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She is Doctor
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1:
◆9QVEJRNRIM
あたしの親友の話です。
そんなに長くはならないと思うので、読んで頂ければ光栄です(^-^)2006-06-03 00:38:00 -
2:
◆9QVEJRNRIM
小松 萌、医学部6回生。5回生の時から色んな科を研修とゆう形で廻っている。
「命を助けたくて医者になろうと思った。『命は平等』なんて、所詮綺麗事にすぎないと思った。だからあたしが、変えてみせようって思ったんよ。」
当初、彼女はそう言っていた。
2006-06-03 00:40:00 -
3:
◆9QVEJRNRIM
――序章――
強い意志を持って、医者を目指す人は一体全体の何割なんだろう?彼女の話を聞いていたら、いつも疑問に思う。大概の子は「親が医者やから」とゆう理由。熱い情熱を持っている人なんてごくわずかじゃないのかな。
2006-06-03 00:41:00 -
4:
◆9QVEJRNRIM
萌とは中学からの親友だ。中学生の頃から「萌、お医者さんになりたいねん。損得を考えずに、利益を考えずに、全ての患者さんに同じ優しさを持って接する事のできるお医者さんになるねん。」とずっと言っていた。
2006-06-03 00:42:00 -
5:
◆9QVEJRNRIM
茶髪でミニスカートにルーズソックス。今時な見た目をしながらも、夢を語るときの萌の瞳はキラキラしていた。
教師達は笑った。友達も笑った。だけどあたしは笑わなかった。あたしに夢なんてなかったから。しっかり夢を持ってる萌を、純粋に応援したかった。
2006-06-03 00:43:00 -
6:
◆9QVEJRNRIM
萌の家は…とゆうかほとんどそうだろうが、初年度だけで2000万かかるような学部に入学させられるような余裕はとてもじゃないけど無かった。一応受けようとしていた私立大学は、初年度納入金約1300万。入学金800万とゆう金額を見て、萌の担任教師は「良心的な学校やな。」と言ったそうだからびっくりする。
2006-06-03 00:44:00 -
7:
◆9QVEJRNRIM
「やっとスタートラインに立てた。」泣きながら言う萌をあたしはすごいと思った。
合格したことでスタートラインにやっと立ったと言う萌がかっこよくて眩しくて。
この頃は希望に満ちていた。あたしも萌も、きっと何も分かっていなかった。人の命を預かると言う事も、この世界がどれだけ欲望に満ちた世界かも。
2006-06-03 00:46:00 -
8:
◆9QVEJRNRIM
日々忙しさに追われながらも、萌は毎日頑張っていた。課題やらレポートやら論文やら。そして5回生、色んな病院での研修が始まる。ここから萌は医者としての本当の意味、絶望、失望、そして希望。大きな壁に何度もぶつかる事になる。
2006-06-03 00:47:00 -
9:
名無しさん
×She Is Doctor
◎She Is A Doctor2006-06-03 00:49:00 -
11:
◆9QVEJRNRIM
――眼科――
萌が眼科に研修に行ったのは、確か6回生の始め頃だったと思う。
眼科は比較的簡単な科らしい。簡単とゆうのも、そんなに大きな手術はないし、また後々書きますが国からもらえる手術手当てがいいこともあり、最近は眼科医志望の学生が増えているらしい。2006-06-03 00:55:00 -
12:
◆9QVEJRNRIM
その頃、萌の日常はとても忙しないものだった。朝8時から夜までは研修先の科、夜から朝まで救急科。当直が当たり前な生活だった。
2006-06-03 00:58:00 -
13:
◆9QVEJRNRIM
香奈ちゃんも春休みを利用して逆まつげの手術を受けにきた子の一人だった。
大人しくて人見知りで、純粋そうな子だった。
診察室に香奈ちゃんと担当医と萌が入った。その担当医は医学界では結構名が知れていて、世界的にも論文が認められているすごい人らしい。2006-06-03 01:04:00 -
14:
◆9QVEJRNRIM
本来、医者は患者に対して「こーゆう症状なのでこーゆう手術をして、こーゆうリスクがあります。」とゆう説明しなければならない。これは法律で定められている。
しかしその医者は、何を思ったかいきなりカメラで香奈ちゃんの目を撮りだした。色んな角度で何枚も何枚も。撮り終えた後、じゃぁ手術いきましょか となったらしい。2006-06-03 01:08:00 -
15:
◆9QVEJRNRIM
香奈ちゃんとしては訳が分からない。しかも手術とゆうこともあり、前からあった不安はより大きくなった。見兼ねた萌は香奈ちゃんに「恐い手術じゃないから、大丈夫ですよ、安心して下さい。」と言ったらしい。
2006-06-03 01:10:00 -
16:
◆9QVEJRNRIM
手術室に入る前、萌は担当医に「君ね、患者に余計なこと言わなくていいから。学生は学生らしく僕に従ってたらいいから。」と言われたらしい。
…余計なことって…と思ったが、そこは「すいませんでした。」としか返せなかった。2006-06-03 01:13:00 -
17:
◆9QVEJRNRIM
こんなことは日常茶飯事らしい。医者とゆう社会は上が全て。上に逆らえば病院中から浮く存在になる。萌のしたことは間違いじゃないと思うが、病院とゆう組織の中でその時は間違い以外の何物でもなかった。
2006-06-03 01:15:00 -
18:
◆9QVEJRNRIM
手術も終わり、担当医は何も言わずに出ていった。その場にいた全員が困惑した。手術は終わったのか?まだ続くのか?しばらく待っても担当医は戻ってこなかったため、手術が終わった事が分かり看護士が「終わりましたよ。」と言ったらしい。
2006-06-03 01:19:00 -
19:
◆9QVEJRNRIM
香奈ちゃんは家に帰り、夜になり萌は救急科にいた。午後9時ごろ、1本の電話が鳴った。どうやら15才の女の子が自宅で倒れて意識がないとのこと。
数十分後、患者が運ばれてきた。
――それは香奈ちゃんだった。2006-06-03 01:24:00 -
20:
◆9QVEJRNRIM
萌はひどく驚いた。昼間出会った患者さんが夜に救急で運ばれてきた。よくあることではない。
香奈ちゃんが倒れた原因は、ストレスによる精神的なものだった。大きな不安を残したまま自宅に帰った香奈ちゃんは鏡を見た。すると血がついていて、大きな不安が爆発して倒れた。2006-06-03 01:28:00 -
21:
◆9QVEJRNRIM
何の説明もなく写真を撮られ、何の説明もないまま手術を受け、何の説明もなく帰らされた結果である。担当医のせい以外の何物でもないはずだ。
電話で呼び出された担当医は、不機嫌そうに香奈ちゃんと母親に説明した。2006-06-03 01:30:00 -
22:
◆9QVEJRNRIM
「手術を行なったときに使った麻酔でなる方もおられるんですよ。香奈さんはその典型的なパターンやったんでしょうね。」
実際、麻酔でなる人もいるらしい。だけど香奈ちゃんは絶対に違うはずだ。2006-06-03 01:32:00 -
23:
◆9QVEJRNRIM
不振がる母親に、続けて担当医は言った。
「こちらに何も非はないんでねぇ…もう大丈夫なんで、ゆっくり休んでくださいとしか言えないですねぇ。」
大学病院、しかも名の知れた医師から言われればもう何も言えない。信じるしかない。
最後に、その担当医はカルテに視線を残したまま「お大事に。」と言った。2006-06-03 01:36:00 -
24:
◆9QVEJRNRIM
――「“良い医者”ってなんやろうな。」
その話を聞いた時、萌が言った。
「偉くなるにはいくら患者さんを思ったって、いくら患者さんに慕われたって意味かない。論文。論文が全てや。」
悲しい笑顔で萌が言った。2006-06-03 01:40:00 -
25:
◆9QVEJRNRIM
2006-06-03 01:42:00 -
26:
◆9QVEJRNRIM
――老人ホーム――
これはまだ病院で研修を受ける前、学校の授業の一貫として老人ホームを訪れた時の話。実際医学界とは関係ないのですが、あたしはすごく心射たれた話なので書くことにしました。2006-06-03 01:44:00 -
27:
◆9QVEJRNRIM
萌が4回生の時、授業の一貫として老人ホームを訪れた。そこの老人ホームは痴呆の方などが入居していて、萌が担当することになったのは痴呆がかなり進んだおじいちゃんだった。
2006-06-03 01:46:00 -
28:
◆9QVEJRNRIM
そのおじいちゃんは、とても元から無口な人で痴呆もかなり進んでいるため、「まともにコミュニケーションとれないと思うよ。」と萌はホームの人に言われていた。
萌はいっぱい考えてきた話のネタを話し掛けてみたが、返答が無かったりまともな返答が返ってこなかったり、やっぱりコミュニケーションはとれなかった。2006-06-03 01:51:00 -
29:
◆9QVEJRNRIM
夕方になり、もう帰る時間も近づいていた。その時、おじいちゃんが突然萌の目を見つめて言った。
「タエちゃんか?…タエちゃんやな…」
萌の頬に両手で触れ、おじいちゃんは泣きだした。2006-06-03 01:57:00 -
30:
◆9QVEJRNRIM
萌はびっくりして、動けなかった。泣いているおじいちゃんを見て、どうしたら良いのか分からなかった。
ホームの人が飛んできて、萌に恐い顔をしながら事情を聞いてきた。ホームの人からしたら、滅多に話さないおじいちゃんが泣いているのを見て、萌が泣かせたと思ったんだろう。2006-06-03 02:00:00 -
31:
◆9QVEJRNRIM
事情を聞いたホームの人は、切ない顔で「そう…」と言った後、しきりに泣いているおじいちゃんに「おじいちゃん、この人はタエさんじゃないんよ。学生さんで今日は遊びにきてくれたんよ。」と言った。
2006-06-03 02:03:00 -
32:
◆9QVEJRNRIM
それでもおじいちゃんは、「タエちゃん…会いたかった…会いたかった……」と言いながら泣いていた。
後から聞いた話では、タエさんとゆうのは戦争で亡くなったおじいちゃんの奥さんだった。2006-06-03 02:05:00 -
33:
◆9QVEJRNRIM
おじいちゃんが持っていた、ボロボロのお守りに入ったボロボロの白黒の写真。若い頃のおじいちゃんとタエさんが写った、小さな写真。
たとえぼけても、人間は愛した人のことは忘れないんですね。萌はタエさんじゃないけれど、おじいちゃんからしたら愛する人に60年以上ぶりに出会えたんですね。2006-06-03 02:09:00 -
34:
◆9QVEJRNRIM
萌は泣きながら話してくれた。あたしも泣きながら聞いた。人の愛の深さを知った。軽い恋愛はやめようと思えた。
「今まで生きてきて1番、あの瞬間『この顔で生まれて良かった』って思った。たぶん一生、あの瞬間を超えて思う事はないと思う。」と萌が言った。2006-06-03 02:13:00 -
35:
◆9QVEJRNRIM
人の愛ってすごいです。1人で着替えれなくなっても、自分の子供の名前が分からなくなっても、本当に愛した人の事は覚えてるんです。
あたしもおじいちゃんがタエさんを愛したような、それだけ愛せる相手に出会いたいと思いました。2006-06-03 02:16:00 -
36:
名無しさん
良いスレを見つけました。頑張って書いて下さい
2006-06-03 02:34:00 -
38:
◆9QVEJRNRIM
2006-06-03 03:16:00 -
39:
名無しさん
――小児科――
最近、社会では少子化が騒がれている。中国では一人っ子政策、インドでは人口爆発と呼ばれる急激な人口増加。
日本での少子化の確信的な原因は一体何なのだろうか。2006-06-03 03:19:00 -
40:
◆9QVEJRNRIM
近年、小児科を志望する学生が減っているらしい。少子化や小児科自体の多忙さから、先程書いた眼科・耳鼻科・皮膚科を志望する学生が増えている。
萌の大学の友達にも、眼科志望の子がいる。2006-06-03 03:22:00 -
41:
◆9QVEJRNRIM
その子が眼科を志望する理由は
「楽だから。」
続けて「命を預かるような責任もちたくないし、眼科なら患者が死ぬこともないやろし。」と言った。
この子は親が医者だ。「命を預かりたくないなら、医者なんか目指すな!!」と萌はキレたらしい。2006-06-03 03:26:00 -
42:
◆9QVEJRNRIM
小児科は本当に大変だったらしい。子供は大人ほどうまく症状を言えないし、泣くゎ暴れるゎ逃げ出すゎ。子供が大好きな萌が、「宇宙人かと思った笑」とも言っていた。
2006-06-03 03:29:00 -
43:
◆9QVEJRNRIM
今から書くのは、小児科の中の、新生児集中治療室という所でのちょっと重い話です。
萌は基本変わっているのかもしれない。新生児集中治療室とゆう所は、未熟児や何かしら病気を持って生まれてきた赤ちゃんのための所で、大変でここに行きたいとゆう学生はほとんどいない。だけど萌は自らここに行ってみたいと希望をだした。2006-06-03 03:34:00 -
44:
◆9QVEJRNRIM
1組の夫婦、名前を佐藤さん夫婦とします。
佐藤さん夫婦は、長い間子供に恵まれず人工受精で待望の赤ちゃんに恵まれました。
萌曰く、担当医が言うには、妊娠が分かった時涙を流しながら喜んでいたそうです。2006-06-03 03:36:00 -
45:
◆9QVEJRNRIM
しかし未熟児での出産となった。体重は900グラムなかったと思う。
小さな小さな赤ちゃんは、保育器の中で一生懸命生きていた。いつかパパとママと、病院を出る日を夢見ながら。2006-06-03 03:41:00 -
46:
◆9QVEJRNRIM
保育器での治療もしばらくして、その赤ちゃんに障害があることが分かった。
――ダウン症。主な症状は知能発達の遅れだそうです。2006-06-03 03:43:00 -
47:
◆9QVEJRNRIM
担当医と萌と佐藤さん夫婦同席で、赤ちゃんに障害があることを伝えた。
佐藤さん夫婦は泣き崩れた。特にお母さんが。
その日からお母さんは、母乳を持ってこなくなった。2006-06-03 03:45:00 -
48:
◆9QVEJRNRIM
――「なんでそうなるん?自分の子供やったら受け入れようってならへんの?」と聞いたあたしに、「“自分の子供やからこそ”やろうな…。待ち望んだ子供が障害を持ってるって分かって、あたしらには分からんぐらいショック受けたんちゃうかな…」と萌は言った。
2006-06-03 03:48:00 -
49:
◆9QVEJRNRIM
萌もあたしと同じような事を担当医に聞いたらしい。担当医は萌に、「…“障害”者に対する社会の差別は無くなってると思うか?」と問い掛けた。
無くなっていない。萌は「少しづつ無くなってきてると思います…」と答えた。2006-06-03 03:52:00 -
50:
◆9QVEJRNRIM
担当医は、「無くなってなんかない。むしろ差別や偏見だらけや。もっとよー見てみぃ、“障害”者に会った時の社会の目を。実際佐藤さんらも子供が障害を持ってるって分かって泣いた。それは“障害”者を可哀相って思うからや。偏見以外の何物でもない。」と言った。
2006-06-03 03:56:00 -
52:
◆9QVEJRNRIM
最もだった。あたしや萌自身、いつか母親になって自分の子供に障害があると分かったら、多かれ少なかれショックを受けるだろう。それ自体が差別や偏見につながる…。じゃぁ「健康に、五体満足に。」と願う母親の気持ち自体、否定できるものなのか?萌が担当医にそう問い掛けると、
2006-06-03 04:00:00 -
53:
◆9QVEJRNRIM
「いや、親として当然願う事や。だから差別は無くならんし、無くしがたい。簡単に語れる問題じゃないんや。」と言った。
この頃、萌はすごく思い悩んでいた。どう表現したら良いのか分からないけど…。ものすごく思い悩み、考えていた。2006-06-03 04:04:00 -
54:
◆9QVEJRNRIM
そんな時、何かの本で読んだらしい。生れ付き目が見えない人がこう述べていた。
「私は目が見えないけれど、それを不幸だと思った事は1度もない。私にとっては空や星や花の色が分からない事が当たり前で、この世界が当たり前なんです。人は『可哀相』だとか色々言うけれど、目が見えないからこそ、見えるものもあるんです。私は生まれてこれて幸せです。」2006-06-03 04:09:00 -
55:
◆9QVEJRNRIM
萌はとても心射たれた。あたし達が「障害を持って生まれて可哀相。」と思うから、障害=可哀相となる。だけどその人が「生まれてこれて幸せ。」と言うならば、障害は必ずしも不幸じゃないはずだ。その人がそう言えるかどうかは、周りの人間に託されている。そんな社会になるべきなんだ。
萌は何かがふっきれたらしかった。2006-06-03 04:13:00 -
56:
◆9QVEJRNRIM
そして前の母乳から1週間後、佐藤お母さんが母乳を持ってきた。その時に萌はその話をした。
「あの子が将来、『生まれてこれて幸せ。』と言えるなら障害は必ずしも不幸ではないはずじゃないでしょうか。」2006-06-03 04:17:00 -
57:
◆9QVEJRNRIM
決して簡単な事ではない。社会は何も変わっていないのだから。だけどまずは親が子供を受け入れないと、子供の幸せには繋がらない。
2006-06-03 04:19:00 -
58:
◆9QVEJRNRIM
それから数日して、佐藤さん夫婦が保育器の中の赤ちゃんに初めて会いにきた。お母さんが手を入れると、赤ちゃんは小さな小さな手で指を握ったらしい。「可愛い…」涙を浮かべながら、お母さんが言った。
2006-06-03 04:22:00 -
59:
◆9QVEJRNRIM
――この時萌が直面した壁は、とても大きな壁だった。差別とは何か?障害は不幸か?深く考える程、答えは出ない。そもそも答えがあるのかすら分からない。
だけど1つ言える事は、今の社会のままでは駄目だと言う事。“自分がされてイヤな事は人にもしない”そんな当たり前な事が守れていない。
人は誰しも幸せを願うのだから。2006-06-03 04:28:00 -
60:
名無しさん
頑張って下さいm(_ _)m
2006-06-03 07:58:00 -
62:
◆9QVEJRNRIM
2006-06-03 08:09:00 -
63:
◆9QVEJRNRIM
――外科――
萌は以前まで循環器内科に行きたいと言っていた。簡単に言えば心臓に関する科。だけどここ、外科で出会った先生の影響で将来外科に進むことを決めたみたいだ。2006-06-03 08:11:00 -
64:
◆9QVEJRNRIM
外科で萌が出会った一人の末期ガン患者――名前を鈴木さんとします。ここで鈴木さんと出会ったことで、萌はまた大きな大きな壁にぶち当たることとなる。
2006-06-03 08:13:00 -
65:
◆9QVEJRNRIM
鈴木さんは70才のおじいちゃんだ。ガンが全身に転移して、言ってしまえばもう手の施しようがない。抗癌剤とモルヒネで痛みを和らげている状態で、余命1ヵ月と言われていた。
2006-06-03 08:18:00 -
66:
◆9QVEJRNRIM
おじいちゃんは奥さんを早くに亡くし、「早くばぁさんの所に行きたい。」が口癖だった。
萌が当直だったある日の夜、鈴木さんに発作的なものが起こった。非常に危険な状態だったため、すぐに息子さんが呼ばれた。しかし、あいにく担当医はいなかった。2006-06-03 08:24:00 -
67:
◆9QVEJRNRIM
担当医に電話をかけた所、「もう終電もないのに行けない」とのこと。
萌はこの科で初めて人の死と直面することになる。2006-06-03 08:26:00 -
68:
◆9QVEJRNRIM
そして担当医は「◇◇打って意識レベル下げといて。」と言ったそうだ。
ものすごく苦しそうで、今にも死にそうな鈴木さんを目にして電話をかけたのに、終電ないとの理由付けで来ようとしない担当医に萌はキレた。
「〇〇先生は命を助けたくて医者になったんじゃないんですか?!今にも亡くなりそうな患者さんがいるってゆうのに、恥ずかしくないんですか!?!」そして切った。次の日からこの病院での研修が終わるまでの間、萌はそこの病院で浮きに浮きまくったらしい。2006-06-03 08:37:00 -
69:
◆9QVEJRNRIM
病室に戻ると、息子さんが泣きながら「先生!こんなに苦しむのならいっそのこと逝かせてやって下さい!!」としがみつきながら言われたらしい。
…でも出来ない。所詮学生の萌には出来ることなど限られていて、担当医が言った◇◇を打つことしかできなかった。2006-06-03 08:40:00 -
70:
◆9QVEJRNRIM
しばらくして鈴木さんは落ち着いた。その次の日ひどく落ち込んだ萌から電話があった。
――「あたし遂にやってもうたぁ。今までガマンしてたのに…今にも死にそうな鈴木さん見てたら〇〇の発言が許されへんくて。あと3週間辛いやろなぁ……」
上に楯突く=病院に逆らうと同じようなものだった。2006-06-03 08:43:00 -
71:
◆9QVEJRNRIM
あたしは何を言ったら良いのか分からなくて、
「あんたは間違ってない。間違ってないよ……」としか言えなかった。
2006-06-03 08:45:00 -
72:
◆9QVEJRNRIM
医者は命を救うのが仕事なんです。チューブで繋がれて意識がなかろうと延命と言う言葉がある限り、決してスイッチを切ってはいけないんです。
仮に、いくら本人が望んでいようと。いくら患者さんの家族に頼まれようと。
それが 医者 だから。2006-06-03 08:48:00 -
73:
◆9QVEJRNRIM
色々状況によるみたいですがね。
萌が当たった大きな壁。
“必ずしも延命することが医者の仕事なのだろうか…?”
人ならば誰だって長く生きたいと願う。何年も土の中で暮らして1週間しか地上で生きられないセミを人は可哀相だと思う。
本当にそうなのだろうか?2006-06-03 08:52:00 -
74:
◆9QVEJRNRIM
余命が分かったら、延命のために病院で過ごすより、たとえ短くなろうと自分がしたい事を精一杯悔いの無いように生きるべきじゃないのか?
長く生きる事と悔いの無いように生きる事。どちらが正しいと言えるのか。萌が当たった大きな壁は、おそらく当分答えは出せないだろう。2006-06-03 08:56:00 -
75:
◆9QVEJRNRIM
萌が別の病院に移ってしばらくしてから、鈴木さんが亡くなった。萌が別の病院に移ると鈴木さんに告げた時、「残念やのぅ。わしの最期はあんたに看取ってほしかった。」と言われたらしい。
萌は上の先生からは嫌われたけれど、患者さんからは慕われていた。2006-06-03 09:00:00 -
76:
◆9QVEJRNRIM
「鈴木さんの言葉を聞いてはっとした。あたしはなんで医者を目指したんやった?みんなに優しい医者になりたかったからや、患者さんに慕われる医者になりたかったから。…いつのまにか目指した理由すら忘れてたゎ。上に嫌われても良い、患者さんが好いてくれるならあたしは別に良い。…まぁ上とも上手くやっていけるように頑張るけどな。笑」と言った。
2006-06-03 09:03:00 -
77:
◆9QVEJRNRIM
――それで良いと思うよ。少なくともあたしは、あんたのような医者に看取ってもらいたいよ。教授でも名の知れた先生でもなく、素直に涙を流せる あんたのような医者が好きや。
2006-06-03 09:05:00 -
78:
亜希
今初めて読みました(>
2006-06-03 18:42:00 -
79:
◆9QVEJRNRIM
亜希さん、読んでくださりありがとうございます(*μvμ*)
浪人は本当に辛いですね(>_2006-06-04 09:26:00 -
80:
名無しさん
がんばれ★完結まで読みます
2006-06-05 02:27:00 -
81:
64です
なんか、感動で涙が出てきます(рд*`)ホンマ頑張って下さい!!
2006-06-05 07:46:00 -
83:
◆9QVEJRNRIM
2006-06-05 08:55:00 -
84:
◆9QVEJRNRIM
今から書くのはまた別の病院での外科での話です。
萌が外科に進むと決めた、大きな影響を受けた先生。名前を瀬名先生とします。2006-06-05 08:57:00 -
85:
◆9QVEJRNRIM
瀬名先生とは、兵庫にある某病院の病院の院長だ。医者の嫌な世界が見えて、萌は何度もこの世界に失望した。
“人の命を救いたい”。そう思い医者になった人ばかりじゃなかった。分かってはいたけれど、目の当たりにするとそれはとても醜いものだった。2006-06-05 09:01:00 -
86:
◆9QVEJRNRIM
やらなくても良い検査を勧める医者。処方しなくても良い薬を処方する医者。
それは全て“お金”の為。
あたしが知らないだけで、医学界に入って萌が傷ついた事は一体どれだけあったんだろう。
そんな時、萌は瀬名先生に出会った。2006-06-05 09:04:00 -
87:
◆9QVEJRNRIM
瀬名先生は、院長なのに偉そうぶった所がない人だった。そして損得を考えない医師だった。上と衝突しがちな萌を、「頑張りなさい。私は10年後の君が見たいんです。」と言ってくれた人だった。
2006-06-05 09:07:00 -
88:
◆9QVEJRNRIM
瀬名先生は、毎日出来るだけ多くの患者さんと会話する。そして他の医者の誰よりも早く出勤する。
「なぜ1番に出勤するんですか?」と萌が聞くと、
「私が院長だからですよ。」
と答えたそうだ。2006-06-05 09:09:00 -
89:
◆9QVEJRNRIM
その言葉は萌に大きな衝撃を与えた。萌は以外とロマンチストだから、『神様が出会わせてくれた。』と言っていた。
瀬名先生は、技術も素晴らしいらしい。あたしにはよく分からないけれど、萌が言うには「瀬名先生の手術はおもしろい。」だそうだ。2006-06-05 09:12:00 -
90:
◆9QVEJRNRIM
瀬名先生は主に肝臓の手術をしている。肝臓の手術は難しくて少し切ると血があふれ出て、その上とても時間がかかる。学生は基本見学だけなので、8時間飲まず食わずで立ちっぱなんてザラらしい。
2006-06-05 09:14:00 -
91:
◆9QVEJRNRIM
そんな手術なのに、萌は瀬名先生が執刀する手術のほとんどに見学を希望した。
「おもしろい。」…分からないけれど。
何度目かの見学の時、瀬名先生が萌に言った。2006-06-05 09:17:00 -
92:
◆9QVEJRNRIM
「ここを切ってみなさい。」
萌は言われるままに切った。患者さんの体にメスを入れた。
「研修医ですらないのに、ましてや学生にやらせたのは初めてや。」
と瀬名先生が言った。2006-06-05 09:19:00 -
93:
◆9QVEJRNRIM
国家資格を持っていない学生が患者さんの体にメスをを入れたなんて違法もいいとこだ。本来、国家資格を持っていなければ患者さんに触れてはいけない。点滴ですらしてはいけない。でも萌曰く、病院によっては点滴をさせてくれる病院もあるらしい。
2006-06-05 09:23:00 -
94:
◆9QVEJRNRIM
その手術が終わったあと、瀬名先生は萌に言った。
「将来外科に進みなさい。一緒に外科をやりましょう。」と。
萌が、こんなことは滅多にないと言っていた。
そして萌は循環器内科から外科に進む事を決めた。
「瀬名先生の下で医者になりたい。」と言って。2006-06-05 09:26:00 -
95:
◆9QVEJRNRIM
医者と言う職業に何度も失望した萌は、瀬名先生に出会った事で大きな希望を得た。
こんな医者もいるということ。
萌の考え方を肯定してくれる人がいること。
瀬名先生は、萌にとって初めて尊敬すべき医師となった。2006-06-05 09:33:00 -
96:
名無しさん
ひゃく?うンこ小説
2006-06-07 12:03:00 -
97:
まみ
この小説じ〜んときます?なんか深いですね・・・頑張ってください!
2006-06-07 12:33:00 -
99:
たん
いいスレにであえました☆
2006-06-07 18:29:00 -
100:
名無しさん
めっちゃ好き!ひさしぶりに内容のある小説に出会えました☆
2006-06-10 09:55:00