp2

    そうか……これは誰かの夢や。

    誰にでもあるような普段は思い出せない体の深いところに沈み込んだ記憶の断片。
    宝箱の奥に大切に仕舞い込んで開けるのも躊躇う、懐かしすぎる幼い頃の日々。
    そんな誰かの夢の中にいるのだと直感で感じた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-16 01:52:00
  • 310:

    ◆lZf.ArgVp2

    ぷにぷにしたツヤツヤの頬が可愛らしかった女の子は少しずつ大人になっていった。

    耳を塞ぎたくなる悲鳴と、絶望とはこんなふうな表情なのかいう顔をした女を最後に俺を包むのは無になった。

    ザリ……カリカリ…ガリ………ザリザリ………………………………………………………………絶えず硬いものを引掻くような音が聞こえ出す。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-16 01:59:00
  • 311:

    ◆lZf.ArgVp2

    ザリ……ザリ………ザリ…………………ザリザリ……………………………………………………ザリ

    『ずっとずっとずっとずっとずっとずっと……………………ずうーっと』
    嗚咽混じりの女の声。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-16 02:02:00
  • 312:

    ◆lZf.ArgVp2



    『ずうーっと…………………待ってた』

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-16 02:03:00
  • 313:

    ◆lZf.ArgVp2

    目が覚めると俺は泣いてた。起きてもしばらく涙が止まらんかった。悲しくないのに流れ続けた。
    俺はチカチカ光る携帯を薄暗い中、開いた。
    ボロボロ涙を流しながら早く起きすぎた事にダルさを感じてて、ため息をつきながら着信履歴を見る。

    不在着信、梅子…………………。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-16 02:08:00
  • 314:

    ◆lZf.ArgVp2

    「梅子……………お前………………………………。」
    喉まででかかった言葉を飲み込んでも、脳内にはくっきり言葉の続きでいっぱいやった。

    梅子………お前、何者やねん?
    俺は涙と鼻水でグチョグチョな情けない顔のままで頭を抱えた。ぼんやりと明るくなってきた空気の中で携帯の液晶だけが光っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-16 02:12:00
  • 315:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>315-328
    超絶眠いので明日続き書きますね?コメントのお返事も明日しますので??明日はたくさん更新するようにします。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 02:16:00
  • 316:

    名無しさん

    主さん久しぶりです?
    更新ありがとうございます?

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2008-09-16 02:38:00
  • 317:

    名無しさん

    めーっちゃ楽しみやー

    IP強制表示中:210.153.84.133
    2008-09-16 04:49:00
  • 318:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>309さん→こちらこそ読んでくれて嬉しいです?>>310さん→すいません。最近仕事始めたのでまだ慣れなくて?できる時に多めに更新しますね>>311さん→今から更新しますね?>>312さん→これからも読んで下されば嬉しいです?>>313さん→いつもありがとうございます。今から更新します?

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 21:02:00
  • 319:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>330 331さん コメント返そうとしたら禁止ワードになってしまって?すいません

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-16 21:20:00
  • 320:

    ◆lZf.ArgVp2

    ジリリリと昼休憩を伝えるベルが鳴る。
    それに気付かんような振りをして、講師は説明をやめず、十分位延長して教室を出ていった。
    それと同時に教室はガヤガヤし始め、次々に席を立った。
    「隆一〜〜」
    ドアの外でレイちゃんが手を振っている。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-16 21:42:00
  • 321:

    ◆lZf.ArgVp2

    「山崎ほんま授業長いなあーーうち中学ん時いつも切れそうやったもん。しかも教え方下手くそやし」
    コンビニでミルクティーを手に取りながらレイちゃんが毒づく。
    教え方が上手いとか下手とか俺にはようわからんけど、講師の山崎の妙にきちきちとした板書は確かに分かりにくい。
    「………ごめんなー、昨日。けどあの女ムカつくわ。叩いたんは悪いと思うけど。裕司にも言われたし」
    俺は黙ってコンビニ弁当を口に運ぶ。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-16 21:50:00
  • 322:

    ◆lZf.ArgVp2

    レイちゃんの肩を持つわけちゃうけど、俺も梅子はどうかと思う。
    レイちゃんがどんなしょうもない事言ったりしても、梅子とレイちゃんはあの時初めて会ったわけじゃないけど、ほぼ初対面なわけで。
    そんな年下の奴からあんな事言われたら、そりゃムカつくよな。
    人の事言えへんやろって話やけど。
    「……隆一は来てくれんの?土曜日」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-16 21:56:00
  • 323:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……ん〜〜」
    俺の顔色を伺うような上目使いで聞いてくるレイちゃんに曖昧な返事を返す。
    どっちでもいいねんけど……良い企画ではないよな。
    レイちゃんの透明の鞄からテキストに紛れて何か雑誌が見えた。弁当を黙々と食べながらその雑誌をクローズアップする。
    雑誌はパスタの写真が表紙で、簡単、シーン別特別レシピと大きく書いてあった。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 22:03:00
  • 324:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いいでー行っても」
    雑誌の表紙を眺めてる間にいつの間にか口が喋った。
    レイちゃんの言葉や態度にできん綺麗だったり優しかったり可愛かったりする気持ちが鞄の中に隠されてた気がして。
    「ほんまに〜よかった」
    レイちゃんはいつもの下手な笑い方で笑った。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 22:12:00
  • 325:

    ◆lZf.ArgVp2

    それからレイちゃんはよく喋った。なんか吹っ切れた様子なんは安心したからやろう。
    いくらわがままなレイちゃんでも、自分に気があると気付いている裕司だけに手伝わすのは心苦しかったんやと思う。
    俺が入った所でやってる事は一緒なんやけど、いくらかは罪悪感が薄れるんかな。
    レイちゃんの子供騙しな計画で誠司クンとの何が良くなる気もせんけど、レイちゃんの中の健気な部分に誠司クンが気付いてくれたらいいのになって思う。
    裕司には悪いけど、女の子が人知れず料理本なんか買ってんのみたらそう思ってまうやろ。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-16 22:20:00
  • 326:

    ◆lZf.ArgVp2

    その日から俺は毎日あの夢を見た。
    あの夢といっても別に怖くない。
    毎日ぷにぷにホッペの女の子とママゴトをしたり、川に行ったり、野山を駆けたり。
    決まって女の子は大人になっていって、その子が泣きながら叫んだ後、目を覚ました。
    朝早くに泣きながら目を覚ます事にも慣れて来た俺は普通に生活をしていたけど、裕司の家にも行かなかったし、梅子にも会わなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 22:32:00
  • 327:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子からは毎日朝方に着信があったけど、かけ直す勇気は俺にはなかった。
    夢にでてくる女の子と子供の頃の梅子が被る。
    普通の生活を送りつつも、俺は精神的にかなりやられてきている。
    怖いとか気味悪いとかそういうマイナスな気持ちではない。
    違う世界に行ってしまいそうな気がした。夢と現実の境界線は日に日にあやふやになっていく。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-16 22:41:00
  • 328:

    ◆lZf.ArgVp2

    家でも塾でもぼーっとしている事が増えた。
    「お前、今の質問答えてみろ」
    「…………わかりません」
    「ちゃんと集中するように、最近たるんでるで」
    授業中注意をうけてボリボリと頭を掻く。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-16 22:46:00
  • 329:

    ◆lZf.ArgVp2

    違和感を感じた。
    今いるのが夢の女の子と走り抜けた金色の原っぱでなく、周りを見渡してもただの無機質な四角い教室でしかないのが不思議な気分。
    不思議?現実はこっちで不思議なんは夢やろ?
    なんか有名な人の詩で今の自分は蝶々の見ている夢かもしれんみたいなんなかったっけ?そんな感じ?
    ……………いや、違う。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-16 22:54:00
  • 330:

    ◆lZf.ArgVp2

    やばいなって思う。


    けど、どうしたらいいかわからん。
    どうにかしないとあかんもんなんかもわからん。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-16 22:58:00
  • 331:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なんか最近やつれてない?」
    塾から帰る電車のなかでレイちゃんがまたもやまつ毛をヒジキにしながら聞いてきた。
    レイちゃんは今日は珍しく金曜なのに塾に来ていて、今日は誠司クンと会うらしい。
    「んー……あんまり夜寝れんくて」
    「あはは!そんなデリケートなツラしてへんやん笑」

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-09-17 01:23:00
  • 332:

    ◆lZf.ArgVp2

    ほっといてくれと思いつつ、化粧を続けてるレイちゃんの横顔をじっと見つめる。
    「……なによ?見られたらやりにくいやん」
    迷惑そうにプイと横を向くレイちゃん。
    ………違う、あの子じゃない。
    夢の中の女の子は小さい時は梅子と被るけど、大人になった姿は梅子よりレイちゃんのが近い。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-17 01:29:00
  • 333:

    ◆lZf.ArgVp2

    色がめちゃくちゃ白くてキツい顔をしている。
    「気持ち悪いなー、何笑ってんの」

    ……違うって俺は何と比べてそう思ってんやろ。夢の中では鮮明な表情や姿は、起きてる時はぼんやりとしててはっきりせんのに。
    ガタンガタンとレイちゃんが化粧している間、電車の揺れる音だけが俺を現実に引き戻していた。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-17 01:35:00
  • 334:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ずうーっと待ってた」
    繰り返し夢の中で囁かれ続ける声。


    俺、もうすぐお前と会える気がするわ。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-17 01:37:00
  • 335:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あんた……まじに顔色やばいで、大丈夫?」
    化粧を終えたレイちゃんが俺の顔をのぞき込む。
    「大丈夫〜〜多分な」
    最初の方に感じてた体のダルさとかはもう気にならんくなってた。慣れたとかより一線越えた感じ。
    何より俺は楽しくてしゃあない。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-17 01:44:00
  • 336:

    ◆lZf.ArgVp2

    今日は夢で何して遊ぶんやろ。
    「…………隆一?」
    レイちゃんの声もすぐ側で聞こえてる筈なのにどこか遠くから聞こえる。
    きゃはははと夢の中の女の子が笑う空耳が聞こえた。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-09-17 01:49:00
  • 337:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>334-351
    次は木曜日の夜更新しますね

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-17 01:54:00
  • 338:

    名無しさん

    お疲れ様です?!

    IP強制表示中:210.136.161.143
    2008-09-17 03:04:00
  • 339:

    名無しさん

    オモロー?
    更新お疲れ様?

    IP強制表示中:210.136.161.51
    2008-09-17 10:04:00
  • 340:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>353さん ありがとうございます♪♪仕事の疲れも和らぎます(ノ_<。)
    >>354さん ありがとうございます♪ 今日は若干体力余ってるので少し更新しますね

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-18 00:35:00
  • 341:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>351 これは誰の記憶なんやろう。会った事もないのに、懐かしい。全てが。
    風景も音も空気も、女の子の笑い声も。
    懐かし過ぎて涙がでる。かき氷を食べた後、こめかみがキインと痛むみたいに、胸が小刻みに震える。
    今はもう感じなくなった感覚。幼い時はもっと日常のたくさんの事にこんなふうに感じてた気がする。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-18 00:41:00
  • 342:

    ◆lZf.ArgVp2

    例えば、大切に取って置いた蝉の抜け殻がバキバキになっていたのを見た時に。縁日の金魚が次の日には死んでしまった時に。
    違う小学校に進んだツレと当たり前のように遊ばなくなった時に。
    昔は辛くて悲しくてどうしようもなかった事をいつしか普通と割り切っているのを切なく感じた時に。

    楽しい時間は必ず過ぎると、だから美しいんだと気付いてしまった時に。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-18 00:46:00
  • 343:

    ◆lZf.ArgVp2

    「隆一っっ!?どしたん?」
    慌てふためくレイちゃんの顔で俺は正気に戻った。
    「………目に……ゴミ!!痛ーー!!」
    ポロッと零れた涙にベタベタな弁解をしてみたものの、レイちゃんは心配そうな顔のまま俺を見つめてた。
    帰りたいなと思った。ここじゃないどっかへ。夢の中の金色の時間へ俺は帰りたい。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-18 00:56:00
  • 344:

    ◆lZf.ArgVp2

    レイちゃんを裕司の家の前まで送って、チャリをフルで走らせる。
    どんなにはやく走っても、帰る場所はいつもの家。いつもの部屋。いつもの家族の元。
    不安で堪らんかった。
    大切な人達がいるのに、今の俺は透明になってしまったようで、いつもの居場所が落ち着かん。
    混乱する。俺の価値感も存在もグラグラになる。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-18 01:02:00
  • 345:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺はその日夢の中の女を抱いた。
    もちろん夢ん中で。


    寝覚めは最悪で健康優良児の俺は何年かぶりに吐いた。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-09-18 01:06:00
  • 346:

    ◆lZf.ArgVp2

    少ないですが
    更新分>>356-360

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-18 01:08:00
  • 347:

    名無しさん

    更新されてて嬉しい?
    お仕事でつかれてるのに
    ありがとうございます?

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2008-09-18 01:47:00
  • 348:

    名無しさん

    おっもろーすぎる??

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2008-09-18 12:38:00
  • 349:

    名無しさん

    次はいつ更新ですか?

    IP強制表示中:210.153.84.36
    2008-09-18 16:03:00
  • 350:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>362さん こちらこそです。逆に息抜きになります?
    >>363さんありがとうございますm(_ _)m
    >>364さん 今からしますよ☆

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-19 00:53:00
  • 351:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>360 「はい。ペン置いてー!」

    ……終わった。俺の夏期講習は、勉強の仕方がわかっただけでも実り多いものとして幕切れを迎えた。
    締めくくりのテストはもっとボロボロだと思ってただけに、好感色。今までで一番空欄がなかったっていうだけやけど、休日のコンディションを考慮すれば上出来。自分に甘い俺はテストの回答についてあれこれ語り合う声で賑わう教室の中で、余裕の顔で伸びをする。
    同じような顔つきであくびをしてる奴は、テスト開始直後速攻で後ろから見てても諦めた素振りやった奴や。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-19 01:04:00
  • 352:

    ◆lZf.ArgVp2

    けして安い金額ではない受講料を、よかれと思って払っただろう親が可哀相なソイツを目の端で眺めつつ、ソイツからもらったあくびを一つ。
    オフにしていた携帯の電源をつけると、レイちゃんからのメールがきた。
    レイちゃんのキャラからは考えにくい、かわいい絵文字がふんだんに入ったメールは文章もかわいい。
    こういうギャップによく惹かれると、テレビや雑誌で使い古しもいいとこに何十年も言われ続けてるけど、女の子ってこんなもんちゃうんかな。
    逆にイメージ通りっていう………。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-19 01:13:00
  • 353:

    ◆lZf.ArgVp2

    内容はもちろん今日の事で、夜12時くらいには裕司の家に集合とのこと。
    了解〜とメールを返し、俺は家路へと向かう。
    今日のテスト結果はご丁寧にも家に郵送されるらしい。親切にも程がある。
    電車に揺られている間、まぶたがくっついたり離れたりを繰り返した。
    電車の窓に光の反射の加減でたまに写る俺の顔は、たしかにいくらかやつれたかもしれない。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-19 01:19:00
  • 354:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺はアラームを夜10時に合わすと家に着くなり爆睡した。


    「りゅうちゃん!」

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-19 01:22:00
  • 355:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ずっとアラーム鳴ってるで」
    「………え………あ?」
    梅子に起こされた時には10時半を過ぎていた。
    「あたしも行くしな。」
    梅子は虫除けスプレーまで持って来て行く気満々やった。裕司とレイちゃんのダルそうな顔が浮かんだけど、別にどうでもいい。それに何言っても行くって言うんやらくるんやろう。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-19 01:29:00
  • 356:

    ◆lZf.ArgVp2

    そういうちょっと頑固な一面が梅子にはある。
    まあ誠司クンも一緒やし、梅子が行ったってレイちゃんもゴネたりせんやろう。
    「………いいけど、俺にもシューってせーよ」
    梅子はコクリと頷いただけで笑わんかった。
    俺的にはここ笑うとこやってんけど。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-19 01:34:00
  • 357:

    ◆lZf.ArgVp2

    無言で俺の足に虫除けをスプレーする梅子。
    「あははっ冷たっ」

    梅子の手が震えてる事に気付く。その手首が前よりずっと細くなっている事にも。
    「………お前……大丈夫?なんか」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-19 01:38:00
  • 358:

    ◆lZf.ArgVp2

    「お前がなっっっ!」
    梅子の声と手刀で俺の言葉は遮られた。

    「りゅうちゃん約束して?ずうーっと………」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-19 01:41:00
  • 359:

    ◆lZf.ArgVp2



    あっまた被る。あの女の子と…………。

    「……ずうーっと」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-19 01:43:00
  • 360:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子の声ともう一人の声が重なったような気がする。これは俺の錯覚?妄想?……それとも。

    「ずうーっと……一緒やからな」

    指切り!と小指をぴんと立てた梅子の指に小指を絡める。ガキの頃から梅子がこれをしたがる時は梅子がなんか不安な時やねんな。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-19 01:52:00
  • 361:

    ◆lZf.ArgVp2

    条件反射で2回くらい絡めた小指を振って離すと、やっとこさで梅子が笑った。

    「お前なんやねん、その頭」
    しばらく見ん内に、裕司の髪は誠司クンの様にキンキンになっていた。メッシュまで入れよってからに。虎みたいな時の倖田來未みたいな頭で裕司は嬉しそうに笑う。
    「バリかっこいいやろーー。」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-09-19 03:36:00
  • 362:

    ◆lZf.ArgVp2

    「虎みたいやな」
    「虎!いいやんけ!笑」
    おれのコメントに何故かご満悦で、長めの前髪を一筋くいっと引っ張る。やたら黒メッシュがキレイに入っている所に、無駄な器用さが発揮されていた。
    「昨日染めてんかーちょい色抜き過ぎたわ…………。」
    俺の後ろの梅子に気付くと裕司は露骨に嫌な顔をした。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-09-19 03:42:00
  • 363:

    ◆lZf.ArgVp2

    12時半過ぎやのに言い出しっぺのレイちゃんは、まだ来ていない。誠司クンもいいひんから一緒に帰って来るんやろう。
    「………ま、いいけど」
    機嫌悪げに、また髪をツンツン引っ張っている。梅子はじっと、わざとこっちを見ない裕司を見ている。
    一階が騒がしくなり、複数の足音が上にあがってきた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-19 03:48:00
  • 364:

    ◆lZf.ArgVp2

    「え〜〜これが誠司の弟ナン?うわあ〜めぇっちゃ似てる〜〜」
    レイちゃんに負けないくらいケバケバしい女の二人組が、ノックもなしに入って来て、神経を逆撫でする鼻詰まったみたいな声できゃぴきゃぴする。
    っていうかこの人らからしたらレイちゃんが地味に見える。
    ……こんな派手な人地元にいたんや。
    「まい、ゆい、あれ?……ああこっちか」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-19 03:53:00
  • 365:

    ◆lZf.ArgVp2

    たった二人でカーニバルみたいな女達の登場で、ぽかんと俺らが馬鹿ヅラ晒していると、誠司クンがやってきた。
    「誠司ぃ〜弟サンめぇっちゃ似てるやん」
    鼻声1が誠司クンに不自然なまでのボディタッチをしながら、ますます変にとおる鼻声レベルを上げた。
    「そおか?俺のが男前やん。素で。笑」
    「ウケる〜〜」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-19 03:58:00
  • 366:

    ◆lZf.ArgVp2

    鼻声2がまたもや不自然過ぎて自然にすらみえてきた外人並のリアクションで誠司クンにベタベタする。
    「ウケるんですけど!」
    負けじと鼻声1が2と同じ事を繰り返した。
    ドラマや漫画にでてくる絵に書いたような馬鹿女………ほんまにいるんや。
    「誠司!もうそろそろ車だすって」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-19 04:03:00
  • 367:

    ◆lZf.ArgVp2

    今日は張り切っているのか、いつもより気合いの入った濃いメークなのに、レイちゃんが清楚にすら見えた。
    「…ああ、お前先おりとけや」
    こっちをい殺すような目でレイちゃんが見渡してきた。梅子を見つけて、なんで?て顔をしたけど、もはや梅子程度の事どうでもいいらしい。無言ですぐにその場を去った。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-19 04:12:00
  • 368:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>366-382
    思ったより更新出来なかったんで明日もまた更新します?

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-19 04:14:00
  • 369:

    名無しさん

    更新ありがとうございます
    明日も楽しみにしてます?

    IP強制表示中:210.153.84.133
    2008-09-19 04:33:00
  • 370:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>384さん ありがとうございますm(_ _)m
    涼しくなってきましたね、焦ります?

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-20 02:08:00
  • 371:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>382 「俺もはよ、免許とりたいわ〜、太一いいよなー、これ家の車やろ〜」
    女の子に挟まれてなんしかご機嫌な誠司クン。デカい車とはいえ8人も乗ったらぎゅうぎゅうやった。
    運転席に太一と呼ばれるイカついツイストのドレッド。隣りはなぜかレイちゃん。その後ろに誠司クンと鼻声コンビ、その次に俺と裕司と梅子。
    鼻声コンビはお菓子を食べながら遠足に行くみたいにはしゃいでいる。俺らが混ざりようのない内輪話にあーでもないこーでもないと花を咲かせとった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-09-20 02:17:00
  • 372:

    ◆lZf.ArgVp2

    時折口を挟む誠司クンの言動に過剰に反応する二人に、誠司クンは今まで見た事ないくらい楽しそう。
    ばか殿って言葉を捧げたい。
    どうやらやかましい女らは誠司クンの同級生みたいやった。
    後部座席の俺らはみんな無言。俺を真ん中に挟んだ裕司と梅子は、それぞれ真っ暗でさほど景色なんか見えない窓の外を見とる。
    レイちゃんに到っては、いるのかいいひんのかわからんくらい静かにしとった。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2008-09-20 02:24:00
  • 373:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺らが向かってんのはこの辺では有名な心霊スポットらしい。
    噂には俺も聞いたことあるけど、町外れで遠いし行った事はない。
    ごうんごうんと道が悪くて車が揺れる。
    「この辺やと思うねんけどなあ〜〜、あっあれちゃう?」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-20 02:28:00
  • 374:

    ◆lZf.ArgVp2

    外見だけじゃなく声もイカついドレッドの方が幽霊なんかよりよっぽど怖い。
    適当なとこに車を止めて外にでた。うっそうとした雰囲気の建物がぼんやりと白く見える。町外れやからか風も随分涼しくて、色んな意味で風通しの悪かった車内に比べたら心地いい。
    「なんか鉄線はったるし、これより先は車入れへんな〜置いてこか」
    ツイストは車に残ってたレイちゃんがヒールなのを気遣って、手をひいて降ろしてあげてた。
    意外に気が利くツイスト、喋り方も聞き慣れてきたら優しい事に気付く。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-20 02:36:00
  • 375:

    ◆lZf.ArgVp2

    誠司クンは真っ先に車から降りて鼻声コンビとじゃれていた。
    しょんぼりっていうかじっとりとしたレイちゃんはツイストと話す度に、誠司クンの方をチラチラ見てたけど、誠司クンはレイちゃんを見ようともしない。
    なんかもう痛々し過ぎて見てられん。
    「おーあいてるやん。ラッキー」
    建物の近くまでくると、有刺鉄線で柵がしてあって入れないようになってるけど、長年肝試しスポットとして慣れ親しまれているらしく、何メートルか毎にペンチかなんかで穴が開けてあった。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-20 02:42:00
  • 376:

    ◆lZf.ArgVp2

    来た奴はバラバラの方向から来て、それぞれ思い思いに作られてきた抜け穴だらけの柵は、もはや柵の意味はない。
    みんなで楽々通り抜けて終了。
    懐中電灯で夏おきまりに下から顔を照らして変顔する誠司クン。…………いくつやねんな。
    「こわいわ〜ぁ」
    恐怖とは無縁のところで生きてそうな癖に、怖がり倒す馬鹿女二人組を見てるだけで疲れる。お前らのが怖いし。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-20 02:49:00
  • 377:

    ◆lZf.ArgVp2

    梅子は俺のTシャツの裾をずっと掴んでいた。

    「きゃあ 〜〜」
    鼻声1、2が叫ぶ。ようやく建物の正面入口に立つ。暗闇に浮かび上がる建物の威圧感に8人ともゴクリと唾を飲んだのがわかった。
    「さすがにやっぱリアルに怖いな」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-20 02:55:00
  • 378:

    ◆lZf.ArgVp2

    「そりゃ病院はなぁ」
    ツイストと誠司クンは、けど楽しいって感じで笑ってた。

    「…………ここって」
    俺はもう一度生唾を飲みこんで目をこらす。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-09-20 02:58:00
  • 379:

    ◆lZf.ArgVp2



    そこは、おれの知ってる場所やった。
    夢で見た、あの病院。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-09-20 02:59:00
  • 380:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>386-394

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-20 03:00:00
  • 381:

    名無しさん

    今日も更新ありがとうございます?

    めっちゃ怖いですね?
    ドキドキします?

    IP強制表示中:210.153.84.43
    2008-09-20 05:46:00
  • 382:

    名無しさん

    更新ありがとう!!!
    次回も楽しみに待ってます☆★

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2008-09-20 19:59:00
  • 383:

    名無しさん

    あ〜怖い??楽しみィィ?

    IP強制表示中:210.153.84.138
    2008-09-21 22:04:00
  • 384:

    名無しさん

    あ〜怖い??楽しみィィ?

    IP強制表示中:210.153.84.138
    2008-09-21 22:05:00
  • 385:

    名無しさん

    楽しみ

    IP強制表示中:210.136.161.143
    2008-09-22 00:13:00
  • 386:

    名無しさん

    楽しみ

    IP強制表示中:210.136.161.143
    2008-09-22 00:15:00
  • 387:

    名無しさん

    くそおもろい
    鼻声1と2クソワロタ

    IP強制表示中:210.153.84.130
    2008-09-22 04:40:00
  • 388:

    名無しさん

    めーっちゃ気になる(・ε・)キニナル!!

    IP強制表示中:210.153.84.135
    2008-09-22 22:57:00
  • 389:

    ◆lZf.ArgVp2

    全然書けなくてごめんなさい
    明日更新しますね
    コメントくれた方ありがとうです

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-09-25 16:04:00
  • 390:

    名無しさん

    主さん仕事頑張ってるんですね?
    明日まってます?

    IP強制表示中:210.153.84.135
    2008-09-25 18:28:00
  • 391:

    ◆lZf.ArgVp2

    いつもあったかいコメント嬉しいです
    今から更新しますね

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-09-26 18:05:00
  • 392:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>394 夢で見た時より、古ぼけて荒れて変わり果ててはいる。
    けどここに違いない。
    俺はワクワクしていた。ホラー映画でそのドア開けたらあかんー!とか振り返るなよ!っていうシーンみたいな。絶対なんかあるやんっていう空気。
    俺は今まさにそういうところに立ってる。
    好奇心は猫を殺す、そのことわざが浮かんだ。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-26 18:16:00
  • 393:

    ◆lZf.ArgVp2

    防衛本能より知りたいっていう欲求の方が勝る。肌がビリビリするのを感じてた。武者震いっていうやつかな。
    ここに最近の俺を悩ませ続けた原因がある筈や。
    「俺、特攻隊長!」
    誠司クンが一番のりで突入。後に鼻声達とツイスト、オレらとレイちゃんが続く。
    興奮とは裏腹にもう一人の冷静な俺が俺を見つめてた。ゲームのような感覚。例えば俺が死んでも、ソイツはなんの躊躇もなく再びコンテニューしてゲームを再開するんとちゃうかな。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-09-26 18:24:00
  • 394:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺らは一つのパーティー。俺のポジションはなんやろうな?
    誠司クンは勇者でもなんでも、まあ赤レンジャーみたいな感じかな。黒もいいかも。
    ツイストは青かな。緑もいけそう。ファンタジー風に言うなら騎士とかモンクかな、やっぱ。
    鼻声コンビは踊り子とか、大して役に立たんお色気担当。女の子やからピンクとかでええやろ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-09-26 18:29:00
  • 395:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司は………色でいうなら黄色か黒かな。誠司クンとやっぱりイメージが被るとこもある。役でいうなら、忍者とか盗賊とか?ようわからん。
    梅子は絶対白魔導師やな。色も白。

    そんな妄想を展開している間に、俺はダンジョン『廃病院』に足を踏み入れてた。
    懐中電灯の光がますます闇を強める。真っ黒の弾力がある大きな何かに、身を埋めていく。………そんな感覚。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-09-26 18:35:00
  • 396:

    ◆lZf.ArgVp2

    埃の匂い。古いものの匂い。死んだ時間の匂い。
    そんなもん達に支配されてる空間。
    廃病院言うても、血がついた包帯だとか、割れた注射器とか、死体が横たわってそうなベッドとか………そんな恐怖アイテムはなんもなかった。
    埃や蜘蛛の巣がすごい事以外、がらんとしてて綺麗なもんや。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-09-26 18:41:00
  • 397:

    ◆lZf.ArgVp2

    「思ったより全然普通やなー」
    期待外れというように誠司クンは懐中電灯を振り回しながら言う。
    「ええ〜っ超こわいってえぇっ」
    暗闇でも発光したように見える鮮やか過ぎる原色の服と明るい髪は、なんとも廃墟には不似合い。怖い怖いと言いながら誠司クンにベッタリの二人組は楽しそう。
    どんなけ怖い雰囲気でもコイツらと誠司クンがいれば、台無しになりそう。この3人組からは若者のリアルっていうか現実の匂がし過ぎる。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2008-09-26 18:49:00
  • 398:

    名無しさん

    更新ありがとう(*^3^)/〜☆毎回楽しみにしてます!!
    主さんの作品マジデ本にしてほしい

    IP強制表示中:210.153.84.43
    2008-09-26 21:58:00
  • 399:

    名無しさん

    主さん更新ありがとうございます?

    IP強制表示中:210.136.161.148
    2008-09-27 00:43:00
  • 400:

    名無しさん

    気になる

    IP強制表示中:219.108.157.59
    2008-09-27 17:50:00
  • 401:

    名無しさん

    頑張って?

    IP強制表示中:210.136.161.151
    2008-09-29 13:17:00
  • 402:

    名無しさん

    更新待ってます?

    IP強制表示中:210.153.84.133
    2008-10-01 03:03:00
  • 403:

    名無しさん

    あげあげえぶりなぃっ

    IP強制表示中:210.153.84.40
    2008-10-03 21:59:00
  • 404:

    ◆lZf.ArgVp2

    皆さん 温かいコメントどうもです(´・ω・`)
    なかなか書けなくてごめんなさい
    明日休みなので今日明日とで更新しますね。書きたい話いっぱいあるのに時間が(ノ_<。)
    コメント返せてませんが、先にとりあえず書かせて頂きます。感想本当に嬉しいです。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-10-03 22:41:00
  • 405:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>412 誠司クンらが期待していたエンターテイメント性に溢れる恐怖は遊園地のお化け屋敷みたいなとこしかないやろう。
    だってベット一つない病室はただの部屋で、誰も生活していないここはただの四面壁で囲まれた箱でしかない。
    まだ誰が住んでんのかすらわからんようなボロアパートや、狂暴なホームレスがいるって噂の橋の下の方がよっぽどホラーな匂いがする。
    所々に散らばる、俺らと同じように怠惰に時間を過ごした証の煙草の吸い殻やビールの空き缶。
    ただの溜まり場な雰囲気しかしないダンジョンに、小学生の避難訓練みたいな空気になっていく。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-10-03 22:53:00
  • 406:

    ◆lZf.ArgVp2

    何もない事を前提に進む一団は、義務的に病室だったろう部屋のドアというドアを一応開けて、適当に一回ペロッと舐めるように懐中電灯で照らしては進んでいく。
    楽しそうなのは誠司クンらだけで、レイちゃん含む俺らは無駄に気を使って疲れただけだったと誰に訴えるわけでもなく、態度にだしつつ前に進む。
    「も〜え〜なあ別に。」
    一番乗り気だったはずの誠司クンのもう飽きた感漂う一言で、あったのか微妙なひとかけらの興も削がれた。
    「じゃあもう帰るぅ〜?帰ってゲームしよやあ」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-10-03 23:03:00
  • 407:

    ◆lZf.ArgVp2

    どうでもよすぎて既に鼻声1だったか2だったかの区別もつかんくなった女が猫なで声で言う。
    裕司んち来るつもりなんか〜い。………ていうかなんでいつも行ってますって空気感だしてんねん。
    ……誠司クン、友達は嫌がるらしいけど女は普通に家あげるしな。

    レイちゃんの顔は暗くて…………いや明るかったとしても、俺には見れん。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-10-03 23:08:00
  • 408:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ほなら、この部屋で最後な」とツイストが笑いながらドアを開ける。
    最後の部屋は病室じゃなかった。

    懐中電灯で照らされたそこは立派な机と椅子。壁一面の本棚。
    先客に荒らされたんやろう、床にはたくさんの古い本が錯乱していた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-10-03 23:13:00
  • 409:

    ◆lZf.ArgVp2

    「絶対ここ社長室やし!!!」
    「あほか!理事長やろ!!」
    ………院長やろ。心の中ではしゃぐ誠司クンとツイストにつっこむ。誠司クン、立派な机に座ってもうてるし……。
    「社長、お茶です」
    鼻声ガールズは変な遊び始めてるし。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-10-03 23:19:00
  • 410:

    ◆lZf.ArgVp2

    再び盛り上がる収集のつかない事態にこっそりため息をついた。

    そして急いでため息を引っ込めた。
    俺は何を期待してるんや?
    何を?

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-10-03 23:22:00
  • 411:

    名無しさん

    更新してる?
    仕事頑張ってますね?
    体壊さないようにね?
    続き楽しみにしてます?

    IP強制表示中:210.153.84.133
    2008-10-04 02:36:00
  • 412:

    名無しさん

    更新ありがとう?

    IP強制表示中:210.153.84.129
    2008-10-04 10:20:00
  • 413:

    名無しさん

    楽しみ?

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2008-10-04 21:58:00
  • 414:

    名無しさん

    あげます?

    IP強制表示中:210.153.84.134
    2008-10-06 02:49:00
  • 415:

    名無しさん

    >>101

    IP強制表示中:202.253.96.233
    2008-10-07 00:31:00
  • 416:

    名無しさん

    >>101-400

    IP強制表示中:202.253.96.233
    2008-10-07 00:34:00
  • 417:

    名無しさん

    >>332-430

    IP強制表示中:202.253.96.233
    2008-10-07 01:41:00
  • 418:

    名無しさん

    アゲゲ

    IP強制表示中:219.108.157.61
    2008-10-11 15:16:00
  • 419:

    名無しさん

    おもろすぎる?

    IP強制表示中:210.153.84.231
    2008-10-11 16:06:00
  • 420:

    名無しさん

    だぃぶ更新なくて気になるからァゲ★楽しみにしてるょー

    IP強制表示中:210.153.84.36
    2008-10-22 12:17:00
  • 421:

    ◆lZf.ArgVp2

    待たしてごめんなさい。仕事がうまくいかなくてしんどくて。必ずちゃんと書きますね。楽しみにしてくれてありがとう。すごく嬉しいです。
    来月までには元気になるのでもうしばらく待って下さいね(ノ_<。)

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-10-23 02:45:00
  • 422:

    名無しさん

    待ってるぜ

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2008-11-08 00:45:00
  • 423:

    名無しさん

    主さん久しぶりです?
    早く元気になってくださいね?
    スレが上がっててビックリしました?
    続き楽しみに待ってます?

    IP強制表示中:210.153.84.43
    2008-11-08 02:20:00
  • 424:

    名無しさん

    もう月変わったで

    IP強制表示中:210.136.161.151
    2008-11-10 02:36:00
  • 425:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>425 「帰るか!」
    誠司クンの一声で、ぎゃいぎゃい騒いでいた誠司軍団はピタリと動きを止めた。鶴の一声。
    下校するようにダラダラと部屋を後にする。俺らもなんとなく後に続く。
    俺は名残惜しい気持ちで部屋を振り返る。
    何も起こりはしない。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-11-10 16:17:00
  • 426:

    ◆lZf.ArgVp2

    誠司クンと鼻声1、2とツイストはじゃれ会いながら来た道を戻る。俺らは言葉もなくそれについていく。梅子の俺の服を掴む手の温もりだけが、俺の底なく下がっていくテンションを支えていた。
    「隆一!!レイちゃんは!?」
    気付けば誠司クンらと俺らの間には随分距離が離れていて、誠司クン達の姿はもう見えない。
    「……いいひんな。前ちゃう?お前一緒やったんちゃうん?」
    いつの間にかレイちゃんの姿がなくなっていた。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-11-10 16:25:00
  • 427:

    ◆lZf.ArgVp2

    裕司と顔を見合わせる。
    「裕司なんか聞いてる?」
    もちろんレイちゃんの言ってた計画の話やけど、予定外の鼻声達の乱入やこのぐだぐださで、まさか実行されるとは思ってなかった。
    「………なんもきいてへん」
    後ろを振り返ると長い通路は数メートル先は真っ暗な闇で女の子が一人でいられるような所ではない。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-11-10 16:30:00
  • 428:

    ◆lZf.ArgVp2

    「兄貴んとこ見て来て!!」
    血相を変えた裕司が暗闇の中走っていく。その姿は闇に吸収されていくように見えた。
    梅子が服を掴む手に力が入る。
    「………なんもないって」
    そういって梅子の手を握った俺の手が少し汗ばんでいるのは梅子にはわかったと思う。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-10 16:40:00
  • 429:

    ◆lZf.ArgVp2

    「隆一!!!兄貴呼んでこい!!」
    暗闇の向こうから裕司が叫ぶ声が聞こえた。尋常じゃない何かがおこっている。裕司の声でそれがわかる。
    心臓から大量の血液がうねる。梅子の手を強く握った。
    「……りゅうちゃん」
    水の中を走るように足が重い。梅子の手をひいて走った。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-11-10 16:50:00
  • 430:

    ◆lZf.ArgVp2

    誠司クンの所までは、すぐについた。梅子は俺の全速力で引っ張ってもうたからヒュウヒュウと喉を鳴らしていた。
    「……どしたん?」
    誠司クンは少し引き気味に俺と梅子を交互に見た。
    「……すぐ来てや!!!レイちゃんが!!!」
    俺もゼイゼイ言いながらなんとか言葉を発した。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2008-11-10 16:57:00
  • 431:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……レイが何?」
    誠司クンは冷たく笑った。
    「何って!!ようわからんけど早く来てや!!」
    俺かて何が起こったかはわからん。けど裕司の声はただごとじゃなかったんは確か。
    「え〜誠司もどるん〜?」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-10 17:03:00
  • 432:

    ◆lZf.ArgVp2

    腕にまとわりつく鼻声女の頭をナデナデしながら、誠司クンは俺を馬鹿にした目で見下げた。
    「……どうせレイの芝居やろ?アホらしい」
    「レイちゃんは誠司クンの彼女やろが!!」
    思わず誠司クンに掴みかかったけど、誠司クンはなんのこたあなく俺の手を引き離す。更に俺の手首を握力いっぱいに締め付けるおまけつき。
    「………レイと裕司が怪しいの、俺が気付いてへん思た?笑」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-11-10 17:10:00
  • 433:

    名無しさん

    再開めっちゃ嬉しい?

    IP強制表示中:210.136.161.152
    2008-11-10 17:14:00
  • 434:

    ◆lZf.ArgVp2

    誠司クンの拘束を力一杯ひっぺがす。冷たい笑顔の誠司クン。言いたい事は山程あるけど、言葉にならんし、そんな小競り合いしてる場合でもない。
    「……もおええわ。梅子はそこおって!!」
    俺は一人で引き返した。あんな奴連れて行かんでええわ。
    暗闇に目が慣れたといえども、視界は悪いし、一人でいるとやっぱり心細かったりもした。
    「裕司!!どこおんねん!!」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-11-10 17:17:00
  • 435:

    ◆lZf.ArgVp2

    最後に裕司の声がした辺りで俺は叫ぶ。
    「なあ!裕司!レイちゃん!!おいって!!」
    静まり返った暗闇の中で俺の声ばかりワンワンと反響して空気を震わした。片っ端からドアを蹴って開けて裕司とレイちゃんの名前を呼ぶ。ドッキリにしてはたちが悪すぎる。冷たく噴出す汗が背中をぬるく伝う。
    そして、さっきの院長室やら社長室やら言ってた部屋に行き着いた。そこでもいくら呼んでも返事はなくて、見過ごしそうになった一瞬。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-10 17:35:00
  • 436:

    ◆lZf.ArgVp2

    ずうっと下に続く階段を降り続け、俺は上に戻れなくなるんじゃないか、非常時にかかわらずそんな妄想が頭をかすめる。
    冷静なのか、パニクってるのか。狭いから体を横に向けて中腰になりながら、そろりそろり足を降ろす、階段を確かめる、ゆっくり体ごと移動、の蟹歩きを繰り返す。
    思ったよりずっと長い階段やった。……いや、そう感じるだけかも。
    こじあけるように両側の壁に突っ張らせている手のひらが汗でヌルつく。
    下に行くにつれ、濃くなる古い空気に鼻がおかしくなる。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-10 17:51:00
  • 437:

    名無しさん

    頑張って下さい??

    IP強制表示中:210.136.161.51
    2008-11-10 18:08:00
  • 438:

    ◆lZf.ArgVp2

    蟹歩きがいたについつてきた頃、これ以上下に続かない広い面に足がつく。どうやら一番下まで行き着いたらしい。ずっと中腰で慣れない体制やったから膝がカクカクとする。
    誠司クンからぶんどってきた懐中電灯がなかったら前に進めんかったやろう。
    その位、深い闇。
    人が二人は余裕を持って歩けるくらいの通路を挟んで、鉄格子で区切られた独房のような部屋が並んでいた。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2008-11-10 18:51:00
  • 439:

    ◆lZf.ArgVp2

    こんなん映画かドラマでしか見た事がない。一体何に使われてたんかしらんけど、あんな入口な事を考えると世間一般からは隠されていたに違いない。
    そういくらも歩かない内に壁に突き当たる。部屋いうても四畳くらいの独房が全部で十数戸くらいあった。
    ふと人の気配を感じる。
    独房の一つが開いていた。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-11-10 18:58:00
  • 440:

    ◆lZf.ArgVp2

    「レイちゃん!!……裕司?」
    そこにレイちゃんのひざに眠っているように頭をのせる裕司とそんな裕司の頭をなでるレイちゃんがいた。
    「………お前らなあ………」
    俺の呆れた声にうつむいていたレイちゃんが顔をあげる。
    いつもの唇の片方をつり上げる笑い方ではなく、子供のような人懐っこい笑顔で、レイちゃんが笑った。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-11-10 19:54:00
  • 441:

    ◆lZf.ArgVp2



    「やっと来てくれた」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-11-10 19:55:00
  • 442:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>440-457

    長い間書けなくてすいませんでした(ノ_<。)それでも待っていてくれた方、コメントくれた方がいて嬉しかったです。読んでくれる方の為にはやく完結したいんですが仕事→寝るの繰り返しなんでなかなかかもしれませんが、完結は必ずするのでよろしくです

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-11-10 20:01:00
  • 443:

    名無しさん

    わぁい?更新されてる?
    主さんがんばってください??

    IP強制表示中:210.136.161.140
    2008-11-10 21:22:00
  • 444:

    名無しさん

    気になる??早く読みたいです?ほんまこの小説好き??

    IP強制表示中:210.136.161.147
    2008-11-10 21:24:00
  • 445:

    名無しさん

    ドキドキしたぁ〜?
    ってか主さんまってました??
    仕事頑張ってください。
    暇な時でいいんで更新お願いします?

    IP強制表示中:210.153.84.138
    2008-11-11 02:45:00
  • 446:

    名無しさん

    気になる???笑

    IP強制表示中:210.136.161.47
    2008-11-11 10:21:00
  • 447:

    名無しさん

    仕事大変だと思うので無理せずゆっくりマイペース更新にしてくださいね☆

    IP強制表示中:59.135.38.201
    2008-11-11 12:37:00
  • 448:

    名無しさん

    はよ読みたい???

    IP強制表示中:210.153.84.135
    2008-11-11 14:57:00
  • 449:

    名無しさん

    かいてほしい??

    IP強制表示中:210.136.161.51
    2008-11-11 17:43:00
  • 450:

    名無しさん

    詳しくはこちら

    http://ac.la/onna

    IP強制表示中:210.136.161.146
    2008-11-12 03:40:00
  • 451:

    名無しさん

    今一気に読みました。
    主さんのペースで書き上げてください。
    楽しみにしてます。

    IP強制表示中:210.136.161.52
    2008-11-12 06:23:00
  • 452:

    名無しさん

    かいてー?

    IP強制表示中:210.153.84.131
    2008-11-12 21:47:00
  • 453:

    名無しさん

    楽しみに待ってるよぉ

    IP強制表示中:118.240.198.62
    2008-11-25 00:59:00
  • 454:

    ◆lZf.ArgVp2

    待っててくれる方々に感謝

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2008-11-26 20:09:00
  • 455:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>457 その声を聞いた時、懐かしさで胸が焦げ付くように熱くなった。
    俺に微笑む女はレイちゃんじゃない。姿形はレイちゃんでも、あどけない笑顔は、夢の女。裕司を膝に乗せたまま、力が抜けて床に膝をついた俺に回される女の腕。
    その腕の温もりが伝わる部分だけ残して、俺は、俺っていう人間の存在がバラバラに散らばって解けて行く。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-26 20:17:00
  • 456:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……うん」
    声としてでたかはわからない俺の返事が、今は境目すらわからない空間を震わす。
    音として空気を震わすんじゃなく、生温い水の中のような細胞の中を揺らした。

    そこで、すべてが途絶えた。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-11-26 20:26:00
  • 457:

    ◆lZf.ArgVp2





    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-11-26 20:26:00
  • 458:

    ◆lZf.ArgVp2

    パチンっ
    パチンっ
    パチンっ

    「あっ………やあ〜っと目あけよった!…………泣くな!!ツヤコ!大丈夫や。死んでへん」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2008-11-26 20:30:00
  • 459:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いつまでもメソメソすなや!
    お前もはよ起きい!!ほんまにトロ臭いやっちゃなあ。」

    頭が痛い。それよりもっと腰が痛いし尻も痛い。
    俺の目の前には目を真っ赤にした女の子がしゃくりあげていた。薄目でぼやける視界が女の子の目と合うと、一層涙を盛り上げて、目の端からこぼれ落ちそうになった。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2008-11-26 20:35:00
  • 460:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ごめんなっ…うちが、うちが…………なんかあったら、うちのせいやわあっ」
    勢いよく、涙は溢れて顎へと伝った。顎から垂れた滴は俺の目の前すぐをかすめて地面に落ちた。
    「あほかっ。あんな低いとこから落ちてどないかなるか。気い失っとっただけや」
    頼むから大声だすなや、頭に響くやろ。ガンガン痛む腰をさすりながら、なんとか体を起こす。酷く痛むものの幸い骨はなんともないようやった。
    「大丈夫?大丈夫?」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-11-26 20:42:00
  • 461:

    ◆lZf.ArgVp2

    ぐずぐず鼻を垂らしながら涙声でなんども聞いて来る女の子。
    可愛い可愛い、俺のツヤコ。
    「………ごめん。ツヤコ。お前に柿をとってやろうと思ったのにな。」
    「いらん!柿なんていらん!!」
    「いつまでメソメソすんねんな!」

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2008-11-26 20:46:00
  • 462:

    ◆lZf.ArgVp2

    「柿くらい俺がとったるがな!
    柿の木は折れやすいしお前には無理無理。ちょいまっとれ」
    ツヤコの止めようとする声もおかまいなしにまるで猿のようにテルキチは木に登っていく。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-11-26 20:58:00
  • 463:

    ◆lZf.ArgVp2

    すぐに空からひとつ、ふたつと柿が降って来る。ひとつは俺の頭に当たって地面に転がる。
    テルキチはまた猿の如しすばしっこさで戻ってくると、自分でとってきた柿をおもむろにかじった。
    「まだ……渋いわ。」
    ツヤコはまだ潤んだままの目元のまま笑った。まだ溜まっていた涙が笑った拍子に目尻から一筋流れた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2008-11-26 21:12:00
  • 464:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は木から落ちた時にぶつけた頭に更に柿をぶつけられ、ジロリとテルキチを睨んだけど、テルキチは口に含んだ柿をべっと地面に吐き出して、しまりない顔で笑っとった。
    「ツヤコ、こっちをおあがり。これは甘そうや」
    渡した柿を宝物のように両手でもって、嬉しそうに笑うツヤコが可愛くて、痛みもあほのテルキチの事も吹っ飛んだ。
    俺とテルキチはツヤコに夢中。
    可愛い可愛い俺らのお姫さん。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2008-11-26 21:19:00
  • 465:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコは大きい問屋の娘で、家も近所の俺とは同じ学校に通おてる。テルキチはツヤコのおとんの店で下働きをしとる。
    年はツヤコがちょっと下やから俺とテルキチは妹のようにツヤコを可愛がり、みんな兄弟のように育った。
    テルキチは身寄りがいないせいかツヤコに対する溺愛振りは半端なく、たまに皆がとまどう程だ。
    俺はというと成績は中の下、おまけに体が弱く、本を読むのが好きな優男で、腕っ節が立つうえに体も大きなテルキチに頭が上がらない。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-11-26 21:32:00
  • 466:

    ◆lZf.ArgVp2

    家が金持ちで親とテルキチに甘やかされて育ち我が儘なツヤコに当然ながら友達はなかった。
    級友から馬鹿にされ、同じく友達のいない俺とツヤコが一緒にいることが多いのは自然な事で、周りに冷やかされながらもいつも一緒にいた。
    テルキチは学校に通ってはなかったが、学校が終わる時刻になると仕事の合間にすっとんでくる。
    いつも遊びにくる裏山で今日もいつもと同じように柿をかじりながら、色付く山の色彩にじっと身を埋めていた。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2008-11-26 21:39:00
  • 467:

    ◆lZf.ArgVp2

    それは俺が中等部の頃。

    その頃の俺はそんな日が当たり前のように明日も訪れ、それがずっと続くのだと……そう思っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2008-11-26 21:41:00
  • 468:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>471-484

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2008-11-26 21:43:00
  • 469:

    名無しさん

    更新ありがとう?めっちゃおもろい?

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2008-11-26 23:21:00
  • 470:

    名無しさん

    えっ何か意味わからん?
    ツヤコとテルキチ誰?

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2008-11-27 01:19:00
  • 471:

    名無しさん

    ↑もう一回じっくり読んでみたら??
    説明したいけど何て説明すればいいか分からんしあたしでも意味わかるくらいやからちゃんと読めば理解できると思うけど?

    IP強制表示中:59.135.38.201
    2008-11-27 07:45:00
  • 472:

    名無しさん

    ……ほんもの?(∵`)

    IP強制表示中:210.153.84.67
    2008-11-27 11:54:00
  • 473:

    名無しさん

    テルキチとツヤコって何者?
    何でいきなりでてきたん?
    読み直したけどわからへん?

    IP強制表示中:210.136.161.147
    2008-11-27 13:30:00
  • 474:

    名無しさん

    簡単にゆうたら、気失ってなんか夢みてるってかんじかな。

    IP強制表示中:210.153.84.131
    2008-11-27 13:43:00
  • 475:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新が少なかったので分かりにくいかと思いますが、これから読んでいく内にわかってもらえると思います。
    今はツヤコ=夢の女と思って下さい。うまく表現できなくてごめんなさい(ノ_<。)
    あんまり説明するとネタバレになるのでこの辺で。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2008-11-27 13:47:00
  • 476:

    名無しさん

    >>491夢の中か?ありがとう?
    主さん私が理解力なかっただけです?続き楽しみにしてます?

    IP強制表示中:210.153.84.43
    2008-11-27 16:57:00
  • 477:

    ◆lZf.ArgVp2

    また明日更新しますね
    コメントちゃんとお返事できてなくてごめんなさい(´A`)
    けどすごく嬉しいし毎回励みにしています

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2008-11-27 23:15:00
  • 478:

    名無しさん

    >>102-295

    IP強制表示中:202.253.96.243
    2008-11-29 04:42:00
  • 479:

    名無しさん

    >>102-245

    IP強制表示中:202.253.96.242
    2008-11-29 05:05:00
  • 480:

    名無しさん

    >>296-322

    IP強制表示中:202.253.96.244
    2008-11-29 05:48:00
  • 481:

    名無しさん

    更新嬉しすぎる?
    主さんがんばって〜?

    IP強制表示中:210.136.161.52
    2008-11-29 08:35:00
  • 482:

    名無しさん

    おもしろい

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2008-12-02 01:33:00
  • 483:

    名無しさん

    500?

    IP強制表示中:210.136.161.49
    2008-12-02 15:03:00
  • 484:

    名無しさん

    気になり過ぎる?

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2008-12-04 12:03:00
  • 485:

    名無しさん

    主さん忙しいのかな?

    IP強制表示中:210.153.84.35
    2008-12-10 18:08:00
  • 486:

    名無しさん

    気になるよ

    IP強制表示中:210.136.161.52
    2008-12-11 12:12:00
  • 487:

    名無しさん

    ?

    IP強制表示中:210.136.161.152
    2008-12-16 01:23:00
  • 488:

    名無しさん

    主さんもう書かないのかな?

    IP強制表示中:210.153.84.134
    2008-12-20 19:46:00
  • 489:

    ◆lZf.ArgVp2

    書きますよっ!
    今 年末とクリスマス商戦でてんてこまいなので、落ち着いたら必ず書きます。
    すいません、待ってて下さってるのに………(ノ_<。)

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2008-12-21 22:27:00
  • 490:

    名無しさん

    ゆっくりでいいので楽しみにしてますょ?

    IP強制表示中:210.136.161.50
    2008-12-23 04:04:00
  • 491:

    名無しさん

    待ってます?
    仕事頑張って下さいね?

    IP強制表示中:210.136.161.145
    2008-12-23 05:57:00
  • 492:

    名無しさん

    最初から読んでハマりました!!更新楽しみにしてます?

    IP強制表示中:210.153.84.135
    2008-12-24 18:52:00
  • 493:

    名無しさん

    次の更新年明けかな?

    IP強制表示中:210.153.84.35
    2008-12-24 19:51:00
  • 494:

    名無しさん

    あげ?かいて?

    IP強制表示中:210.153.84.37
    2009-01-08 21:48:00
  • 495:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>484
    「あっツヤコさんや」

    ツヤコが歩くと皆が振り返る。ツヤコはいつの間にか評判の美しい娘になっていた。
    青みがかかったような漆黒の黒髪に、小鹿のような黒目がちの瞳。その目は聡明そうでいて、少し生意気で。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-01-08 22:12:00
  • 496:

    ◆lZf.ArgVp2

    真っ白な肌は上等の陶器のよう。大きな目はいつも人をい抜くように輝いて、意志の強そうな弓形の眉は少年のように凛としている。
    ツヤコの父親が大金を積んでまで口説きおとしたらしいツヤコの母親に、年をとるにつれ瓜二つになると、街のスケベオヤジ達はツヤコを見ると目を細めて噂した。
    「あんなふうに着飾っとったらようみえて当たり前や」
    女達はそう陰口を叩いてはいたけど、ツヤコを見る目の色は憧れを含んでいる。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-01-08 22:21:00
  • 497:

    ◆lZf.ArgVp2

    「こないだかしてくれた本、面白かった」

    「…………そっか」

    何気ないふうに返事をしてみせたものの、俺は嬉しくてしょうがない。普段滅多に笑わないツヤコが俺の前では笑っている。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-01-08 22:24:00
  • 498:

    ◆lZf.ArgVp2

    普段、何かしらの嘲笑や哀れみの目でみられている俺にもこの時ばかりは羨望の眼差しが向けられた。
    俺は足が悪い。子供の時は若干不自由くらいだったのが、成長と共に悪くなり、今ではびっこをひかないと歩けない有様だ。
    ツヤコはそのことについて、俺に何か言ったことがない。
    ただ俺の隣りを歩く時は、ゆっくりと自然に歩いてくれた。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-01-08 22:31:00
  • 499:

    ◆lZf.ArgVp2

    「テルキチみつかったか?」
    ふとツヤコから笑顔が消えた。黙って首を横にふる。
    「………そうか。どこおるんやろうな」

    テルキチは良い働き手だった。体も丈夫で体力もあった。頭も切れる。自分を拾ってくれたツヤコの父親を慕い、店の為に朝から晩まで働いた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-01-08 22:36:00
  • 500:

    ◆lZf.ArgVp2

    「あの糞親父が悪いねん」
    店の金が少しずつだがちょろまかされるという事件が起こり、疑われたテルキチは姿を消した。
    その後で犯人が見つかり濡れ衣だとわかったが、テルキチは帰ってこなかった。
    「ツヤコ……今日は満月やで」
    しょげてしまったツヤコをなだめるように、ポンポンと背中を叩いてやって、上を向かせる。少し青みがかった空にはうっすらと白く円い月がでていた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-01-08 22:42:00
  • 501:

    ◆lZf.ArgVp2

    「前にもこうやって二人で月みたよなあ…………………」
    そうしみじみ俺が言ったと同時にピタリと歩みを止めるツヤコ。
    「見てへんわ!誰と間違ってんの、もー」
    「……え……そやったか?」
    頭の中に雑音がザザッと流れる。そして心地よい音色。
    どこかで聞いたような事がある。………いや、確かに聞いたような。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-01-08 22:47:00
  • 502:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……といてっ!」
    はっと我にかえると、ツヤコは目に涙をいっぱいためて俺を睨んでいた。
    その黒い目の裏に、火のように燃える情の色。俺はその色にたまらなく焦がれ、そして恐ろしい。
    「他の事なんて考えんといて。ツヤコの事だけみて。」
    吸い込まれるように口付けをかわす。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-01-08 22:53:00
  • 503:

    ◆lZf.ArgVp2

    「お前あかんで。もう17やろ………そろそろ嫁にいかなあかんっていうのに」
    「……貰ってや」
    「…………そんなん……出来るわけないやろうに」
    泣きそうな顔してツヤコが笑う。俺も笑ったけど、多分俺も、似たような顔していたに違いない。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-01-08 22:57:00
  • 504:

    ◆lZf.ArgVp2

    お待たせしてすいませんでした。
    ようやく落ち着いてきたので更新していきます。今日は>>512-520です。コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-01-08 23:00:00
  • 505:

    名無しさん

    あけましておめでとう
    ございます(・ω・)ノ?

    更新嬉しいです?
    めっちゃおもしろいです?

    IP強制表示中:210.136.161.151
    2009-01-09 10:57:00
  • 506:

    名無しさん

    待ってました?

    IP強制表示中:210.136.161.148
    2009-01-09 16:17:00
  • 507:

    名無しさん

    更新嬉しい?

    IP強制表示中:210.136.161.149
    2009-01-09 20:08:00
  • 508:

    名無しさん

    明けましておめでとう!更新まってたよ(#≧∀≦#)

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2009-01-10 01:40:00
  • 509:

    ◆lZf.ArgVp2

    うわーめっちゃ嬉しいです(〃・∀・〃)
    あけましておめでとうございます!!

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-01-10 03:09:00
  • 510:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>520 「ほら。もうかえらなあかんやろ」
    「お父さんおらんし大丈夫」
    ツヤコの父親は満州にも事業を展開し始めて、家を空けがちになっていた。日本は戦争への道を歩み始める。
    そんな混沌の時代。
    そんな色んなものが移り変わり、混ざり、溶け合っていく世間の中で、俺とツヤコの二人の事など、どこにでもありふれた、平凡な、よくある話だ。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-01-10 03:14:00
  • 511:

    ◆lZf.ArgVp2

    そう思おうとして、動こうとしないツヤコの手を引く。
    ツヤコが俺の手を引っ張った。
    予想していなかった動きに、俺の足はよろける。
    「ツヤコの事みて。ツヤコだけを見てや」
    一瞬の心の攻防。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-01-10 03:18:00
  • 512:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコの腕が俺の背にまわる。よろけた俺を支えるようにツヤコの腕に力が入る。

    俺の頭の中に、再び流れるあの音色。

    でもそれも、もはや聞こえない。頭の中すら真っ白で。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-01-10 03:21:00
  • 513:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコをかき抱くようにして、唇を貪る。

    いや、喰われていくのは俺の魂か。

    身体を通る何かから、思考が吸い出されていった。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-01-10 03:24:00
  • 514:

    ◆lZf.ArgVp2

    柔らかく、温かく………………

    理性は一度切れてしまえば、保っていた均衡を崩すことなど容易い。
    むしろ無意識に沈む心の声は、ずっとずっとこうしたかったのだと歓喜し叫ぶ。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-01-10 03:27:00
  • 515:

    ◆lZf.ArgVp2



    どうか、今だけでも

    俺のものに。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-01-10 03:28:00
  • 516:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>527-532
    少なくてすいません(´A`)
    あけおめが嬉しすぎたので、少しでも更新しました。次はもう少し長めにできるようにします

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-01-10 03:32:00
  • 517:

    名無しさん

    メチャすき?絶対絶対完結させてください

    IP強制表示中:210.153.84.40
    2009-01-10 13:01:00
  • 518:

    名無しさん

    はよかいてやー

    IP強制表示中:210.136.161.231
    2009-01-15 19:09:00
  • 519:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>532
    越えまいと踏み止どまっていた一線も、越えてしまえば……あとは、もう、同じ事の繰り返し…………。
    人気のない裏山で、町外れの堀っ建て小屋で、俺とツヤコは何度も抱き合った。
    一瞬の快楽の後、毎回心はどうしようもない程、渇く。
    それが恐ろしくて、また抱き合う。そんな事が続いた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-01-24 21:37:00
  • 520:

    ◆lZf.ArgVp2

    こんな事がツヤコの家の者や周りに知れたらどうなるだろうか。
    罪悪感は募るものの、それはツヤコに触れる時は消える。
    「なあ…もうこのまま連れて逃げてよ」
    俺の腕に顎を乗せ、ツヤコはやたら俺の頬に触れて甘える。
    「もぉ〜痛いって」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-01-24 21:43:00
  • 521:

    ◆lZf.ArgVp2

    力一杯抱き締めると、そう言って笑った。俺の胸に顔を埋めて小さな声でツヤコは言う。
    「別に贅沢なんていらんから」
    貧しさを一切知らずに育ったツヤコ。なんせ身の回りの物全てが、ツヤコの為にあつらわれたような暮らししか知らないのだ。
    極彩色の錦も、繻子のリボンも、ツヤコの為だけの…………
    何も答えられないから、ただ唇を合わす。口付けは深くなっていき、意識は快楽の下に沈む。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-01-24 21:56:00
  • 522:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺たちは恋人というには、余りにも幼く、非力だった。今にも崩れそうな儚い遊び場で、ままごとに興じている。
    この贅沢三昧なツヤコをさらって、どこに逃げ、どう暮せというのか。
    このご時世に足の悪い俺のような男が、………………………………一体どうやって。
    「あぁっ」
    俺の首にツヤコの腕が回される、仔犬のように喘ぐツヤコに貪りついた。肌を合わせていないと、全てが、今この瞬間すらも泡沫のように消え去りそうで、ただ夢中で腰を使った。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-01-24 22:04:00
  • 523:

    ◆lZf.ArgVp2

    どんなに無様な姿だろう。どんなに惨めな姿だろう。
    濡れて光ったように見えるツヤコの目に、情けない男が写っているのが見える。

    …………………………………………。
    ああ 気付いてしまった。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-01-24 22:09:00
  • 524:

    ◆lZf.ArgVp2

    確かにツヤコは俺を愛している。ツヤコの目に萌える色は、俺への愛情を伝えて余り有る程。
    その隙間に俺の恐れていたものを見つけた。
    俺が一番恐れている事。ツヤコの家や余所様への醜聞なんて、結局は大した事でもないような気さえする。

    俺は怖い。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-01-24 22:14:00
  • 525:

    ◆lZf.ArgVp2



    姿をくらましてもう二年は経つテルキチが帰ってくるのが、俺は怖かった。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2009-01-24 22:16:00
  • 526:

    名無しさん

    かいて?(^^)

    IP強制表示中:210.153.84.42
    2009-01-25 21:00:00
  • 527:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>542
    カーシャーン、カーシャーン…………
    冷たい音が薄暗い空間の中を、どこか空回ったように、規則正しく滑る。
    汚くてしみったれた小さな町工場。
    鉄くずを磨き続けた手はぼろぼろに荒れていた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-01-25 21:45:00
  • 528:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコが小さい頃、よく本を読んでやった。俺だって子供の頃は、いつか自分が文学をやるような人間になると思っていた。
    現実はというと、ただ日々の糧を得る為に、鉄くずなんぞ磨いている。
    それでも、身体の不自由な俺がやっとの思いでついた職だった。
    ツヤコに触れるようになってから、物思いにふけり、読書などすることもなくなった。
    俺の日常はただの二つの時間に別れた。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-01-25 21:51:00
  • 529:

    ◆lZf.ArgVp2

    獣のようにツヤコを貪る時間と、ツヤコへの飢えに耐える時間に。

    「………痛。」
    よそ見をしていたら、研磨機で指を擦って血がでていた。
    その赤すら、今の俺には灰色に見えるようだ。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-01-25 21:54:00
  • 530:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコと会う時間が長くなろうが増えようが、思っていたより周りに勘ぐられたりするような事もない。
    誰しもが思っている。
    俺とツヤコが釣り合う筈がないと。
    わかっている。わかりきっていた事。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-01-25 21:57:00
  • 531:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコは誰もが羨むような金持ちのお嬢様で、美しい娘だ。
    俺はというと、財もなければ身体も弱く、とりたて何か才があるわけでもない。

    どんなにツヤコの肌が柔らかいか知っていても、どんなふうにすすり泣いて、どんな時に笑うか知っていても、俺にはそれを自分の物にすることは叶わないのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-01-25 22:01:00
  • 532:

    ◆lZf.ArgVp2



    だが、テルキチには…………………………………?

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-01-25 22:03:00
  • 533:

    ◆lZf.ArgVp2

    濡れ衣を着せられたのだって、テルキチがそれほど妬まれていたからで。
    俺とツヤコにはテルキチが人様の金に手を付ける筈がないとわかりきっていた。
    良い男で良い奴だ。
    俺の親友だ。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-01-25 22:13:00
  • 534:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチが姿を消してからというもの、その身を案じなかった日は一日もない。

    だけど

    「………テルキチ、すまない」

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-01-25 22:15:00
  • 535:

    ◆lZf.ArgVp2



    頼むから、帰ってこないでくれ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-01-25 22:16:00
  • 536:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>544-553
    少しずつしか書けなくてごめんなさい(´A`)
    コメントしてくれた方ありがとうございます。ほんまに嬉しいです。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-01-25 22:19:00
  • 537:

    名無しさん

    更新ありがとう?(^0^)/

    IP強制表示中:210.136.161.152
    2009-01-26 09:27:00
  • 538:

    名無しさん

    メッッッチャハマりました!主さんのペースで、仕事と小説頑張って下さいm(__)m

    IP強制表示中:210.153.84.129
    2009-01-26 19:35:00
  • 539:

    名無しさん

    書いてください(∩´∀`)∩

    IP強制表示中:210.136.161.147
    2009-01-28 15:19:00
  • 540:

    名無しさん

    書いて?

    IP強制表示中:210.136.161.146
    2009-01-29 06:29:00
  • 541:

    名無しさん

    気になる?!!

    IP強制表示中:210.153.84.131
    2009-01-30 01:01:00
  • 542:

    名無しさん

    かいて?

    IP強制表示中:210.153.84.44
    2009-02-04 10:50:00
  • 543:

    名無しさん

    もう書かないん?めっちゃ待ってるのに。黄昏の赤もやし、良い作品書いてんのに中途半端というかだらしなさ過ぎる。

    IP強制表示中:210.136.161.152
    2009-02-04 18:21:00
  • 544:

    名無しさん

    きになる!

    IP強制表示中:210.136.161.53
    2009-02-07 14:16:00
  • 545:

    名無しさん

    かいて?

    IP強制表示中:210.136.161.46
    2009-02-16 23:24:00
  • 546:

    >>553 冬になった。今年初めての雪が降る。日は切ない程にはやく暮れるようになり、仕事場を出る時にはもう外は暗い。
    真っ白い息を吐くとそれは闇の中に散って行く。ふと目線を上げると暗闇の中に極彩色。ツヤコは俺と目が合うと小走りで近付いてくる。
    「……危ないから待ってんでいいってゆうたやんか。」
    何も言わずに目を伏せるツヤコのまつ毛にも肩にもうっすらと綿のような雪が積もっていた。
    「……………寒かったろうに。」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-03-10 02:27:00
  • 547:

    頭に積もった雪を払ってやる。
    「さっききたとこやで。」
    鼻を真っ赤にしている癖にそう言ってツヤコは笑った。
    「………どうしたん?!」
    抱き締めた小さい体をこのままいっそへし折ってしまいたい。そんな思いに駆られる程、ツヤコを愛しく感じた。雪がちらついているというのに、ちっとも寒さなど感じない。小さなツヤコの温もりだけで十分にあたたかく感じたからだ。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-03-10 02:35:00
  • 548:

    「……外で……こんなんすんの珍しいやんか」
    すっかり冷えきった冷たい頬をしているのに、ツヤコは顔を真っ赤にしていた。
    「………そおか?」
    「………そおやん」
    なぜそう思ったのかしれないが、もしかしたらこの先ずっとこんな日が続くのかもしれないと思った。そんな事がある筈がないのに。雪が音を吸い取るせいで、なにもかもが静かだった。ツヤコの心臓の音までも聞き取れる程に。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-03-10 02:42:00
  • 549:

    時折ぶつかる肩の温度さえも感じられるような錯覚。お互いの頼りは互いの温もりしかないように感じた。
    もしかしたらテルキチは二度と帰ってこないかもしれない。このままこんなふうに過ごしていたら、いつかはツヤコの父親も二人の事を認めてくれるかもしれない。
    そんな事を思った。

    そんな事を……願った。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-10 02:52:00
  • 550:

    ツヤコを送って家に帰ると一通の手紙が俺宛に届いていた。珍しいな…と思いながら封書を開く。
    見慣れた字がそこにはあった。

    -来春、帰郷セリ-

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-10 02:57:00
  • 551:

    字を目で追う度に手が震える。
    その巧くもないが一画一画が力強い文字はテルキチのものだ。
    手紙には何も言わずにでていってすまなかったということ、ツヤコの父親に追い出された後、いちかばちかで遠縁の親戚を訪ね、そこで働いていることなどが簡潔にしたためられていた。
    最後にツヤコは元気か?と書かれていて、いつの間にか俺は床にへたりこんでしまっていた。
    息を止めていた反動で呼吸が乱れた。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2009-03-10 03:03:00
  • 552:

    俺は年甲斐もなく、でてくる涙を止められなかった。何もかもこれで終わりだ。

    テルキチからの手紙を俺はビリビリに破いて捨てた。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-03-10 03:07:00
  • 553:



    春になったら、テルキチが帰ってくるのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2009-03-10 03:08:00
  • 554:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>564-571
    遅くなってすいません。言い訳ですが仕事を辞めて引き継ぎでてんてこまいになりました。だらしないと意見下さった方がいましたが、完結することで読んでくださる方にお返ししたいと思います。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-03-10 03:12:00
  • 555:

    名無しさん

    主さんお疲れ様です(>_

    IP強制表示中:210.136.161.143
    2009-03-10 11:12:00
  • 556:

    名無しさん

    更新めっちゃ嬉しいです
    忙しいときは無理なさらず主さんのペースで書いてくださいね

    IP強制表示中:124.146.174.77
    2009-03-10 18:31:00
  • 557:

    名無しさん

    かいてー?

    IP強制表示中:210.136.161.81
    2009-03-10 20:05:00
  • 558:

    名無しさん

    やったぁ(^0^)/更新してる?嬉しい!!

    IP強制表示中:210.136.161.82
    2009-03-10 20:06:00
  • 559:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>571 軽い吐き気をもよおしながら、一睡も出来ずに迎えた朝は酷く冷え込んでいて、外はうっすらと雪化粧。太陽の光を反射して、眩しくて目がくらむ。
    こんな寒い日には生き物全てが春に焦がれる。
    そんな中、俺一人が冷たい雪の世界に閉じこもっていたいと望む。
    梅が咲いた頃だろうか、桃がほころぶ頃だろうか、桜が散るその時だろうか…………テルキチが戻るのは。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-03-11 03:24:00
  • 560:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチからの手紙の話をおれは誰にもしなかった。ツヤコにも黙っていた。
    テルキチがいなくなってからというもの、ツヤコが毎日テルキチから便りがこないものかと心待ちにしているのを知っていて、それでも言えなかった。


    「人でなしだ……俺は。」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-03-11 03:30:00
  • 561:

    ◆lZf.ArgVp2

    男として不甲斐ないばかりか、人間としても弱くて狡くてなんとお粗末な事か。
    このごに及んで俺がするのは、不運に見舞われた友人の心配より自分の苦痛に溺れるばかりだ。
    俺はツヤコに辛くあたる様になった。もう自分ではどうしようもなかった。
    こんな事なら、触れなければよかった。
    ……触れなければよかったのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-03-11 03:44:00
  • 562:

    ◆lZf.ArgVp2

    時は追い立てられるように過ぎ、猫柳がふわふわの芽を芽吹かせる頃には、俺は疲れ切っていた。
    裏腹にツヤコと前にもまして関係持つ様になり、周りもさすがに俺達をいぶかしむようになった。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-03-11 04:01:00
  • 563:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコは少女らしからぬ色気を纏うようになり、ますますツヤコにのめり込む。
    ツヤコが男と話そうものなら、嫉妬で腹が煮えくり返る。

    俺はきっとまともではなくなってしまった。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-11 04:04:00
  • 564:

    ◆lZf.ArgVp2

    「痛いよ……なあって」
    お構いなしに力任せにツヤコを押し倒す。町外れの堀っ建て小屋は逢引には丁度よくても、肌を晒すには寒すぎる。
    小刻みに震えるツヤコの唇は血の気が引いて紫をおびる。
    それが妙に色っぽくて、着物の下をまさぐる手に力が入った。
    「……手ぇ…冷たい」

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-03-11 04:10:00
  • 565:

    ◆lZf.ArgVp2

    何を言っても逆効果だと悟ったのかツヤコはため息をつく。
    「……しょうがない人やなぁ…」
    ついこの間まで、何も知らない無垢な少女のようだったくせに、そこにいるのは色に狂った女だった。
    さっきまで身を捩って抵抗いた素振りは消えて、妖しく笑って俺の背中に手を回す。
    「こぉした方があったかいで」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-03-11 04:15:00
  • 566:

    ◆lZf.ArgVp2

    そう言うと、今度はあどけなく照れてみせる。
    「俺が悪いんやない…………俺を惑わせてんのは………お前や。」
    ツヤコは俺の頭を子供にするように抱いた。

    「……せやで。うち以外…なんも見やんでいい……!」

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-03-11 04:23:00
  • 567:

    ◆lZf.ArgVp2

    これが恋だというなら恋とは恐ろしい。
    お互いを分け隔てる皮膚でさえいとましく思うのだから。
    触れなければこんな狂喜の世界は知らずにすんだものを。
    「……なんで泣いてるん?」
    何も答える事ができなかった。ツヤコは震えてぶつかる歯をカチカチと慣らしながら、何も言わずに俺に口付けた。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-03-11 04:28:00
  • 568:

    ◆lZf.ArgVp2

    何もかも打ち明ける強さが俺にあればよかった。
    ツヤコに何もしてやれなくても、そのことを許してくれと、すがりつける位に強ければよかった。

    俺はまたあほの一つ覚えのように、結局ツヤコに溺れてその場を濁す。
    少しずつ長くなってきた日が春がくる事を知らせていた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-03-11 04:35:00
  • 569:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>577-586
    待っていてくれる方がいてくれて、嬉しかったです。誰ももう見てないんじゃないかな…(ノ_<。)みたいなテンションだったので。コメントありがとうございます。嬉しいです。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-03-11 04:40:00
  • 570:

    名無しさん

    気になる?

    IP強制表示中:210.153.84.41
    2009-03-11 13:15:00
  • 571:

    みぃ

    妊娠初期の悪阻真っ盛りの時に見つけてから
    ずっと見てます?
    今は臨月になりました(笑)
    妊娠中の思い出になりそうです?
    表現の仕方が大好きな小説なので、ぜひ完結がんばって頂きたいです?
    最後まで読みますので?

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2009-03-11 23:17:00
  • 572:

    名無しさん

    かいてね?

    IP強制表示中:124.146.174.36
    2009-03-12 17:16:00
  • 573:

    名無しさん

    かいてー?

    IP強制表示中:210.136.161.76
    2009-03-13 17:11:00
  • 574:

    名無しさん

    続き気になる(>_

    IP強制表示中:210.153.84.129
    2009-03-13 23:04:00
  • 575:

    名無しさん

    かいて下さい?

    IP強制表示中:124.146.174.68
    2009-03-14 20:14:00
  • 576:

    名無しさん

    書いて(^_^)

    IP強制表示中:210.136.161.45
    2009-03-15 20:49:00
  • 577:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>586 桃の花がほころびだし、五分咲きといった塩梅。
    「うちは満開より五分咲きくらいが一番好き」
    暖かくなってはきたというものの、春先は風が強い。ショールを肩にさっきよりしっかりと巻き付けながら、ツヤコは目を細めた。
    「満開の方が綺麗やろ」
    「わかってへんなあー五分咲きくらいのほうが慎ましい感じがして風情があると思わん?」

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-03-16 03:16:00
  • 578:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…そんなもんかな。」
    びゅうっと鼓膜を横切るやや重い風圧を感じる。春の風はなぜ、こうも冷たいのか。ショールの胸元をきっと押さえるツヤコの黒髪が春の光の中に踊る。
    「もう……!髪が目茶苦茶やわ。…………………あんな、満開になってしまうと、咲いてる時間はあとちょっとだけや。そう思うと……なんか寂しいやろ?」
    白い横顔にかかる乱れ髪。俺は思わず目を逸らす。
    「まあなんかいうてもツヤコは昔から花より団子やから。」

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2009-03-16 03:24:00
  • 579:

    ◆lZf.ArgVp2

    「そんなことないわ!」とふてくされてキイキイと喚くツヤコは、桃の花を飛び交う小鳥のようだ。
    いつものようにツヤコを送り届け、家に帰る。実家の扉に手を掛けた、その時。
    「久し振りやの」

    「……………テルキチ!」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-03-16 03:30:00
  • 580:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺達は子供のように小突き合った。
    あんなに恐れていたのに、実にあっけない再会であった。テルキチの昔と変わらぬ笑顔を見て、俺も笑った。
    嬉しかったのだ。
    「テルキチ!立派になって!!」
    「お前は……えらく痩せたな?」

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-03-16 03:39:00
  • 581:

    ◆lZf.ArgVp2

    「体……どっか悪いのか?」
    父性とでもいうのか、心配症というか面倒見が良い所も相変わらずだ。
    「どおもない。どおもない。最近あんまり食うてへんかったから」
    正直、自分に戸惑っていた。こんなに自然と笑顔がでるなんて、笑って話せるなんて思ってもいなかった。
    ………よかった。俺はまだ…………まともだ。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-16 03:46:00
  • 582:

    ◆lZf.ArgVp2

    「食うてへん?そらアカン!!!」
    俺に家で待つように言うとテルキチはどこかにいってしまった。
    テルキチは二年の間に更に逞しく、精悍になっていた。仕立ての良いスーツに身を包んだテルキチは男の俺さえも見惚れてしまう程。上等の生地がテルキチが成功してきたであろう事を匂わせていた。
    昔からボロを着ていようと、場が華やぐ気配も相変わらずで、俺は昔を思い出す。
    頼れる兄のような、強くて、賢く、口うるさい親友。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-03-16 03:55:00
  • 583:

    ◆lZf.ArgVp2

    こうでありたいと憧れ続けた。
    ……そして今も。


    ふと庭に目をやると、うちの桃の木は日当たりがいい事もあって、八分咲きくらいになっていた。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-03-16 04:01:00
  • 584:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>595-601
    なんか今までで一番長くなりそうですね?
    コメントいつもありがとうございます。臨月の方がいらっしゃるそうで…?赤ちゃん楽しみですね?

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-03-16 04:06:00
  • 585:

    名無しさん

    臨月の妊婦です( ´∀`)
    更新されてて嬉しいです!!
    出産の恐怖が最近楽しみに変わってきました★

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2009-03-16 22:00:00
  • 586:

    名無しさん

    かいて?

    IP強制表示中:210.136.161.45
    2009-03-21 17:59:00
  • 587:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>601 風にもてあそばれ、ゆらりとゆらめく桃の花をぼんやりと眺める。
    暖かい空気に頭がぼけてきて、なんだか夢を見ているようだった。寝てはいけないと思いつつ二度寝しかけている時のように意識は白み、体は気怠い。
    「なんかここだけ一足ばやに春てかんじやな」
    随分と長い間ぼんやりしていたようで、いつの間にかテルキチが茶の間でくつろいでいた。
    「今年も見事やなあ…」

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-22 04:20:00
  • 588:

    ◆lZf.ArgVp2

    その夜、テルキチをうちに泊め、二人で酒を呑んだ。
    土産にともらった酒は、なんと表現したものか、旨すぎて飲み込むのが切ない程で。
    普段呑まない俺は簡単に酔いに支配され、陽気にペラペラとよく喋った。テルキチは言葉少なげに一口一口を噛むように呑んだ。
    俺はテルキチの一挙一動に目を奪われつつ、昼間から続く夢のような感覚に、これは全て白昼夢なのではなどと思いながらうとうと、テルキチの話に適当な相槌をうちながら眠りについてしまった。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-03-22 04:35:00
  • 589:

    ◆lZf.ArgVp2

    次の朝、痛む頭にうんざりしつつ、仕事にでる。俺は昨日の事をゆっくりと頭の中で整理しながらなのと二日酔いも手伝って、実にのろのろ仕事をした。
    痛む頭では昨日の事を映像で思い出すのがせいぜいで。
    テルキチと酌をかわしつつ何を話したのかまでは、さっぱりだった。
    散々な仕事ぶりに感心した上司に、今日はもう帰っていいと申し付けられた。
    早速お言葉に甘える事にして家路につく。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-03-22 04:45:00
  • 590:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は即座に後悔した。仕事は真面目にやるものだ。
    吸い付くように目線を集めている場所の中心。そこにはこぼれるように笑うツヤコがいた。そして、その隣りにはテルキチが。
    テルキチは知り合いに出会う度に呼び止められているようで、少し歩いては止まり、また歩き出しては止まって話し込んでいた。
    その様子を嬉しそうに見守るツヤコ、誇らしそうにいたわるように。
    そんな二人の姿はまるで絵画か、幼い頃に聞いたおとぎ話のよう。誰もが憧れるような、そんな風情だったのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-03-22 04:53:00
  • 591:

    名無しさん

    かいて?

    IP強制表示中:210.136.161.69
    2009-03-22 23:30:00
  • 592:

    名無しさん

    気になる(>_

    IP強制表示中:210.136.161.45
    2009-03-23 16:08:00
  • 593:

    名無しさん

    あげ?

    IP強制表示中:210.153.84.137
    2009-03-30 18:15:00
  • 594:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>609「なんでテルキチが帰ってくんの教えてくれんかったん!!」
    俺を見つけて、駆けよってきたツヤコが顔を真っ赤にして怒る。何も言えずに一瞬黙り込む。テルキチがツヤコの頭をぽんぽんと子供の頭を撫でるようになだめた。
    「……ぬか喜びさしたらあかんから、確実やてわかるまで黙っとこうと思って。」
    ………嘘がつらつらと並べられる。
    「お前らしいわ」と笑うテルキチから目を背けたくなった。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-03-31 03:27:00
  • 595:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチは以前世話になっていたツヤコの父親の店に顔を出した帰りだという。
    盗人の汚名を着せられた事件のわだかまりも溶け、皆がテルキチの帰りを喜んでくれたと、顔をほころばせていた。
    二日酔いで仕事をさぼったというと、ツヤコは怒り、テルキチは笑った。
    ツヤコがあんみつを食べたいと言ってきかないので、茶屋によることになり、久し振りに三人で肩を並べる。
    真ん中にツヤコ、右端にテルキチ、左端に俺。昔のままだ。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-03-31 03:36:00
  • 596:

    ◆lZf.ArgVp2

    いい年の癖に子供のようにテルキチに甘えるツヤコに、優しい兄のようなテルキチ。それを半ば呆れたように見守る俺は、外面だけは昔と同じでも心に暗い染みを作っている。
    眩く輝く二人を見ていると、自分だけ弾かれた違う世界にいるようだった。

    暗い、暗い、暗い。
    濁った泥水の中を歩いているよう。足が重い。踏んだ土の感触が鈍い。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-03-31 03:44:00
  • 597:

    ◆lZf.ArgVp2



    一歩踏み出すごとに、ぐにゃりと歪んで沈んでいく。
    固まった笑顔のまま。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2009-03-31 03:45:00
  • 598:

    ◆lZf.ArgVp2

    その後は上の空だった。何か喋っていた筈だし、あんみつも食べたし、声をだして笑った気もするが、記憶の中身は空っぽだ。
    テルキチの滞在中はうちに泊める事にして、まだ遊ぶとぐずるツヤコを家に返した。
    俺とテルキチに挟まれて家路を歩いていたツヤコはふてくされた顔をしてはいても、玩具を手に入れた子供のように、誇らしげだった。
    その顔を見て、俺の心が抉られるように痛んだ事に、一体誰が気付いただろう。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-03-31 03:51:00
  • 599:

    ◆lZf.ArgVp2

    「今日も付き合わして悪いな。せやけど、今日は飲み過ぎるなよ」
    テルキチの酌で、とっとっと…と音をたて、並々と酒が注がれる。さっきまで頭が痛かった癖に、煽るように一気に飲み干した。
    「飲むねぇ」とテルキチも嬉しそうに自分の酒をぐっと飲み干す。昨日さんざくら飲んだくせに、こいつは元気そうだ。
    「びっくりしたわー」
    杯の中の揺れる水面を見つめるテルキチの目に、反射して光が青白く揺れていた。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-03-31 03:58:00
  • 600:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ツヤコめっちゃええ女なってんやもんな」
    その時のテルキチの顔は、一瞬だったが男の顔だった。優しい兄ではなく。
    喉元をぐっと掴まれたように、俺は冷たい汗が噴出して背を伝うのを感じた。

    頭の中を這い上がってくる嫌な悪寒を振り払うように、ただ酒を飲んだ。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-03-31 04:03:00
  • 601:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………ああ」

    俺の答えた声に何を返す訳でもなく、テルキチはぼんやりと月明りの中の桃の花を眺めている。

    俺がツヤコを女にしてん……………。杯を持つ手に力がはいり、酒は小刻みに揺れていた。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-03-31 04:09:00
  • 602:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>613-620

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-03-31 04:10:00
  • 603:

    名無しさん

    お疲れ様ですm(__)m
    本当にこの小説は面白いです!主さんのペースで頑張って下さいm(__)m

    IP強制表示中:124.146.174.37
    2009-03-31 05:07:00
  • 604:

    名無しさん

    文章力はもちろん話にとても引き込まれます
    毎日楽しみにしてます

    IP強制表示中:210.136.161.50
    2009-03-31 09:06:00
  • 605:

    名無しさん

    気になる?

    IP強制表示中:124.146.174.43
    2009-03-31 20:25:00
  • 606:

    妊婦

    27日に無事産まれました★入院中のベッドで見てます!!更新されてて嬉しい( ´∀`)♪

    IP強制表示中:124.146.174.34
    2009-04-01 10:02:00
  • 607:

    名無しさん

    何かアンテナみたい。
    すげぇ面白い!書いて!

    IP強制表示中:219.125.145.6
    2009-04-01 21:28:00
  • 608:

    名無しさん

    かいてください?

    IP強制表示中:210.136.161.143
    2009-04-03 21:15:00
  • 609:

    ◆lZf.ArgVp2

    皆様たくさんのコメントありがとうございます(´・ω・`)
    ちょっとずつですがゴールが見えてきました☆
    >>625さん 無事に生まれましたか☆おめでとうございます!!最近周りが結婚ラッシュなので色々悩んでしまう年頃の私です笑
    >>626さん 田口ランディさんの小説ですよね。「コンセント」も面白かったですよ☆

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-04 01:47:00
  • 610:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>620 あれよあれよという間に桃は咲き乱れ、桃の季節も過ぎたかと思うと、次は桜の花が開き始める。
    春は皆の心を浮き立たせ、暖かくなったせいか、幾分かは俺の足も楽になった。
    三人でやれ花見だ、観劇だと目まぐるしく毎日は過ぎる。
    筆に墨を付け過ぎた時、半紙に黒い染みが広がる様に心の暗いものをじわじわと拡げながら、俺はただ笑っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-04 01:56:00
  • 611:

    ◆lZf.ArgVp2

    狂ったように抱いたツヤコに触れる事もなくなった。いつも三人でいるようになった為、自然な流れのようにも思えたが、テルキチの横ではしゃぐツヤコを見る度、あんなに求めてきた癖に等と女々しい事を考える。
    そんな自分を悟られるのが嫌で、何をするにもただ笑った。
    顔の筋肉を動かすだけで事は済むのだ。
    笑った数の分だけ染みは益々大きくなり、益々俺はどこかに沈む。
    だが、そんなことはもうどうでもいいのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-04-04 02:03:00
  • 612:

    ◆lZf.ArgVp2

    幼馴染みという関係を保たなければならないのだ。和を乱してはならない。見せかけだけでも昔のままにしておかなければ。

    俺はこの場所を、ツヤコの左端すら失ってしまう。
    現に、ほら。ツヤコの黒髪についた桜の花びらをとってやることすらかなわない。手を伸ばすとツヤコはその手をすうっと避けた。
    意図的にツヤコがそうしたことを、ずっと一緒にいた俺がわからないはずがないのだから。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-04-04 02:09:00
  • 613:

    ◆lZf.ArgVp2

    これが答えなのだ。

    川の水面には桜の花びらが一面に浮かび、舟が通った跡だけ、緑の線が残る。
    橋を渡るとき、そこに三人の男女が写る。美しい女と美しい男。そして切り取られたように一人みすぼらしい男が写る。もう何も見たくなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-04-04 02:14:00
  • 614:

    ◆lZf.ArgVp2

    川のせせらぎと春の陽気が水に反射して、なにもかもが輝かしかった。テルキチが買ってきた団子を頬張ると、それは確かに甘かった。

    それから過ごした半年間が、俺達の最後の時間となる。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-04-04 02:17:00
  • 615:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチが自分で部屋を借りる手筈になり、俺の家をでることとなった。
    仕事の都合で、ツヤコの父親が一時こちらに帰ってきた。その時ツヤコの父は、テルキチを手厚くもてなした。
    テルキチが元々こちらに戻ってきたのは仕事の為だったのだ。
    テルキチはこちらを出て、訪ねた遠縁の親戚もツヤコの父親と同じ呉服問屋を営んでいて、経験のあるテルキチは快く迎えられた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-04-04 02:24:00
  • 616:

    ◆lZf.ArgVp2

    それだけではなかった。テルキチが訪ねる僅か数ヶ月前に、跡継ぎとなる筈だった長男は病死していた。
    つまり、その呉服問屋は跡継ぎがいなかった。テルキチの親戚夫婦には他に子供はなく、勤勉なうえに才もあるテルキチを跡取りに迎えることにしたのである。
    テルキチは次期店主となるべく、以前働いていたこの辺りで一番の大店であるツヤコの父親の元で一から学び直したいと、ゆくゆくは提携も考えたいと、そのような心積もりで戻ってきたのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2009-04-04 02:32:00
  • 617:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコの父親はこの話を大層喜んだ。
    噂を鵜呑みにして、テルキチを追い出した事を随分と気に病んでいたらしい。
    すぐに話は進み、ツヤコの父親の呉服問屋で、店頭に立つテルキチの姿が見えるようになる。
    よく動き、客受けも良いテルキチは瞬く間に評判になった。
    テルキチを人目見たいが為に訪れる客も多く、店の前を通り掛かるといつも忙し気に走り回っていた。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-04-04 02:39:00
  • 618:

    ◆lZf.ArgVp2

    ツヤコに構っている時間がないテルキチに面白くないとツヤコはぶうたれていたが、だからといって俺達が二人で過ごすことはない。
    あれ程店を嫌って寄り付かなかった癖にツヤコは店に入り浸り、従業員に気を揉ませていた。
    テルキチの手が空くと、きまって自分の相手をさせているようで、お嬢のわがままにも困ると店の従業員が愚痴っていた。
    仕事の帰りに店に寄り、夜遅くまで帳簿の確認やらなんやらで追われるテルキチからツヤコを預かって家まで送る。
    そんなことがいつからか習慣になった。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-04-04 02:46:00
  • 619:

    ◆lZf.ArgVp2

    夕闇の中を歩く俺とツヤコに会話はない。
    いつの間にか番犬にでも成り下がってしまったのか。
    それともどんなに顔だけは笑顔を張り付かせようともその下の真っ黒な心に気付いているのか。
    ツヤコは心なしか足早に歩く。俺にはついていくだけで精一杯だ。
    ふとツヤコが足を止めた。

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-04-04 02:51:00
  • 620:

    ◆lZf.ArgVp2

    振り返ったツヤコの顔を見た時、俺は打ちのめされた。ツヤコにしてみたら、俺の足の事をつい忘れて考え事をしていたという位のもので、今それに気付いたのだろう。
    でもなんで。

    なんでツヤコお前が傷付いた顔をするのや?

    IP強制表示中:222.5.63.112
    2009-04-04 02:54:00
  • 621:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………ごめん」
    それだけ言うのがやっとやった。俺は足早に前を歩いてお前の手を引いてやることができん。お前と同じ歩調ですら歩いてやることが出来ん。
    すまん………ツヤコ。ごめんなあ。
    「ごめん。うちがごめん……ごめん。ごめんなさ…………」
    ツヤコがうわっと堰を切ったように泣き出した。大きな目から幾筋も幾筋も涙が零れて溢れる。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-04-04 03:01:00
  • 622:

    ◆lZf.ArgVp2

    少しずつ、少しずつ、何かが噛み合わなくなっていく。
    だけどどうしたら止まるのかわからない。

    こんなにも苦しいのに。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2009-04-04 03:03:00
  • 623:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>629-641

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-04-04 03:05:00
  • 624:

    名無しさん

    ありがとう!
    お疲れさま!

    IP強制表示中:219.125.145.5
    2009-04-05 01:22:00
  • 625:

    名無しさん

    もっと読みたい?

    IP強制表示中:124.146.174.34
    2009-04-05 12:09:00
  • 626:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>641 俺の世界は徐々に鮮やかさを失くしていく。
    それに反するかのように、ツヤコの姿はより一層美しく見えた。
    水を含んだ衣のように何かが俺に纏わりつく。一度心を病ませてしまえば腐らせるのはたやすくて、自分から腐臭が漂う気さえした。ただ、もがき苦しむよりかは遥かに楽で、俺の笑顔は動揺のない、より強固なものとなった。
    笑顔の仮面に安心したのか、ツヤコのよそよそしさも消える。取り繕った面の皮一枚の下にどんな俺がいるかもしらずに。

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-04-07 23:19:00
  • 627:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチはツヤコの父親の敷地の中の小さな蔵に住む事になった。テルキチが自分で部屋を借りると言うと、ツヤコの父親は自分の屋敷の離れを無償で貸すからと言い張ったが、テルキチはそれはできないと遠慮して、どうしても聞かない父親にこの使っていない蔵ならと渋々了解した。
    ほんの2、3日で蔵の掃除といくらか手直し程度の改築をテルキチと済ますと、ささやかだか引越し祝いをした。
    古い建物だが、綺麗に掃除すると元がいいものだけに一で暮らすには十分で、普通の家より透き間風もなく暖かいくらいだ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-04-07 23:28:00
  • 628:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチが店から持ち出した賄いの残りをつついていると
    「夏は絶対暑いやろなー」
    とテルキチは笑った。
    「離れ借りたらよかったのに、せっかくなんやから」
    その時、箸で確かに摘んだはずの煮物がボトリと落ちた。

    IP強制表示中:222.5.63.104
    2009-04-07 23:32:00
  • 629:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……そりゃまずいやろ…いくらなんでも」
    俺は落ちた油揚を箸で追いかけるのに夢中で半ば上の空で話を聞いていた。やっと捕まえたそれを口の前に持って来たところでテルキチと視線がぶつかる。
    「……ただでさえ、世話になってんのに」
    テルキチの視線は忙しく横切り斜めに落ちる。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-07 23:37:00
  • 630:

    ◆lZf.ArgVp2

    「……そんなもんかね」

    この油揚を煮付けたのは誰だろう。随分と料理がうまい。

    俺はぼんやりとそんな事を考えていた。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-04-07 23:39:00
  • 631:

    ◆lZf.ArgVp2

    季節は六月。
    青々と茂り出した新緑が雨に打たれている。湿気が多いこの時期は冬と同様に足がきつい。
    この日も雨だった。明日とても降り出すと思えない晴天に傘を持たずに仕事にでたのだ。
    今日は部品の配送に間違いがあり、仕事場にいてもやる事がなかった。加えてあまりの陽気な天気に皆やる気が失せてしまい早々に帰ってもよし、となった。
    気分良くでたものの、まだ家路を半分も行かぬ内に雷鳴がどおんととどろいた。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-07 23:47:00
  • 632:

    ◆lZf.ArgVp2

    雷様の太鼓とは良くいったもので、その音で一瞬、何かから覚めた心地になる。
    空を仰ぐと、いつの間にか薄暗く厚い雲が空を覆っていた。
    こんなに暗くなっていたのに気付かなかった事に背中がひやりとする。いつの間にやら人影も消えていて、不気味な世界にふいに踏み込んでしまったように感じた。

    大粒の雨が一斉に落ちて来て、俺の澱んだ全てを叩く。

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-04-07 23:53:00
  • 633:

    ◆lZf.ArgVp2

    絵に描いたような土砂降りに瞬く間に濡れ鼠になった。
    ここからテルキチの蔵まですぐ。
    俺は足を引きずりながら走った。
    走りたくなったのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-07 23:55:00
  • 634:

    ◆lZf.ArgVp2

    雨の音は大きく、他の音が聞こえぬ程だ。天から落ちる雨粒に地面が抉られるように、俺の心も抉ってはくれないだろうか。
    そして全ての膿を洗い流し、生まれ変われはしないだろうか。
    出来ないなら、このまま。

    このまま…………

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-04-08 00:00:00
  • 635:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチの住む蔵の周りは木々が生い茂っていて、蒸せ返るような雨と土と緑の香りが立ち込めていた。
    その時、どんっと一際大きな稲光がした。
    どこか近くに落ちたのだろうか、随分と音が近かった。
    ぽたぽた滴を垂らしながら肌に張り付く着物の裾を絞る。体温で暖まった生温い滴が石の階段に染みを作る。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-04-08 00:16:00
  • 636:

    ◆lZf.ArgVp2

    扉に手を掛けた俺の手は止まる。情けなくもれた声は、また光った雷に打ち消された。
    扉から漏れる甘い獣の声は何度も抱いた女の声で、俺はその場に凍り付く。
    絞り切れなかった生温い滴が肌を伝ったが、その感覚は滴が流れ落ちた後に鈍く纏わりついてくるだけ。
    「…………ツヤコっ」

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-04-08 00:21:00
  • 637:

    ◆lZf.ArgVp2

    掠れるように囁かれた声は果たして……………………

    俺の声だったか
    テルキチの声だったのか……………

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-04-08 00:23:00
  • 638:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>645-656

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-08 00:24:00
  • 639:

    名無しさん

    ドキドキします
    ずっと応援してますょ

    IP強制表示中:210.136.161.75
    2009-04-08 05:13:00
  • 640:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>656 それからどうやって家までたどり着いたかは記憶にない。

    俺は酷い風邪をひき、4、5日寝込んだ。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-04-11 02:02:00
  • 641:

    ◆lZf.ArgVp2

    怠い身体とは逆に頭ははっきりとしていた。久し振りに見る澄んだ視界は物の輪郭や色をいやにくっきりと映し、そんな中自分の存在は在るのか無いのか……。
    俺をのぞき込むツヤコは心配そうに俺を見つめている。
    「……大丈夫?」
    俺はなんだか笑ってしまった。
    「……昔もあったなこんな事………」

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-04-11 02:08:00
  • 642:

    ◆lZf.ArgVp2

    しゃがれた声を潤そうと唾を飲んだら喉が痛んだ。
    ツヤコは泣いているのようにも笑っているようにも見える表情で、大きな目を潤ませた。
    ツヤコの髪が顔にかかったかと思うと、次は唇と唇が触れた。
    「……あかん。………うつる。」
    ツヤコの手が頬に触れる。ひやりとした感触が熱に浮かされる肌に心地よい。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-04-11 02:14:00
  • 643:

    ◆lZf.ArgVp2

    「いいよ。うつしてはよ治してしまい。」
    再び合わせられた唇の感触に泣きたくなった。
    あの懐かしい幼い日から、俺もツヤコもテルキチもなんて遠くまできてしまったのだろう。
    また俺は眠ってしまったようで目を閉じる瞬間、ツヤコが部屋を出て行くのが見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-04-11 02:23:00
  • 644:

    ◆lZf.ArgVp2

    風邪が全快し、また日々は回り出す。
    ツヤコは俺の風邪がうつったのか少し咳込んだりしていた。そんな事が嬉しかった。
    ツヤコもテルキチもあの雨の日、俺に気付いていないかったのか以前と変わりなく俺に接した。

    俺もその事について何も言わなかった。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-11 02:27:00
  • 645:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>659ー663
    すいません?禁止ワードになってしまいます。今日は短くてすいませんがここまでです(;_;)

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-04-11 02:52:00
  • 646:

    名無しさん

    気になる?

    IP強制表示中:222.5.62.189
    2009-04-17 06:31:00
  • 647:

    名無しさん

    ?しおり?

    IP強制表示中:124.146.174.40
    2009-04-17 19:24:00
  • 648:

    名無しさん

    うふ(´∀`)

    IP強制表示中:124.146.174.36
    2009-04-20 06:11:00
  • 649:

    名無しさん

    あげ?

    IP強制表示中:124.146.174.46
    2009-04-20 16:46:00
  • 650:

    名無しさん

    オッサンまだかぁ?

    IP強制表示中:124.146.174.11
    2009-04-21 21:15:00
  • 651:

    ◆lZf.ArgVp2

    もうちょっと待って下さいね?明後日にはできると思うので

    IP強制表示中:222.5.63.102
    2009-04-22 03:23:00
  • 652:

    名無しさん

    楽しみ?

    IP強制表示中:222.5.62.184
    2009-04-22 04:08:00
  • 653:

    名無しさん

    更新されてる?

    IP強制表示中:222.5.62.189
    2009-04-25 03:51:00
  • 654:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なあ、お祭いかへん?」
    もうそんな季節だったろうか。祭りというのは近所の神社で毎年行われる小さなもので、小さいながらも出店が並び、ここいらの人間の夏の風物詩の一つだ。
    「………聞いてるん?」
    ツヤコは口を尖らせる。
    「……テルキチとはいかんのか?」

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-25 03:55:00
  • 655:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺がそういうとツヤコは益々口を尖らせた。
    「テルキチはいつもこおへんやん」
    ……そうやった。テルキチは子供の時から神輿の準備や、手伝いに引っ張りだこで、どうやら今年もそうらしい。
    「……ほな、いこか。」
    花が咲いたようにツヤコが笑った。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-04-25 03:59:00
  • 656:

    ◆lZf.ArgVp2

    テルキチが土地を離れる前も、祭りで忙しいテルキチと俺達が祭に行くことはなかった。
    いつもツヤコと二人。夏の明るい夕暮れの、祭ばやしが響く石畳を、まるで悪い事をしついるような、妙に胸がはやるのを隣りのツヤコに悟られないように歩いた。
    足のせいで神輿に参加出来なくとも気にならなかった。

    ツヤコを独り占めできるのが嬉しかったのだ。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-25 04:07:00
  • 657:

    ◆lZf.ArgVp2

    いつも三人一緒だった子供の頃。
    そんな事が俺の特別な時間だった。
    「……二人で出掛けんの…久々やな。」
    妙にしんみりとツヤコがいう。
    俺は聞こえなかったふりをした。

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-04-25 04:11:00
  • 658:

    ◆lZf.ArgVp2

    祭の日はよく晴れた。昔からどんなに雨続きでもこの日は必ずといって良い程、よい天気になる。
    祭の日は仕事中でも皆気はそぞろ。
    俺達みたいな安月給に大した娯楽なんてない。皆、祭を楽しみにしているのだ。
    案の定、いつもより随分とはやく家路に着ける事となり、帰り道を急ぐ。道をゆく人達皆、心なしか楽しげに見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-04-25 04:17:00
  • 659:

    ◆lZf.ArgVp2

    柄にもなく、よそ行きの着物なんかに着替えた自分に苦笑いしながら、ツヤコを待つ。
    日が暮れ始めると、意外に涼しいものだ。少し遠くで、賑やかな祭の音と行き交う人の声が聞こえた。
    しばらくすると、約束の時間に少し遅れて、ツヤコらしき人影が見える。俺の姿をみるといそいそと小走りしてきた。
    「ええよ、走らんで。あついやろ」
    そう行ってもそのまま足を止めることなく、近寄ってくると、ぜえぜえと肩で息をしながら、ツヤコが笑う。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-04-25 04:23:00
  • 660:

    ◆lZf.ArgVp2

    登場の仕方まで毎回同じだ。
    どうやら祭の日は、おめかしに時間がかかるらしい。
    白地に涼しげな雨のような模様の着物。髪も涼しげに結い上げて、ツヤコの凛とした雰囲気によく似合っていた。
    ツヤコはいつも派手というか絢爛豪華な柄を好むので、すうっとした今日の着物は新鮮で、思わず目を細めてしまった。
    「………テルキチの見立てやな。」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-25 04:30:00
  • 661:

    ◆lZf.ArgVp2

    …そう、渋好みのテルキチがいかにも好きそうな見立てだ。
    困ったような顔をして、ツヤコは浅くうなずいた。
    そっと握られてきた手をやんわりとほどく。
    「そろそろ、いこか」
    行き場を失くした自分の手をじっと見てから、ツヤコはまた浅くうなずいた。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-04-25 04:35:00
  • 662:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺とツヤコは無言のまま歩いた。だんだんと近付いて来る祭ばやしと砂利道を歩く足跡だけが響いた。
    はやく人通りで賑わう場所に行きたい。
    俺は自分の中では随分と急ぎ目の歩調で歩く。

    ツヤコ……頼むから、これ以上俺を翻弄しないでくれ。

    IP強制表示中:222.5.63.111
    2009-04-25 04:44:00
  • 663:

    ◆lZf.ArgVp2

    物心ついた頃から見守り続け、やっとこの手に抱いたと思えば、また遠くに行ってしまう。
    今引き返す事が出来れば、俺はまだ人でいられる。
    また隣りで幼馴染みとして、ツヤコを見守っていけるのだ。
    横目にちらりと見えるツヤコは傷付いた表情すら、どこか気品があってその表情だけで俺の心に揺さぶりをかける。
    本当は差し出された手を握りたくても。それでも。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-25 04:51:00
  • 664:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺は一層歩調を早めた。
    息があがって額に汗が浮かんでも、そんな事がなんだ。


    祭ばやしはもうすぐそこまできていた。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-04-25 04:54:00
  • 665:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>672-684

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-25 04:55:00
  • 666:

    名無しさん

    ?しおり?

    IP強制表示中:210.136.161.65
    2009-04-25 13:54:00
  • 667:

    名無しさん

    (・∀・)

    IP強制表示中:124.146.174.69
    2009-04-26 14:11:00
  • 668:

    妊婦

    一気に更新分読みました!!
    頭の中でどんどん映画化されてます(。・ω・。)
    育児に慣れてやっと見る時間ができました♪
    今腕の中で寝てる娘の姿は、なんとも言えないくらい幸せな気持ちにさせてくれてます(´д`)

    私の周りも結婚、妊娠ラッシュですよ★
    ちなみに今年23です★
    同い年くらいですか?(・∀・)

    オススメ小説も読んでみたくなりました♪
    よくある携帯小説は苦手なんですけど、ここは大好きです♪

    IP強制表示中:124.146.174.2
    2009-04-28 23:08:00
  • 669:

    名無しさん

    感想スレに書きませんか?

    IP強制表示中:124.146.174.11
    2009-04-29 02:41:00
  • 670:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>684 提灯や裸電球の明かりで色付いた境内。祭に浮かれた男達。めかしこんでヒラヒラと金魚のような女達。
    「あっ冷やし飴!」
    俺はこれがどうにも苦手で、なんでこんなものを旨いと思うのかしれないが、ツヤコが昔から最初に買うのはこれだ。
    「……買うたろ」
    ギクシャクした二人の空気も祭のはしゃいだ雰囲気で、またなんとなく何もなかったよう和らぎだす。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-04-29 03:08:00
  • 671:

    名無しさん

    面白くないっていうか不愉快極まりない

    IP強制表示中:124.146.174.49
    2009-04-29 03:14:00
  • 672:

    ◆lZf.ArgVp2

    こんなものくらい自分で買えるだろうが、こんなものくらい買ってやりたい。
    たかだか冷やし飴で、子供のようにツヤコが無邪気に笑う。つん…と胸の辺りが痛くなった。ツヤコが笑うと嬉しい。いつだって俺は。
    奉納の舞が始まったらしく、静まりだした本殿からしゃんしゃんと鈴の音が聞こえだす。
    「見に行くか?」

    IP強制表示中:222.5.63.108
    2009-04-29 03:15:00
  • 673:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………いいわ。」
    毎年の事ながらツヤコはこう答える。もうすぐ神輿がくる。
    子供の頃から、この階段へ続く道から神輿をみる。神輿を担ぐ男衆の中からテルキチの姿を探すのだ。
    だいたい俺が先にテルキチを見つける。ツヤコは背伸びをして、テルキチがどこにいるかわからないと半べそになった。
    今年も神輿の掛け声がだんだんと近付いてくる。久し振りに祭に参加するテルキチと共に。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-29 03:25:00
  • 674:

    ◆lZf.ArgVp2

    神輿の姿が現れると、見物人から歓声があがる。祭は熱気を帯びてゆき、夏の空に放熱されてる。
    「どっちが先に見つけるか競争しよか」
    返事はない。かわりに俺の手をぐいと掴み、力一杯引っ張って歩く。
    「……ツヤコ?」
    その手は、夏だというのにひんやりとしていた。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-04-29 03:30:00
  • 675:

    ◆lZf.ArgVp2

    だんだんと祭りの熱気が遠のいていく。提灯の明かりに慣れた目に裏道はくらい。
    今が正に盛り上がり時の神社の裏に当然ながら人気はなかった。
    「……どこいくねん。なあ…ツヤコ?!」
    振り返ったツヤコは祭で買った狐の面をつけていて、やっとこさ慣れてきた目に浮かびあがって見えた。

    IP強制表示中:222.5.63.105
    2009-04-29 03:37:00
  • 676:

    ◆lZf.ArgVp2

    ちょうど月に薄くかかっていた雲が流れていき、青白く照らされるツヤコにぞくりとする。早い歩調で歩いてきた為、汗ばんでいた筈なのにすうっと背中が冷たくなった。

    怪しく光ったように見えるツヤコはまるでもののけか何かのようで。
    「…………ツヤコ?」

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-29 03:44:00
  • 677:

    ◆lZf.ArgVp2

    これは本当にツヤコなんだろうか。そんな馬鹿な事を考えてツヤコの名前をよんでみる。
    何も答えないまま、さらにうっそうと木が茂る方へと俺の手を引く。
    心細い気持ちになったものの、逆らえず、ただ引かれるままに足を進めた。
    遠くで響く歓声や太鼓の音に、より一層心細くなりながら。

    IP強制表示中:222.5.63.114
    2009-04-29 03:50:00
  • 678:

    ◆lZf.ArgVp2

    「なあ………」
    急に歩みを止めたツヤコがようやく口を開いた。その声を聞いて、ようやくごくりと唾を飲み込む。
    「…なんやねん……そのお面。いい加減………」
    ツヤコがゆっくりとおれに近付く。狐の面のせいで一体どんな顔をしているのかわからない。
    「……なあ…あたしに触りたかった?」

    IP強制表示中:222.5.63.107
    2009-04-29 04:00:00
  • 679:

    ◆lZf.ArgVp2

    なぜ、こんなに今日のツヤコの手は冷たいのだろう。俺の髪をかきあげる手。ゆっくり辿るように次は頬を撫でる。
    「……もお……やめんとあかん。こんなことは……!」
    言い聞かせたのは自分へだ。
    「……どおなんか聞いてるん」
    今度は首に回されるもう一方の手。その手もやはり冷たかった。

    IP強制表示中:222.5.63.103
    2009-04-29 04:05:00
  • 680:

    ◆lZf.ArgVp2

    にじりよってくるツヤコを突き放すことは容易いはずなのに、俺は動けないでいた。
    月にまた、雲がかかる。また、流れる。
    俺はただ小刻みに震えた。
    ツヤコの両手が俺の頬を包む。その時にはツヤコの手は体温を取り戻していて、俺はやっとこさ、口を開く。

    IP強制表示中:222.5.63.101
    2009-04-29 04:17:00
  • 681:

    ◆lZf.ArgVp2

    「お前は……俺なんか手の届かんお嬢さんで………こんなこと……許されることとちゃう………!」
    「そんな事はどおでもいいねん!」
    ツヤコの怒声が鼓膜に響く。
    「…………俺にどうしろっていうねん………………」
    ゆっくりあとずさる。ゆっくりツヤコがそれを追う。

    IP強制表示中:222.5.63.113
    2009-04-29 04:21:00
  • 682:

    ◆lZf.ArgVp2

    「俺に……俺みたいな男に………」
    情けなくも涙声になった。声の末尾はかすれて消えた。
    「うちは……あんたとテルキチ以外なんも欲しいと思ったことない」
    ついに俺の背中は木の幹にぶつかり、逃げ場を失った俺はその場にへたりこんだ。
    一度でた涙はとまらない。顔を両手で隠すのが俺の精一杯の抵抗やった。

    IP強制表示中:222.5.63.106
    2009-04-29 04:27:00
  • 683:

    ◆lZf.ArgVp2

    「うちはな、お父さんの店に並ぶ売り物のひとつでしかないねん。」
    伏せた顔を覆った手にツヤコの指が触れる。硬く閉ざした指の間にゆっくりと自分の指先をねじ込んでくる。
    「……お面かしたげるから……な。」
    狐の面の下にはいつものツヤコの顔があって、俺は少し安心する。ツヤコの目も赤かった。
    渋々、狐の面を被る。狐の細く切り抜かれた目の穴から、ツヤコの顔が見える。

    IP強制表示中:222.5.63.100
    2009-04-29 04:36:00
  • 684:

    ◆lZf.ArgVp2



    「二人のうち、どっちがうちを連れ出してくれんのん?」

    IP強制表示中:222.5.63.110
    2009-04-29 04:37:00
  • 685:

    名無しさん

    やかましい

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:40:00
  • 686:

    名無しさん

    いんで

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:41:00
  • 687:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:42:00
  • 688:

    ◆lZf.ArgVp2

    俺の目からまた涙が溢れた。

    しゃくりあげながら、「触れてもいいか」と尋ねると、ツヤコの方から抱き付いてきた。上がりゆく体温に理性はすぐに蒸発して消えた。
    泣きながら、ツヤコを抱いた。
    また、もとのもくあみ………だ。

    IP強制表示中:222.5.63.109
    2009-04-29 04:43:00
  • 689:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:43:00
  • 690:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:44:00
  • 691:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:44:00
  • 692:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:44:00
  • 693:

    名無しさん

    あたま大丈夫?

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:45:00
  • 694:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:45:00
  • 695:

    ◆lZf.ArgVp2

    更新分>>690-708

    >>688さん 感想スレを作って頂いたので、そちらにコメントしておきます☆
    >>691さん どこが不快に感じたのか感想スレに書いて頂ければ嬉しいです。参考にしたいです。

    IP強制表示中:222.5.63.99
    2009-04-29 04:48:00
  • 696:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.16
    2009-04-29 04:49:00
  • 697:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:52:00
  • 698:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:55:00
  • 699:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:57:00
  • 700:

    名無しさん

    あ、

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:57:00
  • 701:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:57:00
  • 702:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:58:00
  • 703:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:58:00
  • 704:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:58:00
  • 705:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:58:00
  • 706:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:59:00
  • 707:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:59:00
  • 708:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:59:00
  • 709:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 04:59:00
  • 710:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:00:00
  • 711:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:00:00
  • 712:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:00:00
  • 713:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:01:00
  • 714:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:01:00
  • 715:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:01:00
  • 716:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:03:00
  • 717:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:03:00
  • 718:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:03:00
  • 719:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:03:00
  • 720:

    名無しさん

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  • 721:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:04:00
  • 722:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:04:00
  • 723:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:04:00
  • 724:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:05:00
  • 725:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:05:00
  • 726:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:05:00
  • 727:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:06:00
  • 728:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:06:00
  • 729:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:06:00
  • 730:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:06:00
  • 731:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:06:00
  • 732:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:07:00
  • 733:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:07:00
  • 734:

    名無しさん

    IP強制表示中:124.146.174.15
    2009-04-29 05:07:00
  • 735:

    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

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    名無しさん

    ああああああああああああああ

    IP強制表示中:122.145.44.212
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    名無しさん

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