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悔やみきれない
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1:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺には恋愛というモノがよく解らなかった。
「好き」という感情も。
女に対して全くってくらい興味がなかった。
俺が16の時ホストの世界に足を踏み入れたのは
別にそこまで深い意味はなかった。
ただ酒が好きで、飲んで金がもらえる。
それでよかった。自分次第で収入も膨らむ。2005-10-28 13:36:00 -
2:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
そんな俺に衝撃を与えた由里との出会い。そして別れ。
俺が初めて愛した女。
今のところ愛した女は最初で最後だろう。
言い尽くせないくらい感謝をしてる。
そして悔やんでいる。
もう二度と逢えないお前が未だ俺の心を縛る。2005-10-28 13:40:00 -
3:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
当時俺は18歳。ホストを始めて約2年。
culb Lion Heart。
7階建てのビルの7階にあるホストクラブ。
俺は当時その店で不動のNO1だった。
別に色恋や枕をした覚えは一度もない。
演技をしたりもしない。
ただ俺は俺のまま、キャラを偽る事もなく酒を浴びる毎日。2005-10-28 13:43:00 -
4:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
客に店の外で会うようにせがまれる事も少なくはなかった。
でも客と店の外で会った事など一度もない。
ただ 「そんなのめんどくさい」 それが本音だった。
客にキスや関係を持つ事もよくせがまれた。
だけど一度も客にそんな事をしなかった。
どんなに金を積まれても嫌だと思っていた。
そんな俺の煮え切らない態度に客は面白い程に俺に金を落としていった。2005-10-28 13:49:00 -
5:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
6月末のある日、1つ年上の先輩でもあり、同じ店のNO2の光輝に一緒にキャッチに出ようと誘われた。
NO入りしているメンバーがキャッチに出る事は滅多にない。
俺もキャッチはそんなに好きではない。
でも店が暇だったし、煙草が切れていたのもあってとりあえず一緒に外へ出る事にした。
外へ出るなり光輝は
「お前に紹介したい子がおるねん」と言う。2005-10-28 13:56:00 -
6:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は(そんなの聞いてない)と思いながらも、(まぁどうでもいっか)っと気持ちを切り替えて
その子と待ち合わせしてると言うコンビニまで一緒に行く事にした。
聞くには光輝の彼女の連れが、「カッコいい男を紹介しろ」 という話で
光輝は俺を選んだらしい。
10分くらいふたりで待っていると、いきなり黒のライフがコンビニの真ん前に横付けしてきた。2005-10-28 14:00:00 -
7:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
別に俺は全く興味がなかった。由里は誰が見てもかわいいと口を揃える程の美人だけど
俺にとったら女なんて別にみんな一緒だった。
彼女だって要らない。作る余裕すらない。
光輝が車から出てきた由里に
「由里ちゃん、こいつ由里ちゃんのリクエスト通りやろ?」と
誇らしそうに言ってた。2005-10-28 14:10:00 -
8:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は(リクエストって何だ?)と思いつつも口には出さなかった。
由里はその時かなり酔っぱらってたみたいだった。
「うーん…確かに綺麗な顔はしてるけど…」
そこで由里は口を閉ざした。
(なんだこの女。その続きを言えよ。)内心俺は腹を立てていた。
由里はそのまま一人で千鳥足でコンビニに入って行った。2005-10-28 14:13:00 -
9:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
残された俺と光輝と絵梨佳は3人で駐車場で他愛もない話をしてた。
絵梨佳に
「由里、かわいいでしょ?今日いろいろあったみたいでさ、なんかすっごい荒れてるけど、普段はすごく優しくて気も利くしいい子だよ^^」
と言われた。
(だからどーした)それが本音だった。
「そーなんだ。」と返すのが精一杯だった。
そんな話の途中で由里がコンビニから戻って来た。2005-10-28 14:18:00 -
10:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
腕を振り上げて、手には500mlの缶ビール。
「ビール9本目いきまーす!!」
すごいテンションだ…ただの酔っぱらいか。
俺は少し呆れていた。ビールを一気に飲み干している。
「なまえなんていうのー?」
呂律の回ってない口調でそう聞かれた。2005-10-28 14:21:00 -
11:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃。」
「たかあきくんかぁ!あたしはねー由里っていうのー。よろしくー」
それが俺と由里が交わした初めての言葉だった。
その時はほんとにどうでもよかった。早く店に戻りたかった。
「お前らとりあえず携帯の番号くらい交換してみればー?」
光輝の提案にとりあえず頷いて、番号を交換してから別れた。2005-10-28 14:24:00 -
12:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
店に光輝とふたりで歩いて戻っている途中に携帯が鳴った。
ディスプレイを見るとさっきまで一緒に居た由里からだった。
(なんだいきなり…)俺は内心ビックリした。
さっきまで話していたのに何故次は電話がかかってくるんだろう。
「はい」 不機嫌そうな声で俺は電話に出た。
「あ!貴晃くんー?今度一緒に遊びにいこうねー♪じゃー!」
プツッ ツーツー
一方的に電話が切れた。2005-10-28 14:28:00 -
13:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
次の日、仕事に行く前に俺の携帯が鳴った。由里からだ。
「あ!貴晃くん昨日は酔っぱらっちゃっててごめんね…というかメアド教えてくれないかな。あたし電話よりメールの方が好きなんだー」
そう普通のトーンで言われて昨日とのテンションの違いに少し驚いた。
だけど俺は今から仕事だし、メアドを口でいちいち教える時間などなかった。
「ごめん。明日かけ直す!今忙しいから。」
そう言って速球に電話を切った。2005-10-28 14:38:00 -
14:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
当時俺は8月から自分の店を持つ事が決まっていて、準備もあったし本当に忙しかった。
由里に構っている暇なんてほんとになかった。
客にさえメールや電話を疎かにしていた。
次の日の夕方に昨日由里に電話をかけ直す約束をかろうじて思い出して電話をかけてみた。
由里はすぐに電話に出た。
「ほんとにかけてくれたんだー!」と言って少し驚いていた。2005-10-28 14:42:00 -
15:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
電話で俺のメールアドレスを教えた。
「じゃーすぐメールしてみる!」そう言われて電話を切った。
それからすぐにメールが来た。
「由里でっす☆ちゃんと送れるかな??メアド登録しといてください♪」
「メール来たよ。登録しとく。」
俺はそっけない返事をして、その後はメールを返さなかった。
それから約1か月間由里からちょくちょくメールが来るようになった。2005-10-28 14:46:00 -
16:
名無しさん
続きが?めっちゃ気になる??楽しみに待ってますね?
2005-10-29 01:31:00 -
17:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
名無しさんありがとうございます^^頑張ります。
2005-10-29 22:20:00 -
18:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ある日いつも通りに由里からメールが来た。
「あたしもさ、夜の仕事始めようと思ってるの。」
俺はメールを見て少しだけ動揺をした。
上手く言えないけど、由里にはあまり夜の世界に浸かってほしくなかった。
俺の心境を悟られない為にも
「なんで?」と何時も通りそっけなく返事を返した。2005-10-29 22:26:00 -
19:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「お金がないから…。友達が紹介してくれるからお店ももう決まってるよ^^」
俺は内心(どうして昼のバイトはしてるのにお金がないのか)とか(どこ店だろう?)とか
疑問を抱いた。でも口にはしたくなかった。
「じゃー今度飲みに行ったるわ。」
そう返事をするのが精一杯だった。
「うん^^あたしも貴晃くんのお店今度飲みに行くね♪」
何故か俺の心は複雑だった。2005-10-29 22:31:00 -
20:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
それから1週間後の7月の始め。由里の初出勤の日だった。
俺はどこかでその事を気にかけながらも仕事へ行く準備をしていた。
すると携帯が鳴った。由里からメールだった。
「今仕事中だよ。仕事思ったよりすごく楽しいし頑張る♪今日仕事終わってから貴晃くんのお店行ってもいい?」
そんな感じの内容だった。
その日俺は8月に出す店の準備の仕事があった為、今の店へ出勤出来るかは解らなかった。2005-10-29 22:45:00 -
21:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
だから「ごめん今日は微妙や↓また今度でもかまん?」そう返事をした。
由里は客が被ったのだと思ったらしく(由里はこの時俺が8月に店を出す事を知らなかった)
「うん。解った^^お互い仕事頑張ろ!」と来た。
(結構物分かりのいい女だな)少し由里を見直した。
第一印象では気が強そうで自己中そうなイメージしかなかったから。2005-10-29 22:49:00 -
22:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はその日夜9時頃からミーティング等の仕事をして、夜中1時になんとか店にも出勤をする事が出来た。
俺が出勤した時には店内には客はまだ一人も居なかった。
出勤して20分くらい経った頃、ようやく店のドアが開いた。
「いらっしゃいませー!! ……?!」
俺はドアの方を見てすごく驚いた。由里が来たからだ。2005-10-29 22:54:00 -
23:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃんやん!え…なんで来たん…?!」
思わずそう言葉が出た。由里もかなり驚いていた。
「いや外歩いてたら変な酔っぱらいに絡まれたから怖くなって…やっぱ来ちゃ迷惑だった…?貴晃くんに今日は無理って言われたのにごめんね。」
俯いて戸惑いながらそう話す由里が前逢った時とは別人に思えた。
「でもお店全然忙しそうじゃないし、やっぱり私と会うのがだるいから今日無理って言ったの…?」
不安そうに俺に尋ねてくる。2005-10-29 22:58:00 -
24:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「いや違うで??今日他の仕事も入ってたからこの店に出勤出来るかどうか解らんかってん!まぁとりあえず座りや。」
そう言って席まで案内をした。
「そうだったんだ…。なーんだよかった^^」
ホッとしたように微笑む由里が何故かすごく可愛く見えた。
(なんか俺変かも…)
今まで女に対して可愛いとか思った事が全くと言っていいほどになかったからだ。2005-10-29 23:06:00 -
25:
名無しさん
以前?レス?した?の物です?ゆっくり?でイィんで完結まで頑張って下さいね?応援してます?
2005-11-01 23:41:00 -
26:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
またレスありがとうございます^^
忙しいのでゆっくりですが頑張って更新していきます!!
ほんとに励まされますm(_ _)m2005-11-03 01:46:00 -
27:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日は由里と他愛もない話を2時間くらいしていた。
由里はボトル等は卸さずにカクテルをゆっくり飲んでいたので、俺もペースを合わせて同じものを飲んでいた。
「財布何使ってるの?」と聞かれたので
「今はグッチ」と答えたりそんな普通の話ばかりだったと思う。2005-11-03 01:48:00 -
28:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あたしは最近この財布使ってる^^貴晃くんグッチ好きなの?」
シャネルの新作の財布を見せながら由里がそう訪ねてくる。
「いやこの財布は貰い物で次はヴィトンのダミエの財布買おうと思ってる」
別にやましい気持ちなどなく、俺は素でそう答えた。2005-11-03 01:51:00 -
29:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
少し経ってから客が被ってきた事もあって、俺は
「そろそろ他の席にも着かないといけない」と由里に言った。
そしたら「あたしも友達待たせてるからもう行かなきゃ。じゃぁチェックして^^」
と言われた。言われるままにチェックを済ませて送りに出た。2005-11-03 01:54:00 -
30:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
7Fから1Fまでのエレベーターの中で突然由里が
「キスしてもいい?」と少し照れながら言ってきた。
俺はその時決して嫌ではなかったが少し戸惑った。
客にはキスさえした事はない。でも由里は決して客だとは思わない。
「嫌…?」淋しそうにそう聞かれて思わず
「嫌じゃないよ」と答えていた。2005-11-03 01:56:00 -
31:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
次の瞬間、少し唇が重なり合った。
突然で俺は目を閉じるのも忘れた。一瞬だった。
(なんだか由里のペースに巻き込まれている) そう感じた。
でも悟られないようにその後も平然を装って下まで送り出した。
由里は笑顔で手を振りながら帰って行った。2005-11-03 01:59:00 -
32:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
気を取り直してその後仕事に戻った。
明け方に仕事が終わってふと思った。
(もし由里が俺とキスした事を誰かに言ったとして客の耳に入ればまずいかもしれない)
そう思って俺は由里に電話をかけた。2005-11-03 02:02:00 -
33:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は寝ていたのか寝起きの声で電話に出た。
「俺とキスした事誰にも言わんといてな」そう言ったら
「そんなに嫌だった?」と聞かれた。
「違うって!俺客とは絶対そういうのせんから、もし客の耳に入ってなんであたしにはしてくれんの?ってなったら困るから…」2005-11-03 02:05:00 -
34:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「そっか…解った^^というかそんなの誰にも言う人おらんもんー!笑」
少し複雑そうな淋しそうな声で笑いながら由里はそう答えた。
(惑わされたくない…俺らしくない…)
俺もなんだか上手く表現出来ないけれど複雑だった。2005-11-03 02:08:00 -
35:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
それから3日くらい経った日。由里からメールが来た。
「貴晃くんに渡したい物があるから仕事の帰りにまたお店まで行ってもいい?」
(渡したいものってなんだ…?)
俺は不思議に思った。
とっさに電話をかけてみた。2005-11-03 02:12:00 -
36:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺「渡したいものってなにー?!」
由「それは見てからのお楽しみかなー?笑」
俺「気になるわー…じゃー今日待っとくから仕事終わったらまた連絡して」
由「解ったー!」
それからまた約2時間後に由里から連絡が来た。2005-11-03 02:14:00 -
37:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由「仕事終わったから今から行くね!」
約10分後店のドアが開く。
俺は少しドキドキしていた。渡したい物ってほんとになんだろう…
「おつかれー^^」
笑顔で由里が俺の所へ来た。2005-11-11 02:58:00 -
38:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
持っているのはいつものシャネルのバックにヴィトンの小さめの紙袋。
俺は自然とヴィトンの袋に目が行った。
(こいつもう客に何か買ってもらったのか…?まだ夜の仕事始めて間もないはずなのに…)
無意識にそんな事を思った。
「これなーんだ?^^」2005-11-11 03:00:00 -
39:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里はその袋を持ち上げて俺に見せびらかす。
「え…なんやろわからん…買ってもらったん?」
「違うよー!あ!じゃぁ中身当てたら貴晃くんにあげるー^^」
(もしかして渡したい物ってこれ?!)
俺はビックリした。由里からいきなりのプレゼント。2005-11-11 03:03:00 -
40:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「え…ほんとにわからんわぁ…!」
「貴晃くん、前に欲しいって言ってたじゃん。」
(前…?あぁもしかして財布かな?!)
ほんとに唖然とした。さりげなく言った俺の言葉を覚えていただけじゃなく
まだ出逢って間もない俺に何の理由もなくプレゼントを持ってきた由里に。2005-11-11 03:05:00 -
41:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「じゃぁあたしアフターあるから^^今日はゆっくり出来なくてごめんね」
そう言って由里はすぐに店から出て行った。
俺もエレベーターに乗って1Fまで見送った。
由里が帰ったあと、店の裏で中身を見た。
(やっぱり財布だ…しかも俺が一番欲しかったやつ…)2005-11-11 03:09:00 -
42:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか急にすごく嬉しくなって由里にメールを送った。
「ほんとにありがとう!大切に使うから!っていうかもう使ってるし♪」
由里からすぐに返信が来た。
「気に入ってくれたならよかった^^大切に使ってね。お仕事頑張って!!」
(なんかほんとにいい子だな) 俺はそう素直に思ってしまった。2005-11-11 03:12:00 -
43:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その一週間後にまた由里が店へ来た。
俺のLion Heartでの最後の出勤の日だった。
たくさん俺の客も来てくれていた。
由里はその日も仕事帰りで、浴衣を着ていた。
(なんか由里は何着ても似合うな…)不覚にも俺は少し見とれてしまった。2005-11-11 03:16:00 -
44:
名無しさん
久々に覗いたら?更新されてるし(≧▽≦)
また次の更新を楽しみにしてま〜す?2005-11-14 01:49:00 -
46:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日は客が被りまくりで
忙しい合間を縫って由里の席に着けるのはほんのわずかだった。
それでも由里は文句ひとつ言わずにヘルプと楽しそうに話している。
俺が席に着くとヘルプは気を利かせて席を外した。2005-11-14 02:19:00 -
47:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃん浴衣もホンマ似合うやん!!」
普段ほとんど女の人を褒めたりしない俺なのに自然と口に出てしまった。
「ほんとにー?!今年は赤い浴衣買ったんだ^^」
いつも通りの普通の会話。2005-11-14 02:21:00 -
48:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「今日忙しそうだけど、何かあるの?」
不思議そうに聞かれたので少し驚いた。
(そう言えば今日俺がこの店での出勤が最後って事を由里には言ってないっけ…)
「俺ここでの出勤最後やねん。あさってから自分の店で仕事やぁ!」2005-11-14 02:23:00 -
49:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あ!そっかぁ!もう8月だもんね。また貴晃くんのお店にも絶対顔出すからね♪」
「うん。有り難う。楽しみに待ってる!」
そんな話をしていると、NO2の光輝に耳打ちをされた。
「お前由里ちゃんと上手く行ってんの?というかRちゃん(俺の客)が貴晃が全然着いてくれないってスネてんぞ…」2005-11-14 02:28:00 -
50:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
仕方なく俺はまた違う席へ向かった。
俺の最後の出勤を祝っていろんな席からシャンパンコールが鳴りやまない。
由里はいつも通りにカクテルだけをマイペースに飲んでいた。
2時間経って由里がチェックをし出したので
また由里の所へ戻った。2005-11-14 02:31:00 -
51:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「ほんと来てくれてありがと!また連絡する!」
いつも通り1Fまでエレベーターに乗って由里を見送った。
なんだか俺は由里の事を客の一人として見てしまいそうな気がしていた。
でもただの客ではない。なんか気になる女。2005-11-14 02:33:00 -
52:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その2日後。俺の店「WISH」のオープンの日だった。
オープンを祝って俺の前の店での馴染みの客もたくさん駆けつけてくれた。
俺は心のどこかで由里が来てくれる事を祈っていた。
うまく言えないけど、由里に誰より祝って欲しいと秘かに思っていた。
だけど由里の姿が現れない。2005-11-14 02:38:00 -
53:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は少し落胆して裏口で由里にこっそり電話をかけてみる事にした。
「はい…」
眠そうな如何にも寝起きの声で由里が電話に出る。
「今日俺の店オープンしたよ。」
ほんとは「来て欲しい」と言いたかったけど
由里には営業だと思われたくないからそれだけ伝えた。2005-11-14 02:41:00 -
54:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あ!そっかぁ!今日オープンの日だよね!おめでとう!!また行くから。」
(オープンの日忘れてたんや…)
自分勝手だけど少しショックだった。
でも由里の口から「おめでとう」って言葉を聞けて誰に言われるよりも嬉しかった。2005-11-14 02:43:00 -
55:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その次の日。連絡もなくオープンの時間と同時に突然由里が店へ来た。絵梨佳と一緒だった。
店のドアが開いた瞬間に俺は由里が来た事にビックリして、そして嬉しかった。
「由里ちゃん来てくれたんや!!」
「うん。ちゃんとお祝いしないとね!!^^」
なんだか由里が来てくれただけで充分嬉しかった。2005-11-14 03:05:00 -
56:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里と絵梨佳を席に案内する。
「キレイなお店だね^^準備とかホント大変だったでしょ?お疲れ様。代表なんだからいろいろ苦労すると思うけど頑張ってね??」
由里にそう言われて思わず
「ありがとう」と俺は笑顔になった。2005-11-21 09:39:00 -
57:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺の店WISHのオープン時の従業員はみんな俺がスカウトで集めた奴ばかりだった。
もちろんホストという仕事が初めてな奴も居た。
俺は当時一緒に同居していた親友の優也もスカウトをした。
優也は迷わずにオッケーしてくれた。
そんな優也と由里は今日が初対面だった。2005-11-21 09:45:00 -
58:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃん。紹介する。こいつ今俺と一緒に住んでる親友の優也。」
「初めまして^^由里です。優也くん?よろしくね。」
俺は何故か解らないけど、由里にも優也と仲良くなって欲しかった。
由里が愛想よく挨拶したにも関わらず、優也は無言で真顔のままだった。
由里の事を真っ直ぐに見ている。2005-11-21 09:48:00 -
59:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は少し驚いて
「おい!優也…?何ボーっとしてんだよ!」とつっこんでいた。
優也は我に返って
「あ!優也です…よろしく…」
と小さな声で言った。2005-11-21 09:50:00 -
60:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也は言っちゃ悪いが女癖が悪い方で、軽い男だ。
女好きだし、人見知りもしない。誰とでもすぐに仲良くなれる。
なのにその優也が恥ずかしそうにしている…
すごく驚いた。由里と絵梨佳は不思議そうに俺達を見て首を傾げていた。
「なんかテンション低いよー?!せっかく来たんだから楽しませてよー?」2005-11-21 09:53:00 -
62:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
絵梨佳にそう言われて
「そうだよ楽しもうね♪あたしドンペリ飲みたいー!お祝いもしたいし^^」
由里が俺達に向かって笑顔で言う。
(え…?!いきなりドンペリ?!マジで言ってんの…?)
俺は驚きの連続でなんだか戸惑うばかりだった。2005-11-21 09:56:00 -
63:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
とりあえず「じゃぁドンペリ何色がいい…?」と
恐る恐る聞いてみる。
「もちろんゴールドで!!」
由里が目を大きく見開いて笑顔で言う。
(は?!マジで…?!由里そんな金あんのか?!こないだ俺に財布買ってくれたばっかなのに…)2005-11-21 09:59:00 -
64:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「いやそんな無理しなくていーって!!」
俺は何故か焦っていた。普段の俺なら喜んで笑顔で「ありがとうございます」って言うけど…
由里に無理をして欲しくないって思っていた。
この時点でもう俺は既に由里に惹かれていたんだろう。
「全然無理なんてしてないから!!ゴールド飲んでみたいだけだもん♪」2005-11-21 10:02:00 -
65:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は半ば強制的だった。俺はすごく嬉しかったけれど同時に複雑だった。
その時は(由里ちゃんと金払えんのかな…?)っていう不安もあった。
「3番テーブル!由里ちゃん&絵梨佳ちゃんからドンペリゴールド頂きましたあああ!」
「あざーす!!!」
従業員全員の元気な声が店に響く。2005-11-21 10:09:00 -
66:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はとりあえず焦りを隠して代表としての威厳を保とうと必死だった。
従業員全員でのシャンパンコール。
由里と絵梨佳は初めてシャンパンコールを聞いたみたいで
とても楽しそうに満面の笑顔だった。
優也は相変わらずなんだか様子がおかしかった。2005-11-21 10:14:00 -
67:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
シャンパンコールが終わって従業員達は俺が仕込んだ得意のおねだり。
「姫様方、俺シャンパンが飲み足りないっすー♪」
俺は内心イライラしていた。(由里に営業かけんな)って心の中で従業員に叫んでいた。
でも俺が教えた事だ…そんな事口にすれば変に思われるのは解っている。
由里は素直というか純粋というか…2005-11-23 12:04:00 -
68:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「え?まだ飲みたいの??じゃぁもう1本いっとく?^^」
従業員に向かって笑顔で言う。
もう俺は唖然とするしかなかった。
1本30万のシャンパンを「もう1本」とサラッと言ってのけた由里に。
由里は今、ただのホステスに過ぎない。普通のラウンジで働いている。2005-11-23 12:06:00 -
69:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ましてやこの間まで普通の昼職だったのに。
30万とかきっとホステスの1か月分の給料くらいだ。
1か月毎日夜働いてやっと稼げる額だろう。
結局由里はこの日ドンペリのゴールドを3本も卸した。
俺はただただ圧倒されていた。会計102万円。2005-11-23 12:12:00 -
71:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
会計は全額由里が支払っていた。
(ほんとに払えるのか…?)そんな俺の不安が吹き飛ぶほど
由里のバッグの中からは数え切れない程の札束が出て来た。
俺の見えた限りでは100万の束があと6束ほどはあった。
(なんでそんなに金持ってんだよ…?!)2005-11-23 12:16:00 -
72:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
不思議で不思議で仕方がなかった。
(そんだけ金あるなら働く必要ないじゃん…贅沢しなければ暫く遊んで暮らせるのに…)
俺らしくないけど理由が気になって仕方なかった。
他人に滅多に興味を抱かない筈の俺は見事に由里に興味を抱いていた。
由里と絵梨佳を見送りに出した後、優也を店の裏に呼んだ。2005-11-23 12:19:00 -
73:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「お前なんか可笑しいぞ?!ずっと上の空でボーっとしててお前らしくない。仕事中なんだからもっとケジメ付けろ!」
思わず優也に怒鳴った。…にも関わらず未だ優也は上の空だ。
「おい…!いい加減にしろ!しっかりしろよ!」
「惚れた…」
「は?!」2005-11-23 12:23:00 -
74:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺由里ちゃんに一目惚れしたっぽい…やべーこんなん初めてや…」
(は?!あの優也が一目惚れ?!女なんて穴があれば誰でもいいみたいな優也が…?)
絶句した。というより何故かすごく焦ってきた。
「アイツは俺のだから手出すな!!」
俺は咄嗟に優也の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた。2005-11-23 12:26:00 -
75:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優「は?!お前由里ちゃんの事好きなの?!」
俺「…いや…そんなんじゃねーよ…」
優「じゃぁ俺に協力してくれや!太い客だしお前が手放したくねーのも解るけどさ。俺本気やから。」
俺「いやとにかく由里は諦めてくれ!」
優「なんでだよ?!別にお前の女じゃねーだろ!?」2005-11-23 12:31:00 -
76:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
止まらない言い争い。今にも殴り合いになりそうな雰囲気に慌てて従業員達が止めに入る。
(仕事中なのに俺なんでこんなに取り乱してんだ…かっこわりぃ…)
我に返って気を取り直して仕事を続けた。
優也とはその日気まずいままだった。
なんだか由里と知り合ってから調子を狂わされてばかりだ…。2005-11-23 12:35:00 -
77:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
仕事が終わっていつもは一緒に住んでいる優也と一緒にタクシーで帰るが
この日は別々に帰った。優也と喧嘩なんていつぶりだろう。
優也とは幼稚園から一緒だった。幼なじみでもあり一番の親友。
(めんどくせぇな…でも謝る気はしねぇ…)
イライラしながら家に着いた。2005-11-30 17:02:00 -
78:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
未だ優也は帰ってないみたいだった。
俺は少し安心した後、思い出した様に由里にメールを送った。
「今日は来てくれてほんとにありがとう!かなり楽しかった!!」
…由里からの返信は一向に来ない。
(もう寝てんのかな…それともメール無視されたのかな…)2005-11-30 17:06:00 -
79:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ますますイライラする。
こんな些細な事で不安になるなんて今まで一度もなかった。
気付けば由里に電話をかけていた。
由里は眠そうな声で電話に出た。
「あーごめん寝てたぁ…仕事おつかれさまっ♪」2005-11-30 17:08:00 -
80:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(なんでこいつはこんな可愛い声してんだー)
思わず俺の顔が緩んだ。
「いーよ^^でもほんと今日は嬉しかった!!」
そんな話をしていると玄関のドアが開く音がする。
(優也が帰ってきた…!気まずい…)2005-11-30 17:10:00 -
81:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也の足音が俺の部屋まで近付いてくる。
コンコンッ 「貴晃、ちょっといーか?」
ドアをノックされて俺は慌てて由里との電話を切った。
「何?」ふてくされた顔で俺はドアを開いた。
「さっきの話の続きなんだけど。」2005-11-30 17:13:00 -
82:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あー何?」
「俺には正直に言えよ?お前は由里ちゃんの事好きなんじゃねーの?」
「…」
優也に改めてそう聞かれて何も答えられずに俺黙ってしまった。
好きとかそういう感情がよく解らなかった俺にとって「好きだ」なんて口にした事もない言葉。2005-11-30 17:15:00 -
83:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「好き…ではない。でもなんか他の女と違う。気になるっつーか…」
そう答えるのが精一杯だった。
「お前そういうのを好きっつーんだよ!」
優也は呆れたように苦笑い。
「俺もさ、一目惚れとか初めてだし、そりゃ由里ちゃんの内面はまだよく知らねーけど、本気で頑張ってみようって思ってんだ。」2005-11-30 17:18:00 -
84:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「うん…そっか。悪かったな店で思わず怒鳴っちまって。」
「俺は諦めないから。でもお前がライバルじゃちょっとキツイなー笑」
(ライバル…?俺と優也が…?)
なんだかよく状況が把握出来ていない俺は
「いや俺はお前と競う気ねーから!」と言った。2005-11-30 17:21:00 -
85:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「いやいやちゃんと話聞いてる?貴晃はさっき店で俺に「アイツは俺のだから手出すな」って怒鳴ったんだぞ?それって完璧惚れてるって事じゃん。そして俺も由里ちゃんに惚れてる。お互い引く気ねーならライバルじゃん!笑」
優也に笑いながらそう言われて
俺はまだ腑に落ちなかったが「そっか…」とだけ言った。
「お互い容赦なしな!そうと決まったら俺に由里ちゃんの番号教えてくれよ♪」2005-11-30 17:25:00 -
86:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「は…?!それは嫌や。そんなん直接聞け!」
「それもそーか…。わりーわりー^^」
いつの間には優也とは仲直り出来ていた。
でも複雑だ。これから優也と由里を巡ってのライバルになる…?
俺は本当に由里に惚れてんのか…?まだハッキリ好きだと言える程ではないのに。2005-11-30 17:29:00 -
87:
名無しさん
続きめっちゃ気になる?
2005-11-30 17:45:00 -
89:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
それから由里は週に1〜2回ペースで俺の店へ来るようになった。
でも酒はたまにしか飲まずにソフトドリンクだけ飲んでいた。
いつしか由里は俺の休憩席になっていた。
優也は由里が来る度に俺のヘルプに着こうとする。
自分の口座の客が来ても由里の席に着きたがる。2005-12-03 14:33:00 -
90:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は我慢の限界が来てまた優也と喧嘩になった。
俺が他の客に着いている間に優也は由里の番号を聞き出せたらしく
有頂天になっていた。
それもなんだか俺の勘に触った。2005-12-03 14:37:00 -
91:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
9月初旬のある日。
由里が仕事帰りに店に来た日に喧嘩が起こった。
俺が他の客の席へ着こうとして誰かにヘルプを頼もうとしていた時。
由里はその頃には俺の店の従業員達の間ではちょっとしたアイドル的存在だった。
みんないつも由里が来るのを待ちわびていた。2005-12-03 14:42:00 -
92:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
可愛い、優しい、話しやすい、ソフトドリンクを飲ませてもらえる。
従業員みんながヘルプに着きたがる。
そんな時優也がすかさず由里の席に座った。
優也口座の客が何組も被っていたのに。
さすがに俺はキレた。2005-12-03 14:45:00 -
93:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也を店の外に呼び出して怒鳴った。
「お前ええ加減にせぇや!仕事とお前の恋愛は別だろ!指名入ってんだからヘルプになんて着かんでええわ!」
優也はビックリした顔で俺を見る。
「だって…由里ちゃんと話せる機会少ないねん…電話掛けてもたまにしか出てくれへんし…」
「そんなの今関係ねーだろ!仕事とプライベートを混ぜんな!」2005-12-03 14:51:00 -
94:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「お前はどうなんだよ!?明らかに他の席と由里ちゃんの席とで態度違うじゃねーか!」
優也との口論が激しくなる。やがて取っ組み合いの喧嘩になった。
優也とこんな大喧嘩をしたのは初めてだった。
喧嘩中にタイミング悪く由里が電話で話ながら店の外へ出て来た。
それに俺は気付かずに喧嘩を続ける。2005-12-03 14:54:00 -
95:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は俺達の喧嘩に気付いて割り込んで止めようとした。
その瞬間、優也が俺に振りかざした拳が由里の頬に思いっきり当たった。
由里は少しよろめいていた。
俺達はやっと我に返った。2005-12-10 15:02:00 -
96:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺達は一瞬何が起こったのか解らず呆然としていた。
由里の口からは血が流れていた。
事態を飲み込み仰天というかとにかく焦った。
優也はすごく慌てて半泣きで由里に謝った。土下座までしていた。2005-12-10 15:05:00 -
97:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃんホンマにごめん!!!由里ちゃんが居るの気付かんかってん…」
由里はそれでも笑顔だった。でも少し冷めた様な愛想笑い。
「そんな謝らないで。何があったのか分かんないけど喧嘩は辞めてよ。ね?^^」
(由里ちょっと怒ってる…?そりゃ怒るよなぁ…いてぇよな…あんな思いっきり殴られちゃ…)2005-12-10 16:25:00 -
98:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は傍観者みたいにボーっと突っ立てるだけだった。
でもあまりの気まずさと由里の怪我を考慮して
「ほんまにごめんな由里ちゃん…喧嘩して巻き込んじゃって…とりあえず店の中入って手当しよ…?」
とだけ言って由里の背中を押して店の中へ入った。
2005-12-10 16:27:00 -
100:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
慌てて優也も俺と由里の元へ追いかけてくる。
店内に入るとみんながビックリしてざわついていた。
従業員達が「由里ちゃんどしたん?!その怪我…!」
と口を揃えて聞いてくる。
俺はイライラが止まらなかった。2005-12-12 17:00:00 -
101:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里が「なんでもないから気にしないで^^」と従業員達に笑顔で答えている傍らで
「お前らさっさと仕事戻れ!」と俺は怒鳴り散らした。
客達が感情的になっている俺を見て驚いて珍しそうにこっちを凝視してくる。
(マジなんかもう何もかもうぜーな…)
自分に一番苛立っていた。2005-12-12 17:03:00 -
102:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也にはとりあえず指名客の席へ着かせて
俺は由里の怪我の手当をしていた。
口の中が切れていてすごく痛そうだった。なかなか血が止まらない。
それでも由里は笑顔で俺の心配をしていた。2005-12-12 17:06:00 -
103:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃くんは怪我してない?ほんと貴晃くんらしくないよ…喧嘩なんて。」
眉間に皺を寄せて真剣な顔で少し淋しそうに由里に言われた。
(俺らしくない…?一体誰の所為だよ。)
イライラしっぱなしの俺はこんな事を心の中で思っていた。
俺は何も答えずに由里の止血を黙々としていた。
由里の手当が終わると次第に由里の口が腫れてきた。2005-12-12 17:11:00 -
104:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
本当に痛そうだ。よく見ると由里の歯が少し欠けていた。
俺が慌てて「病院行く?!結構な怪我やし素人の手当じゃあかん気がするわ…」
と言うと
「ううん。大丈夫だよ。そんなに痛くないから。ありがとう。でもごめんそろそろ帰るね。」
と由里はチェックを済ませた。2005-12-12 17:15:00 -
106:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
読みやすくしてくれてありがとうございます^^
少しずつですが頑張って更新していくのでよかったらこれからも読んでください。m(_ _)m2005-12-13 01:02:00 -
107:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は店に居たくないのもあって由里を家まで送る事にした。
こんなんじゃ代表失格かもしれない。それでもよかった。由里が心配だった。
タクシーを捕まえて由里と一緒に乗り込む。
由里がタクシーの運転手に自分の家の住所を言っていた。
その後はタクシーの中で特に何も話す事なく15分ほどで由里の家へ着く。2005-12-13 01:05:00 -
108:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(つくづく不思議な女…謎すぎる…)
こんなにも他人に興味を持った事などなかった。
だけどどう考えても普通の庶民が借りれるようなマンションではない。
あの時の大金と言い一体由里は何者なのだろうか。
時給5千円弱のラウンジで働いているはずなのに。2005-12-13 01:18:00 -
109:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか腑に落ちないまま俺は店に戻った。
客達がヒソヒソと噂しているのが嫌でも耳に付く。
「あの女何者なん?!わざと怪我して貴晃の気を引こうとしてるの丸解りやし!」
俺はまたキレそうになった。
でも客を相手にキレるわけにはいかない。2005-12-13 01:22:00 -
111:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんとか客達をなだめて何事もなかったかの様に振る舞う。
俺は得意なはずだ。感情を全く表に出さないのは。
だけど由里が絡むといつもの調子が狂うのは何故だろう。
俺らしくない。だけど俺らしさって一体なんだろう。
あの頃の俺はただ困惑していた。2005-12-13 01:25:00 -
112:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
今までの俺と由里と出逢ってからの俺が
なんだか別人へなっていく気がして怖かったりもした。
由里は一体何者なんだ… そんなの俺が知りたい。笑
その日もなんとか閉店時間までは仕事をこなした。
優也とはやっぱりまた気まずいまま。2005-12-13 01:28:00 -
113:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日独りでタクシーに乗って帰る時、由里に電話をかけた。
怪我が心配だったからだ。
由里は電話に出なかった。ますます心配が募る。
由里に聞きたい事もたくさんあった。
だけどなんだかあまり聞いちゃいけない気もした。2005-12-13 01:55:00 -
114:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
モヤモヤした気持ちのまま家に着いた。
優也は既に帰っていたけど気付かないフリをして自分の部屋に入った。
ベットに倒れ込むとコンコンッとノックの音がする。
どうせ優也が謝りに来たんだろう。俺は寝たフリをして無視していた。2005-12-13 01:57:00 -
115:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃…寝てんのか…?」
優也の声にビックリした。泣き声だったからだ。
俺は優也が泣いたのを今まで見た事がない。もう10年以上の付き合いなのに。
「起きてるから入れ」
そう言ってドアを開けた。2005-12-13 02:00:00 -
116:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也は泣き腫らしたような目をして暗い表情だった。
(そんなに由里を殴っちまった事が堪えたのか…)
俺は慰めるように「そんなに気にするなよ。事故だったんだし…」
と言うと
「いや…違うんだ…」と言いにくそうに優也が答えた。2005-12-13 02:02:00 -
117:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はビックリして「何かあったんか?」と聞いた。
優也の答えは驚くべきものだった。
「俺さ、ショックな事聞いたんだ…」
(ショックな事…?)
優也は勿体ぶってなかなか言い出そうとしない。2005-12-13 05:32:00 -
118:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「何聞いたんだよ?!言わねーとわかんねーだろ!」
落ち込んでる優也に思わずまた怒鳴ってしまった。
優也は必死に涙を堪える様子で口を開いた。
「由里ちゃんさぁ…彼氏おるらしいねん…」2005-12-13 05:35:00 -
119:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「はぁっ?!マジで?!誰からそんなの聞いたんだよ!」
「今日来てた俺のお客さんで由里ちゃんと昔仲良かったって言う子が居てさぁ…その子が言ってた…」
俺も優也のその言葉になんだか隠しようのないショックを受けた。
目の前が真っ暗になるってこういう事を言うんだろうか…2005-12-13 05:37:00 -
120:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「でもそんなのホントがどうかわかんねーじゃん!本人から聞いた訳じゃねーし!」
自分に言い聞かせる様に優也にそう言った。
「でもさ…」
言いにくそうにまた優也が口を開く。
「何?!」2005-12-13 05:40:00 -
121:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺、家に帰ってすぐに由里ちゃんに電話したねん。とりあえず謝りたかったし。そしたら由里ちゃんに「なんで喧嘩なんてしたの?」って聞かれてさ…」
(由里、俺の電話は取らねーで優也の電話は取ったのか…?)
一瞬そんな事が頭を過ぎった。
「それでお前は何って答えたん?」2005-12-13 05:43:00 -
122:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺、一瞬なんて答えていいか分かんなかったけど、その時告るチャンスだと思ってん。」
(はぁ?!いやいや全然チャンスじゃねーし!絶対バカだろ優也…)
「…」
「それで話したんだ。俺が由里ちゃんの事好きだから自分の客そっちのけで由里ちゃんの席着こうとするから貴晃にキレられて喧嘩になった…って。」2005-12-13 05:47:00 -
123:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「それで由里は何って?」
俺の鼓動が早くなるのが自分でも解った。
優也はこの調子だからフラれたのは悟っていたが
なんだか言いようのない緊張が俺の中に走る。2005-12-13 05:50:00 -
124:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃんは「冗談やめてよー」って笑ってた。だから「冗談じゃない」って真剣な声で言ったらしばらく沈黙が続いて…」
「…それで?」
「「優也くんの気持ちは嬉しいし、知り合って間もないけどいい人だって事は解るよ。でもあたしすごく大切な人が居るから気持ちに応える事は出来ない…ごめんね。」って言われた。」
優也は堪えきれなくなったのかまた涙を流す。2005-12-13 05:53:00 -
125:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は頭が真っ白になってた。
秘かにどこかで自信があった。きっと由里は俺を好いてくれている…と。
確信にも近い自信があったりしたから余計に突き落とされた感じだった。
自惚れもいいとこだ。
それに(優也が一人の女の事でこんな簡単に泣くなんて…)という驚きも隠せなかった。2005-12-13 05:57:00 -
126:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(よっぽど優也は由里に惚れてんだろな…)
そう思うと俺まで胸が締め付けられる思いがした。
俺は自分の戸惑いを隠してひたすら優也を慰めていた。
その日から約2週間位、由里は俺達の前から姿を消した。2005-12-13 06:00:00 -
127:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(所詮ホスト相手の逆色恋って事か?)
なんだかプライドを踏みにじらされた思いだった。
そんな9月末のある日。
俺の積もりに積もった不安が一気に吹き飛ぶ出来事が起こる。2005-12-13 06:14:00 -
129:
まみ
続き気になる?
2005-12-13 07:57:00 -
130:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
名無しさん、まみさんありがとうございますm(_ _)m
文章とか下手くそですが、不器用ながらもマイペースに更新していくつもりなので
これからもどうぞよろしくおねがいします^−^
完全実話です。2005-12-13 15:19:00 -
131:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日俺はいつも通りに仕事をしていた。
胸にモヤモヤした気持ちを抱えたまま、それを誰にも見せずに。
優也はかなり落ち込んでいて仕事も休み勝ちだった。
「俺が怪我させたり告ったりしたせいで…由里ちゃんが姿を消した…」
と自分を責めてばかりいて精神的に不安定になっていた。2005-12-13 15:22:00 -
132:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
開店して約2時間が経った頃。
店のドアが少しだけ開いてすぐに閉まった。
当時俺の店のドアには鈴を付けてあったから音でドアの開閉がよく解る。
(一体誰だろ…?)
不思議に思って店の外の様子を伺う為に俺はドアを開いた。2005-12-13 15:25:00 -
133:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ドアを開けるなり俺はとにかくビックリした。
そこには由里が立っていたからだった。
いつもの笑顔で「久しぶり^^」と少しだけ照れくさそうに言った。
俺はなんだか何も言葉に出来なかった。2005-12-13 15:28:00 -
134:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
複雑な感情が一気に思考回路をぐるぐると回る。
(由里のせいで優也が…彼氏がいるくせに今更何の用だ…)
だけど紛れもなく一番大きな感情は
(会えて嬉しい…)だった。
(いつの間にこんなに好きになってたんだろう…人を好きになるってこういう事なんか…)2005-12-13 15:31:00 -
135:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
何を言っていいのか解らず呆然と突っ立てる俺に
由里はいきなり腕を俺の首に回してきた。
(え…?!何…?!)俺は内心キョドりまくってた。
「よっし^^じゃぁ帰るね♪この後行く所あるから^^」
何が起こったのか一瞬解らなかった。2005-12-13 15:34:00 -
136:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか首もとが少し冷たい。
首もとを触ってみるといつの間にかネックレスが付いていた。
BVLGARIのB.zero1のWGのネックレス。由里がいつも付けていたのと同じものだった。
由里は事態の飲み込めていない俺を置いてエレベーターに乗り込もうとする。2005-12-13 15:37:00 -
137:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はやっと我に返って咄嗟に由里の腕を掴んだ。
「ちょっ…由里待って!!」
「ネックレス気に入ってくれたら毎日付けてね?あたしとおそろいー^^」
「え…でもすっげー嬉しいけど受け取れねーよ…」
「なんで??」2005-12-13 15:40:00 -
138:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(今一番由里に聞きたい事を言うんだ!頑張れ俺…!笑)
「由里…彼氏おるんやろ…?」
「…え?」
急に沈黙がエレベーター内に流れる。
きっとほんの何秒かだっただろうけど俺にはその沈黙がとてつもなく長く感じる。2005-12-13 15:43:00 -
139:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「なにそれー??彼氏とかいないよ!彼氏いたら夜の仕事とかしてないもん」
あっけらかんとした表情で由里がそう答えた。
俺は否定してくれた事に安心しながらも
どこかではまだ由里の言葉を疑っていた。
「ホントにおらんの…?」2005-12-14 03:19:00 -
140:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「そんなの誰から聞いたの??」
「いや…優也から…」
「そっかぁ。優也くん勘違いしちゃったのかな…。しばらくあたしと連絡取れなくて淋しかったー?^^」
「うん…」
思わず俺は素直にそう答えてしまった。2005-12-14 03:23:00 -
141:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか急にすごく恥ずかしくなった。
こんなの俺じゃない。俺はこんなキャラじゃないはずなのに…。
由里は俺の頭を撫でながら
「ごめんね。いろいろあって携帯放置してた。もう携帯繋がるからまたいつでも連絡してきて?」
と 優しく微笑んでいた。2005-12-14 03:29:00 -
142:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
どうしてこの女は人の心を掴むのがこんなに上手なんだろうか。
きっと無意識なんだろうけど
俺は見事に由里に引き込まれていく。
それが怖くてその日からいつもわざと少しだけ距離を置いていた。2005-12-15 15:27:00 -
143:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なぁ由里。
あの時に俺がもっとしっかりしてれば
お前をもっともっと幸せに出来たかな。
ただ怖かっただけなんだ。傷付くのが。素直になるのが。
悔しかっただけなんだ。いつからか好きになりすぎて−2005-12-15 15:30:00 -
144:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「優也くんにもよろしく伝えといてね^^」
そう言って由里はまた帰ろうとした。
俺はもうひとつどうしても由里に聞きたい事があった。
由里が優也に言った「大切な人。」
一体誰なんだろう…2005-12-15 15:32:00 -
145:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
だけど聞いちゃいけない気がした。
自分が傷付いてしまうような気がした。
だからそのまま由里を見送って仕事に戻った。
なんとも言えない複雑な気持ちだった。
でもとりあえず安心した。由里にまた会えて。2005-12-15 15:35:00 -
146:
ゅな☆
この小説好きL1*(♪^U^♪)*頑張って完結さ?てネン(o^皿^o)
2005-12-17 18:18:00 -
147:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
>>153サン
嬉しいお言葉本当にありがとうございます^^
すごく励みになります!!
頑張って完結まで更新していきます。2005-12-18 22:14:00 -
148:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日は仕事から帰るなり俺は優也の部屋へ向かった。
最近落ち込んでいて仕事も休み勝ちだった優也に
由里が来た事を一番に報告したかった。
優也は俺の話を聞いてすごくホッとしたような
嬉しそうな表情だった。2005-12-18 22:17:00 -
149:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「よかった…由里ちゃん元気そうやった…?」
「うん。怪我もちゃんと治ってたで!優也くんにもよろしくって笑ってた。」
「ほんまによかった…」
少し涙目になりながらも優也の顔はどこか緩んでいる。
なんか微笑ましく思えた。2005-12-18 22:20:00 -
150:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あ!それと由里に聞いたけど彼氏なんて居ないっつってたぞ??」
「マジで?!」
「うん。彼氏居たら夜の仕事なんてしないっつってた。」
「…確かにそれもそーかな…なんか安心した…っつーか貴晃そのネックレス…」
俺はハッとした。由里に貰ったお揃いのネックレスが俺の胸元で無駄に輝いていた。2005-12-18 22:30:00 -
151:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「それ由里ちゃんがいつもしてるのと同じやん…?」
優也は急に淋しそうな表情になる。
(やべー気まずい……)
俺は咄嗟に嘘を付いてしまった。
「あーこれ今日客に貰ってん!由里と勝手にお揃いなってもーたけど…」2005-12-18 22:33:00 -
152:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「そーなん?!えーなぁ貴晃!俺もそのネックレス前から欲しかってん。てっきり由里ちゃんから貰ったんかと思ったー!」
「いやいやそんな訳ないやん!(笑)」
(危ない危ない…優也を傷付けたくはない。)
俺は少し引きつりながらも笑顔を作って優也を傷付けまいと必死だった。
この時の俺の嘘が後にまた喧嘩の種になる。2005-12-18 22:38:00 -
153:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
それから由里は前の様にまた俺の店へ週2回くらい通うようになった。
メールや電話での連絡もほぼ毎日だった。
だけど由里から連絡してくる事は僅かだった。
最初は由里からばかり連絡してくれていたのに…
どこか淋しいし悔しいけど所詮惚れたモンが負けなのか。
俺は暇さえあれば由里へ連絡する様になっていた。2005-12-18 22:42:00 -
155:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
>>161サン
好きとか言ってもらえるとホントに光栄ですm(_ _)m
これからも頑張るのでよかったら完結まで読んでください^^2005-12-19 02:06:00 -
156:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は相変わらず謎な女だった。
根っから八方美人なのか誰にでもとにかく愛想が良い。
俺の店は完全友営を目指していたので男の客も少なくはなかった。
そんな男客の間でもアイドル的な存在になっていた。
携帯の番号などを聞かれても、断れない性格なのか誰にでも教えたりしていた。2005-12-19 02:12:00 -
158:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
店の従業員達も由里に近付くべく俺に隠れてこっそり番号やメアドを聞いている奴が多かった。
俺はどこかでそんな由里に不信感を募らせていた。
(嫌なら嫌だとハッキリ言えばいいのに。)
なんとも言えない苛立ちというか今思えばただの嫉妬だったと思う。
好きな気持ちが募る程に由里を独占したかった。2005-12-19 02:15:00 -
159:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
でも由里はどことなくいつも俺だけを特別扱いしてくれていた。
明らかに俺に対する態度と他の人に対する態度は違っていた。
俺の中でまた自信が付いてきていた。
(由里もきっと俺を好いてくれているよな…?)
だけど特に進展のないまま時間だけは流れていく。2005-12-19 02:23:00 -
160:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
気付けば11月も半分を過ぎようとしていた頃。
その頃には由里が週2日俺に会いに店に通ってくれるのが当たり前になっていた。
11月の末には俺の19歳の誕生日が控えていた。
2005-12-19 02:26:00 -
161:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里からイキナリのメール。
滅多に由里からメールをくれる事がなかったので内心俺は有頂天だった。
メールの内容は
「貴晃くんと今度買い物に行きたいな♪」
だった。2005-12-19 04:04:00 -
162:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は事実、俺の客ではある。
実際に店まで来て金を使ってくれているから。
だけど他の客とは全く違う。俺の中では。
きちんと一人の女として由里の事を好きになれていた。2005-12-19 04:11:00 -
163:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
勿論俺は由里の誘いを断る訳もなくメールを返信する。
「いいよ^^どこに行きたい??」
俺は秘かに由里と一緒に買い物へ行くのをかなり楽しみにしていた。
買い物へ行く日は俺の誕生日の2日前に決まった。2005-12-19 04:13:00 -
164:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
買い物へ行く当日。朝9時過ぎまで仕事をこなして由里の家までタクシーへ向かう。
タクシーに乗り込む前に優也に
「貴晃俺と一緒に帰らないのか?どっか行くん?」
と聞かれて
「ちょっと客とアフターがあるから先帰っててくれ。」2005-12-19 04:16:00 -
165:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
とだけ言った。
また咄嗟に嘘を付いてしまった。
(優也にはやっぱり言えない…言いにくい…)
「へー!お前がアフター?!そんなの初めてじゃね?!すっげー意外!まーがんばれよ♪」
優也は何も疑わずに、だけど結構驚いた様子で俺にそう言って別のタクシーへ乗り込んでいた。2005-12-19 04:19:00 -
166:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也は由里にフラれて以来、それでも諦める事なく由里を想っている。
以前の様に自分中心な考えはあまりせずに、由里が店に来た日に
由里に会えて由里と話せる事をささやかに何より心待ちにしている様子だった。
電話やメールも以前と比べると控え目にしていた。
そんな優也を応援したい気持ちも山々だが、やっぱりなんだかんだで俺達は俄然ライバル関係だ。2005-12-19 04:23:00 -
167:
☆彡
今、初めてイッキに読みました(●>_
2005-12-19 04:53:00 -
169:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
タクシーで由里の家へ向かう間の10分ほどの間
流れていく景色をボーっと見ながらなんだかんだで俺の心は躍っていた。
由里の住んでいるマンションの前に着く。
相変わらずどこから見ても豪華なマンションだ。
由里に家の前へ着いた事を電話で知らせた。2005-12-22 05:42:00 -
170:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
タクシーから降りて5分ほど待っているとマンションから由里が出てきた。
「おまたせー^^お仕事お疲れ様っ♪」
いつ見ても由里はほんわかしてて可愛らしい。
顔が綻びそうなのを堪えて自然に振る舞う。
「うん。疲れたわぁ…で、今からどこ行くん??」2005-12-22 05:45:00 -
171:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「そうだなぁ…ヴィトンのお店とかある所がいいな♪」
そんな会話をしてまたふたりでタクシーに乗り込んだ。
「由里は何を買いたいん??欲しいものでもあるん?」
「内緒^^とりあえず着いてからいろいろ見てみる♪」
タクシーで30分ほど走って某有名なショッピングモールへ着いた。2005-12-22 05:48:00 -
172:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
そのショッピングモールはブランド品から服屋、靴屋、レストランなど
一通りのものはあるような所だ。
タクシーから降りて店の中へ入る。
俺が先にスタスタ歩くと必死に由里がチョコチョコと着いてくる。
なんだかそれだけで幸せだった。2005-12-22 05:51:00 -
173:
☆彡
更新されてる(゜▽゜)♪
頑張っちゃってくださぁ〜ぃ(´∀`)2005-12-23 04:54:00 -
174:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
>>181さん
またレスして下さってスレッド上げて下さって嬉しいです^^
頑張りますので完結まで宜しくお願いしますm(_ _)m2005-12-23 10:30:00 -
175:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「もー貴晃歩くのはやーい!!」
由里が少しスネた様に必死で俺の元へ駆け寄ってくる。
(え…?今由里、俺の事初めて呼び捨てで呼んだ…?やべー今顔にやけてるかも俺…)
「あーごめん^^由里が歩くの遅いんやん!笑」
周りから見ると俺達も立派なカップルに見えるのだろうか?2005-12-23 10:33:00 -
176:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ホントはその時由里と手を繋ぎたかった。でもなんか恥ずかしかった。
意外とシャイな俺。笑
沢山ある店の中で由里が一番に向かった先はヴィトンの直営店だった。
ふたりでウロウロとヴィトンの店内を見学する。
(由里は一体何を買う気なんだろ…?)2005-12-23 10:38:00 -
177:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「ねー貴晃何がほしいー?」
「へ?」
唐突にそう聞かれて思わずマヌケな返事をしてしまった。
「誕生日プレゼント!あさって誕生日でしょ?何でも買うよ??」
(俺の誕生日一回しか言ってないはずなのに覚えてくれてたんや…)2005-12-23 10:40:00 -
178:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか胸の奥がジーンとした。こんなに感動するのはいつぶりだろう。
たったこれだけの些細な事なのに。
プレゼントなんて要らない。由里が誕生日を覚えてくれていて
祝おうとしてくれている事だけで充分だった。2005-12-23 10:43:00 -
179:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
まさか由里が俺の誕生日を覚えているなんて思わなかったから余計に。
「いやいやホントに何も要らんで!!」
「そーいう訳にもいかんやんっ!ヴィトン好きやろー?^^」
「いやヴィトンは確かに好きやけどさ…」
「貴晃はダミエ好きやんなぁ♪遠慮せんといてよー?!」2005-12-23 10:46:00 -
180:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「遠慮やしてへんけどホントに気持ちだけで充分やから…」
「じゃー勝手に選んじゃお♪」
由里はほんと変な所で強引だ。
ダミエのコーナーへ俺を引っ張りながら向かって行く。
「既に持ってるやつあったら言ってねー?」2005-12-23 10:48:00 -
181:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「これとこれと…あっ!それも!!」
由里はダミエのコーナーで次々と店員に商品を出してもらっている。
俺は唖然としながらただその光景を見ていた。
「この中で貴晃が既に持ってるやつあるー??」
「え…?いやひとつもないけど…」2005-12-23 10:51:00 -
182:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「じゃーこれ全部ください^^」
「?!?!?!!!いやいやありえへんやろ!」
「なんで??ダミエほぼ全制覇じゃん♪笑」
俺がキョドるのもそのはず。2005-12-23 10:57:00 -
183:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ガラス棚の上に並べられたダミエ尽くしの商品達。
ジェロニモスにセカンドバッグ、ダミエのネクタイ全色(10本)にシガレットケース、キーケース、ベルト…
「こんなにいらへんよ!ひとつで充分やって!!」
俺が必死で止めようとするにも全く聞く耳を持たない由里。
強引に店員に会計をさせている。2005-12-23 11:02:00 -
184:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はただ呆れるしかなかった。
そりゃ内心飛び上がる程嬉しかったけれど、そこまではしてほしくない。
会計は50万ほど。
動じる事なく財布から札束を出す由里。
(ホンマに由里は一体何者やねん…)2005-12-23 11:06:00 -
186:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
読みやすくしてくださってありがとうございます^^>>193さん
2005-12-26 22:53:00 -
187:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(金がないからっつって夜の仕事を始めたのは一体どこのどいつだよ…)
ヴィトンの店員がひとつひとつの商品を丁寧に包装している間、由里とふたりで店内のソファーで腰掛けて待ちながら
俺はボーっと以前の由里とのメールを思い出していた。
(確かに「お金がないから…」っつってたよなぁ…?)
なのにどう考えても金が有り余る程あるように見える由里。2005-12-26 22:56:00 -
188:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんか考えれば考える程に謎な女だ。
あまりに呆然として口を閉ざしている俺に由里は少し呆れたように
「貴晃眠いの…?」と尋ねてきた。
「いや眠くはないけど…なんか言葉にならへんわ…嬉しいけどこんなん悪いし…」
「あたしがいいって言ってんだからいいの^^気にしないでよー!」2005-12-26 23:01:00 -
189:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(ホントにいいのか…?)
やっぱり複雑だ。好きな女にトコトン貢ぐ女みたいな真似はしてほしくない。
少し経ってヴィトンの店員が「お待たせいたしました^^」とドでかいヴィトンの袋を4つも渡してきた。
由里とひとり2つずつ持つ。
結構重い…。2005-12-26 23:09:00 -
190:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ヴィトンの店を出て、またショッピングモールを歩く。
すれ違う人達が沢山のヴィトンの袋を下げている俺達を振り返って見てくる。
なんだか結構恥ずかしかった。
由里は「最後にヴィトン行けばよかったね…荷物重いし…」と笑いながら言った。
「次はどこ行くん??」
2005-12-26 23:15:00 -
191:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「とりあえずご飯食べよ^^マクド食べたい♪」
「え?!マクド??」
なんか意外だった。由里は安い物全般に興味が無さそうに見えたから。
「嫌…?こう見えてもあたしマクド大好きやねん^^笑」
俺もマクドは小さい頃から大好きだ。笑2005-12-26 23:18:00 -
192:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
マクドの店内に入る。
どう考えても場違いだった。笑
仕事帰りでスーツ姿の俺に私服でもバッチリお姉系でキメている由里。
手には沢山のヴィトンのでっかい袋達。
カウンターで注文をして席へ座る。2005-12-26 23:22:00 -
193:
???
頑張って?
2005-12-27 01:21:00 -
195:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
荷物を隣のイスに置いて由里と向かい合わせに座った。
由里はフィレオフィッシュ1コだけ。
俺はちゃっかりバリューセットを頼んだ。
さすがにマクドくらい奢りたかったのに由里は会計の時に隙なく素早くお金を出した。
俺が金を払おうとしても全く受け取ってもくれない…2005-12-27 03:17:00 -
196:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(なんでこういう金銭面では由里はいっつも強引なんやろ…)
ふとそんな事が頭をかすめる。
「貴晃セットだけで足りる??」
「…え?充分やで!!由里こそそれだけで腹一杯になるん?!」
「あたし小食やからこれだけでも充分だよ^^」2005-12-27 03:21:00 -
197:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
そんな会話をしてから食べ物に手を付ける。
俺は結構お腹が空いてたから黙々と食べていた。
由里はフィレオフィッシュをわざわざ一口サイズに千切ってから口に運ぶ。
ちょっと驚いた。
「俺ハンバーガーわざわざ千切ってから食べる人初めてみたわー!」
「え…?そぉなの?だってハンバーガーにかぶりつくの恥ずかしいもん//」2005-12-27 03:25:00 -
198:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はそれを聞いてすごく女の子らしいなって思った。
少し照れている仕種がなんだかやけに可愛く思えて仕方ない。
だけどマクドを頬張ってる由里はやっぱり17歳の普通の女の子なんだな、とも感じた。
由里は外見そこまで大人っぽい訳でもない。
童顔とまではいかないが可愛らしい顔つきだから年相応に見えるはずだ。2005-12-27 03:30:00 -
199:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
でも俺の知っている由里は17歳とは思えない程に内面がしっかりしていて
妙に大人びていて振る舞いとかがとても俺の年下に見えないイメージがあった。
だからなんだかどこか安心したんだ。
夜の世界で…俺の店の中で見せる顔とは違う顔の由里を見れた気がした。
2005-12-27 03:33:00 -
200:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃の食べ物を食べてる姿、なんかハムスターみたい^^かわいい♪」
「え…?!そんなん初めて言われたし//」
由里に初めて「かわいい」なんて言われて思わず顔が火照る俺。
「食べてる姿がかわいい人なんてあたしも初めて見たー^^」
無邪気に笑う由里。2005-12-27 03:39:00 -
201:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
このまま時間が止まって欲しい なんて思ったりした。
こんな事を思うのは産まれて初めてだ。
由里は俺の中の初めてをどんどん奪っていく。
人の愛し方さえ解らなかった俺にとったら、きっとこういう気持ちのなにもかもが初めてだった。
なんだか胸が苦しくなる。どんどん俺が俺じゃなくなっていく気がしていた。2005-12-27 03:42:00 -
202:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
マクドを食べ終えてまた沢山の荷物を持ってショッピングモールを歩いた。
由里は服屋が並んでいる所で立ち止まる。
俺は気を利かせて由里の分の荷物も持ち
「服見て来たら??外で待ってるから。」と言うと
「ありがとう^^」と微笑んで店の中へ入って行った。2005-12-27 05:21:00 -
203:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(由里はなんか買い物とか長そうだな…笑)
そう思いながら俺は近くにあったベンチに腰を掛け、一服していた。
すると由里はすぐに店から出て来た。
俺はビックリして
「え?何も買わんかったん?!」と訪ねた。2005-12-27 05:24:00 -
204:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「うん^^欲しい服なかった。荷物増えるのも困るしね。それに貴晃待たせるの悪いから。」
俺は心の中で拍手をしていた。どこまでいい女なんだろう由里は。
思いやりのあるというか、他人の事をちゃんと考えて行動出来ている。
悔しいけどますます惚れ直してしまった。
今まで俺の女に対するイメージは、ワガママとか自己中とかそんなものしかなかったから。2005-12-27 05:30:00 -
205:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「最後にさ、ブルガリのお店だけ行ってもいい…?」
「もちろん。」
少し歩いてブルガリの直営店へふたりで入った。
由里はキョロキョロしながらネックレスのコーナーへ向かう。
俺も後と着いていくと
「あー!あった♪」と由里が目を輝かせて商品を見ている。2005-12-27 05:35:00 -
206:
☆彡
更新イェィッ(●>_
2005-12-27 07:30:00 -
207:
???
おもろい?頑張ってね?
2005-12-27 12:27:00 -
209:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「え?なにが??」
俺が不思議に思ってそう訪ねると由里は次の瞬間、店員に向かって
「これふたつください♪」と言ってのけた。
「?????」
俺は何がなんだかよく解らなかった。2005-12-28 02:41:00 -
210:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(一体何を買ったんだ…?!)
俺も由里の隣に行ってその商品を見た。
店員がショーケースから取り出したのはブルガリのインゴットのネックレスふたつだった。
(由里、誰かとお揃いにでもするんかな…?)
ふとそんな事を思う。2005-12-28 02:44:00 -
211:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あ!荷物増えるんで箱とか要らないです^^」
爽やかに店員に言う由里。
(誰かへのプレゼントじゃないのか…??)
不思議に思う俺。
由里はさっさと会計を済ませてしまった。2005-12-28 02:46:00 -
212:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
インゴットネックレスの定価は約25万。
それがふたつだから約50万…。
またしても由里は躊躇なく財布から札束を出して払っていた。
俺はまた呆然とその光景を眺めているだけだった。2005-12-28 02:48:00 -
213:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
会計を済ませてネックレスをそのまま受け取る由里。
(ふたつも一体どうするんだろう?色も全く同じやつなのに。)
すると由里はひとつを自分の首にすぐに付け始めた。
それから俺の首にもうひとつを付けようとしてきた。2005-12-28 02:50:00 -
214:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はただビックリして
「いやいや何しよん?!」と咄嗟に言う。
「おそろいのネックレスふたつめー♪ちゃんと付けてね?^^」
由里は満面の笑みで答える。もう唖然とするしかなかった。
「ただでさえさっきもいっぱい買ってくれたのにあかんわこんなの…」2005-12-28 02:54:00 -
215:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「だーかーらー!貴晃はそんなの気にしなくていいんだってば。あたしが勝手に買ってるだけだし…嫌なら付けなくてもいいよ?あたしこのネックレスが欲しかっただけなの♪どうせならお揃いがいいなって思って^^」
平然としている由里。一体どうしてここまで気前がいいのか…
勿論嫌な訳はなく強引な由里に流されて俺はネックレスを付けられた。
内心かなり嬉しい。顔はきっとにやけていた。2005-12-28 02:59:00 -
216:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(由里はなんで俺にここまでしてくれるんやろ…?!)
俺の中でどう考えても由里は俺の事を好いてくれているという確信を持った瞬間だった。
「メッチャ嬉しい…大切に付けるわ。ありがとうなほんま…」
「素直でよろしい♪笑 喜んでくれたらなんでもかまんねん♪由里も貴晃とお揃いが増えて嬉しいっ♪」2005-12-28 03:05:00 -
217:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
とびきりの笑顔でそう言ったあの日の由里の声が今も耳から離れない。
なぁ、由里。
お前は俺が由里の事をまだ忘れられないって言ったら 一体どう思うかな。
忘れたくなんてないんだ。なにもかもを。2005-12-28 03:07:00 -
218:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
思い出なんかに出来ない。
きっと由里の事だから
「早く私の事は忘れて幸せになって」とか微笑むだろうな。
俺はいつまでも忘れない。
お前のくれた物全ても最初で最後の手紙も いつまでも俺の宝物なんだ。2005-12-28 03:12:00 -
219:
☆
続きほんとに楽しみです!!頑張って下さい
2005-12-28 16:25:00 -
220:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
☆彡さんいつも感想ありがとうございます(>_
2005-12-29 04:05:00 -
221:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「さーそろそろ帰ろっか♪貴晃疲れてるだろうしゆっくり休んで^^」
由里がそう言うのでショッピングモールを出てタクシーを探す。
時刻は午後3時くらい。
走っていたタクシーを捕まえてふたりで乗り込んだ。
2005-12-29 04:07:00 -
222:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
タクシーを乗ってる間の約30分間。
俺はやっぱりここ何ヶ月間かずっと気になっていた事を由里に聞こうと必死だった。
由里が優也に言った「大切な人」。
だけどなかなか勇気が出ない。
これ以上ないくらい緊張してたと思う。2005-12-29 04:08:00 -
223:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
訂正 タクシーを=タクシーにです^^;
あまりに挙動不審な俺を見かねてか、由里から沈黙を破った。
「貴晃どーしたの??気分でも悪い??」
「いや…」2005-12-29 04:11:00 -
224:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「なにー??」
「あのさ…由里前に優也に告られたんやろ…??」
「…え?うん…貴晃知ってたんだ…」
「うん。優也から聞いた。それでさ…大切な人がおるって言ったんやろ…?」
「…うん……」2005-12-29 04:14:00 -
225:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
急に悄気たような顔になる由里。
(やべー空気が重い…)
それでもめげずに俺は確信へ迫った。
「由里の大切な人って誰なん…?」
「………」2005-12-29 04:15:00 -
226:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里はずっと下を俯いたまま口を閉ざしていた。
(言いにくいんかな…)
俺は急に焦る。(やっぱり聞いてはいけない事やったんかも…)
「…忘れれん人がおるねん……」
「え…?!」2005-12-29 04:17:00 -
227:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「元彼。今でも忘れれんねん。でも他に今気になる人が居るかな^^」
「そぉなんや…」
俺は元彼が忘れられないという言葉で頭がいっぱいいっぱいになっていた。
さっきまでの緊張のドキドキがズキズキに変わっていた。
(いやでも今他に気になる人がおるとも言うたよな…?!)2005-12-29 04:21:00 -
228:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「今気になる人っていうのは誰…?」
僅かな可能性を信じて恐る恐る聞いてみた。
タイミング悪くタクシーは由里の家へ着く。
由里は俺の言葉を遮って財布から金を出して俺にタクシー代を渡そうとする。
「いやタクシー代くらい自分で払うから!!」2005-12-29 04:24:00 -
229:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺がタクシー代を受け取らないでいると、イキナリ顔を近づけてきて由里は俺にキスをしてきた。
あまりに突然で俺は驚くしかなかった。
「貴晃やで^^」
「…え?!??」
「今気になるひとっ!じゃーね!今日はありがと!」2005-12-29 04:27:00 -
230:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「運転手さん気を付けて送ってあげてくださいね^^よろしく♪」
そう言ってタクシーのドアを閉めて笑顔で手を振る由里。
俺はまだ唖然としたままだった。
少し経ってなんとか我に返って由里に手を振り返し、タクシーの運転手に自分の住所を告げる。
気付けば由里に座ってた場所にはタクシー代の2万円…。2005-12-29 04:31:00 -
231:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(やられた………)
俺は愕然とする。ほんとにこれ以上金を出してなど欲しくなかったのに…。
それにしても胸の鼓動が異常なくらいに早い。
突然の2度目のキス。俺はきっと由里が降りた後のタクシーの中で顔を真っ赤にしてたと思う。
「貴晃やで^^」と微笑んだ由里の顔がなかなか頭から離れなかった。2005-12-29 04:34:00 -
232:
☆彡
更新待ってマス(癶з癶)♪
2005-12-30 02:58:00 -
234:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
☆彡さんまたまたレスありがとうございます(>_>241サン読みやすくしてくださってありがとうございますm(_ _)m
2005-12-31 02:58:00 -
235:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里の家から20分ほど走って俺の住んでいるマンションに着いた。
俺は由里が置いてった2万円は使わず自分の財布からタクシー代を払う。
(この金は今度由里に返さんとあかん…)
2万円を財布の隅によけて仕舞った。2005-12-31 03:01:00 -
236:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は両手にいっぱいの荷物を抱えてマンションへ入る。
(優也にこの荷物絶対ビックリされるやろうな…なんて言い訳しよう…)
エレベーターに乗っている間そんな事ばかり考えていた。
家の前に着いて家のドアを開く。2005-12-31 03:04:00 -
237:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ドアを開いた瞬間にリビングに居た優也が
「おー貴晃おかえりー!結構早かったな!…っつーかどしたん?!そのヴィトンの山!!」
と言って来た。
(いきなりかよ……)
さすがにちょっと焦った。笑2005-12-31 03:06:00 -
238:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あー…いや今日一緒にアフター行ってた客が買ってくれてん…」
優也はなぜか目を輝かせてヴィトンの袋の中を漁ろうとする。
「いやお前勝手に見るなって!笑」
「こんなに買わせて悪い奴やなー!笑 っつーか今日アフター行った客って誰???!」2005-12-31 03:08:00 -
239:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(来た…!うーなんて言えばええんや…由里に買ってもらったなんて口が裂けても言われへんし…)
「…Cちゃんやで!!」
また咄嗟に嘘が出てしまった。俺はどこまで優也に嘘を重ねなければいけないんだろう…。
Cちゃんとは俺の客で風俗嬢だ。2005-12-31 03:10:00 -
240:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「え?!マジで?!お前Cちゃんとアフター行く程仲良かったっけー?!」
「いやそんな事ないけど…」
「でもまーこんだけ買ってくれるならアフターくらい行くよなー!羨ましー!お前がアフター行くって言った訳が今分かった!笑」
「いやいやプレゼント目当てで行ったんじゃないし!!」2005-12-31 03:13:00 -
241:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「ハイハイいい人ぶらんでえーから!笑 あれ?っつーか貴晃ネック増えてね?!」
(あ…!やべネックの事忘れてた…)
「それも買ってもらったんかー?!どんだけ貢がすねん!笑」
「ハハッ!まー実力や♪」2005-12-31 03:15:00 -
242:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
もう開き直って優也に調子を合わせるしかなかった。
下手に言い訳をするよりも優也の推測に便乗する方が詮索されずに済む。
「俺そのネックレス一番欲しかったやつだし!マジ羨ましー!!」
本気で羨ましそうな優也。
しかも由里に買ってもらってお揃いなんて言えばお前はあの時どんな顔したかな。2005-12-31 03:20:00 -
244:
☆彡
更新してる(●>_
2005-12-31 08:50:00 -
245:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
更新遅れてすみません…><
いつもほんとに読んでくださってありがとうございます^^
そして明けましておめでとうございますm(_ _)m2006-01-03 01:54:00 -
246:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はその夜なかなか寝付けなかった。
寝てないし疲れているはずなのに、由里のひとつひとつの言葉を思い出すと
なんだか鼓動が早くなって落ち着かない。
(やっぱり気になるって事=好きって事やんな…?!)
2006-01-03 01:57:00 -
247:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
気になる人 よりも 好きな人 って言って欲しかったけど…。
由里は以前の俺みたいにハッキリ好きと言える程は俺の事を想ってはないんだろうか…
だけど俺は充分嬉しかった。でも「忘れられない元彼がいる…」か…。
少し複雑すぎる。
そんな事を寝付くまでずっと考えていた。2006-01-03 02:01:00 -
248:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その2日後。俺のバースデーイベントの日。
恐れていた事が起こった。
優也との史上最悪な喧嘩に発展した。2006-01-03 02:04:00 -
249:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日俺はいつもよりかなり早めに家を出て開店準備をした。
沢山届いている花をセッティングして、白いスーツの貸衣装に着替える。
(由里は来てくれるかな…?)
それが一番の期待と不安だった。2006-01-03 02:08:00 -
250:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
いつの間にか時刻は12時を回って俺の誕生日になった。
同時に従業員達や優也も出勤してきた。
俺の携帯が鳴り通し始める。
客達からのハッピーバースデーメールと電話。2006-01-03 02:09:00