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君の存在
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1:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あたしにとって、あんたは何?
あんたにとって、あたしは何?
時は流れても、消える事のない、君の存在……2006-01-25 02:45:00 -
2:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
奈湖『…もう別れる』拓『何でやねん!』奈湖『何でって…普通に無理やん。許されへん』拓『俺が悪いのは分かってる!でも、もうせえへんから!』奈湖『ごめん。無理……』
2006-01-25 02:49:00 -
3:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
ハァーッ…拓が重い溜息をつく。あたしは唇を噛み締めて、拓の部屋を後にした。
中学3年生、15歳。あたしと拓は別れた。2006-01-25 02:55:00 -
4:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓は一言で言うと、ヤンキーだった。金髪の髪に、変形させた制服。授業の時間に、教室にいる事なんて、滅多になかった。
一方あたしは、見た目も真面目、どこにでもいるような、田舎の中学生だった。そんなあたしが拓と付き合うなんて、学校中の誰もが、信じられなかったと思う。2006-01-25 03:04:00 -
5:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
学級委員をしていたあたしは、担任に頼まれ、良く拓や同じクラスのヤンキー達に、伝言を伝えていた。奈湖『また授業さぼったやろ?先生が後で、職員室来いやって』ヤンキー達『うっさいぼけ!』『お前関係ないやんけ!』
2006-01-25 03:12:00 -
6:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
(あたしだって、あんたらなんかに、話しかけたくないわ…)毎回毎回、ヤンキー達に文句を言われ、時には『ぶすは黙っとけ!』とまで言われた。奈湖『あたしも面倒臭いし、嫌やし!言われたなかったら、言われんようにしたら!』
2006-01-25 03:16:00 -
7:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あたしは真面目だったが、気はとても強かった。だから文句を言われたら言い返していたし、そんなあたしを、『かわいげのない女』と、影で言っていたのも知っていた。(ほんま面倒臭い、係わり合いたくない…)
4月のクラス替えから、3ヶ月が経とうとしていた頃だった…2006-01-25 03:24:00 -
8:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
部活を終えて、教室に忘れ物を取りに行った時だった。拓『飯江![奈湖の名字]』奈湖『えっ?』静まり返った誰もいない教室に、いきなり拓が入って来た。奈湖『びっくりした…どうしたん?』拓『なぁ、俺と付き合ってくれへん?』
2006-01-25 03:30:00 -
9:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あまりに突然過ぎる拓の言葉に、あたしは言葉を失った。呆然と立ち尽くすあたしに、拓『まぁ、考えといてや!』そう言って、拓は去って行った…
2006-01-25 03:34:00 -
10:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓があたしを好き…?からかわれてるだけ…?最初はとてもじゃないけど、拓の気持ちを、信じる事が出来なかった。でも告白された次の日から、明らかに拓を意識している、あたしがいた。
2006-01-25 03:39:00 -
11:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓の周りのヤンキー達も、拓から言った事を聞いたんだろう。『あれが拓の好きな女やで!』『え?もう付き合ってんの?』『拓ってあーゆうのが好みなん!』聞こえてくる声を聞きながら、少しずつ拓が真剣に言ってくれたんだと信じる事が出来た。
2006-01-25 03:46:00 -
12:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
(返事してないなぁ…)そう思いながらも、あたしと拓が付き合うなんて、自分でも想像がつかなかったし、意識はしていたものの、好きと言えるのかどうかさえ、良くわからなかった。
2006-01-25 03:49:00 -
13:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
突然の告白から、一週間が過ぎようとしていた。夜、家でテレビを見ていたあたしに、『奈湖〜!澤君て子から電話〜!』と、大きな声で呼ぶ、母の声が聞こえた。(澤…って、拓やん!)
2006-01-25 03:53:00 -
14:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
深呼吸をして、保留ボタンを解除する。奈湖『もしもし…』拓『あ、俺。分かる?』奈湖『分かるで』拓『いきなり電話してごめんな。この前の返事…』(ついに来た…)どうしようと悩むあたしは、言葉に詰まった。拓『やっぱ俺みたいなん無理かぁ…』黙っているあたしに、拓は悲しそうに呟いた。
2006-01-25 03:58:00 -
15:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
奈湖『あんな…てか、何であたしなん?』精一杯考えて、出た言葉がこれだった。拓は小さく『えっ?』と聞き返しながらも、次の言葉が出ないあたしに、ゆっくりと話し出した。
2006-01-25 04:02:00 -
16:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『まぁぶっちゃけ、顔がタイプってのが最初に思ってて。でも何か、毎回面倒臭いのに、俺らに伝言伝えに来てくれたりしてて、ええ奴やなって思って、でもそうかと思えば、俺らにも平気で文句言うし!でもそれって、俺らがヤンキーでも、普通に接してくれてるって事やん?』
2006-01-25 04:07:00 -
17:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『んで気になってって…てか!んな事言うん照れるやんけ!』受話器の向こうで、照れている拓が、目に浮かんだ。奈湖『プッ』拓『笑うな!』しばらく二人で笑った後、拓が急に真剣に言った。
2006-01-25 04:11:00 -
18:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『俺さぁ、はっきり言ってあほやけど、だからこそ、お前みたいな、しっかりした女がいいねん。お前とおったら、俺変われる気するし。だから…真剣に付き合って下さい!』
その言葉で、あたしの迷いは吹き飛んだ。奈湖『うん…』拓『まじで?やった〜!』2006-01-25 04:18:00 -
19:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
こうしてあたしと拓は、付き合う事になった。7月に入ったばかりの頃だった。
2006-01-25 04:20:00 -
20:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
実際付き合ったと言っても、あたしは夏で引退する部活に励んでいたし、拓は拓で、今までのように、友達とつるんでいる事の方が多かったので、これと言って、変わりない毎日を送っていた。この当時、携帯はなくて、たまに夜に、拓の方から、家に電話があって話す以外は、今までとそう変わりはなかった。
2006-01-25 04:29:00 -
21:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
そして一学期を終え、部活も引退になり、夏休みを迎えた…
2006-01-25 04:32:00 -
22:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
受験生のあたしは、週に3回は、塾に通っていた。でも部活がなくなった今、あたしの時間は有り余っていて、この頃から、拓と過ごす時間が、とても多くなっていった。
2006-01-25 04:36:00 -
23:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あたしは拓のお母さんには、とても好かれていた。『奈湖ちゃんのおかげで、この子も少しは、真面目になってくれて…』実際あたしは、拓と付き合ってから、『悪い事は止めてな』と言ってきてたから、学校での生活も、少しはましになっていた。
2006-01-25 04:42:00 -
24:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
付き合う時に言ってくれた言葉通り、拓はあたしと付き合って、以前よりは真面目になってくれた。その拓の努力と気持ちが、あたしはとても嬉しかったし、夏休みに入ってから、拓と過ごす時間が増えた事によって、あたしは拓を、どんどん好きになってるのが、自分でも分かった。
2006-01-25 04:46:00 -
25:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
それに拓の周りには、同じ中学、別の中学のヤンキー仲間がいっぱいいて、その中には女の子もいっぱいいた。あたしよりも、大人っぽくて、かわいい女の子ばかり…(ほんまにあたしでいいんかなぁ…)
2006-01-26 01:30:00 -
26:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
奈湖『あたしにも…拓しかおらん!』
今まで好きになった人なんかと、比べものになんかならない。これが、人を愛するって事なんだ。2006-01-26 01:37:00 -
27:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
そしてその頃から、勉強ばかりじゃ息が詰まるから、って事で、よく二人で出かけた。映画を見たり、買い物をしたり、花火に行ったり。狭い田舎で、あたしと拓がデートしていた事は、色んな人達に目撃されて、あっという間に広まった。
2006-01-26 01:46:00 -
28:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
そんな時だった。塾の帰り道、もう日も沈みかけた頃に、駅前を歩いていたあたしに、『なぁ、ちょっと!』と、見知らぬ女の声で、呼び止められた。振り返ると、そこには2ケツで原チャにまたがった、知らないヤンキーの女の子がいた。
2006-01-26 01:50:00 -
29:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
女の子?『自分さぁ、拓の女?』(何なん、急に…)黙っているあたしに、その子は言った。女の子?『別に普通やん!えみのがかわいいし!』(えみって誰やねん…)女の子?『まぁ間違いなく、あたしのがかわいい♪』(こいつがえみ…?)女の子?『まぁ何し、早拓と別れて!』女の子?『拓はえみのもんやし!』
2006-01-26 01:55:00 -
30:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
そう言いたい事だけ言って、その子達は去って行った。(何やねん…)ただ分かったのは、きっとえみは、拓の別の中学のヤンキー仲間で、えみは拓が好きって事だった。
2006-01-26 01:59:00 -
31:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
イライラしながらも、拓にはその事は話さずに、また幸せな日々を送っていた。
ある日、拓の部屋で、過ごしている時の事だった。拓がやたらと、くっついてくる気がして、(これはキスする予感かも…)なんて、のんきにあたしは、ドキドキしていた。2006-01-26 02:06:00 -
32:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
今となればびっくりする話だが、付き合って1ヶ月半、外でデートする時に手を繋ぐ以外は、拓は一切あたしに、手を出してこなかった。
2006-01-26 02:09:00 -
33:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あたしが宿題の手を休めて、ふいに拓を見た。拓もあたしを見る。無言で見つめ合う。そして拓が、あたしを抱き寄せた。(ついにキスするんや…)心臓の音が、聞こえるんじゃないかってくらい、あたしはドキドキしていた。
2006-01-26 02:14:00 -
34:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
そして、拓はゆっくりと、あたしの唇に、自分の唇を重ねた…
10秒くらいの、長いキス。ただ唇を重ねるだけの、軽いやつだけど…
(拓、愛してる。ほんまに幸せや…)2006-01-26 02:19:00 -
35:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
唇が離れた。でも拓は、これで終わりじゃなかった。幸せに浸ろうとするあたしのスカートを、拓はチラッとめくった。奈湖『ちょっ…何すんの!?』拓はあたしの言葉を無視して、座っていたソファに、あたしを押し倒した。
2006-01-26 02:23:00 -
36:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
奈湖『嫌やって!』あたしは拓を突き飛ばした。拓は(何で…?)って顔で、キョトンとしている。(エッチなんか、まだ早い…)それがその当時の、あたしの気持ちだった。あたしだけじゃなくって、同い年の間でも、キスの話では盛り上がれても、エッチの話なんか、出てもこなくて、まだまだ先の事やって思ってた。
2006-01-26 02:29:00 -
37:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『奈湖!ごめん!もうしんから!泣くなや!』知らないうちに、あたしの頬を、ポロポロと涙が伝っていた…自分でも気付かずに、拓の声にハッとする。(びっくりした…恐かった…)今となれば良く分からないけれど、きっとそんな気持ちだったと思う。
2006-01-26 02:34:00 -
38:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
あたしの頬の涙を拭こうとする拓の手に、ビクッとする。拓『ほんまごめん…もうせんから…怖がらんとって…』優しい拓の声に、あたしは落ち着きを取り戻した。
2006-01-27 02:05:00 -
39:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
二人の間に、気まずい空気が流れる…(拓、あたしの事、嫌になったかな…)あたしの中では、エッチなんてまだ早かったけど、きっと拓の周りのヤンキー達は、そういう事も、付き合ってれば普通なんだと思う。
2006-01-27 02:09:00 -
40:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓の顔を、申し訳なさそうに、チラッと見る。拓『ん?』拓の優しい声を聞いて、あたしはまた、涙が出てきた。拓『どうしてん?奈湖?もうせんから!安心して大丈夫やで!』(きっと拓には、あたしがそれほど、嫌やったって風に、伝わってるんや…)
2006-01-27 02:17:00 -
41:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
奈湖『違う…違うねん…』拓『ん?』奈湖『あたし…びっくりしたけど…拓の事は、ほんまに好きやし…』拓は優しく笑って、あたしの頭をポンポンってしながら、拓『分かってるって』と言った。そしてあたしをギュッとしながら、言ってくれたんだ。
2006-01-27 02:21:00 -
42:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『俺が焦って、奈湖を怖がらしたんが、悪かった。確かに俺は、お前の事好きやし、ぶっちゃけやりたいと思う。そんな俺の事、嫌になる?』あたしは無言で、首を大きく横に振った。(もう少し時間が経って、心の準備が出来たら…あたしも拓が好きやし…)
2006-01-27 02:42:00 -
43:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓『じゃあ俺は、お前がいいってなるまで、ちゃんと我慢する!お前の事がほんまに大事やから、泣かれるんは嫌やし!ただ分かって?俺はやりたいだけじゃなくって、お前を愛してるから、抱きたいって思ったんやで!』
2006-01-27 02:45:00 -
44:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
拓の言葉が、スゥーッと胸に染み渡る…(頑張って早く、拓を受け入れられる、自分になろう…あたしも拓を愛してるから、結ばれるのは、当たり前の事なんや…)そう思ったのに…拓の言葉を信じたのに…何で拓は、あたしを裏切ったん?
2006-01-27 02:49:00 -
45:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
それから残りの夏休みは、平穏に過ぎていった。拓の部屋にいる時は、拓は、『心の準備は出来たかぁ?』とか、『早くやらせろやぁ!』とか言ってたけど、そんな冗談も、笑って過ごせるようになってたし、あたし自身が、そろそろ拓に抱かれてもいいかなって、思えるようになっていた。
2006-01-27 02:54:00 -
46:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
でも『もう準備出来たよ』とか言うのも変だし、自分からそんな雰囲気も出せないし…
そうこうしてる間に、あたしは塾の最後の追い込みを迎えて、夏休みの最後1週間ほどは、全く拓と会えなかった。2006-01-27 02:59:00 -
48:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
明日から2学期が始まる、そんな時に、事件は起きた。夏休み最後の塾に通い、今日は模試を終えて、家までの道を急ぐところだった。
『ちょっと!』聞き覚えのある、やたら偉そうな声で、呼び止められる。奈湖『?』2006-01-28 23:33:00 -
49:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
振り返ると、またもや原チャにまたがった、以前にも声をかけてきた、2人組の女がいた。(何の用やねん…)そう言わんばかりの目で、相手を見る。えみ『多分知らんやろうから、教えといたるわ!』奈湖『?』えみ『えみ、拓とやったから!』奈湖『はっ!?』えみ『拓初めてで、めっちゃかわいかったで!』
2006-01-28 23:39:00 -
50:
奈湖 ◆VE2vvcSGSs
頭を鈍器で殴られるような衝撃…とは、こういう事を言うんだろうか。言葉を失うあたしを見て、2人はニヤニヤしている。えみ『やっぱ知らんかったん〜?』(嘘やんな…?)あたしの心を見透かすように、えみ『嘘ちゃうし、何なら拓に聞いてみれば?』その言葉を聞いて、あたしはその場を、走って逃げだした。
2006-01-28 23:43:00