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いつか蝶のように

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  • 1:

    椎名

    あたし、あげは。風俗嬢してる。ネオン輝くこの街ではそれなりに有名になったけど、今あたしの本名を知ってるのはアイツだけ。アイツの本名を知ってるのもあたしだけ。
    あたしとアイツは似てる。だから惹かれた。

    2006-02-28 23:13:00
  • 50:

    椎名

    刹那の仕事が終わるのをあたしは1人、カフェで待った。久しぶりの1人の時間―
    今の仕事を始める前、あたしは1人カフェが大スキだった。朝から足早に出勤していく人を眺め、1人でコーヒーを飲む。あたしの大スキな時間。

    2006-03-12 02:52:00
  • 51:

    名無しさん

    2006-03-12 19:23:00
  • 52:

    椎名

    コーヒーの香りに包まれた店内でゆったりとした時間を過ごす。最近は休みの日も予定がなくて、家でずっとゴロゴロしていたから、外に出るのは久しぶり。
    刹那の店が終わるのは午前8時。9時過ぎには来るだろう。暖かい店内でウトウトする…

    2006-03-12 22:44:00
  • 53:

    椎名

    どれくらい時間が経ったのか、眼を開けると刹那が向かいに座っていた。
    「おはよ。お目覚めかな、お姫様?」
    『刹那…。おはよう、王子様。』
    「ごめんね、待たせて。行こっか。」

    2006-03-12 22:54:00
  • 54:

    椎名

    『どこ行くの?』
    「ん?あげは、海好き?」
    刹那の車は海に着いた。車を降りる刹那とあたし。髪を撫でる潮風が心地いい。
    あたしは海が好き。海に来るとなぜか懐かしい気持ちになる。

    2006-03-12 23:33:00
  • 55:

    椎名

    「…あげはさぁぁ、なんかあったの?」
    『…なんかあったのは刹那の方でしょ?』
    あたしと刹那はお互いが解る。あたしが辛いとき、刹那は黙ってそばにいてくれる。刹那が辛いとき、あたしは刹那の隣にいる。何も言わなくても、ただそばにいるだけでいい。あたしたちはお互いを必要としてる。

    2006-03-13 02:05:00
  • 56:

    椎名

    「…あげは…今日…一緒にいて…?」
    『……いいの?』
    「あげはがいいの。」
    刹那が自分から距離を詰めてくるなんて、珍しい。
    …またなんか無くしたんだ…
    あたしには解る。海を見る刹那の眼は哀しく、綺麗だった。

    2006-03-13 02:17:00
  • 57:

    椎名

    「…あげは、寒くない?」
    刹那が着てたコートを脱いであたしにかけてくれる。いつもの刹那の香り。あたしの好きな海の香り。
    『ありがと、刹那。』
    海を見つめる刹那。その眼はもっとずっと遠いところを見ている。

    2006-03-13 12:58:00
  • 58:

    椎名

    「…あげは?」
    『ん?』
    右側に立つ刹那を見上げる。眼にかかるアッシュグレイの柔らかそうな髪。整った顔立ち。どこか哀しげな眼。あたしは初めて刹那を好きだと思った。
    「…ごめん…」
    『え?』
    「…やっぱ俺、あげはを諦められない。」

    2006-03-13 13:30:00
  • 59:

    椎名

    出会ってすぐ、刹那はあたしに好きだと言った。あたしも刹那も、お互いを必要としているけど、お互いのことを何も知らない。
    あたしは返事ができなかった。それからあたしはまだ刹那に返事をしていない。

    2006-03-13 14:26:00
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