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雪降る季節

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  • 1:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「今までありがとう。楽しかったよ」
    俺はそんなありきたりな言葉で話を締めくくった。目の前では、三年間一緒に過ごしてきた女が涙をためてうつむいている。

    2005-12-12 01:46:00
  • 2:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「よっくん、うちらほんとにもう終わりなん??もう戻れへんの??」
    「美穂…ごめん」
    美穂はこらえきれず声を出して泣き始めた。つらかった。《愛》は時間が経つと《情》に変わってしまうものなんだな。もう愛せなくなってしまった美穂と、これ以上一緒にいることはできなかった。

    2005-12-12 01:53:00
  • 3:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    さんざん泣いた後、美穂は無理矢理笑顔を作って、
    「今までありがとう。よっくんと付き合えて、よかったよ」
    と、これまたありきたりな台詞を残して俺の家から出ていった。

    2005-12-12 01:56:00
  • 4:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ━━━━━━━━━━━━俺は義幸。この前ハタチになったばかりだ。自分で言うのも何だけど、大阪の結構いい大学に通っていて、いちおうサッカー部に所属している。だるい練習は嫌いだけど、サッカーは小学生の頃から大好きだ。

    美穂と別れてからの俺は最悪だった。色んな女と遊びまくって、そのまま部屋にお持ち帰りなんてこともしょっちゅうだった。
    美穂とも時々連絡をとっていた。もちろん俺が遊び人だってことは言わなかったが。

    2005-12-12 02:07:00
  • 5:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺たちは、幹事が予約してくれていた居酒屋に移動した。俺はサッカー部のツレや同じクラスだったやつらとガンガン飲んで騒いでいた。
    ほどよくテンションが上がってきた頃に、突然、貸し切りにしていた部屋のふすまがガラッと開いた。

    2005-12-12 02:27:00
  • 6:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    智喜はそれからも佐々木にからんでいたが、しばらくして疲れたのか寝てしまった。すると、佐々木が俺に話しかけてきた。
    「なぁなぁよっくん。なんで今日美穂来てないん〜??」
    いきなり馴れ馴れしいな!!と思ったが、酔っていたのと、佐々木が近くで見ると意外にも可愛かったので、それはどうでもよくなった。

    2005-12-12 02:51:00
  • 7:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「美穂とはだいぶ前に別れたよ」
    と言うと、佐々木はパニクって、
    「まぢで!?変なこと聞いてほんまごめん!!」
    と謝ってきた。その焦りようを見て、俺は直感した。この子、そんなに悪い子じゃなぃな、って。

    2005-12-12 03:28:00
  • 8:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    その時、居酒屋の店員がラストオーダーを聞きにきた。もうそんな時間か…と少し名残り惜しく思っていると、佐々木が笑顔で、
    「カラオケでオールしよや☆うち今日バイト休んできてるし、このまま帰ったらなんか損やわ!!」
    と言い出したので、俺や智喜、佐々木や香織たちと10人くらぃでオールすることになった。

    2005-12-12 03:35:00
  • 9:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    カラオケの部屋に入ると、偶然佐々木が隣に座った。せまぃ部屋だったから10人がぎゅうぎゅう詰めに座ったので、佐々木と密着する感じになって、なんだか妙にドキドキした。
    佐々木は歌がうまくて、みんなが聞き惚れるような綺麗な声をしていた。俺は気がつけば、佐々木を意識するようになっていた。

    2005-12-12 03:42:00
  • 10:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    突然、佐々木のもう片方の隣にいた智喜が、
    「そーいえば佐々木さん、携帯変えたんやんな??教えてや!!」
    と佐々木と番号交換をしだした。今しかない!!と思い、
    「可愛い子いたら紹介してよ〜」
    とかなんとか言って携帯を差し出したら、めっちゃ笑顔で教えてくれた。

    2005-12-12 03:47:00
  • 11:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ふと佐々木の携帯の待ち受けを見ると、外車の写メだった。俺が、
    「おー!!BMじゃん!!佐々木さんの??」
    と聞くと、佐々木は照れ臭そうに、
    「ううん、彼氏の」
    と答えた。俺は軽くショックだった。そりゃ彼氏くらいいるよな…うん。

    2005-12-12 03:51:00
  • 12:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    するとまた智喜が騒ぎ出した。
    「俺この前佐々木さんと男が一緒にいるとこ見たで!!お兄系ってか…ヤクザみたぃやった!!」
    や…ヤクザっすか…。さすが佐々木…。でも、佐々木は
    「違うもん!!普通の学生やから!!」
    と反論しながら智喜を怒っていた。学生だと聞いて、少し安心した。

    2005-12-12 03:56:00
  • 13:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    気がつけば、佐々木は俺の肩にもたれかかって寝ていた。俺は佐々木が起きないように、じっとしていた。しばらくして佐々木は目を覚ました。
    「…あっ!!よっくん、ごめんね」
    「別にいいよ」
    …このまま起きなかったらよかったのに。

    2005-12-12 04:00:00
  • 14:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    楽しい時間はすぐに過ぎて、あっと言う間に出る時間になり、梅田駅で解散した。俺と佐々木は同じ方向だった。佐々木は明日昼から友達と遊ぶ約束があるという。
    「家遠いし、帰るのめんどいなぁ…」
    偶然、待ち合わせの場所は俺の家の近くだった。

    2005-12-12 04:05:00
  • 15:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    佐々木はまたあの愛想のいい笑顔で、冗談っぽく
    「みっくんち、泊めてもらっちゃおっかな〜☆」
    と言ってきた。俺は気付けば、
    「別にいいよ、来れば」
    と言っていた。

    2005-12-12 04:08:00
  • 16:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    本当にいいと言われると思わなかったんだろう、佐々木はキョドっていた。少しして、やっと口を開いた。
    「じゃあ、おじゃましちゃおっかな☆」
    俺はこの時何も考えてなかった。女を泊めたことなんて何回もあったし。
    だけど、この時、俺が駄目だって言っていたら…俺と佐々木は普通の《友達》でいられたのかな。

    2005-12-12 04:14:00
  • 17:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    佐々木の口から出てきた名前は、皆ヤンキーだったやつらばかりだった。でも、最後に佐々木は「もう連絡とってないし、昔の話だけどね」とつけたした。
    俺はヤンキーだとか不良だとか、そんなんにはなったことがない。成績も常にトップクラスで、今まで真面目な生き方をしてきた方だと思う。
    俺と佐々木、全く違う道を歩んできた二人なのに、今こうして一つ屋根の下ですごそうとしている。なんだか不思議な気分だった。

    2005-12-12 04:30:00
  • 18:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    家につくと、俺は早々とこたつにもぐりこんで、
    「そっちのベッド使っていいから」
    と隅にあるベッドを指差した。佐々木は「ありがとう」と言ってベッドに横になった。
    俺は佐々木に手を出す気は全くなかった。それは、決して佐々木に魅力がなかったからじゃない。なんでか、そんな気にならなかった。

    2005-12-12 04:35:00
  • 19:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    寝転んでからも、少し話をしていた。気がつけば俺は、
    「佐々木さんって、怖い人だと思ってた」
    と変なことを口走っていた。佐々木はあはは、と笑った後、体ごと俺の方に向けて、
    「今も、怖い??」
    と聞いた。さっきとは違った、穏やかな笑顔で。俺は黙って首を横に振った。

    2005-12-12 04:41:00
  • 20:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ━━━ピーンポーン
    玄関のチャイムが鳴って、俺は目を覚ました。時計を見ると、朝の10時半。いつの間にか眠ってしまってたようだ。横のベッドでは、佐々木がすやすやと寝息をたてて寝ている。
    あぁ、忘れてた。今日は晃と遊びに行く日だったんだ。俺は起き上がって、急いで玄関の鍵をあけに行った。

    2005-12-12 14:25:00
  • 21:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「お前あけるのおせーよ。お邪魔しまーす」
    晃の声で、佐々木がむくりと起き上がった。晃はギョッとして佐々木を凝視する。
    「よっくんおはよー。あ、ごめんなさぃ、お邪魔してます」
    佐々木は晃に丁寧に挨拶したけど、晃は軽く頷いただけだった。

    2005-12-12 14:30:00
  • 22:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    晃は明らかに機嫌が悪く、ちょっと気まずい空気だった。その空気を読んでか、佐々木は俺と晃の会話に入ってくるわけでもなく、手早く化粧を直した後、
    「今日はほんとにありがと、助かったわぁ。お邪魔しましたー」
    と笑顔で言い、そそくさと出ていった。

    2005-12-12 14:36:00
  • 23:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    佐々木が出て行った後、俺は眉をひそめて晃に言った。
    「お前なぁ、もーちょい愛想よくできないわけ??俺の友達なのにさぁ」
    「俺、あーゆーギャルみたいな奴嫌いだから」
    晃はしれっと言った。俺はなんだか追い出してしまったみたいで、佐々木に申し訳ない気持ちだった。

    2005-12-12 14:40:00
  • 24:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    塾が終わって携帯を開くと、佐々木からメールがきていた。
    《今日は友達くるのに押しかけてごめんね↓バイト頑張って☆》
    なんかこの子、謝ってばっかりだな…。俺は、
    《全然いいよ、こちらこそごめん!!よかったらまたおいで☆(笑)》
    と返してみた。

    2005-12-12 14:57:00
  • 25:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    すると、
    《まぢでぇ??ぢゃぁまたお邪魔しちゃうかもね(笑)》
    とまんざらでもないようなメールが来て、俺は少し嬉しくなった。
    それから、俺と佐々木は毎日メールをするようになった。

    2005-12-12 15:00:00
  • 26:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    メールをするようになって4日目に、佐々木から、
    《今から彼氏が来るから、メールできない》
    とメールがきた。
    《別にやましいことは何もないからいいやん(笑)》
    《そーだけど、うち彼氏に信用されてないから↓》

    2005-12-12 15:05:00
  • 27:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    あぁ、確かに遊び人に見えるもんな…。思ったことをそのまま伝えると、佐々木はショックを受けていた。でも俺が、
    《遊び人に見えるってことは、可愛いってことやで☆》
    と送ると、嬉しそうだった。次に俺がメールを送ると、もう返事は返ってこなかった。彼氏が来たのだろう。
    佐々木から再びメールが来たのは、二日後の朝だった。
    《彼氏帰ったよ☆》

    2005-12-12 15:12:00
  • 28:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    佐々木は今の彼氏と1年半くらい付き合っているらしい。少し遠いので、二週間に一回位しか逢えないという。
    毎日メールしていると、嫌でも逢いたくなってくる。俺は口実を作って佐々木を家に呼んだ。佐々木の彼氏に罪悪感はなかった。知らない人だし、自分さえ楽しかったらよかったから。

    2005-12-12 15:19:00
  • 29:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    だけど佐々木は違った。今の彼氏と付き合ってから、他の男の家にあがったのは初めてだという。彼氏への罪悪感と共に、元クラスメイトの美穂に対しても申し訳なぃと言ってうなだれていた。美穂がまだ俺に未練があることを知っていたから。

    2005-12-12 16:42:00
  • 30:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    佐々木はその日、バイトが終わって一旦家に帰り、お風呂に入ってから電車で俺の所に来た。俺は駅まで迎えに行った。佐々木が俺の前に姿を見せた時、まだ朝9時にもなっていなかった。話によると、金土だけバーで働いているらしい。忙しい時は朝まで働いているのだそうだ。ストレートの髪で、前より少し化粧が薄めの佐々木は、本当に可愛かった。
    しばらく世間話をした後、俺が「なんでうちに来る気になったん??」と聞くと、佐々木はうつむいた。

    2005-12-12 16:52:00
  • 31:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「うち、今までずっと彼氏一筋やってんやん。やけど、この前の同窓会で、よっくんと初めて話してから、気がついたらよっくんのことめっちゃ意識してた。」
    あかんこととはわかってるんやけど、と複雑な表情でつぶやく佐々木を、俺は思わず抱きしめた。

    2005-12-12 16:57:00
  • 32:

    名無しさん

    2005-12-12 17:43:00
  • 33:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「めっちゃ嬉しい…」
    彼氏がいてもいい。この子と一緒にいたいと思った。俺は佐々木を抱きしめたまま眠りについた。目が覚めたのは夕方だった。寝ぼけている俺に、佐々木はキスしようとして一瞬顔を近付けたが、我にかえってすぐに離れた。俺は無理矢理佐々木を抱き寄せ、唇を重ねた。
    唇を離した時、照れ臭そうに微笑んだ佐々木の顔が、今でも忘れられない…。

    2005-12-12 19:19:00
  • 34:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺はそれ以上何もしなかった。佐々木は見た目とは違ってめちゃ純情な子だった。俺は今まで周りの噂を信じて佐々木に悪いイメージを持っていたことを、心底申し訳ないと悔いた。それを佐々木に言うと、佐々木はにっこり笑って言った。
    「悪いイメージを持たれてたってのは正直ショックだった。でも、最初の印象が悪かったら、その人のちょっといいとこを見た時に、めちゃいい人に見えるやろ??だから、うちはよっくんに悪いイメージを持たれててよかったと思うよ」

    2005-12-12 19:26:00
  • 35:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    夜になって、佐々木は帰って行った。駅まで送る時、自然と手を繋いでいた。それだけで幸せを感じた。思えば、美穂とも手を繋いだことなんてあんまりなかった気がする。
    佐々木と別れて家に帰ってくると、女物の時計が机の上に置いてあるのを見つけた。どうやら忘れて帰ったみたいだ。俺は嬉しくなった。これでまた逢える。

    2005-12-12 19:35:00
  • 36:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    次の日、突然美穂が家にきた。よりを戻したいと泣かれて、つらかった。きっと美穂の方がもっとつらいんだろう。だけど俺はもう美穂に気持ちはなかったし、なにより佐々木のことで頭がいっぱいだった。
    帰る間際に、美穂が佐々木の時計を見つけて、悲しそうな顔をしていた。まさかそれが元クラスメイトのものだなんて、思いもしないだろう。

    2005-12-12 19:42:00
  • 37:

    名無しさん

    実話デスかぁ?

    2005-12-13 00:37:00
  • 38:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    44サン、読んでくれてありがとぅ☆割合的には実話8:フィクション2ってとこです!!

    2005-12-13 03:57:00
  • 39:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    その二日後の夜、また家に佐々木を呼んだ。一昨日美穂が家に来たことを告げると、佐々木は悲しそうな顔をして、美穂ごめんね、とつぶやいた。でも、
    「今日はもう夜遅いし泊まっていって」
    と俺が言うと、佐々木はいつもの笑顔で頷いてくれた。その日、俺は佐々木を抱いた。

    2005-12-13 04:07:00
  • 40:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺が服を脱がしていると、佐々木が震えているのがわかった。
    「どうしたん??」
    「なんか恥ずかしい…うち、浮気するの生まれて初めてや…」
    布団で自分の体を隠し、部屋を暗くしてと頼む佐々木に、俺はいっそう欲情してしまった。

    2005-12-13 04:12:00
  • 41:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    強引に布団を剥ぎ取り、前戯をする。表情、声、仕草、全てが愛しかった。俺は我慢できなくなって佐々木の中に入れた。果てるまでに、そう時間はかからなかった。
    よく、「男はヤるまでを大事にして、女はヤった後を大事にする」という。そんなの嘘だ。だって俺は、今こんなに幸せな気持ちなんだから。

    2005-12-13 04:18:00
  • 42:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    それからも佐々木はちょくちょく俺の家に来た。いつの間にか俺は彼女を《ひな》と呼ぶようになっていた。
    だけどこの関係は、あくまで《遊び》。俺は《彼氏》じゃない、ただの《浮気相手》。ひなからは絶対に「逢いたい」と言ってこない。俺が呼んだ時だけ来る。

    2005-12-17 13:23:00
  • 43:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺といる時に、彼氏と楽しそうに電話やメールをするひな。嬉しそうに俺に彼氏の話をしてくるひな。ひなのケータイに貼ってあるキスプリ。ひなといると、俺はいやでも《二番目》だということを思い知らされる。

    それでも、おまえに逢いたい…

    俺は自分の気持ちを押し殺し、ひなに気付かれないようにした。あたかも「自分も遊びだ」というように振る舞った。

    2005-12-17 13:32:00
  • 44:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    他の女とも遊んだり、家に泊めたりもした。それを話すと、少し悲しそうな顔をするひなを見て、喜んでいる自分がいた。
    ある日、二人でいつもの様に部屋で寝転がっていた。俺がひなの肩を抱こうとすると、
    「いたっ!!」
    ひなが痛そうに顔を歪めた。どうしたのかと聞くと、ひなは「ぶつけてあざができている」と言った。その時は俺もあまり気にとめなかった。
    なんで俺は、気付いてあげられなかったんだ。あんなに近くにいたのに。

    2005-12-17 13:45:00
  • 45:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    クリスマスか…。一瞬、ひなの顔が浮かんだが、彼氏と過ごすに違いないことに気付き、すぐに振り払った。
    「うーん、バイトしてるかな(笑)」
    「うそー!!でもあゆみが、先生がこの近くでめちゃ綺麗な女の人と手ぇつないで歩いてるとこ見たってゆってましたよ!!」
    きっとひなのことだ。彼女が家に来た時に駅まで送っているところでも見られたのだろう。
    俺は笑って「人違いだよ」と流した。

    2005-12-20 16:10:00
  • 46:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    授業が全て終わり、俺は煙草をくわえ急ぎ足で駅に向かう。冬は吐息が白いため、吐き出す煙が多く見えるのが俺はなぜか好きだ。駅前のコンビニの前に立つ。目の前には、ぶ厚いガラス一枚へだててお姉系の雑誌を立ち読みするひなの姿がある。
    ひなはすぐに俺に気付き、雑誌を戻して笑顔で俺のところにかけよってきた。俺の腕に自分の腕をからめながら、「お腹すいてない??今日はカレーでも作ろっか」と言ってくれた。

    2005-12-20 16:21:00
  • 47:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    二人でスーパーに行き、材料を買う。レジ打ちのおばさんたちが「新婚さんかな」とささやいている声がまる聞こえで、俺とひなは顔を合わせて笑った。
    ひなが頑張って作ってくれたカレーは…激マズだった…。むしろこんなにまずくカレーを作れる方がすごいってぐらいひどい味だった。ひな自身も一口食べただけで捨ててしまった。だけど俺は、しょんぼりしているひなの頭をなで、米つぶ一粒残さず完食した。ひなの手料理ってだけで十分すぎるぐらい嬉しかった。

    2005-12-20 16:32:00
  • 48:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ひなは最初猫をかぶっていたが、一緒にいるとだんだん素が出てきた。俺の前でGUCCIのシガレットケースを取り出し、煙草を口にくわえようとした。俺はその手をぐっと掴む。
    「…何」
    「お前煙草吸い過ぎ。もうちょっと我慢しぃや」
    「はぁ??無理やし」
    無表情で俺の手を振り払ってカルティエのライターで火をつける。なんて可愛いげのないやつだ。

    2005-12-20 21:49:00
  • 49:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    あぐらをかき、煙草の煙を吐きながらパチンコ屋の広告を真剣に見ているひなに女らしいところなんてひとつもない。
    俺はギャル系はもちろん、煙草やスロットをする女も大嫌いだ。料理が下手なのも大減点。しかもいつも妙に強気で無愛想だし…。なのになんで、この子は許せてしまうんだろう。
    ひなだけは、特別なんだ。

    2005-12-20 21:58:00
  • 50:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「ひな、そろそろ寝ようか」
    とベッドの上から俺が言うと、ひなはいつものように俺にしがみついてきた。
    「お風呂は??」
    「今日も来る前に入ってきた」

    2005-12-20 22:09:00
  • 51:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「いつも化粧落としてないやん。肌に悪いよ」
    「いーの。すっぴん見せたくないから」
    ひなと出逢ってから一ヶ月弱。ひなは週2くらいの頻度で俺の家に泊まりに来たが、まだ俺にすっぴんを見せたことがなかった。俺はそれが嫌だった。汚いからとかじゃなくて、なんだか壁を作られているような気がしたから。
    彼氏には、見せてるくせに。

    2005-12-20 22:14:00
  • 52:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    そして、冬休みになり、クリスマスがやってきた。今年はホワイト・クリスマス。窓の外では、雪がちらほらと降っている。俺は昼間に運送屋のバイトを終え、夜は家でこたつに入ってテレビを見ていた。
    寂しいクリスマス。世間一般ではそう言うんだろうし、俺自身も大学の友人たちにそう言って笑い飛ばしていた。だけど今は一人でいい。彼女なんかいらない。喧嘩とか束縛とか、なんか色々面倒臭いし。
    今頃ひなは彼氏といちゃつきながら、甘ったるいケーキでも食べてるんだろう。そう思うとなんだか悔しくなって、俺は乱暴にみかんの皮をむいて一口でほおばった。

    2005-12-22 04:50:00
  • 53:

    名無しさん

    この人心中シリーズの人ばりにうまいね

    2005-12-22 05:05:00
  • 54:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ━━━ピーンポーン
    ふいにチャイムが鳴った。きっとNHKの使用料の回収かうさんくさいセールスか、そんなとこだろう。世間が賑わっているこんな日に、ご苦労なこと。
    無視してテレビを見ている間にもチャイムは鳴り続けた。あまりにもしつこいので、俺は半ギレで玄関に向かった。チェーンをつけ、鍵を開ける。乱暴にドアをあけたので、チェーンがびっくりするくらい大きな音をたてた。
    「はい?」
    わずかに開いたドアの隙間から見える、黒いロングコートに、とんがったつま先の黒ブーツをはいた女の子。見覚えのある服装…顔を見ると、それはひなだった。

    2005-12-22 05:06:00
  • 55:

    名無しさん

    2005-12-22 10:20:00
  • 56:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    読んでくれてる人がいる!!嬉しい(^O^)
    61サン→うまいって言ってもらえて光栄です☆いやいや、NNさんには足元にも及びませんよf^_^; ありがとうございます!!
    63サン→読みやすくしてくれてありがとうございます☆

    2005-12-22 13:53:00
  • 57:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「ひな!?…なんで?」
    俺は急いでチェーンをはずし、ひなを中に入れた。
    「よっくんが、さみしがってる気がしたから。彼氏んちからとんできちゃった☆」
    ひなの彼氏の家は、電車で片道2000円以上かかる所にある。そんなとこからわざわざ…。俺のために。

    2005-12-22 13:57:00
  • 58:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    そして200*年最後の日になった。俺は次の日、誘ってきた女と府内の神社に初詣に行く約束をしていた。ひなは初詣には行かず、元旦は家でゆっくり過ごすらしい。正直、俺は面倒臭かった。初詣なんかどうでもいいから、ひなと過ごしたい…。なんで俺、いいよって言ってしまったんだろう。後悔の念に頭を悩ませていると、ひなからメールがきた。

    2005-12-22 14:31:00
  • 59:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    《明日は初詣やねぇ。元旦って人めちゃ多そう》
    《そうやねん。絶対弥生(誘って来た女)とはぐれるわぁ〜》
    《手ぇつなぃどったらいぃやん☆ワラ》
    ここで俺は少しひなに意地悪をしてやろうと思った。《うん☆そーするわ♪》

    2005-12-23 17:57:00
  • 60:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    何て返ってくるかな…。少しドキドキしながらメールを待っていた。なかなか返ってこない。しばらくして、ひなの指定受信音が鳴った。すかさずケータイを開く。
    《そっか。そーしぃや!!弥生チャンって子可愛いんやろ〜、うまくいくといいね☆》
    え…それだけ?俺は落胆した。変な期待をしていた自分に気付き、なんだか悔しくなって、ついこんな質問をしてしまった。
    《ひな、本気でそう思ってんの?》

    2005-12-23 18:04:00
  • 61:

    名無しさん

    2005-12-23 19:15:00
  • 62:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    70サン、読みやすくしてくれてありがとぅo(^-^)o

    2005-12-25 13:06:00
  • 63:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    またしばらく時間をおいて、ひなからメールが返ってきた。
    《確かに複雑だけどぉ…うちはよっくんが幸せになってくれたら、それで満足だし☆》
    この時俺は確信した。どんな小さな希望も期待するべきじゃないと。
    ひながきっといつか俺を好きになるって、勘違いするべきじゃないと。

    2005-12-25 13:10:00
  • 64:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    だけど同時に再確認した。自分の気持ちを。俺はひなが好きだ…。
    俺は静かな部屋に一人でいるのが嫌いだ。だからいつも一人の時は絶対にテレビをつけるか、音楽をかけている。でも今日はなぜか、大好きな唄すら欝陶しく感じて、俺はオーディオの電源をおとした。
    人を好きになるって、こんなにつらいものだったかな…?できるなら、逃げ出してしまいたい。こんな惨めな自分でいたくない。だけど、昔の女とのどんなに綺麗な思い出も、ひなの前では、あっけなく霞んでしまうんだ。

    2005-12-25 13:23:00
  • 65:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    遠くに聞こえる除夜の鐘が、なんだかすごく心地いい。
    もう、お前しか見えない。。。
    俺はケータイを手に取り、メールの作成画面を開いた。
    《宛先:弥生
    本文:ごめん、明日急用入って初詣行けそうもなぃわぁ。ほんまごめんな》

    2005-12-25 13:30:00
  • 66:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    自分の気持ちに気付いてしまった以上、他の女と遊ぶ気には到底なれなかった。そしてひなにもメールを打つ。
    《弥生にドタキャンされたわ。明日来てや》
    ひなさえいたら、それでいいんだ。でも、ひなからの返事は冷たいものだった。
    《明日友達と遊ぶ約束入ってもーたし無理やわ。ごめん》
    俺はがっくりと肩を落とした。それは本当に友達なのか?彼氏と逢うんじゃないのか?考えたら考えるほど苦しくなり、俺は布団に潜りこんだ。今日はもう寝よう。何も考えないで済むように。

    2005-12-25 13:41:00
  • 67:

    美奈

    待ってます?

    2005-12-26 18:50:00
  • 68:

    名無しさん

    あげ

    2005-12-31 15:29:00
  • 69:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    読んでくださってるみなさん、遅くなってすいません(>_

    2005-12-31 22:34:00
  • 70:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    目が覚めたのは昼前だった。部屋には当然のように誰もいない。なんてさみしい元旦なんだ、と苦笑いしつつ、テレビのリモコンに手を伸ばす。昨晩の、もやもやした気持ちはもう晴れていた。昨日の俺はどうかしていたんだ。夜の闇が勝手に運んできた、罠にはまっていただけだ。やっぱり《適当》に生きるのが一番楽でいい。それが、俺なんだ。

    2005-12-31 22:49:00
  • 71:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    正月の特番をぼんやりと見ていると、裕介からメールがきた。
    《何してるん??今好美と敦子と一緒にいるんだけど、家行ってもいい??》
    裕介と好美は同じ塾でバイトしている奴だ。敦子は好美の友達で、俺も二、三度会ったことはある。俺は昨日、ひなのことを想って弥生との約束をドタキャンしたのにもかかわらず、来てもいいと返事をした。昨日は昨日、今日は今日だ。

    2005-12-31 23:01:00
  • 72:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ほどなくして玄関のチャイムが鳴った。
    「おう、突然悪いな」
    裕介がにやにやしながら部屋に入ってきた。女二人もおじゃまします、と言ってひかえめに裕介の後ろを着いてきた。裕介はまあまあ男前だが、好美と敦子はお世辞でも可愛いとは言えない顔立ちだ。なんでこいつら、三人で遊んでたんだろう?でもその時は、あまり深くは考えなかった。

    2005-12-31 23:10:00
  • 73:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    しばらく4人で他愛もない話をしていたが、突然裕介と好美が「コンビニに行ってくる」といって出ていった。二人がいなくなった途端、敦子は口数が少なくなり、すこし気まずい空気が流れた。俺は勘弁してくれよ、と思いつつ黙って煙草を吸っていた。
    しばらく沈黙が続いた後、急に敦子が、
    「義幸くんは、好きな子とかいないの?」
    と聞いてきた。

    2006-01-01 02:08:00
  • 74:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺が笑って「別に」と答えると、敦子は俺の横にきて、
    「あたし、前から義幸くんのこと気になっててん」
    と真剣な顔で言ってきた。俺が黙っていると、敦子は俺の唇に自分の唇を重ねた。
    「お願い…」

    2006-01-01 02:12:00
  • 75:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6


    ひな…

    俺のものにならないなら、俺もお前のものじゃないよな?
    俺は敦子を押し倒した。

    2006-01-01 02:20:00
  • 76:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ━━━
    「義幸くんって、意外と前戯雑なんやね」
    布団にくるまった敦子が目をつぶったまま独り言のように言う。俺は裸のまま起き上がって煙草に火をつけた。
    「でも、気持ちよかった☆」
    敦子が俺の腰に手をまわす。

    2006-01-01 02:33:00
  • 77:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「そう?よかった」
    …敦子からは見えない俺の表情は、きっと氷のように冷ややかだっただろう。
    もちろん俺も気持ちよかったよ…ただしそれは、敦子の姿をひなに重ねたからこそ得られた快感。敦子とひなを一緒になんて、したくなかったけれど。

    俺はやっぱり最低だ。

    2006-01-01 02:40:00
  • 78:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    煙草を灰皿に押し付け、服を着ていると、どこからかオーディオよりも質の悪い音楽が流れ出した。この唄は………!!
    俺は振り返って、敦子の頭の上の方にあったケータイをつかんだ。
    ◆着信:ひな◆
    ひなから電話がかかってくるのは初めてのことだった。きっと鳴らないと思っていた着うたが、今俺の手の中で流れている。俺は通話ボタンを押した。

    2006-01-01 02:47:00
  • 79:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「もしもし!?」
    俺のうわずった声に反応して、敦子が俺の顔に視線を向ける。
    『もしもし…今電話しても大丈夫だった??』
    敦子が口パクで「誰?」と聞いてくるのを無視して、俺は電話に集中した。
    「うん、大丈夫。どしたん??」

    2006-01-01 02:51:00
  • 80:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    『……たい…』

    「え?なに、聞こえない」

    『逢いたい…』

    2006-01-02 01:54:00
  • 81:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「…うち、来る??」
    『…うん』
    電話を切った後、俺は敦子の顔を見ないで、「今から人来るから、帰ってもらっていいかな?」とだけ言った。
    「好きな子?」
    と敦子が聞いてきたが、それには答えなかった。

    2006-01-02 01:58:00
  • 82:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    敦子はひとつ溜め息をついて、ベッドの下にまるまっていた自分の下着を拾いあげた。俺は相変わらず反対をむいて煙草を吸っていた。
    部屋を出ていく時に、敦子は意味ありげににんまりと笑って、「お幸せに」と言ってきた。なにがお幸せにだ、何もしらないくせに。
    裕介と好美は結局帰ってこなかった。きっと初めから二人きりにするように仕組んでいたのだろう。

    2006-01-02 02:08:00
  • 83:

    すごい良い話ですね?
    文章も読みやすくて大好きな小説の一つです。
    続き楽しみにしてるんで、完結まで頑張って下さい?

    2006-01-02 02:55:00
  • 84:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    凜サン、そんな風に言ってもらえて嬉しいです☆マイペースで申し訳ありませんが、完結まで頑張ります!!

    2006-01-06 00:47:00
  • 85:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    俺が簡単に部屋を片付けていると、ひなからメールが来た。
    《そーいえば初詣ドタキャンされたんやろ??うちが一緒にいったるわ☆17時に〇〇神社に集合ね!!》
    やれやれ、自己中な奴。だけどこうゆうとこが可愛いんだよな。俺は苦笑しながら、
    《了解ですよ、お姫様☆》
    と送った。

    2006-01-06 00:53:00
  • 86:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    駅に向かって歩きながら一人考える。俺は若干亭主関白なたちなので、今まで付き合ってきた女は、美穂を含め、皆俺のペースにはまっていた。優しくて、わがままも言わなくて、いつも俺の顔色を伺ってばかり。そりゃ皆好きだったさ、好きじゃなけりゃ付き合わない。だけど今回みたいに、いちいち悩んだり、自分だけのものにしたいなんて思ったことはなかった。
    案外、素直に言うことを聞くばかりの女より、我が儘で手のかかる女の方が、ずっと魅力的なのかもしれない。

    2006-01-06 01:02:00
  • 87:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    電車に乗って15分、駅を出て徒歩で10分ほどのところに、その神社はあった。入口の、たこ焼きの屋台の前に、黒いロングコートとブーツを身にまとった女の子がちょこんと立っている。
    「よっくーん!!早く早く〜」
    白い息を吐きながら、ひなが大きく手を振って俺を呼んだ。あのかわいらしい、満開の笑顔で。

    2006-01-06 01:10:00
  • 88:

    名無しさん

    もぅ書かないんですか?

    2006-01-10 19:04:00
  • 89:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    98サン、読んでくれてありがとぅ☆実は今ケータイが壊れてて…;今からできるかぎり更新していきます!!

    2006-01-11 18:52:00
  • 90:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    他愛もない話をしながら、ひなと一緒に長い階段を登って行く。
    「今日友達と遊ぶんやなかったん?」
    「んー、なんか急に彼氏と初詣行くことになったらしくて。そしたら、なんかひなもよっくんに逢いたくなっちゃってー」
    どこまで本気で言ってるんだろう。ひながわからないよ。だけど疑いつつも、心は踊っていた。

    2006-01-11 19:04:00
  • 91:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    境内は人がいっぱいで、人ごみが苦手な俺はめまいを覚えた。はぐれたらいけないから、と心の中で自分に理由付けしながら、そっとひなの手を握ってみた。ひなは一瞬、驚いたような顔で俺の顔を見たが、微笑んでこの手を握りかえしてくれた。
    おみくじの順番待ちも、全然苦痛じゃなかった。いつの間にか、めまいはやんでいた。

    2006-01-11 19:11:00
  • 92:

    名無しさん

    2006-01-11 19:18:00
  • 93:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    おみくじの結果は、俺が中吉、ひなは凶だった。
    「えー…恋愛運は波乱あり、だってぇ」
    落ち込むひなに、「こんなの当たらないよ」と慰めても、ひなはしゅんとしたままだ。
    「ひな、そのおみくじ枝にくくっときなよ。そしたら、神様がその凶をひなの代わりに背負ってくれるんやで」
    「…いいよ、自分で持っとく」

    2006-01-11 19:30:00
  • 94:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「えっ、なんで?」
    「だって、苦難を人に押しつけてたらいつまでたっても自分が成長できひんやろ!!それに……」
    「ん?何?」
    「…神様なんて、いないから」

    2006-01-11 19:35:00
  • 95:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    そう言ってひなは下を向いて笑った。その笑顔は、いつもの可愛らしいものではなく、卑屈っぽくて、何か冷たかった。俺はゾクッとして、思わず目をそらした。
    「…お参りしよっか」
    そう言って俺の方を見た顔は、もういつもどおりのひなだった。
    だけど、俺も同感だよ。神様なんて、いないと思う。

    2006-01-11 19:56:00
  • 96:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    お参りの順番を待ちながら、俺は自分のおみくじを見ていた。
    ◆恋愛運:待ち人来たる◆
    ひなにこれを見せると、「ねぇよっくん、これってまさにうちのことちゃうん!?」と一人ではしゃいでいた。

    2006-01-11 20:44:00
  • 97:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    その時俺は呆れたように「何言ってんねん」と聞き流すふりをしたけど、本当は確信していたんだ。これはひなのことだって。
    賽銭箱の前に立ち、二人で手を合わす。ひなは何かをお願いしてるんだろうか。神様なんているわけないよ。だけどもし、もしいるとしたら、どうかこれからもずっと、ひなのそばにいさせてください…。

    2006-01-11 20:52:00
  • 98:

    ???

    頑張って?

    2006-01-14 23:10:00
  • 99:

    ?

    待ってます??

    2006-01-15 03:39:00
  • 100:

    ◆FvW9xh/34U

    2006-01-15 10:50:00
  • 101:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    102サン、110サン、読みやすくしてくれてありがとぅ(^Q^)
    ???サン、ありがとぅ、頑張ります☆☆
    ?サン、読んでくれてありがとぅ、今から更新しますね!!

    2006-01-15 13:49:00
  • 102:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    それから晩ご飯を食べてから家に帰ろうということになり、神社の近くにあった和食屋に入った。
    数十分後に食べ終わり、出口で会計をすまそうと財布を開けると、札入れに札が一枚もないことに気が付いた。しまった、銀行からおろすの忘れてた…。俺がキョドっていると、ひなが横からひょこっと顔を出してきた。
    「ひょっとして、お金ないの?」

    2006-01-15 14:15:00
  • 103:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「いや…うん、まぁ…」
    やばい、俺かっこわる…。言葉に困っている俺を見て、ひなはにっこり笑って自分の財布を取り出した。
    「いつもよっくんに出してもらってるし、今日はひながおごる日ね☆」
    俺が何か言う前に、ひなは俺から伝票をとりあげ、財布から壱万円札をひらりと出した。その時、ひなの財布の中身がちらりと見えた。
    ………!?

    2006-01-15 14:25:00
  • 104:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「ありがとうございましたー」
    店員の声を背に、俺はふらりと店を出た。俺が目にしたものは…大量の諭吉。最低20枚はあった。普通、学生がそんな大金持ち歩いてるだろうか?まさか…ひな…。
    俺がぼんやり考えていると、後ろからひなの呑気な声がした。
    「あ〜、今年はいっぱいお年玉もらったし、ひなめっちゃリッチやわぁ〜☆お金があるっていぃね!!」

    2006-01-15 14:36:00
  • 105:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    あ、なるほど…お年玉か。今年は成人式だし、お祝いでいつもより多くもらっても全然不思議じゃない。俺は振りかえって、ひなに
    「ごちそうさま!!俺も早く実家帰ってお年玉もらってくるわ」
    と笑った。安心したからか、俺はそれからずっと笑顔だった。…家に帰るまでは。

    2006-01-15 14:49:00
  • 106:

    名無しさん

    ????????????????????????

    2006-01-15 14:56:00
  • 107:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    116サン、読んでくれてありがとぅ☆☆

    2006-01-15 18:50:00
  • 108:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    一人だと長く感じる道程も、二人だとあっという間だ。家に着くまでの時間は、行く時と違って驚くほど早く感じた。鍵をあけて家に入る。玄関のドアがパタン、と音をたてるのと同時にひなが抱きついてきた。
    「ん〜、久々のよっくんの感触☆ワラ」
    「何それ。ワラ クリスマスに逢ったばっかりやん」
    「一週間も逢ってないやんかぁ〜」
    まるでどこにでもいるカップルたちのような会話。甘えてくるひなを抱き締めようとした瞬間、ひなのかばんから中島美嘉の《雪の華》が流れだした。

    2006-01-15 19:06:00
  • 109:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    その瞬間、ひなは俺から飛びのいて、
    「やばっ、なおくんだ!!」
    とケータイだけを持って外に飛び出して行った。一人取り残された俺は、何事もなかったかのように靴を脱ぎ、部屋に入った。舞い上がっていた気持ちは、一瞬にして地底深く落とされた。なんなんだよあいつは。わけわかんねぇ。

    2006-01-15 19:17:00
  • 110:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ドアのむこうから、かすかに聞こえるひなの笑い声は、まるで俺を嘲笑っているかのようだ。
    しばらくして、電話を終えて戻ってきたひなが、「ごめんね」と微笑んできた。俺も笑顔で「全然いいよ」と返した。
    俺はいつまで、ひなの前で自分を偽ればいい?《雪の華》、俺も大好きな唄だったのに。ひなと出逢ってから、大嫌いになってしまった。

    2006-01-15 19:32:00
  • 111:

    名無しさん

    2006-01-16 03:54:00
  • 112:

    名無しさん

    あげ???

    2006-01-20 13:11:00
  • 113:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    121サン、読みやすくしてくれてアリガト☆
    122サン、あげてくれてありがとぅ☆
    久々に更新します。

    2006-01-31 23:20:00
  • 114:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    部屋で何をするわけでもなく、俺はパソコンの無機質な画面をぼんやりと見ていた。後ろではひながこたつで寝転がって雑誌を読んでいる。会話はほとんどない。最近ではこんな状態も普通になってきた。それはお互いに、一緒にいることに慣れてきたってことで、いいことなんだろうけど、俺は逆に不安になる。慣れれば慣れるほど、ひなを手放すのが恐くなるから。
    だってひなには、俺じゃなくて、ちゃんと愛する彼氏がいるから。いつ突然いなくなるかわからないような不安定な関係。ひなはこの関係にも、もう慣れた?俺はまだ慣れないよ。

    2006-01-31 23:33:00
  • 115:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「こたつ熱い〜。低温やけどしてまうわぁ」
    ふいにひながつぶやき、立ち上がってベッドにむかっていった。ついさっき、俺が他の女を抱いたばかりのあのベッドに。ひなはそんなこと、知るわけがない。もし知ったら…いや、知っても…きっとその心には傷ひとつつかない。傷つけたくないのに、傷ついてほしい。なんだか矛盾してるよな。

    2006-01-31 23:41:00
  • 116:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    ━━━バサッ
    静まり返った部屋に、ひなが布団をめくる音がリアルに響く。なんだか今日はひなを抱く気になれない。さっき敦子とヤッたからだろうか。するんじゃなかったよ…ほんまに。どうかしてたわ。
    俺はふと、再び沈黙した部屋に違和感を覚えた。ひなが布団にもぐりこむ音が、聞こえてこない。
    振りかえると、ひなはベッドの前に立ったままだった。その弱々しい小さな背中は、ぴくりとも動かない。嫌な予感がする。。

    2006-01-31 23:51:00
  • 117:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    「ひな…?」
    呼んでみても、返事はない。俺はおそるおそるひなに近付いた。その背中に手をかけようとしたその時…俺は、女の恐ろしさを知った。
    布団のめくられたベッドの上にあったのは、使用済みのコンドームだった。ちゃんとティッシュで覆って、ごみ箱に捨てたはずだ。出て行く時の、敦子の意味ありげな笑みが頭によぎる。ありえへん…。自分の気持ちを知りながらやり捨てようとした、俺への腹いせだったのだろう。俺が悪い。わかってる。だけど、まさかこんなことするなんて。。

    2006-02-01 00:02:00
  • 118:

    彩芽 ◆emRWXVV5T6

    頭の中は色んな考えが交差して、ぐちゃくちゃだったが、俺は冷静を装った。普通のごみのようにそれを拾い、ごみ箱に捨て、にこりと笑って、
    「俺も、遊びたい年頃やからさ」
    と言った。だけど情けないことに、その声は震えた。ひなの顔が見れない。恐い…どんな反応がかえってくるのかが。

    2006-02-01 00:16:00
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